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語彙を豊かにする主題単元学習の展開 (二)

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語彙を豊かにする主題単元学習の展開 (二)
語桑を豊かにする主題単元学習の展開(二)
--﹁なぜ、人が恋しいのかo﹂の場合--
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刀
藤 宏 文
ような意味を実は担っているか。またへ他のどのような語虫との
有機的な関わりでこそへ価値を輝かせているか.そう求めるo
ことになった.本年度は'うちへ ﹁国語I﹂ (A=現代=二印位
は じ め に
=二クラスt B=古典=三蝉位=三クラス)を担当している0本
さて'二年目の学園で'新入生と、これから三年間を共にする
学習者の貝体的な﹁表現語崇﹂は'﹁理解﹂での﹁印象語﹂に
単九はt へ表IVの②に位述する.そこでは'﹁人恋しさ﹂の価
a-
﹁袋﹂をも'どうとらえ育むか。﹁語史を豊かにする﹂学習を求
探-関る.それに聴き耳を立てへ それと有機的な体系をなす
めてさても学習語史の﹁桑﹂としての﹁系統性﹂の探究を展望す
導かれ'主思意識に密着して、﹁語虫を;=Bかに﹂したい。
小説がある。それぞれに'深い﹁人恋しさ﹂が'語られている。
値を学び合いたい。教科古には'太宰治のr排軽﹂を初め三つの
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る。それは'技能学習と価値学習との統合を目指す﹁主題里冗学
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習﹂に見合いへ学習語史の、員にはとどまらない'質としての修
すると、教材への'学習者と私との﹁主湖意識﹂はヘビの語句
得を、常に指向する。
に注目するところから、深化の道をたどるか。﹁印象語﹂からの
出発である.たとえばへ形容詞を中心とするかOそのl語は'一
般的には'どのような意味と理解されているか。さらにはへ その
教材のその場で'作者(筆者)の﹁主滋意識﹂と直結して、どの
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﹁Eg]語I﹂ (現代・二坤位・二クラス)学習年間計画 使用教科右 折1学習社﹁国語こ (三訂版)
5
そこでへ本al九はtのr羅生門jからは'何が聞こえてきたの
の普遍的な価値を確かめ深める。川 形容詞は'どのように﹁人
かo∽ 形容詞は'どこまで変を語れるのかo川 ﹁人恋しさ﹂
恋しさ﹂を語るのか。糾 ﹁人恋しさ﹂を、どのように学んでき
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第七時の小主題は'﹁人恋しさは'どう表現されるのか。-場面
の中での形容詞の意味を読む。-﹂である.太宰治の r津軽j学
習の始まりである。〓 範読(加藤)に聴きひたる。∽ 二人の
心情をよ-表わしている形容詞を'一つずつ古き抜-。川 それ
ぞれの形容詞を含む文を、前後の文とともに、三文続けて古き抜
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報告である。形容詞語桑は'系統性をも射程に'豊かになった
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主題嬰冗﹁なぜへ人が恋しいのか。﹂の学習内容(︿表現)番号は'学年通算。)
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Aさんはへたけさんに関る心情を'形容詞﹁弱い﹂に'﹁わた
し﹂に関る心情を,形容詞凋劃叫叫﹂に,それぞれ鋭-聴き
取る。
