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Value Navigator(バリューナビゲーター)
Client Newsletter from PwC Japan Value Navigator 2015 Autumn 特集 今こそ都市ソリューションを 考えるべきとき www.pwc.com/jp Season’s Report from グローバルに広 がるPwC の活動を現地オフィスからレポートします。 Global 高度成長期が 終わりを告げて “ 新常態 ” へ の移行が進む― 中国 長年高度成長を続けてきた中国も、 実際こうした問題での相談件数は近 2012 年の習近平体制発足以降は “ 新常 年急増してきていて、日中連携で「 中国 態 ”という言葉のとおり、安定成長を目 事業の再構築 」をテー マにセミナー を 指す動きが加速しています。具体的に 開催したり、PwC中国の税務や不正対 直近ではサービス産業や中産階級の拡 応のチームを大幅に拡充するなど PwC 大傾向など世界最大の人口を背景とし ネットワーク全体で問題解決のための た成長ポテンシャルには依然期待しつ サポート体制を整えてきています。時 つも、“ 株式市場の混乱 ”“ 天津化学品工 代の転換点に差し掛かりつつある中国 場爆発 ”といったトピックが示すように において皆さまのお役に立てることを さまざまな問題が噴出し、成長の曲が 心よりお待ちしています。 り角にきています。 翻って、 「 世界の工場であった 」中国 で安価な労働力を使った加工貿易を中 CONTENTS 2 Season’s Report from Global---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 高度成長期 が終わりを告げて “ 新常 態 ” へ の移 行 が進む ― 中国 特集 : 今こそ都市ソリューションを考えるべきとき 5 Value Interview-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 舛添 要一 氏 東京都知事 [ 聞き手 ] 野田 由美子 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 都市ソリューションセンター センター長 8 Value Talk------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 日本が世界に誇る都市交通 イ ンフラ その現在と未来 都市 輸出~ 都市ソリューション研究会を振り返る プライスウォーターハウスクーパース株式会社 都市ソリューションセンター 副センター長 長田 英知 15 Value Report ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 都市ソリューションセミナー ~「 都市ソリューション研究会 」の活動から見えたこと~ 原田 昇 氏 東京大学 大学院工学系研究科 教授 森 雅志 氏 富山市 市長 “ 世界の市場 ”たる中国市場攻略には非 鈴木 學 氏 日立製作所 交通システム社 技監 常に苦慮し、 「 中国事業の再構築 」や「 不 [ モデレーター ] プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 都市ソリューションセンター センター長 都市輸出の未来を語る 石井 喜三郎 氏 元国土交通省 国土交通審議官(現・ルーマニア大使) 小縣 方樹 氏 JR東日本 副会長・UITP(国際公共交通連合)会長 心に成功を収めた日系企業も、近年は 12 Management Issue-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 城所 哲夫 氏 東京大学 大学院工学系研究科 准教授 野田 由美子 16 パネルディスカッション① 官民連携による都市輸出~現状と課題 17 パネルディスカッション② 官民連携による都市輸出~今後に向けて 野田 由美子 正や税務問題など中国特有のリスクへ の対応 」に日々頭を悩まされているもの と推察します。 18 Value Report ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- China アフリカの都市とインフラ投資 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 公共事業部 ディレクター 中島教雄 22 Value Report ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 中国税務 におけるリスクマネジメント PwC 税理士法人 税務 マネージャー( 中国デスク)渕澤 高明 20 Value Report ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- インド 100スマートシティの 始動 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 コンサルティング部門 シニアマネジャー 中間 雅彦 24 PwC Japan News---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------特派員 Client Newsletter from PwC Japan 片岡宏介 Kosuke Kataoka プライスウォーターハウスクーパース株式会社 PwC 中国・上海オフィスへ出向中 シニアマネージャー Value Navigator 2015 Autumn Value Navigator 2015 年 11 月発行 企画・編集:PwC Japan 発行人:若林 稔 〒104- 0061 東京都中央区銀座 8-21-1 住友不動産汐留浜離宮ビル Tel. 03 -3546 - 8650 Fax. 03-3546-8738 www.pwc.com/jp 本誌についてのお問い合わせは、PwC Japan ブランド&コミュニケーションズまでお願いします。 Email:[email protected] 制作:株式会社 ピーク・ワン 2 Value Navigator PwC Japan のご紹介 PwC Japanは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社 ( PwCあらた監査法人、京都監査法人、 プライスウォーターハウスクーパース株 式会社、PwC 税理士 法人、P w C 弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独 立した別法人として事 業を行っており、 相互に連携をとりながら、監 査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、 税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。 Value Navigator( バリューナビゲーター) 本誌では、PwC のグローバルに広がる157カ国、208,000人以上のプロフェッショナルネットワーク を生かし、現場から得られる最 新のビジネス情報やグローバルのナレッジ情報をご紹介します。 本誌がクライアント企業の皆様の価値 創造を導く一助となることを願い、この誌名に表現しました。 Value Navigator 3 Value Interview 特集 今こそ 都市ソリューションを 考えるべきとき 舛添 要一氏 Yoichi Masuzoe 東京都知事 世界的に急ピッチで都市化が進むなか、上下水道を含むインフラの不足や、交通渋 滞、環境汚染、ゴミ処理、災害対応など、さまざまな都市問題が生じている。とりわ け成長著しいアジアの都市での課題は深刻であり、問題解決と持続可能な都市づく りが急務となっている。そうしたなか、日本をはじめとする先進国がこれまでに経験 した、都市化に伴う課題解決のインフラ技術やノウハウを、 「 都市ソリューション」とし て世界に輸出することが注目を集めている。さらに、この都市輸出というアウトバウン ドの取り組みが、自治 体への新たな投 資を誘引するというインバウンドへと還 元され、都市競争力を向上させるサイク 急速な都市化にかかわる 6 つの事実と予測 これらの事実と予測は今日および未来の社会に何を意味するのだろうか ? 聞き手 ルを形 成することも期 待されている。 そこで本特集では、日本政府と自治体、 企 業 がいかにパートナーシップを結び な がら、日 本 の 都 市ソリューションの 輸 出と都 市 競 争 力 の 最 大 化を実 現で きるかについて考えていきたい。まず は、世界屈指の安全な大都市として評 価の高い東京に目を向けて、そのトップ リーダーである都知事の舛添要一氏に、 64 兆ドル 2010 ~30 年の 間に世界が必要とする インフラ投資 1 week $ パートナー 都市ソリューションセンター 4 Value Navigator 上位 300 都市が グローバル GDP で 占める割合 米国の上位 50 都市と その他の都市の収入格差 プライスウォーター ハウスクー パ ース センター長の野田由美子が話を伺った。 50% $ 20% 150 万人 毎週、 全世界の都市で 増加している人数 1990 年 以 降の 貧 困 層人口 増加 率 33% 2025 年における 1,000万人以上の都市の数 40都市 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 都市ソリューションセンター センター長 野田 由美子 Yumiko Noda “ 東京に暮らして良かった ” と 「東京で仕事ができて良かった」、そして 思ってもらえるまちづくりを 「老後も東 京で過ごせて良かった」と、 “ オギャー ” と生まれてから老後に至る 野田 東 京は 1,300 万人もの人口を抱 まで人生のあらゆるステップで「東京で え、さらに東 京圏で見れば 3,500 万人 生活できて良かった」と思っていただけ 以上に達する世界最大級のメガシティで るような都市にしたい─それが基本に す。過去には、1960 年代~ 70 年代の あります。 急速な都市化を経て、交通渋滞や環境 一方、戦後の高度経済成長のきっかけ 汚染など都市化にまつわるさまざまな課 となった前回の東京オリンピックのとき 題を克服しながら、世界屈指の安全な と今とでは街が目指すベクトルも少し変 大都市を築いてきました。