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よりよい 世界に私たちができること

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よりよい 世界に私たちができること
ザンビア
よりよい世界に 私たちができること
花村 さくら(岐阜県 団体職員)
念願のアフリカ!私の心は躍っていた。学生時代から開発政治経済学を勉強し、大学院でもその関連分野を専攻した。残
念ながら大学院生の時にアフリカでの研究を頓挫しており、欧米の有名なエコノミストたちが描く援助の現場としてのアフ
インドネシア
リカを読み漁り、その地にいつも思いを馳せていた。香港を経由し、南アフリカはヨハネスブルグ、そして今回の旅の目的
地、ザンビア、ルサカに降り立った時、気持ちの良い風とカラリとした太陽が、私を出迎えてくれた。
はっきり言って、私は日本のODAとJICAの援助方針の大
ファンだ。このスタンスは国際協力『レポーター』
、として
は歪んだ意見、えこひいきになってしまうので、よろしくな
いかもしれない。しかしながら、できるだけ中立的に、学生
時代に学んだ「批判的な思考」なども取り入れながら、冷静
にレポートしていきたいという思いで参加した。初めに断っ
ておくと、私が日本のODAとJICA好きというのは、よく言
われることであるが以下の理由からである。①「日本は魚を
与えるのではなく、魚の釣り方を教えている。
」
(もちろん比
喩で、ただお金やハード面の支援だけでなく、持続可能性を
JICAルサカオフィス外観
鑑みて人材育成や教育に重きを置いている、という意味であ
る)②「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発」:これは元JICA理事長の緒方貞子さんが言ったJICAのスロー
ガンと認識している。私も開発を学んだ学生のはしくれとして、これまでの援助の潮流からしてもっともだと思い、この
JICAのビジョンに大いに共感している。
さて、肝心のレポートであるが、多くのプロジェクトサイ
トを見せていただいたが、ここでは、三つ、特に印象に残っ
ているものを書いていきたい。一つ目は、青年海外協力隊の
入っていたサイトである。簡単に説明すると、ある村で、ほ
とんどの家庭が農業をやっていたのだが、そこに派遣された
小野さんという協力隊員が、近くに水を引ける川があること
に着目し、魚の養殖を始めたら良い!と思い、村人を説得し
灌漑を作り、魚の養殖を始めた。すると、大成功し、村人た
ちは魚を売って現金収入を得られるようになったし、魚を食
べて動物性のたんぱく質を摂れるようになったという。イン
小野さんの話をするおばあさん
パクトが強かったのは、私たち国際協力レポーターにその話
をしてくれていたおばあさんが、途中で感極まっておいおい泣き出すし、その話を聞いていた周りのおばさんたちも喜びの
歌を即興で歌いだして、みんなで踊ったのだ(もちろん私も一緒に踊って、とても楽しかった)。彼らは、身体全体で喜び
と小野さんへの感謝の気持ちを表現していた。個人的に青年海外協力隊OBの友達も何人かいて彼らはいい活動をしたこと
を知っているが、青年海外協力隊に対する厳しい見方も書籍やブログではたくさんある。しかし、この小野さんの例は大成
功したとのことだ。日本のODAで派遣された協力隊の小野さんありがとう、日本のみなさんありがとう!彼らはそういう
ふうに言っていた。
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国際協力レポーター 2015
次に印象的だったのは、ザンビアで私たちに話をしてくれた大使やJICAザンビアの所長や次長の話である。在ザンビア日
本大使は、ご多忙のなか、次の会議の時間を延期してまで、私たちとの懇談に臨んでくださった。そして大使として、これ
からの日本とザンビアに期待することを伝えてくださった。ザンビアは気候も良く(湿気が少なく、カラッとした暑さで日
本の夏ようにジメジメはしていない、朝夕は涼しく、たいへん過ごしやすい)、他のアフリカ諸国と比べて治安がいい。また、
民族はたくさんあるがイギリスの植民地であったので英語が通じるし、親日みたいで、アフリカ初心者には初アフリカの場
所にぴったりとのこと。実際、本当にザンビアの人たちはフレンドリーだった。日本人に対してというより、ザンビアの人々
は全体的に優しい人が多いように感じた。だいたい海外に来ると一人くらい失礼な人もいるが、ザンビアではそういう人に
は遭遇しなかったし、JICAのカウンターパートの方々はもちろん、レストランのウエイトレスも、道行く人も優しかった。
ザンビアは昨年、独立50周年を迎え、様々な民族がいるなか「One nation, One Zambia」というスローガンのもと、ザン
ビアという一つの国の国民として、多くの民族がいても争わず、心ひとつに進んでいこうという気持ちで歩んできた。隣国
から難民の受け入れもしている。そういう国だ。一方で、ザンビア政府、国家運営に関して批判的な意見も見聞きし、それ
は多くの途上国でみられる問題だと思った。
最後に、そして最も重要だと思っているのは、今回、JICA
職員の方々をはじめ、ザンビアで働く日本人の方々の働きぶ
りを知れたことだ。ODAには時に様々批判もあるし、ある
いは批判をする以前に、話題に上ることすらない。しかし、
日本人としてこれだけは知っておきたい。ザンビアの地で働
いている日本人たちはみな、情熱と誇りを持って働いていた
ということ。ザンビアの人々がこういう日本人の姿勢から学
ぶこともあると耳にした。確かに、日本に留学して教育学を
学び、母国ザンビアの教育に尽力するザンビア人や、日本の
整理整頓などをするという文化的価値観を取り入れ貪欲に自
ナショナルサイエンスセンターで黒板を作っているところ
分たちのものにしていこうと熱く語るザンビア人がいた。途
上国では往々にして政府の腐敗や汚職の問題が叫ばれるが、日本人の自己の利益ではなく、組織のため、あるいは共通に
持ったビジョン達成のために本気で真面目に働くというひたむきな姿から学び取っているザンビアの人々もいるということ
だった。この異国で奮闘する、同じ日本人がいることと、その姿勢から何かを感じ取るザンビア人が確かにいる。私はその
ことを、これから「国際協力レポーター」として声を大にして伝えていきたい。私たち日本人の、日本人によるODA、私
たち自身がそれを知り、誇りを持って、時に意見し、よりよいものに、よりよい世界に貢献できるようにしていきたい。
このような機会を与えてくださったことに、厚くお礼申し
上げます。できるだけ自分の利用可能な媒体で、より多くの
方々にODAをはじめ、上で述べたことに加え見聞きしたこ
と、また本事業のことも伝えていきたいと思っています。一
つ、私は国際交流協会で働いているのですが、国際協力レ
ポーターとして以外に、個人的に「宿題」も今回の旅をする
なかで得たので、それに地道に取り組んでいこうと思ってい
ます。宿題が何かは、結果でお伝えできるよう、努力してい
く次第です。本当にありがとうございました。
農村のみなさん。私のザンビアのお母さん!
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