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帥 たけさんの心噂久しぶりに出会った人(他人)には'会っ
た瞬間に'﹁元気だった?﹂などという何か会話をかわす。し
かし、たけは'何も言わず関係ないことを'弱い口調でいっ
た。この軒いはP太当は,たけ自身の中では払いものだったと
当は'1滴とも血のつながりがないo Lかしへたけの娘との間
>>
思う。喜びをおさえていたのだろう。/﹁わたし﹂の心惰。本
には'きょうだいの様にへ他人行儀がなかった。自分もたけの
になったのだ。
る。
昌 も , た け さ ん に 関 る 心 情 を , 形 容 細 ﹁うれしい﹂に'﹁わ
たし﹂に関る心情をP﹁ありがたHTに,それぞれ鋭く聴き取
(B君の表現1 5) ( 間に当たる。)
も獲得する。
のにしようとしている.1地相査が'広がりをも生みへ豊かさを
ててへその﹁印象語﹂を'すでに﹁袋﹂としての系統性の中でも
﹁人恋しさ﹂の奥処に連なる。Aさんは、そこに鋭く聴き耳を立
っていることがわかりますね。
一見平凡な形容詞が'対義語との対比を通し、場面の中で'
ね。㊥にへまことに鋭い洞察とその表現がありますね。﹁弱
い﹂という一見何でもない形容詞が、ここでは'重い意味を担
ね。⑦の形容詞には'謙虚で純粋な心がよ-表われていますよ
(私のひと言)大切な二つの形容詞が'よ-押えられています
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家族の一人なのだという喜びから'﹁ありがたい﹂という気持
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⑨
⑳
①
>>
帥 たけさんの心情oたけもやっぱり、会いたかった.そしてへ
う。/﹁わたし﹂の心惰。会えると思うとうれしくてうれしく
てたまらないということを,素直に表現していると思うSD人の
れしいんだよという気持を表罫しまったんだろ
こうからへ会いに来てくれるとはへ思っていなかったから。/
本当の本当に再会することができて感激している。まさかへむ
不幸を喜んでまでうれしがるんだから'本当にうれしいんだな
え遠-触れていようと、心と心は通い合っている。しかしヘ音
母親そのものだった。自分を育ててくれたたけだから-oたと
てきますね。㊥この﹁ない﹂は'助動詞ですよ。﹁いい﹂は形
(私のひと言)①Jの放言は'実に素朴なひびきを持ってせまっ
あと思う。
S!
﹁わたし﹂の心情。わたしにとってたけは母親がわり'いやへ
のことがなつかしく思われて'どうしても会いたい'会わなく
容詞です。これに食いついてみよう。㊤表面の﹁さりげない﹂
ママ
てはならない (自分から)と思っている。
分のことのみにとどまらずに'世間の人に向かってお説教さえ
どうでも) ﹁いい﹂に落ちついていますね。㊤からは、もう自
に相手の犠牲のうえに成り立つというほどのことでもありませ
その宝に'惑い三十年の心が秘められているのですよね。㊤
は'﹁腹痛﹂という生理的な次元のことですから、そう大げさ
(私のひと言)のほ,いろいろ言いかえられて,結果的には,マベ
してみた-なるほどへたけさんのことを、感激の心で表現して
そこでへ このような縦と班との体系を求めた系統性を模索する
決定する語出の発見である.二つは、相侠ち'尖の系統をt?す。
当該l語を場面や文脈のなかで、外から支えへその缶味の領域を
語等への目-ぼりをも通し、自ら系統性を求めていく。二つは、
を確かめることであるOこの﹁理解﹂ (発見)は'類義語や対裁
見える.1つは'当該l語が窄み持つ意味の新鮮な領域への黙畠
このようにへ学習者の(表現)と(私のひと言)との接点に導
かれる。するとへ ここには'語虫の系統性を求める二つの退かへ
をも引き入れることの忠義を'学ぶことができる。またへ品詞と
しての認識に'とりたて学習も可能である。
ここでは、﹁銀﹂の系統性を求める視野の中に'方言や生活語
