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事例紹介
「企業における食育の取組について」
山崎製パン株式会社安城工場 総務課長
内田
聡
氏
皆さん、こんにちは。平素より山崎パンをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。本日は、
当社の食育の取組について、発表させていただきます。
【山崎製パン株式会社概要】
本社は東京都千代田区岩本町、秋葉原駅が最寄りの駅です。設立は1948(昭和23)年、戦後間もな
く、東京都と千葉県の境にある市川市で、1軒のパン屋さんからスタートしました。売上高(連結)
は9,683億円。販売先は約10万5,000店舗。主な事業内容は、食パン、菓子パンを中心に、和菓子、洋
菓子等を生産、グループ会社では、サンドイッチやお弁当なども生産しています。
山崎グループには、チップスターのヤマザキ・ナビスコ株式会社、キャラメルコーンの株式会社東
ハト、カントリーマアム・ペコちゃんの株式会社不二家、その他、焼きたてパンの店を展開している
株式会社ヴィ・ド・フランス、お弁当・サンドイッチ・おにぎりなどを生産している株式会社サンデ
リカ等があります。
【生産・物流の展開】
生産工場、事業所は全国で26カ所。北は札幌工場から、南は熊本工場まであり、フレッシュな製品
を届ける生産・物流体制を構築しています。
【安城工場概要】
愛知県安城市二本木新町に工場があり、JR東海道新幹線・東海道線、三河安城駅より徒歩12分の
ところにあります。平成2年11月稼働で24年経過。敷地面積は3万8,800㎡、従業員数は1,420人、生
産ラインは食パン、菓子パン、ペストリー、ドーナツ、和菓子、洋菓子とほぼフルラインがそろって
います。
生産アイテムは600~700、年間売り上げは336億円。販売エリアは、三重県の四日市から尾鷲まで、
愛知県は名古屋市より東、静岡県は焼津市より西。販売店数は5,902店舗、保有車両は、パントラッ
ク、営業車などを含め194台です。
【安城工場のエリアマップ】
三重県は、四日市から尾鷲までで、松阪に営業所があります。愛知県は、名古屋市の緑区、港区、
南区、天白区、これより東がエリア。静岡県は、焼津より西で、浜松事業所があります。ここは、営
業所とVEMパンラインといわれる手づくり風の菓子パンをつくるラインが1つあります。
中京のエリアには、名古屋工場、安城工場と、2つの総合工場があり、各工場が独立して、生産・
販売を担当し、新製品開発は本社主導の全国発売製品と、地域の特性を活かした工場独自の開発品が
あります。
【食育とは(食育基本法より)】
「食育基本法」に、①生きる上での基本であって、知恵、徳育、および体育の基礎となるべきもの。
②さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践
することができる人間を育てること、とあります。
【食育基本法(平成17年7月15日施行)】
「食育基本法」の背景です。①「食」を大切にする心の欠如。②栄養バランスの偏った食事や不規
則な食事の増加。③肥満や生活習慣病、糖尿病などの増加。④過度の痩身志向。⑤「食」の安全上の
問題発生。⑥「食」の海外への依存。⑦伝統ある食文化の喪失、とあります。
【食育推進基本計画(平成18年3月31日施行)
】
食育推進基本計画では、食育の推進目標数値が定められています。平成23年3月に国が新たに策定
した「第2次食育推進基本計画」では、3つの重点課題と、7つの基本的取り組み方針、新たな目標
値が定められています。コンセプトとしては、前計画の「周知」から「実践」へと変化しています。
【食育関連事業者による食育推進】
食育関連事業者による食育推進として、以下の項目が挙げられます。①さまざまな体験活動の機会
