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有機EL表示装置の駆動技術
平成21年度 特許出願技術動向調査報告書 有機 EL 表示装置の駆動技術 (要約版) <目次> 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 第6部 有機 EL 表示装置の駆動技術の俯瞰..................... 1 特許動向分析........................................ 4 研究開発動向分析....................................28 政策動向分析........................................33 市場環境動向分析....................................35 提言................................................36 平成22年4月 特 許 庁 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155) 第1部 有機EL表示装置の駆動技術の俯瞰 第1章 有機EL表示装置の駆動技術の概要 有機 EL 表示装置は、高精細、高応答速度、高コントラスト、広視野角、薄型といった表示 装置に期待される要素を備えており、液晶、プラズマパネル表示装置に続く次世代の表示装 置として注目されている。 1987 年に米 Eastman Kodak が有機 EL 表示装置を発表して以来多くのメーカーによって開 発がなされてきた。1997 年にパイオニアから有機 EL 表示装置を用いた初の商品である車載 用表示装置が発表され、その後、携帯電話、携帯端末、デジタルカメラなどでも有機 EL 表示 装置を用いた商品は発売された。2007 年にはソニーから 11V 型の有機 EL テレビが発売され、 各分野で商品化が進んでいる。 有機 EL 表示装置は有機材料に電流を流すと発光するエレクトロルミネッセンス(EL: Electro-Luminescence)を利用した発光素子を、ガラス板などの基板にマトリクス状に配置し、 格子状に配置した電極によって発光素子を制御することによって画像を得ている。 有機 EL 表示装置を応用した産業には携帯機器(携帯電話、携帯端末、PDA)、カメラ・ビ デオカメラ、テレビ・コンピュータ、車載用、さらに、新しい用途としてフォトフレームが ある。 有機EL表示装置の技術要素・応用産業俯瞰図を図 1-1-1に示す。 図 1-1-1 有機 EL 表示装置の技術要素・応用産業俯瞰図 応用 用産 産業 業 応 携帯機器 携帯機器 ・携帯電話 ・携帯電話 ・携帯端末 ・携帯端末 ・PDA ・PDA ・・・・・・ ・・・・・・ カメラ・ カメラ・ ビデオカメラ ビデオカメラ ・ヴュー・ファインダー ・ヴュー・ファインダー ・・・・・・ ・・・・・・ テレビ・ テレビ・ コンピュータ コンピュータ ・テレビジョン ・テレビジョン ・PCモニター ・PCモニター ・・・・・・ ・・・・・・ 車載用 車載用 フォトフレーム フォトフレーム ・表示ディスプレイ ・表示ディスプレイ ・・・・・・ ・・・・・・ ・フォトフレーム ・フォトフレーム ・・・・・・ ・・・・・・ 機能 調査 査対 対象 象 調 画素回路 画素回路 制御 制御 (輝度、階調、タイミングなど) (輝度、階調、タイミングなど) ドライバ・周辺回路 ドライバ・周辺回路 映像信号・ 映像信号・ データ処理 データ処理 技術 術要 要素 素 技 課題 画質改善 画質改善 ・画像の再現性 ・画像の再現性 ・表現力の向上 ・表現力の向上 ・動画質向上 ・動画質向上 ・高速化 ・高速化 素子特性の 素子特性の バラツキへの対応 バラツキへの対応 長寿命化・素子 長寿命化・素子 劣化への対応 劣化への対応 ・発光素子の ・発光素子の バラツキへの対応 バラツキへの対応 ・画素回路素子の ・画素回路素子の バラツキへの対応 バラツキへの対応 ・ドライバ素子の ・ドライバ素子の バラツキへの対応 バラツキへの対応 ・素子劣化への対応 ・素子劣化への対応 ・劣化防止 ・劣化防止 - 1 - 低消費電力化 低消費電力化 ・画素回路部の ・画素回路部の 低消費電力化 低消費電力化 ・ドライバ等周辺駆動 ・ドライバ等周辺駆動 部の低消費電力化 部の低消費電力化 ・その他のシステム ・その他のシステム の低消費電力化 の低消費電力化 有機EL表示装置の駆動技術は「画素回路」「ドライバ・周辺回路」「制御」「映像信号・デ ータ処理」に大別される。有機EL表示装置の駆動技術・技術俯瞰図を図 1-1-2に示す。 図 1-1-2 有機 EL 表示装置の駆動技術・技術俯瞰図 陰極 有機EL膜 電子輸送層 発光層 正孔輸送層 陽極 画素回路 画素回路 映像信号・データ 映像信号・データ処理 映像信号・データ処理 TFT基板 ドライバ・周辺回路 ドライバ・周辺回路 制御(諧調、輝度、タイミング) 制御(諧調、輝度、タイミング) 1. 画素回路 画素回路は発光素子ごとに設けられた回路でありスイッチ素子、駆動素子、コンデンサな どから構成される。駆動方式により各種回路が提案されている。スイッチ素子、駆動素子と して TFT(Thin Film Transistor)が使われており、TFT を構成する材料にはポリシリコン、ア モルファスシリコン、酸化物半導体、微結晶シリコン、有機半導体などが使われている。 2. ドライバ・周辺回路 ドライバは信号ドライバと走査ドライバより構成される。信号ドライバはデータドライバ、 ソースドライバと呼ばれることもあり画素に表示データを送る。走査ドライバはゲートドラ イバ、スキャンドライバとも呼ばれ走査線を選択する。また、周辺回路には表示のタイミン グを制御するコントローラや画素に電流を供給する電圧源、電流源が含まれる。ドライバや 周辺回路はパネルに内蔵・一体化されて形成される場合もある。 3. 制御 表示装置の動作を電気信号などにより制御する技術である。発光素子を制御する電気信号 には複数の変調方式が提案されている。代表的な変調方式として「振幅変調」 「パルス幅変調」 「時分割変調」「面積変調」がある。 4. 映像信号・データ処理 - 2 - 表示装置に入力された映像信号に対して信号補正・画像処理を行う技術である。信号補正 には画像の色のデータと、それが実際に表示装置から出力される際の信号の相対関係を調節 して、より自然に近い表示を得るためのガンマ補正などがある。 また、有機 EL 表示装置の駆動方法はパッシブマトリクス型の駆動方法とアクティブマトリ クス型の駆動方法の 2 つに分けられる。 パッシブマトリクス駆動は単純マトリクス駆動とも呼ばれ、走査線とデータ線の交点に走 査線とデータ線をつなぐように有機 EL 素子が接続され、構造が単純である特徴をもつ。一方、 アクティブマトリクス駆動は画素ごとにスイッチ素子、駆動素子、コンデンサなどを含んだ 画素回路を内蔵しており、画素回路として各種方式が提案されている。 パッシブマトリクス型は構造が単純で低コストであるが大型化・高精細化が難しく、現在 主に携帯電話や携帯端末(音楽プレーヤー)などの小型表示装置に使われている。一方、ア クティブマトリクス型は画素ごとに画素回路を配置するため構造が複雑になるが大型化・高 精細化が可能であり、テレビなどの中大型表示装置に適している。 第2章 有機EL表示装置の市場の概要 現在、有機 EL 表示装置の市場は携帯電話向けが中心であり、MP3 プレーヤーなどの携帯オ ーディオ機器用の割合が次いで多い。今後もモバイル用途向けの小型パネルが中心となり拡 大していくと予測されるが、テレビ用途向けが徐々に拡大していくものと思われる。2006 年 以前はパッシブマトリクス型の駆動方式で市場を占めていたが、今後はアクティブマトリク ス型の比率が拡大していくと予想される。 有機 EL 表示装置の主な用途は「テレビ」「コンピュータ」「カメラ、ビデオカメラ」「携帯 電話、携帯端末、PDA 等」「車載用」「フォトフレーム」である。 テレビでは 2008 年まではソニーが 11 型の有機 EL テレビを発売しているのみであったが、 2009 年 12 月に LG ディスプレイが開発したパネルを使用した 15 型のテレビが LG エレクトロ ニクスより発売された。さらに LG ディスプレイ、CMEL の 2 社は 2010~11 年にかけて 20 型 以上の大型テレビ用パネルを開発予定としている。 携帯電話、携帯端末、PDA 等の携帯機器は現在有機 EL 表示装置の主要マーケットである。 サブ表示装置が主流であったが、メイン表示装置への採用も進んでいる。携帯電話市場は年 間 10 億台規模であり、非常に数量が大きいが競争が厳しくパネル単価が小さいのが特徴であ る。 さらに今後は、薄くて曲げられるという有機 EL 表示装置の特性を生かしたフレキシブルデ ィスプレイを用いた広告や電子ブックといった製品の市場が立ちあがることが期待されてい る。 - 3 - 第2部 特許動向分析 第1章 概要 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する公開特許および登録特許を検索し、技術分類を行うこ とにより、特許出願からみた技術動向を調査した。調査対象とした特許出願件数は日本への 出願 5,089 件、米国への出願 2,322 件、欧州への出願 1,166 件、中国への出願 1,098 件、 韓国への出願 1,373 件、台湾への登録 342 件である。 出願人国籍別出願件数は、日米欧中韓への出願の内、日本国籍出願人が 61.6%と 6 割以上 を占めており、有機 EL 表示装置の駆動技術において日本国籍出願人は技術的に優位にあると 考えられる。日本国籍に続いて韓国籍が 18.2%、欧州国籍が 8.6%となっている。2004 年以降 韓国籍の出願が多くなっている。 第2章 調査方法と対象とした特許 今回の特許調査では PCT(特許協力条約)に基づく国際出願および日本、米国、欧州、中 国、韓国への特許出願、登録特許について調査した。また、台湾への特許登録も調査してい る。欧州については、欧州特許庁(EPO)への特許出願、登録特許だけでなく、EPC(欧州特許条 約)加盟国(2009 年 7 月 1 日現在)各国への特許出願、登録特許も対象としている。 特許検索は、日本への出願では PATOLIS(株式会社パトリスの登録商標)、外国への出願で は Derwent World Patents Index(WPINDEX(STN)、以下 WPI とする)を用いた。時期的範囲 としては、優先権主張年ベースで 1978 年 1 月 1 日から 2007 年 12 月 31 日とした。なお、デ ータベース収録までの時間差により全データが収録されている年が各国で異なっており、特 に 2006 年以降は全データが取得されていない場合があることを念頭においておく必要があ る。さらに PCT 出願では国内移行までの時間が長く、公表公報発行時期が国内出願の公開(1 年 6 ヵ月)より遅くなる事情もある。 第3章 全体動向分析 1. 出願動向 1978 年から 2007 年までにおける、日本、米国、欧州、中国及び韓国への出願人国籍別出 願件数推移と出願人国籍の割合を図 2-3-1に示す。1997 年から 2003 年にかけて出願件数は 増え、2004 年以降は減少の傾向にある。