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燃料電池(18年度更新)(PDF:2040KB)
平成23年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 燃料電池 平成24年4月 特 許 庁 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155) 第1章 第1節 調査概要 調査目的 我が国で使用している電力の大部分は石油、石炭、天然ガス等の化石燃料の燃焼による火 力発電、あるいは水の位置エネルギーを利用する水力発電、核分裂を利用する原子力発電等 により作られている。化石燃料は燃焼して電気エネルギーに変換されるときに温室効果ガス である二酸化炭素(CO2)を排出する。現在、我が国のエネルギー環境において、燃料電池 は革新的なエネルギー高度利用技術として位置づけられている。 燃料電池は水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを 電気エネルギーへ直接的に変換する発電装置で、火力発電装置に比べ発電効率が高く、発電 過程で NOx や SOx を排出しないクリーンなエネルギー源である。 本報告書では、2000 年度、2006 年度の日米欧における特許技術動向調査に引き続き、日 米欧と進展著しい中韓を加えた 5 極における燃料電池について、特許出願技術動向の調査を 軸に研究開発動向、各国の産業技術政策、さらには市場環境について網羅的に調査した結果 を報告する。 第2節 技術概要 (1) 燃料電池技術の変遷 燃料電池は、燃料極(アノード)、電解質、空気極(カソード)から構成され、燃料や酸化 剤を連続的に供給し、化学エネルギーを電気エネルギーと熱エネルギーに変換させる装置で ある。 図 1-1 に燃料電池の主たる技術変遷を示す。 燃料電池の原理発見は 1801 年にデービー卿(英国)によるといわれている。その後、1839 年にグローブ卿(英国)が白金電極を用い、水素と酸素を供給して発電が出来ることを証明 した。現在の燃料電池の原型を発明したといえる。 燃料電池の特許として、1952 年ベーコン(英国)がアルカリ形燃料電池(AFC: Alkaline Fuel Cell)の原型となる特許を取得している。米国 UTC 社がこのベーコン特許を買い上げ て宇宙用に改良した PC3A はアポロ計画に採用され、1969 年アポロ 11 号に搭載された。こ のタイプの AFC は現在もスペースシャトルに使用されている。一方、アポロ計画に先立っ たジェミニ計画では 1965 年ジェミニ 5 号にゼネラル・エレクトリック(GE)社製固体高分 子形燃料電池(PEFC: Polymer Electrolyte Fuel Cell)が搭載された。 米国では、軍事技術の民間転用により米経済を活性化させる目的で、1967~1976 年でタ ーゲット計画が開始された。液体含浸形のりん酸形燃料電池(PAFC: Phosphoric Acid Fuel Cell)が開発の主体になった。 国内では、1991 年 4 月「りん酸型燃料電池(PAFC)発電技術研究組合」が設立され、資 源エネルギー庁の資金援助で加圧型 5,000kW、常圧型 1,000kW の実証試験が 1995~1996 年に行われた。その後、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC: Molten Carbonate Fuel Cell)の開 発も、日米政府の強力な支援を受けて実施されたが、コスト、信頼性・耐久性の問題からメ ーカは撤退した。 - 1 - 図 1-1 燃料電池主たる技術変遷 石油危機 1800年 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 1900年 1801年: Davy卿(英国) 燃料電池の原理発見 1950年 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 1960年 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 1970年 1980年 1900年:Nernst(独国) SOFCの発電原理発見 電解質: YSZ ‐‐‐‐‐‐‐‐ ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 1990年 2000年 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 2010年 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 燃料電池普及促進 Yttria Stabilized Zirconia 1839年:Grove卿(英国) 燃 料 電 池 原 理 ・ 試 作 現在の燃料電池の原型モデル 実験に成功 1987年: 電気事業用 1MW級 PAFC実証試験 1910年:Taitelbaum 液体燃料電池原理の発見 日 本 の 状 況 1961年:Justi 1921年:Bauer(独国) アルコールDMFC原理の発見 MCFC 試作 1993年: 電中研 100kW級MCFC発電試験 成功 1962年:DuPont社 1937年:Bauer(独国) Nafion発明 SOFC 試作 1950年:GE社 PEFC開発着手 DMFC Direct Methanol Fuel Cell 海 外 の 状 況 SOFC Solid Oxide Fuel Cell 2003 年 NEF 定置式PEFCの実証試験開始 2005 -2008 年 NEDO/NEF 家庭用PEFCの大規模設置事業 2007 -2010 年 家庭用SOFCの実証試験 2009年 「エネファーム」補助事業 一般家庭へ導入 2011年 SOFC家庭用コジェネ補助対象 2025年:FCV 200万台 目標 2002 年: トヨタ、ホンダ FCVの限定販売開始 2002-2010年 FCVの実証試験 1959年:Bacon(英国) AFC発電装置の試作:5kW PEFC Polymer Electrolyte Fuel Cell 2040年 2015年:FCV普及元年 2000年: ミレーニアム計画スタート 1981年:ムーンライト計画スタート 2020年 1961年: 米国 宇宙船用超寿命PEFC開発着手 1978. 11月 米国:P URP A( Public Utility Regulatory 1965年 Policies Act) → 第1次風力発電ブームを招来 1991年:Pal Alto,研 UC Oakland Nafion使用のMEA構成の発明 ジェミニ5号にPEFC搭載(GE社) 1994年:ダイムラ-社/バラード社 PEFC-FCV共同開発 80年代 15,000台の風力発電機 1969年 1,500MW カリフォルニア アポロ11号にAFC搭載(UTC社) 50kW → 200kW級 風車へ 1996年:ダイムラ-社 FCV 「Necar1」発表 1967年:Target計画 1996年: 米国 FCV実用化カリフォルニア州 パートナーシップ結成 PAFC開発開始 1972年:米国Target計画 MCFC Molten Carbonate Fuel Cell 2007年: ダイムラ-社/フォード社/バラード社 新会社設立 1987年:バラード社(カナダ) 高性能PEFC開発 東京瓦斯、大阪瓦斯が参加 PAFC Phosphoric Acid Fuel Cell 1980年半ば: GE社のPEFC技術を UTC社に移譲 NEDO: (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEF: (財)新エネルギー財団 FCV: 燃料電池自動車 エネファーム:家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの愛称 独国 SFC社 可搬式DMFCを実用化し 累計販売台数2万台超 各種情報を基にJATIS作成 上述の液体電解質の問題を回避するため、固体電解質を用いた固体酸化物形燃料電池 (SOFC: Solid Oxide Fuel Cell)、固体高分子形燃料電池(PEFC)及び直接メタノール形燃 料電池(DMFC: Direct Methanol Fuel Cell)の開発へと向かった。たとえば、現在注目さ れている固体電解質は PEFC・DMFC 用としてデュポン社が発明したフッ素系のパーフルオ ロアルキルスルホン酸系ポリマー(Nafion:デュポン社の登録商標)、炭化水素系、フッ素・ 炭化水素系、無機系等が使用されている。SOFC 用電解質には安定化ジルコニア系、セリア 系、ランタンガレート系等が使用されている。2005~2008 年 NEDO/NEF の「家庭用 PEFC の大規模設置事業」、2007~2010 年の「家庭用 SOFC の実証試験」を経て、2009 年「エネ ファーム」補助事業が開始され、一般家庭用 PEFC の販売が開始された。2011 年からは家 庭用 SOFC の販売も開始された。燃料電池自動車(FCV)は 2002~2010 年まで実証試験と 水素インフラ整備が行われ、2015 年が FCV 普及元年と位置づけられている。 (2)技術俯瞰図 図 1-2 に技術俯瞰図を示す。燃料電池は俯瞰図に示すように電解質の種類により、りん酸 形(PAFC)、溶融炭酸塩形(MCFC)、固体高分子形(PEFC)、固体酸化物形(SOFC)、更 に、燃料の種類により直接メタノール形(DMFC)、その他のタイプが追加され、全体では 6 種類に分類される。 各燃料電池はその技術構成内容により、セル構成部材、発電ユニット、システム等の技術 区分に分類される。燃料電池の用途として低温作動・迅速起動が可能な PEFC は住宅用・自 動車用に、燃料処理システムがシンプルである DMFC はモバイル用に、高温作動・高発電 効率の SOFC は事業用複合発電システム等を目指し、実用化と普及が期待されている。 - 2 - 図 1-2 システム 技術 区 分 発 電 ユ ニ ッ ト セル 構成部材 種 類 直接 メタノール形 燃料電池 (DMFC) 住宅用 自動車用 系統連系 産業用 業務用 電力購入 ⑦ 燃料電池システム (補助機器・運転制御技術、製造・構造技術等) 購入補助金 応用 産業 モバイル用 燃料電池の技術俯瞰図 商品への 適合性向上 長寿命 ⑥ モジュール 制御技術 ⑤ スタック 材料技術 ② 電解質・電解質膜 固体高分子形 燃料電池 (PEFC) 耐久性 向上 低価格 信頼性 向上 製造・構造技術 ④ 単セル ①電 極 安全性 りん酸形 燃料電池 (PAFC) 溶融炭酸塩形 燃料電池 (MCFC) 製造コスト 低減 ③ セパレータ 固体酸化物形 燃料電池 (SOFC) その他 燃料電池 材料技術 セル製造・構造技術 制御技術 ( 電極材料、電解質材料、セパレータ材料) ( 接合、構造、部材製造技術等) ( 補助機器制御、運転制御技術等) 燃料電池の実用化に向けた技術 図 1-3 に具体的システムとして一般家庭用に販売が開始されている家庭用 PEFC コジェネ システムを示す。 図 1-3 家庭用 PEFC コジェネシステム セル構成部材は、電解質の両側の燃料極・空気極触媒層、更にその外側に設置されている 燃料極・空気極拡散層、更に外側に設置されているセパレータ、冷却板で構成されている。 スタックは複数のセル構成部材で構成され、更に、モジュールは複数のスタックで構成され - 3 - ている。システムは改質器・変成器・CO 除去器等の燃料系、ブロア・加湿器で構成される 空気処理系、冷却系、給湯系及び発電した直流を交流に変換するインバータ等の電力変換装 置等で構成されている。 第2章 第1節 特許動向調査 調査方法 燃料電池に関する特許出願動向について、全体動向調査(出願及び登録)、技術区分動向 調査、注目研究開発テーマの動向調査、出願人別動向調査及び重要特許の調査を行った。 (1) 特許情報検索 特許情報データベースにはトムソン・ロイター社の Derwent World Patents Index(以下 DWPI と 呼 ぶ ) を 用 い 、 検 索 は Dialog で 行 っ た 。 IPC 分 類 は H01M8/00-8/24 と H01M4/86-4/98 を指定した。対象期間は優先権主張年ベースで 2005~2009 年とした。発行 国(出願先)の指定は行わず、全 DWPI 収録国・機関を対象とした。このうち旧国名等を除 いた下記 39 発行国・機関が本調査の対象である。 【DWPI 収録の 39 発行国・機関】 アルゼンチン、オーストリア、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、スイス、中 国、チェコ、ドイツ、デンマーク、欧州特許庁、スペイン、フィンランド、フランス、英国、 ハンガリー、アイルランド、イスラエル、イタリア、インド、日本、韓国、ルクセンブルグ、 メキシコ、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、フィリピン、ポルトガル、ルーマニ ア、ロシア、スウェーデン、シンガポール、スロバキア、台湾、米国、PCT 国際出願、南ア フリカ 該当件数は 29,102 件、国内外の内訳は、国内パテントファミリーが 19,878 件、外国パテ ントファミリーが 9,224 件である。 検索を実施したのは 2011 年 7 月 4 日で、調査対象期間である出願(優先権主張)2009 年 の末から 18 カ月が経過したばかりである。特許が公開されてから DWPI にデータが収録さ れるまでには、発行国からデータベース会社にデータ提供されるまでのタイムラグと、デー タベース会社の作業期間が必要である。また PCT 出願の各国移行のずれ等で全データを反 映していない可能性がある。従って、本調査報告書における 2008 年、2009 年出願のデータ は、真の数値より若干少ないであろうことに留意する必要がある。 (2)特許調査方法 全体動向調査を行うにあたっては、まず燃料電池に関係のない特許を除外する、いわゆる ノイズ落としを行った。検索結果の 29,102 件中、ノイズは 1,382 件でノイズ率は 4.7%であ った。残った 27,720 パテントファミリーが全体動向調査の対象で、その中に含まれる出願 件数は合計 50,457 件である。出願人に関する調査は、共同出願の分析以外は筆頭出願人の みを対象とした。出願人国籍を「欧州国籍」とする国は、以下に示す EPC 加盟 38 カ国であ る。また出願先として「欧州」とするのは、EPC 加盟国のうち DWPI 収録国である 20 カ国 と欧州特許庁(EPO)である。 【EPC 加盟 38 カ国(2011 年 7 月現在)】 オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、 - 4 - エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、 アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、 マルタ、モナコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマ リノ、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、マケドニア旧ユーゴ スラビア、トルコ、イギリス、アルバニア、セルビア 【欧州とみなす発行国(DWPI に収録されている EPC 加盟国 20 カ国と欧州特許庁)】 オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、 フランス、イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、 ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、スロバキア 第2節 全体動向調査 (1) 2006 年度調査結果の継続表示 図 2-1 に前回実施した 2006 年度の燃料電池に関する特許出願技術動向調査結果(調査対 象期間:1998 年~2004 年)に、今回の 2005 年~2009 年まで 5 年間の調査結果を合わせ、 過去 12 年間の特許出願動向を示す。 前回調査では日米欧への出願を調査対象としていたため、今回のデータも同様にして実線 の折れ線で示している。一方、図中の破線は今回調査の対象である中国と韓国を加えた日米 欧中韓の出願件数推移を示している。日米欧への出願は 2006 年頃にピークをむかえ、2007 年以降は減少傾向にあるように推測される。なお、前回調査の 2003 年と 2004 年、今回調査 の 2008 年以降の出願件数はデータベース収録遅れ等のため、全データを反映していないこ とに留意する必要がある。 図 2-1 出願先国別出願件数比率、出願件数推移 日米欧合計 65,415件 含中韓:74,228件 優先権主張 1998~2009年 日本 37,841件 57.8% 10,760 10,606 9,565 10,000 8,403 8,000 出 願 6,000 件 数 4,000 欧州 12,721件 19.4% 米国 14,853件 22.7% 12,000 7,555 5,889 4,216 6,688 8,342 6,449 6,127 5,121 2,567 4,400 5,394 3,512 1,840 2,000 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願先国 日本 米国 欧州 合計 中韓追加 注: 2003 年、2004 年、及び 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全データを反映していない可能性がある。 (2) 日米欧中韓への出願動向 調査対象期間(優先権主張 2005~2009 年)における、燃料電池に関する特許の日米欧中 韓への出願件数推移及び比率を図 2-2 に示す。 日米欧中韓への出願件数合計は 42,019 件であり、これは DWPI 全収録国への合計出願件 数 50,457 件の 83.3%を占める。出願先では日本が 46.3%と最多で、次いで米国 17.7%、欧 - 5 - 州 15.1%、中国 11.1%、韓国 9.8%と続く。全体の推移を見ると、2005 年から 2006 年に微 増した後、減少の傾向が見受けられる。 図 2-2 出願先国別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) 14,000 合計 42,019件 12,000 韓国 4,130件 中国 9.8% 4,682件 11.1% 欧州 6,340件 15.1% 9,565 10,000 日本 19,445件 46.3% 優先権主張 2005~2009年 10,760 10,606 出 8,000 願 件 数 6,000 6,688 4,400 4,000 2,000 米国 7,422件 17.7% 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願先国 日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 出願人国籍別出願件数推移及び比率を図 2-3 に示す。日本国籍が 58.2%と最多で、出願先 国別の 46.3%よりも更に高い比率を占める。次いで韓国籍、米国籍、欧州国籍がそれぞれ 12.1%、11.7%、11.6%と拮抗し、中国籍は 3.6%と低率である。個別の出願人国籍別推移を 見ると、中国籍がほぼ横ばいであるのを除いて、日米欧韓は概ね全体と同じ減少傾向にある。 図 2-3 出願人国籍別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) その他 1,219件 2.9% 中国籍 1,512件 3.6% 欧州国籍 4,862件 11.6% 米国籍 4,909件 11.7% 合計 42,019件 14,000 12,000 10,606 10,760 9,565 10,000 出 8,000 願 件 6,000 数 韓国籍 5,069件 12.1% 優先権主張 2005~2009年 6,688 4,400 4,000 日本国籍 24,448件 58.2% 2,000 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 日米欧中韓への出願先国別登録件数推移及び比率を図 2-4 に示す。日米欧中韓での登録件 数合計は 5,458 件であり、その推移を見ると出願件数にも増して急激に減少している。出願 してから、審査請求・審査を経て登録に至るには一般に数年の期間を要するから、調査を実 施した 2011 年時点ではまだ審査請求されていない、あるいは審査中のものが多数あるはず であり、今後登録件数は増加するであろうが、前述の通り出願件数が減少傾向にあるので、 - 6 - 登録件数が経年で増加傾向に転じる可能性は低いと思われる。出願先国別の内訳は、比率が 高い順に韓国 31.7%、米国 23.5%、日本 17.1%、中国 14.7%、欧州 13%であり、出願件数比 率とは大きく様相が異なる。 図 2-4 出願先国別登録件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) 2,319 2,500 合計 5,458件 優先権主張 2005~2009年 2,000 韓国 1,729件 31.7% 中国 804件 14.7% 1,627 日本 935件 17.1% 登 1,500 録 件 数 1,000 米国 1,280件 23.5% 欧州 710件 13.0% 986 425 500 101 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願先国 日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 図 2-5 には出願人国籍別の登録件数及び比率を示す。出願件数の比率(図 2-3)と比べる と、12.1%だった韓国籍が 35.6%と大幅に拡大して最大になる一方、日本国籍は 58.2%から 31.3%と大幅に比率を下げている。米国籍は微増、欧州国籍は微減、中国籍は全体に占める 割合としては大きくないものの 3.6%から 8.8%に拡大している。 図 2-5 出願人国籍別登録件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) 2,500 その他 145件 2.7% 韓国籍 1,941件 35.6% 合計 5,458件 日本国籍 1,707件 31.3% 2,319 2,000 優先権主張 2005~2009年 1,627 登 1,500 録 件 数 1,000 986 425 500 米国籍 677件 12.4% 中国籍 483件 8.8% 欧州国籍 505件 9.3% 101 0 2005 2006 2007 2008 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 - 7 - 中国籍 2009 (3) 全体動向まとめ 日本、米国、欧州、中国及び韓国への出願における、出願先国別出願人国籍別の出願件数 収支を図 2-6 に示す。矢印の太さは件数に比例している。日本は他の全ての国との間で収支 が大幅にプラスであることが一見してわかる。対照的に中国は全ての国との間で収支が大幅 にマイナスである。韓国は、日本以外の 3 国に対してプラス収支であり、中でも米国に対す る出願はプラス収支幅も件数の絶対値も大きい。米国から欧州への出願は 1,158 件、欧州か ら米国へは 818 件で、各々他国への出願件数としては最大である。