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SS-036 依存・嗜癖問題における心理学的研究の諸相
第 2 日 9 月20日(金) 13:10~15:10 札幌コンベンションセンター 中ホールB SS-036 依存・嗜癖問題における心理学的研究の諸相 企画代表者:高橋 伸彰(関西学院大学) 話題提供者:廣中 直行(三菱化学メディエンス株式会社/科学技術振興機 構CREST) 話題提供者:若林真衣子(東北文化学園大学) 話題提供者:木戸 盛年(神戸学院大学) 話題提供者:三原 聡子#(国立病院機構久里浜医療センター) 話題提供者:高橋 伸彰(関西学院大学) 指定討論者:増山 晃大(北海道医療大学) 司会者:高橋 伸彰(関西学院大学) 依存・嗜癖の問題は様々なアプローチから研究されている学際的な研究対象であり,この問題に対す る実践・介入方法も医療的介入の他に,自助組織によるものや環境統制によるリスク軽減など多岐に渡 る。そして,従来の依存概念は物質を対象としたものに限定されていたが,強迫的かつ嗜癖的な行動に まで対象を拡張する動きが強まり,これは今般改訂されたDSM-5に反映されている。本シンポジウムで は, 1 )「ディメンジョン診断」が採用されたDSM-5後の「依存学」のあり方, 2 )アルコール依存症 者の自助組織による「回復」と自己意識の変化, 3 )病的賭博の現状と環境統制によるリスク軽減, 4 ) インターネット依存の現状と医療的介入, 5 )嗜癖対象がどのように選択されるかに関するモデルにつ いて話題提供を行う。そして,心理学領域で依存・嗜癖を研究する立場から,「学際領域における心理 学の役割」について参加者の皆様と共に議論したい。 廣中 直行(三菱化学メディエンス株式会社/科学技術振興機構CREST) 今般改訂されたDSMには「依存」という言葉はない。総論はなく,各論が羅列されている。従来の多軸評定に替わって「ディ メンジョン診断」という疾患横断的な考えが採用されている。これが「病気」ではなく「病人」を見る契機になるのか,長 らく議論されてきた「依存」と「嗜癖」の対立をふまえながら考えたい。先端化する生物科学研究と心理臨床はいかに斬り 結ぶのか?我々は新しい人間学を手にすることができるのだろうか? 若林真衣子(東北文化学園大学) アルコール依存症者への支援は,飲酒のコントロールを取り戻す「治癒」を目指すのではなく,断酒を継続しながら社会 生活を続けていく「回復」を目指すためのものである.「回復」とは到達点に至ることではなく,「変容し続けること」を維 持することであり,アルコール依存症者の自助グループにおいて「仲間とともに行われる自己との向き合い」を通して行わ れる.本研究では, 「変容し続ける」対象として自己意識を取り上げる. 木戸 盛年(神戸学院大学) わが国の賭博産業の年商は総計24兆7,440億円であり、世界 1 位のカジノ産業を有するマカオの年商を遥かに凌ぐ規模の市 場である。この巨大な規模の市場が存在する一方,犯罪や病的賭博といった社会的・個人的リスクも存在する。そこで本発 表では,まず賭博産業を取り囲む現状を紹介し,次に環境統制の視点からこれらのリスクへの対策をどうしていくべきか, 海外で実施されている対策を紹介した上で今後の展望を述べる。 三原 聡子(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター) 我々は2008年に全国調査を実施し、わが国においてインターネット(以下ネット)嗜癖傾向にある成人が271万人と推計 した。また、2011年の調査結果から、ネット嗜癖傾向の高さと抑うつ・自殺傾向とは高い相関があり、ネット嗜癖傾向の高 い者は精神的健康度が低いことを示した。当日は、2011年に開設したネット依存専門治療外来受診の126名の来院者の臨床 的背景も含め、わが国のネット依存の現状について報告する。 高橋 伸彰(関西学院大学) 身の回りには嗜癖対象となりうるものが溢れている。これらは,アルコールのような物質であったり,インターネットの ように行為に対するものであったりする。また,複数の対象に嗜癖する者もいれば,全く嗜癖的行動を見せない者もいる。 ヒトはどのようにして嗜癖対象を選択するのか,入手可能性および個人の志向性を軸としたモデルを概説する。そして,こ のような嗜癖研究を通じて心理学にどのような貢献ができるか論じたい。 SS(36)