んね。そう言ってのけるほどへ謙虚に﹁母なるもの﹂への感謝
が表現されているのですよ。
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﹁ありがたいのだか,0到叫u叫のだか,悲しいのだか,そんな
ことはどうでもいいじゃへまあへよく来たなあ'﹂ - たけさん
はへ その心情を'こう表現している。B君の鋭い印象語としての
把捉に'私は'場面と文脈との中であがへ ﹁舜﹂として'他の
(C君の表現括) ( 紬 に当たる。)
形容詞とも密接に関ることを指摘する.系統が意識されるo
①_一也
C君はへたけさんに関る心情を'形容詞 ﹁愛サJSJに'﹁わた
し﹂に関る心情を,"鴻矧叫﹂に,それぞれ鋭-聴き取るo
まらないんだと思う。だけどへあまりにも久しぶりにあったも
糾 たけさんの心情。たけさんは修治とあえたのがうれしくてた
のだから、何から話せばよいのかわからなくなり'あまりへう
54
にへ その価値と直結したどのような語句を、学習者の﹁印象語
な﹁主皿意識﹂の対象として価値を予期させるのかOまた、同時
年間主血単元学習の体系の中で'当該教材は'私たちのどのよう
には'まずは、教材透視力が'鋭く磨かれたい。予め設定された
中で、太宰治のr津軽﹂は'このように透視することによって、
いうことができる。﹁語窮を豊かにする主遊単元学習の展開﹂の
と比べると'(表3)のようになる。圧倒的に形容詞型の文章と
学習してきた井伏鱒二のrおふ-ろ﹂、志賀直哉のr網走まで﹂
小説r津軽﹂には'形容詞が多用されている。本学九ですでに
注
・
_
景﹂として予測もさせるのか。語嚢の系統性を展望しての﹁語費
形容詞語桑の質的獲得という観点からもも格好の教材となる。
ただしへ形容詞語桑が多用されることのみが'右の要求に応え
﹁人恋しさ﹂の価値と統合されて'教材透視力に応えてくれる。
を珪かにする﹂学習は'二缶の意味での教材透視力を求める。
二
る唯一の条件ではない。私たちは、さきに'井伏鱒二の﹁おふく
たoまたへ井伏的二の淡々とした母への思いの表現を'自らの表
ろ﹂においても'数少ないからこそ'かえって質的に重い価値を
担った形容詞を入り口に、語史習得の奥処に参入することができ
﹁喧喋﹂から﹁寡黙﹂ への変質。 - 状況のなかで、学習者
は'このように見える。聴きひたるとも ﹁喧喋﹂がそうであった
現語桑としての形容詞で表現し直してみるo形容詞語史の表現力
以上に、﹁寡黙﹂は'心底へ人が恋しいのである。﹁恋しさ﹂
はt l途に人を求めているのである。この﹁恋しさ﹂は'普遍的
のある意味での壁が'井伏的二の表現から逆照射もされたO
⑥ 帰ろう。∼しっかりせんかい。
なったような気がした。
⑧ 教えられたとおりに行くと、∼おとぎ話の主人公にわたしは
本海の海岸に出る。
㊤ バスはかなりこんでいた。∼十三湖を過ぎると、まもなく日
ずれもがへ独立性を持つ。
さて'太宰治のr津軽j五つの場面とは'次の箇所である.い
な価値をもつ。対象化されたならば'意欲をもって確かめ深めへ
さらには'つきぬけて生き抜-ための ﹁主磁意識﹂ (力)とな
る。意義は'深い。
第八時の小主滋は、﹁人恋しさをどう表現するのかo I場面の
なかでの形容詞の意味を考え始める。 - ﹂である。太宰治の
r津軽﹂学習の深化であるo川 五つの場面の範読(加藤)に聴
きひたる。∽ 五つの場面1つずつの形容詞を碓かめへ国語辞典
v-Jt--.- '--蝣*蝣?1ハ・
㊤ ﹁あらあ。﹂それだけだった。∼倫理ではなかった。
て 1%-.--ト ︰:vv '-:-i 、 I Vr九i. 1; つO;.T
ほど何度も読みへ形容詞の一般的意味とそこでの意味を比べ始め
⑤ ﹁久しぶりだなあ。∼よ-来たなあ。﹂
右の五つの場面は'それぞれに'価値と7体となった文体の凝
る。 - ここでは'指導された自律的学習の実現が'目指され
る。
55
語史
ない
19
い い (よ い )
16
