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S10 - 日本心理学会
日心第70回大会(2006) 第2日 11月4日(土) 13:00~15:00 5F 502+503会議室 S10 こころの変身 -外見とこころのダイナミズムについての文化的視点- 企 画 者 大阪大学 大坊郁夫 企 画 者 大阪人間科学大学 箱井英寿 司 会 者 大阪大学 大坊郁夫 司 会 者 大阪人間科学大学 箱井英寿 話題提供者 韓国韓瑞大学校 趙 鏞珍# 話題提供者 聖心女子大学 菅原健介 話題提供者 目白大学 野澤桂子 指定討論者 大阪人間科学大学 箱井英寿 指定討論者 大阪大学 概 大坊郁夫 要 われわれは、日々ストレスの中で生活していると言っても過言ではない。精神的健康な状態を維持するために、個々人がそれぞ れの方法を試みている。役割に応じた外見やしぐさ、言葉づかい等、意識的に使い分けてスムーズに自己を演出することもその一 つかもしれない。外見を魅力的に見せることにより、こころの安定を維持・回復することは、日常的に行われている行為である。 たとえば、外見を魅力的に変身させる方法としては、化粧や被服によって一時的に変容させる試みや、ダイエットなどにより体型 を変容させる計画的な中・長期的方法、整形による長期的・永続的な方法などが考えられる。被服や化粧によって自分の弱点をカ バーし、自分の長所を一層引き立てようとすることなどは特異的なことではなく、同社会的・同時的に共有されており、世代や地 域におけるモダールなスタイルとして位置づけられやすい性質を持つと考えられよう。しかし、魅力の基準や外見の変身に関する 方法への評価は文化によってまったく同じというわけではない。それゆえ、その心理的効果も文化により異なる側面を有すると考 えられる。 そこで、このシンポジウムでは、顔・化粧、被服・自己、医療・臨床といった領域から3名の話題提供者に「外見の変身」と「こ ころの変身」との関連を、日本、韓国、フランスという異なる文化的視点も含めて報告していただく。それらに基づいて装い文化 の違いによる「こころの変身」に関して討論し、外見とこころの関係への多面的な視点とそこから得られる示唆を空間的、時間的 な意味での文化と結びつけて考察し、今後の展望を共有したい。 1)韓国における「こころの変身」について: 趙 鏞珍 趙 鏞珍氏は、韓国における顔研究の第一人者であり、美術解剖学者、画家でもある。美術解剖学に関する論文が多数あり、最 近は韓国人の美意識や文化, 韓国人の顔, 韓国人の脳などを研究し、また、毎年、国際美術解剖学シンポジウムを主宰されている。 日本では「冬のソナタ」に代表される韓国ドラマや映画等の人気が高まり、数年前から韓流ブームが巻き起こっており、多くの日 本人が韓国を訪れて以前にも増して韓国人の「装(粧)い」意識などを肌で感じる機会が多くなっている。今回は、日本文化に大 きな影響を与えた韓国における顔(外見)の美意識を日本との比較を通して考え、また、顔のとらえ方についての時代的な変化に ついても、解剖学的、審美的、文化論的に比較する。 2)日本における「こころの変身」について: 菅原健介 近年、キャミソールや見せブラ、ローライズジーンズなど、従来までは隠していた身体や下着の一部をあえて露出するファッシ ョンが目につくようになった。こうした露出系ファッションに対し、女性たちはどのような意識を持っているだろうか。ワコール と共同で進めている調査の結果を紹介しながら、特に、身体露出に対する羞恥感について、「身体の持つ性的刺激価」や「男性の視 線と女性の視線の違い」などについて世代、ジェンダーという文化的観点から時代的な視点を含めて考える。 3)フランスにおける「こころの変身」について: 野澤桂子 フランスにおける外見治療に関して、文化・臨床心理的な観点から言及する。心身に臨床的な問題を抱える人々にとって、「変 身」はどのような心理的意味を有するのだろうか。医療臨床の立場から、 「変身」のもつ「負の現実自己からの乖離」という側面 に焦点をあてる。また、同様な視点で制度的保障のなされているフランスの医療や文化にもふれながら、臨床場面における「変身」 の意義を考えていきたい。