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ネットワーク活用による スピード経営の戦略展開

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ネットワーク活用による スピード経営の戦略展開
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学経済論叢
第7
3巻 第 1号 2
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0年 6月 1
4
9
1
9
6
ネットワーク活用による
スピード経営の戦略展開
原田
保
佐堀大輔
1.はじめに
インターネットの世界的な広がりを背景に,グローパル競争が一段と進展し
激しさを増すなか,市場の変化を先取りし,顧客ニーズに対応した行動を迅速
に行える企業のみが勝者になれる権利を得ることができる時代になってきた。
迅速に対応するには IT
,すなわち情報技術の活用が欠かせない。また,これま
でのような一企業単位での行動,あるいは従来からある系列内での行動ではな
く,広く一般企業の参加も踏まえたオープン型のネットワーク型経営へのシフ
トが望まれている。
ネットワークという言葉は,自律的な主体聞におけるゆるやかな連帯のこと
を意味する。社会が進化すればするほど個々の組織,あるいは個人の専門化が
進展することになり,その差異化が連帯を生み,さらに社会の成熟化が進むと
連帯のあり方も変わってくる。
ネットワーク型の経営に転換していくということは,自律的な主体間におけ
る連帯をマネジメントしていくことであり,これまでのような経営の概念を変
えていくことが望まれる。すなわち,ネットワーク型の経営では,複数の企業
がお互いに自分の持ち味を活かし,全体を構成するパートをしっかりと演じる
ことが大事であると同時に個々の組織が連帯した全体構造の最適化を意識した
取り組みが欠かせなくなる。また,そのためには企業聞にまたがって情報を共
有する仕組みとそのための技術も必要である。
本稿では,上述の観点、から企業において情報システムがどのように推移して
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きたかを述べるとともに,経営のスピードを向上させるために企業が取り組ま
なければならないことに言及し,さらにこれからのネットワーク型経営におけ
る企業聞のあり方についてスピード経営の観点から考察していく。
2
. 企業内におけるスピード経営への戦略的対応
今後企業聞におけるネットワーク化は避けられないが,経営のスピード向上
をもたらす経営イノベーションは企業内における経営イノベーションと企業聞
にまたがって行われる経営イノベーションとに分かれる。そこで,この章では
まず情報システムの発展経営について述べ,次に企業内イノベーションの 4つ
のイノベーションを取り上げ,その中でもビジネスプロセスと情報活用を中心
に論述を行ってみる。なお,企業聞における経営イノベーションについては次
章において論述を行う。
2
.
.
1 企業内情報システムの発展経緯
スピード経営について語るときに情報システムを抜きに話を進めることはで
きない。そこで,企業の経営のスピード向上という観点からどのように情報シ
ステムが貰献してきたかをそのコンセプトの発生』買にあげてみる。
① ADP (
A
u
t
o
m
a
t
i
cDataP
r
o
c
e
s
s
i
n
g:自動データ処理)
1
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5
0年代前半に登場したコンセプトであり,コンピュータがビジネスに
使用されるようになって最初に現れたコンセプトでもある。それまで手作
業で行っていた業務をコンピュータで置き換えることの総称である。もと
もとの目的は事務費用の削減であったが,入手をかけて行っていた作業を
機械化することにより,その処理由体はスピードアップされた。しかし,
実際のシステムは拠点に設置されたコンピュータによって構造的なトラン
ザ、クションをパッチ処理することにとどまっていたため,経営のスピード
向上という概念は乏しかった。
②
IDP (
I
n
t
e
g
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e
dDataP
r
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c
e
s
s
i
n
g::統合デ」タ処理)
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0年代後半から登場してきたコンセプトである。これはデジタル
次に 1
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キットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
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データ伝送技術の発達により,別々に行われていたトランザクションデー
タをオンラインシステムで集中して処理することで統合化しようとしたも
のである。これは ADPに比較するとオンライン化により距離の概念を一
部払拭させた点で経営のスピード化には貢献しているものの,やはりこれ
も ADP同様に構造的なデータ処理の機械化による省力化および経費削減
の意味合いが強しこれもやはり ADP同様にスピードという概念は乏し
かった。
③ MIS (
M
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a
g
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n
tI
n
f
o
r
m
a
t
i
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nS
y
s
t
e
m::経営情報システム)
MISは 1
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6
0年代の半ばに登場してきたコンセプトである。機能別に構
築されたサブシステムを統合することで管理者が必要とする情報を,必要
なときに,必要とする形で提供することをめざしたものである。具体的に
はデータベース,コミュニケーション,情報検索といった技術を用いて実
現しようとした。このコンセプトになると管理者の意思決定の迅速化とい
う概念が入ってくることになるが,残念なことに情報技術の能力不足と意
思決定に必要な情報を管理者に提供できなかったために期待される機能は
実現されなかったために経営のスピード向上には寄与しなかった。
④
DSS (
D
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c
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nS
u
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o
r
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y
s
t
e
m:意思決定支援システム)
1
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0年代の初めから唱えられたコンセプトである。管理者が非構造的ま
たは半構造的な問題を柔軟かつ迅速に対応することを支援する意思決定指
向型システムである。人間の意思決定に替えて機械に意思決定させるので
はなしあくまで意思決定は人間であり,それを迅速に行えるように支援
しようとするものである。具体的には意思決定者がインターフェースを介
してデータベース,モデルベースと対話しながら問題解決に使うものであ
る。現在も多くのシステムがこの流れを汲んでいる。これより経営上の意
思決定のスピード向上に少なからず貢献するようになった。
⑤ S
I
S(
S
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s
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e
m:戦略的情報システム)
S
I
Sは 1
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0年代半ばから使用されるようになったコンセプトである。そ
れまでのコンセプトである ADP
,I
DP,MISのように人が行っていた情報
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処理作業を機械で置き換える置換型利用法や DSSのように管理者の意思
重要成功要因),価値連鎖,
決定を支援する支援型利用法とは異なり, CSF(
さらに SWOT分析等を用いて競争優位の戦略を実現する情報システムの
ことである。これは情報システム自体が企業戦略そのものであり,情報技
術を経営に活かすために情報システム部門とその管理者が経営的観点から
取り組むことが重要であるという考え方を広く普及させることにつながっ
た。もちろん,競争優位の戦略というなかにはスピードという概念もその
一部として入ってくる。
⑥
BPR (
B
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g
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n
g:ビジネスプロセスの抜本的改
革)
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0年代初めに登場したコンセプトである。 BPRとはコスト,サービ
ス,品質,業務スピードを劇的に改善するために取引の発生から完了する
までの一連のビジネスプロセスを根本的にデザインし直すことをいう。業
務プロセスの改革,情報システムの改革,組織改革が一体となったアプロー
チが革新的な改革につながるのであり,情報システムはビジネスプロセス
を支援するというよりもビジネスプロセスそのものであるという認識が広
がった。その定義の中に具体的に業務のスピードという言葉が入ってくる。
経営スピードの向上が顧客満足ひいては競争優位性につながり,情報技術
とビジネスプロセスとが切っても切れない密接的な関係にあることが認識
されるようになる。
2
.,2 スピード志向の経営イノベーション
さて,このように推移してきた企業情報システムであるが,グローパノレ化,
規制緩和,金融ビッグパン,顧客満足志向の定着といった昨今の環境の変化に
対して迅速に行動してその事業戦略を実現していくことが求められている。す
なわち,現在の経営環境からは情報システムを有効に活用して経営のスピード
向上を大幅に達成させる経営イノベーションが求められているといえる。
経営イノベーションのためにはビジネスプロセスイノベーション,情報活用
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イノベーション,組織イノベーション,意識イノベーションの 4つのイノベー
ションが行われる必要がある。ビジネスプロセスイノベーションでは,職能別
仕事単位からプロセス単位への転換,業務遂行のコンカレント化などが,また
情報活用イノベーションでは情報の共有化,情報リテラシーの向上に加えてナ
レツジマネジメントの実施などが,組織イノベーションではフラットな動態的
F
回哉への転換,権限の下位委譲,職務の多次元化などが,そして意識イノベー
ションでは結果重視の成果測定と報酬の決定,生産的な価値観の導入などが求
められることになる。これら 4つのイノベーション項目は別々に機能するもの
ではなし相互に関連したものになっている(図表 2-1)。そして,これらが
うまくシナジー効果を発揮したときに経営スピードの格段の向上が期待され
る
。
図表 2ー 1 経営イノベーションの視点
組織イノベーション
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2“3 ビジネスプロセスイノベーションの進展
2
.
.
3
.
.
1 日本的経営からの脱却
戦後 5
0年に亘って日本経済を支えてきた系列による囲い込みという日本独
特の経営は,グローパルな競争の進展,規制緩和等の影響を受けてあらゆる業
界で崩壊しようとしている。これまで系列という囲い込みのなかで守られてき
た企業にとって大変厳しい状況にさらされ,また自ら経営イノベーションを
行っていかなければ生き残りが難しい時代になった。このようななかで生き残
るためには世界に通じる競争力を身につけていかなければならない。そのため
のポイントは,まず第一にどこにも負けないだけの競争力をもち,他社からも
魅力的に見える自社の強み,すなわちコアコンピタンスを確立することである。
次に世界に適用するために会計,取り引きルールなどで世界的に標準となって
いるグローパルスタンダードに対応できる事業運営体制を構築することであ
る。さらには事業の価値を生み出す企業活動の連鎖の流れを見直し,事業の特
性,経営環境に合わせて無駄を排除し市場ニーズに即応できるようにビジネス
プロセスを再構築することである。
さて,一番目のコアコンビタンスの確立も二番目のグローパルスタンダード
への対応もともに結局はビジネスプロセスの再構築がカギとなる。しかし,ビ
ジネスプロセスの再構築を手掛げようとしている日本の企業は以下の場合が多
し
=
。
①戦略的な視野が欠けているため,部分的な改善に終わっている。
② 実施企業独自の活動となっており,関連企業あるいは業界全体の取り組
みになっていなし、
③情報化の遅れにより情報を戦略的に活用する面で劣っている。
④
もともとがボトムアップ型の体質のためにトップダウン型のアプローチ
によるリーダーシップの発揮が不十分である。
したがって,ビジネスプロセスの再構築はこれらの問題を解決しなければな
らない。
日本の企業の多くにとって特徴的なことは間接コストの比率が高いというこ
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とである。一般管理費の差は価格競争力,ひいては利益に大きく影響をもたら
す。これまでは I
Eや VEといった手法によって仕事を分解し,改善を図るアプ
ローチが主体であり,現在はすでに多くの企業で実践されているが,これらは
部分的なプロセスの無駄を排除するには効果的であるが,それだけでは適用し
ない状況になっている。
ビジネスプロセスは事業の価値や利益を生み出すメカニズムであると同時
に,顧客満足の視点からはビジネスプロセスそのものがサービスを向上する商
品でもあり得る。したがって,単にビジネスプロセスをカットしたり,圧縮す
るだけではなく,抜本的にビジネスプロセスにメスを入れて無駄を排除した形
で価値創造のためのビジネスプロセスをリデザ、インし,情報技術を活用して最
適化するように再構築することが結局はスピード経営につながることになる。
2
.