赤い
4
あ りが た い
4
痛い
4
小さい
3
強い
3
悪い
3
同じ
2
悲 しい
軽い
2
2
近い
2
長い
2
ひどい
2
よ そ よ そ しい 、恨 め
しい、 敢 しい 、 荒
い、 優 しい 、 白 い 、
浅 い、 はか な い 、広
い、 い けな い 、 Pil
さ りげ な い 、高 い 、 甘
い 、 幼 い 、 若 い、 苅
ない
12
よ い (よ し、 い い ) ll
い 、新 しい 、 おろ か し
い 、深 い 、 うれ しい 、
愛 ごい 、各 1
(お ) 恋 い
暑い
4
3
お と な しい
3
気 む ず か しい
遠い
あ りが た い
白い
3
3
2
2
「お ふ くろ」 の形 容 詞
語吏
ない
よい
多い
恋い
同じ
早い
若い
近い
2
(辛 ) 早 い
2
ひ どい 、繁 し、赤 い 、
少 な い 、恐 ろ しい 、 痛
い 、悲 しい 、同 じ、 不
12
7
3
3
2
2
2
平 ら しい 、 お いい 、 小
さい 、 ま もな い、 涼 し
い 、軽 い、 うる さい 、
眠 い 、酉 い、 多 い 、 き
古 い、 み っ と もな い、
低 い、 遠 い 、 つ ま らな
い 短 い うま い 平
、
、
た い、 各 1
た な い 、弱 い、 古 い 、
暗 い 、各 1
い、 美 しい 、 明 る
い、 大 きい 、 難 し
く
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種某
月
延
文串の長さ
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志 賀 直 哉 r網 走 まで J
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井 伏鱒 二 rおふ くろ」
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5 6.6
(10 0.0 )
い、 きざ つ た ら し
い、 た ま らな い 、汚
い、 ふ さ わ し い、
女 々 しい 、惰 な い、
だ ら しな い 、汚 ら し
太宰
治 r津
い 、 い や しい、 冷 た
い 、遠 い 、偉 い、 丸
い、
注( )は、 「文章の長さ」を100に換算。
-56-
(三つの作品の形容詞語党の比較)
r網走 まで 」 の 形 容 詞
K S K Z 血
r津 軽 」 の 形 容 詞語
桑
味でも'私にいっそうの教材透視力を要求してやまない。私は'
けてこの五箇所の読み分けに腐心した。教材r津軽﹂はへ その意
縮された田所である.私はへさきに全体を範読した中で、とりわ
初めてへ ﹁質﹂としての﹁系統性﹂ へのとば口に立つ。
する﹂ねらいは、このような﹁主思単元学習﹂活動の中でこそへ
に'学習者と私との (表現)活動が'軸となる。﹁語蛍を:=Bかに
をへ認識へ思考から'創出の機能へと活かさねばならない.そこ
たとえば、①で'主人公は、小泊への退行での万感の思いを'
中での意味と機能であり'もうl つは'国語体系において有機的
化する道である。語の坤位は'二つの面を持つ.1つは'文脈の
習﹂の実践を'言語の学習としての側面から、よりいっそう貝体
すなわちへ ﹁語史を豊かにする学習﹂は'右の﹁主題単元学
改めて、その思いを力に込めて、五つの場面を範読し分けへ学習
者へも'それを越えた朗読の工夫を求める.語史は'その中で'
十三湖に虫ねて'それを﹁はかない﹂の1語に袋約するO私たち
て'二虫構造をも示す。語虫は、この動態のなかで出かになる.
なつながりをもつ'他の語との比較に認識される、意味と機能で
あるo同時にへ前者は'後者の'作者(筆者)における約図とし
再認識される。
はへ この形容詞を、﹁理解語栄﹂としても﹁表現語史﹂として
ももすでに習得していると言えるか。習得しているとは'どうい
