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バイオセンサ−酵素・微生物を利用した電気化学計測

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バイオセンサ−酵素・微生物を利用した電気化学計測
平成19年度
特許出願技術動向調査報告書
バイオセンサ
− 酵素・微生物を利用した電気化学計測 −
(要約版)
<目次>
第1章 バイオセンサ−酵素・微生物を利用した電気化学計測−とは................1
第2章
バイオセンサ−酵素・微生物を利用した電気化学計測−の特許出願動向......3
第3章
バイオセンサ−酵素・微生物を利用した電気化学計測−の研究開発動向....26
第4章 バイオセンサに関連する産業活動......................................33
第5章 まとめ..............................................................36
第6章 提言................................................................37
平成20年4月
特
許
庁
問い合わせ先
特許庁総務部企画調査課
技術動向班
電話:03−3581−1101(内線2155)
第1章
バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-とは
酵素、微生物、抗体といった生体関連物質が有する分子識別機能を利用して、特異的な分
子の計測を行うものがバイオセンサである。1960 年代にグルコースオキシダーゼと酸素電極
を組み合わせた酵素電極が提案されて以来、多くのバイオセンサが開発されてきた。特に、
糖尿病におけるインスリン投与では血糖値のモニターが必須であり、血糖計を中心に健康・
医療分野においてバイオセンサは目覚しい発展を遂げている。さらに、食品・発酵産業や、
環境計測など多くの分野でバイオセンサが活躍している。
種々のバイオセンサが研究され、開発され、報告されている中で、本調査では「酵素・微
生物を利用した電気化学計測」に焦点を絞り調査を行う。酵素・微生物を利用した、電気化
学的原理によるバイオセンサは多くの分野で応用され発展してきている。さらに、新規な疾
患バイオマーカー計測など、今後もバイオセンサの需要は非常に高いと予想され、様々な改
良や新規デバイスに関する技術開発・研究が企業だけでなく大学等の研究機関で実施されて
いる。特に、この技術分野では我が国の企業が出願人上位にランクされ、我が国が得意とす
るデバイス開発と生体関連分子を融合させたユニークな製品であり、小型・高精度な製品が
望まれることから、今後の市場においても我が国の技術開発が重要な役割を果たすことが期
待される。
本調査の目的は、バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-における特許出
願技術動向を中心に、論文発表動向を調査し、バイオセンサにおける開発動向を調べ、我が
国の優位な技術、劣位な技術を明らかにすると共に、関連政策、市場環境を解析し、今後、
日本が目指すべき研究開発、技術開発の方向性を示すことにある。
バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-の技術俯瞰図を図-1 に示す。
図-1 バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-の技術俯瞰図
応用分野
周辺技術
IT技術
健康・医療
データ処理
データ通信
方向性
ュー
利用者の
身体的負荷削減
ー
電極
トランジスタ
(FET)
新規デバイス
(CCD、CMOS)
小型・安価・一体化
操作性
ィ
選
メ択
デ膜
・
エ
選択層(イオン感応膜、イオン感応物質、ガス透過膜)、メディエーター
ー
ー
タ
マテリアル
科学
新規材料
機能性高
分子
セキュリティ
ト
デラ
ン トランスデューサー(アンペロメトリー・ポテンショメトリー・クーロメトリー・その他)
ス
電界効果
先端ナノ材料・
サ
電気化学
製造技術
MEMS
μTAS
環境
連続計測・
体内埋め込み式
電気・半導
体技術
微細加工
技術
食品・発酵
分
素子
子識
別
固
定
化
層
ユビキタス社会
IT活用
固定化マトリックス(膜・高分子・多糖類・ガラス・金・その他)
固定化法(物理吸着・共有結合・架橋法・包括・複合・その他)
酵素
免疫
微生物
核酸
細胞
組織
酵素標識
非標識
活動産物
酵素反応
酵素標識
非標識
電気信号
酵素反応
電気信号
酵素反応
酵素標識
ゲノム・ポストゲノム技術
DNAシーケンシング 遺伝子改変 メタゲノム解析 耐熱性酵素
基質特異性向上 抗体スクリーニング モノクローナル抗体 アプタマー
- 1 -
フィールド検査
分光的計測が吸光度(濃度依存量)と波長(エネルギー関連量)の関係を表すのに対して、
電気化学的計測では電流(濃度依存量)と電位(エネルギー関連量)の関係を示すものであ
り、また、分光的計測では試料液全体の特性を反映するのに対して、電気化学的計測では電
極近傍の限られた場所での反応に限定されるという特徴がある * 。分子識別機能を有する物
質として酵素、微生物を使う場合は、酵素電極、微生物電極などが調査の対象となる。また、
免疫センサ・核酸センサの場合、酵素・微生物を標識剤として、電気化学的活性物質を生産
するまたは消費するような基質と電気化学的計測を組み合わせたものが調査の対象となる。
調査対象技術と応用産業に関する要素技術、測定項目および概要を表-2 に示す。
表-2 調査対象技術および応用産業
分類
要素技術、測定項目
原理
計測原理
アンペロメトリック
ポテンショメトリック
クーロメトリック
その他
構成技術
トランス
デューサー
測定対象分子
電極構造、材質、形状
電極製造方法
半導体素子
選択膜・
メディエーター
ガス透過膜
イオン感応膜
メディエーター
固定化層
固定化担体
固定化方法、固定化位置
共存物質
分子識別素子
酵素
微生物
抗体、核酸
測定方法
測定方式、使用形態
項目数
計算方法、較正方法
センサシステム
全体
試料採取方法、器具
測定前操作
測定操作
測定終了操作
健康・医療
糖関連物質
脂質、酵素、腎機能
遺伝子・タンパク質
食品・発酵
糖関連物質
アルコール、アミノ酸
微生物、化学物質
環境
BOD、アンモニア、亜硝酸
化学物質
セキュリティ
微生物、化学物質、毒物
応用技術
応用産業
*
概要
分子識別素子による反応の結果生じる電極活性物質の
濃度変化を計測する際に、電極上での酸化還元反応に伴
って流れる電流、計測対象物質の選択膜の膜電位、電気
化学的活性物質を全て電解して計測する電気量などの
種々の測定原理が用いられている。
分子識別素子における分子識別の結果生じる変化を検
出し、計測可能な信号に変換する作用を持つデバイスの
こと。酸素、過酸化水素などの電気化学的活性物質を検
出する電極や、FET などの電気的検出を行う半導体素子
などがある。
選択膜:目的の電極活性物質以外の共存成分を除去する
ため、電極表面などに設置される膜で、酸素電極では酸
素透過膜、pH 電極では水素イオン透過膜などがある。
メディエーター:電極表面における酵素の酸化還元反応
を共存する電子受容物質を介して電極反応と共役させ
ることで、効率的な電子授受を行わせることができる。
フェリシアン化物などがある。
分子識別素子をトランスデューサー表面に固定化する
層。分子識別素子の活性の維持、安定性などが重要な課
題である。物理吸着、共有結合、包括法、架橋法など分
子識別素子や担体の性状に合わせて種々の手法が用い
られる。
酵素、微生物、抗体などの特異的な分子識別機能を有す
る様々な生体関連物質が用いられる。抗体・核酸を用い
る場合、本調査では酵素を標識剤として利用するものが
対象となる。
対象となる項目の分析をバイオセンサで行うための
種々の工程に関する技術。繰り返し利用/使い捨て、バ
ッチ式/フロー式などの使用形態や、同時多項目計測、
濃度換算方法や精度確保のための較正方法なども含ま
れる。
バイオセンサの操作性を向上させるための工夫に相当
する技術。試料採取における負荷の低減、ミスのない測
定を実行するための工夫、データ送信などの IT 技術と
の融合などが含まれる。
糖尿病患者におけるインスリン投与前の血糖値測定計
がバイオセンサの代表的製品である。血液等の生体試料
を用いて、疾患の診断や健康度のチェックなどを行うも
の。酵素センサや免疫センサ、核酸センサが用いられる。
発酵食品における各種の糖の濃度計測や、アルコール濃
度の計測など、主に製造現場におけるプロセス管理に用
いられる。その他、残留農薬、微生物なども対象となる。
BOD や環境試料中の窒素、リンなど汚染物質の計測が行
われている。近年では、農薬など毒性の化合物を簡易計
測することも試みられている。
新興感染症、生物テロなどにおける病原性微生物の検出
や、覚せい剤、毒物などの化合物の検出など、安心・安
全な社会に向けて検出装置の開発が行われている。
バイオ電気化学の実際-バイオセンサ・バイオ電池の実用展開-、巻頭言
- 2 -
シーエムシー出版(2007)
第2章
バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-の特許出願動向
バイオセンサに関して世界各国へ出願された特許を対象に、バイオセンサの技術俯瞰図に
基づく特許動向解析を行った。調査は、日本、米国、欧州、韓国、中国、オーストラリアに
出願および登録された特許を対象とし、また、日米欧韓中の 5 ヶ国・地域を合計して世界の
主要国として解析した。欧州に関する定義は、42 頁の注に記載した。
出願件数については各国(地域)への出願の公報一つ一つを個別に 1 件としてカウントし
ている。ただし、世界の主要国の解析では、同じ優先権を主張する発明については 1 件とし
てカウントした。出願動向の解析は、日本は優先権主張年 1970-2005 年、海外は優先権主張
年 1993-2005 年を対象とした。日本特許は PATOLIS、海外特許は WPINDEX(STN)を用いて検索した。
注:優先権主張年が 2005 年のデータについては、データベースへの収録が遅れているため実数を反映していない可能性
がある。
第1節
日本への出願状況
◆◇◆
日本がリードするバイオセンサ開発
~日本がリードするバイオセンサ開発
近年、発明の中心が操作性の改良に移行し、出願シェアは低下傾向に
◆◇◆
近年、操作性の改良が発明の中心に移行し、出願シェアは低下傾向に~
1970-2005 年の日本への国籍別出願件数の推移と出願件数シェアを図-3 に示す。1960 年代
のバイオセンサの創成期に引き続いて 1987 年まで順調に特許出願件数が増加している。その
後減少したが、1990 年代終盤より再び増加している。日本国籍出願人の出願件数シェアは
78%と高いが、期間別にみると日本のシェアの低下と米欧の拡大が顕著である(図-4)。
図-3 出願人国籍別出願件数の推移と、出願件数シェア(日本への出願)
160
優先権主張年
1970-2005
140
131
120
出
願
件
数
137
113 115
102
92
88 89
92 92
88
77
49
79
76
65 68
63
60
127
110
103
100
80
131
111
中国籍
0件
韓国籍0.0%
20件
0.8%
70
70
66
欧州国籍
193件
7.6%
その他
27件
1.1%
米国籍
312件
12.2%
45
40
オーストラリ
ア国籍
2件
0.1%
32
25
20
19
日本国籍
1994件
78.3%
12
1
0
3
3
2
2
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
それぞれの特許出願における課題と解決手段
を図-5 に示す。縦軸に課題、横軸にその解決手
図-4 期間別 出願人国籍別出願件数シェア
(日本への出願 )
段を示し、1 件の出願で複数の項目が当てはま
90%
欧 130件
80%
米 242件
70%
ランスデューサーの電極構造、電極材料、新デ
時固定化物質、分子識別素子の新規項目対応識
その他 18件
オ 1件
韓 20件
その他 7件
オ 1件
欧 53件
米 55件
その他 2件
欧 10件
米 15件
100%
る場合もある。解決手段として多いものは、ト
バイス、製造方法、固定化層の構造・配置、同
合計
出
願
件
数
別素子(酵素)、測定方法の反応条件、補正・較
正方法、データ処理、センサシステムの流路の
60%
50%
40%
日
306件
日
836件
30%
20%
10%
0%
優先権主張年
1970-1982
構造、試料採取・採血器具である。
日本国籍
優先権主張年
1983-1992
優先権主張年
1993-2005
優先権主張年
出願人国籍
- 3 -
日
852件
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
図-5 バイオセンサの課題と解決手段のバブル図(日本への出願:全期間:1970-2005 年)
精度
速度
操作性
168
76
64
9
16
48
45
47
57
11
22
105
10
69
20
43
14
13
31
12
13
5
8
19
9
7
2
2
4
9
12
9
1
2
6
2
8
2
3
4
3
20
5
1
24
8
共存物質の影響
74
22
21
16
1
4
42
29
36
8
19
66
3
60
20
18
9
29
7
3
8
3
3
2
27
38
8
12
5
32
25
15
59
16
3
6
30
14
26
12
14
4
8
3
4
1
4
3
4
12
3
2
3
3
9
6
1
5
1
21
28
23
10
1
55
22
15
41
11
1
5
3
11
11
9
6
10
2
25
27
21
55
23
16
10
19
18
18
13
8
1
4
11
9
6
17
1
4
3
1
3
4
1
1
3
17
13
4
22
1
1
1
1
1
7
2
2
2
1
6
4
3
1
1
1
2
3
1
2
2
4
3
3
2
9
16
9
19
22
17
1
1
再現性
98
42
20
15
8
41
19
29
33
7
10
50
7
47
19
22
7
8
16
3
1
4
2
6
21
29
26
測定範囲
31
5
7
1
1
4
14
13
9
3
3
16
7
24
12
5
2
4
9
1
3
1
1
4
4
6
4
直線性
30
9
4
5
1
5
13
7
12
6
37
4
25
6
6
7
2
8
2
4
3
2
7
11
1
温度特性
8
使用温度域
1
較正方法の簡易化
16
2
11
12
144
37
58
12
14
20
計測時間短縮
1
1
1
3
4
5
1
2
6
22
29
35
6
12
106
自動化
29
5
14
5
2
8
8
6
2
1
1
9
試料の微量化
79
8
20
1
3
9
3
7
4
1
2
21
前処理自動化・簡便化
27
5
8
1
4
8
8
8
1
1
13
1
2
1
試料採取方法
19
5
取り違え防止
12
1
ディスポーザブル化
30
12
11
2
1
1
6
1
1
5
1
1
1
1
1
6
9
2
1
4
2
1
57
16
31
4
3
1
14
40
22
10
2
2
2
1
1
5
3
5
5
2
53
36
20
11
2
15
75
17
29
4
48
55
21
73
14
1
5
1
1
7
8
1
2
21
10
17
2
17
36
26
41
7
1
2
11
14
27
20
10
3
1
6
1
1
4
11
2
5
1
2
5
3
54
12
1
10
30
9
8
5
30
19
13
2
3
2
13
1
1
4
19
2
2
1
11
10
11
18
4
1
7
8
11
10
9
2
6
1
1
2
1
3
2
26
9
2
21
15
21
4
56
1
1
1
6
9
6
12
9
6
10
3
1
1
1
1
18
4
21
8
6
3
14
2
1
30
13
37
3
7
2
6
7
3
1
3
12
4
1
1
5
4
9
1
4
13
3
4
2
6
10
7
10
3
1
3
2
1
2
1
10
1
2
13
2
6
1
3
2
1
3
1
14
19
6
4
5
6
1
3
1
3
3
8
2
2
3
2
1
1
1
1
1
同時多項目
49
10
20
3
19
12
8
11
4
5
28
1
21
3
3
3
11
2
4
1
識別素子の寿命
39
8
6
1
3
10
5
11
23
3
8
34
3
27
8
25
4
4
9
6
2
6
電極の耐用
59
33
18
3
10
28
24
19
26
8
10
38
4
32
11
18
4
8
1
2
固定化層の耐用
11
6
5
7
2
3
32
20
27
4
6
耐湿性(センサ全体)
4
1
5
19
4
37
3
2
1
1
2
2
1
1
1
1
1
2
1
1
1
5
2
9
28
3
1
5
1
1
1
3
1
2
1
1
2
15
2
5
1
1
1
7
1
1
1
8
3
6
1
2
1
3
1
4
1
3
2
3
2
5
1
3
4
3
センサ寿命
コスト
用途
その他
耐熱性(センサ全体)
1
振動・衝撃などへの耐性
4
1
1
1
1
1
1
1
3
1
1
5
1
2
2
1
1
1
1
小型
97
26
55
2
22
33
3
8
15
11
7
40
12
7
13
2
3
1
4
3
1
1
8
2
4
1
11
8
3
29
9
ランニングコスト
50
43
13
3
5
27
7
7
7
4
2
24
3
11
10
9
1
2
5
4
1
5
1
7
22
4
1
1
6
10
5
22
9
製造安定性
58
23
15
5
13
57
6
5
16
5
3
37
2
19
18
18
6
7
13
1
1
9
8
2
1
1
18
6
8
4
1
2
3
23
2
18
3
11
15
7
10
5
4
20
21
2
2
2
16
14
27
22
2
7
37
2
19
8
18
8
4
47
10
12
9
8
2
10
27
8
10
7
15
19
15
34
8
1
2
23
21
10
5
4
6
7
4
3
3
7
1
12
3
2
3
1
50
9
8
4
2
3
20
19
5
2
1
13
6
6
12
1
1
1
6
3
1
1
測定場所
9
7
9
2
3
1
1
1
5
1
3
1
1
1
5
4
4
6
2
2
1
4
1
7
3
3
その他
11
1
4
1
3
1
1
3
7
1
2
1
2
2
1
7
2
3
1
1
5
5
4
4
4
電
極
構
造
電
極
材
料
新
デ
バ
イ
ス
集
積
化
製
造
方
法
新
材
料
複
数
組種
みの
合
わ
せ
固
定
化
方
法
構
造
固
定
化
濃
度
同
時
固
定
化
物
質
反
応
条
件
新
規
材
料
新
規
材
料
新
規
材
料
補
助
物
質
反
応
条
件
電
極
電
位
計
測
時
間
セ
ン
サ
チ
本
体
付
加
物
反
応
試
薬
流
路
の
構
造
・
形
状
セ
ン
サ
チ
リ
ン
カ
デ
タ
濃処
度理
計
算
方
法
そ
の
他
の
デ
担
体
酵
素
類
似
反
応
物
プ
形
状
プ
付
加
物
セ
ン
サ
管
理
機
構
1
)
)
)
選択膜・透過膜
メディエーター
補
酵
素
な
ど
補
正
・
較
正
方
法
タ
処
理
基
材
・
流
路
の
材
質
基
材
表・
面流
処路
理の
試
料
拡溶
散液
速の
度
調
節
構
造
分子識別素子
6
2
9
1
5
4
センサシステム
16
1
1
1
21
試
料
採
取
・
採
血
器
具
ロ
デ デ
タ 遠タ
通 隔の
信 医利
療用
な・
ど
そ
の
他
10
ト
管
理
IT利用
測定
固定化層
1
3
ー
そ
の
他
標
識
物
質
7
4
2
ー
微
生
物
構
造
改
変
1
ッ
酵
素
機
能
改
変
)
新
規
識項
別目
素対
子応
(
新
規
識項
別目
素対
子応
(
)
ー)
新
規
識項
別目
素対
子応
(
)
トランスデューサー
(
配
置
(
積
層
位
置
2
(
形
状
(
解決手段
補
正
・
較
正
方
法
2
ッ
18
3
ッ
11
4
ー
42
9
ー
45
(
63
16
、
応用分野拡大
新規測定項目
)
- 4 -
課
題
高感度化
特異性改善
◆◇◆
特許出願件数が増加している課題は、特異性、操作性、用途 ◆◇◆
~特許出願件数が増加している課題は、特異性、操作性、用途~
課 題 別 に 期 間 別 の 出 願 件 数 を 表 -6 に 示 す 。 期 間 内 の 全 出 願 件 数 は 、 前 期 (1970-1992
年)1,285 件、後期(1993-2005 年)1,263 件である。後期に出願が増加した課題は、操作性、
用途に関する課題、特異性、較正方法などであり、出願が減少した課題は、計測時間短縮、
同時多項目計測、センサ寿命等である。
図-5 から、特異性の
表-6 期間別 課題別出願件数(日本への出願)
改善には、分子識別素
課題
子の新規項目対応酵素
や酵素の機能改変が主
な解決手段として利用
されていることが分か
精度
る。操作性で特に増加
が顕著な試料の微量化、
採取方法では、電極構
速度
造、流路の構造、セン
サチップ形状、採取機
操作性
構などが主な解決手段
である。用途で増加が
大きい応用分野拡大で
は、電極構造、電極材
センサ寿命
料、新規デバイスとい
ったトランスデューサ
ーと、新規項目対応識
コスト
別素子といった分子識
別素子が主な解決手段
用途
に係る技術である。
その他
高感度化
特異性改善
共存物質の影響
再現性
測定範囲
直線性
温度特性
使用温度域
較正方法の簡易化
計測時間短縮
自動化
試料の微量化
前処理自動化・簡便化
試料採取方法
取り違え防止
ディスポーザブル化
同時多項目
識別素子の寿命
電極の耐用
固定化層の耐用
耐湿性(センサ全体)
耐熱性(センサ全体)
振動・衝撃などへの耐性
小型
ランニングコスト
製造安定性
応用分野拡大
新規測定項目
測定場所
その他
全期間
1970-2005
521
99
385
351
130
120
39
13
78
533