.
3
.
.
2 ERP(En
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s
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i
n
g
)の導入
事業構造は業態によって大きく異なる。ここでは代表的な製造業を例にとる
と,顧客のニーズに合わせて素早く対応できる製品構造,受注から生産,そし
て顧客の手元に届くまでの業務処理構造,顧客にタイムリーに製品を供給する
ための生産拠点・物流拠点、構造,スピード経営に対応できる業務基盤・生産基
)。これら 4つは互いに関連し
盤という 4つの領域に区分できる(図表 2-2
あっているので,それらを統合して扱うことは当然の如く望ましい。
さて,このような観点からビジネスプロセスを再構築するためには ERP
(
E
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g
)は重要な武器になる。 ERPとは,アメリカの
P
I
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(アメリカ生産管理協会)の定義によれば
生産管理関係の研究団体 A
r
最
新の情報技術を活用した受注から出荷までの一連のサプライチェーンと管理会
計,財務会計,人事管理を含めた企業の基幹業務を支援する統合情報システム
である」ということになる。 ERPはそもそもは生産管理の主要な概念である
MRP(
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n
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n
g::資材所要量計画)をアメリカで発展
させたものである。 MRPは部晶表と基準生産計画という 2つのマスターに基
づいて資材の総所要量を求めるもので,この計算結果をもとに資材の発注,納
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図表 2-2 製造業における事業構造デザイン
/
/
/
経営戦略
///
/
製品構造
ビジネスプロセス
生産物流
拠出、構造
業務基盤}生産基盤
入,出庫をコントロールする資材管理システムである。 1
9
6
0年代後半に登場し,
1
9
7
0年から 1
9
8
0年代にかけてはそれまでの資材管理に加えて製造設備
計画,人員計画,物流計画までカバーする MRPI
Iへと発展していった経緯が
9
8
0年代に入るとオンラインリアルタイム型の統合生産管理シス
ある。これが 1
テムに変化していった。 1
9
9
0年代に入り, MRPI
Iは ERPへとその機能を発展
さらに
させて企業内の全経営資源をその管理対象とするようになり,さらにはサプラ
イチェーンの管理やグローパルな連結経営もその対象となり,その管理範囲が
広がっていった。
このように
MRPからの流れを汲む ERPはこのような発展形態をたどって
きたのであるが,その一方で会計管理や人事管理を中心にその機能を拡大して
MRPIの機能を持ち,さらに ERPへと発展してきたものもある。どちらの発
RPは幅広い業務範囲の機
展経緯をもつかでその特徴には違いがあるものの, E
能をカバーするようになったのである。また,もともとは製造業の購買,生産,
物流,販売,人事,会計といった諸機能を統合するシステムとして発展してき
たものであるが,各モジューノレ単位でも使用できることから今では流通業や
サービス業にもその適用が拡大している。
さて,事業環境が急激に変化する今日にあってはビジネスプロセスの再構築
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のスピード自体も求められているので,上述のような機能をもっ
ERPを活用
するメリットは大きい。その一番のメリットとしては,ひな形が提供されてい
るので新しいビジネスプロセスを構築する上で参考にすることができること,
次にすでに実装されているペストプラクティスによりビジネスプロセスの研
究・活用に役立たせることができることである。
一方で,
ERPを採用する場合の問題は,欧米育ちであるため文化,情報シス
テム開発環境などの違いがあり,日本独特の仕組みの対応が難しいこと,汎用
性を重視している分,個別の最適化されたシステムに比べると機能不足の面が
あること,パッケージにあわせることが必要でトあることから,自社にすでに構
築しているデータベースの見直しが必要になる場合が多く,その場合は新たな
作業が必要になってくるといった点があげられる。
RPの活用が急増しているが,その背景には大きく
さて,現在 E
2つの理由が
ある。 1つは企業内の事情である。現状のシステムはその企業向けに独自に開
発されたものが主流であったが,いざシステムを見直そうとすると,当時の開
発のドキュメントが不完全であったり,当時の開発者が退社しているなどで,
手直しをするにも支障がある場合が多くなっている。そのため新たにシステム
構築するのであれば,これまでのような独自開発ではなく,標準的なものにし
て初めての担当者でも学習しやすいシステムにする必要がある。これは企業の
基幹業務システムに限らず全般的な考え方である。さらに,生産,物流,販売,
会計という幅広い分野のシステムを整合性をとって統合的に開発することが求
められるが,すべての業務にたけていて統合的にデザインできる人材が社内に
少ないこと,進歩の早い ITを自ら学習しシステム設計していたのでは時間が
かかりすぎて,変化の早い世の中の動きに付いていけないことがあげられる。
ERPには前述したように統合システムのひな形が用意されている。したがっ
て,それを参考にして新しい基幹業務システムを構築すれば,ゼロペースから
構築するよりも効率的で迅速に構築できる。
もう一つは,次章で詳しく述べるが,今後の企業活動においてオープン経営
を志向する場合は企業関連携が欠かせなくなり,さまざまな分野で情報共有を
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していかなければならないが,これまでと同じように独自システムで運用して
いたのでは,オープンな環境で広範囲からパートナーを選出することができな
いという点があげられる。すなわち,この激しい競争 の中からより適切なパー
L
トナーを求めるには情報交換が容易になるように情報システムは標準を採用し
ておかなければならないということになる。
これらがビジネスプロセスイノベーションを進めようとしている企業が
ERP採用している理由になっている。
24 情報活用イノベーションの進展
“
2
ι
.
.
1 知的資本が競争力の源泉
経営ノベーションにおいて欠かせないものの一つは知的資本である。定型的
な作業だけで済むのであれば知的資本が経営のスピードに与える影響は少な
い。しかし,企業間競争が激化し,顧客ニーズも多様化している現在にあって
は,顧客オリエンテッドな取り組みをしなければ市場での生き残りは厳しい。
極言すれば供給が需要を上回り,顧客一人ひとりのニーズが毎日のように変化
することが当たり前の現代のような時代においては,ワン・ツー・ワン・マー
ケティングが中心になる。したがって,もはや定型的な作業だけでは済まなし
さまざまな人のノウハウを活用して対応すること,すなわち知的資産を活用で
きる環境を構築することが経営課題になりつつある。
2.
4
刷 2 ナレッジマネジメントの波及
知的資産の活用という観点からはナレッジの量よりもナレッジを多様に組み
合わせることができることが KFS(
K
e
yF
a
c
t
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rf
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rS
u
c
c
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s
s
)であり,ナレツ
ジの組み合わせによって新たなナレツジが創造されるというナレッジのスパイ
ラノレ現象が起きるようになる仕組みが大きな効果を生み,企業の競争力の基盤
になる(図表 2- 3)。
さて,ナレッジと似たような言葉に,データ,情報,知識,ノウハウ(知恵)
というものがある。データは感情や意志といった人間的な部分を排除したもの
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ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
図表 2- 3 知のスパイラル
新しいナレ
y ジの創出
E
D
B
A
¥¥¥-.
E二二二二二二二コ
であり,日々の事実であるということができる。情報は,そのデータを人聞が
理解できるように編集して意味ある形でまとめたものである。知識は,ある目
的のもとで情報を関連づけて体系化したものである。ノウハウ(知恵)とは,
知識を活用して現実の問題解決を行い,それを通じて調察された固有のルール
や法則である。そしてナレツジとはこれらを統合したものであるということが
できる。したがって,ナレツジマネジメントとは,情報,知識,ノウハウ(知
恵)を獲得あるいは創出し,それを編集・蓄積,管理・活用という仕組みを作
り上げて組織的に知的資本を強化しようとする活動である。
ナレッジがあることが前提であるが,ナレッジマネジメントにおける情報技
術の役割は非常に大きい。しかし,ナレッジマネジメントは情報システムがあ
ればそれで達成されるものではなく,人間系を重視したものでなければならな
い。またナレッジマネジメント遂行にあたっては環境を一気に作り上げること
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ー
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はなかなか難しい。そこで段階を経て徐々に行っていく必要がある。
第一に早い段階から共通の理想、とする目標を掲げ,関係者の間でそれを共有
化することである。この目標とするものを早くから対象者に浸透させることが
情報を共有化する第一歩になる。
第こには顧客情報や自社商品情報等の業務情報や担当者の業務内容等のメン
ー情報を共有することである。これをサーバーで一元管理することで業務情
ノf
報を誰でもすぐに利用できる環境にし,メンバ一間でお互いの業務内容を把握
できるようにする。
第三には,外部から流入する他社情報や業界情報,経済情報等を円滑かつ取
捨選択して整理し,関連部門が必要な情報を簡単に検索して得られるような体
制を整えることである。経営活動に外部情報は欠かせないのでこの外部情報を
共有し,すでに共有しである内部情報と含めて活用することで総合的な活動が
可能になる。
第四は,これまでの段階の情報に基づいて活動した結果としての成功事例や
失敗事例をまとめることである。これらをデータベース化して誰でもが参考に
することができるようにするとともにルール化し,事前に失敗を防ぐようにす
る。成功事例・失敗事例はあくまで結果であるが,そこから得られるエッセン
スがノウハウとなって蓄積されていくことが重要である。すなわち,これを共
有し,必要な人が,必要な時に,必要な情報の入手を可能な状態を作りあげる
ことである。
さて,ナレッジマネジメントを成果に結び付けていくためには経営トップ主
導によって従来の企業文化/企業風土を改革していくことが必須である。した
がって,ナレッジマネジメントは情報システム開発の側面もあるが,業務改革,
組織改革,意識改革の側面も強いといえる。
2“5 意識イノベーションの進展
これまでのキャッチアップ劃経済の工業社会では目的が明確であったため,
r~国」としての人間性は無視されてマスとして扱われ
r個」は単に単純作業や
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定型的な作業を機械的にこなせば良い時代であった。しかし,急速な技術革新,
特に情報通信機器の低価格化とインターネットに代表される情報インフラの進
展により,情報通信環境が整備されてきたことにより仕事のあり方も大きく変
化し,いわゆる単純作業,定型作業の類は大幅に減少しつつある。しかもグロー
パノレ化が進む現在にあっては,ビジネスのあらゆる局面において変化のスピー
ドが早くなっており,スピード対応が求められている。しかし,従来型の組織
対応では対応に限界があるため,個人の高い仕事能力に依布せざるを得なく
なっており,この能力の差が企業の勝敗を分けることも少なくなくなってきて
いる。換言すれば,これまで日本企業では否定されてきた「個」の発揮が重視
され,独創的・創造的能力や感性などの人間特有の能力の発揮がますます重要
な時代になってきたのである。その,"{園」の能力を有効に引き出すためには,
個々人の職務の明確化と成果主義による適切な評価に加え,独創性・創造性を
発揮しやすい環境を構築すること,これまでの画一的な存在から「個」を発揮
できるような意識改革を実施することである。このような個人に焦点を当てた
マネジメントが先進企業で実施されつつあり,企業の生産性の向上をもたらす
上でますます「個」の存在が重要になってきている。
3
. 企業聞における経営スピードの向上
経営のスピード向上は一企業だけで実践しでも限界がある。グローパノレ的な
競争の激化は企業聞の連携を行わなければ生き残れない状況を現出している。
この章では,企業間連携に関わる事項について経営スピードの向上の観点から
述べる。
3
.