語に限っても'﹁あえない﹂ ﹁あっけない﹂へあるいはへ ﹁攻の
て、文脈の中に活かされている。またへそれは'たとえばへ規義
けさんを求める旅の心象風景としての十三湖を表現する語とし
たとえばへ①におけるさきの形容詞﹁はかない﹂は'小泊のた
うことなのか。﹁あとかたもなく消えやすい。﹂と言い変えてみ
るか。その上でも国語辞典のい-つかの説明と、厳密に比較して
みる.1椴的な意味の範囲で'私たちは、揺れへ とまどう。
問﹂ ﹁軸常﹂などとどう比較されるか。同時にへ①の文(文辞)
この事実はへ ﹁理解﹂の側面からするとへ ことばの機能が'伝
達止まりでありへ①を対象にした私たちをへ認識や思考の次元で
脈中の﹁悪い﹂ ﹁激しい﹂ ﹁荒い﹂ ﹁ない﹂ ﹁優しい﹂ ﹁浅い﹂
﹁ない﹂ ﹁広い﹂との有機的構造のなかでこそへ支えられてい
る。
るとへそれを踏まえた上での独自の内実を想像し﹁表現﹂するに
耐えられないでいることをも意味するo私たちはへさきの比較が
満足させないことを意味する。さらには'﹁表現﹂の川面からす
生んだとまどいた結着をつける道をへ まざれもないAそのもの
本単元では'教材を透視する中で'﹁史﹂のねらいどころを形
古典学習における﹁文法﹂学習を念頭に置いたものである。しか
副詞 紬 動詞 ㈲ 接読詞と'品詞論に委ねた。主としてへ
材(学習材)との関りでt U 校合動詞と名詞 ∽ 形容詞6
容詞に置いた0年間学習計画の体系も'主湖とそれを伐り拓く教
(ひいてはへ r津軽﹂全体) の中へと'探し求めなければならな
い。
l方へ私の主遊単元学習は'言語技能に関る面を入り口としな
がらもへ柊には'価値に及ぼうとする。言語を'技能止まりの伝
達槻能においてのみ習得するを'よしとはしないO価値は'言語
57
Lt右に述べてきた理念と実践から帰納される﹁体系﹂は'学習
の実の場((表現)活動を軸とする)をこそへ母体とする。
三
第九時、10時の中主皿は'﹁人恋しさには'どんな語史が関
っているのか。-場面の中での系統性を考える。-﹂である。初
めて、﹁系統性﹂を目指す。川 選んだ場面の一つの形容詞の一
般的な意味を'記入する。∽ 場面でへその形容詞を支えている
五つの語を選び抜きへ用紙の[語①∼⑤]にまず記入し'それぞ
(用紙例)
⑨・⑳形容詞の意
味を深める。
cc・o詔
①なぜへ人が恋しい
のか。(表現17)
-58-
れの一般的な意味を調べへ記入する。∽ ①∼◎の語のここでの
意味を、場面にふさわしい形で説明する。(用紙例照)
(Aさんの表現16)場面⑳
▼マ
〔
形容詞〕
:- │
il "
∽ 蛸か現川 しっかりしたところがなくてへたよりにならない
様。あっけなくむなしい様。鰯常。
り。(湖が)静かであるo③ 無関係 関係がないこと。間
サ
∽ ① 孤独 ひとりばっち。たすけのないこと.② ﹂望1到
諏しないこと。④習水がたまっているところ。⑤
欄剥劃。温度が下がる。
湖が静かであるのではな-、人がいな-静かである。③ 湖が
脚 ① 湖が1つさびしくあるという表現に使われている.②
t > . . .
人間と離れている。自然のまま。④ この文では、小さな水の
たまったところ。例えば雨あがりにでもできるもの。(湖の水
たまりの様なちっぽけなものにしている。はかないものにして
〔作 品 に つ い て の 考 え 〕
〔場 面 で の 心 情 〕
<= 0
〔ここでの意味〕
(一般的な意 味〕
的な願いo将来は実現させたい願い.
サ
脚 ① 幼い頃の主人公が、たけの口から出る昔噺に不思議そう
いるo)⑤ 脱皮のことではな-'湖がlつさびし-という表
現のために使われている。
に聞いている様子が伺われる。また、一口々々食べさすのに手
がること.② 笥 山の形につみ上げるo茶わんなどの入れ
∽ ① 風聞 目を見張るような場面が示されること.停揃な
くへ次つぎに新しい思考や運動を進めること0間隔をとって広
川 蛾か噛叫 将来碓実にどうなるという目あてがない.