日本への出願件数は少な い。 図 2-6 出願先国別出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願) 米国籍 540件 2.8% 欧州国籍 499件 2.6% 中国籍 韓国籍 528件 11件 2.7% 0.1% その他 180件 0.9% 日本への出願 19,445件 日本国籍 17,687件 91.0% 1,748件 2,782件 米国への出願 7,422件 499件 韓国籍 373件 5.9% 540件 その他 585件 7.9% 528件 725件 中国籍 16件 0.3% 1,506件 11件 中国籍 34件 0.5% 韓国籍 972件 13.1% 欧州への出願 6,340件 その他 210件 3.3% 日本国籍 1,748件 27.6% 日本国籍 2,782件 37.5% 欧州国籍 818件 11.0% 1,158件 欧州国籍 2,835件 44.7% 818件 米国籍 2,231件 30.1% 34件 972件 705件 韓国籍 421件 9.0% 288件 275件 その他 185件 4.0% 日本国籍 725件 17.6% 中国への出願 4,682件 8件 米国籍 705件 15.1% 373件 その他 59件 1.4% 422件 16件 日本国籍 1,506件 32.2% 中国籍 1,443件 30.8% 米国籍 1,158件 18.3% 421件 韓国籍 2,775件 67.2% 米国籍 275件 6.7% 欧州国籍 288件 7.0% 中国籍 8件 0.2% 韓国への出願 4,130件 欧州国籍 422件 9.0% 出願人が重要と考えた特許は、複数の国に出願されていると考えられる。そこで重要性の 高い特許群を抽出する方法として、複数の国(PCT 出願は除く)への出願があるパテントフ ァミリー6,448 件(全 27,101 件の 23.8%)に限定し、その出願動向を分析した。この 6,448 ファミリー中の日米欧中韓への出願計 21,666 件について、出願人国籍別出願件数推移及び 比率を図 2-7 に示す。出願人国籍別比率は大きい順に日本国籍 45.1%、米国籍 17.8%、欧州 国籍 17.7%、韓国籍 14.9%、中国籍 0.5%である。 - 8 - 図 2-7 出願先国複数ファミリーの出願人国籍別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) その他 864件 4.0% 優先権主張 2005~2009年 5,362 5,000 2,765 2,000 日本国籍 9,776件 45.1% 欧州国籍 3,839件 17.7% 6,223 6,213 6,000 出 4,000 願 件 3,000 数 韓国籍 3,226件 14.9% 中国籍 103件 0.5% 7,000 合計 21,666件 1,103 1,000 0 2005 米国籍 3,858件 17.8% 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 第3節 技術区分別動向調査 (1) 日米欧中韓への出願 ①燃料電池の種類別―出願人国籍別件数 日米欧中韓への燃料電池の種類別出願件数比率と推移を図 2-8 に示す。固体高分子形燃料 電池(PEFC)53.2%、固体酸化物形燃料電池(SOFC)12.3%、直接メタノール形燃料電池 (DMFC)11.4%と、この 3 タイプで全体の 78%の出願比率を示す。 図 2-8 レドック ス 139件 0.4% バイオ 449件 1.2% PAFC 108件 0.3% MCFC 293件 0.8% AFC 215件 0.6% 燃料電池種類別出願件数比率と推移 合計 38,613件 その他 835件 2.2% 8,000 6,905 7,000 7,702 7,403 6,000 出 願 5,000 件 4,000 数 3,000 特定せ ず 6,885件 17.8% SOFC 4,767件 12.3% 9,000 PEFC 20,533件 53.2% 4,670 3,224 2,000 1,000 0 2005 DMFC 4,389件 11.4% 種類別 記載率 91.9% 優先権主張 2005~2009年 PEFC MCFC バイオ 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) DMFC PAFC その他 AFC レドックス 合計 SOFC 特定せず 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 燃料電池種類別出願件数の多い、PEFC、DMFC、SOFC の出願人国籍別出願件数比率お よび推移を図 2-9、図 2-10、図 2-11 にそれぞれ示す。いずれのタイプでも日本国籍出願は半 数を超えているが、全体の出願件数は減少傾向にある。但し、SOFC の減少傾向は他の 2 タ イプより緩やかである。 - 9 - 図 2-9 固体高分子形燃料電池(PEFC)の出願人国籍別出願件数比率および推移 6,000 その他 419件 2.0% 韓国籍 中国籍 2,230件 10.9% 712件 3.5% 合計 20,533件 5,290 5,002 優先権主張 2005~2009年 4,759 5,000 4,000 出 願 3,000 件 数 2,000 欧州国籍 1,820件 8.9% 3,350 2,132 1,000 米国籍 2,204件 10.7% 日本国籍 13,148件 64.0% 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-10 直接メタノール形燃料電池(DMFC)の出願人国籍別出願件数比率および推移 1,400 その他 186件 4.2% 合計 4,389件 1,303 優先権主張 2005~2009年 919 1,000 出 願 件 数 韓国籍 756件 17.2% 中国籍 166件 3.8% 1,316 1,200 800 493 600 358 400 200 欧州国籍 285件 6.5% 日本国籍 2,794件 63.7% 米国籍 202件 4.6% 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-11 固体酸化物形燃料電池(SOFC)の出願人国籍別出願件数比率および推移 韓国籍 304件 中国籍 6.4% その他 98件 2.1% 1,400 合計 4,767件 1,200 出 願 件 数 米国籍 867件 18.2% 優先権主張 2005~2009年 1,149 1,057 1,000 161件 3.4% 欧州国籍 877件 18.4% 1,063 786 800 712 600 400 200 日本国籍 2,460件 51.6% 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 ②燃料電池の用途別―出願人国籍別件数 図 2-12 に燃料電池用途別出願件数比率と推移を示す。用途に関する記載率は全体の 43.6% - 10 - である。自動車等の移動体に関する出願が 51.3%、住宅用やモバイル機器等の個別用途に関 する出願が 28.7%とこの 2 用途で 80%を占める。 図 2-12 6,000 合計 18,306 記載率 43.6% 用途別出願件数比率と推移 4,978 優先権主張 2005~2009年 4,607 5,000 4,132 その他 2,556件 14.0% 個別 5,246件 28.7% 4,000 出 願 3,000 件 数 2,000 移動体 9,388件 51.3% 2,759 1,830 1,000 0 2005 業務用 1,116件 6.1% 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 用途別 移動体 業務用 個別 その他 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-13 に乗用・貨物自動車に関する出願人国籍別出願件数比率と推移を示す。日本国籍出 願人が第一位で 68.1%、次いで米国籍が 12.5%、欧州国籍が 10.5%、韓国籍が 7.5%と続く。 出願の牽引役である日本国籍出願人の出願が減少しているため、全体の出願動向は直近の 2009 年を除いても減少傾向にある。 図 2-13 乗用・貨物自動車に関する出願人国籍別出願件数比率と推移 2,500 2,270 合計 8,822件 韓国籍 その他 中国籍 661件 68件 欧州国籍 63件 7.5% 0.8% 923件 0.7% 10.5% 米国籍 1,101件 12.5% 優先権主張 2005~2009年 2,228 1,987 2,000 1,463 出 1,500 願 件 数 1,000 874 500 日本国籍 6,006件 68.1% 0 2005 出願人国籍 日本国籍 韓国籍 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 米国籍 その他 欧州国籍 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 モバイル用(携帯機器用)と家庭用・住宅用(定置型)について出願人国籍別比率と出願 推移をそれぞれ図 2-14、図 2-15 に示す。いずれも日本国籍出願人からの出願が多い。 - 11 - 図 2-14 モバイル用(携帯機器用)に関する出願人国籍別出願件数比率と推移 1,400 合計 3,941件 1,036 その他 168件 4.3% 中国籍 韓国籍 28件 489件 0.7% 12.4% 1,200 優先権主張 2005~2009年 1,313 1,000 出 願 件 数 欧州国籍 223件 5.7% 822 800 512 600 400 258 200 米国籍 273件 6.9% 0 日本国籍 2,760件 70.0% 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-15 家庭用・住宅用(定置型)に関する出願人国籍別出願人件数比率と推移 350 合計 1,167件 欧州 韓国籍 中国籍 国籍 131件 3件 35件 11.2% 0.3% 3.0% その他 14件 1.2% 米国籍 25件 2.1% 312 300 250 優先権主張 2005~2009年 255 244 185 出 200 願 件 150 数 171 100 50 日本国籍 959件 82.2% 0 2005 出願人国籍 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 ③要素技術区分別出願件数 技術区分として大きく部材とシステムに分け、部材を電極触媒層、電解質膜、MEA・GDL、 セパレータ、単セル、スタック、モジュールの 7 種類に細分化した。なお、複数選択を許容 しているため合計数が 60,495 件になる。技術区分別出願件数比率と推移を図 2-16 に示す。 システムに関する出願が 15,490 件で 25.6%を占める。また、部材構成要素である電極触媒 層からモジュールまでの出願件数は 40,071 件で 66.2%を占める。 - 12 - 図 2-16 要素技術区分別出願件数比率と推移 合計 60,495件 その他 4,934件 8.2% 14,901 優先権主張 2005~2009年 14,000 電解質 膜 6,407件 10.6% MEA,GDL 5,668件 9.4% モジュー ル スタック 2,113件 5,885件 3.5% 9.7% 16,017 14,913 16,000 電極触 媒層 8,913件 14.7% システム 15,490件 25.6% 18,000 12,000 出 願 10,000 件 8,000 数 6,000 8,768 5,896 4,000 2,000 0 2005 セパレー 単セル タ 5,208件 8.6% 5,877件 9.7% 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 主要技術区分別 電極触媒層 電解質膜 MEA,GDL セパレータ 単セル スタック モジュール システム その他 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 ④材料区分別出願件数 燃料電池を構成する材料区分別の出願件数比率と推移を図 2-17 に示す。