.
1 EDI (
E
l
e
c
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r
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cDataI
n
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g
e:電子データ交換)の重視
EDIとは E
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n
i
cDataI
n
t
e
r
c
h
a
n
g
eを略したもので電子データ交換と訳
される。企業聞においてオンラインで情報を交換するシステムである。 EDIには
狭義と広義の定義があり,狭義の定義では r商取引のデータ交換に関する標準
規約に基づく企業間オンラインデータ交換システム」であり,企業聞の取引の
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1
6
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総合的な合理化をめざすことを目的とするものである。広義には,さらに商取
引を中心とした経済活動に伴う各種書類の電子データ化による企業間あるいは
企業と行政機関との聞でデータ交換及びデータ保管を行う電子経済社会システ
ムを意味する。
E
l
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c
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cO
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もともと EDI導入の先駆けは流通業界で使い始めた EOS (
P
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tOfS
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)システムで, 1
9
7
0年代後半から取り
d
e
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gS
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)やPOS(
組みが始まった。当時は標準化されていなかった EDIも今日では C
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C
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l1
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t
i
o
n:産業情報化推進センター)標準が日本国内の製造
業の標準になっている。また,国際的な標準としては国連の欧州経済機構 (ENj
ECE)が中心になって進めた UNjEDIFACTが 1SO9
7
3
5としても採用されて
おり,急速に世界各国で普及し始めている。
3
.
.
2 企業間取引に不可欠な E
D
I
EDIの登場により企業間で行われてきた受発注や物流,請求や支払いなどの
商取引に欠かせない情報は,これまでの対面や電話による口頭伝達や帳票・書
類の交換で行われてきたことがネットワークを介して,正確かつ迅速に相手側
に送り届けられるようになった。その結果,流通の各段階における取引情報の
再入力や入力データのチェックに要する人件費の削減とともに商品在庫の大幅
な削減も可能になり,その結果,①タイムリーな情報更新により正確な業務の
遂行,②業務処理の迅速化,③総合的な戦略的取り組み,といったことが可能
になったのである。
2
1世紀に大きく発展するといわれている EC(
E
l
e
c
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r
o
n
i
cCommerce)には,
代表的なものに企業対企業の取引である BtoB,企業対行政機関の取引である
Bt
oG,企業対消費者の取引である Bt
oC,そして個人対個人の取引である
Ct
oCがある。そのなかでも BtoBの市場規模は日本でも 2
0
0
3年に 6
8兆円
という巨大な市場規模になることが予想されてい
2
が,その Bt
oB と BtoG
(1) 通産省,アンダーセンコンサルティングによる調査結果, 1
9
9
9
/
3
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
6
3
-163-
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
の電子商取引のプロトコルがこの
E
D
Iである。
さて,このように企業間で取引を行うためにはあらかじめ
おく必要がある。
E
D
I規約を決めて
E
D
I規約はその内容によって 4つのレベルで構成されている
(図表 3-1)。
図表 3-1
EDI規約の構成
廿
~
レベル
契約名
第 4レベル
取引基本規約
EDI取引に関する基本取り決め
第 3レベル
業務運用規約
業務運用,システム運用の取り決め
内
第 2レベル
情報表現規約
ビジネス・プロトコルの取り決め
第 1レベ/レ
情報伝達規約
通信プロトコルの取り決め
制流通システム開発センタ一
流通コードセンター「概説流通
情報システムイ七」より抜粋
E
D
Iは交換されるデータによって商品企画提案,見積り依頼,見積り
などのメッセージからなる E
D
I商談,発注,在庫情報, POS売上情報などの
D
I,入庫予定,受領などのメッセージからなる物
メッセージからなる受発注 E
流E
D
I,請求,支払,入金報告などのメッセージからなる決済 E
D
Iからなる(図
また,
表 3- 2)。
身近なところで使われている
E
D
Iとしては,コンビニエンスストア (
C
V
S
)
やスーパーがある。 C
VSやスーパーはその薄利多売のためにセルフサービス,
図表 3- 2 EDIと交換されるデータ
EDIの穏類
EDI商談
受発注 EDI
交換されるデータ
-商謀品企画提頼案メッセージ
り依 メッセージ
りメッセージ f
也
在
P
発O
注
庫
S
↑
メ
育
売
報
ッ
上
セ
メ
情
ー
ッ
報
セ
ジ
メーッジ
セージ
物 流 EDI
-入庫領予メ定メッセージ
ッセージ他
-受
決済 EDI
請
支
求
払
金 メッセージ
メッセージ
-入報告メッセージ他
他
流通システム開発センター rEDI知識」より
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学経済論叢
-164
1
6
4
単品管理による商品陳列と庖舗レイアウト,同一規格の多庖舗出庖とその運営
などが特徴としてあげられる。このような小売業では商品の仕入れがその売上
を左右する。顧客が望むものを提供できなければ他屈に顧客を奪われてしまう。
薄利多売システムであるだけに過剰な在庫を抱えずに機会損失を防ぐ必要があ
る。そのためにグローサリーと呼ばれる加工食品,菓子,日用雑貨品などは単
品ごとに置かれている陳列棚の商品の在庫をチェックし,在庫数量の不足分を
発注する補充発注を行う必要がある。また売上に占める割合の大きなおにぎり
やお弁当などは全国から一斉に 1日に数回発注が行われるので迅速な対応が欠
かせない。また各庖舗から決められた時間ごとに本部に発住し,それを本部が
0
0以上の取引先に発注する必要がある。したがって,迅速に
取りまとめて数 1
対応するには各居舗からのデータをパソコンと通信ネットワークを介して本部
のコンピュータに伝送する EDIが欠かせない。このような背景からチェーンス
トア本部とその各庖舗聞の受発注システムとして EDIが普及していき,今では
流通業界に広く普及している。
物流 EDIとは卸業者・メーカーが受注した商品を納品するまでの物流の仕組
みを合理化するものである。これは次のような手順で行われる(図表 3- 3)。
①
卸売業者・メーカーが受注データに基づき商品をピツキングしてチェー
ンストアの各庖舗別に品揃えをして出荷カートンやオリコンに入れ,集合
l
n
t
e
r
l
e
a
v
e
dTwoo
f ~ive) または出荷カートン
包装用商品コード ITF(
表示 SCM(型巾pingcarton盟arking)ラベルを貼って出荷する。
② 同時に納品を予定しているデータである事前出荷情報 ASA)(
全dvanced
n
t
e
r
l
e
a
v
e
dTwoo
fF
i
v
eの略であり. 5本の
(
2) 集合包装用商品コード ITF:ITFは I
パーのうち 2本のバーが太いという窓味で,バーコードシンボルの仕組みの一種。メー
カーにとっては集合包装単位のマーキングにより出荷検品時の読み取りが可能であり,
受注から出荷までのリードタイムを短縮できる。また,出荷作業の自動化も可能。一方,
小売業では ITF読み込みによる集合商品の検品,ノー検品を実施することによる省力
化,業務のスピードアップを図れるというメリットがある。
(
3) 事前出荷情報 ASN:ASNは AdvancedS
h
i
pNot
悶の略である。納品前に相手に送
られる E
DI納品データの事であり. SCM(
S
h
i
p
p
i
n
gC
a
r
t
o
nM
a
r
k
i
n
g
)ラベルという納
品用ダンボールに貼られるバーコードラベルと照合することでノー検品を実施できるよ
うになる。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
6
5
165
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
図表 3- 3 受 発 注 EDIと物流 EDI
SCM
ラベル
付カ一トン
(オリコン)
ASNとSCMラベル
.......~
による t
9
l
品
ASN
SCMラベル
発注データ
付カ一トン
(オリコン)
ASN
品揃と SCM
ラベル貼付
受発注データ
…一一…》
商品配送
物流 EDI
受 発 注 EDI
S
h
i
pNo
t
i
c
e
)を発注元であるチェーンストア本部に伝送する。
③ ASNを受信したチェーンストア本部は,それを自社の物流センターへ
伝送し,受信した物流センターは ASNに基づき,卸売業者・メーカーから
入荷した商品をカートンやオリコンごとに
SCMラベルのバーコードを読
み込んで検品し,カートン,オリコン単位で各庖舗に配送する。
④
各庖舗では納品されたカートンやオリコンの数量を確認する。
以上のように,本来ならば単品ごとに行っていた納品時の検品作業を物流
EDIにより省略することで物流コストの削減と同時に納品の迅速化を達成し
ている。
さらに納品が終了してお互いの債権及び債務が確定すると今度は請求データ
と支払データの交換が行われる。これが決済 EDIである。さらに一歩進めて買
掛・売掛の確定および請求・支払通知,金融機関との聞の振込依頼,入金報告
を組み合わせた金融 EDIもある。これらが企業聞の電子商取引 B t
oB ECの
ペースとなっていく。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
166
ー
香川大学経済論叢
1
6
6
3
.
.
3 E
D
Iがもたらしたスピード経営 QR
.
.