から主人公を愛している。三十年前へ自分が世話した主人公に
意.三十年来の願いがかなって出た素直な気持。⑤ たけは心
かなったことで自然に出た言薬o④ ﹁ありがたい﹂とはば同
とからへたけの主人公に対する愛の深さがよくわかる.願いが
間はかかったけど'たけは'主人公を非常に愛していることが
>>
(B君の表現16)場面⑳
物に入れるo薬を飲ませるo③ 叫可引例 静かで誰も居ない
居ないで、ひとりばっちであること.⑤ 水村割引 雨水など
(D君の表現16) 場面①
今1度会うことを夢にまでえがいていたのだから。
わかる。② (空白)③ 三十年もの間ずっと待っていたたこ
ように感じられる様子。④ 孤独 周囲にたよりになる相手が
が溜っている所。
ことがためらわれる状態だ.物のとらえ方や趣味が洗練されて
川 川剖u叫 社会的地位が低い.りっぱな人間としてつきあう
いない。欲望を隠し慎むことができない状恨心だ。
脚 ① 十三湖が自分の目にとても大き-見えて-る。② 十111
湖の水をその土地に水が入っているようにいっている。③ 十
っている様子だ。③ 女々しい いくじが細くてまるで女のよ
>>
し-ない状快心だ。標準より劣っている状態だ。正常な働きを失
出したい感じだ。② 刑心中 迅拙的に立められる様子だo好ま
∽ ① 附習u叫 腹が立つ梯子だoいらいらして'今にも怒り
三湖には何にもなく静けさだけが漂って-る。④ 十三湖には
>>
何もなくへぽつりさみしく存在している。⑤ 十三湖が広-て
も静かすぎるので'十三湖を比ゆ的に表現している。
(A君の表現16)場面①
うだ。④ だらしない きちんとした所が細い様子だ。あんま
の 肇司 ﹁かわいい﹂の方言。子隼らしさ'美しさなどで人
をほほえませるような状態にある。愛らしいo
-見える感じだ。
ママ
り弱すぎることをあざける言柴。⑤ 習u叫 いかにも汚な
∽ ① 引1引q﹁じっと﹂の方言oからだ視線を動かさないさ
ま.② 璃u中 心が痛んで泣けて-るような気持。(Oうれ
が立ってしまった。② ﹁悪い﹂という形容詞が2回も使われ
ているけど'本当はたけに会いたい気指が逆に反動となって脱
しい一 刈川-蝣サ""''い'. '" ''j-J.'^V-Jいた・. -i'J-, --- 'かた-〓い]・ 叶
① 前の文章には﹁たけなんかどうでもいいような﹂と書い
い.④ 剖思仙足するへまたは元気づけられることがあっ
て楽しく'喜ばしい。(‡悲しい)⑤ 劉 実現が困難な空想
59
かもしれないけど'それより、じめじめした性格へ暗い性格と
いう意味がこめられていると思う。④ たけに会いに行くとい
③この女々しいという'女性の様な性格を持ったところがある
ているOということは、自分は何もかもが憩いと思っている。
と翻関係に存在していることを'表現しているo作者ははかな
(Aさんの表現r-.。。)場面⑳'形容詞﹁はかない﹂
川 はかないという言柴は、この文の中では湖が一つ孤独に人間
を'省みてまとめる..(以上(表現18﹀) (用紙例参照)
得たこととt B﹁形容詞一つ﹂を入り口にする学習で考えたこと
気がして'自分の気持があやふやになりはっきりしない状態
いという言丑を普通なら人間の心佃に使う場合が多いのに'風
>>
うきちんとした目的を持ってきたのだけれどへ会えないような
だo⑤ たけに会えな-て'今までの自分に対する気指が'と
えで'その中の一つの形容詞を'﹁印象語﹂として碓諾する。こ
者は'自らの朗読の反復のなかで﹁表現読み﹂を独自に磨いたう
り﹂ ﹁孤独﹂ ﹁紐関係﹂ ﹁冷える﹂だからであるのではないで
しょうか?