125
153
124
103
37
94
139
177
184
120
14
9
6
196
188
203
200
108
46
68
前期
1970-1992
256
21
189
178
76
53
22
4
17
329
51
49
63
11
1
35
79
83
108
76
3
0
2
102
94
99
69
45
13
31
後期
1993-2005
265
78
196
173
54
67
17
9
61
204
74
104
61
92
36
59
60
94
76
44
11
9
4
94
94
104
131
63
33
37
出願件数の増えた課題
出願件数の減った課題
◆◇◆
特許出願動向に表れる、バイオセンサの発展 ◆◇◆
~技術区分別出願動向に表れる、バイオセンサの発展~
表-2 で示したようにバイオセンサは、トランスデューサー、選択膜・メディエーター、固
定化層、分子識別素子の 4 つの構成技術に、測定方法、センサシステム全体の 2 つの応用技
術を合わせた 6 つの技術区分に分けることができる。技術区分別の出願件数推移をみると、
バイオセンサの発展の状況が非常に明確に表れていることがわかる(図-7)。酵素電極の創成
期である 1980 年代からみていくと、まず、測定方法が出現し、次にトランスデューサーの出
願が増加し、少し遅れて固定化層がピークを示している。この直後の 1991 年に電極式血糖計
が上市され、この製品開発に係る出願であることが推測される。
その後、製品の改良、特に操作性の改良を課題とするセンサシステム全体に係る出願が大
きく増加し、さらに、近年、分子識別素子が増加傾向を示している。
- 5 -
日米欧の技術区分別出願
図-7 技術区分別
件数比率の比較では、日本
80
はトランスデューサー、固
70
定化層、測定方法、センサ
60
システム全体など、多くの
次にトランス
デューサー
技術分野に出願があり、米
欧に比べて固定化層、分子
少し遅れて
固定化層
近年は操作性改良
まず測定方法
50
出
願
件
数
出願件数の推移(日本への出願)
40
30
識別素子の比率は高い。米
20
国は、測定方法、センサシ
10
ステム全体といった応用技
0
分子識別素子が増加
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
術の出願比率が非常に高く、
優先権主張年
その他の構成技術に関する
トランスデ ュー サー
分子識別素子
出願が少ない。欧州は、日
選択膜・メデ ィエーター
測定方法
固定化層
センサシステム全体
1991年 電極式血糖計上市
本と米国の中間的な出願比
率である(図-8)。
表-9 に、技術区分別の出願人国籍別
図-8 出願人国籍別 技術区分別出願比率
出願件数と比率を示す。いずれの技術区
(日本への出願:1970-2005 年)
分 でも 日本国 籍出 願人の 出願 件数が 最
100%
多であるが、特に、トランスデューサー、
536
固定化層、分子識別素子では 80%を超え
75
80%
151
347
27
150
5
40%
68
419
25
10
19
107
20%
ている。選択膜・メディエーター、セン
センサシステム全体
測定方法
分子識別素子
固定化層
選択膜・メディエーター
トランスデューサー
60%
サシステム全体では、70%以下と比較的
比率が低く、米国籍出願人の比率が高い。
分子識別素子、センサシステム全体の
18
各技術区分について、出願人国籍別出願
23
435
43
41
件数の推移を図-10 に示す。
0%
日本
米国
欧州
表-9 技術区分別 出願人国籍別出願件数と出願比率(日本への出願:1970-2005 年)
トランス
デューサー
件数
比率
435
81.5
41
7.7
43
8.1
5
0.9
0
0.0
0
0.0
10
1.9
534
100%
技術区分
出願人国籍
日本
米国
欧州
韓国
中国
オーストラリア
その他
合計
選択膜・メディ
エーター
件数
比率
107
69.9
23
15.0
18
11.8
2
1.3
0
0.0
1
0.7
2
1.3
153
100%
固定化層
件数
419
19
25
2
0
0
5
470
分子識別素子
比率
89.1
4.0
5.3
0.4
0.0
0.0
1.1
100%
件数
150
10
5
0
0
0
2
167
センサ
システム全体
件数
比率
536
69.1
151
19.5
75
9.7
8
1.0
0
0.0
1
0.1
5
0.6
776
100%
測定方法
比率
89.8
6.0
3.0
0.0
0.0
0.0
1.2
100%
件数
347
68
27
3
0
0
3
448
比率
77.5
15.2
6.0
0.7
0.0
0.0
0.7
100%
図-10 分子識別素子、センサシステム全体に関する出願人国籍別出願件数の推移(日本への出願)
20
16
優先権主張年
70
1970-2005
70
分子識別素子
14
出
願
件
数
19 80
優先権主張年
1970-2005
18
センサシステム全体
60
58
55
12
11
11
10
10
9
8
8
11出
願
10 10
件
数
6
5
5
5
4
3
3
2
2
2
3
3
1
25
23
16 17
10
2
1
5
1
0
1
1
8
3
11
23
15
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
近年増加、海外からの出願多い
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
- 6 -
22 23
16
14
1990
合計
20
18
1989
その他
1988
オーストラリア国籍
1987
中国籍
1986
韓国籍
1985
欧州国籍
1984
1983
1982
米国籍
15
11
1981
1980
日本国籍
19 20
5
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
近年増加、日本が圧倒的に優位
2
1972
1971
1970
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
0
優先権主張年
出願人国籍
42
38
20
4
43
35
32
6
5
4
45
40
30
7
6
50
25
◆◇◆
技術区分別の課題の変遷
出願件数が増加した課題が多い技術区分
分子識別素子、センサシステム全体
出願件数が減少した課題が多い技術区分
選択膜・メディエーター、固定化層
◆◇◆
技術区分別に、期間別に課題を集計し、出願件数が増減した主な課題を表-11 に示す。増
加した課題が多い技術区分は、分子識別素子、センサシステム全体であり、減少した課題が
多い技術区分は、選択膜・メディエーター、固定化層である。トランスデューサー、測定方
法は、増減ともに多い。
表-11 技術区分別
課題別・期間別出願件数(日本への出願)
トランスデューサー
課題
精度
高感度化
精度
特異性改善
速度
選択膜・メディエーター
前期
後期
課題
前期
後期
70
83
速度
計測時間短縮
19
8
5
10
センサ寿命
電極の耐用
16
4
計測時間短縮
77
45
操作性
試料の微量化
15
27
操作性
試料採取方法
2
11
固定化層
課題
前期
後期
操作性
ディスポーザブル化
10
21
精度
再現性
43
13
センサ寿命
識別素子の寿命
23
13
速度
計測時間短縮
85
32
センサ寿命
電極の耐用
44
26
操作性
ディスポーザブル化
14
3
コスト
小型
45
22
センサ寿命
電極の耐用
28
8
用途
応用分野拡大
7
39
センサ寿命
固定化層の耐用
53
16
用途
新規測定項目
6
16
コスト
製造安定性
43
13
分子識別素子
センサシステム全体
課題
前期
後期
課題
前期
後期
精度
高感度化
8
22
精度
特異性改善
2
22
精度
特異性改善
5
30
精度
共存物質の影響
25
56
センサ寿命
識別素子の寿命
7
16
精度
測定範囲
19
14
コスト
製造安定性
3
22
精度
直線性
5
22
精度
較正方法の簡易化
2
24
操作性
試料の微量化
14
55
操作性
試料採取方法
6
59
操作性
取り違え防止
0
29
測定方法
課題
前期
後期
精度
高感度化
40
精度
測定範囲
19
9
操作性
ディスポーザブル化
8
30
精度
較正方法の簡易化
13
20
操作性
同時多項目
22
16
操作性
自動化
9
15
センサ寿命
識別素子の寿命
10
26
操作性
試料の微量化
9
14
センサ寿命
電極の耐用
10
29
操作性
試料採取方法
2
19
センサ寿命
固定化層の耐用
4
10
センサ寿命
識別素子の寿命
5
12
コスト
ランニングコスト
20
40
コスト
ランニングコスト
20
14
用途
応用分野拡大
25
57
用途
新規測定項目
12
21
用途
測定場所
8
19
■出願件数の増えた課題
前期:1970-1992 年
23
■出願件数の減った課題
後期:1993-2005 年
計測時間短縮は 3 技術区分で出願件数が大きく減少している。バイオセンサ創成期の主な
課題であり、前期においてほぼ技術的な解決が成されたものと考えられる。
- 7 -
第2節
世界への出願状況
世界への出願も日本が優位
◆◇◆ 世界の主要国の中でも特許出願件数は、日本が優位
固定化層、分子識別素子、測定方法で
50%超の出願シェア
固定化層、分子識別素子、測定方法で
50%超の出願シェア
◆◇◆
1993-2005 年の世界の主要国への国籍別出願推移と出願件数シェアを図-12 に示す。日本が
優位で 45%の出願シェアである。また、技術区分別にみても、すべての技術区分で日本が 1 位
である。特に固定化層、
分子識別素子、
測定方法では 50%以上の出願件数シェアである(表-13)
。
注:世界の主要国への出願は、日米欧韓中の五極への出願を、同じ優先権を主張
する発明について 1 件としてカウントする「発明単位」で集計した。
図-12 出願人国籍別出願件数の推移と、出願件数シェア(世界の主要国への出願)
250
236
優先権主張年
1993-2005
214
200
中国籍
69件
3.6%
188
173
160
151
出
願
件
数
122
101
97
100
120
48
50
47
3213
1
25
16
21 1
21 3
3
39
50
39
22 1
35
3
52 4
51 3
85 5
1
66
107 13
28
26
21
14
25
14
8
4
2019
3
米国籍
512件
26.6%
8 7
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
日本国籍
862件
44.7%
42
27
22
10
2
67
59
39
24
欧州国籍
341件
17.7%
88
69
50
4746
37
23
2125
2024
88
80
79
68
66
50
123
97
87
その他
80件
4.1%
韓国籍
62件
3.2%
140
150
オーストラリ
ア国籍
2件
0.1%
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
表-13 技術区分別 出願人国籍別出願件数と出願比率(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
技術区分
出願人国籍
日本
米国
欧州
韓国
中国
オーストラリア
その他
合計
◆◇◆
トランス
デューサー
件数
比率
166
45.6
70
19.2
71
19.5
16
4.4
17
4.7
2
0.5
22
6.0
364
100%
選択膜・メディ
エーター
件数
比率
36
34.6
32
30.8
22
21.2
6
5.8
3
2.9
1
1.0
4
3.8
104
100%
固定化層
件数
118
37
30
7
27
1
5
225
分子識別素子
比率
52.4
16.4
13.3
3.1
12.0
0.4
2.2
100%
件数
87
36
31
2
1
1
6
164
測定方法
比率
53.0
22.0
18.9
1.2
0.6
0.6
3.7
100%
件数
160
88
44
10
6
1
11
320
比率
50.0
27.5
13.8
3.1
1.9
0.3
3.4
100%
センサ
システム全体
件数
比率
295
39.3
249
33.2
143
19.1
20
2.7
10
1.3
1
0.1
32
4.3
750
100%
ライフサイエンス関連技術では数少ない
世界的に優位な状況を示すバイオセンサ ◆◇◆
ライフサイエンス分野では米国が優位な技術が多く、平成 18 年度特許出願技術動向調査で
は、米国が 52%を占めるのに対して、日本はわずかに 13%である。こうした状況の中で、バ
イオセンサは日本が世界に優位性を示せる数少ないライフサイエンス関連技術の一つである。
10,000
6,000
1999-2005年
9,000
5,000
出
願
件 4,000
数
8,000
7,000
(
6,000
5,000
4,000
)
2,000
1,000
1,000
0
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
出願人国籍
優先権主張年
日本
米国
欧州
中国
韓国
総数
- 8 -
韓国籍
2%
その他
4%
日本国籍
13%
11%
総
数
)
3,000
(
日 3,000
米
欧
中 2,000
韓
出
願
件 中国籍
数
米国籍
52%
欧州国籍
18%
ポストゲノム関連技術
(H18 特許出願技術動向調査)
技術区分別の出願推移と出願比率を
図-14 技術区分別出願推移と出願比率
図-14 に示す。センサシステム全体が
(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
120
39%、トランスデューサー19%、測定
100
方法 17%などの出願比率が高い。
日米欧の技術区分別出願比率を比較
すると、米国はセンサシステム全体が
80
出
願
件
数
60
半数近い比率を占める。日本と欧州は
40
比較的似た比率を示している。
20
0
2005
2004
20%
2003
295
249
87
88
31
118
36
30
36
37
32
22
70
セン サシス
テム全体
750件
39%
71
◆◇◆
米国
選択膜・メ
ディエー
ター
103件
5%
固定化層
224件
12%
分子識別素
子
163件
8%
測定方法
319件
17%
0%
日本
固定化層
センサシステム全体
トランス
デューサー
365件
19%
センサシステム全体
測定方法
分子識別素子
固定化層
選択膜・メディエーター
トランスデューサー
160
166
選択膜・メディエーター
測定方法
143
44
40%
2002
60%
2001
優先権主張年
トランスデュー サー
分子識別素子
80%
2000
100%
1999
1998
1997
1996
1995
341件
1994
512件
1993
862件
欧州
日米欧韓中 五極間の出願収支
日本は国内出願、米国はグローバル出願する傾向
1993-2005 年の日米欧
韓中の五極間の出願収支
図-15 五極間出願収支
中国籍
0件
0%
日本への出願
1263件
韓国籍
20件
1.6%
(1993-2005 年)
その他
18件
1.4%
欧州国籍
130件
10.3%
の関係を図-15 に示す。
米国籍
242件
19.2%
日本の出願収支は、米国
への出願では 34 件のマイ
ナス、欧州への出願では
オーストラリア国
籍
1件
0.1%
◆◇◆
日本国籍
852件
67.5%
242件
米国への出願
1184件
130件
欧州への出願
1283件
219件
208件
89 件のプラス、中国への
出願では 121 件のプラス、
韓国への出願では 4 件の
マイナスである。米国は
すべての国に対して、プ
中国籍
0件
0%
韓国籍
32件
2.7%
オーストラリア国
籍
2件
0.2%
欧州国籍
207件
17.5%
その他
58件
4.9%
0件
中国籍
1件
0.1%
韓国籍
25件
1.9%
23件
207件
日本国籍
208件
17.6%
32件
19件
その他
36件
2.8%
日本国籍
219件
17.1%
欧州国籍
515件
40.1%
485件
米国籍
677件
57.2%
オーストラリア国
籍
2件
0.2%
米国籍
485件
37.8%
1件
ラスの出願収支を示す。
25件
97件
日本は海外に出願する
0件
121件
13件
比率が低く、他方、米国
は海外に出願する比率が
高いことがわかる。
中国への出願
354件
オーストラリア国
籍
2件
0.6%
中国籍
63件
17.8%
韓国籍
16件
4.5%
欧州国籍
35件
9.9%
- 9 -
その他
20件
5.6%
35件
69件
中国籍
0件
0%
0件
日本国籍
121件
34.2%
16件
オーストラリア国
その他
籍
1件
1件
0.6%
0.6%
韓国籍
57件
35.6%
米国籍
97件
27.4%
欧州国籍
13件
8.1%
日本国籍
19件
11.9%
米国籍
69件
43.1%
韓国への出願
160件
第3節
出願人属性
◆◇◆
出願人属性の比較
企業の出願を中心としつつ、共同出願では
企業-大学・研究機関が多い日本、企業-企業が多い米欧
◆◇◆
図-16 に、日本への出願(1970-2005 年)、米国への出願(1993-2005 年)における、日米
欧出願人の属性別出願件数の比率を示す。日本への出願では、いずれも企業が多くを占め、
共同出願は米欧の出願人は少ない。日本の共同出願は、企業-大学・研究機関に関するもの
が約半数を占める。米国への出願では、日本は企業の単独出願が多いが、米欧は共同出願も
多い。共同出願の内訳は、日米欧の出願人とも、企業-企業、企業-個人が多い。
注:出願人が個人の場合、当人の所属する属性が大学等、特定できる場合は所属する属性に含めた。
図-16 出願人国籍別
出願人属性と共同出願の内訳(日本への出願、米国への出願)
日本への出願(1970-2005 年)
出願人属性
共同出願の内訳
日本国籍出願人
大学
50件
2.5%
研究機関
80件
4.0%
個人
4件
0.2%
共願
179件
9.0%
研-研
1件
0.6%
大-研
6件
3.4%
企-大-研
2件
1%
企-研
32 件
17.9%
米国籍出願人
個人
5件
1.6%
研究機関
1件
0.3%
大-研
1件
7.7%
欧州国籍出願人
共願
9件
4.7%
個-個
3件
33.3%
研究機関
7件
3.6%
企-大
2件
15.4%
企-個
3件
23.1%
大-研
1 件 大-大
11.1%
0件
0.0%
研究機関
11件
1.6%
大学
18件
2.7%
企-大
2件
0.7%
研-個
1件
1.0%
企-大
3件
33.3%
企業
81件
39.1%
共願
104件
50.2%
企-個
1件
11.1%
企-個
59件
22.1%
企-企
178件
66.7%
個人
47件
6.9%
大学
19 件
9.8%
企業
147 件
76.2%
企業
334件
49.3%
研-個
1件
0.4%
大-個
26件
9.7%
大-研
1件
0.4%
共願
267件
39.4%
企-企
3件
23.1%
個-個
3件
23.1%
大-大
1件
7.7%
企-大
1件
3.4%
企-研
1件
3.4%
共願
13 件
4.2%
企業
278 件
89.1%
企-企
14件
48.3%
企-個
10件
34.5%
企業
171件
82.2%
企-大
58 件
32.4%
大学
15 件
4.8%
個人
11 件
5.7%
大-大
1件
3.4%
研究機関
2件
1.0%
企-企
69 件
38.5%
個-個
1件
3.4%
大-個
1件
3.4%
共願
29件
13.9%
個人
6件
2.9%
大-大
11 件
6.1%
企業
1681件
84.3%
米国への出願(1993-2005 年)
出願人属性
共同出願の内訳
大-個
3件
2.9%
大-研
3件
2.9%
企-研
1件
11.1%
大学
3件
1.4%
研究機関
4件
1.9%
個人
15件
7.2%
個-個
2件
1.9%
企-研-個
1件
企-大-個
1.0%
5件
4.8%
企-企
31件
29.8%
企-個
46件
44.2%
大-大
2件
1.9%
企-大
8件
7.7%
企-研
2件
1.9%
図-17 に技術区分別に、日本国籍出願人の日本への出願における属性別の比率を示す。分
子識別素子で大学が多いこと、分子識別素子、測定方法、センサシステム全体では共同出願
も比較的多いという特徴がある。
図-17 技術区分別
研究機関
15 件
3.4%
日本国籍出願人の出願人属性別出願比率(日本への出願:1970-2005 年)
トランス
選択膜・
デューサー
メディエーター
個人
0 件
0.0%
共願
35 件
8.0%
研究機関
1件
大学 0.9%
個人
0件
0.0%
分子識別素子
測定方法
研究機関
19 件 個人
1件
4.5%
0.2%
共願
26 件
6.2%
研究機関
5件
3.3%
個人
0件
0.0%
共願
15件
10.0%
研究機関
19 件
5.5%
大学
6件
1.4%
大学
23件
15.3%
企業
98件
91.6%
企業
379 件
87.1%
センサシステム
全体
共願
5件
4.7%
3件
2.8%
大学
6件
1.4%
固定化層
企業
107件
71.3%
企業
367 件
87.6%
- 10 -
大学
4件
1.2%
個人
0件
0.0%
共願
45 件
13.0%
個人
研究機関
3件
0.6%
共願
53 件
9.9%
21 件
3.9%
企業
279 件
80.4%
大学
8件
1.5%
企業
451 件
84.1%
第4節
研究開発リーダー
◆◇◆
研究開発リーダー:総合ポイント
トップは松下電器産業
◆◇◆
1993-2005 年のバイオセンサ全体の出願先国別(日米欧、世界)の出願人ランキングを表
-18 に、技術区分別出願人ランキング(世界の主要国への出願)を表-19 に示す。
表-18 出願先国別
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
日本への出願
松下電器産業
アークレイ
ROCHE AG
LIFESCAN, INC.
