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米国環境情報

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米国環境情報
情報報告
●米国環境情報
EPA(環境保護庁)、エネルギー効率に焦点を絞った温暖化ガス排出許可指針を発行
EPA は 11 月 10 日、州や地方政府の排出許可当局に向けて、大規模産業施設のエネルギー
効率を対象とした温暖化ガス排出の許可指針を発行した。最終的な利用技術はケースバイケ
ースになるため、この指針では具体的な規制方法は定めず、必要な基本的情報と許可条件の
適用例を示している。各許可当局は 2011 年 1 月に、発電所、石油精製所、セメント製造工場
など大規模排出産業と協力し、技術的な実現可能性、コスト、環境、エネルギー面を考慮し
て、温暖化ガス排出量を最小限に抑えるために利用可能な最善の制御技術(BACT)プロセス
を策定する。小規模排出源は、今回の対象に含まれない。
カリフォルニア州や東京都、気候行動連合体 R-20 を発足
カリフォルニア州や東京都が参加して、気候変動の解決策や地球規模のグリーン経済の構
築に向けて協力する、ユニークな官民連合体『R20-気候行動地域』を発足させることが、11
月 16 日にカリフォルニア州のシュワルツネッガー知事から発表された。この連合体には、地
方自治体のほか、民間企業、学界、中央政府、国際機関など約 60 の組織や個人がパートナー
として参加する。世界各地の地方政府の協力を通して、低炭素・温暖化対応型事業を開発、
実施することを使命とし、5 年以内に、最低 20 の地方政府による包括的な低炭素政策を制定
すること、
また先進的な地方の成功モデルを手本としたプロジェクトの実施を目指している。
世界初の海底地殻の調査、炭素を固定する微生物を発見
オレゴン州立大学は、最も深い海底地殻において、炭化水素と天然ガスを食べたり、炭素
を固定貯留するといった驚くべき能力を持つ様々な微生物が発見されたことを発表した。こ
れは、同大学が行った世界初の海底地殻の生物活性に関する調査で明らかになったもので、
11 月 19 日に科学雑誌『PLoS One』に発表された。海底地殻の微生物が、炭素貯留において
少なくとも遺伝的潜在能力を持つこと、深部地下環境へ大気中の炭素を送り込むことで CO2
を永久隔離できる可能性も指摘された。
カリフォルニア州、クリーンエネルギー企業へ大幅な税額控除
カリフォルニア州では、クリーンエネルギー企業の州外流出を食い止めるため、今年3月
にグリーン技術製造機器の購入に対して、消費税と使用税の税額控除を認める新しい税法
(SB71)を可決した。10 月 11 日までにこの税額控除の申請を行った 15 社のうち、12 月1日
までに 12 社が税制優遇の恩恵を認められた。この中には、ナノソーラー社、ブルームエナジ
ー社、ソリンドラ社などがあり、これらの企業が行った 7 億 8,570 万ドルの製造機器への投
資に対して、7,150 万ドルの税額控除を受けられるという。カリフォルニア州では短期的税
収は減額になるものの、環境と長期雇用の恩恵を見込んでいる。
温暖化による暴風への影響、南北半球で差
マサチューセッツ工科大学は 10 月 26 日、北半球と南半球では地球温暖化に対する反応が
異なるという研究結果を発表した。今後、南半球の暴風雨は年間を通じてより激しくなる一
方、北半球の暴風雨は季節によって異なり、冬は激しく、夏は弱まると推測される。これは、
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温暖化によって大気中の温度と湿度が増しても、どの程度の大気エネルギーが温帯低気圧の
勢力に変わるかは、南北半球と季節によって異なるためである。北半球で夏の温帯低気圧が
少なくなると、大気中に汚染物質が蓄積されやすくなり、大気汚染が高まる可能性があると
いう。
IISD、カナダにおける 2008 年の石油産業への補助金を 28 億 4,000 万ドルと推定