そのような大 わってきていると思っています。ゆっくり 都市 東京のトップリーダーとして、未来 歩きながらウインドウショッピングをし に向けてどのようなビジョンを描かれて たり、美味しいものを食べてのんびり過 いるのでしょうか。 ごしたりという、人生の楽しみを十二分 舛添 「東京で教育を受けて良かった」、 に味わえる、豊かな芸術・文化が形成さ Value Navigator 5 る移動についても都市計画の視点から 活性化するとともに、蓄電池を活用した マネジメントをきちんとやっていきたい 防災対策にも役立つと考えています。 と考えています。今 年 3 月に中央環 状 線が完成しましたが、この先、圏央道、 本来の国際競争力を取り戻す 外環道を完成させることで、東京都心に 入ってくる車の数を半分程度に減らせる 野田 グローバル化の進展により企業、 と見込んでいます。そうすれば渋滞はほ 人材、資本が容易に移動するようになっ とんどなくなると同時に、空気も清涼に たことで、世界とりわけアジアの都市間 なります。そして何よりも、これまで渋 競争は激化の様相を呈しています。そ 滞のために失われていた時間を取り戻せ うしたなかで、東 京が世界、アジアの る分、人生が楽しくなるのではないでしょ なかで「選ばれる都市」になるために、 うか。人類初の交通渋滞のない大都市 どのような取り組みを進めているので にこの東京がなることを目指しています。 しょうか。 エリアにセンターとなる拠点をつくって 水施設をつくっています。 だ世界中の食べ物が食べられる街という 野田 今、アジアの多くの都市が交 通 舛添 東 京に限らず、日本人の最大の いるところです。 その他、首都直下地震をはじめさま のは世界にあまりないといったコメント 渋滞に悩んでいます。東 京が “ 渋滞解 弱点は英語でしょう。海 外で競 争力の ざまな災害に対 する備えを知ってもら をよくいただきます。 れた成熟した街としての東京をつくって 消都市 ” の 1 つのモデルケースとなって 高い都市のほぼ全ては、東 京よりも英 おうと「東京防災」という防災ブックを また、実は東 京は、かのベネチアに いきたい。また高齢化社会を迎えても、 いけるといいですね。 語が通じる街です。そこで英会話 教育 750 万部作成して、9 月 1 日の防災の日 も負けないぐらい美しい “ 水の都 ” だと 皆さんがアクティブに生活を過ごすこと 舛添 はい、さらに水素自動車、燃料電 の普及促 進はもちろんのこと、言葉の 野田 日本は、地震や台風、火山噴火 から都内の全家庭へ順次配布を始めた いうことも、 私たちが 気づ いていない ができ、都内で必要な医療・介護サー 池車の普及も、2020 年の東京オリンピッ ギャップを補うような IT の活用にも力 など多くの自然災害に見舞われてきまし ところです。冊子は英語版も用意してい 東京の魅力の 1 つではないでしょうか。 ビスを受けられるだけのキャパシティー ク・パラリンピックに向けて推進している を入れているところです。例えば前回の た。政治、経済の機能が集中する高密 ますし、デジタル版には韓国語版、中 ウィリアム王子が来日された際、空港か を確保できるよう、規制緩和の仕組みな ところです。空気を汚さない新しいイノ 東 京 マラソンでは、27 言 語 の 翻 訳ア 度の首都 東京は、どのようにレジリエン 国語版もあります。 ら東京湾クルーズをして浜離宮に向かわ どを活用した取り組みを進めています。 ベーションを生み出すことで日本経済を プリを使って円滑にコミュニケーション ト(強 靭)な都市インフラづくりを進め 野田 アジアは全体的に地震や水害も れました。その際に伝統的な江戸時代 を行いました。 ているのでしょうか。 多く、災害に脆弱な地域ですので、各 の庭園でお茶を一服差し上げたところ、 野田 素晴らしいですね。 舛添 これから建 築する高層ビル群に 国の都 市の方々にも参 考になりそうで 大 変喜んでいただきました。観光産業 舛添 さらに目下、2 つの国際的なセン は、東日本大震災に対応できるレベル すね。 はすごく伸びていく余地がありますから、 ターをつくろうとしています。1 つ目は国 の耐 震 性、 免 震 性 が 備 わっています。 がら公共交通が非常に発達していること 際金融センターで、このセンターにより しかしながら、木造密集地域がまだ残っ に、世界中から強い関心が寄せられて NY のウォールストリート、ロンドンの ていますので、こちらは再開発を行って います。今後の交 通政 策などお聞かせ ザ・シティと東 京の 3 極が、世界の金 一刻も早く安全な地域にしていかねばと 野田 最後に 2020 年の東京オリンピッ で1つの通過点にすぎません。そこから いただけますか。 融マーケットをコントロールできるよう 取り組んでいます。このように建物の耐 ク・パラリンピック開催において、海外 先にどういうレガシーを残せるかが重要 舛添 まず東京の公共交通の便利さや にしたいと考えています。 震性を高めるとともに、主要道路から無 からの訪問者に東京のこんなところを見 です。常に進歩を続けて人々がより住み 時間の正確性は素晴らしいと考えていま もう1 つは、ライフサイエンスに関す 電 柱化を進めることで救難のための車 てほしいというのがあれば教えていただ やすい都市へと発展していく─この無 す。品川や晴海、豊洲といったウォーター るセンターです。医療や薬品は日本で非 が障害なく動けるようにしていきたいと けますか。 限の躍動のようなものこそ、東京の大き フロントエリアはこれから人口の急速な 常に発達している領域なのですが、最近 考えています。 舛添 今、海外の観光客が非常に増え な魅力だということを、東京、日本そし 伸びが予測されていますので、新たに 2 はシンガポールなどアジアの他の都市の また異常気象で集中豪雨なども起こり ていますけれど、私たち日本人が気づか て世界の人々に向けて広く伝えていけれ 本の地下鉄を将来的に整備する案を提 追い上げが激しい感があります。そこで、 やすくなっているので、都市の洪水を防 ない魅力に、外国の方々が気づくことが ばと願っています。 「バック トゥ東京」を合言葉に、本来の げるよう、環 状 7 号 線の下側に一時的 多いと感じています。例えば食文化 1 つ 野田 とても期待できるお話をたくさん 競争力を東京に取り戻すため、日本 橋 に大量の雨水を逃がしておける大きな貯 とっても、これだけバラエティーに富ん いただけました。ありがとうございました。 人類初 の “ 渋 滞 の な い 大 都 市 ” に 野田 東京の場合、メガシティでありな 出したところです。 一方、公共交通機関だけでなく、車によ 6 Value Navigator レジリエントな都市づくりを推進 観光の魅力の掘り起こしや PR にももっ オリンピックを通過点に躍動を続ける と力を入れていきたいですね。 そして 2020 年は東京にとってあくま Value Navigator 7 Value Talk P w C では世界の主要都市の都市力を評価する「 C i t i e s o f O p p o r t u n i t y 」レポー トを 20 07 年から発表してきたが、同レポートの重要な指標の 1 つが「 交通インフラ」 である。世 界に誇る信 頼 性・安 全 性を有する日本の交 通インフラは、人 口 減 少、 超高齢化社会の到来、そして大規模災害に備え、今後、どのような進化を遂げてい かなければならないのか。今回、都市ソリューション研究会の構成メンバーによるパ ネルディスカッションを開催。交通インフラの観点から、日本の都市力向上に際して の課題と解決に向けた取り組み、そして今後の展望について語り合っていただいた。 石井 喜三郎 氏 Kisaburo Ishii 元国土交通省 国土交通審議官 ( 現・ルーマニア大使 ) 小縣 方樹 氏 Masaki Ogata JR 東日本 副会長・UITP ( 国際公共交通連合 )会長 1955 年生まれ。1979 年建設省入省後、都市 局では都市計画課長、まちづくり推進課長、審議 官を務める。都市再生機構住宅担当理事、内閣 官房審議官、都市局長、国土交通審議官を歴 森 雅志 氏 Masashi Mori 1952 年生まれ。1974 年日本国有鉄道入社。 役鉄道事業本部運輸車両部長、常務取締役 IT・ Suica 事業本部長、鉄道事業本部副本部長、代 表取締役副社長 鉄道事業本部長などを歴任。 事務所を開設。1995 年富山県議会議員に初 当選。1999 年再選。2002 年富山市長に当選。 富山市 市長 2005 年 ( 市町村合併で発足した ) 新・富山市長 任。本年 9 月よりルーマニア大使に就任。 1987 年東日本旅客鉄道株式会社入社後、取締 1952 年生まれ。1977 年司法書士・行政書士 に当選。現在 3 期目。 鈴木 學 氏 Gaku Suzuki 日立製作所 交通システム社 技監 1947 年生まれ。1972 年日立製作所入社以来、 営業本部交通部長、電力・電機グループ交通シ ステム事業部長、執行役常務電機グループ長& CEO兼交通システム事業部長、2009 年執行役常 日本が世界に誇る都市交通インフラ その現在と未来 交通インフラと都市力 — の際に、楽に移動できることを重視し グローバルとドメスティックをつなぐ ます。交通インフラが整っていること は企業が拠点を立地する上でも非常に 務社会・産業インフラシステム社社長などを歴任。 野田 インフラは都市の魅力や競争力 重要だと思います。 を構成する重要な要素であり、PwCの 森 人口減少、そして超高齢化社会の 都市力評価レポートでも10 の領域の1 到来は、日本の地方都市が都市力、そし つとして位置づけられています。 「 都市 て交通インフラについて考える強い引 力 」の観点から、交通インフラの重要性 き金になったと思っています。交通弱 についてお考えをお聞かせください。 者が増えていく時代の趨勢を考えると、 石井 国際的な「 都市力 」を発揮するた 地方都市では、道路をつくりモー タリ めには、世界に都市の経済力や文化力 ゼーションを進めるのではなく、公共交 を呼び込み、また発信していくことが重 通をいかにブラッシュアップさせてい 要になります。交通インフラは、グロー くかという視点が必要になってきます。 バルとドメスティックをつなぐという点 で都市インフラのなかでも重要な役割 公共交通指向型開発( TOD )— を果たします。 都市全体の便益から交通を考える 鈴木 そうですね。