TOTO
日本電気
BAYER AG
産業技術総合研究所
表-19 技術区分別
順位
1
2
3
4
5
6
7
順位
1
2
3
4
5
6
出願人ランキング(バイオセンサ全体:1993-2005 年)
件数
世界の主要国への出願
件数
167
69
62
57
36
34
33
31
松下電器産業
LIFESCAN, INC.
ROCHE AG
アークレイ
BAYER AG
日本電気
産業技術総合研究所
TOTO
177
87
85
79
44
34
34
34
米国への出願
LIFESCAN, INC.
ROCHE AG
松下電器産業
THERASENSE, INC.
ABBOTT LABORATORIES
BAYER AG
CYGNUS
件数
117
92
91
77
54
52
51
欧州への出願
LIFESCAN, INC.
ROCHE AG
松下電器産業
BAYER AG
アークレイ
SIEMENS AG
ABBOTT LABORATORIES
件数
152
124
111
70
55
37
35
出願人ランキング(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
トランスデューサー
松下電器産業
LIFESCAN, INC.
アークレイ
SIEMENS AG
日本電気
件数
分子識別素子
東洋紡績
早出 広司
MCGILL UNIVERSITY
LEYLAND-JONES, Brian
松下電器産業
件数
29
16
12
8
8
24
22
13
12
9
選択膜・メディエーター
ROCHE AG
LIFESCAN, INC.
TOTO
NOK
THERASENSE, INC.
件数
測定方法
松下電器産業
王子製紙
アークレイ
LIFESCAN, INC.
BAYER AG
ROCHE AG
件数
11
8
7
5
5
25
22
21
21
14
13
固定化層
松下電器産業
アークレイ
CHANGCHUN APPLIED CHEMISTRY
NOK
産業技術総合研究所
日本電気
ROCHE AG
センサシステム全体
松下電器産業
ROCHE AG
LIFESCAN, INC.
アークレイ
BAYER AG
ABBOTT LABORATORIES
件数
49
8
7
6
5
5
5
件数
62
48
38
33
23
22
世界の主要国と日米欧の出願先国別のバイオセンサ全体、および技術区分別の出願人ラン
キングに対して、各出願人に 1 位 5 点、2 位 4 点、3 位 3 点、4 位 2 点、5 位 1 点を与えた総
合ポイントでは、松下電器産業が 86 ポイントで 1 位であった(表-20)。6 位までを血糖計関
連企業が占めている。東洋紡績と早出広司氏の 2 者は、分子識別素子のみで出願件数上位で
あるが、すべての出願先国で上位であるため、総合ポイントでも上位となっている。
表-20 出願人総合ポイント
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
(1993-2005 年)
出願人
松下電器産業
LIFESCAN, INC.
ROCHE AG
アークレイ
THERASENSE, INC.
BAYER AG
東洋紡績
早出 広司
表-21 大学・研究機関の上位出願人
総合ポイント
86
81
63
36
20
18
16
16
順位
1
2
3
4
(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
大学・研究機関
産業技術総合研究所
MCGILL UNIVERSITY
科学技術振興機構
INSTITUT FUER CHEMO- UND BIOSENSORIK
件数
34
14
13
11
MUENSTER E.V.
5
6
7
HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM
CHANGCHUN APPLIED CHEMISTRY
国際環境技術移転研究センター
大学・研究機関の出願人ランキング(世界の主要国への出願)を表-21 に示す。企業に比べて出願
件数は非常に少ない。上位に産業技術総合研究所、科学技術振興機構等の日本勢が入っている。
- 11 -
8
7
7
第5節 注目研究開発テーマ
1.微量試料による血糖自己測定
◆◇◆
血糖自己測定機の高機能化に係る技術
世界では日米が拮抗
日本への出願では近年、米国が出願シェアを拡大
◆◇◆
バイオセンサにおける最大の市場を持つ製品は、糖尿病患者の血糖自己測定に係る小型血
糖測定計である。小型血糖計の試料量削減は目覚しい進歩を遂げ、現在では、わずか 1μL
以下の全血試料で測定できる製品が次々に市場に登場し、患者の身体的負荷の低減に貢献し
ている。
調査対象の特許出願から、
「試料の微量化」を課題として分類された特許出願を集計し、試
料微量化に係る出願動向を調べた。図-22 に、国籍別出願件数推移と出願シェアおよび技術
区分別出願比率を示す。日米が拮抗して推移し、日本は 40%で 1 位である。技術区分別では
センサシステム全体が半数近い 49%を占める(1993-2005 年)。 オーストラリ
図-22 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア
及び技術区分別出願件数の比率 (世界の主要国への出願)
30
優先権主張年
1993-2005
25
25
18
15
13
13
9
10
8
2
3
1
6
5
5
5
3
22
1 1
7
6
6
5
3
5
3
1
1
10
9
8
5
13
12
1
2
1
6
5
2
1 1
2 2
3
4
4
11
その他
4件
2.7%
韓国籍
2件
1.4%
日本国籍
59件
40.1%
米国籍
56件
センサシス 38.1%
テム全体
71件
49%
16
15
ア国籍
1件
0.7%
欧州国籍
16件
10.9%
20
出
願
件
数
中国籍
9件
6.1%
トランス
デューサー
37件
25%
選択膜・
メディエー
ター
3件
2%
6
4
3
2
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
測定方法
20件
14%
合計
固定化層
12件
8%
分子識別
素子
3件
2%
日本への出願において、試料の微量化と同時に分類された課題で後期(1993-2005 年)に
大きく増加しているものは、高感度化、試料採取方法、ディスポーザブル化、ランニングコ
ストなどである。これらの課題を解決するための解決手段のうち、前後期で出願件数が大き
く変化したものを表-23 に示す。出願件数が減少した解決手段はなかった。表-24 に上位出願
人(世界への出願)を示す。日米の出願人が上位に多く入っている。
表-23 出願件数が増加している解決手段(日本への出願)
(前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年)
技術区分
解決手段
前期
トランスデューサー
電極構造
20
電極材料
2
新デバイス
9
製造方法
3
選択膜・メディエーター 新材料
1
分子識別素子
新規項目対応識別素子(酵素)
3
測定方法
計測時間
2
センサシステム全体
流路の構造・形状
12
基材・流路の表面処理
2
センサチップ形状
0
センサチップ付加物
2
本体付加物
2
試料採取・採血器具
2
ロット管理
5
- 12 -
後期
68
21
27
22
12
11
13
47
15
11
35
14
10
32
表-24 上位出願人
(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
順位
出願人
件数
1
松下電器産業
15
2
LIFESCAN, INC.
10
3
ROCHE AG
9
4
BAYER AG
7
5
アークレイ
6
6
カシオ計算機
6
7
THERASENSE, INC.
6
8
ABBOTT LABORATORIES
6
9
UNIV. ZHEJIANG
5
10
オムロン
4
11
産業技術総合研究所
4
12
CYGNUS, INC
4
2.高感度デバイス
◆◇◆
注目される免疫センサの高感度化
2000 年頃から急激な出願件数の増加
日本がリードし、欧州が続いている
◆◇◆
バイオセンサの創成期である 1960 年代~1970 年代には既に、非標識型の免疫センサが報
告されている。膜電位測定、ポテンショメトリック、FET センサなどがあったが、未だ実用
化はされていない。電位やコンダクタンスの変化を用いて標識剤を用いない小型、簡便な装
置の開発が活発に行われている。食品、環境、セキュリティなどフィールド検査への応用な
どでも実用化が期待されている。
図-25 に出願人国籍別の出願件数推移と出願シェアを示す。日本が出願シェアでは 1 位で
あり、欧州と競っている。
中国籍
15件
4.3%
図-25 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア
及び技術区分別出願件数の比率 (世界の主要国への出願)
オーストラリ
ア国籍
4件
1.1%
韓国籍
17件
4.9%
70
日本国籍
135件
38.8%
64
優先権主張年
1993-2005
60
その他
7件
2.0%
52
50
出
願
件
数
47
欧州国籍
99件
28.4%
39
40
30
30
センサシス
テム全体
102件
29%
28
24
19
20
10
10
6
8
6
21
1
3
15
15
14
10
27
25
23
45
1
3
1 1
9
7
4 3
32
1
12
1
4
23
4
10911
6
7
6
32
1
1212
8
4
1
2
2
4
1
トランス
デューサー
103件
30%
13
11
8
4
米国籍
71件
20.4%
2 3 333
選択膜・
メディエー
ター
1件
0%
5
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
出願人国籍
日本国籍
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
測定方法
80件
23%
固定化層
21件
6%
分子識別
素子
41件
高感度デバイスの課題で、前期(1970-1992 年)に比べて後期(1993-2005 年)に出願件数
が大きく増えた課題は高感度化、同時多項目、小型、応用分野拡大であった(表-26)。
出願件数上位出願人を表-27 に示す。東芝が 1 位であり、電気機器・半導体関連企業が多
く上位に入っている。また、大学・研究機関が上位に多く入ることも、この技術の特徴であ
る。表-27 に示した科学技術振興機構、CALIFORNIA 大学以外に、NORTH CAROLINA 大学、SYDNEY
大学、FRAUNHOFER-GESELLSCHAFT、CNRS、AUSTRALIAN MEMBRANE AND BIOTECHNOLOGY RESEARCH
INSTITUTE、などが米欧への出願で上位に入っている。
表-26 高感度デバイスの課題(日本への出願)
(前期:1970-1992 年
課題
精度
高感度化
操作性
同時多項目
コスト
小型
用途
応用分野拡大
後期:1993-2005 年)
前期
後期
9
55
1
17
2
13
1
27
表-27 上位出願人
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
- 13 -
(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
出願人
東芝
INFINEON TECHNOLOGIES AG
科学技術振興機構
松下電器産業
SIEMENS AG
日立製作所
UNIVERSITY OF CALIFORNIA
SANSUNG ELETRONICS
NOVEMBER AG
NANOSPHERE, INC.
件数
21
14
12
12
12
9
9
9
7
7
新規材料(ダイヤモンド、ボロンドープダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カ
ーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなど)を用いた新規デバイスに
関する出願状況を図-28 に示す。2003 年以降急激に出願件数が増加しており、日本が優位で
あるが中国も急速に出願件数を増やしている。
図-28 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア(世界の主要国への出願:新規材料を用いたデバイス)
18
14
13
13
12
出
願
件
数
オーストラリ
ア国籍
1件
1.5%
16
優先権主張年
1993-2005
16
中国籍
13件
19.1%
11
10
8
8
韓国籍
2件
2.9%
6
6
5
4
4
2
その他
2件
2.9%
3
3
3
2
1
11
4
3
3
3
2
22
11
11
1
1
2
3
2
2
111
1
1 1
日本国籍
32件
47.1%
2
1
2
欧州国籍
4件
5.9%
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
米国籍
14件
20.6%
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
3.バイオテクノロジーによる分子識別素子の改変
◆◇◆
遺伝子改変技術による酵素機能改変
日本が世界を常にリード
◆◇◆
血糖計を代表とする酵素センサでは、対象物の検出における感度、特異性、保存安定性、
熱安定性などの性能を改善することは重要な課題となってきている。電極の構造や材質、選
択膜、固定化方法など多くのアプローチがあるが、酵素自体が本来保有する形質に依存する
ところが大きい。特殊環境微生物の探索や、育種による選別により目的性能を有する酵素・
微生物を取得する他、既存の酵素を遺伝子工学的に改変したり、化学修飾したりすることに
より求める特質を付加・改変する技術が注目されている。
分子識別素子として遺伝子改変酵素、化学修飾酵素を用いたもの及び、解決手段として遺
伝子改変酵素、化学修飾酵素を用いた特許出願を収集し解析した。図-29 に出願人国籍別出
願件数の推移と出願件数シェアを示す。特に 1999 年以降は、日本が世界をリードし、70%の
出願件数シェアを示している。
図-29 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア( 世界の主要国への出願 )
16
優先権主張年
1993-2005
14
14
12
12
10
出
願
件
数
10
9
8
8
8
8
8
オーストラリ
ア国籍
1件
1.3%
その他
3件
3.8%
7
欧州国籍
8件
10.0%
6
6
5
5
5
5
4
4
3
2
2
8
中国籍
1件
1.3%
韓国籍
1件
1.3%
11
22
2
1 1 1
2
2
1
22
111
2
1 1
2
11
1
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
日本国籍
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
出願人国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
- 14 -
合計
米国籍
10件
12.5%
日本国籍
56件
70.0%
技術区分別の出願件数推移を図-30 に示す。1995 年の出願は、分子識別素子ではなくトラ
ンスデューサー、センサシステム全体に分類される出願であり、本来の分子識別素子の改変
に関する出願は 1999 年から始まっていることがわかる。
図-30 技術区分別出願件数の推移( 世界の主要国への出願:1993-2005 年 )
14
13
10
出
願
件
数
8
測定方法
4件
5%
8
7
7
6
4
4
5
5
1
1
トランス
デューサー
7件
9%
センサシス
テム全体
9件
11%
12
選択膜・
メディエー
ター
2件
3%
固定化層
3件
4%
4
3
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
分子識別
素子
54件
68%
優先権主張年
トランスデューサー
分子識別素子
選択膜・メディエーター
測定方法
固定化層
センサシステム全体
世界、日本、米国への出願に関する上位出願人を表-31 に示す。いずれの出願先でも早出
広司氏と東洋紡績が上位を競っている。日本への出願における出願人属性別の出願件数推移
を図-32 に示す。1995 年の出願はすべて企業であり、その後、2000 年頃は大学、さらに 2003
年以降は企業の出願といった推移を示している。属性別出願比率では大学が 25%を占める。
表-33 に出願件数の多い課題を示す。特異性改善、製造安定性、識別素子の寿命、高感度
化などが比較的件数の多い課題である。
表-31 出願先別上位出願人(1993-2005 年)
世界への出願
出願人
順位
1
2
3
4
5
日本への出願
出願人
件数
東洋紡績
早出 広司
21
18
4
3
3
アルテイザイムインターナショナル
ブラザー工業
MEDTRONIC MINIMED, INC.
