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認知症高齢者と義歯 - 認知症ケアplus
抄 録 認知症高齢者と義歯 口腔ケアとの関連 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 貞 森 紳 丞 Ⅰ.高齢者の口腔内 【略 歴】 歯学博士 1981 年 広島大学歯学 本日の私に与えられたテーマは「口腔ケア」である.「口腔ケア」 を考える場合にも,その対象である「口腔」を十分に知ることが非 常に有意義なことは言うまでもない.また, 「日本認知症学会」が対 象としている人を考えれば,その対象者は高齢者が大多数であろう. それゆえ,高齢者の口腔内が平均的にはどうなっているのか,理解 して把握しておくことは大切と考えられる. 現在では一般の人にもよく知られている「8020 運動」というスロ ーガンがある.80 歳で 20 本の自分の歯を,ということである.し かしながら,現在の高齢者の口腔内は,80 歳で 20 本よりも歯数が 少ないのが現状である.失われた歯がある場合には,失われた歯の 機能や審美を回復するために,義歯(入れ歯)などの人工物を装着 することが多い.そのため,現状の高齢者の口腔内では,人工物を 装着した口腔内を理解しておくことが必要である. 部卒業し,同年歯科補 綴学第二補綴科医員と Ⅱ.基礎的な補綴処置 して臨床に携わる 1982 年 広島大学大学 院歯科補綴学第二講座 の大学院入学 1986 年 修了.同年助手 となり,講師,助教授 となり現在に至る 1993 年 連合王国のウ ェールズ大学で Visiting Senior Fellow として海 外研修を受ける. 日本補綴歯科医学会評議 員,老年歯科医学会評議員, 日本歯科心身医学会評議 員,日本障害者歯科医学会 評議員,日本認知症ケア学 補綴とは,一般的には聞きなれない言葉であろう. 「ほてつ」と読 む.歯科関係者以外の方にはなじみのない言葉ではあるが,歯科学 や歯科治療の根幹を構成する重要な分野の1つである.本日の教育 講演では是非とも憶えて帰っていただきたい言葉である.医科歯科 系における「補綴」という言葉は,失われた機能を人工物を用いて 補うことを意味している.歯科における補綴とは,失われた歯質あ るいは歯を人工物によって補う,あるいは置き換えることである. 高齢者の場合には,前に述べたように失われた歯が多い.これらの 失われた歯の機能を補うために,補綴装置が口腔内に装着されてい ることが多い.そこで,基本的な補綴処置については理解しておく 必要があると考えられる.補綴装置には,義歯(入れ歯),クラウン, ブリッジ,インプラントなどがある.それぞれについて,基礎的な ところを説明する. 会評議員 日本補綴歯科医学会指導医 Ⅲ.口腔ケアの概説 および認定医,日本障害者 歯科医学会認定医,日本心 療内科学会登録医 もしかすると,口腔ケアは当たり前のことかもしれない.しかし, 28 現在, 「口腔ケア」が介護の現場でよく取り上げられるキーワードな のである. 口腔ケアがなぜ必要なのであろうか.口腔内が不潔であれば,虫 歯,歯周病などになり,痛みが出たりや歯を喪失することになる. そうなれば,その方の日常生活に支障をきたし,その結果,不機嫌 になったりするだろう.さらに,最近では,誤嚥性肺炎への危険性 も指摘されている.QOLを維持するためには,口腔ケアは必要不 可欠なものである. 口腔ケアに関して,色々な観点からとらえることができる.その 1つとて,器質的ケアと機能的ケアとに大別することができる.そ れぞれを簡単にいえば,器質的ケアは,歯や粘膜などを清潔にする ことであり,機能的ケアとは,口腔機能の維持・増進を目的とした ものといえよう.一般的なイメージでは,口腔ケアというと器質的 ケアを想像することが多いが,機能的ケアとしての捉え方も必要で あろう. 認知症高齢者の口腔内は,千差万別である.また,環境も同様に 多様である.全ての認知症高齢者に応用できる簡便な口腔ケアの方 法は困難と考えられるが,その基本的な事柄をお話する. Ⅳ.補綴装置のケア(デンチャープラークコントロールなど) Ⅱで述べたように,補綴装置には種々のものがある.それぞれの 補綴装置を清掃する場合には,それぞれの特性を考慮する必要があ る.中でも,認知症高齢者では,多数の歯を喪失していることが多 く,補綴装置の義歯(入れ歯)を使用していることが多いと推察さ れる.そこで,今回の講演では,補綴装置のケア,特に義歯のケア を中心としてお話する予定である.また,義歯の取り扱いも重要な ことであり,我々の調査・研究した結果も述べる予定である. キーワードは,デンチャープラークコントロール,デンチャープ ラーク,義歯洗浄剤,義歯の取り扱い(就寝時),誤嚥性肺炎などで ある. Ⅴ.認知症高齢者と義歯 現在の認知症高齢者は,歯がなくなった場合,義歯でその失った 歯の機能を補うことが多いと思われる.認知症高齢者と義歯との関 連は興味あるところである.認知症高齢者の特徴を考慮しながら, 認知症高齢者と義歯のケアについて述べる予定である. 29