当社は現在、海外 都市に多くの拠点を設置しています。 野田 日本はこれまで世界でも特徴的 新たな拠点を設置するときは、やはり な、公共交通指向型開発( TOD:Transit 現地で働いている人たちや日本からの Oriented Development )により都市を 社員が日々の通勤やお客さまへの訪問 発展させてきました。 Value Navigator 9 まの目線に立ってサービスを提供する ぶなかで達成されてきたことです。い という基本姿勢のもと、鉄道を起点に都 わば量が質を変えたということがいえ 市開発、生活サービスを一体的に進め るのではないでしょうか。 る経営モデルを構築してきました。こ 鈴木 日本の鉄道の正確性・信頼性を 野田 少子高齢化時代を迎えるなかで 野田 最後にさまざまな災害が発生す れが日本独自の TODを発展させる契機 示すエピソードに「 ラッシュ時でも人が の交通インフラづくりについて、国、自 る日本において、いかにレジリエントな となったのではないでしょうか。 治体はどのような取り組みを行ってい 石井 そうですね。東京は世界一便利 列に並ぶ 」というのがあります。日本で 交通インフラを構築してきたかについ 野田 新幹線と在来線の連携がスムー は、熟練した運転技術と、運行を支える ますか。 てお聞かせください。 いうことなのです。そういうまちづくり な公共交通の仕組みを実現していると ズであるのも日本の交通インフラの大 定点停止装置により、どの電車も必ず同 石井 駅のバリアフリー化を進めるな 小縣 新幹線を例に挙げると、大地震 をしていくということが、今後すごく大 思います。経営主体や路線が違ってい きな特徴です。 じ場所に停車します。また巨大な運行 どのハード面の整備だけでなく、高齢者 にも十分に耐えうる構造物の実現に加 事になってくるだろうと思います。 ても、IC カード乗車券によっ て、スト 森 富山駅も北陸新幹線の開通以後、 管理システムにより1 本電車を待っても や障害者、外国人の方々のスムーズな え、海岸や海底に設置した地震計との連 レスなく乗り換え・乗り継ぎが可能な 予想以上の賑わいを見せており、新幹 すぐに次の電車が来る、といった安心感 乗り換えや行きたい場所に直感的に行 携による、超高速走行時でも安全に減 交通網が整備され、駅の地下街にこれ 線の乗り入れによる経済波及効果の大 があります。このように信頼性の高い けるようにする案内など、ソフト面の整 速、停止できるシステムの整備や、脱線 だけ大規模な商店街を展開し、収益を きさを実感しています。一方、私たちは 鉄道が実現されているからこそ、人々は 備が必要であると考えています。それ しにくく、かつ脱線したとしてもまっす 12 ~13 年前から、交通への投資と、交 ラッシュ時でも礼儀正しく並ぶわけで からもう1 つはやはり健康と交通システ ぐに進むような技術を実現しています。 通の便利地帯への居住誘導と、中心市 す。日本では当たり前のこととなってい ムの関係をどのようにつくり上げてい これらの技術面での強靭性の確立と合 街地の魅力向上の3つを同時に進める る日常も、実は日本独自の技術が支えて くかだろうと思います。公共交通が発 わせて、災害発生後も迅速にインフラを 富山市ならではの公共交通指向型開発 いるものなのです。こうした信頼性、安 展すれば自動車道が減り、歩道や自転車 復元可能とする組織づくり、そのための を進めてきました。ここでも大切なの 全性を支える技術を、海外に発信して 道が増え、結果、健康に寄与するように 社員教育にも努めています。 は、交通だけを切り取って議論するので いきたいと考えています。 なります。国土交通省ではそのような 鈴木 今回の震災では、地震波を感知 はなくて、交通によってもたらされる社 取り組みの効果を見定めつつ、助成して した際に車両の電源を全て遮断するシ 会的な便益を全体として見ていく視点 いくことも行っています。 ステムを構築していたおかげで、260 キ 森 富山市では中心市街地への人の誘 ロの速度で走行していた新幹線を安全 導と高齢者対策を ICカードの活用によ に停止できました。この日本の素晴ら り一体的に進めています。具体的には、 しい技術は、アジアの地震頻発地域で 65 歳以上の方だけが使える ICカードが の高速鉄道を整備する際、非常に強い あり、そのカードを利用すると100 円 武器になると考えています。 野田 日本の公共交通システムの高い で郊外から中心市街地まで来ることが 森 富山市はレジリエントシティとし 信頼性も、世界に強くアピールできる特 できます。しかし途中のショッピングセ てロックフェラー財団から日本で唯一 徴であると思いますが、いかがでしょう ンターで降りると、通常運賃を払わなけ 選定をされました。富山市が評価いた 上げている例は世界にもありません。 か? ればならないようになっています。現 だいたのは、実は高齢社会というもの 野田 日本で TODが成功した要因はど 小縣 世界に誇れる安全性、高密度の 在、全高齢者の約 23%がこの ICカード に対して、どう元気に暮らす高齢者を こにあるのでしょうか? 乗車時でも正確な運行を実現するマネ を活用し、外出頻度も増加しているとい 増やしていくかという対策なんです。 小縣 1872 年から始まった日本の鉄道 ジメント性、そして他社との直通運転な う結果が生まれています。中心市街地 先ほどから述べている富山市の施策は、 史を振り返ってみると、国有化された時 どにより自宅からオフィスまでほぼ鉄 活性化と高齢化対策を組み合わせ、比 公 共 交 通 をもう一 度 ブ ラッ シュ アッ 期もあったものの、基本的には民間企業 道だけで移動可能な高いネットワーク 較的閉じこもりがちになる年代の方々 プし、高齢者の外出機会を増やすこと が主体となってインフラを築き上げて 性などは日本の大きな特徴です。しか の外出を誘引すれば、健康寿命を延ば で、健康寿命を延ばし、最終的には地 きたという点で、世界でも稀な歴史を有 もこれらの特徴は、JR 東日本だけでも すことができ、将来の医療費低減にも効 域コミュニティーのコミュニティー力、 しています。日本の鉄道会社は、お客さ 毎日1,700 万人のお客さまを安全に運 果があるだろうと考えています。 すなわちレジリエンスを上げていくと です。 「 ラッシュ時でも列に並ぶ 」 公共交通システムの信頼性 10 Value Navigator モデレーター プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 都市ソリューションセンター センター長 野田 由美子 少子高齢化時代における 「 交通インフラ」の未来 レジリエントな交通インフラ 構築に向けて Value Navigator 11 Management Issue 都市輸出~都市ソリューション研究会を振り返る 21 世紀は、急速な都市化、深刻な都市 課題、そして激しい都市間競争に特徴づ けられた「 都市の時代 」である。 わが国の都市・インフラ分野をリードす る 27 の企業、政府機関、自治体、大学 研究者が参画した都市ソリューション 研究会では、日本の自治体の都市課題克 服の経験に裏打ちされた「 都市ソリュー ション 」の輸出と日本の都市力強化を推 図表1:都市 輸 出 のソリューション・フレームワーク 2015 年 12 月発刊予定 アジア途上国の都市課題( 都市開発、 交通・TOD、廃棄物、水処理、防災・エネルギー) 『 都市輸出 -都市ソリューションが 拓く未 来 』 ( 東洋経済新報社 ) 強 化 へ の 貢 献 を目 指し て 結 成 さ れ た 研 究 会。本書は まとめたものです。 ると、2010 年〜30 年の間に世界が必要 19 世紀はヨーロッパの君主が世界の とするインフラ-道路や鉄道、通信、電 植民地を支配する「 帝国の時代 」であっ 力、水、空港、港湾など-の総額は約 64 本年1月、原田昇 東京大学教授と野 たが、20 世紀の 2 つの大戦で、米国と 兆ドルに上る。 田由美子 都市ソリューションセンター ソ連という 2 つの大国が世界の覇権を 都市が巨額のインフラ投資を行う理 長を代表発起人として、 「 都市ソリュー 競う「 国家の時代 」へ移行した。そして 由の1つとして都市課題への対応が挙 ション研究会 」が発足した。本研究会は 冷戦体制が崩れた 21 世紀、今度は都市 げられる。途上国では急速な都市化に 都市ソリューションに関するナレッジ・ が世界の主役になろうとしている。 より都市への人口集中が進んだ結果、交 ついて紹介する。 プラットフォームの構築と日本の都市 6. PPP 公的支援 が終わり、都市の時代がはじまった 」。 途上国では経済の急速な発展に伴い、 都市課題克服の実績 1. Value Proposition 同研究会が27の参画企業・団体とともに討議した成果を 進するためのアプローチについて議論 を行った。本稿ではその討議の成果に 「都市の課題克服ストーリー」 日本 の 都 市 インフラ輸 出の 促 進と日本 の 都 市 競 争 力 2. Policy 政策・制度 3. Governance ガバナンス City Value 5. Operation オペレーション 4. Products/ Services 製品・サービス 通渋滞や生活環境の悪化、災害に対する 自治体リード 企業リード 政府リード インフラ輸出・都市力強化への貢献を 農村などの非都市地域から都市へ人口 脆弱化などの深刻な課題が生じている。 目指すもので、わが国の都市・インフラ が流れ込む「 都市化 」が急速に進展して 都市化が一段落した先進国においても、 分野をリードする 27 の企業、政府機関、 いる。20 世紀初頭に10%強であった世 老朽化したインフラのメンテナンス、更 泰というわけではない。企業、人材、資 が有する製品や機器を単体で受注する の増加に悩む都市が現在、インド、中国、 自治体、大学研究者が参画した。 界の都市人口比率は 2000 年に 50%弱 新や高齢化に対応したまちづくりへの 本の流動性が高まり、最適な場所を求め のではなく、インフラの設計、建設、運 ASEANを中心に数多く存在する。しか 約半年に亘る研究会活動では、①都 にまで上昇し、2050 年には世界人口の 新たな投資が必要となっている。 て国境をも越えて移動する現在、都市に 営、管理を含む「 システム 」として受注 しこれらの都市の課題を解決するため、 市 開 発、 ② 交 通・TOD、 ③ 廃 棄 物、 2/3 が都市に居住するといわれている。 しかし都市がインフラ投資を推進す は優秀な企業、人材、資本を自らの都市 することを目指す。