東洋紡績
早出 広司
アルテイザイムインターナショナル
ブラザー工業
図-32 出願人属性別出願件数の推移と
属性別出願比率 (日本への出願:1993-2005 年)
米国への出願
出願人
件数
23
20
5
3
早出
件数
広司
アルテイザイムインターナショナル
東洋紡績
MEDTRONIC MINIMED, INC.
ROCHE AG
7
5
4
2
2
表-33 出願件数の多い課題
(日本への出願)
20
優先権主張年
1993-2005
精度
15
13
出
願
件
数
センサ寿命
10
8
8
5
5
コスト
用途
5
4
3
2
1
0
0
1
0
0
1
0
00
0
2
1
0
0
1
0
1
0
1
0
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
研究機関
0件
0.0%
1995
1994
1993
個人
0件
0.0%
0
優先権主張年
出願人属性
企業
大学
研究機関
個人
共願
共願
8件
13.6%
大学
15件
25.4%
企業
36件
61.0%
- 15 -
課題
高感度化
特異性改善
共存物質の影響
識別素子の寿命
耐熱性(センサ全体)
製造安定性
応用分野拡大
1993-2005
6
12
4
8
3
11
2
4.ユビキタス医療への対応
◆◇◆
米国優位で推移
近年、日本からの出願も増加
◆◇◆
高齢化社会に臨み、我が国は、病気になる前の状態を把握する予防医療などにより、健康
で質の高い生活を続けることができる社会の構築を目指す必要がある。バイオセンサは、小
型・安価で取扱いが容易であるという特長を有することから、在宅検査に適した検査システ
ムである。自宅や会社など身近な場所で検査を行うだけでなく、得られた情報に対して専門
家のアドバイスを受けることにより、さらに適切な健康管理が可能になる。そのためには、
単に計測するだけでなく、得られた情報の通信機能を通じた集約、データ保存、日々の変動
のモニター、専門家による高度な判断などが施されるユビキタス社会の構築が望まれる。バ
イオセンサはそうした社会にふさわしい機能を取り込むことが望まれている。
バイオセンサに通信機能などを盛込むことを目的にして、解決手段に IT 技術を利用したと
分類された特許出願を収集し解析した。
図-34 に出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェアを示す。米国優位で推移している
が、近年、日本からの出願も増えている。欧州の出願は少ない。
図-34 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア( 世界の主要国への出願 )
14
13
優先権主張年
1993-2005
12
10
出
願
件
数
12
12
中国籍
1件
1.0%
9
9
韓国籍
4件
4.1%
8
8
7
7
6
6
6
5
6
5
7
6
3
33
4
3
3
3
3
2
2
1
1
2
1
その他
5件
5.2%
日本国籍
28件
28.9%
5
4 4
4
オーストラリ
ア国籍
2件
2.1%
111
1
11
2
1
2
3
2
111 11
22
1
1
1
11
1
欧州国籍
9件
9.3%
米国籍
48件
49.5%
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
図-35 技術区分別出願比率
図-35 に技術区分別出願比率を示す。センサシステム全体
(世界の主要国への出願:1993-2005 年)
トランス
デューサー
6件
7%
に分類される出願が 80%を占めている。
を示す。米国への出願では、血糖の連続測定計や、インスリ
ンポンプなどの開発を行っている企業が上位にランクされて
測定方法
9件
10%
いる。
順位
1
2
3
4
5
世界の主要国への出願
出願人
THERASENSE, INC.
BAYER AG
件数
センサシス
テム全体
71件
80%
4
4
米国への出願
出願人
THERASENSE, INC.
DEXCOM, INC.
MARKWELL MEDICAL INSTITUTE,
INC.
BAYER AG
ABBOTT LABORATORIES
- 16 -
固定化層
1件
1%
分子識別
素子
2件
2%
表-36 に世界の主要国、米国への出願における上位出願人
表-36 出願先別上位出願人(1993-2005 年)
メディエー
ター
0件
0%
件数
6
5
4
4
4
第6節
注目技術
1.計測原理
◆◇◆
アンペロメトリック型が主な計測原理
非メディエーター型に関する特許出願は横ばい
◆◇◆
メディエーター型は増加傾向で海外からの出願も増加
バイオセンサの特許出願動向解析において、計測原理の動向は技術の発展を知る上で重要
な情報となる。特に、酵素センサにおいて、アンペロメトリック型の非メディエーター型の
第一世代からメディエーター型の第二世代への移行の状況と、ポテンショメトリック型の動
向を調べた。バイオセンサ創成期からの技術動向を知る上で有利な、調査対象期間の長い日
本への出願を基に解析した。
1)アンペロメトリック型
アンペロメトリック型計測に関する出願では、1980 年代以降、日本国籍出願人の出願件数
はほぼ横ばいであり、1990 年代後半から米欧など海外の出願人の出願が増えている。非メデ
ィエーター型は 1980 年代前半をピークに件数を減らした状況で横ばい、一方、メディエータ
ー型は 1990 年代後半以降出願件数を増やしている。(図-37)。
図-37 アンペロメトリック型、メディエーター型、非メディエーター型の国籍別出願件数の推移
と出願件数シェア(日本への出願)
①アンペロメトリック型
①
140
優先権主張年
1970-2005
120
124
114
100
94
93
97
欧州国籍
171件
8.3%
90
出
願
件
数
80
66 69
60
74
74
73
63
61
66
59
59
米国籍
202件
9.8%
61
54
57
39
40
6.9%
米国籍
128件
16.0%
日本国籍
597件
74.8%
日本国籍
958件
86.2%
日本国籍
1,647件
80.1%
29
中国籍 オーストラリ
ア国籍
0件
0件
0.0%
0.0% その他
9件
1.1%
16 17
20
10
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1974
1982
1973
1981
1972
1980
1971
1979
2
1978
1
1977
3
1976
2
1975
0
1970
0
③
中国籍 オーストラリ
0件
ア国籍
韓国籍
0.0%
0件
9件
0.0% その他
1.1%
8件 欧州国籍
0.7%
55件
米国籍
81件
7.3%
83
56
53
41
80
79
79
②
オーストラ
韓国籍
リア国籍
3件
1件
0.3%
0.05%
その他 欧州国籍
19件 62件
0.9%
5.6%
中国籍
0件
韓国籍 0.0%
17件
0.8%
②非メディエーター型
③メディエーター型
70
80
66
64
62
61
60
優先権主張年
1970-2005
70
優先権主張年
1970-2005
60
60
50
47
45
46
41
出 40
願
件
数 30
37
37
36
33
36
34
31
30
50
31
31
20
20
3
15 16
16
12
10
9
1
0
18
18
20
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
2)ポテンショメトリック型
アンペロメトリック型に比べると出願件数も少なく約 1/7 である。1980 年代後半に出願ピ
ークがあり、以降は低い水準で推移している。ISFET・FET に関する出願と非常に良い相関を
示し、ポテンショメトリック型が主に ISFET による pH 検出型センサに関する出願であった
ことがわかる(図-38)。
- 17 -
2005
欧州国籍
2004
優先権主張年
米国籍
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
日本国籍
1985
合計
1984
1983
1982
その他
19
26
25
7
5
1981
1980
オーストラリア国籍
19
27
23 23
2
1979
1978
1977
1976
1975
中国籍
1974
韓国籍
1973
欧州国籍
1972
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
米国籍
7
3
1
出願人国籍
優先権主張年
出願人国籍
日本国籍
1971
2
1970
1
0
28
24
17
11
10
32
30
27
25
20
43
40
35
31
30
29
69
54
46
39
71
66 67
図-38 ポテンショメトリック型、ISFET・FET の出願人国籍別出願件数の推移(日本への出願)
ポテンショメトリック型
ISFET・FET
30
35
33
優先権主張年
1970-2005
30
優先権主張年
1970-2005
27
26
25
23
25
20
出
願
件
数
20
19
20
17
20
17
15
17
13
15
14
13
11
10
10
9
7
1
1
7
5
4
3
2
1
10
11
9
7
6
5
7
5
5
5
9
8
5
5
3
3
1
6
4
2
2
2
2
3
1
1
1
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
日本国籍
合計
1986
その他
1985
オーストラリア国籍
3
優先権主張年
出願人国籍
中国籍
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
韓国籍
5
3
1
1977
欧州国籍
1976
米国籍
1975
日本国籍
1974
1973
1972
1971
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
6
5
3
1
0
1970
0
10
8
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
2.グルコース
◆◇◆
バイオセンサの発展は血糖計開発の歴史
血糖計創製から、より高機能な製品へ向けた研究開発へ
◆◇◆
バイオセンサに関する最初の報告がグルコースオキシダーゼを用いたグルコースの測定の
あったことからもわかるように、バイオセンサは、血糖計を中心に発展してきた。高感度化、
測定濃度範囲の拡大、共存物質の影響、試料の微量化、安定性、小型・安価など、多くの開
発がグルコース測定をモデルにして検討されている。
図-39 に出願人国籍別の出願件数推移と出願件数シェアを示す。出願件数は 1,579 件とバ
イオセンサ全体の 6 割強を占め、図-3 のバイオセンサ全体の出願推移とほとんど同じ傾向を
示している。1980 年代のピーク以降は日本出願人の出願件数は、増減はあるもののほぼ横ば
いである。出願件数全体では、1990 年代以降の米欧等の海外からの出願増加の影響で増加し
ている。
図-39 グルコースの出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア(日本への出願)
100
90
優先権主張年
1970-2005
89
80
80
75
71
70
出
願
件
数
韓国籍
8件
0.5%
欧州国籍
116件
7.3%
87
65
60
60
65 65
米国籍
241件
15.3%
51
49
48 48
44
62
57
57
50
40
75
69
68
43
39
38
34
30
中国籍
オーストラリ
0件
ア国籍
0.0%
0件
その他
0.0%
11件
0.7%
29 29
日本国籍
1203件
76.2%
24
20
15 16
10
9
1
0
2
1
1
11
2
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
中国籍
1994
韓国籍
1993
欧州国籍
1992
米国籍
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
日本国籍
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
図-40 期間別 技術区分別出願比率
(グルコース:日本への出願)
1991 自己測定用血糖計発売
オーストラリア国籍
その他
合計
期間別の技術区分別出願比率を図-40 に示す。
前期(1970-1992 年)に比べて後期では分子識別
(前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年)
100%
素子とセンサシステム全体が増加し、固定化層が
大きく減少している。図-41 に分子識別素子とセ
167
493
80%
60%
221
40%
310
ンサシステム全体の出願推移を示す。分子識別素
子では海外からの出願は少なく、センサシステム
326
104
76
15
216
61
55
全体では、海外からの出願が非常に増えている。
117
94
104
49
20%
375
215
全期間
前期
160
0%
- 18 -
後期
センサシステム全体
測定方法
分子識別素子
固定化層
選択膜・メディエーター
トランスデューサー
1
図-41 技術区分別 出願人国籍別出願件数推移 (分子識別素子、センサシステム全体:日本への出願)
分子識別素子
センサシステム全体
60
18
優先権主張年
1970-2005
16
優先権主張年
1970-2005
16
50
49
14
40
12
出
願
件
数
39
34 33
10
30
8
27 28
8
7
6
6
6
4
19
2
2
1
1
1
2
3
1
12
10
3
2
1
7
2
1
1
0
0
1
4
2
6
7
12
8
12
10
11
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
日本国籍
合計
1987
その他
1986
1985
1984
1983
1982
オーストラリア国籍
10
6
優先権主張年
出願人国籍
中国籍
14 15
10 10
7
1981
1980
1979
1978
1977
◆◇◆
韓国籍
3
1976
欧州国籍
1975
米国籍
1974
1973
1972
1971
1970
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
日本国籍
1
優先権主張年
出願人国籍
18
15 16
4
3
24
22
20
6
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
計測原理は非メディエーター型からメディエーター型へ
酵素はグルコースデヒドロゲナーゼが増加
グルコースオキシダーゼも出願件数は維持
◆◇◆
計測原理に関する出願推移を図-42 に示す。当初は非メディエーター型で開発が行われたが
1980 年代中盤以降、メディエーター型が増加し、近年はメディエーター型が主体である。血
糖計に用いる酵素の種類を図-43 に示す。グルコースオキシダーゼ(GOD)で開発が行われて
いたが、1990 年代中盤からグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が増えてきている。血中酸素
濃度による血糖応答電流の誤差を解消するため GDH が製品に主に使われるようになったが、
その後も GOD の出願件数が減らないのは、バイオセンサ関連の新規技術の開発が、GOD を用
いたグルコース計測をモデル系として行われることが一つの要因である。
図-42 計測原理別出願件数の推移
(日本への出願)
図-43 酵素別出願件数の推移
(日本への出願)
60
50
100
100
100
80
80
80
(
ー
グ
ル
40 コ
出 60
願
件
数 40
グ
ル
40 コ
ー
出
願
30
件
数
出
願
件
60 数
(
出
願
件
60 数
40
20
ス
ス
0
)
)
10
20
20
20
0
0
0
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
メディエータ型
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
優先権主張年
非メディエーター型
優先権主張年
グルコース
グルコースオキシダーゼ
グルコースデヒドロゲナーゼ
グルコース
グルコース計測に関する特許出願における課題を表-47 に示す。出願件数が多い課題は、
高感度化、共存物質の影響、再現性、計測時間短縮などがある。後期に出願件数が減少した
課題は、計測時間短縮、同時多項目計測、センサ寿命(電極、固定化層の耐用)等であり、
後期に増加した課題は、特異性の改善、較正方法の簡易化、自動化、試料の微量化、試料採
取方法、取り違え防止、耐湿性、耐熱性といった実用面での改善・改良に対する課題や、応
用分野拡大、新規測定項目、測定場所など、新規な応用領域に関連する課題である。
- 19 -
3.グルコース以外の健康関連項目、健康関連以外の項目
◆◇◆
健康関連項目:
乳酸、脂質:1990 年代後半から出願件数が増加
米国の出願シェアが比較的高い
健康関連以外の項目:米国の出願シェアは低い
◆◇◆
バイオセンサの応用分野で現在最も大きなものは健康・医療分野である。ただし主要な測
定項目であるグルコースを解析対象に含めると、バイオセンサ全体とほとんど同じ傾向を示
すため(18 頁参考)、ここでは健康・医療分野に含まれる項目を記載してある特許出願を集
めてからグルコースの記載のある出願を除いたものを健康関連項目(グルコース以外)とし、
全体から健康関連項目に分類された特許出願を除いたものを健康関連以外の項目として集計
した。健康関連項目として集計した測定項目は、糖関連項目、乳酸、脂質、腎機能、酵素、
血液凝固、遺伝子・タンパク質である。遺伝子・タンパク質は、主に免疫センサや核酸セン
サによって測定されるため、酵素センサ、微生物センサ以外のセンサも含まれる。
日本への出願における出願人国籍別の出願件数推移を、図-44 に健康関連項目(グルコース
以外)、図-45 に健康関連以外の項目、図-46 に乳酸、脂質の結果を示す。健康関連(グルコー
ス以外)は、出願推移は図-39 のグルコースと同様の傾向である。健康関連以外では、1980
年代の出願ピークが健康関連よりも 1~2 年遅れて出現し、海外からの出願は多くない。乳酸、
脂質は 1990 年代終盤から出願件数が増え、海外からの出願も多い。
図-44~図-46 出願人国籍別出願件数推移(測定項目:日本への出願)
図-44 健康関連項目(グルコース以外)
40
70
優先権主張年
1970-2005
60
54
50
出
願
件
数
若干ピークが遅れる
図-45 健康関連以外
46
46
40
32
27
34
36
28
20
36
3
1
2
2 2
20
12
12
10
14
9
5
5
5
2
1
0
23
19
15
11
13
9
10
15
4 5
3
18
17
15
20
19
19
14
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
日本国籍
図-46 乳酸
1990
合計
1989
その他
1988
オーストラリア国籍
1987
優先権主張年
出願人国籍
中国籍
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
韓国籍
1977
欧州国籍
1976
米国籍
1975
日本国籍
1974
1973
1972
1971
1970
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
脂質
45
35
優先権主張年
1970-2005
30
42
優先権主張年
1970-2005
40
31
35
25
24
23
出
願
件
数
26
21
20
15
25
20
29
27
25
23
35
29
26
32
24
10
29
25
25
42
30
31
50
47
36
34
30
31
30
52
49
優先権主張年
1970-2005
35
60
60
34
30
20
29
25
19
22
17
15
15
13
10
9
7
10
9
5
6
1
0
1
1
1
4
20
15
14
8
4
2
7
中国籍
オーストラリア国籍
若干ピークが遅れる
2000 年 頃 か ら 出 願 件 数
増 加 。 米 国 から の出 願 も
増加
その他