合計 28,523 件の うち、電極触媒に関する出願が 13,748 件で 48.2%、電解質は 8,120 件で 28.5%、セパレー タ・インターコネクタが 3,071 件で 10.8%、MEA が 2,962 件で 10.4%、その他が 622 件で 2.2%である。キーデバイスである電極触媒と電解質に関する出願が多い。 図 2-17 セパレー タ・イン ターコネク タ 3,071件 10.8% 材料区分別出願件数比率と推移 8,000 その他 622件 2.2% 合計 28,523件 7,000 6,702 6,985 優先権主張 2005~2009年 7,138 6,000 4,630 出 5,000 願 4,000 件 数 3,000 MEA 2,962件 10.4% 3,068 2,000 電極触媒 13,748件 48.2% 電解質 8,120件 28.5% 1,000 0 2005 2006 材料区分別 電極触媒 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 電解質 MEA セパレータ・インターコネクタ その他 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-18 に電極触媒材料別出願件数比率と推移を示す。電極触媒に関する出願 13,748 件の 内、PEFC・DMFC 等関連として白金や非貴金属等の金属系触媒が 5,741 件で 41.8%、触媒 担体・支持体が 5,213 件で 37.9%、SOFC 関連ではアノード(燃料極)が 1,069 件で 7.8%、 カソード(空気極)が 882 件で 6.4%と続く。 - 13 - 図 2-18 電極触媒材料別出願件数比率と推移 4,000 合計 13,748件 その他 519件 3.8% 優先権主張 2005~2009年 2,229 出 2,500 願 2,000 件 数 1,500 非金属系 324件 2.4% 1,493 1,000 500 0 2005 アノード (SOFC) 1,069件 7.8% カソード (SOFC) 882件 6.4% 3,405 3,294 3,000 金属系 5,741件 41.8% 担体、支 持体 5,213件 37.9% 3,327 3,500 2006 金属系 担体、支持体 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 電極触媒内容 非金属系 その他 アノード(SOFC) 合計 カソード(SOFC) 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-19 に電解質の燃料電池種類別出願件数比率と推移を示す。電解質に関する出願 8,120 件の内、PEFC・DMFC に関する出願が 5,952 件で 73.3%、SOFC に関する出願が 1,539 件 で 19%等である。 図 2-19 電解質の燃料電池種類別出願件数比率と推移 2,500 MCFC 135件 AFC 1.7% 100件 1.2% SOFC 1,539件 19.0% 合計 8,120件 1,977 2,030 1,989 2,000 その他 394件 4.9% 1,318 出 1,500 願 件 数 1,000 PEFC,DMF C 5,952件 73.3% 優先権主張 2005~2009年 806 500 0 2005 2006 対象燃料電池種類 PEFC,DMFC 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) SOFC AFC MCFC その他 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 (2) 課題別出願件数推移 燃料電池の課題に関する部材とシステムの解析軸を整理し関係図の概要を図 2-20 に示す。 部材は構成別に、発電構成エレメント(電極触媒、MEA、電解質、GDL、セパレータ)、発 電構成デバイス(単セル、モジュール)、周辺機器(改質器等)に分かれる。システムは構成 別に、供給排出系(燃料供給、改質器健全性、不純物除去)、運転系(起動性能の向上、操作 性・可用性・制御性の向上)、実用性能向上(出力特性の向上、システム効率の向上)、安全・ 信頼・耐久性・コスト(信頼性・耐久性の向上、安全性の向上、コスト低減)に分かれる。 また、解決手段について同様に部材とシステム項目の関係図の概要を図 2-21 に示す。部 材に関する解決手段は、製造(発電構成エレメント、発電構成デバイス、周辺機)、材料・組 - 14 - 成(触媒、電解質、複合体、モジュール・スタック、周辺機器)、機械的構造(触媒、電解質、 複合部品、発電構成デバイス、発電構成構造体)から構成される。 システムに関する解決手段は供給系(原燃料供給系、燃料供給系、酸化剤の供給系、加熱 冷却媒体の燃料電池への供給)、排ガス処理系(燃料排ガス系、酸化剤排ガス系、燃焼排ガス 系)、出力処理系(燃料電池電力処理系、配置方法・治具等)、制御系(制御対象機器、ガス および熱媒の導入・排出状態制御、アウトプット制御)で構成される。 図 2-20 燃料電池の課題に関する部材とシステム項目の関係図(概要) 供給 排出系 発電構成 エレメント 運転系 課 題 シ ス テ ム システム 構成別 部 部材 構成別 材 発電構成 デバイス 実用性能 向上 安全・ 信頼・ 耐久性・ コスト 図 2-21 周辺機器 燃料電池の解決手段に関する部材とシステム項目の関係図(概要) 酸化剤 供給系 燃料 供給系 発電構成 エレメント 燃料 排ガス系 原燃料 供給系 周辺 機器 酸化剤 排ガス系 電気的 性質 供給系 製造 触媒 周辺 機器 排ガス 処理系 システム 構成別 シ ス テ ム 解決手段 燃焼 排ガス系 発電構成 デバイス 加熱冷却媒 体の燃料電 池への供給 電解質 部 材 材料・ 組成 部材 構成別 燃料電池 電力出力系 複合体 モジュール スタック 出力処理 系 機械的構造 安全・環境 制御系 配置方法、 治具等 触媒 燃料電池 排熱利用系 電解質 アウトプット 制御 制御対象 機器 複合部品 ガスおよび 熱媒の 導入・排出 状態制御 発電構成 構造体 発電構成 デバイス ①PEFC に関する課題と解決手段 PEFC の課題について部材とシステムに分類した。全体出願件数は 31,092 件、部材に関 - 15 - する課題が 16,326 件で 52.5%、システムに関する課題が 14,766 件で 47.5%である。 日米欧中韓への出願における課題と解決手段別に見た出願件数を図 2-22 に示す。横軸に課 題を縦軸に解決手段を示す。なお、課題は中項目を、解決手段は小項目を示している。部材 の課題については部材に関する解決手段で解決している。一方、システムに関する課題のう ち、安全・信頼性・耐久性・コストは解決手段として、部材からシステムまで広範な解決手 段をとっているが、それ以外のシステム課題についてはシステムに関する解決手段で対応し ている。 図 2-22 PEFC 課題―解決手段別出願件数(日米欧中韓への出願) 電気的性質 部材 に 関 する 課 題 群 発電構成E その他 186 86 その他 295 3,558 671 260 3 67 14 11 52 126 16 34 88 72 94 75 50 71 1 4 4 10 31 4 34 59 139 440 4 2,462 125 2 12 82 81 339 6 628 11 394 8 145 155 1,129 100 22 275 6 11 12 2 256 149 126 11 40 6 95 89 2 52 13 21 12 3 82 12 19 37 63 253 10 51 31 123 1 92 1 7 20 320 13 20 90 147 519 20 1,685 592 12 18 105 145 536 6 57 64 347 874 23 166 67 165 1,816 704 79 安 発電構成D 全 他 その他 98 21 15 16 9 9 5 9 原燃料 68 90 供 燃料 給 酸化剤 系 加熱冷却媒 107 107 522 1,076 168 410 181 230 189 399 94 149 95 220 その他 11 8 燃料 55 61 6 31 175 339 297 65 16 4 8 5 280 4 42 4 698 351 560 57 719 338 866 41 814 364 372 269 16 50 512 318 897 316 560 53 34 93 燃焼 10 20 31 24 58 67 77 その他 1 7 7 13 44 19 64 31 53 76 1 6 11 対象機器 制 導入排出状態制御 御 系 アウトプット その他 242 217 8 15 67 32 157 183 28 90 247 355 517 53 482 154 281 66 804 44 5 3 290 278 19 614 1,048 275 132 171 48 78 14 84 497 256 142 104 50 91 479 119 133 発電構成エレメント 周辺機器 発電構成デバイス 注 350 供給排出系 運転系 439 35 22 21 69 345 13 19 12 348 33 2 37 890 部 材 に 関 す る 解 決 手 段 77 65 酸化剤 出 力 排熱利用 処 配置、治具等 理 系 その他 24 1,713 635 87 電力出力 15 3 14 その他 排 ガ ス 処 理 535 256 149 2,671 機 電解質 械 的 複合部品 構 発電構成D 造 発電構成S 3 2,436 31 触媒 85 3 11 136 12 触媒 電解質 材 料 複合体 ・ 組 モジュール他 成 周辺機器 29 41 19 2 発電構成E その他 14 3 製 発電構成D 造 周辺機器 シス テ ム に関 す る課 題 群 87 シ ス テ ム に 関 す る 解 決 手 段 20 59 418 1,001 338 665 17 46 21 103 実用性能向上 その他 安全・信頼・耐久性・コスト E:エレメントの略;D:デバイスの略; S:構造体の略 - 16 - ②DMFC に関する課題と解決手段 DMFC の課題について部材とシステムに分類した。全出願件数は 6,756 件、部材に関する 課題が 3,029 件で 44.8%、システムに関する課題が 3,727 件で 55.2%である。図 2-23 に日 米欧中韓への出願における DMFC に関する課題と解決手段別の出願件数を示す。 部材の課題については部材に関する解決手段で解決している。一方、システムに関する課 題については、安全・信頼・耐久性・コストは解決手段として、部材からシステムまで広範 な解決手段をとっているが、それ以外のシステム課題についてはシステムに関する解決手段 で対応している。 