都市輸出もインフラ 日本企業が有する廃棄物焼却発電施設 るのには、もう1 つの切実な理由がある。 に引き留め、さらなる誘致を図るための を「 システム 」として受注するという考 のみを導入してもうまくいかない。高性 それは都市間競争の激化である。 高度で快適なビジネス・生活インフラ え方は同じである。しかし都市輸出で 能の炉を傷めず、ダイオキシンを発生さ の整備が求められているのである。 は、特定インフラだけでなく都市全体の せることなく廃棄物を処理し、高い発電 システムを分析し、日本の都市のシステ 効率を実現するには、投入されるゴミの ムそのものを、システムが可能とするラ 量と質に対するきめ細やかな配慮が必 イフスタイルをもセットにして輸出する 要なのである。焼却処理に適した「 よい ことを目指す。なぜなら日本の高度なイ ゴミ 」だけを分別収集する都市の制度と ④水処理、⑤防災・ エネルギー の 5 つ 都市への人口集積は富の集積ももた の分野について、 「 相手都市が抱える課 らす。 平成 24 年度の東京の都内総生産 題に対する “ ソリューション ” を輸出す ( 名目 )は 91.9 兆円。これは韓国の GDP 現在、優れた企業、人材、資本は、ほ る 」という視点に立ち、 「 都市輸出 」の とほぼ同規模で、オランダやトルコより んのわずかの魅力ある都市に集中して 方法論を中心に検討が行なわれた。 も大きい。先進国の大都市は既に生み いる。 マッ キンゼー が 2013 年に発表 の親である国家をもしのぐ経済力を有 したレポー トによると、年間売り上げ しているのである。 100 億ドル~ 1,000 億ドルの巨大企業 「 国家の時代が終わり、 都市の時代がはじまった 」 「 都市インフラ-都市課題と 2010 年、米 国のフォー リン・ ポリ 都市間競争が生み出す巨大市場 」 シー誌は「 都市の限界を超えて 」という 都市の時代の到来はまた、都市インフ うな副題がついている-「 国家の時代 ラの巨大市場を生み出した。OECDによ 12 Value Navigator 「 インフラシステム輸出を超えて ~都市を輸出する 」 (1,114 社)の49%、年間売り上げ1,000 本研究会では、日本のインフラシステ ンフラ技術は、その技術を支える都市の 住民協力の仕組みがあって初めて、日本 億 ド ル 以 上 の 超 巨 大 企 業( 49 社 )の ム輸出を推進するための新しい方法論 – システムと合わせて導入しない限り、本 の廃棄物処理技術はその効力を最大限 76%は、世界のトップ 20 都市に本社を 都市輸出 –を中心に検討を行った。 来の効果を上げられないからである。 に発揮するのである。 立地している。わずか 20 の都市に、世 特集記事を掲載した。記事にはこのよ © 2015 PricewaterhouseCoopers Co., Ltd. 界経済の富が集積しているのである。 しかし「 勝ち組 」の都市がこのまま安 インフラシステム輸出と都市輸出。両 者の違いはどこにあるのだろうか? インフラシステム輸出では、日本企業 研究会で出された具体例をもとに説 明しよう。 人口増加と経済成長に伴う都市ゴミ 日本の都市は、高度なインフラ技術を 運用する上で必要となる豊富なノウハ ウを蓄積している。これらのノウハウ Value Navigator 13 Value Report 図表 2:都市輸出のアプローチ ̶ アウトバウンドとインバウンドの一体的なサイクル 国内 都市に紹介する。自治体の実績に関心 都市輸出 自治体・企業・政府・市民による 一体的な都市経営 を持ち、自らの都市課題解決の支援を アウトバウンド 自治体・政府が 企業を売り込む 望む途上国都市が現れた際、自治体は ショーケース コーディ ネーション 政府 同 都 市 と C2C( City-to-City: 都 市 間 ) の協定を締結するとともに、政府、企 業と連携した都市ソリューションチー 自治体 都市 競争力 スタイルをショー ケー ス化し、途上国 ムをコーディネートする。取り組みの 企業 結果、都市輸出が実現され課題が解決 企業が自治体 に投資する 価値の共有 ビジネス 市民 されると、その成果は内外にシェアさ れ、途上国都市そのものが日本の都市 ソリューションの優秀さを証明する新 インバウンド 出典:PwC 分析 たなショーケースとなる。 この都市輸出サイクルを活用して、自 治体は都市インフラ分野で優れた技術 は決して一朝一夕で得られたものでは 本の都市インフラの本来の価値を輸出 を有する地場企業の海外展開を推進す なく、1960 年代〜 70 年代の高度成長 することが可能となり、相手国都市の課 る。この海外展開の成功は自治体にさ 期に日本の都市が体験した、都市化と都 題を真に解決することができる。 らなる税収をもたらすとともに、同様の 市課題を克服する試行錯誤のなかで編 み出されたものである。もう1 つ特筆す 日本の自治体が都市輸出に べき点は、各自治体が都市課題・ニーズ 参画する意味 取り組みの概要や分科会の構成につい という視点に立ったソリューションモ 研究会研究主幹である城所氏は、都 て紹介。日本の都市インフラ輸出と都 デルの構築に新しいイノベーションを 市ソリューション研究会の研究成果と 原田 昇 氏 野田 由美子 城所 哲夫 氏 東京大学 大学院工学系研究科 教授 都市ソリューション研究会 代表発起人 プライスウォーターハウスクーパース 株式会社 パートナー 都市ソリューションセンター センター長 都市ソリューション研究会 代表発起人 東京大学 大学院工学系研究科 准教授 都市ソリューション研究会 研究主幹 詳細については、本年 12 月発刊予定の 的に差別化する最大の「 強み 」である。 行政サービスを提供するための組織で 書籍を是非ご覧いただきたい。 を定義する。このフレームワークに基づ イクルを整理したのが図表 2 である。 き、自治体、政府、企業が一体的なマー 自治体は自らの都市課題克服の実績 ケティングを展開することで、初めて日 とそのバックボーンである都市経営の 14 Value Navigator との意義について言及した。野田は、日 の構想を明らかにした。 とになる。一方、自治体は本来、住民に この観点に基づき都市輸出の実現サ が都市ソリューションを輸出していくこ に対する “ソリューション ”を輸出する 」 国、韓国などが提供するインフラを決定 にしたソリューション フレームワーク るセミナーの模様をレポートする。 原田氏は、都市ソリューション研究会の をも可能にするのである。研究成果の 掛けづくりが重要になってくる。 である「 都市化 」の背景を受けて、日本 を行うアーバンソリューションセンター するという極めて重要な役割を担うこ どによる「 公的支援 」スキームをセット 都市ソリューション研究会である。本稿では、9 月 8 日に行われた同研究会によ トフォームは、 「 相手都市が抱える課題 リオこそ、日本が提供するインフラと中 引し、都市競争力を向上させるような仕 人の野田は、世界のメガトレンドの1つ 有効性を強調した上で、そのマッチング テーマに対し、有効な解を提供すること ション 」 、さらには JICA, JBIC, JOINな 市・インフラの経験を集約するナレッジ・プラットフォームとして発足したのが 義を強調。同研究会のナレッジ・プラッ 都市輸出は、自治体によるアウトバウ 府、企業と一体となって都市輸出を推進 ド、すなわち自治体への新たな投資を誘 続いて登壇した同じく研究会代表発起 ノウハウやストーリーを提供することの 多彩な都市課題解決手法のポートフォ ナンス 」 、 「 製品・サービス 」 、 「 オペレー 日本の都市輸出の取り組みが進められている。その第一人者らが集い、日本の都 学官の連携で研究を行う同研究会の意 方創生という日本が抱える2つの大きな アウトバウンドの取り組みがインバウン く評価した。 出すナレッジ・プラットフォーム 市課題克服の実績を語るとともに、政 課題克服の実績 」 、 「 政策・制度 」 、 「 ガバ るなか、都市課題の解決と持続可能な都市づくりを支援すべく、官民連携による 地の集積を誘致するきっかけとなる。 ことである。日本の自治体が有するこの ようにも見える。そこで都市輸出という 参加する意義は大きいとその成果を高 本が過去に解決してきた都市課題解決の 可能にする。それはインフラ輸出と地 では図表 1に示すように各都市の「 都市 アジアをはじめとする途上国の各都市において急速に進む都市化。課題が山積す 市の競争力強化への貢献を目指して産 都市輸出において、自治体は自らの都 あり、海外展開はその本旨にそぐわない 起こすものであり、大学の研究者として 研究会は新しいイノベーションを生み 経営スタイルを編み出してきたという この「 強み 」を生かすため、都市輸出 ~「 都市ソリューション研 究会 」の 活動から見えたこと~ 技術を有する国内外の企業の新たな立 ンドとインバウンドの一体的な推進を に画一的に対応するのではなく、独自の 都市輸出の未来を語る 都市ソリューションセンター ホームページ http://www.pwc.com/jp/cities/ 最初に登壇した研究会代表発起人の 都市ソリューション研究会の活動は、 長田 英知 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 都市ソリューションセンター 副センター長 都市ソリューション研究会 研究副主幹 日本が成長するための鍵は、都市輸出 日本には、世界の新興国諸国よりも先 国や自治体、企業、大学との連携によっ にある。アジアの都市が抱えるさまざ に、都市問題を克服してきたという強 て、都市問題の解決手法に新しいイノ まな都市問題に対して、日本はどのよ みがある。そうしたノウハウをさらに ベーションを起こそうとするものだ。 うな ”都市ソリューション ”を提供でき 示していくべき。これまでも産学官に そこには大学の研究者が参加する意義 るのか、都市ごとの課題解決のストー よる同様の研究会はいくつも存在した が大いにある。これからも、より強い リーを見せていくことが重要。それが が、これだけ熱意のあるものは珍しい 連携によって日本の都市インフラの輸 企業のインフラ輸出のみならず、地方 のではないか。素晴らしい成果を挙げ 出と都市の競争力強化に向けて取り組 創生にもつながると信じている。 ており、非常に意義のある研究会だと んでいきたい。 いえる。 