1 クイックレスポンスが生まれた背景
33
引
EDI導入の先行成功事例として QRについて述べる。
QRとは, Q
u
i
c
kR
e
s
p
o
n
s
eの略で衣料品分野においてメーカー・卸売業者・
次に
小売業者の三者間の取引データを
E
D
Iで交換して業務の迅速化による全体効
率化を図るシステムのことである。これは,日本でもアパレル業界で本格的に
取り組まれるようになったシステムであるが,そもそもは 1
9
8
0年代の半ば頃
に,アメリカの繊維産業から提唱されたものである。
1
9
8
0年代のアメリカの繊維産業においては,アメリカの経済成長率が鈍化し
たことにより賃金カットやリストラが盛んに行われた結果,労働者の所得賃金
が低下したため低価格への要求が厳しくなったのに伴い,ディスカウント届の
台頭と低価格のアジア製衣料品が氾濫してきた。アメリカの繊維産業の各メー
カーも生産拠点を次々とアジア諸国に移動させたことにより国内空洞化と失業
問題が発生し,繊維産業の衰退が著しくなった。これにより,危機意識が浸透
したことによって
QRが生まれてきたのである。
もともと,衣料品は原材料である原糸から最終製品に仕上げるまでの製造工
程に多くの企業が関わっているため平均で 1年 3ヶ月という長い期聞がかかる
ため,その期間中の在庫は約 l年分もあり,きわめて在庫回転率が低い状況に
あった。またアメリカにおける繊維小売業は買取りによる商品仕入れが原則な
ので,在庫を抱えることは売れ残りの山を築くことになる。このようにアメリ
カの繊維産業はメーカーも小売業も売れない場合は大きなリスクを背負う体質
になっており,この状況から脱却することが強く望まれていた。
このような状況下で, ミリケン・テキスタイノレ社のロジャー・ミリケン会長
の提唱により,アパレノレメーカー,百貨庖,量販底,デ、イスカウントストアが
一体となって,これまでの大量生産されたものを単に売れば良いという単純量
産劃経営から消費者の欲しがる商品を迅速に把握して短いサイクルで市場に提
供できるようにするという市場対応型の産業構造に転換させていかなげればな
Q
u
i
c
kR
e
s
p
o
n
s
e
)である。
らないという経営思想が生まれた。これが QR(
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
6
7
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
-167
ー
アメリカのコンサノレテイング会社のデトロイト&トシュ社の定義によれば,
fTheR
i
g
h
tGoods (適切な品を), Att
h
eR
i
g
h
tP
l
a
c
e (適切な場所に), At
h
eR
i
g
h
tP
r
i
c
e (適正な価格で)供給する
t
h
eR
i
g
h
tTime (適切な時に), Att
ためのビジネス戦略とテクノロジーの結合」とされていることからもわかるよ
うに,まさにその本質はトヨタのジャストインタイムの思想に学んだともいわ
れている。なお,その目的は市場に即応して商品回転率を高めて製造から販売
までの全段階の各種商品ロスの削減と在庫削減を徹底することで迅速な対応と
それに伴う売上と利益の増加をもたらすことにあった。
QRがアメリカの繊維産業および小売業界に全面的に採用されればその導入
効果は絶大であり,糸の製作から始まって製品が庖頭に並ぶまでの時間が 3分
の lに短縮される結果,これまで在庫処分のために行わざるを得なかった値下
げと商品がないための販売機会損失とによる逸失利益が半減するという調査会
社の試算予測も出ているほどで,じつにその効果は大きいものである。
さて, QRシステムの開発自体はアメリカの VICS委員会 (
Vo
l
u
n
t
a
r
yI
n
t
e
r
-
i
n
d
u
s
t
r
yCommunI
ca
t
i
o
nS
t
a
n
d
a
r
d
sCommittee)という任意の民間標準化グ
J
レープが
QRを具体的に実現するために 1
9
8
6年から 1
9
8
8年にかけて行い, 4
つの標準化が行われた。 1つは,日本の JANコードに相当する UPC(
U
n
i
v
e
r
s
a
l
P
r
o
d
u
c
tC
o
d
e
)コードで業界全体で単品管理を行うためのものである。 2つめ
は,サイズや色のバラエティに対応しなければならないという衣料品の性質に
PLU)
対応して, 4レベル PLUという価格検索機能のプライスルックアップ (
の仕組みを利用して価格を表示するようにするもの。 3つめは,バーコードの
SCMラベノレを開発し, ASNと組み合わせての検品を簡単かっ効率的に行える
(4) UPC(
U
n
i
v
e
r
s
a
lP
r
o
d
u
c
tC
o
d
e
):1973年に米国で制定された共通商品コードシンボ
2桁と 8桁があり, EAN
ルのことであり,米国,カナダで使用されている。コード体系は 1
シンボルの原形でもある。
(
5) PLU:P
r
i
c
eL
o
o
kUPの略であり,価格検索を意味する。 POSターミナ Jレにより売り
上げを登録する際に商品に付いているバーコードシンボ 1レ等から商品コードを読み込
み,そのコードによってあらかじめシステムに登録しである価格を検索して金額登録を
行う方法をいう。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-168-
1
6
8
香川大学経済論叢
ようにするもの。
4つめは,発注, ASN,請求,支払,さらには POS売上情報
などの必要な情報の伝送する仕組みを作り上げるために EDI標準メッセージ
を開発することである。
このような標準化が進んだ結果,アパレルメーカーと小売業との聞で UPC
ソースマーキングと商品情報,それから
POSデータが交換されることで,市場
動向の変化に迅速に対応する生産・供給体制が定着し,大きなコスト削減が達
成されている。
3
.
.
3
.
.
2 日本における QRの発展
QRであるが, 1
9
9
3年度の予備的研究を経て通産省の全
面的な支援のもとに QRの推進に欠かせない情報ネットワーク化の基盤整備事
さて,日本における
ii
業が進められてきた。その結果,アメリカの
デノレに日本の
QRを推進した VICS委員会をモ
QRを推進する民間組織である繊維産業流通構造改革推進協議会
(QR推進協議会,現在は中小企業総合事業団)のもと約 3
5
0社の企業・団体が
参加するまでになっている(図表 3- 4)。
日本における
QRの導入事例としては,北海道の丸井今井があげられる。標
メメメ
カカカ
QRコードセンタ
織原染
‘-
EDI
取引
発注"納品"支払
布糸色
ーー+
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
6
9
-169
ー
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
準化の動きに目をつけた結果, JANコードを導入して EDIFACTによる E
DI
標準メッセージを採用して運営している。売場ではベンダーが主導的に在庫を
管理する VMI(
V
e
n
d
e
rManagedI
n
v
e
n
t
o
r
y
)を導入して小売業側の発注作業
をなくしたことによってその効果は省力化と返品の激減という形で表れてい
る
。
また,オンワード樫山は QRに取り組んだことで,実際の庖頭の動きを見な
がら生産量を増減するという対応ができるようになり,シーズン直前と期中生
産の割合を 7割まで上げることが可能になった。その結果,スピード経営のみ
ならず,在庫も 4割減と大幅に圧縮することに成功したのである。
このように, QRの実施による経営スピードの向上は,経営改善に与えるイン
パクトが甚だ大きい。これはまた,スピードを意識した QRの効果そのもので
ある。
3
.
.
4 消費者利益を最優先する ECR
.
4.
.
1 ECR誕生の背景
3.
衣料品を対象にしたシステム QRに対して加工食品や日用雑貨などのグロー
E
f
f
i
c
i
e
n
tConsumerR
e
s
p
o
n
s
e
)である。
サリーを対象にしたシステムが ECR(
ECRが生まれた背景には全米一の小売業であれかつ優等生 であったウォル
l
マートの存在が大きく影響している。アメリカの小売業は経済の成熟化と消費
者の収入の停滞に伴う低価格指向が強くなったことにより,商品の販売価格が
低下し,それに伴って売上げと組利が年々低下する傾向にあった。その結果,
商品在庫は増大する。商品在庫は長く置けばおくほど保管費用がかかり,利益
を圧迫するようになる。とりわけ規模の大きなウォノレマートにとっては経営に
与える影響は大きかった。利益を増やすには長期在庫をなくし商品回転率を高
めることが要求されたわけである。
DIFACT:E
l
e
c
t
r
o
n
i
cD
a
t
aI
n
t
e
r
c
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g
eF
o
rA
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s
t
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t
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,C
o
m
m
e
r
c
ea
n
d
(6
) E
T
r
a
n
s
p
o
r
tの 略 で , ア メ リ カ や ヨ ー ロ ツ パ が 国 際 的 な 標 準 化 を 検 討 し て き た E
D
Iが
EDIFACTという名称で国際標準のビジネスプロトコルの体系として規定されたもの。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
170
ー
香川大学経済論叢
1
7
0
そこでウォルマートは,機会損失となる品切れを発生させずに手持在庫を徹
底的に削減しようとした。しかし,小売業一社では自ずと限界があるため,製
造から物流,小売に至る全プロセスで連携して在庫削減を図り,商品回転率を
高めることで売上げの増加と利益の増加をもたらそうとしたのである。そこで
ウォルマートは P&G(プロクターアンドギ、ャンブノレ)社からウォルマート専
用にあてがわれた一工場に EDIで自社の POSデータや在庫情報を送り, P &
G はその情報によって生産から納品までコンビュータシステムで一貫して管理
できる体制を構築した。これにより生産効率を高め,大幅なコストダ、ウンを実
現したのである。この結果,ウォ lレマートは商品回転力の早さと販売価格の弾
力性で競争力を強めていった。ウォノレマートと P & G社が EDIを活用してそ
の提携が成功したことがグローサリー業界を刺激して ECRが誕生するきっか
けになったのである。
グローサリー業界が POSや EDIを活用しはじめたのは実際には衣料業界よ
りも早かったが,小売業の合理化の範囲から抜け出れていなかった。しかし,
QRがさらに上をいく製造から小売までのトータルな効率化とそれに伴うス
ピードアップをもたらし,結果としてコストダウンを達成したことに大きく影
響を受けて誕生したのである。まさにグローサリー業界版の QRである。
3.
.
4.
.
2 ECR推進の基本指針
FMI (Food Marketing I
n
s
t
i
t
u
t
e
)が出版している W
E
f
f
i
c
i
e
n
t Consumer
Response~ によれば,
'ECRの指針となる原則」は図表 3-5のようになる。
基本的にこの ECRの原則は QRの思想と共通のものであり,その真髄は,適
切な商品を,適切な場所に,適切な時に,適切な量だけ,可能な限り効率的な
方法で提供する」ことである。また,その具体的な実現は, POSデータの分析
と単品別カテゴリーマネジメントによる棚管理に代表される「庖舗での効率的
な品揃え J,過去の POSデータの分析から単品ごとに精度の高い需要予測を行
い効率的に補充量を決定して納品する補充予測システムと効率的な物流システ
J,POSデータ分析とカテゴリーマネジメントを
ムからなる「効率的な商品補充;
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
7
1
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
-171-
図表 3 - E C Rの指針となる原則
消費者の望む商品を品揃えし,品切れを生じさせずに消費者の望む価格で提供し,
同時に経営コストの削減を図る。
2 :ともすれば利害の対立する取引関係を改めて,小売業と商品供給企業の双方が事
業提携を行って,双方が上げるしくみ作りに,双方の経営者が取り組むべきもの
である。
3 :第 l項,第 2項を具体化するテクノロジーとして EDIを導入する。
4 :製造,物流,販売に至るまでの全体的な効率化を図る必要がある。
5 :小売業と商品供給企業が共同でシステム全体の効率化を図ることにより生じた利
益は,双方が公平に分配しなければならない。
出典概説
流通情報システム化』の '
E
f
f
i
c
i
e
n
tConsum
巴rR
e
s
p
o
n
s
e
J の記述より抜
粋して引用
軸に商品サプライヤーと小売業とが一体で行う「効果的な販売戦略 J,商談から
新商品の発注までのリードタイムの短縮,数多く出回る新製品の中から売れる
新商品の早期発見,新製品の販売動向の分析と効率的な生産,商品供給からな
る「効果的な新製品の導入 J,をうまく組み合わせて活用することである。
3.5 SCMがもたらすスピード経営
3
.
.
5
.
.
1 SCM (サプライチェーンマネジメント)の戦略的意義
サプライチェーンとは,原材料調達,供給から最終顧客への商品の納入まで
の一連のビジネスプロセスのことをいう。顧客の価値の創造にむけて,流通企
業,物流企業,製品製造メーカー,部品製造メーカ一等が鎖のようにつながっ
ていることをいう(図表 3- 6)。そのチェーンの中の各企業が連携して無駄の
ない効率的なビジネスプロセスを作り上げることが最終的に顧客の価値を生む
ことにつながる。そこで,サプライチェーンの活動を全体的に統合し,経営戦
略と連動させて,かつシステム的に構築し,そして管理することをサプライ
チェーンマネジメントと呼ぶ。すなわち,これまでの部門間・組織聞における
最適化,企業聞における問題を個々のレベルで解決するのではなく,チェーン
全体のインテグレーションと対等な関係からなるパ、ートナーシップによって,
全体最適の視点、から解決,改革するという考え方である。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
172-
1
7
2
香川大学経済論叢
図表 3- 6 サ プ ラ イ チ ェ ー ン に よ る 供 給 連 鎖 の 変 化
SCM以前
→日→日
一
一
円
﹀
※情報の一方通行状態で各活動が切れている状態
SCM以後
二二三〉
f
宵判長
〈ご二二
情報
※※各活動が情報を共有して鎖のようにつながっている状態
3
.