図 2-23 DMFC 課題―解決手段別出願件数(日米欧中韓への出願) 電気的性質 部材 に 関 する 課 題 群 発電構成E その他 32 8 485 47 205 31 造 周辺機器 その他 3 触媒 電解質 材 料 複合体 ・ 組 モジュール他 成 周辺機器 その他 519 1 15 6 4 4 13 27 2 56 2 1 1 4 2 8 2 16 4 37 6 101 227 2 7 35 7 10 3 39 96 2 2 3 1 2 14 3 7 21 35 4 91 15 4 12 28 4 210 30 4 3 1 15 47 1 133 18 1 9 16 56 1 116 307 49 94 407 86 21 7 14 21 21 80 2 23 5 38 30 75 57 49 83 46 39 6 1 2 66 3 20 4 15 その他 3 4 2 6 燃料 12 29 11 36 226 45 69 11 404 334 20 173 122 243 2 88 3 155 27 27 15 8 77 69 109 5 16 7 26 26 31 2 10 5 11 6 7 21 5 4 7 1 3 7 26 3 9 5 14 59 23 1 10 1 50 26 19 7 13 1 19 23 15 5 5 144 19 59 発電構成エレメント 周辺機器 発電構成デバイス 供給排出系 注 50 252 81 174 127 1 5 9 43 182 2 10 103 78 82 7 91 39 137 4 運転系 シ ス テ ム に 関 す る 解 決 手 段 5 5 46 4 1 6 89 231 114 2 1 58 45 5 3 5 6 113 31 2 27 1 10 燃焼 9 6 98 酸化剤 その他 3 184 40 71 153 143 22 104 106 部 材 に 関 す る 解 決 手 段 2 67 98 3 3 91 144 26 1 5 6 25 その他 3 4 供 燃料 給 酸化剤 系 加熱冷却媒 対象機器 3 19 26 58 制 導入排出状態制御 御 系 アウトプット 6 5 1 84 36 電力出力 出 力 排熱利用 処 配置、治具等 理 系 その他 2 132 26 14 31 13 原燃料 排 ガ ス 処 理 系 12 2 4 51 666 機 電解質 械 複合部品 的 構 発電構成D 造 発電構成S 安 発電構成D 全 他 その他 35 272 触媒 その他 2 4 発電構成E 製 発電構成D シス テ ム に関 す る課 題群 実用性能向上 その他 安全・信頼・耐久性・コスト E:エレメントの略;D:デバイスの略; S:構造体の略 - 17 - ③SOFC に関する課題と解決手段 課題と解決手段の関係は PEFC・DMFC と同様である。SOFC の課題について部材とシス テムの全体出願件数は 7,105 件、部材に関する課題が 4,148 件で 58.4%、システムに関する 課題が 2,957 件で 41.6%である。図 2-24 に日米欧中韓への出願における SOFC に関する課 題と解決手段別の出願件数を示す。 SOFC も前 2 者同様、部材の課題については部材に関する解決手段で解決している。一方、 システムに関する課題については、安全・信頼・耐久性・コストは解決手段として、部材か らシステムまで広範な解決手段をとっているが、それ以外のシステム課題についてはシステ ムに関する解決手段で対応している。 図 2-24 SOFC 課題―解決手段別出願件数(日米欧中韓への出願) 電気的性質 部材 に 関 する 課 題 群 発電構成E その他 65 発電構成E その他 663 その他 109 116 13 288 1 19 2 36 30 17 5 23 55 92 5 4 29 36 59 14 9 10 2 5 3 2 1 474 88 22 6 21 68 414 72 6 11 15 38 14 19 23 45 9 13 触媒 電解質 材 料 複合体 ・ 組 モジュール他 成 周辺機器 13 650 232 11 114 28 95 3 18 20 23 35 25 18 13 4 1 32 33 7 2 1 5 5 2 2 4 30 46 機 電解質 械 的 複合部品 構 発電構成D 造 発電構成S 112 25 4 7 3 19 16 4 358 164 10 9 22 59 56 7 377 187 6 4 21 41 64 30 27 35 40 186 21 7 936 36 1 1 1 114 23 1 1 1 7 42 供 燃料 給 酸化剤 系 加熱冷却媒 17 28 56 53 84 33 66 40 50 87 12 28 21 38 7 6 2 10 2 その他 12 61 208 207 120 71 4 33 50 2 9 19 17 24 1 5 4 1 対象機器 制 導入排出状態制御 御 系 アウトプット その他 72 83 64 2 131 56 6 23 3 6 1 63 25 146 28 5 94 18 16 8 1 239 90 9 7 11 燃焼 33 24 90 52 7 4 11 20 16 53 65 22 8 1 6 12 17 34 45 16 4 32 56 66 48 152 1 156 95 151 3 1 9 18 223 150 88 5 18 32 45 57 147 128 94 5 10 16 31 53 87 80 36 6 17 8 17 22 52 30 79 15 発電構成エレメント 周辺機器 発電構成デバイス 供給排出系 注 運転系 シ ス テ ム に 関 す る 解 決 手 段 2 11 134 部 材 に 関 す る 解 決 手 段 1 198 129 酸化剤 その他 35 2 43 130 184 171 49 1 原燃料 電力出力 出 力 排熱利用 処 配置、治具等 理 系 その他 7 4 136 12 燃料 9 8 7 66 30 排 ガ ス 処 理 6 3 157 安 発電構成D 全 他 その他 14 1 触媒 その他 1 1 製 発電構成D 造 周辺機器 127 シス テ ム に関 す る課 題 群 実用性能向上 その他 安全・信頼・耐久性・コスト E:エレメントの略;D:デバイスの略; S:構造体の略 - 18 - 第4節 注目研究開発テーマの動向調査 以下に示す 6 つの注目研究テーマを選定し動向調査を行った。 白金使用量低減 PEFC の起動停止操作時の触媒担体耐久性向上技術 高導電率耐食性バイポーラプレート(セパレータ) フラッディング抑制技術 DMFC のクロスオーバ抑制技術、出力向上技術、運転性・信頼性向上技術 SOFC 信頼性・耐久性向上技術 この中から、出願件数の多い(1)白金使用量低減、(2)高導電率耐食性バイポーラプレート(セ パレータ)、(3)フラッディング抑制技術、(4)SOFC 信頼性・耐久性向上技術の分析結果を以下 に述べる。 (1) 白金使用量低減 図 2-25 に白金使用量低減に関する出願の内訳と件数推移を、また図 2-26 に日米欧中韓の 各出願先国への出願人国籍別比率と推移を示す。 図 2-25 に示したように、本調査における白金使用量低減に関する特許出願件数は累計で 1,050 件である。白金、貴金属そのものの使用量を低減するものが 500 件で 47.6%、次いで 非貴金属系合金に関する内容が 161 件で 15.3%、以下無機系の 138 件で 13.1%、カーボン系 の 123 件で 11.7%、コアシェルの 52 件で 5.0%、クラスターの 27 件で 2.6%である。出願人 国籍として日本が 56.3%で第 1 位を占めている。この白金使用量の低減はコスト削減の要で あり、出願件数の減少は解決策が見つかったためか、具体的な解決策が見えなくなったため なのかは不明である。 図 2-25 白金使用量低減に関する出願の内訳と件数推移 300 合計 1,050件 有機系 49件 4.7% カーボン 系 123件 無機系 11.7% 138件 13.1% クラスター 27件 2.6% コアシェル 52件 5.0% 非貴金 属合金 161件 15.3% 白金・貴 金属使用 量減 500件 47.6% 244 259 優先権主張 2005~2009年 259 250 178 200 出 願 150 件 数 100 110 50 0 2005 技術内訳 白金・貴金属使用量減 クラスター カーボン系 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 非貴金属合金 有機系 合計 コアシェル 無機系 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 - 19 - 図 2-26 白金使用量低減に出願人国籍別比率と出願件数推移 300 その他 20件 1.9% 欧州国籍 102件 9.7% 米国籍 126件 12.0% 優先権主張 2005~2009年 259 250 178 200 出 願 150 件 数 100 韓国籍 146件 13.9% 中国籍 65件 6.2% 259 244 合計 1,050件 日本国籍 591件 56.3% 110 50 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 出願人国籍 日本国籍 韓国籍 米国籍 その他 欧州国籍 合計 中国籍 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 (2) 高導電率耐食性バイポーラプレート(セパレータ) 高導電率耐食性セパレータに関する特許の内訳と出願件数推移について前回調査結果を含 めて図 2-27 に示す。なお、円グラフは今回調査結果の材料別比率を示す。前回調査では、炭 素系に関する出願が多く主流材料になるかと思われていたが、今回の調査結果では金属製材 料に関する出願件数が多く、全体の 56.1%と過半数を占めている。 炭素系材料は加工性が難しいことと高コストであることから、加工性が良くかつ低コスト の金属系の開発に指向したものと推察される。 図 2-27 高導電率耐食性バイポーラプレートに関する特許の内訳と出願件数推移 500 今回調査対象年分 合計 1,687件 優先権主張 1998~2009年 450 449 405 表面処理 146 8.7% その他 180 10.7% 350 出 300 願 250 件 数 200 炭素系 414 24.5% 150 371 367 400 302 187 199 1999 2000 302 306 281 181 138 100 50 金属系 947 56.1% 0 1998 2001 炭素系 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) バイポーラプレート技術 金属系 表面処理 その他 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 (3) フラッディング抑制技術 システムに関する課題である中分類「安全・信頼・耐久性・コスト」の中の小分類「信頼 性・耐久性の向上」の選択肢である「生成水除去、フラッディング防止」に対し、どの技術 により対応しているのか以下の内容について出願件数を調査した結果を図 2-28 に示す。 合計で 2,907 件あり、対応している技術ではシステムによるものが 609 件で 20.9%を占め 一番多い。次いで、セパレータ(バイポーラプレート)の 454 件、MEA/GDL の 442 件、触 媒層技術の 427 件、スタックの 419 件、以下単セル、電解質、モジュールと続いている。出 願件数は 2006 年がピークである。 - 20 - 図 2-28 フラッディング抑制技術に関する対応技術内訳と出願件数推移 400 合計 2,907件 776 350 モジュール 60件 2.1% システム 609件 20.9% スタック 419件 14.4% 単セル 316件 10.9% 触媒層技 術 427件 14.7% 電解質 180件 6.2% 優先権主張 2005~2009年 702 768 300 出 願 250 件 数 200 MEA/GDL 442件 15.2% 700 600 500 350 311 400 150 300 100 200 50 100 0 0 2005 セパレータ 454件 15.6% 800 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 対象技術 触媒層技術 スタック 電解質 モジュール MEA/GDL システム セパレータ 合計 単セル 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 (4) SOFC の信頼性・耐久性向上技術 課題として信頼性・耐久性の向上に関係する電極触媒、電解質、支持体、インターコネク ター、単セル、モジュール・スタックについてその内訳比率と出願件数推移を図 2-29 に示す。 