用するのかは、作者の心が﹁はかない﹂ ﹁水たまり﹂ ﹁ひっそ
たまり﹂ ﹁ひっそり﹂ ﹁孤独﹂ ﹁無関係﹂ ﹁冷える﹂などを使
している。ではこの場面でなぜ作者が'湖を﹁はかない﹂ ﹁水
景表現に使用している。すばらしいことだと思う。
∽間で説明した﹁はかない﹂は,湖がはかないということを表
ても汚らし-、考えが甘いのだろうと自分を安めている。
の二時間の学習では'それが'文脈(場面)の中で、他のどのよ
このようにへさきの理念を'学習活動の場に具体化する。学習
うな語に支えられて'独自の意味を担っているかがへ一般的意味
糊 この作品の主人公は'こしのたけをさがし求めているが,さ
Mr
との比較の中で'確かめられていく.つまり'完puは'作品(場
がし求めている心の中に'﹁さびしさ'不安-・・・﹂の様なもの
他の文中に'作者が途中で'自分をいやしく思いへ帰ろうとし
がある。湖がはかな-見えたのが'私がそう思う理由である。
マ▼
面)世界のなかでの﹁袋﹂で把えられ'系統性をも帯びている。
四
第二時の小主題は'﹁語堂は'どのように豊かになった
ている。会いたいのだが'たけとの間に何か大きい壁が'作者
の目の前にあった様に思う。
帥 A 友達は﹁甘い﹂という形容詞を選んでいましたが,私と
全-反対の形容詞で、﹁甘い﹂の使用されている文は'作者が
か。-語録に支えられた1つの形容詞の価値を'確かめる.-﹂
である。これはへ本尊花の学習者と私との学習評価につながる。
∽ 1つの形容詞のその場面での意味を'探める。∽その場面
いう形容詞の又はへたけと出会っていなく不安でいっぱいとい
う全-反対の気持を表しているoOヨ作者の心情が途中で変
たけと出会い安心しきっている。しかし'私の﹁はかない﹂と
でのかかわる人物の心情を説明するo脚 小説r津軽﹂について
の考えを、まとめる。(以上(表現E))細 A グループ学習で
60
ことによってへ文を深く読みとることができた。例えば'私
意味で'私たちの心の中の﹁人恋しさ﹂も'大切にしたいもので
お互いが'それぞれ1歩深まることが大切なのですね。そういう
(私のひと言) さまざまな考えがぶっかり合うことによってへ
のことば一つのもつ力の大きさがわかった。
は'﹁はかない﹂という形容詞をじっくりとにらんで文を読み
lつの形容詞$91ハ引とにらむ
とりましたが'これによってへ本当にはかないのが何だったか
(C君の表現t・?9) 場審・形容詞﹁愛ごい﹂
すね。ことばの力についても'深く考えることができましたね。
化したことをつかめたoB
が理解できました。形容詞の使い方を多-学べました。
ですね。㊥の大切さがよ-わかりましたね。どのことばもヘビ
ます。仲間の豊かで鋭い読みとりに学んで'作品がつかめたの
∽ たけの三十年来の凝縮された思いが'ばっとはじけて急にあ
も'まだ主人公のことを思っている。
に押しよせてきたのだと思う。たけは主人公が大人になった今で
の 幼かったころの主人公の思い出と長い間の夢が'怒涛のよう
﹂
(私のひと言) ⑦に'あなたの勉強の成果が'よ-表われてい
のことばもがへ このような読み手の努力を求めているのです
ママ
帥 A たいていの人が三十年ぶりに会えたたけとの﹁甘い放心
親子の愛惜表現O素朴だが深い愛梢.
6 ﹁おふ-ろ﹂ (井伏紺二)にも似ているが'また少しちがう
M"
れがたけの精一杯の愛情表現であるのだと思う。
み聞いているのだと思う。かなり長い一文になっているが'こ
ふれ出たと思う。たけばかりが話しているが'主人公はしみじ
ね。
(B君の表現t-.00) 場面㊧・形容詞﹁はかない﹂
の ただ水があるというだけで見すぽらしい。
!
>
f
r
地に近ずいてい-うちにも人間関係がある自分と全-無い草木
∽ 全く新しい土地なので'外の景色に目がい-。そこでへ目的
▼▼
などの風景を見比べて大きな差があると感じへ少しでも関係が
ある作者は'喜びにひたっている。
の憩い﹂の所をとりあげて﹁安堵感﹂ ﹁如凪鰯愛﹂などを骨子
にしていた。僕は'たけの主人公に対する思いの所をとりあげ
>>
たが'ここは主人公のたけに対する考えなどが述べられてい
脚 作者は'なつかしい人に会うためにへうれしい気分である
が'ふとへ他の物(風景)を見てさまざまな'今の自分とちが
る。B lつlつはなんでもない﹁形容詞﹂だが'読み深める
った思いがはりめぐらされた。