合計
2005
韓国籍
2004
欧州国籍
2003
2002
2001
- 20 -
2000
動向が注目される。
1999
期待されるものである。海外からの出願も増えており
1998
優先権主張年
米国籍
乳酸、脂質はバイオセンサの健康関連市場で血糖に
続く項目として、製品も上市され、今後の市場拡大が
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
日本国籍
合計
7
3
1983
1982
1981
1980
1979
その他
11
10
7
3
出願人国籍
オーストラリア国籍
11
6
5
1
1978
1977
1976
1975
中国籍
1974
韓国籍
1973
1972
1971
1970
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
欧州国籍
2
1
優先権主張年
米国籍
12
9
5
5
0
日本国籍
13
10
5
19
18
17
15
12
1
出願人国籍
19
15
5
5
21
19
17
12
11
8
6
5
5
11
3
グルコース、健康関連項目(グルコース以外)、健康関連以外の項目における課題を表-47 に示
す。いずれの測定項目でも比較的似た傾向を示しているが、同時多項目は、グルコース、健康
関連(グルコース以外)では減少であるのに対して、健康関連以外では増加となっている。環
境、セキュリティなど免疫センサなどで同時多項目計測の必要性が高いことによると考えられ
る。逆に、共存物質の影響については、健康関連(グルコース以外)では増加であるが、健康
関連以外では減少しており、環境分野における河川水試料などの比較的きれいな系で測定が
行われる健康関連以外の項目の特徴がみえる。健康関連(グルコース以外)では、高感度化、
共存物質の影響、識別素子の寿命など多くの基礎的項目で増加を示し、グルコースに比べて、
完成度が低いことが考えられる。
表-47 グルコース、健康関連、健康関連以外における特許出願の課題(日本への出願)
課題
精度
速度
操作性
センサ寿命
コスト
用途
高感度化
特異性改善
共存物質の影響
再現性
測定範囲
直線性
較正方法の簡易化
計測時間短縮
自動化
試料の微量化
試料採取方法
取り違え防止
ディスポーザブル化
同時多項目
識別素子の寿命
電極の耐用
固定化層の耐用
耐湿性(センサ全体)
耐熱性(センサ全体)
小型
応用分野拡大
用途 /新規測定項目
測定場所
グルコース
前期
後期
163
159
8
54
132
146
122
131
56
44
42
50
13
55
187
108
25
44
35
86
10
82
0
28
31
40
59
34
53
66
79
62
40
33
3
11
0
9
71
61
29
76
7
25
10
22
健康関連(グルコース以外)
前期
後期
107
147
9
27
80
103
81
85
28
24
26
41
6
30
159
116
31
24
32
58
4
36
0
10
13
26
55
37
29
40
52
32
30
25
2
7
0
3
41
48
33
70
22
31
7
17
健康関連以外
前期
後期
57
8
32
30
13
8
1
73
9
4
1
1
2
5
22
15
23
0
0
19
25
20
1
62
11
25
22
9
6
4
53
25
12
7
7
11
11
15
11
6
0
0
20
35
24
5
出願件数の増えた課題
出願件数の減った課題
前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年
4.分子識別素子
◆◇◆
酵素 :バイオセンサ全体とほぼ同じ動向
微生物:1970 年代後半からほとんど同じ水準の出願件数で推移
日本が非常に優位
抗体 :1980 年代後半から出願が増えている
近年、米欧からの出願件数が多い
◆◇◆
分子識別素子別に出願動向を調べた。出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェアを図
-48 に示す。酵素を分子識別素子とする出願は、バイオセンサ全体とほぼ同様の動向を示し
ている。微生物を分子識別素子とする出願は、1970 年代後半のバイオセンサ創成期からほと
んど同じ水準の出願件数で推移している。日本が圧倒的に優位な状況で推移し、93%の出願
- 21 -
件数シェアである。抗体を分子識別素子とする出願は 1980 年代後半から増えており、1990
年代日欧が競っていたが、2000 年以降は日米の出願が多い。出願件数シェアは、比較的米欧
が高く日本は 65%である。
図-48 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア(酵素、微生物、抗体:日本への出願)
①酵素
②微生物
140
18
120
110
104
97
80
90
72
61
60
75
75
70 65
62
12
10
10
9
67
60
58
56
42
40
13
12
85
77
14
106
99
97
83 84
9
9
8
8
7
6
7
7
6
8
7
8
7
7
6
40
6
7
6
5
22
4
4
4
17 18
20
3
2
11
0
優先権主張年
1970-2005
16
124
111
103
100
出
願
件
数
17
優先権主張年
1970-2005
1
3
3
2
2
3
3
2
1
2
1
0
2005
2004
2003
②
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
①
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
③抗体
③
10
優先権主張年
1970-2005
9
8
9
8
7
中国籍
0件
韓国籍0.0%
16件
0.7%
8
7
6
6
6
5
5
4
4
3
3
3
3
2
1
1
1
1
1
4
3
4
欧州国籍
166件 米国籍
7.4%
287件
12.7%
1
1
その他 欧州国籍
24件
11件
1.1%
5.4%
韓国籍
1件
0.5%
中国籍 オーストラリ
0件
ア国籍
0.0%
0件
0.0%
米国籍
2件
1.0%
韓国籍
その他
3件
1件
3.2%
0.5%
欧州国籍
12件
12.9%
中国籍
0件
0.0%
オーストラリ
ア国籍
1件
1.1%
3
2
2
1
4
オーストラリ
ア国籍
2件
0.1%
1
1
日本国籍
1757件
78.0%
米国籍
14件
15.1%
日本国籍
189件
92.6%
日本国籍
60件
64.5%
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
日本国籍
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
表-49 に、分子識別
オーストラリア国籍
(日本への出願)
件数を示す。また、期
間別の出願件数を比較
し、増加率が高い課題
精度
課題を■で示す。
酵素はグルコースと
速度
同様の傾向を示す。微
生物は減少する課題が
操作性
多く、増加は自動化の
みであり、BOD センサ
等の製品のニーズが窺
センサ寿命
える。抗体は、高感度、
再現性、計測時間など
基礎的な特性が十分開
発できていない状況と、
小型化などの開発の方
向性が示されている。
合計
表-49 分子識別素子(酵素、微生物、抗体)における特許出願の課題
素子別に課題別の出願
を■で、減少率が高い
その他
コスト
用途
課題
高感度化
特異性改善
共存物質の影響
再現性
測定範囲
直線性
較正方法の簡易化
計測時間短縮
自動化
試料の微量化
試料採取方法
取り違え防止
ディスポーザブル化
同時多項目
識別素子の寿命
電極の耐用
固定化層の耐用
耐湿性(センサ全体)
小型
ランニングコスト
製造安定性
応用分野拡大
新規測定項目
測定場所
前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年
- 22 -
酵素
微生物
472
87
357
323
121
118
75
453
95
144
96
33
91
135
153
169
106
14
171
164
187
178
93
42
抗体
39
9
29
20
9
1
3
58
19
3
3
0
4
9
22
10
18
0
17
18
14
21
7
3
特許出願が増えた課題
特許出願が減った課題
36
4
11
15
3
0
3
22
1
7
1
0
4
8
5
3
4
0
16
13
7
14
8
1
その他
3件
3.2%
バイオセンサの開発初期には固定化層に
図-50 分子識別素子の固定化方法の比較
関する出願が多い(図-7)。分子識別素子の
種類により固定化に求められる要件が異な
るため種々の固定化方法が検討されてきた。
(日本への出願:1970-2005 年)
100%
170
204
80%
願比率をまとめる。酵素とバイオセンサ全
26
2
323
354
図-50 に分子識別素子別に固定化方法の出
12
22
8
24
11
3
1
1
60%
件数はほとんど同じ傾向であり、架橋法が
533
514
25
264
246
6
2
293
268
全件数
酵素
9
13
40%
最も多い。抗体では共有結合法が最も多い。
微生物では物理吸着、包括法が多く、共通
22
20%
21
結合法や架橋法が少ないことから、生きた
状態の維持が固定化のポイントであること
その他
複合
自己組織化
包括
架橋法
共有結合
物理吸着
8
0%
微生物
抗体
がわかる。
特許分類に際して、予め設定した分類項目に従って分類付与を行った。微生物の場合、期
間別にみると、前期(1970-1992 年)に比べて後期(1993-2005 年)で特許出願に記載される
件数が減少したものは、シュードモナス・フルオレッセンス、大腸菌であり、後期に増加し
たものはチオバチルス・フェロオキシダンスであった。全期間を通じて、当初分類表に設定
した微生物 20 種とは異なる微生物で「その他」に分類されるものが多く出現し、微生物セン
サでは、個々の微生物の種類とその性質が重要な発明の対象となっていることが示唆された
(表-51)。
微生物による測定対象項目では、最も出願が多い項目は BOD であるが、化学物質(農薬、
環境ホルモン)が増加している。
表-51 特許出願に記載された微生物と、その出願件数(日本への出願)
微生物名
微生物一般
アスペルギルス・ニガー
クリュイベロミセス・マルキシアヌス
グルコノバクター・オキシダンス
枯草菌
酢酸菌
サッカロミセス・セレビシエ
シトロバクター・フロンディ
シュードモナス・フルオレッセンス
硝化菌
ストレプトコッカス・フェシウム
大腸菌
チオバチルス・フェロオキシダンス
トリコスポロン・クタニウム
トリコスポロン・ブラシカエ
バクテリウム・カダベルス
ブレビバクテリウム属
プロテウス・ブルガリス
メチロモナス・フラゲラータ
硫酸還元菌
緑膿菌
その他
全期間
25
5
1
2
11
5
7
1
12
16
2
21
17
13
3
2
1
1
1
2
8
90
前期
後期
17
4
0
0
4
3
3
1
10
7
2
14
4
6
3
2
1
0
1
2
4
57
8
1
1
2
7
2
4
0
2
9
0
7
13
7
0
0
0
1
0
0
4
33
特許出願が増えた微生物
特許出願が減った微生物
- 23 -
前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年
5.印刷法による電極製造
◆◇◆
血糖自己測定計の普及に大きく貢献した技術
最も早い出願は 1983 年に米国から 2 件
その後、日本が優位に開発を進めたが、近年は米国も再び出願増加
◆◇◆
血糖計が大きな市場を確立しているバイオセンサにおいて、血糖自己測定計に適した小型
計測器の開発の効果は非常に大きい。使い捨てのセンサチップを安価に提供する上で、印刷
技術を利用した電極製造方法の開発が大きく寄与している。電極製造方法に印刷技術を用い
ると記載された出願を収集した。
出願人国籍別出願推移と出願件数シェアを図-52 に示す。最も早い出願は 1983 年に米国か
ら出願された 2 件である。その後、日本の出願人による出願が増加したが、1994 年以降は米
国からの出願も増えている。
図-52 印刷法による電極製造の出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア(日本への出願)
45
42
40
優先権主張年
1970-2005
38
38
36
35
32
30
出
願
件
数
30
28
26
25
25
25
22
20
21
20
19
中国籍 オーストラリ
ア国籍
0件
韓国籍
0件
0.0%
5件
0.0%
その他
1.1%
2件
欧州国籍
0.4%
27件
5.7%
米国籍
77件
16.2%
16
15
10
日本国籍
365件
76.7%
14
13
9
9
6
5
5
2
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
日本国籍
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
優先権主張年
出願人国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
期間別に技術区分別出願比率を図-53 に示す。前期(1970-1992 年)はトランスデューサー
と固定化層の構成技術に関する出願が非常に多く、印刷方法を電極製造や試薬・酵素の固定
化に応用すること自体が主な発明であり、後期(1993-2005 年)ではセンサシステム全体が 4
割を超えていることから、操作性に優れたセンサシステムを作り上げることにおいて印刷技
術が定着した技術として用いられていると考えられる。
図-53 印刷法による電極製造の期間別技術区分別出願件数の推移
(日本への出願: 前期:1970-1992 年
後期:1993-2005 年 )
476件
100%
114件
362件
9
印刷技術と 12 頁で示した微量試料
10
80%
60%
156
6
52
19
48
42
13
40%
114
4
21
20%
の利用等が、血糖自己測定計の実用化
147
66
センサシステム全体
測定方法
分子識別素子
固定化層
選択膜・メディエーター
トランスデューサー
17
37
114
77
0%
全期間
前期
後期
- 24 -
における重要技術である。図-54 に、
血糖自己測定計における重要特許の
主な発明の内容と出願人、特許番号、
優先権主張日を示す。
図-54 血糖自己測定計における重要特許
1980
1990
印刷法による試薬層の形成
DU PONT
US4454007A(1983.01.27)
2000
クーロメトリック少試料量センサ
THERASENSE INC
US6120676A(1997.02.06)
印刷法によるカーボン電極の形成
MEDISENSE INC
US5126034A(1988.07.21)
メディエータ型小型
グルコースセンサ
松下電器産業
特公平6-40086(1984.02.20)
スパッタリングによる貴金属
導電膜の形成
松下電器産業
US6875327B1(1999.11.15)
スクリーン印刷法によるカーボン電
極の形成
松下電器産業
特公平6-10662(1986.12.01)
可塑性基盤上の電極形成
Roche Diagnostics
Operations, Inc. & Corange
International
US7276146B2(2001.11.16)
スクリーン印刷法による電極の形
成。紫外線による失活酵素
エヌオーケー
特公平6-23719(1986.04.08)
第7節
応用分野の特徴
◆◇◆
応用分野別の集計では、
健康・医療分野の出願件数が最も多く、食品・発酵分野が続く
健康・医療分野では日米が競っているが、食品・発酵分野では日本が優位
◆◇◆
バイオセンサの応用分野として、「健康・医療」、「食品・発酵」、「環境」、「セキュリティ」
の 4 分野で分類を行った。分類に際しては、公報内に記載の文言に従い重複を許して分類し
た。主に「健康・医療」、次に「食品・発酵」が出願件数の多い応用分野であった。
出願人国籍別の出願件数推移を図-55 に示す。健康・医療分野では、日本が優位に推移し
ているが、米国と競っている状況である。1990 年代後半から増加傾向を示している。食品・
発酵分野では、日本が他国を大きくリードしている。出願件数はほぼ横ばいで推移している。
図-55 出願人国籍別出願件数の推移と出願件数シェア(世界の主要国への出願)
健康・医療分野
160
中国籍
36件
2.9%
151
145
優先権主張年
1993-2005
140
133
120
出
願
件
数
88
83
76
80
60
60
55
50
50
45
34
40
25
1616
20
27
23
16
13
2 1
22
1
2
16
16
12
10
3432
13
8
46
4312
31 2
22
18
17
31 4
2
45
36
30
13
8
22
1
4342
32
25
29
51
43
49
44
日本国籍
489件
40.0%
欧州国籍
221件
18.1%
69
67
その他
54件
4.4%
韓国籍
29件
2.4%
114
107
95
100
オーストラリ
ア国籍
2件
0.2%
42
18
710
1
8 6
米国籍
393件
32.1%
1514
25 5
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
食品・発酵分野
40
優先権主張年
1993-2005
35
36
32
30
29
30
出
願
件
数
25
21
20
21
19
22
20
17
16
14
14
13
欧州国籍
47件
16.2%
19
16
15
12
11
9
2
3
7
6
4
11
1
2
2222
米国籍
39件
13.4%
10
9
7
55
5
オーストラリ
ア国籍
1件
0.3%
その他
7件
2.4%
24
23
20
10
韓国籍
8件
2.7%
中国籍
11件
3.8%
7
6
3
3
3
1
1
6
6
4
2
2
6
3
1
1
2
2
1 1
3
11
2
1 1
2
日本国籍
178件
61.2%
1
0
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
日本国籍
1998
1997
1996
1995
1994
1993
優先権主張年
出願人国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
課題別出願件数比率では、両者とも精度が最多であるが、健康・医療分野では操作性とコ
スト、食品・発酵分野では計測時間が他方よりも大きな比率を占めている特徴がある。
- 25 -
第3章
バイオセンサ-酵素・微生物を利用した電気化学計測-の研究開発動向
第1節
全体動向
◆◇◆
欧州の機関が 4 割を超え、圧倒的に優位
近年の中国の増加が顕著
◆◇◆
論文調査については、JSTPlus が収録している日本国内および海外約 50 ヶ国で発行された
雑誌のうち、英語および日本語で書かれた雑誌で、発行年が 1985-2006 年を対象とした。対
象となる論文は約 5,200 件で、国際的な主要誌 16 誌に限定すると、約 3,500 件となった。
図-56 に世界の主要国への特許出願件数と論文件数を示す。論文件数は 1996 年まで増加を
示し、その後増減はあるが 2002 年以降再び増加傾向を示している。主要誌 16 誌とそれぞれ
の論文件数を表-57 に示す。
図-56 バイオセンサ全体の論文件数推移と特許出願件数推移
(特許出願は世界の主要国への出願)
表-57 主要誌と論文件数
450
450
1985年~2006年
合計 5,175 件(全雑誌)、3,540 件(主要誌)
400
350
論
文
発
表
件
数
349
347
323
305
300
311
239
200
174
150
100
79
53
50
29
25 21
122
73
82
37
27
227
185
151
176
163
136
101 97
300 特
許
250
出
200 願
件
150 数
247
97
100
106 107
50
6
12
0
350
274
286
236 258 266
229
216 214 243
228
205
188
193173
180 160
140
123
122 120
285
250
370
337
304
248
257