.
5
.
.
2 QRゃ ECRからの発展
前述した QRや ECRは主に小売業,卸売業,製品メ ーカーの三者における製
t
販一体化戦略の展開であるのに対して, SCM (
S
u
p
p
l
yC
h
a
i
nManagement:
サプライチェーンマネジメント)は,製品メーカーに部品を供給する部品サプ
ライヤー,材料メーカーを,さらには小売業の先の消費者までをも対象として
いる。また, QRや ECRでは, EDIを使った商品の流れや在庫,取引データの
流れの共有化が中心であったのに対して, SCMでは商品,情報,資金の流れを
共有化し,最高の効率化を追求する。情報面では消費者と直結することで消費
者の購買履歴,趣味傾向などの消費者情報を分析し,それに迅速に対応するこ
とを可能にする。
アメリカの繊維業界では QRの次の段階として産学官の力を結集し,実需対
応生産システム DAMAの推進を図り,また食品業界ではミシガン州立大学が
中心に取りまとめたサプライチェーン 2
0
0
5という構想、があり,これにより販売
のリードタイムで約 90%,事務コストで約 50%,在庫で約 90%も削減できるよ
うになるという。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
7
3
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
178
ー
このように流通からスタートした QR/ECRは生産側のアプローチと連携し
サプライチェーンマネジメントによる経営イノベーションが業界あげての大き
な潮流になろうとしている。
3
.
.
53 競争戦略を捉えた SCMの必要性
れ
サプライチェーンマネジメント SCMはデ lレ・コンビュータに代表されるよ
うにアメリカ企業において成功事例が多く見られ,現在の最も有効な白ビジネス
プラクティスとして取り上げられている。いま,これが注目されている背景に
は,企業活動のグローパノレ化が進展し,企業間競争が一一段と激化していること,
顧客ニーズが多様化して顧客の満足を得られなければビジネスにならないとい
う状況になってきたことがあげられる。これは前述した QRや ECRが登場し
た背景と同様である。たとえ競争力のあると思われる製品であってもその投資
してきた開発資金を回収する間もなく,ライバル企業から同様に製品が市場に
投入されることが多いためその陳腐化が早くなってきている。かつてのように
技術的優位性だけでビジネスを構築できる時代ではなくなってきた。ハイテク
製品といえどもその寿命が益々短縮化の傾向にあり,多くの商品分野で生鮮食
品化現象が起こっている。すなわち,需要が好調な,いわゆる匂のときに売れ
残りが発生しないようにさっと売り切ってしまう迅速さと,またそれが行える
ビジネス感覚が求められるようになってきている。
上述のことが市場の動向に合わせてタイミングよく実施できないと在庫の山
を築き,さらには死蔵品を大量に発生させることになり収益に与える影響が大
きい。したがって,市場の動向を的確に判断し,それに対して最大のスピード
をもってビジネスプロセスを成し遂げる必要がある。
しかし,企業聞の取引においては手続きの違いや作業の重複などインタ
フェースの違いからくる無駄が数多く存在している。部分的な効率を追求して
もどこかにボトルネックとなる箇所,部門,組織があれば当然のごとく全体の
効率は下がることになる。したがって,サプライチェーンに参加する企業が全
体の効率化をめざして企業聞の連携を行わないかぎり全体効率の改善は望めな
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-174
ー
香川大学経済論議
A
1
7
4
い。これが SCMが注目を浴びている由縁である。これを理論的に解説している
T
h
e
o
r
yOfC
o
n
s
t
r
a
i
n
t
s:制約の理論)であり,これが SCMの根
のが TOC (
底をなす理論ともなっている。
3
.
.
5
.
.
4 SCMの基礎理論としての TOC
TOC(
T
h
e
o
r
yOfC
o
n
s
t
r
a
i
n
t::制約の理論)はイスラエノレ人のゴールドラッ
ト博士が考案した理論である。特にサプライチェーンの中でもチェーン管理の
生産計画やスケジューリングとその改善に関する理論である。サプライチェー
ンの生産計画の立案には生産ライン数,工程数,生産機械の能力と台数,作業
人員数等のさまざまな条件が介在する。実際には生産ラインの混流や生産品目
数などによって最適な解を求めるのはなかなか難しい。そこで,一連の工程の
中で全体の生産量を決定づけるボトルネックとなっている工程を見つけ,この
工程をフノレ稼動できるように生産計画を立案するようにすることである。すな
わち,制約条件を発見してその問題を集中的に改善・強化することでスループッ
トの増大,在庫の削減,固定費の低減を達成して結果として利益を増大させよ
うとするものである。
たとえば,ボトルネックとなっている工程の前工程に仕掛り在庫をある一定
数量確保すると,前工程がトラブノレで生産量が落ちてもボトルネック工程がス
トップしないで済むことになり,結果として全体の生産量は落ちることはない。
ボトルネック以外の工程ではボトルネックの工程スピードに合わせて生産すれ
ば良いので過剰の仕掛り在庫を持つリスクをなくすことができる。また,ボト
ルネックの後工程でトラブノレが発生した場合のリスク対処法としては出荷用の
在庫を最低限所有しておくことで顧客への納期遅れを回避できることになるわ
けである。
3
.
.
5
.
.
5 サプライチェーン効率向上の基本方向
サプライチェーン全体の効率を高めるためには,いくつかの重要な課題があ
る
。 1つには連続するサプライチェーン活動の同期化を図れそれによるスルー
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
7
5
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
プットを向上させること
-175
ー
2つめはサプライチェーンのボトルネックとなって
いる箇所の発見とその対策を行うこと
3つめは市場の需要を正確に予測する
手法を取り入れ,それに基づ、いて迅速かつ柔軟に対応できるようにすること,
そして最後にサプライチェーン全体の能力を平準化することである。これらを
実践することにより全体効率は高まることになるが,実際にはサプライチェー
ンをどのように構築するかは自社の戦略に依存し,それに伴い重点の置き方が
変わってくる。戦略的には具体的に以下のような分類がされる。
①
競争力のある業態をめざす戦略
② 顧客満足の向上をめざす戦略
③
全体の最適化による生産性向上をめざす戦略
これらのうちのどの戦略でいくかによってサプライチェーンのデザインは自
ずと異なってくる。いずれにしても第 1に競争力のあるサプライチェーンを企
画し,そのサプライチェーンのうち,自社のコアコンビタンスなどの自社で担
当すべきものと自社では担当しないでアウトソーシングしでもよいものとを分
け,アウトソーシングする場合の任せるべき企業の最適な選択を行う。その上
で調達拠点,生産拠点,物流拠点,配送経路などの物理的なサプライチェーン
の最適なデザ、インを行う。さらに各製品ごとにいくつかのタイプに分類し,そ
れぞれ最適なサプライチェーンの組み合わせを決定する。そしてこれらを効率
的に運用するための情報システムのデザインを行う。以上がサプライチェーン
のデザインに先立って行うべき留意点である。
3
.
.
5
.
.
6 SCMの実践事例
松下電器産業は,-市場と呼吸できる関係を築く」狙いでクツレープを挙げて
SCMに取り組んでいる。目標は受注から納品までのリードタイムの半減であ
る。松下電器の主力商品は AVゃ家電製品である。これらは需要の変化が激し
くなってきており,タイムリーに商品を市場に投入することが課題になってい
る。しかし,製造や納品のリードタイムが長いと需要を捉え切れずに欠品が発
生したり,逆に大量の在庫を抱える危険性が増加することになる。この状況を
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-176
ー
香川大学経済論叢
1
7
6
回避し, 2
1世紀においても日本をリードし続けるメーカーであり続けることを
めざしているのである。具体的には,開発段階から量産ラインでの作業を容易
にするために複数の部品を lつにまとめてモジコール化,部品の共有率を大幅
に改善して管理費の削減と同時にリードタイムの短縮,需要予測データの共有
による長期需要の把握,受注データから生産計画と部品の発注書を半自動作成
するシステムの開発による作業効率の改善などがあげられる。これらの実施に
より,受注から納品までのリードタイムを半減させようとしているのである。
以上のように, SCMは生産工程の制約条件に着目し,その改善の重点を絞り
込むと同時に前後工程のトラブノレというリスクに対処しておくことで経営成果
に結び付けようとする取り組みであり,またサプライチェーンという縦のネッ
トワークを効率化ずることで経営のスピード向上を図ろうとする取り組みでも
ある。
36 CALSによる情報交換と情報共有
3
.
.
6
.
.