と忠外と多-のかぎをにぎっていると思ったO
﹁私﹂の心を求めて深く読んだ点では'同じですよね。そこか
へ私のひと言) ちがった場面をとりあげていても'同じ主人公
えがあったり'自分よりも上手だなあと思えるような表現をし
帥 A 自分と同じシーンを読んでいる人でも自分とは迫った考
ていて'一つのことにもさまざまな考え方へ表現があるのだな
ら'どんな読みとり方が出てきて'教えられましたか。一見
あと思ったo B 形容詞lつでも一般的な意味がた-さんあっ
たり'また一つの意味でも多-の形容詞にあてはまり'形容詞
61
﹁なんでもない﹂ものが'大事な価値への鍵をにぎっているこ
とがわかりましたね。大事な発見でしたよ。
語鎚に支えられたlつの形容詞の価値は'学び合いの中で'こ
のように椎かめられた.主題に即した﹁史﹂の系統性が'自覚さ
sea
かったけれどへ ﹁形容詞ひとつを入り口に﹂という読み方をし
④ 今まで'本を読む時に'形容詞など気にして読んだことはな
てみるとへ数も結梢多-て'文の中で虫要な働きをしている語
だと思いました。
人の気持をあらわすものだとはへ今まで気づかなかった。これ
⑤ 本当にへたった一つの﹁形容詞﹂というものが'こうまでも
からも'もっと﹁形容詞﹂に注意していけば'作者の心柏など
⑥ 形容詞の意味は'辞古を使えばてきとうにのっています。で
がより明らかになるものと思う。
主思里冗﹁なぜへ人が恋しいのか。﹂の展間の中で'語鎚を豊
て誰も言えないと思います。だから'小説などにのっている形
もその意味は誰か人間が作り出した者なのだからへ絶対だなん
お わ り に
かにする学習をへ このたびは'﹁免﹂の﹁系統性﹂を﹁質﹂とし
の (表現18) のBに'聴きひたりたいo
梢をつかんで'はじめて生れてくるものだと'これまでに勉強
容詞の意味をわかろうとするのならへその筆者や登場人物の心
ママ
て目指すことに努めてきた。それは、どう評価されるか。学習者
① まずへ形容詞一つで人間の心を表わすということは'むりな
して思いました。
ことばにも近い形容詞も'本当に数限りなくあることがわかっ
⑦ lつの形容詞に、これほどたくさんの意味がありへまたその
んだと思ったO人間の心は、投雑すぎて'言兼で表わすのは、
﹁はかない﹂ によってへ作者の気持が'少しはっきりしたよう
場合において形容詞は、多-のこと表わせることがわかってき
m
たへ坤に教えてもらうのではなくへ自分で考えるというところ
が'品詞一つで変わっていくところがわかって、よかった。ま
⑧ 難しい。周囲の彫哲をうけて、1つの形容詞の忠味が'微妙
大変な'ことになると思うからです。
ママ
ということはない。きちんと意味を理解して'使わなければ'
た。しかしへ た-さんあるからといって'どれでも使っていい
むずかしいoまたへ この作品を読むにあたって'㊧の場面の
に思う。名詞で読み深めるよりは'わかりやすかった。
② 形容詞とは、名詞を修飾したりするだけだと思っていたが'
③ 今までは'たくさんの形容詞がそれぞれ別に怠味をもってい
がよかった。
ママ
そうではなかった。文章全体を形容詞1つで表せないが'場合
るのだと思っていたが'みなそれぞれ何らかの関係をもってい
に変わって-るところがへ難しいがおもしろい。文というもの
るのだなあと思った。
62
>>
ごく難かしかった。〃形容詞から心情なんて'わからない'〃
ママ
⑨ 初めは'わけわからず、〃何なんだ。〃と思ってました。す
サ frV
▼▼
って。でもへ津軽の時はちがってると思った。その語の中に
てだからへ初めはとまどったけど'おもしろい読み方だと思っ
サ
は'いろんな意味がつまってると思った。こんな授業は'初め
た。
導かれて'学習体系の確立を目指したいo
学習史の事例を中心に-﹂ (明治図台﹁国語科教育学研究﹂
注- 野地澗家先生﹁語句・語受指導の課湖と方法-語句・語舘
6所収)
春は'ことばをどう輝かすか。] の場合-﹂ (﹁Ej]語教育
2 拙稿﹁語崇を豊かにする主題単元学習の展開(I)-r苛
致﹂第四号所収)
3 拙著r高等学校 私の国語教室-主出単元学習の桐築Ij
(一九八九・三・二九記)
(右文苔院﹁国語教え方正古﹂別巻六)
4 野地油家先生﹁国語教材の探究﹂ (共文杜)
(大阪府立池田高等学校教諭)
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