Value Navigator 15 Value Report 広田 幸紀 氏 信時 正人 氏 高橋 元 氏 独立行政法人国際協力機構 企画部 部長 横浜市 環境未来都市推進担当理事 JFEエンジニアリング株式会社 海外統括本部 部長代理 自治体、企業、政府、学術機関がこう 日本ならではの素晴らしい技術を持っ した形で足並みを揃えるのは非常に 珍しく、私自身も多くの実例を学ぶこ とができた。社会的弱者に配慮した公 共交通の整備や大気汚染緩和や廃棄 佐藤 伸朗 氏 東京都 都市整備局理事 ( 航空政策・交通基盤整備・交通政策担当 ) 田中 信貴 氏 鈴木 學 氏 日揮株式会社 第 3 事業本部ビジネス開発部 部長代行 株式会社日立製作所 交通システム社 技監 当社は官公庁や自治体と連携したプ これまで都の都市づくりのノウハウを ていながらビジネスで苦労する企業が ロジェクト提案を海外各都市で実施 海外に売り込むという視点はあまり 市ソリューション輸出について議論で 本の信頼できるものづくりと信頼でき 多いなか、自治体が果たす役割を考え しているが、公共施設設置にあたる 持っていなかった。研究会の活動を通 きる場はこれまでなかったのではない るオペレーションの双方が必要である ることが近々の課題だと思っている。 住民合意形成をどう行うのかなど民 じて改めて東京という都市の公共交通 か。自分も初めての経験であったし、 ということを強く認識した。民間企業 いま自治体として次の展開を考えた場 間企業が持ち得ないさまざまなノウ を主体としたまちづくりがどのように さまざまな立場や方向からアドバイス 側がしっかりとして、一切のリスクは われわれが背負うんだという覚悟で行 このような形で産官学が連携して都 英国の高速鉄道プロジェクトでは、日 物処理を通じた都市の環境負荷の低 合、都市ソリューションの輸出は自治 ハウが自治体にはあるため、官民双 実現され、また海外にどう映っている をもらえたことの意義は大きい。次の 減など、開発目標が多々あるなか、今 体、企業双方にとって大きなチャンス 方の知見を活用することでプロジェ のかについて改めて見つめるよい機会 ステップでは、第 1 期で繰り広げられ かないと、官民連携は成功しないだろ 後も都市輸出では、できる限り自治体 となる。有機的な官民連携を図って進 クト形成がより円滑に進むことを期 となった。 た議論を実現するための具体的な取り う。 の力を活用していきたい。 めたい。 待している。 して都市ソリューション輸出の方法論に ついて詳説した。なかでも自治体、企業、 組みを進めていきたい。 水谷 哲也 氏 吉岡 徹 氏 清水 喜代志 氏 一木 伸也 氏 野城 智也 氏 仙台市建設局下水道経営部 経営企画課経営戦略室 室長 日立造船株式会社 顧問 国土交通省 大臣官房技術審議官( 都市局担当 ) 三菱商事株式会社 理事 開発建設本部長 東京大学 生産技術研究所教授 都市ソリューション研究会 発起人 政府が連携することの重要性を強調、 3 者が連携し、海外の人材や企業をひき つけるインバウンドと、インフラ輸出を 行うアウトバウンドを一体的に推進す 国際貢献は、これからの自治体にとっ 新興国の都市問題に焦点を当て、その アジア諸国の省庁とのコミュ ニケー 官民連携の都市輸出では、しっかりと て欠かせないことと考えている。どう 解決策としての官民連携による都市ソ ションで意外と重要なのが雰囲気づく したマスタープランを作成することが 握しながら、まとまった1 つの解決策 すれば、相手都市にとって意義のある リューションの提供という大きな視座 りだ。自分たちがパートナーであると 肝要だ。同時に、土地を利用する権利 を提供するには、官民のさまざまな組 織が役割分担をし、時間をかけて取り 相手国側が抱える都市課題の事情を把 る都市輸出戦略を描くことが重要であ 国際貢献を具体的に形作っていくこと で取り組みを進めているのが、都市ソ いう雰囲気をどのように伝えるかが成 を必ず確保すること。その上で、イン ると主張。その事例として、東京都や ができるのかについて、都市ソリュー リューション研究会の他にはない特徴 否を分けると言っても過言ではない。 フラをつくるのと並行した素早い資金 組む必要がある。今後もこの研究会の ショ ン研究会で一緒に考えていきた である。産官学の皆さまと一緒にさま 欧米に対しては「 先生 」というイメー の提供が必要になる。官には、G to G ような活動を通じて、組織間のコミュ い。研究会には今後、より多くの自治 ざまな検討を行えることは大変有意義 ジだが、日本には「 お兄さん 」といった ベースの長期の資金提供と、民間投資 ニケーションを密にし、お互いに何がで 体を活動に巻き込んでいただくことを だと感じている。 イメージで接してくれるような雰囲気 を促進するインセンティブに期待した きて、何ができないかを理解し、フレキ づくりを今後も進めていきたい。 い。 シブルに取り組んでいくことが大切だ。 横浜市、大阪市、京都市、富山市、仙台 市による都市の課題克服のストーリー を紹介した。 期待する。 ■ パ ネルディスカッション ① 復旧、防災対策などに触れ、JICAなどと 都市輸出を推進するための制度や体制 ■ パ ネルディスカッション② 組織の必要性を強調。都市ソリューショ 日本側のノウハウと熱意がミャンマー 協力しながら国内外の都市と防災の知 が現在、十分に整っていないという点 日本の稀有な都市開発を売り込むため ンを売り込むための地盤づくりや、海外 政府を動かした経緯を強調した。鈴木 パネルディスカッションでは、官民連 識を共有していくと強調。一方、高橋氏 である。吉岡氏、高橋氏は企業の立場 の官民連携組織の構築を 交通・都市開発事業支援機構 (JOIN)の 氏も、鉄道事業での官民連携の成功事 携による都市輸出のキーパーソンが一 は、民間企業の立場から、政府や横浜市 から政府による支援が一本化すること 創設について触れた。 例として知られる英国での鉄道事業に 同に介し、議論を繰り広げた。 と実施したインド バンガロール市での の重要性を訴えた。また信時氏は首長 2 つ目のパネルディ スカッ ショ ンで 廃棄物焼却施設調査プロジェクトの成 が代わると方針も変わりやすいという は、官民連携による都市輸出の未来につ 主要な企業の成功事例に見る課題解決 テムを官民連携で海外に展開すること いて、まず広田氏は、現在のアジアにお 果について紹介した。同じく吉岡氏も、 自治体が抱えるリスクについて問題提 いて、意見が交わされた。佐藤氏は、鉄 のヒント へのさらなる意欲を示した。 ける課題解決に取り組むことの意義を 都市ごみ焼却施設およびメタン発酵施 議を行った。 道からバス、自転車までをつなげた混雑 強調した上で、JICAにおける自治体と 設の海外での納入実績などに触れた。 官民連携の今と未来の可能性を語る 1 つ目のパネルディスカッションにお 連携した無償資金協力の実績を報告し ついて触れた後、日本の優れた交通シス その後、ファイナンスも含めた官によ モデレーターの城所氏は、自治体、企 緩和策を推進するための官民連携や、都 その後、田中氏は、みずほ銀行と進め るサポートや、官民連携のプロデュー 業、政府がそれぞれのミッションを理解 心と臨海副都心とを結ぶ BRT( バス・ラ るインド チェンナイでの工業団地開発 サー的な存在の必要性について意見が た。 続いて信時氏は、横浜スマートシ 成 功 の カ ギ は 自 治 体、企 業、政 府 の した上で連携することで Win–Winの関 ピッド・トランジット )の導入計画など プロジェクトを取り上げ、持続的な都市 一致すると、最後にモデレーターの野 ティプロジェクトの全体像と現在の取り Win-Win 構築にある 係が生まれると指摘、最後は、研究会の を説明、東京都が公共交通を軸に発展し を実現するには官民連携と合わせて複 城氏が、この日に挙げられた課題を見つ 活動を通して自治体と企業の Win–Win てきた世界でも稀有な都市であること 数の産業クラスターの相互発展関係が めながら、コミュニケーションやネット 組み状況、また水ビジネス展開の体制や 公民連携による国際技術協力事業を解 続いて都市輸出における官民連携の の関係が見えてきたとする広田氏の見 を紹介した。清水氏は国の立場から、こ 必要と主張。また一木氏は、成功した官 ワークをさらに強めていくことを宣言。 説した。水谷氏は、東日本大震災の経験 課題について、それぞれの立場から意 解に全員が同意してディスカッションを のような先進的な日本の都市開発の実 民連携事例としてミャンマーでのティ 万雷の拍手のなかでセミナーの幕が降 を踏まえた下水道事業の危機管理、災害 見が出された。水谷氏が指摘したのが、 終えた。 績を積極的に発信するための官民連携 ラワ工業団地開発プロジェクトを紹介。 ろされた。 16 Value Navigator Value Navigator 17 Value Report アフリカの都市とインフラ投資 サブサハラ アフリカは人口が 9 億 5 千万 電網計画( グランド・インガ・ダム )な 人を超え、今後も世界最速で人口増加 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 公共事業部 ディレクター ど超大規模計画も進行しており、アフリ が進む地域である。広大なアフリカ大 中島教雄 カ各国の電力セクター開発への意欲を 陸では、人口 100 万人以上を有する各地 製造業・小売向け基幹システムの導入や、官公庁システム導入のプロジェクト管理を経て、 感じ取ることができる。また、予算の約 域の主要都市がアフリカ経済を牽引す 現在は公共事業部と新興国展開戦略支援室を兼務し、主にアフリカ・中南米・アセアン ることが期待されているが、課題はその 手掛けている。早稲田大学 政治経済学部卒。 地域でのビジネス環境調査や政府機関の政策立案に必要な海外市場・政策調査などを 37%( 254 億ドル )を占める運輸・ロジ スティクスについては、回廊と呼ばれる インフラ不足である。インフラの量と 幹線道路整備が予定されており、主要港 質が絶対的に不足しているアフリカで から内陸国もしくは大都市への物資を は、国際機関や各国政府のインフラ整 用の創出、インフラ整備における効率性 果 が 得 ら れ にくい 費 用 対 効 果 の 問 題 運ぶ何本ものルートが、アフリカを横断 備計画だけでは十分ではない。今後は の向上など、今後のアフリカの経済発展 もあるため、地域レベルやアフリカ全 する形で計画されている。 アフリカの都市化を支えるインフラ分 を考える上で非常に重要なテーマの1 つ 体、国際機関との共同計画立案も珍し PIDAの計画では、情報通信( ICT )へ 野での民間投資がより一層期待される といえるだろう。