国際持続可能な開発研究所(IISD)は 11 月 2 日、カナダの連邦政府と 3 つの州政府が石油
生産を支援するために 2008 年に行った補助金が、合計で 28 億 4,000 万カナダドルに達する
という推計結果を発表した。この内訳は、連邦政府から 13 億 8,000 万ドル、アルバータ州が
10 億 5,000 万ドル、サスカチュワン州が 3 億 2,700 万ドル、ニューファンドランド・ラブラ
ドール州が 8,300 万ドルと推計され、合計 63 件の補助金プログラムが確認された。ほとんど
が採鉱や開発の増強を目的としており、
税の優遇措置や採掘権料の減額を組み合わせている。
カナダを含む主要 20 ヵ国・地域は、気候変動に対する取組み努力が化石燃料への補助金によ
って損なわれていることを認め、中期的な目標として補助金を段階的に廃止する方針で合意
している。
UCLA、砂粒ほどの極小リチウムイオン電池を開発
UCLA では、国防高等研究事業局(DARPA)の出資を受けて砂粒ほど小さいリチウムイオン
電池の開発を進めていることが、10 月 19 日に発表された。電極の間を電気が流れる電解質
を設計して、原子層沈着(atomic layer deposition)と呼ばれる技術でナノワイヤにコーテ
ィングする。極小サイズでありながら、通常のリチウムイオン電池と同じエネルギー密度を
持つ。リチウムイオン電池は、補聴器から電気自動車まで幅広く使われており、近い将来ミ
クロやナノサイズの機器に利用できる可能性を持つ。
ボーイング社、宇宙事業で開発した高効率の太陽光電池を地上向けに
ボーイング社の子会社スペクトラボ(Spectrolab)社は、宇宙事業で開発した極めて高効
率の太陽光電池を、地上向けに本格商業化することを目指している。通常のシリコン製の太
陽電池では、日光から電力への変換率はわずか 23%であるが、このゲルマニウムで作られた
高密度太陽電池の効率性は最高で 39.2%となる。同社は、50 年以上にわたり軌道上の人工衛
星や宇宙ステーション向けに太陽電池を供給し、
2009 年には同社初の地上向け太陽電池 C3MJ
を発表して、世界のソーターパネル企業へ 200 万台販売した。しかしゲルマニウムの難点は
1ポンド$680 と高額なことであり、一方のシリコンは$1.40 と大きな価格差がある。
ボーイング社、燃料節約情報をリアルタイムで通知するインフライト最適化サービス
ボーイング社は 10 月 26 日、航空会社に対して消費燃料の削減や環境効率化の手助けをす
る『インフライト最適化サービス(InFlight Optimization Services)
』を開始することを発
表した。このサービスは、ダイレクト・ルートとウィンド・アップデートという 2 つのサー
ビスから成る。前者は、航空機の予定航路上で燃料削減可能な単純軌道が利用可能になるた
びに、航空会社の操作センターや航空機乗務員に自動通知されるシステムである。また後者
は、各航空機用に個別仕様された風情報をリアルタイムで操縦室に送信し、燃費や航空機の
性能を向上させるものである。これらのサービスは、2011 年初めから利用開始できる。
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2010 年の新型車、CO2 排出量は減少し、燃費は向上
EPA は 11 月 17 日、2010 年の新型の自動車(乗用車、ミニバン、SUV、ピックアップトラッ
ク)を平均すると、CO2 排出量が減少して燃費が向上していることを、年次報告『自動車テク
ノロジー、CO2 排出量と燃費動向:1975-2010』において報告した。2009 年から 2010 年にか
けて、新型の自動車の CO2 平均排出量は 1 マイル当たり 397gから 395gへ減少し、燃費は
22.4mpg から 22.5mpg へ僅かに改善している。CO2 排出量と燃費は、1997~2004 年にかけて長
く悪化の傾向にあったが、2005 年から改善に転じており、2004 年比では CO2 排出量は 1 マイ
ル当たり 64g(14%)減少し、燃費は 3.1mpg(16%)向上した。
