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アジア諸国との新しいパートナーシップの確立に向けて

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アジア諸国との新しいパートナーシップの確立に向けて
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アジア諸国との新しいパートナーシップの確立に向けて
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日本とアジア諸国との間で緊張関係が続いている。中国、韓国における反日感情は、われわれ日
本人の想像を超える規模にまで拡大しており、隣国との付き合い方の難しさを改めて認識すること
となった。
このような中、4 月 14 日、15 日の両日、日韓両国の経済人が集まる日韓経済人会議が、韓国ソ
ウルで開催された。奥田碩日本経済団体連合会会長をはじめ、数多くの経営者が日本から参加し、
韓国側経営者との間で活発な議論を行った。この時期において、両国財界の首脳が集い、2 日間に
も及ぶ議論が行われた背景には、「日韓両国間の緊張関係は政治問題であり、経済活動がそれに左
右されるようなことはあってはならない」とする両国経済界の熱い想いがあるためである。同会議
における共同声明の第一番目に「包括的でハイレベルな日韓 FTA の年度内の締結のため協力する
件」が盛り込まれた。
日本政府は、アジア各国との間での FTA(自由貿易協定)および EPA(経済連携協定)の締結
を進めている。すでに実施されているシンガポールとの EPA に加えて、昨年はフィリピンとの EPA
について基本合意が行われた。本年度は、タイ、韓国、マレーシア等との FTA/EPA の交渉が進め
られる予定である。FTA/EPA のメリットは、貿易および投資の円滑化である。その結果、両国間
で、経済活動の相互依存が強化される。関係を強化することは、単に両国の経済発展を促進するだ
けでなく、社会経済全体における両国間の安全保障においても極めて重要である。
アジア諸国との関係は、工業製品だけには留まらない。ここ数年、アニメなど日本のサブカルチ
ャーのアジア諸国への浸透が注目されている。一方で、アニメーションの制作過程では、韓国・中
国との間で緊密な分業関係が構築されている。また、「冬ソナ」に代表される韓国文化は、日本国
内に深く浸透していることは言うまでもない。さらには、アジアの国々から日本を訪問する観光客
数は、着実に増加してきている。
アジア諸国の経済発展に伴い、日本との間の関係が変わりつつある。安い労働力を活用して工業
製品を安く製造するという段階は、すでに過去のものとなりつつある。欧米諸国とは異なるアジア
固有の思想や価値観を基盤とした新しい共通市場を、それぞれの国が有する知識、技術、文化、経
験を生かしながら構築する時期にきている。そのために、日本ができること、やるべきことはまだ
まだ多い。また、アジアの国々の活力を日本が利用していくことも、多くの分野で可能である。ア
ジアの隣人たちとの間において、新しい関係を創り出す時期にきている。
平成 17 年 5 月
NRI パブリックマネジメントレビュー May 2005 vol.22
社会産業コンサルティング部長
高田
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伸朗
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