400
381
0
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
発行年(論文)/優先権主張年(特許)
特許件数
論文件数(全雑誌)
論文件数(主要誌)
雑誌名
Anal Chim Acta
Biosensors Bioelectron
Electroanalysis
Anal Chem
Sens Actuators B
J Electroanal Chem
Anal Lett
Talanta
Analyst
Anal Biochem
Electrochim Acta
Anal Bioanal Chem
Fresenius J Anal Chem
Biotechnol Bioeng
J Am Chem Soc
Electrochem Commun
合計
件数
669
624
489
387
378
195
179
166
152
73
66
48
45
29
21
19
3,540
全雑誌と主要誌の比較では、論文件数、技術区分別比率などほとんどの項目でほぼ同様の
傾向を示すため、ここでは全雑誌に関する結果のみを示す。
筆頭著者所属機関国籍別の論文件数の推移と国籍別比率を図-58 に示す。欧州が 42%で 1
位、日本は 20%で 2 位、米国 12%、中国 11%と続く。欧州は 93 年以降、論文件数を大幅に
増やしており、また、近年の中国の増加が顕著である。
図-58 バイオセンサ全体の研究者所属機関国籍別論文件数推移と論文件数シェア(全雑誌)
450
発行年
1985-2006
400
347
350
323
305
311
285
300
発
表
件
数
381
370
349
337
304
286
257
243
239
250
200
122
100
79
53
50
79
29 2224
39
24
115
3634
4850
5260
50
119
118
134
127
99
68
49
144
126
83
55
42
160
159
136
82
56
40
46
134
72
62
60
58
121
116
46
52
45
40
32
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
- 26 -
合計
2006
米国籍
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
発行年
研究者所属機関国籍
韓国籍
89件
1.7%
欧州国籍
2,177件
42.1%
米国籍
619件
12.0%
合計
5,175件
0
日本国籍
日本国籍
1,035件
20.0%
179
174
163
150
その他
オーストラリ 632件
12.2%
ア国籍
53件
1.0%
中国籍
570件
11.0%
第2節
技術区分別動向
◆◇◆
それぞれの技術区分に対し、数年の短いスパンのピークが出現
常に注目技術区分が入替わり、興味が集中
◆◇◆
特許出願では、技術区分別の出願件数推移からバイオセンサ創製における技術の発展の状
況が読み取れたが(図-7)、論文の場合、いずれの技術区分も数年の短いスパンのピークが複
数存在し、研究の興味の出現と集中の状況が窺える(図-59)。
図-59 技術区分別論文件数の推移と論文件数比率(全雑誌)
250
200
トランスデュー
サー
853件
16.5%
センサシステム
全体
1,924件
37.1%
発 150
表
件
数 100
選択膜・メディ
エーター
355件
6.9%
50
測定方法
分子識別素子
308件
667件
5.9%
12.9%
0
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
発行年
トランスデューサー
分子識別素子
選択膜・メディエーター
測定方法
固定化層
1,075件
20.7%
合計
5,182件
固定化層
センサシステム全体
技術区分別に研究者所属機関国籍別の論文件数の推移を図-60 に示す。短期間の研究の集
中がそれぞれの技術区分で繰り返し起こっていることがわかる。日本の論文で最近多い技術
区分は、トランスデューサーとセンサシステム全体である。中国の論文件数は近年、日本を
上回っており、特に多いのがトランスデューサー、固定化層、センサシステム全体である。
図-60 技術区分別
研究者所属機関国籍別論文件数の推移(全雑誌)
トランスデューサー
100
93
発行年
1985-2006
90
80
選択膜・メディエーター
50
48
発行年
1985-2006
75
70
発
表
件
数
60
91
81
68
67
62
45
40
60
50
30
46
40
30
21
21
20
25
16
12
14
17
14
8
11
8
4
1
22
4
9
8
10
12
8
4
11
12
4
1
3
17
7
5
11
11
9
6
4
5
1
45
1
3
1
7
6
5
3
44
32
26
47
31
18
1713
8
1316
11
12
8
7
10
8
7
6
9
12
10
13
9
5
43
3
3
3
2006
発行年
1985-2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
センサシステム全体
200
209
182
159
37
34
150
33
123
115
30
12
12
8
4
3
1989
1985
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1
21
18
14
13
218
50
40
27
24
14
0
発行年
1985-2006
51
7
5
250
測定方法
28
28
19
18
15
12
9
10
15
1988
31
18
24
14
6
17
43
34
23
20
1987
12
1997
1996
1992
1995
1991
15
6
1994
1990
30
17
19
2
1
44
38
24
71
60
2006
59
40
37
30
30
71
51
1986
35
22
1993
1989
1987
1985
60
12
2
1988
1986
0
12
21
4
2005
94
66
56
47
40
24
発
表
件
数
39
30
79
74
2004
100
12
3
5
43
43
7
2
3
48
40
4
3
2003
61
50
97
2002
68
60
150
4
8
7
5
発行年
1985-2006
72
70
195
50
15
14
9
6
5
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
分子識別素子
80
発行年
1985-2006
200
発
表
件
数
23
14
14
23
1990
2006
2005
2004
固定化層
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
11
18
18
0
0
250
25
18
13
12
1989
1987
1
9
24
1988
1986
5
27
1987
1985
2
31
21
13
6 7
6
4
27
19
20
32
1986
6
3
32
1985
12
4
1
31
17
15
10
10
33
27
26
27
23
37
35
34
133
129
126
26
20
11
10
6
1 2
8
1
4
21
6
10
9
10
3
5
19
11
9
4
22
20
20
18
20
5
23
10
5
3
19
12
67
12 11
5 7
23
3
2
1
27
6
48
35
1823
3231
19
17
30
20
10
37
1313
48
32
77
56
45
26
17
25
19
その他
合計
- 27 -
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
2006
オーストラリア国籍
米国籍
2005
2004
中国籍
26
24
5 10
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
韓国籍
77
43
31
研究者所属機関国籍
日本国籍
欧州国籍
28
27 30
17
13 9 13
8 12
65
43
発行年
発行年
研究者所属機関国籍
米国籍
19
11
48
0
0
日本国籍
35
34
84
66
60
68
23
2
1
73
44
50
9
6
5
92
100
第3節
所属機関属性
◆◇◆
いずれの国でも大学・研究機関が非常に多い
日本は、企業の比率が比較的高く、共同研究も企業が関与するものが多い
米欧では、大学・研究機関、及びこれらの共同研究が多い
◆◇◆
表-61 に筆頭著者所属機関国籍別に研究者所属機関属性をまとめる。いずれの国でも特許
と異なり大学の比率が非常に高い。日本は企業単独および、企業と大学・研究機関の共同研
究の比率が他国に比べて高い。企業が関与する論文比率は、日本 23%、米国 11%、欧州 11%、
中国 3%である。一方、大学・研究機関が関与する論文比率は、日本 92%、米国 94%、欧州
98%、中国 100%となっている。産官学連携と考えられる共同研究は、日本 15%、米国 6%、
欧州 9%、中国 4%であり日本が最も大きな比率を示している。共同研究の組合せ別論文件数
を図-62 に示す。
表-61 筆頭著者所属機関国籍別
所属機関属性
企業
大学
研究機関
個人
共同研究
企-企
企-大・研
その他
合計
日本国籍
78
515
114
1
327
7
157
163
1,035
研究者所属機関属性別論文件数と比率(全雑誌:1985-2006 年)
件数
米国籍
欧州国籍
32
40
368
952
35
167
4
7
180
1,011
2
5
36
158
142
848
619
2,177
中国籍
320
88
162
20
142
570
日本国籍
7.5
49.8
11.0
0.1
31.6
0.7
15.2
15.7
100.0
比率(%)
米国籍
欧州国籍
5.2
1.8
59.5
43.7
5.7
7.7
0.6
0.3
29.1
46.4
0.3
0.2
5.8
7.3
23.1
39.0
100.0
100.0
■他国と比べて高い
図-62 筆頭著者所属機関国籍別
2
7
5
4
企業 - 大学
121
27
130
企業 - 研究機関
14
6
24
大学 - 大学
98
93
451
22
83
大学 - 研究機関
52
48
324
11
53
5
15
企業 - 個人
大学 - 個人
研究機関 - 研究機関
15
2
2
13
1
28
1
6
研究機関 - 個人
個人 - 個人
企業 - 研究機関 - 個人
大学 - 研究機関 - 個人
企業 - 大学 - 研究機関
22
3
5
47
企業 - 大学 - 個人
企業 - 大学 - 研究機関 - 個人
所属機関属性(共同研究)
日本国籍
米国籍
欧州国籍
韓国籍
研究者所属機関国籍
- 28 -
中国籍
56.1
15.4
28.4
3.5
24.9
100.0
■他国と比べて低い
共同研究の組合せ別論文件数(全雑誌:1985-2006 年)
企業 - 企業
中国籍
オースト
ラリア国籍
第4節
研究開発リーダー
◆◇◆
論文件数 1 位は、スウェーデンの LUND 大
上位は、東京大、New Mexico 州立大、Roma 大、産業技術総合研究所など
著者上位に日本人では、軽部氏、水谷氏、矢吹氏など
◆◇◆
論文件数上位の研究者所属機関および研究者を表-63 に示す。日本からは東京大、産業技
術総合研究所、東京工業大、京都大(17 位)などが上位である。研究者では、軽部征夫氏、
水谷文雄氏、矢吹聡一氏の 3 名が上位に入っている。
表-63 論文件数上位の研究者所属機関と研究者(全雑誌:1985-2006 年)
論文件数上位
研究者所属機関
順位
論文件数上位研究者
研究者所属機関
国籍
件数
順位
研究者名
所属
件数
1 LUND UNIV.
スウェーデン
186
1 WANG J
NEW MEXICO STATE UNIV., NM, USA
123
2 東京大学
日本
126
2 軽部征夫
東京工科大学
111
3 NEW MEXICO STATE UNIV.
米国
118
3 GORTON L
LUND UNIV., LUND, SWE
4 UNIV. ROMA
イタリア
113
4 水谷文雄
兵庫県立大学
74
5 産業技術総合研究所
日本
105
5 PALLESCHI G
UNIV. TOR VERGATA, ROME, ITA
71
6 NANJING UNIV.
中国
79
6 矢吹聡一
産業技術総合研究所
61
7 東京工業大学
日本
75
7 COSNIER S
ECOLE CENTRALE DE LYON, FRA
57
ECOLE CENTRALE DE LYON, FRA
55
UPPSALA UNIV., UPPSALA, SWE
54
DUBLIN CITY UNIV., DUBLIN, IRL
53
8 FUDAN UNIV.
中国
67
8
9 ECOLE CENTRALE DE LYON
フランス
64
9 RUZGAS T
フランス
63
10 SMYTH M R
10 UNIV. JOSEPH FOURIER
JAFFREZIC-RENAULT N
99
技術区分別に論文件数上位の研究者所属機関を表-64 に示す。表に示した以外に日本では
東京農工大学、埼玉工業大学などが上位に入っている。
表-64 技術区分別
論文上位の研究者所属機関(全雑誌:1985-2006 年)
トランスデューサー
順位
研究者所属機関
1 LUND UNIV.
2 NEW MEXICO STATE UNIV.
3 ECOLE CENTRALE DE LYON
4 東京大学
5 産業技術総合研究所
固定化層
順位
研究者所属機関
1 FUDAN UNIV.
1 UNIV. JOSEPH FOURIER
3 NANJING UNIV.
4 CHANGCHUN INST. APPLIED CHEMISTRY,
CHINESE ACADEMY OF SCIENCE
5 産業技術総合研究所
5 LUND UNIV.
測定方法
順位
研究者所属機関
1 UNIV. ROMA
2 NEW MEXICO STATE UNIV.
2 LUND UNIV.
4 東京大学
5 UNIV. WARSAW
5 産業技術総合研究所
5 UNIV. POTSDAM
国籍
スウェーデン
米国
フランス
日本
日本
件数
39
36
25
21
20
国籍
中国
フランス
中国
件数
36
36
32
選択膜・メディエーター
順位
研究者所属機関
国籍
1 UNIV. TEXAS
米国
2 LUND UNIV.
スウェーデン
3 UNIV. MANCHESTER
イギリス
4 INST. BIOCHEM., VILNIUS
リトアニア
4 NATIONAL RES. COUNCIL CANADA (NRCC) カナダ
分子識別素子
順位
研究者所属機関
国籍
1 LUND UNIV.
スウェーデン
2 東京大学
日本
3 NEW MEXICO STATE UNIV.
米国
件数
12
11
10
9
9
件数
31
21
18
中国
26
4 UNIV. ROMA
イタリア
17
日本
スウェーデン
25
25
5 京都大学
日本
16
国籍
イタリア
米国
スウェーデン
日本
ポーランド
日本
ドイツ
件数
19
9
9
7
6
6
6
センサシステム全体
順位
研究者所属機関
1 LUND UNIV.
2 東京大学
3 UNIV. ROMA
4 東京工業大学
5 NEW MEXICO STATE UNIV.
国籍
スウェーデン
日本
イタリア
日本
米国
件数
70
56
47
46
41
日本人研究者で、表-63 に示した 3 名以外に技術区分別論文件数上位に名前が入っている
のは、池田篤治氏(福井県立大学)、早出広司氏(東京農工大学)、内山俊一氏(埼玉工業大
学)の 3 名であった。
- 29 -
第5節
注目研究開発テーマ
◆◇◆
微量試料による血糖自己測定:比較的、日本優位。近年急増と中国の台頭
高感度デバイス:欧州優位。近年の急増は中国
バイオテクノロジーによる分子識別素子の改変:欧州優位だが、近年は日欧
ユビキタス医療への対応:近年は日欧が主体
◆◇◆
特許出願と同様に、注目研究開発テーマの 4 テーマに関連すると分類された論文を集計し、
図-65 に研究者所属機関国籍別の論文件数推移と比率を示す。微量試料については、1990 年
代前半までは日本の論文が多かったが、2006 年に急増しているのは欧州、中国による。高感
度デバイスについては、欧州優位で推移していたが、近年の急増は中国の台頭による。分子
識別素子の改変については、欧州優位ながら日欧が競っている。ユビキタス医療については、
1990 年代後半から論文件数が増え、日本も比較的多い。
図-65 注目研究開発テーマ別
研究者所属機関国籍別論文件数の推移と比率(全雑誌)
オーストラリ
ア国籍
0件
中国籍
0.0%
23件
15.6%
微量試料による血糖自己測定
その他
9件
6.1%
高感度デバイス
35
100
韓国籍
2件
1.4%
25
発
表
件
数
日本国籍
47件
32.0%
発行年
1985-2006
30
15
13
13
13
11
10
8
7
6
7
6
5
4
4
5
4
11
1
20
5
4
1
0
4
5
1
2
1
2006
米国籍
16件
20.0%
14
9
9
8
合計
80件
8
7
6
6
6
5
4
4
4
4
4
4
2
2005
2004
2003
22
4
16
6
3
1312
6
2002
2
1995
2
2
14
12
ユビキタス医療への対応
5
3
3
2
2
1 1
1
1
11
1
1997
11
1 1
1996
2
1
1995
11
4
3
その他
5件
6.3%
8
5
3
2
1
欧州国籍
28件
35.0%
12
1994
2
1 1
1991
2
1
1990
1 1
1989
1 1
5
4
12
11
日本国籍
25件
31.3%
10
3
2
2
1988
3
オーストラリ
ア国籍
0件
0.0%
8
5
2
20
15
10
1
発行年
1985-2006
16
14
4
3
1987
欧州国籍
47件
43.9%
5
4
1986
5
1985
米国籍
10
12件
11.2%
合計
6
107件
5
中国籍
5件
6.3%
韓国籍
1件
1.3%
18
12
6
4
2006
10
8
6
2005
2004
2003
10
8
2002
2001
2000
日本国籍
30件
28.0%
9
37
0
その他
10件
9.3%
韓国籍
0件
0.0%
10
発
表
件
数
1999
1998
13
発行年
1985-2006
12
1997
14
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
オーストラリ
ア国籍
0件
0.0%
中国籍
8件
7.5%
バイオテクノロジーによる
分子識別素子の改変
5
1
3
1
15
13
11
10
2001
1
2
2000
222
1999
11
1
30
23
6
3
29
28
47
合計
390件
1998
1
6
4
28
30
1997
11
9
8
韓国籍
7件
1.8%
1996
1
6
4
3
39
40
1993
1 1
2
46
1992
1 1
22
合計
147件
12
8
欧州国籍
149件
38.2%
60
50
92
米国籍
57件
14.6%
中国籍
68件
17.4%
80
米国籍
27件
18.4%
日本国籍
48件
12.3%
発行年
1985-2006
90
70
欧州国籍
39件
26.5%
20
20
31
その他
53件
13.6%
オーストラリ
ア国籍
8件
2.1%
1
11
0
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
米国籍
1998
発行年
発行年
研究者所属機関国籍
研究者所属機関国籍
日本国籍
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1985
0
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
日本国籍
合計
米国籍
欧州国籍
韓国籍
中国籍
オーストラリア国籍
その他
合計
各注目研究開発テーマにおける論文件数上位の研究者所属機関を表-66 に示す。New Mexico
州立大学、LUND 大学がそれぞれ 3 つのテーマで上位にランクされている。
表-66 注目研究開発テーマ別
論文件数上位の研究者所属機関(全雑誌:1985-2006 年)