大手小売業者メイエル(Meijer)社、店舗に電気自動車の充電ステーションを設置
ミシガン州に本社を持つ大手小売業者のメイエル(Meijer)社は 11 月 4 日、同州内デトロ
イトなどの数店舗に、電気自動車の充電ステーションを設置する計画を発表した。メイエル
社は、同州ウォレンの店舗に最初の充電ステーションを開設しており、今後、州内各地に拡
大していく予定である。各店舗とも 2 つの充電ステーションを備え、顧客は無料で利用でき
る。このプラグイン充電ステーションは、クーロン・テクノロジーズ(Coulomb Technologies)
社が製造し、120V と 240V と選択できる。
DOE(エネルギー省)、車椅子アクセス可能な天然ガス自動車の開発に 5,000 万ドルの融資保証
DOE は 11 月 22 日、ビークル・プロダクション・グループ(Vehicle Production Group)
社に 5,000 万ドルの条件付融資保証を行うことを発表した。この融資保証は、圧縮天然ガス
で走る車椅子アクセス可能な 6 人乗り自動車 MV-1の開発と量産を支援するものであり、事
業が本格化すれば最大で年間 22,650 台が製造され、900 人以上の新規雇用が創出されるとい
う。天然ガス専用車 MV-1は、米国障害者法(Americans with Disabilities Act)の指針に
準拠した唯一の軽量車両で、車椅子のための折り畳み式スロープと、36 インチ(90cm)とい
う広い乗降口を備えている。エネルギー省はこのプロジェクトにより、代替燃料の利用促進
と米国自動車産業の競争力維持を目指している。
EPA、2011 年の再生可能燃料基準を発表
EPA は 11 月 29 日、再生可能燃料基準プログラム RFS2 のもとで、ガソリンやディーゼルな
ど輸送燃料全体に対して占めるべく義務付けられた、バイオ燃料 4 領域の基準量と基準割合
を最終決定した。再生可能燃料基準は、2022 年の目標値 360 億ガロンに達するように毎年設
定される。2011 年のセルロース系バイオ燃料は、市場利用可能性の予想分析から、法定目標
よりも低い 660 万ガロン(0.003%)となったが、EPA によると商業的利用可能性は引き続き
成長しているため大きな懸念はないという。また、バイオマスディーゼルは 8 億ガロン
(0.69%)
、先端バイオ燃料は 13 億 5,000 万ガロン(0.78%)
、および再生可能燃料は 139
億 5,000 万ガロン(8.01%)と設定された。
透明薄膜で窓を太陽電池に変える可能性
DOE の国立ブルックヘブン研究所と国立ロス・アラモス研究所は、光を吸収して電気を発生す
る透明な薄膜を開発したことを、11 月 4 日に科学雑誌『素材科学(Chemistry of Materials)
』
で発表した。この素材は、炭素を多く含むフラーレンを添加した半導体ポリマーからできてお
り、注意深く管理した状況のもとで超微小の六角形パターンを比較的大きな範囲で形成する。
こういった蜂の巣型の薄膜は、これまでポリスチレンのようなポリマーから作られていたが、
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今回初めて半導体とフラーレンを混合した素材で透明な薄膜を作ることに成功した。同素材は、
透明なソーラーパネルとして開発したり、ごく一般的な窓を太陽電池に変える可能性を持って
いる。
DOE、『住宅エネルギー採点』プログラムを開始
DOE は 11 月 9 日、住宅のエネルギー効率を評価する『住宅エネルギー採点』プログラムと、
『住宅エネルギー改善のための施工者指針』を発表した。
『住宅エネルギー採点』プログラム
は、住宅の省エネ化に投資しようとする住宅所有者に対して、冷暖房システムなどのエネル
ギー設備と断熱性の観点から住宅のエネルギー効率を 10 段階で評価して、
費用効果の高い改
善方法を具体的に提示する。各改善項目ごとに、光熱費の節約分や、改修費の回収期間、温
暖化ガス削減量が示される。2011 年春まで全米 10 地域で試験的に実施され、来年後半に全