の提供(工場見学等も食育の視点から)。②より一層健康に配慮した商品やメニューの提供。③食に
関する分かりやすい情報や知識の提供(科学的知見に基づき客観的に)。④地産地消の推進。⑤食品
リサイクルの推進。⑥社員食堂においても、より一層健康に配慮したメニューの提供や栄養、食生活
等に関する情報提供に努める。
【安城工場の事例紹介】
安城工場の「食育基本法」に基づく食育推進活動についての事例紹介です。食品関連事業者による、
食育推進の6項目に沿って発表します。
【①さまざまな体験活動の機会の提供(工場見学等も食育の視点から)】
(ヤマザキマーケットクルーによるミールソリューション)
マーケットクルーは、食育活動の専門スタッフ(全国に約100名)で、お客さまに食と健康につい
てさまざまな情報提供を行うため、サンドイッチ教室やメニューの提案を実施しています。
(店頭でのパンを使った食べ方提案)
近隣のスーパーマーケットの店頭を借りて、バランスのよいパンメニューや、「食事バランスガイ
ド」を使った食に関する情報提供をしています(平成25年度実績で575回実施)。
(親子サンドイッチ教室の実施)
夏休みを中心に、店頭の一部を借りて、親子サンドイッチ教室を開催しています。作ることの楽し
さ、食べることの大切さをイベントを通じて伝えています(年間15~20回実施)
。
また、「食事バランスガイド」もボードを使って、子どもたちに分かりやすく説明しています。
(教育ファーム活動の実施)
地域関係者が協力し、2008年より安城市立梨の里小学校5年生を対象とした教育ファーム活動を実
施しており、総合学習の時間を利用し、一連の活動に参加させてもらったり、実際に育てた米を米粉
パンにするお手伝いをしています。
具体的には、地元の農家の皆さんの協力の下、小学校近隣に位置する田と梨畑にて、梨は、観察、
梨狩り、梨ジャムづくり、米は、田植え、稲刈り、製粉作業、米粉パン作りを実施しています。
(近隣中学校職場体験の受け入れ)
篠目中学校の職場体験の受け入れを実施し、工場見学や実際の製造体験を通して、仕事に対する厳
しさや、食品衛生の重要性を学んでもらっています。
菓子パン課での製造体験や洋菓子課でのライン作業の体験をしてもらいましたが、初めてのライン
作業で、コンベヤーの移動で目を回してしまう生徒たちも何人かいました。
【②より一層健康に配慮した商品やメニューの提供】
(製品包装による情報提供)
製品を通じて、食事バランスガイドと朝食の大切さを発信しています。「黒糖入りテーブルロー
ル」の事例では、「食事バランスガイド」のコマが裏面に付いており、表面には「朝食をきちんと食
べよう」と記載しています。
(健康志向に対応した製品の発売)
日々の健康の助けとなるような製品を開発・発売しています。9月の新製品として、「ブランブレ
ッド」を発売しており、日本人に不足しがちな食物繊維を手軽に取れるよう、小麦ふすま(ブラン)、
小麦全粒粉、ライ麦全粒粉も配合しています。
(HPでのバランスメニューの紹介)
ホームページでは、「YAMAZAKI食育」と題し、食育について特集をしており、当社の製品
を使用した、栄養バランスの取れたレシピや、季節に合ったレシピを紹介しています。
(バランス弁当シリーズの発売)
1週間単位で日替わり弁当を発売しており、「食事バランスガイド」を使った食に関する情報提供
をしています。1週間のメニュー表にも、バランスガイドの表を入れたりして、主にコンビニエンス
のデイリーストア、ヤマザキショップなどで売っています。
【③食に関する分かりやすい情報や知識の提供(科学的知見に基づき客観的に)
】
(HPによる各種情報提供)
科学的知見に基づき、客観的に、ホームページによる各種情報提供しています。ホームページでは、
会社情報、商品情報だけではなく、食の安全・安心への取り組みや食育活動なども掲載しています。
【④地産地消の推進】
(なぜ地産地消をすすめるのか?)