微量試料による血糖自己測定
順位
研究者所属機関
国籍
1 UNIV. NEW MEXICO
米国
2 東京女医大
日本
3 UNIV. MANCHESTER
イギリス
3 東京大学
日本
バイオテクノロジーによる分子識別素子の改変
順位
研究者所属機関
国籍
1 東京大学
日本
2 東京農工大学
日本
3 LUND UNIV.
スウェーデン
3 NEW MEXICO STATE UNIV.
米国
件数
7
6
5
5
件数
6
5
4
4
高感度デバイス
順位
研究者所属機関
1 NEW MEXICO STATE UNIV.
2 LUND UNIV.
3 NANJING UNIV.
4 ECOLE CENTRALE DE LYON
ユビキタス医療への対応
順位
研究者所属機関
1 NEW MEXICO STATE UNIV.
2 LUND UNIV.
3 UNIV. ROMA
- 30 -
国籍
米国
スウェーデン
中国
フランス
件数
21
13
11
10
国籍
米国
スウェーデン
イタリア
件数
6
5
4
第6節
注目技術
1.測定項目
◆◇◆
健康関連項目を測定項目にする論文は 1995 年をピークに減少
健康関連以外の項目に関する論文が増加、1996 年に健康関連を抜く
近年、遺伝子・タンパク質、化学物質の論文件数が急増
◆◇◆
糖関連項目、乳酸、脂質、腎機能、酵素、血液凝固、遺伝子・タンパク質を測定項目にし
ている論文を、健康関連項目を測定している論文として集計した。また、全論文から健康関
連項目として集計されたものを除いた論文を健康関連以外として集計した。また、グルコー
ス、乳酸、脂質、遺伝子・タンパク質、化学物質を測定している論文についても集計し、論
文件数の推移を図-67 に示す。健康関連、グルコースは 1990 年代にピークを示し、その後減
少していたが近年、再び増加している。健康関連以外が増加を続け 1996 年に健康関連を抜い
ている。遺伝子・タンパク質、化学物質は近年急増している。
図-67 測定項目別論文件数の推移(全雑誌)
300
100
250
75
200
論
文
件
数 150
(
(
論
文
件
50 数
)
▲
)
■
100
25
50
0
0
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
発行年
健康関連
脂質
グルコース
遺伝子・タンパク質
健康関連以外
化学物質
乳酸
健康関連項目および健康関連以外の項目について、技術区分別の論文件数の推移を図-68
に示す。健康関連以外で、固定化層の急増、2000 年以降のセンサシステム全体の増加が顕著
である。健康関連以外の項目で増加が目立つ項目は、アルコール、遺伝子・タンパク質(健
康関連以外)である。遺伝子・タンパク質で健康関連以外に相当する項目は、遺伝子組換え
植物、アレルゲン、代謝物などである。免疫センサ、核酸センサに係る遺伝子・タンパク質、
化学物質が注目されている状況が読み取れる。
図-68 技術区分別論文件数の推移(全雑誌:健康関連項目、健康関連以外の項目)
健康関連項目
健康関連以外の項目
160
140
140
120
120
100
100
出
願
件
数
80
80
60
60
40
40
20
20
0
0
- 31 -
選択膜・メディエーター
測定方法
固定化層
センサシステム全体
2006
トランスデューサー
分子識別素子
固定化層
センサシステム全体
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
選択膜・メディエーター
測定方法
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
優先権主張年
優先権主張年
トランスデューサー
分子識別素子
2.分子識別素子
◆◇◆
酵素の論文件数は 1995 年以降横ばい
抗体が急激な伸び
◆◇◆
分子識別素子別(酵素、微生物、抗体、核酸)の論文件数の推移を図-69 に示す。酵素は
他の分子識別素子の 10 倍程度の件数であるが、1995 年以降は横ばいである。微生物は 2002
年頃より若干の減少傾向、抗体、核酸は増加傾向であり、特に抗体は近年急激な増加を示し
ている。
図-69 分子識別素子別
論文件数の推移(全雑誌)
400
100
350
300
75
論
文
件
数
(
論
文 250
件
数
200
(
50
)
酵
素 150
)
酵
素
以
外
酵素
微生物
抗体
核酸
100
25
50
0
0
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
発行年
分子識別素子別に測定項目別の論文件数を表-70 に示す。酵素を分子識別素子とするもの
では、糖関連物質、アルコール、有機酸、アミノ酸、脂質、腎機能、遺伝子・タンパク質、
化学物質が多い。期間別集計で論文件数が増加しているのは、アルコール、脂質、遺伝子・
タンパク質である。微生物を分子識別素子とするものでは、糖関連物質、アルコール、有機
酸、BOD、化学物質が多いが、減少傾向である。抗体を分子識別素子とするものでは、遺伝子・
タンパク質、化学物質、ホルモンの件数が多い。遺伝子・タンパク質の件数が増加している。
表-70 分子識別素子別
測定項目
糖関連物質
アルコール
有機酸
アミノ酸
核酸類(旨み成分など)
脂質
酵素
腎機能
血液凝固
アンモニア
亜硝酸
BOD
ホルモン
抗生物質
ビタミン
鮮度
旨み
遺伝子・タンパク質
化学物質
測定項目別論文件数(全雑誌:1985-2006 年)
酵素
1,900
235
350
233
37
84
45
294
4
11
3
1
16
46
54
30
5
143
734
微生物
抗体
44
17
23
9
0
0
1
4
0
3
2
38
0
6
7
6
0
18
80
- 32 -
9
1
4
2
1
2
6
5
4
0
0
0
25
0
4
0
0
187
72
第4章
バイオセンサに関連する産業活動
第1節
日本の産業政策
◆◇◆
医療・診断機器開発等の国家プロジェクトの中で
開発が進められるバイオセンサ
◆◇◆
表-71 に日本のバイオセンサ関連プロジェクトを示した。バイオセンサはそれのみでプロ
ジェクトを形成することは少なく、医療・診断機器開発等のプロジェクトの一部として包括
されている場合が多いので、ここではバイオセンサ技術を包括するプロジェクトを示す。
表-71 日本のバイオセンサ関連プロジェクト
プロジェクト名
期間
主な内容
バイオ・IT 融合機器
生体分子計測機器・統合システム
開発
新たな原理に基づく解析デバイス
H14経
ホームヘルスケアのための高性能健康測定機器
17
済
産
業 バイオ診断ツール実
個別化医療に対応する微量試料から高感度で廉価に
省 用化開発
H18- 多様な遺伝情報を検出するバイオ診断ツール開発
20 (タンパク質発現プロファイル解析ツール、遺伝子
診断システム等)
オプトエレクトロ技
ヘリコバクターピロリ検出システム開発、市販化
S63術を利用した医用バ
H7
厚 イオセンサーの開発
生 ナノメディシン研究
生体の構造・機能などを解明する分子イメージング
労
DDS・イメージング技術を核とした診断・治療法
働
H15- 超微細加工技術を利用した機器
省
19 IT やナノテクノロジーを活用した融合領域・革新的
医療技術開発
QOL を高める診断・治療機器の研究開発
高機能バイオセンサ
安定性が高く、高機能なバイオセンサで食品製造
H10ーを活用した新食品
工程や品質の効率的な管理技術、新たな消費者ニ
14
製造技術の開発
ーズに対応した新食品の製造技術開発
生物機能の革新的利
生体分子を利用したセンサ開発、
H14用のためのナノテク
マイクロ空間細胞培養チップ
18
ノロジー・材料開発
農
生産・流通加工過程に
危害要因データ整備と共通基盤技術開発(As,Cd,
水
おける体系的な危害 H20- カビ毒、病原微生物)
省
要因の特性解明とリ 24 リスク低減技術開発
スク低減技術の開発
安全で信頼性、機能
食品の安全・信頼を確保するための評価・管理技
性が高い食品・農産 H18- 術(原産地、履歴情報、偽装防止)
物 供 給 の た め の 評 22 ニュートリゲノミクス技術開発
価・管理技術の開発
一般・産業廃棄物・
環境・安全性評価:燃焼炉周辺での有害物質拡散
バイオマスの複合処 H15- に関する安全設計。排水、排ガスに係るバイオセ
理・再資源化プロジ 19 ンサの開発と、植物遺伝子資源を利用した環境汚
ェクト
染物質モニタリングシステムの構築
文
化学・生物剤マルチ
設置場所を選ばない小型な生物・化学剤のリアル
部
検出バイオセンサの
タイム自動検知装置の開発を目標とし、生物・化
科
H19
開発
学テロの抑止や被害の最小化により、安全・安心
学
な社会の実現を目指す。
省
設置型生物剤検知デ
設置型生物剤検知装置についてフィージビリテ
バイス実用化に関わ
ィスタディ(試行的研究)として、全自動及かつ
H19
る研究
短時間で生物剤を検出可能な小型装置の実用化
を明確に意識した研究をおこなう
医療分野における電子タグ利活用のための実証
科 ユビキタスネットワ
学 ーク~電子タグ技術 H17- 実験
技 等の展開
術 ナノバイオテクノロジー H17- 独創的ホール検出システムと磁性ナノビーズを
20 用いた超高感度バイオセンサの開発
連 (ナノバイオセンサー)
携 同上
H18- 生体内分子を可視化するナノセンサ分子開発
施
21
策 同上
H18- 精密構造識別型の電気・光応答バイオセンサ
群
21
- 33 -
(単位:億円)
主な参画機関
エーザイ、オリンパス、
島津製作所、アステラ
ス、凸版印刷、日水製
薬、日立製作所、医療
福祉機器研究所
NEC、MCBI、島津製作所、
橫河電機、DNA チップ
研、東レ
予算
68
4
バイオセンサー研究所
10.8
76
4.72
農業・食品産業技術総
合研究機構、生物資源
研、等
独立行政法人、大学、
民間
産業技術総合研究所、
環境総合テクノス、理
化学研究所
大阪大学、ダイキン、明
電舎、バイオデバイステ
クノロジー、岡山理科大
学、産業技術総合研究所
佐賀大学、アドテックプ
ラズマテクノロジー、中
央電機計器製作所、佐賀
県窯業技術センター
総務省、経済産業省、
文部科学省
東京工業大学
大阪大学、三菱化学生
命研、田辺三菱製薬
富山大学、田中貴金属
工業
2.51
8.44
(H18)
第2節
バイオセンサの市場動向
◆◇◆
市場のほとんどが血糖計を中心にした医療関連
世界的に糖尿病患者数の増大が懸念されている
特に患者数の増加が予想される中国・インドが大きな市場となる可能性
食品、環境等は伸び悩み気味。公定法への採用がポイントか
◆◇◆
表-2 で示したバイオセンサの応用産業 4 分野のうち、セキュリティ分野を除く 3 分野につ
いて、国内の市場動向を表-72 に示す。
表-72 バイオセンサの国内市場の推移
応用分野
医療分野
食品分析用
環境分析用(BOD)
環境汚染物質解析用試薬
(単位:億円)
2003 年
2004 年
380
2
4
4
2005 年
410
2
1
4
2006 年
440
2
0.8
4
490
2
記載なし
5
出典:日経バイオ年鑑 2005、日経バイオ年鑑 2006、日経バイオ年鑑 2007
医療関連の各種市場を図-73 に
図-73 各種医療関連市場の比較
示す。国民医療費約 33 兆円のうち、
国民医療費
糖尿病医療費が約 1.1 兆円である。
医薬品市場
臨床検査費が約 3,700 億円で、医療
用バイオセンサが 440 億円と、10
%を超える比率を占めている。
(バイオセンサと臨床検査市場は
糖尿病医療費
臨床検査市場
検体検査用機器
バイオセンサ(医療用)
100
2005 年、その他は 2005 年度)
1000
10000
100000
1000000
バイオセンサ、臨床検査市場:2005年、その他:2005年度 (億円)
出典:臨床検査市場は富士経済の資料(2004,2006)から三菱化学テクノリサーチで推定、
バイオセンサは日経バイオ年鑑 2006、その他は厚生労働省 HP より取得
医療用途では、主に糖尿病患者がインスリン投与治療に際して、血糖値をモニターするこ
とが必要であるため、毎日の治療の一環として計測していることが大きな市場を形成してい
る理由である。厚生労働省平成 14 年糖尿病実態調査によれば、糖尿病が強く疑われる人の数
は、平成 9 年の 690 万人から平成 14 年には 740 万人に拡大している。
1998 年の WHO の報告では、1995 年と 2025 年(予測値)を比較して、糖尿病患者数は全世
界で 1 億 3,500 万人から 3 億人へ 122%の増加、そのうち、発展途上国では、8,400 万人から
2 億 2,800 万人と 170%の増加と見積もっている(表-74)。
表-74 糖尿病患者数増加予測
国名
世界全体
先進国
発展途上国
国別
インド
中国
米国
ロシア
日本
ブラジル
インドネシア
パキスタン
メキシコ
ウクライナ
エジプト
1995 年
13,500
5,100
8,400
1,900
1,600
1,400
900
600
500
500
400
400
400
(単位:万人)
2025 年(予測値) 増加率(%)
30,000
122
7,200
41
22,800
170
5,700
3,800
2,200
1,200
900
1,100
1,200
1,500
1,200
200
138
57
33
50
120
140
275
200
900
出典:http://www.who.int/inf-pr-1998/en/pr98-63.html
- 34 -
表-75 血糖自己測定計の地域別市場
市場シェア(%)
約 45
約6
日本
7
欧州/中東/アフリカ
31
カナダ
4
アジア・パシフィック
4
中南米
4
出典:バイオセンサ・ケミカルセンサ事典、軽
部征夫監修、株式会社テクノシステム、2007
年、436 頁
米国
地域
一般消費者
医療機関
また、血糖自己測定計の
地域別市場を表-75 に示す。
図-76 血糖自己測定計の試料量と計測時間の推移
上市年
メーカー
日本は糖尿病患者数で 3~4
A
%であり、血糖自己測定計で
B
1995
2000
2001
2002
2 μL
15秒
2003
2004
2005
2006
0.6 μL
5秒
0.3 μL
5秒
0.3 μL
7秒
は 7%の市場である。市場の
4 μL
26秒
1.5 μL
8秒
1.5 μL
5秒
0.6 μL
5秒
90%以上が、日本/北米/欧
C
州/中東/アフリカで販売さ
D
1 μL
10秒
れている。今後は、中国、イ
E
2 μL
10秒
ンドをはじめ、アジア地区が
F
重要な市場となると思われる。
G
血糖自己測定計の代表的メ
ーカーの製品について、発売
2007
0.6 μL
15秒
1 μL
8秒
2 μL
15秒
1.8 μL
10秒
0.7 μL
7秒
H
0.5 μL
5秒
I
1 μL
5秒
年と、試料量、計測時間を図-76 に示す。試料の微量化、計測時間の短縮でいずれのメーカ
ーでも目覚しい改善を示している。
一方、環境分野で代表的な製品である BOD 計測計は、簡易計測、連続測定など既存の測定
方法に比べて性能的には優れた製品を完成させているが、市場の拡大にはつながっていない。
保険診療の対象となっている血糖計に比べ、BOD 計では、BOD 計測の公定法に採用されていな
いことが市場の拡大しない原因の一つと考えられる。公定法との相関性を向上させるなどの
性能面の改良と、海外市場への展開が今後の課題となるであろう。
第3節
標準化に関する話題
◆◇◆
-Continua Health Alliance の活動-
2006 年 6 月 6 日 Continua Health Alliance 発足(米 オレゴン州)
健康機器とデジタル機器の接続の標準化規格を定める活動を行う組織
日本からも多くの企業が参加
◆◇◆
人口が高齢化に伴い、特に慢性病患者の健康維持、管理が重要な課題となっている。従来
の医療現場に加えて、個人が家庭や職場などの日常的な環境で健康管理を行うことを促進す
るという観点から、広く健康維持、管理に関心のある会社の自由参加による Continua Health
Alliance(本部:米国オレゴン州)という組織が 2006 年 6 月 6 日に発足した。具体的には、健
康機器と携帯電話機、パソコンなどのデジタル機器を接続する際の互換性を確保するための標
準化規格を定める活動を行う。
主な日本からの会員として、Promoting Member にオムロン、松下電器産業、シャープが、
Contributing Member にコナミスポーツ&ライフ、NTT、菱洋エレクトロ、タニタ、テルモ、
東芝コンシューママーケティングなどが参加している。
2007 年に NEDO が財団法人医療情報システム開発センターに委託した「健康測定機器のプ
ロトコル仕様に関する国際標準化調査事業」では、Continua の総会及びシンポジウムに参加
し、設計ガイドラインの策定と認証プログラムの開発に主体的に参画するとされている。
2007 年 4 月 17 日には Continua Health Alliance が主催、NEDO が共催で「国際パーソナ
ル・テレへルス・シンポジウム」が東京で開催され、経済産業省、厚生労働省の関係者がそ
れぞれの立場からパーソナルヘルスの実現に向けた取り組み、また大学、産業界の代表がパ
ーソナルヘルスにおける IT の活用に関して意見を述べた。
- 35 -
第5章
まとめ
技術区分別および注目研究開発テーマ別に、特許出願における日本の出願件数シェアから
日本の技術水準を評価し、2002-2003 年の出願件数と 1998-1999 年の出願件数の比率から現
在の出願動向を判定した。まとめを表-77 に示す。
表-77 特許出願からみた日本の技術水準と出願動向
分類
トランス
デュー
サー
選択膜・
メディ
エーター
固定化
要素
総合
印刷法
新材料
メディ
エーター
補酵素
固定化
方法
総合
酵素
分子識別
素子
微生物
免疫
核酸
概要
日本の
技術水準
微細加工技術の発展により、小型化、集積化が進んで
いる。日本の得意分野であり、世界をリードしている。
血糖自己測定器の普及のキーとなった技術。安価な大
量 生産 を可 能に した 。日 本が 盛り 返し て リードし て い
る。
比較的日本の出願は少ない。米国が優位である。
微細加工との組み合わせで、固定化等の製造上の特性
も重要になってきている。
補酵素利用型酵素センサの開発により、より電子伝達
能に優れたセンサが開発されている。
架橋法は分子識別素子の活性に影響を与えるため、あ
まり使われなくなる。酵素では架橋法、微生物では包
括、抗体では共有結合法が主。新規材料では自己組織
化膜の利用がある。
バイオセンサの機能発現の上で中心となる要素であ
る。特異性、安定性など機能改変や、抗体プローブな
どが注目されている。
新規酵素のスクリーニングは日本が優位。遺伝子組換
え等による機能改変も進み、特異性改善や、熱安定性
向上などで日本がリードしている。
微生物スクリーニングは日本が優位な技術。BOD セン
サや、発酵産業用途など出願も多い。技術的には日本
がリードしているが、出願動向は低い。
応用分野の拡大の可能性があり、抗体センサへの注目
は大きい。医療用途以外に、環境、セキュリティなど
で化学物質検出には免疫センサが研究されている。日
本は劣位である。
応用分野の拡大のため核酸センサも注目される。微生
物の検出や遺伝子検査が対象である。日本は劣位であ
る。
測定項目の拡充が注目される。プラットフォーム技術
を他項目への応用に利用する技術開発。1990 年代以降
に出願件数増加しているが、米欧の診断企業が優位。
A
A
A
A
A
A
A
C
C
A
測定方法
測定方法
センサ
システム
全体
操作性
完成度の高い血糖計において、より操作性の充実を目
指した開発が主になってきている。
A