ただし、こうした都市 くない。 アフリカでは、アフリカ連合 の予算割り当てが最も小さく、0.7%強 だろう。 化の進行には課題もある。そのうちの1 ( AU )がアフリカ全体インフラ計画であ ( 5 億ドル )しかない。これは、他のイン つは、都市を中心に急拡大する人口と経 る「 アフリカ・インフラ開発プログラム フラよりも重要ではないということでは 済を支えるインフラ整備が間に合わな ( PIDA: Programme for Infrastructure なく、情報通信産業の特性として電力や Development in Africa )」を策定してい 道路のような巨大インフラが不要であ サブサハラ アフリカ( エジプトやアル ジェリアなど北アフリカ諸国を除くアフ いことだ。 アフリカ大陸における幹線道路(回廊)とインフラ整備計画 ンジャメナ ラゴス Djibouti港 アディスアベバ Abidjan港 Tema港 ナイロビ Lagos港 Lamu港 Lekki港 Mombasa港 Barra do Dande港 Luanda港 幹線道路(回廊) 2020年インフラ 整備計画 2040年インフラ 整備計画 主要都市 港湾 Dar es Salaam港 Lobito港 Baira港 Walvis湾 リカ地域。本稿のアフリカはサブサハ 近年アフリカが特に力を入れるインフ る。この計画は、運輸、エネルギー、水 ることや、通信・IT分野は欧米系企業 ラ アフリカを指す )は 49 カ国で、域内 ラ整備が 2 つある。それは電力と運輸・ 資源、情報通信( ICT )の 4 分野に 2020 を中心に民間企業の投資を呼び込みや 人口は 9 億 5 千万人を超え、現在世界で ロジスティクスである。電力がないこ 年 ま で に 約 680 億 ド ル を 投 じ る も の すい分野であることも影響しているだ 最も人口増加のスピードが速い地域と とには、経済活動を拡大することは困難 で、アフリカ大陸レベルでの広域計画と ろう。アフリカでは既に携帯電話は想 なっている。 面積も広大で、アフリカ で、かつ海外投資を呼び込めないことも なっている。特に注目すべきは、予算の 像以上に普及しており、日本では一世代 大陸全体の面積は中国、インド、米国を あり、アフリカ各国は積極的に電力プロ 約 6 割( 403 億ドル )が電力セクターに 前の 3Gモデルや、中古の携帯電話機に 逆に、ビジネスとして見ればアフリカの てからアフリカ市場を検討しても「 時す 合計したものよりも大きく、人口密度は ジェクトを推進している。もう1 つの運 割り当てられていることだろう。電力セ SIMカードを挿して使っている。さまざ インフラビジネスは非常に有望だとも でに遅し」ということにもなりかねない。 87 人 /km ほどで、中国の 142/km や 輸・ロジスティクスは、特に幹線道路や クターでは、この計画以外にもコンゴ川 まな情報が携帯電話に入ってくること いえる。前述の PIDAでは、計画通りに 日本では現状決して強いとはいえ インドの 367/km に比較して圧倒的に 鉄道の整備への関心が高い。アフリカ の水力を利用したアフリカ全域への送 で、農業や小売り分野で販売チャネルの 整備が進んだとしても、2020 年までに ないアフリカへの投資意欲ではあ 低い。この人口密度の低さはインフラ 大陸は広大かつ内陸国も多く、特に主要 拡大や、小売業者が取引条件を比較で インフラは主な都市部や都市部を結ぶ る が、徐 々 に日 系 企 業 の 進 出 事 例 も 整備の面で効率性が望めず、アフリカ 港から各地域への物流網は地域経済の きるようになった。また、特に注目に値 限定的な部分にしか導入できない。慢 増 え て い る。 ま た、 来 年 に は 日 本 と の経済発展を考える上で課題とされて 生命線である。しかし、現在のトラック するのは、モバイルマネーの普及だ。こ 性的に歳入不足に悩まされているアフ ア フリカと の 重 要 な 対 話 の 場 で あ る きた。しかし、一方で大都市も多く、人 輸送中心のロジスティクスでは物流コ れは、銀行口座を持たなくても、携帯電 リカ各国政府にとって、民間企業のイン ア フ リ カ 開 発 会 議( T I C A D : Tokyo 口 100 万人以上の都市は 40 以上、300 ストが高く、内陸国の多いアフリカにお 話で送金ができ、携帯会社の提携店で現 フラ投資はなによりも関心が高く、優先 International Conference on African 万人以上の都市も10 を超える。こうし いて、輸入品の価格上昇はもちろん、輸 金の入出金ができる仕組みで、ケニアの 順位の高いテーマとなっている。もちろ Development )の第 6 回が控えているこ た大都市の多くは、植民地時代から欧米 出品の価格競争力にも負の影響を及ぼ M-PESAが有名だ。アフリカでは、現金取 ん、多くの日本企業にとって、アフリカ ともあり、今年末から来年にかけてアフ 諸国の経済拠点として発展した経緯が している。 引のコスト高からビジネスに多くの限界 ビジネスは透明性やガバナンス、現地ビ リカ関連の情報も増えてくるだろう。こ 2 2 2 PIDA の予算配分 電力 4 03 億ドル 運輸・ ロジスティクス 254 億ドル ヨハネスブルグ Saldanha湾 ケープタウン Durban港 Port Elizabeth港 出典:PIDA “Energy Vision”をもとに PwC 作成 あり、独立後も経済・政治の中心地とし 絶対量の不足するアフリカのインフ があったが、このモバイルマネーにより ジネス慣行、人材などさまざまな懸念材 うした機会が、日本・アフリカ双方の政 ての役割を引き継いでいる。国連の推 ラであるが、アフリカには貧困国が多 時間と場所を超えた決済が実現し、現地 料があるのは間違いない。地理的な近 府関係者だけでなく、日本企業の方々に 計では 2030 年にはアフリカ人口の約半 く、予算や技術的な制約から自力でイ ビジネスの自由度は格段に増している。 さや市場の大きさから ASEANやインド とってもアフリカビジネスを検討する良 数が都市に住むと予測されており、アフ ンフラを構築できる国は多くない。ま 現状を考えれば、アフリカは今後もイ を優先する日本企業も多いだろう。た い機会となることを期待している次第 リカの都市化はサービス産業や現地雇 た一国だけでは投資に見合う十分な効 ンフラ不足に悩まされるだろう。しかし だ、ASEANやインドへの投資が一巡し である。 18 Value Navigator 情報通信 5 億ドル 水関連 17億ドル Value Navigator 19 Value Report インド 100スマートシティの始動 モディ首相率いるインド人民党( BJP ) 政権が選挙公約として掲げた「 100 ス プライスウォーターハウスクーパース株式会社 コンサルティング部門 シニアマネジャー マートシティ構想( 100 Smart Cities )」 中間 雅彦 が実現に向けた動きを加速している。 東京大学経済学部卒業後、大手製造業での新事業開発業務を経て現職。ハイテク業界、 図表 1:インドにおけるスマートシティ開発スキーム 都市開発省 & 観光省 都市開発省 この構想を主管するインド中央政府 都 自動車業界における事業戦略・製品戦略策定、原価企画業務改革、サプライチェーン再 市開発省は 2015 年 8 月 27 日、本構想で 活動。南・東南アジア、アフリカなどの新興国における参入戦略策定、事業組成、アライ 予算総額 4,800 億ルピーに及ぶ。 各都市に対して、約 50 億ルピーの支援を予定。 100 Smart Cities 構築に関する支援に従事。近年では新興国における日本企業の事業展開支援を中心に アンス構築、サプライチェーン構築などの支援を手掛ける。 の開発対象となる全国 98 都市の選定結 果を発表した。本稿では、インド政府が 今後 5 年間で 4,800 億ルピー( 約 8,800 人民党( BJP )政権は、2014 年の総選挙 ( SEZ )や物流インフラをはじめとする産 億円 )を投じるとされるこの構想を中心 において「 100 のスマートシティを建設 業インフラの開発を伴うものであった。 として、インドにおけるスマートシティ すること( = 100 スマートシティ構想 )」 開発の特徴と今後の展開を紹介する。 を公約に掲げ、この状況の抜本的改革に は、経済成長の促進を狙いつつも、一般 乗り出した。 市民の「 生活の質 」に焦点を当て、その それに対し、100 スマートシティ構想 実現に向けて情報通信( ICT )技術を駆 インドにおける都市の現状 100 スマートシティ構想の特徴 使することを狙っている。諸外国にお けるスマートシティは ICT技術や環境技 都市が経済成長の原動力となりさら 都市開発省と観光省の共同プログラム。 12 の遺跡都市のインフラ開発にフォーカス後に 50 都市へと拡大される予定。 HRIDAY 都市開発省 商工省 50 0 都市の都市インフラ再活性化プロジェ クト。上下水道、公衆衛生、道路交通の 整備に重点を置く。予算総額 5,000 億ルピー 各州政府主導のプロジェクト群 •ナヤ ライプール(チャッティスガル州) •ボパール ‒ インドール回廊 (マディヤ プラデシュ州) •GIFT City(グジャラート州) •西ベンガル州が推進する 7 都市の開発 産業回廊 AMRUT 州政府 プロジェクト インドの スマートシティ 開発 スマート ポート 二国間 プロジェクト 諸外国援助機関 によるプロジェクト群 5 つの産業回廊の開発を推進。 総額 1,000 億ドル以上が投資される。 •デリー ‒ ムンバイ •アムリッツァ ‒ コルカタ •東海岸 •チェンナイ ‒ ベンガルール •ベンガルール ‒ ムンバイ 海運省 12 の港湾都市に、 世界水準の港湾設備と インフラ整備をし、 スマートシティ化を図る。 ナマミ・ ギャンジ ナマミ・ギャンジ・プログラム (米国、シンガポール、日本、スペイン、フランス) •米国が支援する 3 都市の開発 •アムラヴァティ(マハラシュトラ州 ‒ シンガポール) •ヴァラナシ(ウッタル プラデシュ州 ‒ 日本 / 京都) •DDA(スペイン / バルセロナ) •フランスが支援する 2 都市の開発 なる都市化を引き起こすメガトレンドは 100 スマートシティ構想を主導する 術の活用による環境配慮型都市を指す インドにおいても変わることはない。