国へ拡大する予定である。
『住宅エネルギー改善のための施工者指針』は、省エネ改修に携わ
る労働者の育成と工事の質向上を目指すもので、優れた改修工事に必要な標準作業仕様、技
術標準、作業分析、必須知識や技能が盛り込まれている。
太陽熱を遮断するフィルムや、透明度を自動調節するガラスの開発
カーテンやブラインドを使わなくても太陽光を遮断でき、外の景色を見渡せるとともに外
観も損なわない技術が開発されている。ソーラー・ガード(Solar Gard)社が開発した窓用
透明フィルムは、既存の窓に装着することで室内の温度を維持し、冷房費を 30%節約できる。
セージ・エレクトロクロミクス(SAGE Electrochromics)社が開発したセージガラスは、低
圧電流が日光に反応し、晴れの日は暗く曇って太陽光を遮断し、雨や曇天では透明になる。
セージ社は、フランスの大手建築資材メーカーのサン・ゴバン(Saint- Gobain)社と共同で、
大規模な商業化に乗り出すことを 11 月に発表した。
加ウォルマート社、初の持続可能流通センターを開設
ウォルマート・カナダ社は 11 月 10 日、同社初の持続可能な生鮮食品流通センターを開設
したことを発表した。
施設内の資材運搬車 71 台には従来の鉛蓄電池の代わりに水素燃料電池
を使用したほか、太陽熱や風力による発電施設を併設し、全ての照明に省エネ型の LED 電球
を採用した。この最先端施設は、同社の通常の冷蔵センターより 60%もエネルギー効率が高
く、5 年間で電気料金を約 480 万ドル節約できるという。北米最高の省エネ流通センターの
1つであり、カナダ西部の 104 店舗のハブとなる。
電化製品のオンライン小売業者、エネルギーガイド掲示違反で罰金
連邦取引委員会(FTC)は 11 月 1 日、電化製品のオンライン小売業者 3 社が、エネルギー
ガイド(EnergyGuide)情報を掲示しなかった罰として合計 40 万ドルの支払いに同意したこ
とを発表した。同委員会は、このほか 2 社に 64 万ドルの罰金を求めている。電化製品表示規
則(Appliance Labeling Rule)によって、冷蔵庫、冷凍庫、食器洗浄器、エアコン、温水器、
洗濯機の販売業者は、年間運転推定コストを含む黄色いエネルギーガイドを掲示することを
義務付けられている。今回の事例は、同委員会がオンライン業者の電化製品表示規則違反に
対して、罰金の支払いを求めた初めてのケースである。
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EPA、全国で初めて住宅に『ウォーターセンス』を認定
EPA は 11 月 23 日、節水性と省エネ性に優れた製品を認定する『ウォーターセンス』を、
全国で初めて住宅に認めたことを発表した。新築住宅の場合、標準的な新築住宅に比べて水
消費量を 20%節約できるなど、水とエネルギーの節約に関する EPA の基準を充たしているこ
とを、第三者機関が検査して認証する。今回認定を受けた 4 件の住宅は、住宅建設会社とし
て初めてパートナーとなった KB ホーム社が建設したもので、
ウォーターセンス認定の配管設
備や効率的な給湯システム、節水に配慮した庭園設計などにより、平均で年間 1 万ガロンの
水と公共料金 100 ドル以上を節約できるという。
EPA、トクスキャスト(ToxCast)で化学物質 1,000 種のスクリーニング
EPA は 11 月 30 日、画期的な化学物質スクリーニング法『トクスキャスト(ToxCast)
』試
験プログラムによって、化学物質 1,000 種の人間と環境への潜在的害性スクリーングを行っ
ていることを発表した。分子生物学、化学、コンピューター科学の革新的進歩を統合したト
クスキャストが完全に実施されれば、動物を使って甚大な時間と費用がかかる毒性試験への
依存を減らし、迅速で費用効率の高いスクリーニングを利用して、潜在的な健康リスクを予
測し識別することができる。
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