図示したように、発電構成エレメントよりデバイスの出願件数が多い傾向にある。モジュー ル・スタックに関する出願が 448 件、インターコネクターが 275 件、以下単セル 255 件、支 持体 209 件、電極触媒 190 件、電解質 138 件と続いている。 図 2-29 SOFC の信頼性・耐久性向上技術に関する内訳比率と出願件数推移 450 合計 1,515件 電極触媒 190件 12.5% 単セル 255件 16.8% 支持体 209件 13.8% インターコ ネクター 275件 18.2% 優先権主張 2005~2009年 361 350 電解質 138件 9.1% モジュー ル・スタッ ク 448件 29.6% 400 308 409 300 247 出 願 250 件 200 数 150 190 100 50 0 2005 技術内訳 電極触媒 インターコネクター 合計 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 電解質 単セル 支持体 モジュール・スタック 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 - 21 - (5) 注目研究開発テーマにおける出願人属性別出願動向 上記に示した注目研究開発テーマ 6 件のうち、出願件数の多い白金量低減、高導電率耐食 性バイポーラプレート、フラッディング抑制技術、SOFC の信頼性・耐久性向上の 4 件につ いて出願人属性別にその出願動向を解析した。企業の出願人属性として、企業の属する産業 分野を選択し分類した。それらは自動車産業、電機・電子産業、化学・素材産業、電力・石 油・ガス産業の 5 分野と、大学、公的研究機間の 2 分野、合計 7 分野である。なお、ここで の抽出条件を、上記 4 テーマの「いずれかのテーマに5件以上」出願している企業、大学、 研究機関等とした。該当するのは 167 出願人である。 結果を図 2-30 に出願人属性別にバブル図で示す。 ①白金量低減 化学・素材産業からの出願が多く 199 件で 1 位である。次いで自動車産業から 173 件、 電機・電子産業から 163 件と続いている。この 3 業界が白金量低減技術に関する主要産 業分野である。 ②高導電率耐食性バイポーラプレート(セパレータ) 自動車産業からの出願が多く 677 件と 1 位、次いで化学・素材産業から 399 件、以下 電機・電子産業から 120 件、研究機関、機械・その他産業と続いている。自動車用燃料電 池は多数の単セルを積層するため、バイポーラ技術に関する出願件数が多い。ユーザであ る自動車産業とメーカである化学・素材産業が他産業に比較して突出した出願件数となっ ている。 ③フラッディング抑制技術 このテーマも自動車産業からの出願が多く 718 件と 1 位、次いで電機・電子産業から の 291 件、以下機械・その他産業から 134 件、化学・素材産業、研究機関と続いている。 自動車産業にとって、本テーマは重要な技術課題となっている。 ④SOFC の信頼性・耐久性向上 化学・素材産業からの出願が多く 395 件で 1 位である。次いで研究機間から 145 件、 電機・電子産業から 122 件、自動車産業から 102 件、以下機械・その他産業、電力・石 油・ガス産業、大学と続いている。このテーマで初めて研究機関が上位に出ている。 全出願人属性に渡って出願件数が多いのが特徴的である。 - 22 - 図 2-30 注目研究開発テーマにおける出願人属性別バブル図 8 出 願 人 属 性 自動車 7 173 677 718 102 電機・電子 6 163 120 291 122 化学・素材 5 199 399 81 395 74 134 88 9 機械・その他4 4 電力・石油・ガス 3 大学 2 研究機関 1 6 88 8 15 39 35 82 37 2 3 145 0 0 1 白金量低減 高導電率耐食性 フラッディング バイポーラプレート 抑制技術 4 SOFC 信頼性・耐久性 5 注 目 研 究 開 発 テ ー マ (6) 部材の課題テーマの特許出願状況 各種部材に関する課題は、性能・発電効率の向上、信頼性・耐久性の向上、コストダウン の 3 つに分類した。以下に燃料電池の種類別に信頼性・耐久性の向上を中心に解析結果を示 す。 図 2-31 に PEFC について各技術区分比率と出願件数推移を示す。信頼性・耐久性の向上 には、電解質、セパレータ、MEA、モジュール、電極触媒、単セルとそれぞれが寄与してい る。性能・発電効率向上と同様に全ての区分において出願件数が減少している。 図 2-31 PEFC の信頼性・耐久性に関する技術区分比率と出願件数推移 400 合計 5,706件 1,461 1,423 350 優先権主張 2005~2009年 1,308 300 モジュー ル 847件 14.8% 単セル 649件 11.4% セパレー タ 1,045件 18.3% GDL 212件 3.7% 電極触媒 680件 11.9% MEA 901件 15.8% 電解質 1,372件 24.0% 1,600 1,400 1,200 912 出 250 願 200 件 数 150 1,000 602 800 600 100 400 50 200 0 0 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 信頼性・耐久性向上の内訳 電極触媒 セパレータ MEA 単セル 電解質 モジュール GDL 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 - 23 - 図 2-32 に DMFC について各技術区分比率と出願件数推移を示す。信頼性・耐久性の向上 には、電解質が約 1/3 を占めており、MEA、電極触媒、モジュール、単セルが寄与している。 PEFC 同様減少傾向にあり、電解質の減少が際だっているが、セパレータ、単セル、モジュ ールについては 2009 年に前年比で増加している。DMFC では製品に近いモジュールや単セ ルという部品に関する出願が増加していることは、他の技術が減少傾向にある中でまとめの 段階に入り実用化の近い兆しの可能性がある。 図 2-32 DMFC の信頼性・耐久性に関する技術区分比率と出願件数推移 100 合計 720件 80 単セル 73件 10.1% セパレー タ 33件 4.6% 250 200 164 出 60 願 50 件 数 40 30 電極触媒 118件 16.4% MEA 123件 17.1% GDL 18件 2.5% 182 70 モジュー ル 108件 15.0% 優先権主張 2005~2009年 220 90 150 79 75 100 20 50 10 0 0 電解質 247件 34.3% 2005 2006 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 信頼性・耐久性向上の内訳 電極触媒 電解質 MEA 単セル セパレータ モジュール GDL 合計 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 図 2-33 に SOFC について各技術区分比率と出願件数推移を示す。信頼性・耐久性の向上 には、モジュールが約 30%を占め、次いでインターコネクター、単セルを含め合計約 65%を 占め寄与度が大きい。単セル、インターコネクター、電極触媒は 2009 年の出願が 2008 年比 で増加している。 図 2-33 SOFC の信頼性・耐久性に関する技術区分比率と出願件数推移 140 合計 1,515件 120 モジュール 448件 29.6% 単セル 255件 16.8% 電極触媒 190件 12.5% 100 電解質 138件 9.1% 優先権主張 2005~2009年 409 361 インターコ ネクター 275件 18.2% 400 350 308 300 247 出 80 願 件 60 数 190 250 200 150 40 支持体 209件 13.8% 450 100 20 50 0 0 2005 2006 信頼性・耐久性向上の内訳 電極触媒 インターコネクター 合計 2007 2008 2009 出願年( 優先権主張年) 電解質 単セル 支持体 モジュール 注: 2008 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ 等で全データを反映していない可能性がある。 - 24 - 第3章 第1節 研究開発動向調査 調査方法と対象とした論文 燃料電池に関する研究開発動向の調査については、論文データベース(Scopus)を用いて検 索した。調査対象とした期間は発行年ベースで2005年~2010年とした。 論文の検索条件以 下に示す。 z データベース:Scopus( 世界4,000以上の出版社の16,000誌以上の学術ジャーナルを収載) z 検索日:2011 年 7 月 13 日 z 検索条件式:ABS(“fuel cell” OR “fuel cells”) AND DOCTYPE(ar) AND SUBJAREA(mult OR ceng OR CHEM OR comp OR eart OR ener OR engi OR envi OR mate OR math OR phys) AND PUBYEAR AFT 2004 AND PUBYEAR BEF 2011 上記検索条件のヒット件数は、15,638 件であった。これらの論文掲載誌の内、燃料電池 技術について世界的に認められている雑誌を 16 誌抽出し、分析対象論文数を 6,948 件とし た。その論文誌ごとの内訳を表 3-1 に示す。図 3-1 に前回調査範囲(1990~2006 年)と今 回の調査範囲(2005~2010 年)を合わせて表示した非特許文献件数の推移を示す。1990 ~2004 年の範囲の論文件数は、表 3-1 に示した 16 誌について Scopus にて検索し求めた。 表 3-1 抽出した論文誌と論文件数 Souce Title Journal of Power Sources International Journal of Hydrogen Energy Journal of the Electrochemical Society Electrochemica Acta Electrochemistry Communications Solid State Ionics Journal of Membrane Science Journal of Materials Chemistry Chemistry of Materials Journal of Physical Chemistry B Nihon Kikai Gakkai Ronbunshu B Hen Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers Part B Journal of the American Chemical Society Catalysis Today Physical Chemistry Chemical Physics Applied Catalysis A General Langmuir 合計 (件) 図 3-1 Number of 前回調査 Articles 3,062 ○ 970 ○ 848 ○ 484 ○ 303 293 ○ 264 107 107 103 88 82 64 62 56 55 6 ,9 4 8 抄録を有する論文件数推移 2,000 今回調査範囲 1,800 1,600 前回調査範囲 非特許文献数 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 発行年 - 25 - 前回調査期間の1990~2004年の間も増加傾向を示しているが、2006年に急激に増加し、 2006年以降は年1,000件以上を維持しながら凹凸はあるものの増加傾向にある。 