血液試料
の
微量化
1μL を切る試料量での計測が製品化されている。米
国がリードしているが日本の製品も追随。
A
注目
研究開発
テーマ
高感度
デバイス
分子識別
素子の
改変
ユビキタ
ス医療
新規材料(ダイヤモンド、ボロンドープダイヤモンド、
単結晶ダイヤモンド、DLC、カーボンファイバー、CNT、
フラーレン、ナノ材料)を用いたデバイスでは、日本
の出願件数はトップ
血糖計におけるグルコースデヒドロゲナーゼの遺伝子
改変が製品化されている。多くの臨床検査キットでも
酵素改変技術は使われており日本が優位である。
高齢化社会の到来などに備えて期待される技術であ
る。米国が優位。
日本勢の
出願動向
A
S
B
注:判定基準を以下に示す。いずれも発明単位での世界への出願を基に評価した。
1)日本の技術水準:出願人国籍別出願件数シェアにおいて、日本国籍出願人が、
S:出願件数シェア 70%以上の場合
A:出願件数シェアが 1 位または、2 位以下でも 1 位の 80%以上の出願件数である場合
B:出願件数シェアが 2 位または、3 位以下でも 1 位の 50%以上の出願件数である場合
C:上記 S~B に当てはまらない場合
2)出願動向:2002-2003 年の出願件数と 1998-1999 年の出願件数の比率を基に矢印の向きで動向を示す。
- 36 -
世界の
出願動向
第6章
提言
【提言1】
世界市場を意識した研究開発を行い、新しい市場における競争に資する特許出願を進める
べきである。
バイオセンサで大きな市場が既に形成されている血糖計に関しては、厚生労働省発表デー
タや、WHO 等の資料からも糖尿病患者や糖尿病が強く疑われる人の数は今後ますます増加す
ることが懸念されている。現在、血糖自己計測用の血糖計の市場は、日本、北米、欧州/中
東/アフリカ地区で 93%を占めているが、日本市場は世界全体のわずか 7%、糖尿病患者数
で世界全体の 4%強であり、国内だけに留まらずグローバルマーケットを目指すことが重要
である。そのためには、よりいっそうグローバルマーケットにおける競争を意識した技術開
発に取り組み、現在の市場の主体である米欧だけでなく、今後の著しい増加が見込まれる中
国、インドを中心とした発展途上国などの国・地域での利用も想定する必要があるであろう
1)
。医療制度・保険制度や、在宅検査の成熟度、医療器具を取り扱うということに対する国
民の意識レベル、さらに物流、価格なども含めて、それぞれの国・地域における状況に合わ
せて必要とされる技術課題を克服し、そうした状況に適合したシステムを供給すること、製
造体制・供給体制を整備することにより、新しい市場を形成することも可能になるであろう。
一方、環境分野では BOD センサが早くから開発が始まり、優れた性能を達成しているにも
かかわらず大きな市場の形成には至っていない
も重要であるが、中国
3)
2)
。国内の規制やニーズを踏まえた製品開発
など今後環境分野での需要増が期待される海外市場を目指して、各
国での需要・規制に即した、製品開発・技術開発を進めることが必要であろう。
さらに各国の状況に基づいて必要とされる項目も生じるであろう。特定の地域で重要な疾
患、食の安全、環境問題、セキュリティ問題など、個々の課題に迅速に対応できるような技
術基盤を整備することも重要である。企業間の共同出願が多い米欧に比べて、日本は産官学
連携による共同出願が比較的多い。論文に発表される基礎研究は圧倒的に大学が多く、こう
した大学・研究機関の成果を、これまで以上に有効に研究開発に取り入れることで、世界と
競うことが可能になる。
日本は発明数では世界的に優位でありながら、海外出願では上位に進出するプレーヤーが
非常に少ない。これは日本の発明が国内出願で留まっている例が多いことを示している。世
界市場を意識した製品開発を行い、海外市場に参入する場合は、それぞれの国における知的
財産を確保するために特許出願を戦略的に展開するべきである。
また、米国では多くのベンチャー企業が出願人上位に進出し、大手診断企業と一緒になっ
たケースも多々存在する。日本の出願人はほとんどが大手企業であり、ベンチャー企業は非
常に少ない。技術に立脚した小回りの利く開発体制を充実させ、今後、ライフサイエンス研
究やナノテクノロジーとの融合などで生じる様々な展開に柔軟に対応できることが必要であ
る。
- 37 -
【提言2】
血糖計における技術競争力を維持、発展させ、国内外でますます需要が高まる血糖計市場
におけるポジションを確保するべきである。
2-1
研究開発の課題の明確化
血糖自己計測(SMBG)用の血糖計が目覚しい進歩を遂げている現在、特許出願動向解析か
らグルコース測定における研究開発の課題は、性能の面では特異性の改善、試料の面では試
料の微量化、試料採取方法、操作性の面では、較正方法の簡易化、自動化、センサチップの
取り違え防止などの課題に関する出願が増加している
出願は、海外からの出願の増加が顕著である
5)
4)
。一方、血糖計の操作性に係る特許
。血糖計における日本の研究開発は、特許出
願件数や論文発表件数など、総合的には世界と互角に行われているものの、プレーヤーの数
では劣位な状況にある 6)。
現在、さらに今後生じる課題に対して、適切な研究開発を行い、海外企業との技術競争力
を拡充すべきである。
2-2
身体的負荷の削減
血糖自己計測(SMBG)用の血糖計においては、既に試料量が 1μL を切る製品が日米欧の
各社から次々に上市され、低侵襲化は相当進んでいる
7)
。研究開発では当初、日本がリード
していたが、1990 年代後半から日米で競っている状況が窺える
8)
。また、現行製品で 1μL
を切る最初の製品も米国製である上、米国の細胞間液試料による計測、連続血糖測定器等の
開発企業も出願人上位にランキングされている 9)。
糖尿病患者が血糖計を使用するに際しての、試料採取における身体的負荷や、センサチッ
プに対する経済的負荷を減少すべくさらなる開発は継続すべきである。血液以外の試料の利
用や非侵襲化、連続測定血糖計などで、従来の高い精度の計測に匹敵するような精度を有す
るシステムの開発も必要である。これには近赤外光などの光学的計測方法との競合も重要な
開発のポイントとなる。在宅モニタリングから常時生体モニタリング、ウェアラブル化への
医療変化や高度化が目指され、現状の観血式測定技術に対して、非侵襲的血糖測定技術、連
続計測、インスリン注入器との一体化が将来技術として注目されている
10)
。
【提言3】
高齢化社会の到来、生活習慣病の急増により予防医療の期待が高まっている。血糖自己計
測計で培った技術を活かして、健康の維持・増進に資する市場を形成すべきである。
バイオセンサが有する小型・簡便・安価で高精度な計測ができるといった特徴を活かした
ものとして、糖尿病の診断マーカーとしてβ-ヒドロキシ酪酸(Abbott 社)が、その他、コ
レステロール、中性脂肪(Roche 社、ただし光学式)、乳酸(アークレイ)などが販売されて
いる
11)
。血糖、尿酸、コレステロールの 3 項目を測定できる装置(General Life Biotechnology
社 台湾)や医療専門家用であるが総コレステロール、中性脂肪、HDL コレステロールの 3 項
目が測定できる装置(テクノメディカ)の販売も行われている。その他、バイオセンサの製
- 38 -
品化はできていないが、糖尿病関連マーカーとして、1,5-AG(アンヒドロ-D-グルシトール)
や糖化タンパク質なども酵素法により計測されている。
今後の市場拡大が期待される領域であるが、こうした領域では、既存品以上に身体的、経
済的負荷が小さくなることが求められるであろう。さらなる技術開発を推し進め、社会のニ
ーズに即した製品化を実現することが望まれる。
3-1
乳酸、コレステロール
乳酸は、スポーツ選手のトレーニング時のモニター用などに用いられ、コレステロールは
循環器疾患の診断に用いられている。特許出願動向では、乳酸、コレステロールともに 1990
年代後半以降に出願件数が増加しており、注目が高まっているものの、比較的米国の出願比
率が高い項目である
12)
。製品としての完成度が高いグルコース計測に比較して、グルコース
以外の健康関連項目では、特許出願において、多くの課題が増加しており、それらは、高感
度化、共存物質の影響、直線性といった基本的性能や、分子識別素子の寿命などである
13)
。
製品として、未だ改良の余地が多くあるため、こうした改善と、血糖計で開発した技術の適
用により、新規項目にふさわしいフォーマットのシステムを創成することが重要である。
3-2
IT 技術の利用
血糖計はもちろん、こうした新しい市場に適した測定項目では、基本的性能を向上させる
だけでなくさらに、日本が得意とする電気、半導体技術に、微細加工技術や IT 技術を融合さ
せ、ユビキタス社会に適した新たなシステムに組み込むことも必要となる。
例えば、長期戦略指針イノベーション 25 における代表例の中では、医療・健康分野の例
として、
「カプセル 1 錠で寝ながら健康診断」が提示されており、その中では、実現のための
必要な技術・システムとして、IT 利用による在宅検査に係る技術が示されている
14)
。バイオ
センサへの IT 利用では世界では米国がリードしているが日本も近年出願を増加させている
15)
。米国出願人では、企業間の共同出願が多いという特徴もある
16)
。融合技術の場合、1企
業のみではできない場合もあり、共同研究が有効であろう。
3-3
産官学連携の活用
今回の調査では、特許出願は企業、論文発表は大学・研究機関が中心という構図が明確に
なった
17)
。論文発表では、共同研究を調べると、米欧では大学-大学、大学-研究機関の占
める割合が高いが、日本では大学・研究機関-企業の共同研究の割合が共同研究全体の 48%
を占め、全論文件数の 15%に相当する(米国 6%、欧州 8%) 18)。
日本では産官学連携が進んでいると考えられ、さらにこうした連携を推し進め、大学・研
究機関で得られる基礎的研究の成果を産業界にスムーズに移転し、新しい市場形成による市
場の拡大をおこすことが重要である。
生活習慣病の急増により予防医療の期待が高まっており、特に測定項目については、臨床
的意義の解明など、大学・研究機関の研究に負うところが多く、乳酸、コレステロールなど
の既存項目に続く、新規な市場形成力のある測定項目を、医療者との連携で確立し、バイオ
センサ化するような研究開発が継続して行われるべきであろう。過去の調査
- 39 -
19)
や国の報告書
20)
においても疾患バイオマーカーにおける診断利用の重要性と研究開発対象としての注目の
状況が示されている。こうした研究成果でバイオセンサの特長を活かせるマーカー分子が発
見された場合、速やかにバイオセンサ化し実用に資するために、産官学連携などは重要にな
るであろう。バイオセンサ化するにあたり、酵素、微生物、抗体、核酸など分子識別素子の
迅速な探索、創出が技術開発の課題となる。
【提言4】
環境、食品、セキュリティなどの産業分野でバイオセンサの応用を拡大する。
バイオセンサの用途は血糖計を主体とした医療用途が依然として大部分を占めている。一
方、環境、食品、セキュリティなどの分野では、フィールド検査に用いられる簡易計測に対
する要求が大きく、農水省、文科省など多くのプロジェクトが採択されて実施されている
21)
。
酵素センサ、微生物センサだけでなく、免疫センサ、核酸センサも含めて、こうした領域
に対応できるデバイスの開発が重要である。特に、これらの検査に主に利用されると考えら
れる免疫センサは、1960 年代のバイオセンサ開発初期から研究されていながら
22)
未だに実用
化された可搬性の検出システムはない。また、核酸センサについても同様に、可搬性の検出
システムは実現していない。
こうした可搬性のシステムの実現には、非標識型の高感度デバイスが解決手段のひとつと
考えられる。非標識型デバイスは、2000 年頃より出願件数も増加しており、関心を集めてい
ることがわかる
23)
。日欧の出願が多く、日本が優位な状況である。また、電極材料に注目し
て、新規先端材料(ダイヤモンド、ボロンドープダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、DLC
(ダイヤモンドライクカーボン)、カーボンファイバー、CNT(カーボンナノチューブ)、フラ
ーレン、ナノ材料)を用いたデバイスに関する出願状況を見ると、このような先端材料を利
用したデバイスの出願件数が近年増加しており、日本のシェアも高いことが示されている
24)
。
論文による研究動向解析では、トランスデューサーを技術区分とする論文が近年増加を示
しており、特許出願動向ではこの技術区分に関する増加がわずかであることとは異なってい
る
25)
。注目研究テーマの高感度デバイスに相当すると考えられる論文も近年増加しているこ
とから、新規デバイスへ研究の関心が集まっていることが考えられる
26)
。
可搬性システムの実現におけるもうひとつの解決手段が、酵素機能を活用した高感度化の
成功例である ELISA 法と、μTAS、マイクロフルイディクスなどの融合により新規な集積化デ
バイスの構築である。多くの産業分野で多項目同時計測の有用性は示され、特許出願からは、
より実産業に近い企業からの出願が多くなっている。技術基盤は既に確立しており、それぞ
れの産業での必要性に応じた製品化に向けてブレークスルー技術の登場が望まれる。
新規デバイスの開発を進め、迅速・簡便・高感度な検出システムを構築することで、安心・
安全な社会の構築におけるバイオセンサの役割をさらに高めることが求められている。
- 40 -
【提言5】
先端バイオテクノロジー技術を活用した分子識別素子の創出を進める。
バイオセンサの特徴である生体分子が有する特異的認識機能を、さらに特異性、安定性、
感度などの性能で高機能化を果たすには、微生物・酵素を自然界から大規模にスクリーニン
グする技術、遺伝子解析、タンパク質解析を行う技術、さらに、それらを遺伝子工学的に改
変する技術などを駆使することが必要である。血糖計における酵素改変技術では、現在、日
本の出願人が世界をリードしているが、他の項目でもこうした開発は有効である。環境分野
で用いられる微生物センサにも、微生物種の探索による高機能化が期待される。ライフサイ
エンス分野は、比較的日本が劣位な分野であり
27)
、現在の酵素、微生物材料における優位性
を継続、発展させるためにもさらなる注力が必要である。
また、微生物の取扱いや酵素探索技術については、日本は伝統的に世界に対して優位な立
場にあり
28)
、そうした技術が有効にバイオセンサ技術と融合して、現在の優位性の基盤を形
成している。さらに提言3でも述べたように、ライフサイエンス分野で新たに見出された疾
患マーカー等をいち早くバイオセンサ化して実用化することで、日本が世界に優位性を発揮
できる分野が多く存在する。
5-1
酵素の機能改変
バイオセンサの特徴である生体関連分子による特異的認識機能を、バイオテクノロジーな
どを利用して改善する研究も近年急激に伸びている
29)
。現在までのところ、血糖計における
酵素でグルコースデヒドロゲナーゼを対象に、主に日本の出願人から遺伝子組換えによる酵
素の特異性、安定性などの機能改変に関する特許出願が行われている
30)
。血糖計をはじめバ
イオセンサは、こうした先端バイオテクノロジーを駆使して機能を向上させる技術開発を、
明確な目的を持って行える産業である。今後も世界をリードする技術開発が期待される。
5-2
抗体・抗原、DNA プローブの創製技術の確立
バイオセンサに適用する抗体・抗原、DNA プローブなどの分子識別素子の開発が今後ます
ます重要な要素になる。変異の激しいウイルスや、新規に出現する病原性微生物、新規に発
見された疾患マーカーなどに迅速に対応できる分子識別素子創出技術を確立すべきである。
1)第 3 部第 2 章第 2 節
2)第 3 部第 2 章第 1 節、第 3 部第 2 章第 4 節 1
3)第 3 部第 2 章第 4 節 2
4)第 1 部第 7 章第 2 節 1
5)第 1 部第 7 章第 2 節 1(2)
6)第 1 部第 5 章第 2 節 1
7)第 3 部第 2 章第 2 節
8)第 1 部第 6 章第 1 節 1
9)第 1 部第 6 章第 1 節 4、第 4 部第 1 章第 1 節 6(1)
10)経済産業省 技術戦略マップ 2007 診断・治療機器分野
11)第 3 部第 2 章第 2 節
12)第 1 部第 7 章第 2 節 3
13)第 1 部第 7 章第 2 節 3
14)第 3 部第 1 章第 1 節 2 例 1
15)第 1 部第 6 章第 4 節 1
16)第 1 部第 6 章第 4 節 3
17)第 1 部第 2 章第 2 節、第 1 部第 3 章第 2 節 3、第 1 部第 3 章第 3 節 3、第 1 部第 3 章第 4 節 3、第 1 部第 3 章第 5 節 3、
第 1 部第 3 章第 6 節 3、第 1 部第 5 章、第 1 部第 6 章第 1 節 3、第 1 部第 6 章第 2 節 3、第 1 部第 6 章第 3 節 3
第 1 部第 6 章第 4 節 3、第 2 部第 2 章第 1 節
18)第 2 部第 2 章第 1 節
19)平成 18 年度特許出願技術動向調査 ポストゲノム関連技術 第 2 部第 3 章
20)経済産業省 技術戦略マップ 2007 創薬・診断分野 21)第 3 部第 1 章第 1 節
22)第 1 部第 4 章
23)第 1 部第 6 章第 2 節
24)第 4 部第 1 章第 1 節 6(2)
25)第 1 部第 3 章第 1 節 1(3)、第 2 部第 3 章
26)第 2 部第 4 章第 2 節
27)コラム
28)経済産業省 技術戦略マップ 2007 グリーンバイオ分野 参考資料 4
http://www.nedo.go.jp/roadmap/2007/data/manu_5.pdf
29)第 1 部第 6 章第 3 節 1
30)第 1 部第 6 章第 3 節
- 41 -
注:欧州の定義について
欧州への出願については、欧州特許条約(EPC)加盟国の内、データベース(Derwent World Patents Index :
WPI)の収録対象国である 19 ヶ国(オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、スイス(CH)、ドイツ(DE)、デンマー
ク(DK)、スペイン(ES)、フィンランド(FI)、フランス(FR)、イギリス(GB)、アイルランド(IE)、イタリア
(IT)、ルクセンブルグ(LU)、オランダ(NL)、ポルトガル(PT)、スウェーデン(SE)、チェコ(CZ)、ハンガリ
ー(HU)、ルーマニア(RO)、スロヴァキア(SK))と欧州特許庁(EP)およびロシア(RU)の合計 21 ヶ国(機関)
への出願を対象とした。
出願人国籍および研究者所属機関国籍における欧州国籍の定義は、欧州特許条約(EPC)加盟国の 32 ヶ国
(オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、ブルガリア(BG)、スイス(CH)、キプロス(CY)、チェコ(CZ)、ドイツ
(DE)、デンマーク(DK)、エストニア(EE)、スペイン(ES)、フィンランド(FI)、フランス(FR)、イギリス(GB)、
ギリシャ(GR)、ハンガリー(HU)、アイルランド(IE)、アイスランド(IS)、イタリア(IT)、リヒテンシュタ
イン(LI)、リトアニア(LT)、ルクセンブルグ(LU)、ラトビア(LV)、モナコ(MC)、マルタ(MT)、オランダ(NL)、
ポーランド(PL)、ポルトガル(PT)、ルーマニア(RO)、スウェーデン(SE)、スロヴェニア(SI)、スロヴァキ
ア(SK)、トルコ(TR)) およびロシア(RU)とした。
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