地域特産物の普及、規格外農産物のジャムやクリーム等への利用、生産者と共同で新たな用途の創
造などの点で地産地消の商品を開発しています。
(地産地消製品の開発)
地元食材や特産品を使用した、地産地消製品の開発・発売を全国的に行っています。
(地元の4団体による共同企画 三河の米粉入りパン)
地元の農林水産業と食品産業が一体となった共同企画で、地元三河産の米の加工食品(パン)の利
用拡大により、地産地消の推進と地域の食料供給能力の向上を目指し開発しました。水をつかさどる
明治用水、その水で稲を育てるJAあいち中央、米から米粉を製粉する黒柳製粉、そして、その米粉
を使って、ヤマザキパンで「三河の米粉入りパン」を発売しました。
(
「ナイススティック(ぶどうゼリー&ホイップ)
」)
愛知県産のブドウのジュース入りゼリーを使用しています。現在、発売中の地産地消製品で、ブド
ウ狩りが有名な地元岡崎市のブドウを使用したゼリーを、人気の「ナイススティック」にはさんでい
ます。
(ランチパック松阪牛入りコロッケ)
昨年は数量限定の発売でしたが、今年は数量限定せずに発売している地産地消製品で、日本三大和
牛と称される三重県松阪市の松阪牛を人気のランチパックに使用したぜいたくなものとなっていま
す。
(愛知県立安城農林高等学校との共同開発
いちじくジャムをサンドした「こもっちり」)
地元の安城市の企業、団体の協力を得て、安城農林高校食品科学科の生徒の皆さんが製品開発から
販売までを実施しています。地産地消の観点から、三河産米粉100%を使用したスポンジに、生産量
日本一のイチジクを加工したジャムをサンドしました。商品名やパッケージデザインも生徒たちが考
えて、「こもっちり」という製品を作り、自作ののぼりを持って販売実習もしました。
この一連の取り組みは、日本学校農業クラブ全国大会プロジェクト発表文化・生活部門において、
最優秀賞を受賞しました。
(愛知県立安城高等学校との共同開発
メロンパン(愛知県産いちじくのイチジクジャム&ホイッ
プ))
安城市のいちじくをアピールしたいという生活文化科の生徒が活動する「ハッピーキッチン」の思
いと、地産地消に力を入れる山崎パンの思いが合致し、共同開発がスタートしたものです。1年かけ
て試作を繰り返し、生徒の皆さんの思いが詰まった製品となりました。安城高等学校ハッピーキッチ
ンというサークルのオリジナルキャラクターが付いたメロンパンで、生徒の皆さんによる先行販売の
様子が「中日新聞」に掲載されました。
(近隣5大学と開発!!キャンパスランチパック)
昨年の秋、中京地区の有名大学、中京大学、名城大学、愛知学院大学、南山大学、愛知大学の学生
と産学連携の共同企画で、大学の特長を活かしたランチパックを発売しました。
愛知学院大学のランチパック「チキンのトマトソース煮込み、赤ワイン入り」では、生徒の皆さん
が考案したコンセプトとして、大学のマスコットキャラクターの鳥をチキンで、スクールカラーのエ
ンジ色を赤ワインとトマトソースで表現しています。
(地産地消弁当の販売)
パンや和洋菓子だけではなく、地元食材を利用した弁当を中京地区で発売しています。今後もさま
ざまなニーズに応える製品の開発を進めていきます。例えば、回鍋肉丼(八丁味噌だれ)、味噌カツ
弁当などの弁当には地元食材や地域特産物を使用しています。また、デイリーヤマザキの店頭にて発
売している手づくりのおにぎりは、地元産の米「あいちのかおり」を使用しています。
そのほか、安城市では郷土料理の箱ずしに力を入れていますので、何らかのかたちで、箱ずしの普
及にも協力できたらと考えています。
【⑤食品リサイクルの推進】
(
「食料資源」を大切にしたい)
食品ロス(未利用食料)の発生の抑制ということで、耳までおいしく食べられる食パンの開発や副
産物の有効利用による発生抑制をしています。また、地域農産物と国産食材の有効利用により環境配