現 インド政府・ 都市開発省は、2015 年 6 ことが多いが、100 スマートシティ構想 在、インド全土の人口の 31%が都市に居 月に “Smart Cities Mission Statement におけるスマートシティは上下水道、電 住し、GDPの 63%が都市により生産され & Guidelines”を発表して事業を本格開 気、廃棄物処理、交通、通信などの基礎 ているが、経済成長に伴いこの傾向は急 始し、2015 年 8 月 27 日には開発対象と インフラの整備に加え、行政サービス、 加速するとみられる。インド政府は、15 なる 98 都市の選定結果を発表した。追 医療、教育など、より幅広い要素を包含 ⑤Urban Mobility 入企業の選定の入札は 2016 年度中頃か 府の財務状況であろう。100 スマー ト 年後の 2030 年には都市に居住する人口 加発表される 2 都市を加えた100 都市 し、 「 生活の質 」の向上を目指しているこ ( ITS、マルチモーダルなど ) ら後半にかけて公示されると予測され シティ構想では、インド政府が 5 年間で は全人口の 40%に達し、都市による生産 の開発が本格化していくこととなる。 とが特徴である。導入が想定されてい ⑥Others る。このマーケットへの参入を志す企 総額 4,800 億ルピー( 約 8,800 億円 )を るソリューション群を以下に示す。 ( 遠隔医療、遠隔教育など ) 業にとっては、ターゲットとする都市や 投じ、各プロジェクトあたり年間 10 億 ソリューション、アライアンス体制など ルピー( 約 18 億円 )を投じることが計画 の具体的な戦略を検討すべき時期に来 されているものの、この金額は各都市の ているといえるであろう。 開発に必要な資金需要を満たすもので は GDPの75%に達すると予測している。 100 スマートシティ構想の特徴に触 このように急拡大が予測されるイン れる前に、インドにおける都市開発の ドの都市であるが、その都市インフラの 取り組みを振り返ってみたい。インド ①E-Governance and Citizen Services キャパシティーは既に許容量を超えて ではこれまでにもインド政府や諸外国 ( 各種電子行政サービス、監視カメラ いる。周知のとおり、インドの諸都市で 政府・援助機関も関与した数多くの都 は停電や断水が常態化し、住宅価格の高 市開発プロジェクトが実施されている 騰に伴う、スラムも含めた無秩序な市街 ( 図表 1 参照 ) 。100 スマートシティ構 の拡大が交通渋滞と環境・衛生の悪化 想の特徴を理解するには、これらの従 を引き起こしている。 来からの取り組みとの相違点を理解す る必要がある。 インド諸都市のこの状況を放置する ことは、経済成長の原動力たる都市の生 デリー – ムンバイ産業回廊( DMIC ) ネットワークなど ) PwC 100 スマートシティ構想の今後の展望 今後、州政府における対象都市の開発 はない。インド政府は、インド政府から 計画の詳細化が 2015 年度、インド政府 細心の留意を要する。巷間に広くいわ の支援に加えて同等以上の投資を各州 ( 廃棄物発電、堆肥化、下水処理、リ における開発着手是非の審査が 2016 年 れているように、複雑・不透明な権利関 政府に条件づけている。最終的にはこ 度前半に行われ、2016 年度中頃には初 係に起因する用地収用の遅れ、政治的 の資金負担に耐えうる州、もしくは資金 ③Water Management 年度着手 20 都市が発表される見込みで リーダーシップの不在、不透明な政治・ 調達に有効な事業スキームの構築に成 ( スマートメーター、漏水管理、予防 ある。なお、着手対象都市は段階的に採 行政の意思決定など、都市開発プロジェ 功した州において、スマートシティ開発 保全、水質管理など ) 択され、初年度 20 都市、2 年度目に 40 クトの遅延や混乱をきたす要素は枚挙 が進んでいくことになる。裏を返せば、 にいとまがない。 いかに魅力的な事業スキームを州政府 サイクルなど ) に代表される 5 産業回廊構想など、従来 ④Energy Management 都市、3 年度目に残都市が採択されると 向上を妨げ、低い生活水準に甘んじさせ の都市開発プロジェクトの多くは産業 ( スマートメーター、再生可能エネル される。 ることとなる。モディ首相率いるインド 開発に主眼を置き、工業団地・経済特区 ギー、グリーンビルディングなど ) Value Navigator 特にターゲットする都市の選定には、 ②Waste Management 産性を押し下げるとともに、国民の所得 20 ガンジス川沿いの 10 都市の美化を図る 関連機関横断プログラム。 予算総額 250 億ルピー。 この時系列上では、ソリューション導 これらの要素に留意することはもちろ んのこと、留意すべき最大の要素は州政 に提案できるかが、応札企業にとっての 成功要因となるであろう。 Value Navigator 21 Value Report 中国税務 におけるリスクマネジメント 経済環境の激変で税執行はどう変わるのか? 対ビジネス国として、見過ごすことので 経済を持続的に発展させていくことを明 大な情報を税収管理システムによって とも予期される。そうした可能性とリス 確に表明している。具体的には、2015 管理、分析することで、リスクの高い企 クを考慮しつつ、日本企業としては、 「新 きない大きな市場である中国。これま PwC 税理士法人 税務 マネージャー( 中国デスク ) で中国内の各都市では独自に優遇政策 渕澤 高明 年 5 月6日に公布された国家税務総局公 業に対して資源を集中的に投入して、税 しい中国の税制を適時に正しく理解する などを提示し、外資系企業の誘致も積極 2002 年 10 月中央青山監査法人東京事務所に入所。以降、約 5 年間にわたり主として日 布意見「 法に依る税務執行の堅持に基づ 務調査を実施(e-tax audit )するという、 こと 」 、 「 税制の理解に基づき、日常的に く、より良いサービス経済の発展 」にお 税務執行の厳格化に向けた動きもある。 コンプライアンスの遵守に努めるととも いて、税収機能の作用によって、経済の こうしたことから中国の税務について に、税制調査が入った場合であっても論 持続的かつ健全な発展を促進するもの は、過去にあったような非合理性が減少 理的に合理性を主張すること 」といった とし、その実現を支える「 法に基づく徴 し公平性が強化されることが期待される 適切な対処を施し、税務が中国でのビジ 的に行ってきた。だが、中国でのビジネ 本の製造会社を中心とした多数の会計監査業務に従事。2010 年大手税理士法人に入所、 ス展開にあたっては、予期せぬ課税によ 事務所に入所、日系企業への中国における一般税務業務に係るサービスを担当。2014 2011 年 3 月まで移転価格アドバイザリー業務に従事。2011 年 7 月よりPwC 中国(上海) 年 7 月PwC 税理士法人東京事務所(中国デスク)へ出向、日本企業の中国進出に伴う税 る税負担の発生など、さまざまなリスク 務ストラクチャリングサービスを担当。公認会計士。 が存在することも否めない。すなわち、 合理的な根拠に乏しい、理不尽かつ多額 収政策に基づき、健全な経済を持続的に ば還付される。また、貿易企業などのい 税による組織収入の原則を堅持する 」と 一方、税務制度の改正や、その執行を確 ネス展開の弊害とならないよう管理して の課税が行われるなど、税務行政の執行 発展させていくことを明確に表明して わゆる “非生産型 ”の企業が物品を輸出 いった4 つの方針が掲げられている( 表 保する税務調査が、より厳格性を増すこ いくことが重要といえる。 が企業経営上の大きな不確実要素とな おり、それを達成するための基本的な方 する際、中国国内から当該物品を仕入れ 2) 。すなわち、国家として「 法に基づい り得るのが現状となっている。特に近 針として、国家予算として定められた税 る際に支払った仕入増値税についても た税務執行 」の実施が明確に謳われてお 年の中国は外資系企業に対して課税強 収を法に基づき執行し、かつ、その執行 同様に還付される。しかし、税務還付の り、どの地域であっても一定水準のレベ 化の傾向にあり、税務調査の増加も危惧 を厳格化することを掲げている。かかる 手続きを行っても、税収確保などの視点 ルをもった税務担当により、過去に散見 されている。本稿では、中国でのビジネ 方針は、輸出をはじめとした産業の発展 から、なかなか還付されないケースが起 されたような不合理な税執行は今後、減 ス展開にあたり、税務に関する留意すべ を妨げかねない、過去、散見された不合 きているのが実情だ。 少していくものと期待される。また、特 きポイントやリスク、そして今後の展望 理な税務執行の改善をもたらすものと このような税務執行は実務上、各地域 に増値税の輸出還付に係る効率性の向上 について、具体的な事例を交えながら概 期待される一方、より厳格な税務制度の の税務当局および税務担当官によって についても、2015 年 8 月11日に公布さ 説していきたい。 設計や、活発な税務調査の実施といった 行われているが、これまでの慣習、ある れた「 ≪国務院事務局、輸出入の安定し 形で日本企業にも大きな影響を与える いは個々の判断に依存していることも た成長の促進に関する若干の意見≫の徹 ものと考えられる。 少なくない。そうした個人レベルの解釈 底した実施に係る通知 ( 」 税総函[2015 ] が画一的ではない税務執行、ひいては不 440 号 )のなかで強調されている。 はじめに中国経済の近況を見た場合、 トピックスとして挙げられるのが 2015 年 8 月11 ~ 13日に実施された人民元 中国税務におけるリスクケース の切り下げである。中国政府の公式見 合理な課税につながっているケースが 表1: 法の適切な執行に基づく徴税か否かが不明確なケースの一例 テーマ PE( 恒久的施設 )課税 日中租税条約に定められた PEの構成要件を満たしていないと考えら れる状況において、PEの存在を前提とした納税を求められる。 ロイヤルティーと サービスフィーの区別 日本本社から中国現地法人に対して契約に基づきサービスを提供してい る実態がある場合において、その対価の支払いについてサービスフィー ではなくロイヤルティーとしての取り扱いに基づく納税を求められる。 移転価格税制 赤字を計上している中国現地法人が契約に基づく日本本社に対してロ イヤルティーを支払う場合において、その損金性が疑問視される。 組織再編税制 中国国外で行われた組織再編に関し、中国における税務上の取り扱い が明文上、不明瞭となっている。