第2節 全体動向 (1) 研究者所属機関国籍別論文件数推移および比率 燃料電池に関する論文の研究者所属機関国籍別の発表件数推移と国籍別比率を、図 3-2 に 示す。発表件数は、やや凹凸はあるものの、2005 年から 2010 年にかけて増加傾向にある。 また、各国籍の発表件数の変化は、図 3-2 の円グラフが示す比率をほぼ維持しながら変化し ている。2005 年~2006 年の大きな伸びについては、日本国籍・米国籍・欧州国籍が若干比 率を落としているが、中国籍・韓国籍・その他が比率を伸ばしている傾向がある。 図 3-2 研究者所属機関別論文件数推移と国籍別比率(全論文誌) 1,600 合計 6,948件 日本国籍 587件 8.4% その他 1,493件 21.5% 韓国籍 516件 7.4% 中国籍 1,038件 14.9% 1,400 1,214 1,111 1,200 論 1,000 文 発 800 表 600 件 数 400 米国籍 1,711件 24.6% 1,303 1,215 1,490 発行年 2005~2010年 615 200 0 欧州国籍 1,603件 23.1% 2005 2006 2007 2008 2009 2010 発行年 所属機関国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 韓国籍 その他 合計 中国籍 (2) 論文発表動向と特許出願動向の関係 燃料電池に関する論文の研究者所属機関国籍別発表件数と特許出願人国籍別出願件数の相 関を図 3-3 に示す。特徴的なことは、日本国籍は特許出願件数が多くかつ論文発表件数が少 ないことである。また、韓国籍、欧州国籍および米国籍の特許出願件数は約 5,000 件と同じ レベルにあるが論文発表件数には大きな開きがある。更に、中国籍およびその他国籍は特許 出願より論文発表が多い傾向がある。 図 3-3 論文発表動向と特許出願動向の国籍別相関 30,000 25,000 日本国籍 特 許 出 願 件 数 20,000 15,000 10,000 欧州国籍 韓国籍 5,000 米国籍 中国籍 0 0 500 1,000 論文発表件数 - 26 - その他 1,500 2,000 論文発表で最も多い PEFC につき、特許文献と論文の技術分野の比較を図 3-4 にレーダー チャートで示す。部材の課題については、特許文献は電極触媒、MEA、電解質、セパレータ モジュール・スタックに出願が多く、非特許文献は MEA に関する発表が突出している特徴 を有している。一方、システムの課題に対しては、特許、非特許文献とも信頼性・耐久性の 向上に関する内容が一番多い特徴を有する。 図 3-4 PEFC の特許文献と論文の技術分野比較 電極触媒 1.00 特許文献 0.80 改質器、他 電極触媒 1.00 部材の課題別の割合 0.80 改質器、他 MEA 0.60 0.60 0.40 0.40 電解質(電解質膜) 0.00 単セル モジュール、スタック 単セル GDL 燃料供給 1.00 コスト低減 0.80 GDL セパレータ システムの課題別の割合 改質器健全 性の維持 コスト低減 0.40 不純物除去 0.20 安全性の向 上 起動性能の 向上 システム効率 の向上 0.80 非特許文献 改質器健全 性の維持 0.40 不純物除去 0.20 0.00 0.00 信頼性・耐久 性の向上 燃料供給 1.00 0.60 0.60 安全性の向 上 電解質(電解質膜) 0.00 セパレータ 特許文献 MEA 0.20 0.20 モジュール、スタック 非特許文献 信頼性・耐久 性の向上 起動性能の 向上 システム効率 の向上 操作性・可用 性・制御性… 操作性・可用 性・制御性… 出力特性の 向上 出力特性の 向上 - 27 - 第4章 政策動向調査 基本・応用技術の研究開発活動の支援に加え、世界各国では、水素・燃料電池技術の市場 への導入を後押しするため、税制上の優遇措置や補助金などの政策が実施されている。水素・ 燃料電池の研究、開発、実証および展開の取り組みのための政府の財政援助の総額は、年間 10 億ドル超(1 ドル 80 円換算で、年間約 800 億円)と推計されている。 第1節 日本の産業政策 日本における燃料電池の研究開発は旧通産省工業技術院のムーンライト計画の下で 1981 年より開始された。1993 年にはニューサンシャイン計画が開始され、重点的に取組まれる技 術開発課題となった。この基本計画によって、PAFC、MCFC、SOFC、PEFC の開発が行わ れてきた。中でも最も実用化に近かったのは PAFC であり、電機メーカや電力会社、ガス会 社などによって開発が進められてきた。MCFC は、PAFC の次世代高効率技術として、1981 年から開発されてきた。1990 年代には、PEFC の開発が始まり、現在では PEFC、SOFC、 DMFC の 3 つの方式が有力と考えられている。 定置型燃料電池の普及を図る施策としては、2005 年度には定置用燃料電池大規模実証事業 が始まり、2009 年度には民生用燃料電池導入支援補助金の制度が導入された。 施策の効果を見るために、2002 年度~2009 年度までの燃料電池導入設置台数の推移をみ ると、図 4-1 のようになる。2005 年度には定置用燃料電池大規模実証事業による効果により 年間 500 台近くになり、2009 年度には民生用燃料電池導入支援補助金の効果があり、一気 に 5,000 台を超えている。このように、導入の初期段階では補助金が有効であることがわか る。 NEDO では燃料電池・水素技術として定置用燃料電池システム、燃料電池自動車他、水素 インフラの 3 本柱で、技術開発、実証研究、基準・標準化を一体化させた研究開発を実施し ている。燃料電池の形式としては特に PEFC、SOFC に注力している。NEDO における燃料 電池・水素技術開発のプロジェクト群を図 4-2 に示す。 図 4-1 施策の効果による燃料電池導入設置台数の推移(補助金によるもの) 6,000 固体酸化物形燃料電池(SOFC) 5,124 5,000 固体高分子形燃料電池(PEFC) ( ) 導 入 設 置 台 数 4,000 民生用燃料電池導入支援補助金 (2009年~) 3,000 台 2,000 定置用燃料電池大規模実証事業 (2005年~2008年) 777 1,000 959 1,156 480 12 31 2 2002 2003 2004 0 2005 2006 2007 2008 2009 年度 (出典:新エネルギー財団資料などを基に JATIS 作成) - 28 - 図 4-2 NEDO における燃料電池・水素技術開発のプロジェクト群 (出典:各種 NEDO 資料を基に JATIS 作成) - 29 - 第2節 海外の産業政策 ①米国 米国では、2005 年 8 月に「2005 年包括エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)」 が成立した。これは、包括的エネルギー政策法としては 13 年ぶりの改定であった。この法 律では、代替エネルギー導入・省エネルギーのために 120 億ドルのインセンティブが盛り込 まれている。とくに水素、バイオ燃料、クリーンディーゼル、先進自動車の開発と普及が強 調されている。 DOE の燃料電池 R&D では、燃料電池のうちでも特に PEFC の開発に注力している。輸 送用アプリケーションに焦点を当てており、2010 年の目標はコスト 45 ドル/kW、2015 年 の目標はコスト 30 ドル/kW、耐久性 5,000 時間である。 米国は 2009 年に、燃料電池の商業化と設置を促進するため、米国再生・再投資法に基づ き 4,200 万ドルを拠出すると発表した。産業界からの参加者によるコスト分担資金の約 5,400 万ドルと合わせ、この新たな資金は最高 1,000 ヵ所の燃料電池システムの設置(主に、 非常用電源と資材運搬)に向けられる。 ②欧州 EU では 2007 年~2013 年の期間で欧州フレームワーク(FP:Framework Programme) の FP7 がスタートし、対応したプログラムが「欧州水素・燃料電池テクノロジー・プラット フォーム(European Hydrogen and Fuel Cell Technology Platform:HFP)」として実施 される。この中で、2020 年を研究開発およびフィールドテスト、早期市場の期間とし、2040 年頃に燃料電池が自動車、分散電源、小型機器利用において支配的な技術になるとしている。 早期市場における燃料電池の用途は、携帯機器、バックアップ電源、特定自動車などである。 2008 年、欧州燃料電池・水素共同技術イニシアティブ(European Fuel Cell and Hydrogen Joint Technology Initiative:FCHJTI)は、欧州での燃料電池と水素エネルギー技術分野の 研究、技術開発および実証(RTD)活動を支援するための官民協力体制として発足した。同 イニシアティブの目標は、カーボンクリーンエネルギーシステムを実現する手段として燃料 電池と水素技術の可能性を実現し、市場導入を大きく加速することである。欧州(European Commission)は同プログラムに、2008 年~2013 年に 4 億 7000 万ユーロを資金提供し、 産業界による 50%の所要コスト負担を含めると約 10 億ユーロになる(1 ユーロ 100 円換算 で 1,000 億円:年間平均約 170 億円)。 ③中国 中国は燃料電池自動車の研究開発を強力に推進している。PEFC 搭載バスや自動車の開発 は現在実証段階である。1998 年以来、中国は燃料電池の技術開発を強力に推進している。 2006 年~2010 年の 5 ケ年計画では PEFC を搭載した燃料電池車の研究開発や主要コンポー ネントの研究開発を「863 プログラム」(1986 年 3 月開始にちなむ命名)として推進してい る。上海などの地方自治体も独自に開発を支援している。 2011 年~2015 年の「新 863 プログラム」では主として、PEFC 燃料電池車と関連技術、 大型 SOFC スタック、PEFC と SOFC のコジェネシステムの開発に注力する予定である。 ④韓国 燃料電池開発のために、代替エネルギーの開発促進条例が 1987 年に実施され、2003 年に は新規かつ再生可能なエネルギーの開発と展開に関する基本 10 年計画が実施された。 韓国では 2010 年、家庭用燃料電池を購入する際、価格の 80%を国が負担する助成金プロ - 30 - グラムが開始された。同プログラムの助成規模は、2013 年~2016 年には購入価格の 50% まで、2017 年~2020 年には 30%へ縮小される予定である。 第5章 市場環境調査 燃料電池市場は、まだ本格的には立ち上がっていない。燃料電池 (Fuel Cell:FC)技術は 完全な商業化には到達していないが、燃料電池業界が目標にしているのは、少量生産での初 期市場への参入である。技術タイプごとに製造、販売された燃料電池ユニットの割合は、近 年かなり安定している。市場全体では、最も柔軟性のある燃料電池技術のひとつである PEFC(固体高分子形燃料電池)が主流となっている。より大きな定置式発電用途としては、溶 融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cells:MCFC)は現在でも主流だが、リン酸形 燃料電池(PAFC) 製品もすでに商品化された。また、研究開発努力の結果、固体酸化物形 燃料電池(SOFC)も家庭用として販売が開始された。 世界の燃料電池の市場見通し(業務・産業用)を図 5-1 に示す。