1 EDIと CALSの関係
EDIがビジネス情報の伝達においてペーパーレス化とデータの再活用にあ
るが, CALSもビジネスプロセスとデータの統一を狙うところから両者の基本
概念はきわめて類似している。 EDIは CALSによる新しいビジネスプロセス形
成のための主要な技術の一つでもある。
CALSはもともとアメリカ国防省の兵枯における組織内標準として定めら
れたことにその起源がある。当初は C
omputerAidedL
o
g
i
s
t
i
cS
u
p
p
o
r
tとして
活動を開始したものであった。その後,単なる兵姑としての後方支援だけでな
く資材調達の領域にまで拡大して適用されるようになったことから,その呼び
o
m
p
u
t
e
r
a
i
d
e
dA
c
q
u
i
s
i
t
i
o
nandL
o
g
i
s
t
i
cS
u
p
p
o
r
tの意味で使わ
名 CALSも C
o
n
t
i
n
u
o
u
sA
c
q
u
i
s
i
t
i
o
n and
れるようになり,さらにその範囲はを拡大して C
L
i
f
e
c
y
c
l
eS
u
p
p
o
r
t,すなわち継続的な調達と製品の全ライフサイクルの支援
を行うものへとその意味するところを広げた。現在では電子商取引時代を反映
して, Commercea
tL
i
g
h
tSpeed
,光のスピードで商取引を可能とするもの,
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
7
7
-17
7
ー
ネットワ!ーク活用によるスピード経営の戦略展開
すなわち EC(
E
l
e
c
t
r
o
n
i
cCommerce:,電子商取号1)をも意識したものへと発展
した(図表 3- 7)。したがって, CALSは経営を迅速に行うニとをめざすもの
として捉えられる。
CALSの本質は情報ネットワークをフルに活用して設計・開発・調達・生産・
運用管理・保守におけるすべての企業内および企業聞の活動を効率的かつ高付
加価値化しようとする取り組みである。したがって,前節で述べてきた QR
,
ECRが繊維産業,食料品・加工食品産業におけるものであるのに対して, CALS
h
図表 3- 7 CALS方向性
子J
二
三
/¥¥EDI
ライフサイクル
サポート
CAD/CAM
ペーパーレス化
企業間情報管理
技術
CIM
t
情報管理
│ │
(
デジタル化
J[
標準
J[ォ 一 川
)
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
178-
1
7
8
香川大学経済論議
は製造業系であるがもちろんその考え方は多くの部分でオーバーラップしてい
る
。
E
D
Iが文字情報を中心に主に開発済みの商品について定型的な取引を行う
ALSは文字情報に加えて画像情報なども含めた定型・非定型の
のに対して, C
さまざまな情報を自由に交換できるようにしたものである。そのことから
CALSは E
D
Iの発展系ともいわれている。具体的には技術系データを電子デー
) を確立し, E
D
Iなどの基盤の
タ交換するためにデータ標準規格(図表 3-8
上で活用するものであり,コンカレントエンジニアリングや CIM(統合情報生
図表 3- 8 CALS標準規格
名称
対
象
内
廿
,望~
規格名
ttR
制a
pt42昔FP考島E56a
耐a
B
4
3GML
数値・文章(テキスト)
格
文
認
を
識
認
章
票
識
を
細
を
分
つ
化
け
全
し
体
,各
文
の
構
書
々
規
造
に
ISO規格
するための
MIL-M-28001
CGM
一般的な図やイラスト
一般に使用されグ る図やイ
ラストなどの ラフ交ィ換
ッ I30規格
ク・データの蓄積・
のための規格
MIL-M-28003
IGES
CADデータ
3TEP
設計・製造デ}タ全般
C
C
I
T
TG
r
o
u
p4 図形のラスター・データ
CAD/CAMな ど の コ ン
ピュー規タ図
格形を交換する
ための
ANSIL(アメ リカ規る将方格来向
協
は
会
ST
)MI-D-28000
EPに吸収され
の
I
の
G蓄
用
E
グS
積
,
ラ
構
の
交
フ
成
デ
換
ィ
,
ー
構
の
ッ
タ
造
た
ク
を
解
め
・含
析
の
デめ
な
,ど 一部 I30規格
使
ータ
蓄積交
規格
率
縮
図
形
技
的
術
交
の
換
の
ラ
規
ス
を
可
格
タ能ー情と報すのる
圧
効
説F
t
B
暗号2
2
概与
ITU(国
R際
2
8
電
0
0
気
2通信連合)
MIL-
o
MPEGl,即日 2 動画
会
S議
O が
E推
C
(
進
国際電子通信
M象
PEG2はハイビジョ I
対
ン TV・デジタル VTR
等の対象
JPEG
静止画の圧縮規格
I30,IEC
G 71X,G 72X 音声
音声データの圧縮規格
ITU
MHEG
データの統合化構造を決
定するもの
I30,IEC
静止画
念
司
お
bぷ仁3
斗
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
1
7
9
179
産システム),そしてライフサイクルサポートなどからなるものである。
3
.
.
62 コンカレント・エンジニアリング (
C
o
n
c
u
r
r
e
n
tE
n
g
i
n
e
e
r
i
n
g
)の導入
コンカレント・エンジニアリングは,同時進行的に設計を行う方式であり,
従来のような各部門の分業体制の枠を引きずらないこと,製品を生産するとい
う最終目標に対して最適な生産体制を柔軟に構築していく方式である。具体的
には,各工程をネットワークで結び,共有のデータベースを構築し,各工程が
それぞれ他工程の進捗状況を把握しながら協調的にかつ同時進行的に設計作業
を進めていこうとする取り組みである。したがって,設計のプロセスを合理化
し,より高付加価値を実現させる働きを持つと同時にスピードの向上を図るも
のである。具体的には,データの一元管理と各工程におけるデータの共有化と
活用および、各工程の作業結果や他工程への要求の迅速な伝達の実施によって,
前工程が後工程の変更によって受ける影響の削減,一連の流れのスムーズ化に
よる設計作業の効率化,企業問にまたがる設計コラボレーション作業のスムー
ズ化を達成することが可能になる。
コンカレント・エンジニアリングという考え方は, CALSの概念が登場する
前から存在し実際に実行されていたが一般的ではなかった。しかし,昨今のネッ
トワーク技術の進展とその普及により,コンカレントエンジニアリングをより
実現しやすい環境が揃ってきたといえる。
3
.
.
63 CIM(
C
o
m
p
u
t
e
rI
n
t
e
g
r
a
t
e
dM
a
n
u
f
a
c
t
u
r
i
n
g
)への取り組み
れ
CIMは統合生産情報システムと訳され,販売,開発,設計,生産,物流まで
を有機的に統合化したものである。その目的は生産活動全体を合理化するだけ
ではなく,市場ニーズに敏感に対応できるように多品種少量生産体制を確立し,
顧客のニーズに迅速に対応することで販売力を高めることにある。モノと情報
の流れを一致させて自律機能のあるフレキシブノレな生産体質を作り上げること
であり,迅速な対応という経営戦略を可能にするシステムであると言い換える
こともできる(図表 3- 9)。具体的には,
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1&
ト
1
8
0
香川大学経済論叢
図表 3- 9 CIM:経営戦略を中核としたコンビュータネットワークによる統合化
/1i
瓦ー¥、、¥
(研究開発、工程設計)
「マーケ yトインJ
の設計
タイムリーな製品開発
生産リードタイム短縮
生産の柔軟性向上
クレーム処理の迅速化
/
経営戦略
(経営、財務、人事)
J¥
経営の有効性
有効性と能力の向上)
/ノ¥一一一一
生産
(生産管理、プラントオベレーシヨン)
顧客サービスの向上
納入リードタイム短縮
在庫削減
¥ー
市場応;需型生産
(変種変遺)
(出典:経営システム技術研究会編 rCIM経営高度化のために」日刊工業新聞社)
①
生産リードタイムの短縮と納入リードタイムの短縮
②
多品種少量,短サイクル生産による生産の柔軟化
③
クレーム対応の迅速化
④
製品在庫・仕掛在庫の削減
⑤
市場の変化に俊敏に対応できる開発スピードの向上
⑥競争力の向上
をもたらすことによって経営全般の効率化と迅速な対応を可能にしたものであ
る
。
また, CIMの垂直方向の階層レベルは ISOTC1
84/SC5によれば,①装置管
理,②ステーション管理,③セ 1レ管理,④エリア管理,⑤工場管理,⑥経営管
理の 6レベルからなる(図表 310)。
なお,このような CIMを構築するためには,ネットワーク技術,データベー
ス技術,設備の自動化技術の要素技術が求められる。
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
8
1
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
181
図表 3ー 1
0 CIM階層レベル
レ
ベ
ル
階層
制御機器
機
自E
計測・管理・制御サイ
ク
ノ
レ
6 経営管理
ホストコンピュータ 利
益
営
計
計
画
画 投
開
発
資
計
計
画
画
(あるいは全社レベル 経
コンピュータ)
販売予定,物流計画
5 工場管理
汎用コンピュータ
4 エリア管理
FAコンピュータ
工程管組理検,工査程,管理(加 管理サイクルは数日か
工,流 立
包装), ら数週間
物管理
3 セル管理
セルコントローラ
D
制
搬N
御
送C
制
,
制
組
御御
立,
加 工 セ ル 制御サイクルは数時間
セル制御,
から数日
2
謹盟翠:輔
,
生産
,人事管理,品質
位
計画は数ヶ月から年単
計画は数週間から数ケ
月
N,
C
流
制
制
自
御
動
御,試自験動機倉制庫御,
制 制御サイクルは数秒か
物
ス7
-ション管理 PC,CNCコントロー Jレ 御
ら数時間
l 装置管理
ロボット
N
流
機
機
J工
器
器
作機
媛
白
械
送
働
ロ
組
,
機
ポ
樺
立
自
ッ
機
動
,
ト
検
物
器
,夜
タイムサイク lレは数秒、
から数分
3
.
.
6
.
.
4 CALSの現実
CALSは上述したようにコンカレントエンジニアリング, CIMといったもの
を実施しながら情報をリアルタイムに伝達し,しかもその情報を関係者が共有
することによりアジルすなわち迅速な生産を可能とするものである。設計と生
産を統合し,調達と生産を統合し,さらに販売と生産を統合することでリード
タイムの短縮を図ろうとするものである。
製品は新規に設計されたあと,部品・材料が調達され,生産され,さらには
マニュアルが作成されて教育が行われる。そして運用され,メンテナンスのた
めの部品や消耗品が供給され,また実際にメンテナンスされ,後に製品の設計
変更やパージョンナップが行われ,最後に廃棄される。この一連のライフサイ
クルを通じて的確かつ迅速にサポートを行うことが消費者満足を生み,それが
また次の購買アクションにつなげるために, CALSは製品のライフサイクルを
的確にサポートできる体制を構築して継続的な調達と全ライフサイクルの支援
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-182
ー
香川大学経済論叢
1
8
2
を行うものである。
CALSは,もともとはアメリカ箪の資材調達システムとして開発がなされて
きたものであり,軍需メーカーとの聞でさまざまなドキュメントを電子的に統
ーした方式で作成するところから始まったものである。すなわち,大型のプロ
ジェクトで国のプロジェクトのように多くの企業が参加すると同時に膨大なド
キュメントが発生するのでその後の混乱を防ぐ必要があることから,標準に準
拠した電子ファイルによる納入とその電子的な検索を可能にする方法が求めら
れていたことによる。したがって,多くの分野ですべてのドキュメントを電子
化するには難しい側面が多く, CALSという形では現在は大規模プロジェクト
で,多数の企業が参加する鉄鋼,造船,建築といった産業で採用されるに留まっ
ている。しかし,その基本的な思想、は BtoBの ECの世界で拡張された EDIな
どの形で多くの企業が実践しつつある。
3
.
.
7 企業聞の連携に不可欠な先進情報技術
3
.
.
7
.
.
1 Web-EDI
企業聞の受発注データ等の情報交換に利用されている EDIであるが,扱う
データのフォーマットが厳密に決められてシステム化しやすいというメリット
がある反面,専用のソフトや専用ネットワークを必要とするため,利用のため
のコスト負担が大きくこれまでそのユーザーは大企業が中心であった。 Web
-EDIは,この問題を解決するために Web技術を利用することでコスト低減を
実現したものである。インターネットを介して行うので専用のネットワークは
不要であるため,中小企業などの比較的少量の受発注もこれにより簡単に,か
っ低コストで EDIによる取引を可能にしたものである。 Web-EDIは対話型で
行えるという簡便性と文字情報に加えて画像情報も扱うことができるので,企
業聞のコミュニケーションの迅速化が図れる。特に,画像を利用した電子商談
などの商取引の周辺業務の合理化を推進し,取引先との情報共有による効率化
と高度化の実現に対する期待は大きい。
これが実現すると,商談において r
商品情報の登録→商品案内→見積依頼→
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
8
3
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
-183-
見積作成→取引承認→商品マスター登録」という一連の流れが Web-EDIで可
能になるので,業務のスピード向上への寄与度は高い。
37
.