日本国籍の出願が 61.6%と多く、韓国籍、欧州国籍 の出願が続いている。 - 4 - 図 2-3-1 出願人国籍別出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願:公報単位でカ 台湾籍 441 4.0% ウント) 韓国籍 2014 18.2% 2,000 優先権主張年 1978-2007年 1,800 1,696 1,742 1,600 1,410 中国籍 56 0.5% 欧州国籍 951 8.6% 1,500 1,400 1,182 出 1,200 願 1,000 件 数 800 1,223 901 696 600 0 2 4 1980 1981 1982 1983 3 8 8 6 6 3 1987 1988 3 0 1984 1985 1986 0 1978 1979 200 4 7 4 10 17 20 31 143 100 日本国籍 6811 61.6% 2006 2007 2003 2004 2005 2002 2000 2001 1999 1998 1995 1996 1997 1992 1993 1994 1991 0 1989 1990 合計 11,048件 米国籍 640 5.8% 319 400 その他 135 1.2% 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 注) 2006 年 以降 の デー タ は、 PCT 合計 出願の国内移行によるタイムラグ 2,000 1,800 優先権主張年 2000-2007年 1,742 や、データベースへの文献情報の収 1,696 1,600 録の遅れ等の理由により、全データ 1,500 1,410 1,400 1,223 1,182 1,200 出 願 1,000 件 数 800 を反映していない可能性があるの 901 696 で、注意が必要である。 以降の出願件 数に関するデ ータ 600 についても、同様に注意する必要が 400 200 ある。 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 2. 登録動向 1978 年から 2007 年までにおける、日本、米国、欧州、中国、韓国及び台湾への出願人国 籍別登録件数推移と出願人国籍の割合を図 2-3-2に示す。1997 年から登録件数は増え、2003 年以降は減少の傾向にある。日本国籍の登録が 60.1%と多く、韓国籍の登録が続いている。 日本国籍の登録は 2003 年以降減少の傾向にある。韓国籍の登録件数は 2004 年から 2006 年にかけて 100 件から 200 件程度となり、日本国籍の登録件数を上回っている。 - 5 - 図 2-3-2 出願人国籍別登録件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓台への登録:公報単位で カウント) 700 台湾籍 201 5.7% 優先権主張年 1978-2007年 601 600 625 592 500 371 中国籍 16 0.5% 284 192 200 146 6 0 3 3 1988 1989 1990 1991 0 7 8 1994 1 1993 4 1992 2 1987 1983 2 1986 3 1985 1 1984 0 1982 1979 3 1981 0 1980 0 1978 100 8 21 欧州国籍 234 6.6% 米国籍 204 5.8% 76 51 63 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 0 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 合計 3,535件 韓国籍 724 20.5% 462 登 400 録 件 数 300 その他 30 0.8% その他 日本国籍 2126 60.1% 合計 700 601 625 優先権主張年 2000-2007年 592 600 注)近年の登録件数のデータを解 500 登 400 録 件 数 300 462 釈するうえでは、調査時点におけ 371 る審査請求前や審査中の出願の 284 存在に、留意する必要がある。 192 200 76 100 0 2000 日本国籍 2001 2002 2003 2004 2005 2006 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 - 6 - 2007 合計 3. 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支 日本、米国、欧州、中国及び韓国における出願先国別-出願人国籍別出願件数収支を 図 2-3-3に示す。出願件数収支については、日本からの出願は米欧中韓全ての国・地域に対し て、日本への出願よりも多い。また、韓国から米欧中への出願は、米欧中から韓国への出願 よりも多い。 図 2-3-3 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願) 台湾籍 139 2.7% 韓国籍 451 中国籍 8.9% 6 0.1% 欧州国籍 201 3.9% その他 31 0.6% 日本への 出願合計 5,089件 米国籍 158 158 3.1% 台湾籍 202 米国への 8.7% その他 38 1.6% 201 日本国籍 4103 80.6% 1062 6 451 日本国籍 1062 45.7% 出願合計 2,322件 韓国籍 483 20.8% 589 韓国籍 148 12.7% 中国籍 14 0.6% 米国籍 79 6.8% 483 6 148 14 585 70 台湾籍 25 1.8% 韓国籍 219 19.9% その他 14 1.0% 日本国籍 472 34.4% 35 136 1 中国籍 29 2.6% 欧州国籍 136 12.4% 113 472 その他 20 1.8% 台湾籍 39 3.6% 日本国籍 585 53.3% 米国籍 70 6.4% 韓国籍 713 51.9% 219 韓国への 出願合計 1,373件 中国への 出願合計 1,098件 - 7 - 欧州への 出願合計 1,166件 日本国籍 589 50.5% 欧州国籍 276 23.7% 79 米国籍 298 12.8% その他 32 2.7% 中国籍 6 0.5% 225 欧州国籍 225 9.7% 台湾籍 36 3.1% 中国籍 1 0.1% 米国籍 35 2.5% 欧州国籍 113 8.2% 第4章 技術区分別動向分析 1. 技術区分:表示パネル種別 表示パネル種別の分類付与件数の割合を図 2-4-1に示す。パッシブマトリクス型が 13.3%、 アクティブマトリクス型が 84.1%であり、大半をアクティブマトリクス型が占める。 図 2-4-1 表示パネル種別の分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) 注)複数分類付与の公報有 その他 270 2.6% パッシブマトリ クス型 1382 13.3% アクティブマト リクス型 8721 84.1% 2. 技術区分:表示パネル材料 表示パネル材料別の分類付与件数の割合を図 2-4-2に示す。ポリシリコンが 25.6%、アモ ルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFTが 21.1%、有機TFTが 1.6%と続く。また、ポ リシリコンとアモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFTのそれぞれにおける出願件 数推移と出願人国籍の割合を図 2-4-3、図 2-4-4に示す。アモルファスシリコン、微結晶シ リコン、酸化物TFTでは日本国籍出願人の割合が 63.0%とポリシリコンの 72.1%より低い。ま た、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFTでは欧州国籍出願人の割合が 12.3% と比較的高い。有機TFTに関する出願は減少傾向にある。 (注)適用可能と記載のあった公報も含むため必ずしもその材料専用の制御技術ではないこと に注意する必要がある。 図 2-4-2 材料別の分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) 注)複数分類付与の公報有 ポリシリコン 3344 25.6% 用途の記載 なし 6697 51.2% その他 80 0.6% 有機TFT 205 1.6% - 8 - アモルファ スシリコン、 微結晶シリ コン、酸化 物TFT 2755 21.1% 図 2-4-3 ポリシリコンにおける出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願) 600 559 482 500 400 出 願 件 300 数 317 306 242 200 100 0 2001 2002 2003 2004 2005 その他 69 2.1% 合計 3,344件 中国籍 15 0.4% 380 361 2000 韓国籍 329 9.8% 優先権主張年 2000-2007年 500 台湾籍 127 3.8% 2006 2007 欧州国籍 231 6.9% 日本国籍 2410 72.1% 米国籍 163 4.9% 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 図 2-4-4 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物 TFT における出願件数推移と出願人 国籍の割合(日米欧中韓への出願) 500 442 450 韓国籍 312 11.3% 優先権主張年 2000-2007年 435 408 400 350 320 299 300 出 願 件 250 数 200 234 220 147 100 その他 79 2.9% 合計 2,755件 中国籍 9 0.3% 欧州国籍 340 12.3% 150 台湾籍 77 2.8% 日本国籍 1737 63.0% 50 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 米国籍 201 7.3% 「アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFT」をさらに材料ごとに細分類を行っ た結果を図 2-4-5に示す。ただし、細分類は各材料を表すキーワードが特許明細中に含まれ るかによって行っている。材料として従来から候補であったアモルファスシリコン以外に微 結晶、酸化物半導体といった次世代の材料候補の出願件数が増加傾向にある。 - 9 - 図 2-4-5 アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物 TFT における特許出願件数推移の細 分類結果 (a)アモルファスシリコン 500 優先権主張年 2000-2007 450 450 (c)酸化物 TFT 優先権主張年 2000-2007 79 80 400 375 364 350 300 出 願 250 件 数 200 (b)微結晶シリコン 90 319 47 出 50 願 件 数 40 216 出 願 件 15 数 27 30 150 優先権主張年 2000-2007 23 20 60 222 215 192 28 25 67 70 30 26 9 10 25 7 19 6 20 100 5 10 50 0 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 その他 合計 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 2000 2007 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 台湾籍 0 0 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 2 1 2 台湾籍 その他 合計 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 3. 