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SS-056 言語発達研究の新展開 ~ 1 歳代で起こる語彙発達の大きな変
第 3 日 9 月21日(土) 9:20~11:20 札幌コンベンションセンター 小ホール SS-056 言語発達研究の新展開 〜 1 歳代で起こる語彙発達の大きな変 化を捉える〜 企画代表者:小林 哲生(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 企画者:板倉 昭二(京都大学) 話題提供者:村瀬 俊樹(島根大学) 話題提供者:針生 悦子(東京大学) 話題提供者:南 泰浩#(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 話題提供者:岡 夏樹#(京都工芸繊維大学) 指定討論者:高根 芳雄#(ビクトリア大学) 指定討論者:板倉 昭二(京都大学) 幼児の言語発達の中でも, 1 歳代における語彙発達は劇的な変化を伴う。 1 歳の誕生日前後で初語を 発し始めると,その半年後には発話できる語が飛躍的に増加し、 2 歳の誕生日を迎える頃には複数の語 からなる文も話せるようになる。この発達的変化を支える機序について,最近,新しい発見が相次いで いる。例えば,馴化法などを用いた実験的アプローチから,語の切り出しや,語と指示対象の連合,文 法的手がかりによる意味推定,育児語と成人語による複数ラベルなどについて語の理解の側面から多く のことが明らかになってきた。また親の報告に頼るチェックリスト法や日誌法などのアプローチからも, 語の発話側面に関する大規模なデータを収集・解析することで語彙爆発や名詞バイアスなどについて新 しい知見とモデル化が報告されている。本シンポジウムでは,日本語に特有の特徴から語彙発達の大き な変化に迫る最前線の研究を紹介し,その機序について議論したい。 村瀬 俊樹(島根大学) 複数ラベルが与えられる状況における子どもの語彙獲得:日本語獲得児は、 1 つの対象に育児語と成人語という複数ラベ ルが与えられる状況で、また、育児語がラベルやサウンドエフェクトなど複数の機能で与えられる状況で語彙を獲得する。 ここでは、 1 )養育者が育児語と成人語をどのように提供しているのか、 2 )子どもが育児語と成人語を対象とどのように 対応付けるのか、ということについて行った研究を報告する。 針生 悦子(東京大学) “語彙爆発”前夜~単語の学習を支える文法の学習~: 語彙獲得において乳児は発話から語を切り出し,その語にふさわ しい概念を対応づけなければならない。そのプロセスを脇から支えるのが,主な学習対象たる内容語に寄り添う機能語など 文法的手がかりである。語彙爆発前夜,子どもはいかにして助詞など文法的手がかりの利用法を確立し,スムーズな語彙獲 得を実現するようになるのか。本報告ではこの問題に関連した研究を紹介する。 南 泰浩(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 縦断・横断データから得られた語彙獲得プロセスでの新たな知見:日誌法で取得した縦断データの分析から得られた,語 彙爆発の現象が一定の割合で語彙を生成するプロセスと不定期の休止からなるという新しい解釈について述べる.また大規 模横断データの解析から分かった語彙獲得の順序について説明する.特に,理解から発話までのプロセスで,動詞の獲得期 間が名詞の獲得期間より,顕著に長くなる現象について詳説する. 岡 夏樹(京都工芸繊維大学) 機能語の獲得と内容語の獲得の計算モデル:「みかんだよ」「りんごだね」などの発話から、機能語(終助詞「よ」「ね」) の意味と内容語(名詞「みかん」「りんご」)の意味を獲得する計算モデルを提案し、ロボットを用いた獲得実験の結果を報 告する。終助詞を含む発話に対する適切な応答(うなずく等の行動および内部情報処理)を報酬に基づき学習する。内部情 報処理の 1 つが、内容語と指示対象の対応を記憶することである。 SS(56)