.
2 VPN (
V
i
r
t
u
a
lP
r
i
v
a
t
eNetwork::仮想的専用ネットワーク)
“
インターネットの普及に伴い
1企業の本社
支社間などのような事業所聞
を結ぶ、ネットワークを構築する場合に,専用線を用いて行うよりもインター
ネットを利用した方が安価に構築できるようになった。また,企業間で情報交
換する場合もインターネットを利用した方が効率的である。しかし,インター
ネットはもともとオープンなネットワーク環境であるためセキュリティレベル
は低く,そのための対策を行わなければ企業の重要な情報をやりとりすること
は危険である。
そこで,専用線のように物理的なものではなしあくまでサービスプロパイ
ダーの専用線を他の組織と共通に利用するが論理的には区切られている環境を
提供し,専用線感覚で使えるようにしたネットワークのことをいう。データは
暗号化技術で保護した形で送信する。
3
.
.
7
.
.
3 OBN(
O
p
e
nB
u
s
i
n
e
s
sNetwork)
流通業をはじめ各産業の要望により,制流通システム開発センターが中心に
なって開発したセキュリティの高いビジネス専用の TCPjIPネットワークで
ある。インターネットをビジネス用のデータ交換に利用するにはデータの盗聴,
改ざん,ハッカーからの攻撃など通信上の安全を確保する上で課題が多いこと,
通信帯域や通信速度に対する保証がないこと,データ交換時の転送データの正
確性が保証されないことなどの問題点があり,このようなネットワークに対す
る要望が強かったことによる。
OBNの特徴は,以下のようになる。
① 論理的に自社専用システムとして切ゆ出して使用できるが,物理的な回
線は共同で利用する I
Pネットワークシステム
②
サービス提供会社による通信帯域,通信速度,信頼性,障害対応などの
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
184-
香川大学経済論叢
1
8
4
ネットワーク信頼性の確保
③
OBNアーキテクチャを採用する VAN会社間で相互接続性の確保
④
セキュリティのための新規設備投資が不要
⑤専門家が不在でも比較的簡単に自社 I
Pネットワークとして導入が可能
なプラグ&プレイビジネスネットワーク
⑥ 各企業のユーザーが使用している設定済みローカルアドレスを変更する
ことなく OBNに移行可能
原則オープンな OBN仕様
⑦
374 XML(
e
X
t
e
n
s
i
b
l
eMarkupL
a
n
g
u
a
g
e
)
わ
叶
企業情報システムの新しい共通言語として今,大きな注目を集めている。
XMLを簡単にいえば,
wwwの 世 界 で 標 準 的 に 使 用 さ れ て い る HTML
(
H
y
p
e
r
-T
e
x
tMarkupL
a
n
g
u
a
g
e
)とSGML(
S
t
a
n
d
a
r
dG
e
n
e
r
a
l
i
z
e
dMarkup
L
a
n
g
u
a
g
e
)の利点を組み合わせた言語である。記述方法はく>の中のタグを用
いるが,
HTMLが文書の表示形式とするのに対して XMLでは文書の構造や意
味を表示するために使用する。これにより,データベースへの格納形式やデー
タの交換形式などをプラットフォームに依存せずに定義できる。これにより,
従来のデータベースアプリケーションや EDIに比べて簡単にシステムを構築
できるようになる。また,
DTD (
D
o
c
u
m
e
n
tTypeD
e
f
i
n
i
t
i
o
n:文書定義)に
よって,文書の構造やデータ型などの属性を新たに定義することが可能である
ため,その定義次第でさまざまな用途に拡張できる言語である。
oBECの分野であ
最も大きく期待されている利用領域は,企業間商取引 Bt
る。あらかじめ企業問で DTDを定義しておくことによって,受発注情報を
XMLで記述することでインターネット上で交換するデータをシステムで直接
処理できるようになる。他にも電子カタログの価格改定作業の一括処理,複数
企業間で共有する商品マスターの自動更新,
SGMLから XMLに変えることで
文書管理コストの削減,文書の構造化による短時間文書検索とナレッジマネジ
P
e
r
s
o
n
a
lD
i
g
i
t
a
lA
s
s
i
s
t
a
n
t::携帯端末)へ
メントへの活用,携帯電話・ PDA(
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
8
5
-185
ネットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
の取り組みもなされており,今後の企業システムおよび企業間システムを大き
く変える可能性を有しており,その対応が経営スピードの向上にも大きく影響
を与える可能性を秘めている技術である(図表 311)。
図表 3ー 1
1 XMLの 活 用 領 域
ビジネスプロセス
イノベーンヨン
サプライチェーン
マネジメント
営業支援
顧客サービス
4.スピード経営時代をリードする先進的動向
これまで縦の流れを中心にスピード経営について述べてきた。スピード経営
に情報技術なくしては成り立たない。その情報技術を生み出す情報産業は自ら
スピード経営を実践することを通してトレンドを創り出している。この章では
その情報産業の動向を知るとともに情報を積極的に有効活用して成功している
事例を紹介し,今後のスピード経営のあり方を探っていく。
4、1 情報産業における経営形態の変化と今後の方向性
情報産業における大きな波は約 2
0年の周期で起きている。 1
9
6
0年代に I
Cを
6
0シリーズの登場からその後継 3
7
0シリーズへつながってい
採用した IBM3
9
8
0年代はオープンアーキテクチャーを採用
くメインフレームが主流の時代, 1
した IBM-PCに代表されるパソコンとマイクロソフトの OS
,その上で動く多
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
186
香川大学経済論叢
1
8
6
くのパソコン用ソフトの時代,さらに 2
0
0
0年の前後を境としてソフトウェアで
は無料の
o
sとして話題を呼んでいるLinuxに代表されるオープンソーシン
グという新たな波が,またハードでは J
a
v
aを採用した情報家電の登場などに
よる新たな波が押し寄せている。
これらを経営の観点、から考察してみると, IBM3
6
0・
3
7
0シリーズの時代は
企業の固い込みの時代,パソコンの時代は,高性能な CPUを次々と開発したイ
ンテルとそれに合わせて
o
sの高度化を図っていったマイクロソフトの両者に
in-Winと呼ばれる強者連合の時代,そして現在は広く参加を求
代表される W
める,また家電のように簡単につながるオープンネットワーク型の時代である
といえる。
昨今のオープンソーシングや情報家電の動きは, 1社が中心になって開発す
るというやり方ではなし積極的に技術をオープンにしてその開発に携わるエ
ンジニアを増やして完成度を上げていくという形で進められている。これは従
来のようなプラットフォームを占有してビジネスを行うのではなく,新しいプ
ラットフォームを迅速に構築し,その上で本来の顧客に対してどんなサービス,
アプリケーションで顧客満足を提供できるかということに視点が移っているこ
とを示す。これは,また今後の企業経営のあり方について 2つの方向性を示し
ている。
1つめは,ネットワーク型のコラボレーションの展開により,よりスピー
ディーにモノを開発していくことである。特にソフトウェアについてはその性
質上,ネットワークを介して仕事をすることが可能である。世界中には多くの
ソフトウェアエンジニアがおり,一社のソフトウェアエンジニアの何万倍もの
数に相当する。その世界中に分散しているエンジニアの高度な知識と時差を活
4時間の開発体制が構築できたとき,その開発スピードは計り知れない
用した 2
と思われる。
2つめは,オープンネットワーク型の経営は,事業に直接的に必要でない部
門の仕事は外部に,また事業に必要であってもその企業にとって付加価値の低
いもの,コアコンビタンスでないものであるならば積極的に外部に委託すると
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
1
8
7
キットワーク活用によるスピード経営の戦略展開
-187
-
いうビジネスモデルになる。したがっ‘て,アウトソーシング砕やノてーチャルコー
ポレーションの動きを加速することになる。またこれはソフトウェアの開発に
限定したことではなく,製造業を始めとする多様な業種で起こりつつある。
このような迅速なプラットフォームの形成とその上でのビジネス展開,そし
てネットワークを介した組織・個人も含めたネットワーク型コラボレーション
の運営がこのビジネスモデルが成功するための課題になる。
4
.
.
2 ネットワーク型コラボレーションの各種モデルと先進事例
ネットワーク型コラボレーションのモデルはその形態からアウトソーシング
型,コーディネート型,アライアンス型,コミュニティ型の 4つに分類するこ
とができる(図表 4-1)。
図表 4-1 ネットワーク型コラボレーションモデル
水平統合
アライアンス型
バーチャル
リアル
コーディヰート型
垂直統合
4
.
.
2
.
.
1 アウトソーシング型コラボレーションモデル
自社のビジネスのコアコンビタンスに資源を集中し,コアでないバウンダ
リーな領域を外部資源に依存するビジネスモデノレである。アウトソーシングと
いう形態はとるものの,戦略的な観点から行われるということと,ビジネスプ
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ロセスのプラグアビリティを意図的に強化しようとしているところにいわゆる
業務委託的アウトソーシングとの違いがある。自社の内外を問わずノウハウを
多面的に組み合わせて効率的なオペレーションを行うマルチソーシング,資本
関係などに縛られることなく自由に展開するオープンソーシング,一旦外部化
したノウハウを再度自社に付加価値として取り込むコ・ソーシングなどがある。
事例・デル・コンビュータ
デノレコンビュータは従来のディーラー網を利用した販売網に替えて受注生産
により直販するというビジネスモデルを作り上げた。消費者トのニーズを的確に
吸い上げ,生産分野に遅滞なく連動させるためにサプライチェーンマネジメン
トを実践し,受注から顧客に配送するまでのリードタイムの大幅な短縮を果た
すというスピード経営の実践によって高い業績を支えている。
IBM,コンパック,ヒューレツトパッカード等の先行したパソコンメーカー
が,従来型の自前主義のバリューチェーンにもとづいてその多くを自社開発し
ていたのに対し,デルは自ら一連のバリューチェーンを持つ代わりに,顧客へ
の付加価値を届けることにフォーカスした点が大きな特徴である。その結果,
他社のバリューチェーンの一部を必要に応じて利用するという自らは持たずし
て垂直に統合された現在のビジネスモデルを作り上げている。サプライヤーと
の関係においては,できるだけパートナーを少なくして密接な関係を構築する
一方で,密接な関係は固定的な関係に陥りやすいので,その時に必要な技術に
応じて変更できるような柔軟性をも併せ持っている。
このような方式が実際にうまく稼動している背景には,リアルタイムで必要
な情報を共有する環境が出来上がっていることがあげられる。これにより大幅
な納期のリードタイムの短縮と在庫回転率の大幅な向上が可能になっている。
そのため新型
CPUが登場すると,それをいち早く搭載したパソコンを市場に
迅速に投入することができる。
このように,デルのビジネスモデルは,従来の伝統的なバリューチェーンの
境界と役割を破壊し,より迅速な対応ができる仕組みを情報システムを有効活
用して構築している。そしてこのような情報システムに裏付けられたスピード
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経営が,高い顧客満足度を得ることにつながり,デルコンビュータの高い業績
を支えているのである。
4
.
.
2
.
.