技術区分:課題 課題別の分類付与件数の割合を図 2-4-6に示す。画質改善が 29.1%と最も多く、長寿命化・ 素子劣化への対応が 11.7%、低消費電力化が 11.6%、素子特性のバラツキへの対応が 11.2%と 続く。画質改善が中心的な課題となっている。 図 2-4-6 課題別の分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) その他 6210 23.1% 注)複数分類付与の公報有 画質改善 7830 29.1% 付加機能・ 応用 835 3.1% 高速化 2697 10.0% 素子特性の バラツキへ の対応 3019 長寿命化・ 11.2% 素子劣化へ の対応 3152 11.7% 低消費電力 化 3119 11.6% 画質改善技術別における分類付与件数の割合を図 2-4-7に示す。画像の再現性・表現力向 上の割合が 38.5%、輝度・色の一様性の割合が 31.1%であり、2 つの課題で約 7 割を占める。 画質改善においては画像の再現性・表現力向上および輝度・色の一様性が中心的な課題とな っている。図 2-4-8には動画質向上の出願件数推移と出願人国籍の割合を示した。日本国籍 の出願人が占める割合が 86.9%と高い。 図 2-4-7 画質改善技術別における分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) 動画質向上 1133 9.3% その他 724 6.0% 注)複数分類付与の公報有 画像の再現 性・表現力 向上 4681 38.5% 安定化 1836 15.1% 輝度・色の 一様性 3782 31.1% - 10 - 図 2-4-8 動画質向上の出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願) 300 276 優先権主張年 2000-2007年 248 欧州国籍 55 4.9% 250 200 出 願 150 件 数 105 韓国籍 63 5.6% 台湾籍 2 0.2% その他 48 1.5% 合計 1,133件 米国籍 28 2.5% 126 106 中国籍 0 0.0% 109 100 72 76 2006 2007 50 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 日本国籍 985 86.9% 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 全特許出願に占める低消費電力化に関連する出願件数の割合を図 2-4-9に示す。低消費電 力化に関連する出願件数の割合は 28.2%と高い。また、低消費電力化技術別における分類付 与件数の割合を 図 2-4-10に、低消費電力における出願件数推移と出願人国籍の割合を 図 2-4-11に示す。画素回路単体での低消費電力化が 23.2%、ドライバにおける低消費電力化が 50.8%、システム全体としての低消費電力化が 26.0%と各技術分野から低消費電力化が進めら れていることがうかがえる。出願件数推移を国籍別にみると日本国籍の出願件数が減少傾向 である。一方、韓国は 2004 年以降一定水準を維持している。 図 2-4-9 全特許出願に占める低消費電力化に関連する出願件数の割合(日米欧中韓への出願) 課題として 低消費電 力化に付 与あり 3119 28.2% 合計 11,048件 図 2-4-10 低消費電力化技術別における分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) 画素回路単体 での低消費電 力化 725 23.2% システム全体 としての低消 費電力化 811 26.0% ドライバにおけ る低消費電力 化 1586 50.8% - 11 - 注)複数分類付与の公報有 図 2-4-11 600 低消費電力における出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願) 549 優先権主張年 2000-2007年 509 中国籍 2 0.1% 500 395 370 400 出 願 件 300 数 韓国籍 355 11.4% 355 台湾籍 74 2.4% その他 12 0.4% 合計 3,119件 325 259 197 欧州国籍 239 7.7% 200 米国籍 141 4.5% 100 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 日本国籍 2296 73.6% 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 産業競争力確保のための重要な要素の 1 つである低コスト化における出願では、日本国籍 出願人の割合が 74.6%と高い(図 2-4-12)。同様に、低コスト化につながる回路規模の低減、 簡略化における出願においても日本国籍出願人の割合が 79.6%と高い(図 2-4-13)。 図 2-4-12 低コスト化における出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願) 400 韓国籍 236 11.4% 優先権主張年 2000-2007年 357 350 300 274 272 246 250 出 願 件 200 数 230 223 196 169 150 100 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 - 12 - その他 19 0.9% 合計 2,075件 中国籍 11 0.5% 欧州国籍 74 3.6% 米国籍 121 5.8% 50 台湾籍 67 3.2% 日本国籍 1547 74.6% 図 2-4-13 回路規模の低減、簡略化における出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓へ の出願) 350 優先権主張年 2000-2007年 305 300 中国籍 3 0.2% 280 237 250 184 出 200 願 件 数 150 183 162 158 114 韓国籍 206 11.9% 台湾籍 25 1.4% その他 2 0.1% 合計 3,171件 欧州国籍 52 3.0% 米国籍 66 3.8% 100 50 日本国籍 1384 79.6% 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 日本国籍と韓国籍出願人の課題別の出願件数の伸びを比較すると日本国籍出願人は画素回 路ばらつき、回路特性向上、低コスト化に関する出願件数の伸びが高く(図 2-4-14)、韓国 籍出願人は低消費電力化、安定化、劣化対応の出願件数の割合が高くなっている(図 2-4-15)。 図 2-4-14 日本国籍出願人の主な課題の付与件数推移(2004 年を 100 とした) 2004年の出願件数を100とした出願件数 200 表現力向上 均一性 安定化 画素回路ばらつき 劣化防止 低消費電力 寄生容量 回路の高速化 回路特性向上 大型化 低コスト化 全体 劣化対応 150 100 50 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 優先権主張年 - 13 - 2005 2006 2007 2008 図 2-4-15 韓国籍出願人の主な課題の付与件数推移(2004 年を 100 とした) 160 2004年の出願件数を100とした出願件数 140 120 表現力向上 均一性 安定化 画素回路ばらつき 劣化防止 低消費電力 寄生容量 回路の高速化 回路特性向上 大型化 低コスト化 全体 劣化対応 100 80 60 40 20 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 優先権主張年 2005 2006 2007 2008 大型化を課題とする特許出願件数の日韓比較の図を図 2-4-16に示す。日本の出願件数が 減っており、2007 年に韓国に逆転されている。 図 2-4-16 大型化を課題とする特許出願件数の日韓比較 180 優先権主張年 2000-2007年 160 140 120 出 100 願 件 数 80 60 40 20 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 韓国籍 - 14 - 2007 技術区分:解決手段 解決手段別の分類付与件数の割合を図 2-4-17に示す。ドライバ回路、周辺回路が 29.6% と最も多く、画素回路 21.7%、階調制御、輝度制御 19.5%が続く。 図 2-4-17 解決手段別の分類付与件数の割合(日米欧中韓への出願) 映像信号・ データ処理 2845 表示態様の 10.1% 制御 593 2.1% 注)複数分類付与の公報有 その他 237 0.8% 画素回路 6138 21.7% 制御一般、 タイミング 制御、駆動 波形 4562 16.1% ドライバ回 路、周辺回 路 8379 29.6% 階調制御・ 輝度制御 5506 19.5% 駆動回路における駆動トランジスタ特性補償の閾値補償と移動度補償の分類付与件数の 割合を図 2-4-18に示す。閾値補償が 77.7%と移動度補償の 22.3%に比べ多い。 図 2-4-18 駆動回路における駆動トランジスタ特性補償の閾値補償と移動度補償の分類付与件 数の割合(日米欧中韓への出願) 注)複数分類付与の公報有 移動度補償 560 22.3% 閾値補償 1953 77.7% 閾値補償における出願件数推移と出願人国籍の割合を図 2-4-19に示す。日本国籍の出願 人により多数の特許が継続して出願されている。 - 15 - 図 2-4-19 閾値補償における出願件数推移と出願人国籍の割合(日米欧中韓への出願) 台湾籍 67 3.4% 400 340 350 優先権主張年 2000-2007年 338 323 297 250 出 願 件 200 数 韓国籍 475 24.3% 284 300 その他 8 0.4% 中国籍 6 0.3% 168 150 108 日本国籍 1084 55.5% 100 欧州国籍 228 11.7% 47 50 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 米国籍 85 4.4% 2007 出願人国籍 出願年(優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 台湾籍 その他 合計 1,953件 合計 4. 技術区分別動向 出願人国籍別の技術区分ごとの出願件数(バブル図)を図 2-4-20に示す。横軸は出願人 国籍、縦軸は技術区分である。