慮型製品を開発しています。耳までおいしく食べられる食パンは、ダブルソフトとか、ふんわり食パ
ンなどがあります。
(未利用食品の発生抑制)
食パンの耳は、主に業務用パン粉、飼料等に活用しています。食パンは両サイドを落とす、また、
ランチパックなどは、中をくりぬいて食パンを使うので、工場でとんでもない量の食パンの耳が出て
しまいます。これを製品化しようということで、関係会社のお菓子会社を通して、「ちょいパクラス
ク」というラスクの製品にしたりして、販売しています。このような取組で、食パンの耳については、
100%有効利用しています。
(リサイクルループの構築)
食パンの耳は、飼料製造業者で飼料にしてもらい、ブタがその飼料を食べ、その豚肉を加工したも
のがソーセージやハムになり、それをパンにはさむというリサイクルをしています。
ソーセージパンやソーセージクロワッサンは、リサイクルループを構築した製品で、豚肉は従業員
食堂でも利用しています。
(その他の副産物の有効利用)
「まるごとバナナ」の生産工程で発生したバナナの切れ端を有効利用して、バウムクーヘンなどに
製品化しています。また、ケーキスポンジの切れ端を有効利用して、ヘビーケーキといわれるものに
製品化しています。アップルパイ等の生産工程で発生したパイ生地の切れ端を有効利用したものも製
品化しています。
【⑥社員食堂においてもより一層健康に配慮したメニューの提供や栄養、食生活等に関する情報提供
に努める】
(従業員の「健康」の助けとなるメニューの考案)
安城工場では、朝食、昼食、夕食、夜食を提供しており、約700名が食堂を利用しています。独身
者や単身者の偏りがちな食生活をサポートできるよう、工夫を凝らしたメニューを考案しています。
朝食時には、フレッシュ手づくり野菜ジュースを提供し、毎日黒酢を添えています。また、新鮮な野
菜を中心としたサラダバーで、愛知県産の野菜を中心に毎日提供しています。
(表示や掲示による「食」に対する啓発活動)
従業員が「健康」や「食事の大切さ」に対して意識・興味を持ってもらうよう、カロリー表示等を
実施しています。各机に置かれているメニュー表に、カロリー・タンパク質・塩分・脂質を記載し、
バランスガイドを使用した掲示もしています。
(
「栄養バランスメニュー」の提供)
従業員に日々の食生活を見直し、健康的な食事について考えてもらうきっかけとなるよう、毎月19
日を食育の日とし、昼食時に食堂にて「食バランスガイド」に基づく栄養バランスメニュー定食を提
供しています(例.主食・副菜・主菜のバランスが取れた「豚しゃぶ定食」
)。
(食育メニューが「生産局長賞」を受賞)
平成21年、農林水産省が主催する第2回地産地消給食等メニューコンテストにおいて、安城工場が
応募した「食育の日栄養バランスメニュー三河定食セット」が生産局長賞を受賞しました。安城産の
こしひかりや、味噌かつ、イチジク等、地元の食材にこだわっています。
(エコポークを利用したメニューの提供)
パンの製造工程でできるパンの耳を飼料にして育った豚肉「エコポーク」をメニューに用い、地産
地消だけではなくエコも目指しています。ブタのえさの主原料は大豆やトウモロコシですが、パンの
耳を飼料にすると食料自給率の向上にもつながります。また、母ブタのおっぱいの出も良く、バラン
スよく食事を取ることができ、ブタにとっても食育となっています。エコポークは、味も良く、社員
食堂では人気メニューとなっています。
以上、明治用水の豊かな水に恵まれ、日本デンマークと呼ばれる安城の地で、地域の皆さまの協力
を得て、今日まで安城工場は成長させていただいています。今後も感謝の心を持ち、地域に貢献して
いきたいと考えています。
食育については、食品会社としての立場を考え、安城市とも協力し、活動を継続してまいりますの
で、何とぞご指導のほどよろしくお願いします。
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