2 コーディネート型コラボレーションモデル
組織と組織,組織と個人,あるいは個人と個人を有機的に結び,新たな付加
価値をプロデユースしていくことであり,そのためには複数の参加メンバーを
取りまとめていくコーディネート能力,テーマやビジネスの内容に応じて柔軟
織
j 化するプロデユース能力,そ
にネットワークの中から最適な企業を選出し*J3.
して質の高いものに仕上げていくための編集を行う、エディティング能力が求め
られるビジネスモデルである。自らはほとんど持たずして,他のリソースを一
つの目標に集中させるバーチャルコーポレーションを実践するビジネスモデル
でもある。
事例:ダイコク電機
パチンコ台のコントローノレ回路基板の製造を主とする製造メーカーであるダ
イコク電機は,外部にその製造を任せているファプレスメーカーである。パチ
ンコ台の製造時期はゴールデンウィーク,お盆,正月休みといった連休前のあ
る時期に台の入れ替えに伴う受注が集中するというパチンコ業界の特殊性か
ら,常に短納期が要求される状況にある。
そこでインターネット技術をもとにしたエクストラネットからなる協力企業
のためのプラットフォームを構築して短納期の生産に対応している。これは
WORKNETと呼ばれるもので,ダイコク電機がパチンコ台メーカーから仕事
を受注すると,あらかじめ登録しである約 4
0社 ほ ど の 協 力 工 場 に 対 し て
WORKNETのホームページ上に発注案件を公開するとともに通知する。この
発注案件の内容は製造すべき部品の仕様,数量,納期などである。協力工場は
I
Dとパスワードにより WWWサーバー上のホームページにアクセスし,掲載
情報を確認したうえで受注を希望する場合は,希望する工賃とともに受注希望
届けをホームページ上で入力することで応募手続きが完了する。複数の協力工
場が希望を出して競合した時には,ダイコク電機が総合的に判断して発注先を
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決定する仕組みになっている。特徴的なことは単に発注情報を公開して協力工
場を公募するというだけではなく,ホームページ上で製造方法をビデオで流す
仕組みを導入することで協力工場が自らの製造能力で対応できるかどうかを判
断して応募を決定できるようになっているなどの点もあげられる。短納期を要
求される仕事だけに納期遅れは相互に信用を落とすことにつながるので,技術
的,納期的に無理な仕事は請負わない。夕、イコク電機と協力工場との聞には発
注側と受注側という関係はあるが,両者聞には資本関係はなしあくまで対等
な立場で取引がされている。発注元と下請という従来型の縦の関係ではなし
お互いの独立した関係を維持し,ともに成長し発展していこうという共生の理
念のもとにパートナーとして協力関係を構築しているネットワークになってい
る
。
さて,ここで重要なことは完全にファプレス化を実践するのではなく,研究
開発用のラインを一部残している点である。新しい技術を率先して自ら持つこ
とで業務領域を拡大していくことができるとともに,コーディネーター企業と
してネットワークを維持運営していくことができる。
4
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.
2
.
.
3 アライアンス型コラボレーションモデル
自社の強みを発揮できてしかも自らの機動性を確保した上でそのプラグアビ
リティを発揮して,自社とパートナー企業とのコアコンビタンスを融合させる
ことで新しい付加価値を生み出していくビジネスモデルである。ここでの成功
要因は,連携する企業同士のコアコンビタンスと組織同士をネットワーク化す
るプラグアビリティの高さであれ事業成功という共通目的である。バーナー
ドの協同体系論における組織成立要件であるお互いの尊重,貢献意欲,コミュ
ニケーションが求められる。
事例:
新しい世界を他に先駆けて切り開いていくためには異業種との積極的なパー
トナーシップが欠かせない。ビジュアルサイエンス研究所は,実写による映画,
セルアニメによる映画に続く第三の映画ジャンルとしてフル CGムービーを積
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極的に推進して新たなマーケットを切り開いて成功しているベンチャー企業で
ある。その特徴は,早くからモーションキャプチャーを使いこなし,最先端の
三次元 CG技術を取り込んだことと,代表取締役所長でありかつ東京造形大学
助教授でもある吉田健治氏の存在とその行動力である。それはコラボレーター,
プロデューサーとしてこの異業種連携型のビジネスアライアンス締結という形
になって表れている。
ビジュアルサイエンス研究所のめざすフル CGによる映画製作には,約 1
0分
程度の作品でも 1億円程度の制作費が必要となる。また, CG映画制作しでも配
給網がなければ全国展開は難しい。そのような状況の中で,制作資金の一部は
作品ごとにファンドを組んで調達する方法を採用し,制作は最先端 CG技術を
武器とするビジュアノレサイエンス研究所が担当し,シナリオ・演出はその道の
専門家である東映動画,販売はビジュアルサイエンス研究所の子会在であるデ
ジタルアミューズメントと東映の両者が担当するというお互いにコアコンビタ
ンスに特化して得意分野を提供しあうアライアンス型コラボレーションが実現
されている。
コラボレーター,プロデューサーとして機能するビジュアルサイエンス研究
所を核とした異業種連携からなるフル CG映画事業は,新たなムーブメント起
こすべくその事業を積極的に拡大しているところであるが,新たなプラット
フォームを異業種のアライアンスという形で迅速に創出できたプラグアビリ
ティの高さと三次元立体映画などのフノレ CGによる第三の映画ジャンルの確立
という関係者の熱意が成功要因となっている。
4
.
.
24 コミュニティ型コラボレーションモデノレと先進事例
ド
ここでいうコミュニティとはデジタルコミュニティの一種であり,関心を共
有する人々がコンピュータネットワークを利用することによりつながりを持
ち,お互いの情報を交換しあう世界である。そのコラボレーションモデノレとは,
利益を追求するよりも個人が自由に参加し,主張することを通して何かを作り
上げていくというような自己実現的活動をベースとしているビジネスモデルで
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ある。特に,ソフトウェアに関してグローパルな環境で意見交換が行われ,パ
グの発見や改良などが行われている。
i
n
u
xの開発
事例:L
L
inuxはフィンランドのヘルシンキ大学の学生であった L
i
n
u
sT
o
r
v
a
l
d
s氏
が開発したフリーソフトの UNIX互換 o
sである。安定した稼動実績が評価さ
れてサーバー用の
o
sとして注目されてきている。Linuxが話題を呼んだのは
inuxのソースコードをフリーソフトとして公開して
その改良の方法にある。 L
多くのユーザーがパグの指摘や新たな提案,改良案をオープンにすることを通
して短期間に改善と機能強化を繰り返してきたからである。これまでの一社で
行っていた開発に比較するとその開発スピードは格段の差となって表れてい
る。なぜならば,世界中には多くのソフトウェアエンジニアが分散して存在し
4時間活用できるからである。
ているのでその英知を 2
一方で,ソースコードのオープン化によってさまざまな改良版が出回る恐れ
もあるが,改良版は多くのソフトエンジニアの目にとまり,その性能をチェッ
クされるので最終的には品質の良いものが残るという,いわば白神作用が働く
ことになる。
このソースコードをオープンにするという方法はソフトウェアの開発では新
しい流れを創り出し,本来あるべき顧客満足の向上に向けた迅速な展開をもた
らすことにつながる。
43 ネットワーク型ビジネスモデルの成功のポイント
ゅ
経営スピードの向上をもたらす新しいビジネスモデルとして,ネットワーク
型コラボレーションモデルについて述べてきた。個々のビジネスモデルや事例
で出てきた中からこのビジネスモデ Jレの成功のためのポイントを探ってみる
と,対等なパートナー関係を構築していること,臨機応変にパートナーの組み
替えが行える環境を作っていること,自らの情報をオープンにして情報共有し
ていること,創造性を発揮していること,規模の大小にかかわらずパートナー
シップを結べることであり,これらによって高い顧客満足を追求することを目
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標にしていることなどが浮かび、上がってくる(図表 4- 2
)。
ここで求められるのは組織と組織,組織と個人,あるいは個人と個人とを結
ぶことで付加価値を創出するプロデユース力であり,またこのネットワークを
今後,維持発展させていく上でのネットワークを編集できる能力をもっコー
ディネーター,プロデューサーたる役割が必要である。換言すれば,情報技術
を活用してリアルな世界とバーチャノレな世界とを場合によってうまく使い分
け,また,その融合するところにできる新たな創造の場を活用して新しい展開
を図る能力が求められているといえる(図表 4- 3)。
5
.おわりに
さ、て,これまでまず最初に企業内における経営のスピード向上に対して述べ
てきた。次に主に EDIを活用した企業間の連携,特に縦の連携について述べて
きた。そして最後に横の企業聞の連携について述べてきた。これらを通じてい
えることは,経営スピードの向上は一つには無駄の排除である。しかし,部分
的に無駄を排除しただげでは根本的な解決にはならない。部分最適化ではなく
図表 4-2 ネットワーク型コラボレーションの要件
顧客満足
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図 表 4-3 ネットワーク型コラボレーションの活動領域
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下二>
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一
一
一
一
-
新たな価値創造の場
リアルの世界
バーチャルの世界
、
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一
一
一
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全体最適化の考えのもとでこれまでの常識を翻して無駄を排除する取り組みが
求められている。
また, もう一つ特徴的なことは,従来の自前主義の経営では変化に俊敏に対
応できなくなったことである。すなわち市場の変化に俊敏に対応するには不足
しているところ,弱いところを補完する関係を構築する必要があるということ
である。縦のネットワークでは業務情報の共有化, それもリアルタイムに更新
される情報を共有化することが迅速な対応につながる。
さらに, ビジネスプラットプオームもこれまでの固い込み型ビジネスを実践
する企業の「儲けの場」 としてのプラットフォームではなく,多くの企業の連
携により「価値創造の場」 としてのプラットフォームであるという特徴を強く
持つようになってきた。プラットフォーム上でともに利益を出し,生きていく
という共生の理念のもと,参加企業がともに新しい価値を創り上げる場となり
つつある。 しかもバーチャルなサイバーの世界とこれまでのリアルな世界の双
方を舞台とした縦と横の連携,コラボレーションが実施されるような場となる。
そのような場に必要とされるのは,数多くの異なったコアコンビタンスであり,
それらのコアコンビタンスを融合し新しい価値を創り出すコーディネーター,
プロデューサーの役割の発揮である。後者の機能をプラットフォームが提供す
るのか,参加している企業が自ら実践するのかという違いはあるにしてもその
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ような機能を発揮できる仕組み,能力がこれからのビジネスを左右することは
優に想像がつくところである。他を活かし,自らも活かす,そのようなお互い
の力の発揮とシナジー効果を生み出す取り組みが求められているといえる。
2
1世紀は市場への俊敏な対応が最大の課題であり,そのためには全体最適化
と共生の視点のもと,単に情報の共有にとどまらず,縦のネットワークでも横
のネットワークでもともにお互いの能力の発揮とシナジー効果を求めて,サイ
ノfーの世界とリアルの世界とをうまく融合したネットワーク型の経営をめざし
ていかなければならない。またそれを実践できる企業のみが活躍できる時代に
なると考えられる。
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