日本籍、韓国籍が各技術区分で出願件数の比率が高く、米国 籍、欧州籍がその後に続く。日本籍出願人は他国籍出願人に比べて低消費電力化に関する出 願の割合が高く、韓国籍出願人は他国籍出願人に比べてアクティブマトリクス型に関する出 願の割合が高い。 図 2-4-20 パネル種別 課題 出願人国籍別の技術区分ごとの出願件数(日米欧中韓への出願) パッシブ・ マトリクス アクティブ・ マトリクス 167 2 186 59 11 5375 506 695 51 1672 327 95 画質改善 5159 449 606 25 1271 211 109 素子特性のバラツ キへの対応 2183 112 163 8 450 92 長寿命化・素子劣 化への対応 2046 217 322 2 410 87 68 2296 141 239 2 355 74 12 2020 100 135 27 317 56 42 593 34 53 2 低消費電力化 付加機能・応用 高速化 125 11 28 4129 363 386 17 1050 210 55 3853 271 504 29 1188 234 59 ドライバ回路、周 辺回路 5393 442 607 24 1510 305 98 階調制御・輝度制御 3576 285 654 30 689 186 86 制御一般、タイミング 制御、駆動波形 2866 208 493 41 743 148 63 表示態様の制御 436 その他 画素回路 解決手段 96 861 映像信号・データ処理 その他 36 17 419 267 1621 173 日本籍 10 米国籍 82 5 37 欧州籍 - 16 - 88 416 11 中国籍 21 韓国籍 29 6 台湾籍 その他 第5章 出願人別動向分析 1. 日米欧中韓への出願及び出願先国別の出願動向(出願件数ランキング) 日米欧中韓への出願人別全体の出願件数ランキングを表 2-5-1に示す。セイコーエプソン (日)、半導体エネルギー研究所(日)、ソニー(日)の出願件数が他社に比べ多い結果とな っている。また 30 位までの出願人中 19 の出願人が日本国籍である。 表 2-5-1 出願人別全体の出願件数ランキング(日米欧中韓への出願) 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 出願人 セイコーエプソン(日) 半導体エネルギー研究所(日) ソニー(日) フィリップス(欧) 三星モバイルディスプレイ(韓) 三星SDI(韓) LGディスプレイ(韓) 三洋電機(日) 東芝モバイルディスプレイ(日) パナソニック(日) コダック(米) シャープ(日) 三星電子(韓) 東北パイオニア(日) キヤノン(日) パイオニア(日) LGエレクトロニクス(韓) ローム(日) トムソンライセンシング(欧) カシオ計算機(日) 三菱電機(日) TDK(日) 日本電気(日) 友達光電(台) 日立製作所(日) ケンブリッジディスプレイテクノロジー(欧) 京セラ(日) 日立ディスプレイズ(日) 富士電機ホールディングス(日) 統宝光電(台) 件数 1083 1045 914 511 471 454 445 358 329 313 281 251 250 249 236 174 151 147 136 134 120 112 112 109 101 99 98 96 93 84 (注) 三星、LG は各社が企業として独立してい るとみなし、各社に分けて集計した。企業名の表記 は、基本的には現社名を用いている。 - 17 - (1)出願人上位ランキング(国内)の年推移 出願人上位ランキング(国内)の年推移を図 2-5-1に示す。半導体エネルギー研究所は 2001 年に出願件数のピークがあり、セイコーエプソンは 2002 年に出願件数のピークがある。一方、 ソニーは 2005 年以降出願件数が急増している。 図 2-5-1 出願人上位ランキング(国内)の年推移 300 250 200 出 願 150 件 数 100 50 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出願年(優先権主張年) セイコーエプソン 半導体エネルギー研究所 ソニー (2)出願人上位ランキング(海外)の年推移 出願人上位ランキング(海外)の年推移を図 2-5-2に示す。フィリップスは 2006 年以降の 出願件数がゼロとなり、有機EL表示装置の研究開発に重点を置かなくなったことが示唆され る。韓国企業(三星、LG)は 2003 年以降出願件数の増減はあるものの、一定以上の件数を維 持している。 図 2-5-2 出願人上位ランキング(海外)の年推移 300 250 200 出 願 150 件 数 100 50 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 出願年(優先権主張年) フィリップス 三星モバイルディスプレイ - 18 - 三星SDI LGディスプレイ 2007 2. 出願人別出願件数上位ランキング(全体)の出願人の技術区分割合 (1)技術区分(課題) 出願人上位ランキングの技術区分(課題)の割合を図 2-5-3に示す。セイコーエプソンで は画質改善、低消費電力化、素子特性のバラツキへの対応の割合が高い。半導体エネルギー 研究所では画質改善、低消費電力化、高速化の割合が高く、ソニーでは画質改善と素子特性 のバラツキへの対応の割合が高い。フィリップスでは画質改善と長寿命化・素子劣化への対 応の割合が高く、三星モバイルディスプレイでは画質改善、素子特性のバラツキへの対応、 長寿命化・素子劣化への対応の割合が高く、三星SDIでは画質改善、素子特性のバラツキへの 対応、低消費電力化の割合が高い。 図 2-5-3 出願人上位ランキングの技術区分(課題)の割合 (a)セイコーエプソン (b)半導体エネルギー研究所 その他 858 21.2% その他 739 24.4% 画質改善 892 29.4% 画質改善 956 23.6% 付加機能・応用 92 2.3% 付加機能・応用 57 1.9% 素子特性のバラ ツキへの対応 371 9.2% 高速化 275 9.1% 長寿命化・素子 劣化への対応 251 8.3% 低消費電力化 423 14.0% 高速化 623 15.4% 素子特性のバラ ツキへの対応 394 13.0% 長寿命化・素子 劣化への対応 486 12.0% 低消費電力化 658 16.3% (c)ソニー (d)フィリップス その他 552 23.3% その他 182 17.8% 画質改善 677 28.6% 付加機能・応用 32 3.1% 付加機能・応用 84 3.5% 画質改善 334 32.7% 高速化 74 7.2% 高速化 129 5.4% 低消費電力化 225 9.5% 長寿命化・素子 劣化への対応 224 9.5% 低消費電力化 100 9.8% 素子特性のバラ ツキへの対応 477 20.1% 長寿命化・素子 劣化への対応 201 19.7% (e)三星モバイルディスプレイ (f)三星 SDI その他 200 19.9% 画質改善 270 32.6% 付加機能・応用 8 1.0% 高速化 82 8.2% 低消費電力化 94 9.4% その他 226 27.3% 画質改善 323 32.2% 付加機能・応用 66 6.6% 素子特性のバラ ツキへの対応 98 9.6% 長寿命化・素子劣 化への対応 112 11.2% 高速化 76 9.2% 素子特性のバラ ツキへの対応 127 12.6% 低消費電力化 92 11.1% - 19 - 長寿命化・素子劣 化への対応 33 4.0% 素子特性のバラ ツキへの対応 124 15.0% (2)技術区分(解決手段) 出願人上位ランキングの技術区分(解決手段)の割合を図 2-5-4に示す。セイコーエプソ ン、半導体エネルギー研究所、ソニーともに画素回路、ドライバ回路、周辺回路の割合が高 い。フィリップスでは階調制御・輝度制御、画素回路、ドライバ回路、周辺回路の割合が高 く、三星モバイルディスプレイでは画素回路、ドライバ回路、周辺回路、階調制御・輝度制 御の割合が高く、三星SDIでは画素回路、ドライバ回路、周辺回路の割合が高い。 図 2-5-4 出願人上位ランキングの技術区分(解決手段)の割合 (a)セイコーエプソン 映像信号・データ 処理 307 10.6% 表示態様の制御 74 2.5% (b)半導体エネルギー研究所 その他 7 0.2% 映像信号・データ 処理 202 6.8% 画素回路 764 26.3% 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 379 12.8% 階調制御・輝度 制御 415 14.3% (d)フィリップス 映像信号・データ その他 処理 19 241 表示態様の制御 0.8% 9.8% 49 2.0% 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 233 9.5% 映像信号・データ 処理 259 17.1% その他 18 1.2% 表示態様の制御 9 0.6% 画素回路 725 29.6% 画素回路 277 18.2% 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 268 17.6% 階調制御・輝度 制御 369 15.1% ドライバ回路、周 辺回路 814 33.2% その他 1 0.1% ドライバ回路、周 辺回路 286 18.8% 階調制御・輝度 制御 402 26.5% (e)三星モバイルディスプレイ (f)三星 SDI 映像信号・データ 処理 47 4.8% 表示態様の制御 12 1.2% 画素回路 296 24.0% 表示態様の制御 22 1.8% 階調制御・輝度制 御 232 18.8% ドライバ回路、周 辺回路 1015 34.2% 階調制御・輝度 制御 636 21.4% ドライバ回路、周 辺回路 1000 34.4% (c)ソニー 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 184 14.9% 画素回路 690 23.3% 表示態様の制御 20 0.7% 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 339 11.7% 映像信号・データ 処理 139 11.3% その他 24 0.8% その他 3 0.3% 画素回路 317 32.4% 制御一般、タイミ ング制御、駆動波 形 144 14.7% 階調制御・輝度制 御 113 11.5% ドライバ回路、周 辺回路 359 29.1% ドライバ回路、周 辺回路 343 35.0% - 20 - 第6章 基本特許・重要特許 本調査における基本特許は、技術の流れ、変遷を追う際の基となる特許という観点から調 査を行った。 1. 基本特許・重要特許 (1)基本特許の選定方法 本調査における基本特許は、技術面からみたときの基本的な特許とする。技術の流れ、変 遷を追う際の基となる特許であるという観点から、以下の基準で選定を行った。 ①定量データに基づく観点 特許文献における被引用件数と審査官被引用回数を定量データとして用いた。 ・特許文献における被引用件数が 10 件以上の特許を基本特許の候補とする。 ・特許審査において引用された回数(審査官被引用回数)は、上位 2 つの特許だけが引用 件数が多くその 2 件を候補とする。 ②技術変遷の観点 有機 EL に特化した技術ではないが、有機 EL に応用した特許の中でできるだけ遡れる特許 も含めて、技術の流れ、変遷を追う際の基となる特許を選定した。 ③専門家の観点 基本特許として、本調査に関する委員会にて委員から推薦があったもの、あるいは、ヒア リング等を通じて専門家から推薦があったものを選定した。 (2)重要特許の選定方法 基本特許の後から現れた特許であるが、技術面からみて重要であるもの。 ①定量データに基づく観点 特許文献における被引用件数が 10 件以上の特許で、基本特許に選定されなかった特許を重 要特許の候補とする。同じく審査官被引用回数の上位 2 件の特許のうち、基本特許に選定さ れなかった特許を重要特許の候補とする。 ②技術変遷の観点 基本特許後から派生した特許の中で、技術的に重要な特許を選定した。 ③専門家の観点 重要特許として、本調査に関する委員会にて委員から推薦があったもの、あるいは、ヒア リング等を通じて専門家から推薦があったものを選定した。 前述した選定基準にしたがって抽出した基本特許一覧を以下に示す。 表 2-6-1 No. 基本特許一覧 タイトル 機関 技術概要 駆動トランジスタのばらつき補償技術 1 ア ク テ ィ ブ マ ト リ ッ ク ス 発 光 ダ イ オ ー ド ピクセ ル構 造及び方法 アクティブマトリクス型、駆動トランジスタしきい値 の補償 - 21 - サーノフ 優先権主張日 登録日 特許番号 1997/04/23 2009/01/30 4251377 時間変調 1 表示装置及びその駆動方法 カシオ計算機 アクティブマトリクス型、サブフィールド方式 有機エレクトロルミネッセンス素子駆動装置 2 アクティブマトリクス型、パルス幅変調方式 パッシブマトリクス型 1 有 機 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス 表 示 装 置 及びそ の駆 動方法 逆バイアス 2 有 機 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス 素 子 の 駆 動方法 及び 有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動装置 リセット 発光素子の劣化対策技術 1 表示装置及び電子機器 アクティブマトリクス型、フィードバック補正、画素 内に受光素子を設けるもの その他 1 EL ストレージディスプレイ装置 メモリセル及びカレントミラー型画素回路 定電流駆動装置および定電流駆動半導体集積回路 2 日本電気 パイオニア パイオニア 1997/5/29 2008/4/25 4114216 1999/02/16 2002/09/27 3353731 1991/04/08 2001/03/16 3169974 1996/02/26 2002/05/31 3314046 セイコーエプ ソン 1997/03/12 2006/12/08 3887826 コダック 1988/10/20 1997/12/12 2729089 1999/04/09 2003/12/05 3500322 シャープ 基準電流分配型定電流ドライバ 前述した選定基準にしたがって抽出した重要特許一覧を以下に示す。 表 2-6-2 No. 重要特許一覧 タイトル 機関 技術概要 駆動トランジスタのばらつき補償技術 1 トランジスタ回路、表示パネル及び電子機器 2 3 4 5 アクティブマトリクス型、画素回路でのしきい値電圧 補償 Active matrix electroluminescent display devices アクティブマトリクス型、非発光書込型電流プログラ ム画素回路 電流駆動回路及びそれを用いた表示装置、画素回路、 並びに駆動方法 アクティブマトリクス型、容量線駆動型電流プログラ ム画素回路、プリチャージ ア ク テ ィ ブ マ ト リ ク ス 型 表 示 装 置 お よ び アクテ ィブ マ ト リ ク ス 型 有 機 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ンス表 示装 置、並びにそれらの駆動方法 アクティブマトリクス型、2 行同時走査 単位回路の制御に使用されるデータ線の駆動 アクティブマトリクス型、プリチャージを行う電流プ ログラム - 22 - 優先権主張日 登録日 特許番号 セイコーエプ ソン 1998/03/18 2004/12/24 3629939 フィリップス 1998/06/12 2002/04/16 米国特許 6373454 ソニー 1999/07/14 2008/05/23 4126909 ソニー 2001/05/31 2005/11/25 セイコーエプ ソン 3743387 2001/08/02 2007/05/11 3951687 6 電流制御素子の駆動回路及び画像表示装置 日本電気 7 アクティブマトリクス型、2T1C 型電圧プログラムしき い値補償 表示装置及びその駆動方法 2002/3/14 2004/11/5 3613253 ソニー 2006/05/22 2009/01/09 4240059 日立製作所 2001/10/10 2007/01/12 3899886 半導体エネル ギー研究所 サブフィールドを用いた色バランス パッシブマトリクス型 1 有機薄膜 EL 表示装置及びその駆動方法 2002/03/14 2007/05/18 3957535 三菱電機 パッシブマトリクス型、フィードバック、フィードフ ォワード 発光素子の劣化対策技術 1 画像表示方法および装置 1996/10/04 2007/12/28 4059537 日本電気 1999/06/09 2001/12/14 3259774 2002/01/31 2007/03/30 3933485 アクティブマトリクス型、2T1C 型電圧プログラムしき い値補償と移動度補償 時間変調 1 画像表示装置 2 2 アクティブマトリクス型、三角波を用いたパルス幅変 調方式 発光装置の駆動方法、電子機器 アクティブマトリクス型、消去、逆バイアス マトリクス駆動型ディスプレイ 画素ごとに焼き付け補正 その他 1 有機 EL 素子駆動装置と駆動方法 2 三洋電機 日本電気 アクティブマトリクス型、消去、リセット 画像表示装置 ソニー アクティブマトリクス型、デューティー比制御 1999/01/29 2005/06/10 3686769 1999/06/17 2008/03/14 4092857 2. 技術開発の変遷 基本特許、重要特許の年表を図 2-6-1に示す。 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する基本特許、重要特許から、当該技術分野における技術 開発の変遷をまとめた。 (パッシブマトリクス型) パッシブマトリクス型の駆動技術に関しての基本的な特許として、パイオニアによって 1991 年に出願された特許(特許番号:3169974)がある。この特許は、有機 EL 素子に間欠的 に逆バイアスを印加することによって、直流駆動を続けた際に生じる電気的特性の経時劣化 を補償する技術を開示している。 1996 年には、走査線の電位を一旦同じ電位にリセットすることで、電圧印加から発光する までの立ち上がり速度を速くして、高速な駆動を行う技術が、パイオニアによって出願され ている(特許番号:3314046)。 さらに同年に、ドライバ回路でフィードバック・フィードフォワードの制御によって電流 源が一定の電流値で動作するようにした三菱電機の特許(特許番号:4059537)が出願されて - 23 - いる。 (アクティブマトリクス型 駆動トランジスタのバラツキ補償技術) TFT によって画素ごとに発光を制御するアクティブマトリクス型では、2 トランジスタ方式 による駆動技術が提案されていたが、駆動トランジスタの電気的特性バラツキによって輝度 むらが生じることが課題であった。1998 年には、駆動用 TFT と同一特性を有する補償用 TFT を介してデータ信号を供給することで、閾値電圧分シフトしたデータを書き込む補償技術が、 セイコーエプソンから出願されている(特許番号:3629939)。1997 年に、サーノフにより駆 動トランジスタの閾値を補償する技術として、電流プログラム方式と電圧プログラム方式が 提案されたのを契機に(特許番号:4251377)、駆動トランジスタの閾値補償のための画素回 路と駆動方式の開発が進むようなった。 ・電流プログラム方式 サーノフによって提案された電流プログラム方式は、電流信号の書き込み時に有機 EL 素子 が発光するものであった。一方、フィリップス(米国特許番号:6373454)やソニー(特許番 号:4126909)から信号電流を有機 EL 素子に流さない電流プログラム回路が提案された。こ れらの回路では有機 EL 素子に直接電流を流さないためコントラストの低下を防止できる。 電流プログラムはデータ線に電流信号を供給することから、データ線が有するインピーダ ンスや静電容量によって、信号書き込み時間が大きくなることが課題の一つである。 これに対し、2001 年(優先日)には、2 行の画素にデータ電流を書き込み、データ線電流 を大きく設定することでデータ書き込み時間を短縮する、電流プログラムの駆動回路がソニ ーから出願されている(特許番号:3743387)。さらに同年には、プリチャージを行うことで、 信号線の充放電を加速し駆動時間の短縮を図る技術が、セイコーエプソンから出願されてい る(特許番号:3951687)。これらの技術は、有機 EL 表示装置の高精細化、大型化に向けたも のであることがうかがえる。 ・電圧プログラム方式 サーノフによる電圧プログラム方式の提案以降、各社から様々な電圧プログラム画素回路 が開発されている。 2002 年には、2 トランジスタ方式の簡単な画素回路でありながら、信号の印加方法を工夫 し、有機 EL 素子の寄生容量を利用することで駆動トランジスタの閾値のバラツキを補償する 駆動方式が、日本電気から出願された(特許番号:3613253)。電圧プログラム方式では、閾 値電圧は補償されるものの、移動度は補償されないという課題がある。2006 年には、2 トラ ンジスタ方式の回路で閾値に加え、駆動トランジスタの移動度も補償できる方式がソニーか ら提案された(特許番号:4240059)。これは、データ電圧が書き込まれた際のドレイン電流 の大きさが、駆動トランジスタの移動度に依存することを利用したものである。 (時間変調方式) 以上述べた画素回路方式は有機 EL の発光強度を振幅変調して輝度を制御するものである。 別の方式として有機 EL の輝度を一定とし、発光時間を変えることで輝度を制御する時間変調 方式がある。時間変調方式では発光期間中に有機 EL が発光しない期間が存在し、動画特性が - 24 - 良い(動画ボケがない)という特徴がある。代表的な時間変調方式として 1 フレームを複数 のサブフレームに分け、入力データに応じてサブフレームをオン・オフ制御するサブフィー ルド方式があり、1997 年にカシオ計算機(特許番号:4114216)より出願されている。この 方式では駆動トランジスタをスイッチとして使用するため、閾値や移動度のバラツキが輝度 に与える影響が少ないという利点がある。その後、パルス幅変調信号を用いて階調表現する 技術が、日本電気から出願されている(特許番号:3353731)。2001 年には、三角波を用いて 発光期間を制御する技術が、日立製作所により提案されている(特許番号:3899886)。TFT をスイッチとして用いることでトランジスタの特性バラツキによる輝度むらを低減している。 