この点、実務上、中国現地法人に係 る持ち分の譲渡として取り扱いキャピタルゲイン課税が必要という考 え方と、持ち分の譲渡ではなく単なる投資者の名称変更でありキャピ タルゲイン課税は不要という考え方が両立し得るなか、税務当局より 前者の考え方が採用される傾向にある。 実質重視の原則 税務上の優遇措置を受ける場合の受益者認定や、一般租税回避防止条 項適用にあたっての合理的な商業目的の有無の判断において、形式基 準に捉われがちとなり、実質を見られることなく形式的な判断がなさ れる。 加えて、税務制度の設計面において 否めないのである。表 1に法の適切な執 は、近年注目を集めている「 BEPS( Base 内容 解では、 「 人民元の切り下げは、輸出増 まずは、これまで見受けられてきた 行に基づく徴税か否かが不明確なケー Erosion and Profit Shifting:税源浸食 による国内経済の活性化ではなく、基準 中国でのビジネスにおける税務上のリ スを示す。ただし、これらは法に基づく と利益移転 )」についても、OECDによる 値の市場実勢値への調整を目的とする 」 スクとして、増値税( 付加価値税 )の還 適切な執行であるか否かが不明確な事 BEPS行動計画が最終化されるなか、本 ことを表明している。過去、輸出や投資 付に関するケースが挙げられる。増値 例であり、実務上はさまざまな取り扱い 稿執筆時の 2015 年 10 月時点の情報と によって経済発展を遂げてきた中国で 税は物品の売買やサービスの提供など が考えられるため、あくまでも参考事例 しては、中国の税務関連規定も改正の途 は現在、在庫や設備過剰といった課題が に対して課される税金で、課税対象項 として捉えていただきたい。 上にあり、2015 年 9 月17 日に公布され 噴出しており、今後の経済成長の方向性 目にもよるが、物品の売買であれば 13 として消費主導型経済を打ち出してい ~ 17%、サービスの提供であれば 6 ~ 公平性と厳格性の強化が 代表されるように、国際的な潮流に合わ る。だが過去、2 桁成長を示し、輸出主 17%の税率で課される。対して、物品 予想される中国税務 せ税務制度の設計も進められているが、 ( 4 )正確な税収分析および徴税管理を展開する。 導型として発展してきた流れは急速に の売買を例にとれば、中国国内で材料を BEPSでの提示以上に、厳格な改正へと ( 1 )着実かつ深度ある税制改革を積極的に実施する。 は変わらないと考えられる。 加工、組立、販売する、いわゆる“生産型 ” それでは、こうした税務リスクに対し そうした昨今の中国経済の状況を税 の企業が物品を輸出する際、中国国内か て、今後はどのような変化がもたらされ さらに、運用面を見た場合、国家税務 制の視点から見た場合、どのような影響 ら原材料を仕入れた際に支払った仕入 るのだろうか。先に述べたように、国家 総局のもと、各経営指標や利益指数、納 が生じてくるのか。国家税務総局は、税 増値税については、所定の条件を満たせ 税務総局は税収政策に基づいて健全な 税状況などといった税収に関連する膨 22 Value Navigator た特別納税調整実施弁法( 公開草案 )に 向かう可能性もある。 表2: 国家税務総局公布意見「 法に依る税務執 行の堅持に基づく、 より良いサービス経済の発展 」の概要( 2015 年 5 月 6 日 ) テーマ 基本命題 内容 税収機能の作用によって、経済の持続的かつ健全な発展を促進するも のとされ、以下のような項目等について具体的な意見が示されている。 ( 1 )国家予算で確定した税収入に係る任務を堅実に遂行する。 法に依る税務執行の 堅持は徴税業務の 生命線 ( 2 )法に基づく徴税による組織収入の原則を堅持する。 ( 3 )規範に基づく税収執行行為を厳格化する。 ( 2 )徴税管理業務を着実に実施する。 具体的な税収施策に 係る方針 ( 3 )税収優遇政策を全面的に実施し、零細企業の発展や消費の拡大、 さらには科学技術の革新や起業等を促進する。 ( 4 )輸出税還付業務の管理等を堅実に実施することで健全で秩序の ある対外貿易を促進し、良好な徴税環境を整備する。 Value Navigator 23 PwC Japan News ダイバーシティ&インクルージョンの 推進体 制を 強化 — イクボス企 業同 盟 に加盟 被災地を会計相談で支援 —「なんでも会計相 談 」を開催 PwC あらた監査法人は 2015 年 7 月から 9 関するさまざまな相談にお応えしました。 2015 年 8 月 PwC Japan は、特定非営利活 この加盟を機に、性別、年齢、国籍、経験、 月にかけて岩手県陸前高田市の個人事業主 PwCと岩手県沿岸広域振興局は、密接な協 動法人ファザーリング・ジャパン主宰の積 障がいの有無などの多様性を尊重する「 ダ を対象にした会計相談ボランティアを実施 力体制のもと被災企業への経営指導支援活 極的に自社の管理職の意識改革を行い、次 イバーシティ 」と、多彩な人材を互いに融 しました。 陸前高田商工会の紹介による 動を展開しており、今後も会計という専門 世代の理想の上司( イクボス )の育成を目 合し合いながら活躍できる場を提供する 今回の活動では 1 日 3 回の会計相談を 5 日 性を生かしたボランティア活動で被災地の 間実施し、毎回 4 名の会計士が企業会計に 中小企業の復興を継続して支援します。 標とした企業のネットワークである「 イク 「 インクルー ジョン 」のさらなる浸透を図 ボス企業同盟 」に会計、監査、コンサルティ り、次世代リーダーの育成加速を目指して ング、税務の業界で初めて加盟しました。 いきます。 PwC、世界の人気 就 職 先として第 2 位にランクイン 職員へ交流とPwC Culture の体 感 の場を提供 — Culture Weekを実施 2015 年 9 月、PwC の Culture で あ る ダ イ 一 方で、クライアント先で 働くメンバ ー プクラスの学術機関のビジネスおよび工学 バーシティと行動理念( PwC Experience) が Culture を 感 じ る 機 会 が な か な か 取 れ 発表している「 世界で最も魅力的な企業 」 部専攻の学生を対象とした年次世界調査 をテーマにした 17 回のセッションを開催、 な い と い う の が 実 態 で す。3 年 目 と な る ランキングにおいて、ビジネス専攻の学生 で、ユニバー サム人材調査において 24 万 515 名の職員が参加しました。成長戦略の Culture Week には毎年多くのメンバーが から Google に次いで 2 番目に「 最も魅力的 人超の回答者が最も理想的な就職先企業を もと、メンバー数が急増する PwC Japan に 参加し、ともに学び Culture について議論 な企業 」として選ばれました。本ランキン ランク付けしたものになります。 おいて、メンバーの共通軸となる Culture を重ねています。 2015 年 6 月 PwC はユニバーサム社が毎年 グは、GDP 上位 12 カ国における世界トッ への理解がますます重要になっています。 P w C J a p a n、G o o g l eとの協業ソリューションを発表 — ワークスタイル変革に向けて 大学1、2 年 生向けのキャリア教育を支 援 — キャリア大 学 アワード2015 総合 第1位を受賞 プライスウォーターハウスクーパース株式 スに関するリスクを洗い出し、監査手続き 3 年間で Google 関連事業の人員を 50 名に 会社は 2015 年 8 月、PwC あらた監査法人 を検討するという会計士の仕事の疑似体験 拡充し、売上 15 億円を目指していきます。 は 9 月に、東京オフィスにて NPO 法人キャ をしました。参加者の満足度は大変高く、 PwC Japan は 2015 年 6 月 16 日、PwC が してサポートします。PwC Japan は、今後 2014 年に米国で発表したとおり、Google とのジョイントビジネスにおいて、国内企 業へのサービス提供を開始すると発表しま リアクルー ズが主催する「 キャリア大学 」 「 2015 年度キャリア大学アワード 」におい した。 本協業では PwC Japan が持つ業務 のサマークラスを開催しました。プライス て、 「 総合部門第 1 位 」および「 ベストファ 変革に向けた戦略から実行までの支援ノウ ウォーターハウスクーパース株式会社のサ シリテーション賞 」を受賞しました。 ハウ、業界に関する深い経験や広範なデー マークラスには大学 1、2 年生 33 名が参加、 タ、企業にかかわる最先端の知見を Google 「 知を武器に 」をテーマに、コンサルティン が提供する高速クラウドサービスと組み合 グの疑似体 験をしました。PwC あらた監 わせて、業務変革を目指す企業に対し、課 査法人の同クラスには大学 1、2 年生 40 名 題の抽出から業務の変革・定着までを一貫 が参加、 「 リスクに経営者とともに立ち向 かう 」をテーマに、クライアントのビジネ PwCあらた監査法人とPwC 税理士法人へ、法人名を変更 2015 年 7 月 1 日より、あらた 監 査 法 人 は 業が増えています。今回の変更は、そのよ 職 場 復 帰 するワーキングマザーをサポート 「 PwC あ ら た 監 査 法 人 」に、税 理 士 法 人 うなクライアントの競争力強化に対して、 PwC Japan は、出産 後 産 休、育 休を取 得 してスムーズに復職するためのサポートと プライスウォー ター ハウスクー パー スは グローバル水準の高い業務品質と卓越した したのちに職場に復帰するワー キングマ して、保育園探しのお手伝いをする「 保活 プロフェッショナルサービスの実践を期す ザーをさまざまな方法でサポートしていま コンシェルジュ 」と、企業と保育園が契約 す。2015 年3月には復職準備セミナーを を交わして入園枠を設定する「提携保育園」 ルの事業環境に主体的に参加することで企 開催、約 50 名が参加し、同期ママネッ ト を導入しました。 業価値を大きく成長させようとする日本企 ワー クを構築しました。10 月からは復職 「 PwC 税理士法人 」に、法人名を変更しま した。近年、加速度的に変化するグローバ るものです。 後のメンバーからニーズを吸い上げ、安心 24 Value Navigator Value Navigator 25 © 2015 PwC. 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