(ここで、2009 年は実績 値、2010 年は見込み、2013 年以降は予測である。) 図 5-1 世界の燃料電池の市場見通し(業務・産業用) 台 百万円 6,000 1,000,000 900,000 5,000 800,000 700,000 4,000 数 量 3,000 台 2,000 600,000 ( ( ) 金 額 百 万 円 500,000 400,000 ) 300,000 200,000 1,000 100,000 0 0 2009年 2010年 2013年 2015年 2018年 2020年 2025年 ( 出典:(株)富士経済「2011 年 燃料電池関連技術・市場の将来展望(上巻)」を基に、JATIS 作成) 自動車用燃料電池の普及に関しては、インフラの整備が課題とされており、2010 年 3 月 に、日本の主要な自動車メーカ、エネルギー関連企業等が参加する燃料電池推進協議会 (FCCJ)によって「2015 年に商用の水素ステーションの設置を開始し、FCV(燃料電池自 動車)の一般ユーザへの普及開始を目指す」という普及シナリオが発表されている。2025 年時点での普及目標は、FCV が 200 万台程度、水素ステーションを 1,000 ヵ所程度となって いる。図 5-2 に自動車用燃料電池普及に向けたシナリオを示す。 - 31 - 図 5-2 自動車用燃料電池普及に向けたシナリオ (出典:2010 年 3 月「FCV と水素ステーションの普及に向けたシナリオ」燃料電池実用化推進協議会 (FCCJ)) 第6章 第1節 総合分析 特許出願動向分析の総括 (1) 全体動向 今回の調査範囲は優先権主張(出願年)が 2005 年~2009 年までの 5 年間とした。 詳細解析の対象とする出願先国として、前回と異なり、中国、韓国を加え、日米欧中韓の 5 国とした。日米欧中韓への出願件数合計は 42,019 件であり、これは DWPI 全収録国への 合計出願件数 50,457 件の 83.3%を占めているが、前回の調査期間(1998 年~2004 年)では 日米欧で 98%を占めていたことから、燃料電池の特許出願は世界各国に拡散している。 日米欧中韓の出願人国籍別件数では、日本国籍が 58.2%と最も多い。但し、個別の出願人 国籍別推移を見ると、中国籍がほぼ横ばいであるのを除いて、日米欧韓は概ね減少傾向にあ る。 (2) 注目研究開発テーマ動向 注目研究開発テーマ 6 件のうち、出願件数の多い白金量低減、高導電率耐食性バイポーラ プレート、フラッディング抑制技術、SOFC の信頼性・耐久性向上の 4 件について出願人属 性別にその出願動向を解析した。企業の出願人属性として、企業の属する産業分野を選択し 分類した。それらは自動車産業、電機・電子産業、化学・素材産業、電力・石油・ガス産業 の 5 分野と、大学、公的研究機間の 2 分野、合計 7 分野である。なお、ここでの抽出条件を、 上記 4 テーマの「いずれかのテーマに 5 件以上」出願している企業、大学、研究機関等とし た。該当するのは 167 出願人である。 図 2-30 より、燃料電池の開発には自動車産業、電機・電子産業、化学・素材産業が大きく 関わっていることがわかる。 - 32 - 第2節 研究開発動向分析の総括 国際的な主要論文誌である 16 誌から 6,948 件の論文を選定し抄録を参照して技術分類を 行った。技術分類の分析軸は特許調査と同様とした。論文件数は増加傾向が見られる。大幅 な増加を示しているのは中国であり、その他の国に属するカナダ、ロシア、台湾等である。 日本の論文件数は少なく、むしろ特許出願に力点を置いていることが分かる。 後発組としての中国は世界レベルの研究を実施する素地づくりに重点をおいているものと 考えられる。注目研究開発テーマ「PEFC の白金使用量低減」については、非特許論文でも 注目論文数が多く、学術的な視点からも注目されている。 また、 「PEFC の水管理」についてはアカデミックな立場から、高度解析手法を用いた水の 挙動分析やシミュレーションが実施されている。また、SOFC では、主に中温度域作動の SOFC 材料論文が多数発表されており、注目研究開発テーマ「SOFC の信頼性・耐久性向上 技術」の基盤部分を担っていると考えられる。一方、 「高導電性耐食バイポーラプレート」の 論文発表は少ない。研究が進んでいるが、低コスト化と信頼性技術の確立等で「何らかのブ レークスルー技術」が必要である。 第3節 政策動向分析の総括 エネルギー資源の乏しい我が国にとって「エネルギーの有効利用」は喫緊の政策課題であ り、各種大型プロジェクトや補助事業で燃料電池の普及の強力に推進してきた。2005 年度か ら定置用燃料電池大規模実証事業が始まり、2009 年度には「民生用燃料電池導入支援補助金 の制度」が導入された。 日本の燃料電池技術ロードマップは、2010 年 6 月に策定された「技術戦略マップ 2010」 にまとめられている。また、これを補完する形で、「NEDO 燃料電池・水素開発ロードマッ プ 2010」が 2010 年 7 月に策定され、燃料電池・水素技術として定置用燃料電池システム、 燃料電池自動車等、水素インフラの 3 本柱で研究開発が行われている。他国の政策について は第 4 章(3)海外の政策を参照されたい。 第4節 市場動向分析の総括 2009 年度の「民生用燃料電池導入支援補助金の制度」 (愛称「エネファーム」)により家庭 用 PEFC コジェネシステムが一般家庭への販売が開始され、2011 年度の第三次補正予算の 補助事業では SOFC の家庭用コジェネシステムも「エネファーム」の補助対象になった。 しかしながら、燃料電池市場は、まだ本格的には立ち上がっていない。市場全体では、使 用環境に柔軟に対応できる PEFC(固体高分子形燃料電池)が主流となっている。より大きな 定置式発電用として、MCFC 製品や PAFC 製品は米国においてすでに商品化されている。家 庭用として研究開発努力の結果、SOFC の国内販売が最近開始された。 第5節 提言 今回の調査では、燃料電池に関する技術について 2005 年から 2009 年までの特許出願動向 とともに、研究開発、政策動向、および市場環境についても分析を行った。その結果から、 今後日本企業と研究機関がとるべき方向性をまとめるため、SWOT 分析により市場を見据え、 強み、弱みなどを分析した。具体的には、開発、事業、市場環境について、強み (S)、弱み (W)、 機会 (O)、脅威 (T)を評価し、提言と SWOT 分析との関連を図 6-1 に色分けで示す。提言 1 - 33 - に関しては赤色、提言2に関しては緑色、提言 3 に関しては青色で示す。 図 6-1 S: 強 み ・分散型電源に関する ニーズの増大 v (3.11震災契機) 日本の燃料電池に関する SWOT 分析 W: 弱 み ・FCV車:水素供給等の インフラ未整備 O: 機 会 ・FCV車:2015年普及化 T: 脅 威 ・ガソリン・電気ハイブリッド車、 プラグインHV車 EVカーの先行普及 市 場 ・コジェネ発電 (エネファーム) ・高コスト :白金触媒依存 ・定置型燃料対策(PEFC) 海外は窒素含有量多い 提言 3 ・大容量二次電池の台頭 FCV向け燃料電池 開発の促進 ・ 産業界の技術共有化 ◎ 地 球 温 暖 化 対 策 ー ク リ 国内:家庭用定置型燃料電池 システムが稼働開始 v 提言 1 ン エ ネ ル ギ 5,000台/年 事 世界:FCV車による 市場牽引期待 ー 業 の 利 用 推 進 現状は技術優位、競争優位 ・日本国籍出願人の割合 PEFC、DMFC:64% 開 SOFC:52% →活発な開発力、 投資(人、物、金) 発 提言 2 ・日本国籍出願人の 出願件数の減少傾向 ・日本発の研究論文数が少 (国際的に著名な論文誌) 日本の研究者数少 ・信頼性・耐久性向上に 関する出願多 定置型燃料電池開発促進 ・中国籍出願人の 特許出願増と論文増 ・ 補助金からの自立を 目指した技術開発促進 ・ 海外市場での競争 優位性確保技術確立 S:Strengths(強み); W:Weaknesses(弱み); O:Opportunities(機会); T:Threats(脅威) 【提言1】燃料電池事業の拡大に向けた コスト低減と信頼性・耐久性を両立させるブレークスルー技術開発の促進 10 年以上にわたる旺盛な開発努力にも拘わらず市場が中々拡大しないのが実情であ る。この理由は、「市場で要求される、低価格で機能・性能を充たす材料が未だに見出さ れていない」ことと、「発電効率が高く耐久性に優れた製品の信頼性確立まで技術が追い 付いていない」ことにある。 2006 年度調査と本調査結果を踏まえ、燃料電池事業の早期拡大に向け、コスト低減と 信頼性・耐久性技術を両立させるブレークスルー技術開発を促進すべきである。 これまで日本は企業の卓越したものづくり力を発揮しコストダウンに努めてきた実績があ る。特に、今回調査における出願の中心である自動車、電機産業は低コスト・高品質・高信 頼性で世界に君臨してきた分野であり、この実績と上記出願内容をベースにして、日本勢は 燃料電池の実用化に向けたコスト低減・耐久性技術を両立させる部材とシステム開発力を有 しているといえる。したがって、燃料電池事業の早期拡大に向け、コスト低減と信頼性・耐 久性技術を両立させるブレークスルー技術開発を促進すべきである。 因みに、PEFC についてはブレークスルーすべき課題として、たとえば白金触媒の高活性 - 34 - 化、加湿器レス化可能な電解質、CO(一酸化炭素)に対する耐被毒性のアノード触媒などが 挙げられ、それらを解決するためのブレークスルー技術開発が期待される。 【提言 2】機会拡大に向けた市場育成のため 補助金制度から自立する定置型燃料電池の技術開発の促進 2009 年度から経済産業省の燃料電池導入補助金制度により、世界初の定置型燃料電 池の一般販売がスタートした。この燃料電池システムは「エネファーム」として知られ ている。 市場でエネファームの販売実績を積み、定置型燃料電池のシステム・運転ノウハウ、 アセンブリ部品、部品単品の品質・信頼性・寿命に関するデータやノウハウを蓄積し、 日本市場のみならず、海外市場での競争優位性を確保できる技術を確立すべきである。 短期的には補助金で定置型燃料電池システムの国内市場での普及、低コスト化技術を確立 し、より大きな市場の期待される海外市場へ飛躍し、早期に補助金から自立すべきと考える。 PEFC においては、特に天然ガス等の原燃料に窒素が多く含まれる場合、改質器内で水素 と反応してアンモニアが生成し、電極触媒の劣化要因となる。日本国内で使用されている都 市ガスは、窒素をほとんど含んでいないのでアンモニア劣化は顕在化していない。しかし、 天然ガスをパイプラインで輸送している海外では(たとえばオランダなど 10%超の窒素を含 む)、定置用 PEFC システムにアンモニア生成抑制と生成アンモニア除去機能を付与する必 要が生じる。このように海外市場特有の技術課題も解決していかなければならない。 【提言 3】機会拡大に向けた市場の早期育成のため、 産業界の持つ技術の共有化による FCV 向け燃料電池開発の促進 安全性・信頼性・耐久性、コスト低減などの共通基盤技術の開発を学界・産業界の 持つ技術情報を持ち寄り、課題、解決指針、および技術検証方法の共有化を行い、かつ 知的財産権の取得を目指したプロジェクト研究の推進が望まれる。 FCV 技術は燃料電池技術のみで成立するわけではなく、車両制御技術等を含む総合システ ムである。今回の特許分析で明らかになったように、解決すべき技術課題は、信頼性・耐久 性の向上とコスト低減の両立であることが明確になった。共通基盤技術に関する技術課題を 産業界のみではなく、大学、公的研究機関の研究者で共有し、既存の開発体制の枠を超えた 体制で開発を進めることが重要であり、FCV 実現のための共同プロジェクトによる開発推進 が期待できる。 - 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