表示装置において単色の発光材料を用いて画素を形成し、カラーフィルターや色変換層を用 いて赤(R)、緑(G)、青(B)を表現する場合、すべての色を時間変調方式で同じ時間で発光 させると、光透過率が色ごとに異なるため輝度にバラツキが生じる。2002 年に出願された半 導体エネルギー研究所(特許番号:3957535)の特許では色ごとに発光時間を変えることによ って色バランスをとっている。 (発光素子の劣化対策技術) 長寿命化を図ることは、有機 EL 表示装置の大きな課題のうちの一つである。有機 EL 素子 の劣化対策を行う基本的な特許として、1997 年にセイコーエプソンから出願された特許(特 許番号:3887826)がある。この特許では画素内に受光素子を設け、フィードバック補正によ って劣化を補償する。その後、1 走査期間中に発光素子への駆動電圧印加を停止し、一旦逆 バイアスを印加することにより有機 EL 素子の長寿命化を図った技術が日本電気から(特許番 号:3259774)、周辺回路において画素ごとに発光量を記憶し、焼き付き補正を行う技術が三 洋電機から(特許番号:3933485)出願されている。 (その他の技術) その他の基本的な特許では、画素回路に関するものとして 1988 年に出願されたコダック (特許番号:2729089)の特許がある。この特許では画素ごとにメモリ機能をもうけ、信号を 保持し、保持された信号に従って有機 EL 素子を発光させるという画素回路の基本的な概念が 提案されている。また、カレントミラー回路を用いた有機 EL 素子への電流供給手段も提案さ れている。 他には、周辺回路に関するものとしてシャープ(特許番号:3500322)の特許がある。この 特許では、複数の定電流ドライバ IC を用いた場合生じるドライバ IC 間の出力電流バラツキ を、基準電流発生回路を設け、その回路から発生される基準電流を各ドライバに分配するこ とによって小さくする技術が開示されている。 - 25 - 図 2-6-1 駆動トランジスタのバラツキ補償技術 特4251377 特4251377 サーノフ(1997.4) サーノフ(1997.4) AM AMしきい値補償 しきい値補償 AM AM 非発光書込型電流プログ 非発光書込型電流プログ ラム画素回路 ラム画素回路 特43743387 特43743387 ソニー(2001.5) ソニー(2001.5) 基本特許、重要特許の年表 US6373454 US6373454 フィリップス(1998.6) フィリップス(1998.6) AM AM2行同時走査 2行同時走査 特4126909 特4126909 ソニー(1999.7) ソニー(1999.7) AM AM 容量線駆動型電流プログ 容量線駆動型電流プログ ラム画素回路、プリチャージ ラム画素回路、プリチャージ 特3951687 特3951687 セイコーエプソン(2001.8) セイコーエプソン(2001.8) AM AM プリチャージを行う電流プロ プリチャージを行う電流プロ グラム グラム 特3613253 特3613253 日本電気(2002.3) 日本電気(2002.3) AM AM2T1C型電圧プログラムしきい 2T1C型電圧プログラムしきい 値補償 値補償 特4240059 特4240059 ソニー(2006.5) ソニー(2006.5) AM 電圧プログラムしきい AM2T1C型 2T1C型電圧プログラムしきい 値補償、移動度 補償 値補償、移動度補償 特3629939 特3629939 セイコーエプソン(1998.3) セイコーエプソン(1998.3) AM AM 画素回路でのしきい値電圧 画素回路でのしきい値電圧 補償 補償 時間変調 特3899886 特3899886 日立製作所(2001.10) 日立製作所(2001.10) 特4114216 特4114216 カシオ計算機(1997.5) カシオ計算機(1997.5) AM三角波を用いたパルス幅変 AM三角波を用いたパルス幅変 調方式 調方式 AM AMサブフィールド方式 サブフィールド方式 - 26 - 特3353731 特3353731 日本電気(1999.2) 日本電気(1999.2) パッシブマトリクス型 AMパルス幅変調方式 AMパルス幅変調方式 特3169974 特3169974 パイオニア(1991.4) パイオニア(1991.4) 特3957535 特3957535 半導体エネルギー研究所(2002.3) 半導体エネルギー研究所(2002.3) AM AM サブフィールドを用いた色バラ サブフィールドを用いた色バラ ンス ンス 特3314046 特3314046 パイオニア パイオニア(1996.2) (1996.2) 逆バイアス 逆バイアス リセット リセット 特4059537 特4059537 三菱電機(1996.10) 三菱電機(1996.10) フィードバック、フィードフォワード フィードバック、フィードフォワード 発光素子の劣化対策技術 特3887826 特3887826 セイコーエプソン(1997.3) セイコーエプソン(1997.3) AMフィードバック補正、画素内 AMフィードバック補正、画素内 に受光素子を設けるもの に受光素子を設けるもの 特3933485 特3933485 三洋電機(2002.1) 三洋電機(2002.1) 画素ごとに焼き付け補正 画素ごとに焼き付け補正 特3259774 特3259774 日本電気(1999.6) 日本電気(1999.6) AM消去、逆バイアス AM消去、逆バイアス その他 特2729089 特2729089 コダック(1988.10) コダック(1988.10) 特3500322 特3500322 シャープ シャープ(1999.4) (1999.4) メモリセル及びカレントミラー型 メモリセル及びカレントミラー型 画素回路 画素回路 基準電流分配型定電流ドライ 基準電流分配型定電流ドライ バ バ 特3686769 特3686769 日本電気(1999.1) 日本電気(1999.1) AM消去、リセット AM消去、リセット 基本特許 1990 AM:アクティブマトリクス 特4092857 特4092857 ソニー(1999.6) ソニー(1999.6) 重要特許 PM:パッシブマトリクス デューティー比制御 デューティー比制御 1995 2000 2005 2010 第7章 まとめ 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する公開特許および登録特許を検索し、技術分類を行う ことにより、特許出願からみた技術動向を調査した。 課題別の分類付与件数割合は、日米欧中韓への出願において、画質改善が 29.1%と最も多 く、長寿命化・素子劣化への対応が 11.7%、低消費電力化が 11.6%、素子特性のバラツキへの 対応が 11.2%と続く(図 2-4-6)。 低消費電力化の技術別における出願件数の割合をみると、画素回路単体での低消費電力化 が 23.2%、ドライバにおける低消費電力化が 50.8%、システム全体としての低消費電力化が 26.0%と各技術分野から低消費電力化が進められていることがうかがえる(図 2-4-9)。また、 出願件数を国籍別にみると日本国籍の出願件数が 73.6%と全体の約 7 割を占めるが 2004 年以 降韓国籍による出願の割合が高まってきている。 素子特性のバラツキへの対応における出願件数の推移をみると画素回路素子のバラツキ への対応と発光素子のバラツキへの対応が 2002 年以降高い水準を維持しており、バラツキへ 対応が継続して必要とされていることを反映している。 日米欧中韓への出願における解決手段別の分類付与件数の割合ではドライバ回路、周辺回 路が 29.6%と最も多く、画素回路が 21.7%、階調制御、輝度制御 19.5%が続く(図 2-4-17)。 駆動回路における駆動トランジスタ特性補償の割合をみると閾値補償が移動度補償より多く、 閾値補償が 77.7%であり、移動度補償が 22.3%である(図 2-4-18)。 出願人別の出願件数ランキングでは、日米欧中韓への出願ではセイコーエプソンが 1 位で 1083 件、2 位は半導体エネルギー研究所で 1045 件、3 位はソニーであり 914 件である。上位 10 社中 6 社を日本企業が占めた。海外の出願人の上位はフィリップスが 4 位で 511 件、三星 モバイルディスプレイが 5 位で 471 件、三星 SDI が 6 位で 454 件である。今回、三星モバイ ルディスプレイ、三星 SDI、三星電子は別会社とみなして分けて集計しているが、三星モバ イルディスプレイ(5 位)、三星 SDI(6 位)、三星電子(13 位)を同一会社とみなすと 1175 件であり出願人全体の 1 位となる。 有機EL表示装置の駆動技術に関する基本特許、重要特許を画素回路の駆動トランジスタの バラツキ補償、時間変調、パッシブマトリクス型、発光素子の劣化対策技術などの技術ごと に変遷をまとめた(図 2-6-1)。駆動方式の大きな課題である駆動トランジスタのバラツキ 補償に関する技術はサーノフにより出願された駆動トランジスタの閾値を補償する特許(特 許番号:4251377)を契機に開発が進むようになった。 - 27 - 第3部 研究開発動向分析 第1章 概要 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する研究開発動向として、3 つの国際会議の要旨集と論文 データベース(JSTPlus)で検索した結果について、全体動向、技術区分別動向、注目研究開 発テーマ動向、研究者所属機関・研究者別動向を調べた。 国際会議として、SID(Society for Information Display Symposium)、IDW(International Display Workshops)、IMID(International Meeting on Information Display)を対象とした。 SID については要旨集に加え発行されている journal も調査対象に加えた。 調査対象は SID(Symposium および journal)が 97 件、IDW が 94 件、IMID が 41 件、論文 データベース(JSTPlus)が 128 件であった。論文発表件数は 2000 年から増え始め、2004 年 以降は約 50 件の発表件数が維持されている。 研究者所属機関国籍別では韓国籍が 36.1%、日本国籍が 29.7%、台湾籍が 13.3%、米国籍が 6.7%、欧州国籍が 6.1%である。韓国籍の発表件数が最も多く、韓国において有機 EL 表示装 置の駆動技術に関する研究が活発に行なわれているものと考えられる。 研究者所属機関別ではソウル大学(韓国)が 1 位で 41 件、三星 SDI が 2 位で 27 件、漢陽 大学(韓国)が 3 位で 21 件である。日本国籍の件数が多い特許出願とは異なり韓国籍の研究 者所属機関の発表が多い結果となった。なお、1 件の論文に複数の研究者所属機関が関与す る場合、各々の研究者所属機関に 1 件をカウントすることとしている。以下に分析の詳細を 示す。 第2章 全体動向分析 1. 論文発表件数推移 論文発表件数推移を図 3-2-1に示す。2000 年から発表件数が増え始め、2004 年以降は約 50 件の発表件数が維持されている。SIDとIDWにおける発表件数はほぼ同数であるが、2006 年以降はIDWの発表件数の方が若干多い。 図 3-2-1 論文発表件数推移 60 53 56 54 合計 360件 55 49 50 40 JSTPlus 128 35.6% 37 発 表 30 件 数 SID 97 26.9% 26 20 11 10 8 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 IMID 41 11.4% IDW 94 26.1% 国際会議+JSTPlus 発表年 SID IDW IMID JSTPlus 合計 2. 研究者所属機関国籍別論文件数推移 研究者所属機関国籍別論文件数推移を図 3-2-2に示す。韓国籍 36.1%、日本国籍 29.7%の 順に発表件数が多い。2004 年以降は、韓国籍の発表件数が日本国籍の発表を上回っている。 - 28 - 図 3-2-2 研究者所属機関国籍別論文件数推移 60 53 56 54 その他 20 5.6% 49 50 40 37 発 表 30 件 数 合計 360件 55 台湾籍 48 13.3% 26 日本国籍 107 29.7% 米国籍 24 6.7% 20 11 10 8 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 台湾籍 その他 合計 研究者所属機関国籍 発表年 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 韓国籍 130 36.1% 中国籍 10 2.8% 欧州国籍 21 5.8% 第3章 技術区分別動向分析 表示パネル材料別の論文発表件数の割合を図 3-3-1に示す。ポリシリコンが 44.2%、アモ ルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFTが 44.2%、有機TFTが 10.0%と続く。 図 3-3-1 材料別の論文発表件数の割合 有機TFT 19 10.0% その他 3 1.6% ポリシリコン 84 44.2% アモルファ スシリコン、 微結晶シリ コン、酸化 物TFT 84 44.2% 注)複数分類付与の論文有。 ポリシリコンにおける論文発表件数推移と研究者所属機関国籍の割合を図 3-3-2に示す。 韓国籍、日本国籍、台湾籍の順に発表件数が多い。2006 年以降発表件数は減少傾向にある。 - 29 - 図 3-3-2 ポリシリコンにおける論文発表件数推移と研究者所属機関国籍の割合 16 15 その他 1 1.2% 15 14 14 12 10 11 10 台湾籍 19 22.6% 10 発 表 8 件 数 6 4 2 日本国籍 19 22.6% 3 2000 2001 中国籍 2 2.4% 3 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 台湾籍 その他 合計 米国籍 2 2.4% 欧州国籍 3 3.6% 2 0 合計 84件 韓国籍 38 45.2% 研究者所属機関国籍 発表年 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物TFTにおける論文発表件数推移と研究者所 属機関国籍の割合を図 3-3-3に示す。韓国籍の割合が 47.6%と高く、日本国籍、米国籍の発 表件数が続く。韓国籍の発表が 2005 年以降半数以上を占めている。全体の発表件数は 10 件 以上を 2004 年以降維持している。 図 3-3-3 アモルファスシリコン、微結晶シリコン、酸化物 TFT における論文発表件数推移と研 究者所属機関国籍の割合 18 16 16 15 14 14 14 台湾籍 6 7.1% 12 10 発 10 表 件 数 8 その他 11 13.1% 日本国籍 12 14.3% 合計 84件 米国籍 12 14.3% 6 6 欧州国籍 2 2.4% 4 4 2 3 2 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 台湾籍 その他 合計 研究者所属機関国籍 発表年 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 韓国籍 40 47.6% 中国籍 1 1.2% 課題別の論文発表件数の割合を図 3-3-4に示す。画質改善が 31.6%と一番多く、素子特性 のバラツキへの対応が 17.5%、長寿命化・素子劣化への対応が 12.3%と続く。 - 30 - 図 3-3-4 課題別の論文発表件数の割合 その他 148 付加機能・ 24.2% 応用 8 1.3% 画質改善 193 31.6% 高速化 28 4.6% 低消費電力 化 52 8.5% 素子特性の バラツキへ の対応 107 17.5% 長寿命化・ 素子劣化へ の対応 75 12.3% 注)複数分類付与の論文有。 解決手段別の論文発表件数の割合を図 3-3-5に示す。画素回路が 38.4%と割合が高い。ド ライバ回路、周辺回路と制御一般、タイミング制御、駆動波形が続く。 図 3-3-5 解決手段別の論文発表件数の割合 映像信号・デー タ処理 68 12.9% その他 2 0.4% 表示態様の制 御 3 0.6% 画素回路 203 38.4% 制御一般、タイ ミング制御、駆 動波形 94 17.8% 階調制御・輝度 制御 28 5.3% ドライバ回路、 周辺回路 130 24.6% 注)複数分類付与の論文有 第4章 研究者所属機関・研究者別動向分析 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する論文について、発表件数の多い研究者所属機関および 研究者の上位ランキングを作成した。なお、1 件の論文に複数の研究者所属機関が関与する 場合、各々の研究者所属機関に 1 件をカウントすることとした。同様に 1 件の論文で複数の 研究者が著者になっている場合は、各々の研究者の 1 件をカウントする。 1. 研究者所属機関別発表件数上位ランキング 研究者所属機関別論文発表件数の上位ランキングを 表 3-4-1に示す。 半導体エネルギー研究所、セイコーエプソン、ソニーなど日本国籍の件数が多い特許出願 - 31 - とは異なり、ソウル大学、三星 SDI、漢陽大学等の韓国籍の研究者所属機関の発表が多い結 果となっている。 表 3-4-1 研究者所属機関別論文発表件数の上位ランキング No. 1 2 3 4 4 6 7 8 9 9 9 12 12 14 14 14 14 18 18 18 18 18 23 23 23 研究者所属機関名称 ソウル大学 (韓) 三星SDI (韓) 漢陽大学 (韓) LGディスプレイ (韓) 国立交通大学 (台) Waterloo大学 (加) 日立製作所 (日) コダック (米) 九州大学 (日) 龍谷大学 (日) 韓国科学技術院 (韓) 日本電気 (日) Michigan大学 (米) 半導体エネルギー研究所 (日) セイコーエプソン (日) 三星電子 (韓) フィリップス (欧) ソニー (日) 三洋電機 (日) 東芝モバイルディスプレイ (日) 日立ディスプレイズ (日) 慶熙大学 (韓) パイオニア (日) 中華映管 (台) 友達光電 (台) - 32 - 発表件数 41 27 21 16 16 15 13 12 10 10 10 9 9 8 8 8 8 7 7 7 7 7 6 6 6 第4部 政策動向分析 有機 EL 表示装置に関連する政策について、日本、韓国、米国、欧州の状況を調査した。 日本、韓国では表示装置に関連する政策が実施されているが、米国、欧州では有機 EL 照明と フレキシブル表示装置に関連する政策が中心である。 日本では新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)を中心に有機 EL 表示装置に関連した プロジェクトが実施されており、現在 40 型以上の大型有機 EL 表示装置の製造プロセス技術 の開発と低消費電力化を目指した「次世代大型有機 EL 表示装置」プロジェクトが実施されて いる。また、有機 EL 関連のプロジェクトとして照明技術開発を目指す「有機発光機構を用い た効率照明技術」プロジェクトも実施されている。 韓国では、「フロンティアプロジェクト 2001」と呼ばれる、2010 年代に世界トップレベル の技術力を確保するための戦略技術支援プロジェクトが実施されており、その中の 1 研究テ ーマに「次世代表示装置」の研究がある。「次世代表示装置」には有機 EL 表示装置も含まれ ており、次世代表示装置の研究は「フロンティアプロジェクト 2001」の中心的なテーマであ る。 米国では有機 EL 照明とフレキシブル表示装置に関する支援が政策の中心である。有機 EL 照明はエネルギー省を中心に支援が実施されている。フレキシブル表示装置は軍用途向けを 目的とし国防総省を中心に支援が実施されている。フレキシブル表示装置向け支援としてア リゾナ州立大学の Flexible Display Center に 5 年間で 5000 万ドルの支援が行われており製 造方法が研究されている。 欧州では有機 EL 照明に対する支援が中心となっている。支援は国ベースで行われているも のと EU 全体の研究支援制度であるフレームワークプログラムを通して行われているものが ある。例えば、フレームワークプログラム支援のもと有機 EL 照明で 100 lm/W の効率、10 万 時間以上の寿命を目指す OLED100.eu プロジェクトは 2008 年から 2011 年の 3 年間で約 2000 万ユーロの支援が予定されている。また、ナノエレクトロニクスの研究拠点であるベルギー の IMEC では有機エレクトロニクスが研究されており、有機太陽電池や有機 EL 照明を含めた 広い範囲の研究を行っている。その中で有機 EL 表示装置に関する技術開発も行われている。 - 33 - 表 4-1 2003 新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の主な研究開発プロジェクト 2004 2005 2006 2007 高効率有機デバイス開発(予算 9億円@2006年) ・大画面化 ・フレキシブル表示装置 2008 2009 2010 2011 2012 次世代大型有機EL表示装置(グリーンITプロジェクト) (予算 5億円@2009年) ・低損傷大面積電極・大面積透明封止技術 ・大面積有機薄膜・大型表示装置検証 有機発光機構を用いた 効率照明技術 (予算 1.6億円@2009年) ・生活用照明を代替する 高性能照明光源 ・高演色性光源デバイスの省資源型 製造プロセス エネルギー使用合理化 液晶デバイスプロセス研究 開発 次世代大型低消費電力液晶表示装置基盤技術 (予算 2.8億円@2009年) 高機能化システム表示装置 次世代大型低消費電力プラズマ表示装置基盤技術 (予算 1.6億円@2009年) 次世代PDP技術開発 - 34 - 第5部 市場環境動向分析 2008 年の表示装置全体の出荷量シェアで有機 EL 表示装置は 2.2%であるが今後成長が期待 されており、2015 年までに 8%に増加する見込みである。世界の有機 EL 表示装置市場は 2006 年で約 500 百万米ドルであった。2006 年以前はパッシブマトリクス型の駆動方式で市場を占 めていたが、今後はアクティブマトリクス型の比率が拡大していくと予想される。現在、メ インの用途は携帯電話であり、MP3 プレーヤーといったメディアプレーヤー用途が続く。し かし、携帯端末の分野では他の表示装置との価格競争が激しくパネルあたりの単価は低い。 今後、テレビ向け用途が拡大するものと思われる。 2007 年の有機EL表示装置の世界シェア(金額)を図 5-1に示す。韓国の三星SDIが 32.0%の シェアを占めトップである。台湾RiTdisplayが 20.0%と続く。国内企業ではパイオニアが 15.7%で 3 位であり、TDKが 4.5%で 5 位である。 図 5-1 2007 年の有機 EL 表示装置の世界シェア(金額) その他 16.7% Visionox (中) 2.5% 三星SDI (韓) 32.0% TDK(日) 4.5% LG電子 (韓) 8.7% パイオニア (日) 15.7% RiTdisplay (台) 20.0% 出典:2008 年版 電子部品年鑑 2008 年 3 月 中日社発行 P.178 「2007 年世界の有機 EL メーカ金額シェア」 よりみずほ情報総研が作成 アクティブマトリクス型の有機 EL 表示装置のメインの用途は携帯電話であるが今後テレ ビ向け用途が拡大するものと思われる。iSuppli 社によれば 2013 年以降は有機 EL 世界市場 における用途別割合でテレビが最も高くなる見込みである。アクティブマトリクス型は、大 画面化・高精細化・高応答化に適しているため情報化社会のニーズとマッチしている。テレ ビに関しては大型化と共に、デジタル放送、ハイビジョン放送の流れがあり、高精細化のニ ーズが高まってくる。携帯電話に関しては、動画を見たりアプリケーションを実行したりす る多機能端末化方向に進化しており、高精細化と高応答化のニーズが高まってくる。 テレビ向け用途では省エネを実現する低消費電力が重要な要素となる。例えば、既存の代 表的なテレビ用表示装置である液晶テレビでは、32 型の液晶テレビにおいて 2004 年から 2006 年までに 32.4%、2006 年から 2009 年までに 25.4%の低消費電力化が図られている。有機 EL 表示装置がテレビ分野での市場拡大を図る上で、さらなる低消費電力化が不可欠である。 - 35 - 第6部 提言 本調査結果に基づき、有機 EL 表示装置の駆動技術において我が国が目指すべき研究開発、 技術開発の方向について以下を提案する。 提言 1. 駆動技術を含めたシステム全体の低消費電力化技術の開発推進 有機 EL 表示装置にとって低消費電力化は重要な課題である。駆動技術においても多 方面から低消費電力化を推進し、液晶表示装置に対する競争力を高めることが望まれ る。 全特許出願に占める低消費電力化に関連する出願件数の割合は 28.2%と高く(図 2-4-10) 低消費電力化は重要な課題となっている。また、有機EL表示装置が産業競争力を獲得するた めには既存の表示装置からの置き換えを進める必要があり、そのための重要な要素の 1 つと して低消費電力化があげられる。しかし、既存の表示装置である液晶表示装置においても低 消費電力化が進められており、32 型の液晶テレビでは 2004 年から 2006 年までに 32.4%、2006 年から 2009 年までに 25.4%の低消費電力化が図られている。有機EL表示装置がテレビ分野で の市場拡大を図る上で、さらなる低消費電力化が不可欠である。 駆動技術の特許出願において低消費電力化を実現している技術領域の割合を見ると、画素 回路部単体によるものが 23.2%、ドライバ等周辺駆動部を含めた技術によるものが 50.8%、シ ステム全体によるものが 26.0%であり(図 2-4-9)各技術領域から低消費電力化が進められ ている。低消費電力化は単一の技術領域で実現されるものではなく、多方面から推進してい くことが望まれる。 液晶表示装置は市場の拡大と共に低消費電力化が進められた。有機 EL 表示装置においても 今後市場が立ち上がると共に、低消費電力化が進むと思われる。実用化に際して、画質を維 持しながらシステム全体として消費電力を下げていく技術は、液晶表示装置でも実績のある 日本の得意とする技術であり、有機 EL 表示装置においても、高画質を維持しながら液晶表示 装置を超える低消費電力化を実現することが望まれる。 提言 2. 液晶、PDP に対抗するための低コスト化 有機 EL 表示装置は多くの市場において液晶、プラズマ表示装置と競合する。低コス ト化が競争力強化のための重要な要素の1つとなる。コストに関連する技術においても 我が国には豊富な技術的蓄積があり、これらの技術を生かし低価格を実現することが期 待される。 高輝度・自発光である有機 EL は、その潜在能力の高さから、薄型テレビ市場において次世 代の表示装置として注目されている。一方、有機 EL 表示装置は多くの市場において液晶、プ ラズマ表示装置と競合し、常に価格や性能の競争を強いられている。 コストに関連する技術において我が国には豊富な技術的な蓄積がある。出願件数に占める 日本国籍出願人の割合で回路規模の低減・簡略化に関する出願は 79.6%(図 2-4-13)、低コ スト化に関する出願は 74.6%(図 2-4-12)と高い。これらの技術を生かし価格面において産業 - 36 - 競争力を強めることが期待される。 提言 3. 国際競争力の維持・強化のための技術開発推進 駆動に関する技術力について我が国が有利であったが、近年韓国、台湾の追い上げが 著しく、論文の発表件数や市場シェアでは逆転をゆるしている。我が国が有する多くの 技術的な蓄積を生かし、有機 EL の特徴である高画質等の技術開発を進めるとともに、 大型化の技術などにおいて海外メーカーに遅れをとらないよう技術開発を進める必要 がある。 特許出願件数において日本国籍出願人による出願件数は全体の 6 割を占め(図 2-3-1)、わ が国には豊富な技術蓄積がある。しかし、2004 年以降韓国籍の出願件数の割合が増えており、 登録件数においては 2004 年以降逆転している。また、論文の発表件数においても韓国籍の件 数の割合が 36.1%、日本国籍が 29.7%と韓国籍の方が多く(図 3-2-2)、2004 年以降は、韓国 籍の発表件数が日本国籍を上回っている状態が続いている。市場においても韓国、台湾メー カーのシェアが高く、技術的な優位性が産業的な競争力強化に十分生かされていない状況で ある。 我が国が国際競争力を維持するためには優位な技術分野を生かして差別化を図ることが必 要である。このような技術分野として画質に関する技術があげられる。出願件数に占める日 本国籍出願人の割合は全体では 61.6%だが、動画質向上に関する出願では 86.9%、輝度・色の 一様性に関する出願では 66.0%と高く、他国・地域に対して豊富な技術的な蓄積がある。こ れらの技術が必要となるアクティブマトリクス型の高機能携帯電話やテレビなどのハイエン ド商品において、技術的優位性が保てるよう技術開発を推進することが望まれる。 一方、日本国籍と韓国籍出願人の課題の出願件数の伸びを比較すると韓国籍出願人は低消 費電力化、安定化、劣化対応の出願件数の割合が大きくなっている(図 2-4-15)。また、大 型化を課題とする特許出願件数の日韓比較を行うと日本の出願件数が減っており( 図 2-4-16)、2007 年では韓国に逆転されている。韓国籍出願人の一部の技術開発は次の有望市 場であるテレビに向かっており、これらに関する技術開発に遅れることが無いよう開発を進 める必要がある。 提言 4.大画面化を目指した駆動における補償技術の開発推進 TFT 材料の選択と材料に応じた駆動技術の開発が重要となる。いずれの材料において も駆動における補償が必要であるが、補償に関する問題は充分解決されていない。製造 方法、構造を工夫して劣化の少ない TFT の実現を目指すとともに駆動における補償技術 を開発することが望まれる。 小型表示装置で駆動回路用TFT材料として主に使われているポリシリコンは、高コストとい う問題があるため大画面の表示装置には不向きである。このため、大型化に適したTFT材料を 検討する必要がある。表示パネル材料の分類項目である「アモルファスシリコン、微結晶シ リコン、酸化物TFT」を材料ごとに細分類を行った結果(図 2-4-5)をみると、材料として - 37 - 従来から候補であったアモルファスシリコン以外に微結晶、酸化物半導体といった次世代の 材料候補が挙がってきていることがうかがえる。アモルファスシリコンには劣化の課題があ ったが、次世代の材料候補も現時点ではアモルファスシリコンと同様劣化の課題があり、何 らかの補償が必要である可能性がある。 劣化に関連する特許の出願件数は 2006 年度以降減少しているが、大画面の主な用途である 有機 EL テレビにおいて、ソニーの 11 型や LG ディスプレイの 15 型の小型サイズしか商品化 が実現されておらず、補償に関する問題は充分解決され製品化が実現されているとはいえな い。 今後も製造方法、構造を工夫して劣化の少ない TFT の実現を目指すとともに駆動における 補償技術を開発することが望まれる。補償の方法として画素回路で補償を行う方法や、周辺 回路で測定・検査を行い、信号にフィードバックすることにより補償を行う方法があり、コ ストと性能のバランスのとれた補償方法を幅広く探索することが望まれる。 提言 5. 技術開発戦略 有機 EL 表示装置の駆動技術に関する技術分野では、既存の特許権に制限されること なく開発を進められる余地があるとの意見もあり、新たな技術や特許が今後も生まれて くる可能性があるため、引き続き新たな技術の開発を進めることが期待される。 課題解決にブレークスルーをもたらした技術的に重要な基本特許については、外国・地域 の出願人が取得しているものもある。例えば、駆動トランジスタの閾値電圧の補正などに関 する基本特許は、外国の出願人が取得している。一方で、技術開発や製品化の際に回避不能 な権利として重要な特許は、現状ほとんど存在しないとの意見もある。先に述べた、外国企 業が取得している駆動トランジスタの閾値補正に関する技術をみても、日本国籍の出願人に より多数の特許が継続して出願されている(図 2-4-19)ことから、既存の特許に制限される ことなく技術開発が進められていることがうかがえる。 これらの背景から、有機 EL 表示装置の駆動技術に関する技術分野では、すでに取得された 特許権に制限されることなく、新たにブレークスルーをもたらす技術の開発を進められる余 地があり、新たな技術や特許がまだこれから生まれてくる可能性があると考えられる。よっ て、引き続き、新たにブレークスルーをもたらす技術の確立を目指すことが期待される。 提言 6. 有機 EL 表示装置の特徴を生かした市場拡大 有機 EL 表示装置に特有の高画質、フレキシブル、高速駆動が可能等の性質を生かし た商品により新規マーケットを創生できる可能性があり、その特徴を生かした技術開発 が期待される。 液晶表示装置では携帯電話、テレビなどへの普及とともに市場を拡大させてきた。一方、 有機 EL 表示装置では特許出願から見ると多方面から技術開発が行われているにも関わらず、 充分な市場が形成されていない。有機 EL 表示装置においてもさらなる発展のためには、既存 - 38 - の表示装置からの置き換えとともに、有機 EL 表示装置の特性を生かした商品で新規マーケッ トを創生することが望まれる。有機 EL 表示装置は他の表示装置に比べ高画質であり、薄く曲 げることが可能なフレキシブルな表示装置を実現できるなどの特徴を持つ。また、画素単位 での応答速度が液晶表示装置より速く、クロストークが非常に少ないため 3D表示にも適し ている。これらの性質を生かすことで、従来のディスプレイでは実現できなかった商品市場 が創生されることが予想される。市場創生を推進する駆動技術の開発を行うことが期待され る。 - 39 -