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24.口永良部島新岳噴火災害の応急対策・復旧策にかかわる実践的総合

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24.口永良部島新岳噴火災害の応急対策・復旧策にかかわる実践的総合
口永良部島新岳噴火災害の応急対策・復旧策にかかわる実践的総合研究
地域防災教育研究センター 特任教授・岩船 昌起
1.はじめに
2015 年 5 月 29 日 9 時 59 分に口永良部島新岳が爆発的に噴火し,南西斜面では海岸まで火砕流
が流下した。気象庁では 10 時 7 分に噴火警戒レベルをレベル 3 からレベル 5 に引き上げ,これを
受けて屋久島町では 10 時 15 分に口永良部島の全域に避難勧告を,10 時 20 分に避難指示を発表
した。湯向地区の住民 8 人は,自宅退避後に 12 時頃に海上保安庁の小型船舶等で救出された。本
村地区等の住民 124 人は,番屋ヶ峰に一時避難後,14 時 37 分に本村港に着岸した町営フェリー
「太陽丸」に乗り込み,15 時 42 分に島から脱出した。そして,3 人の島民は自らの漁船で屋久島
へ向かった。立ち入り禁止の向江浜地区に居た 80 代の男性が顔や手に火傷を負い,気分が悪くな
った 70 代男性とともにヘリコプターで救急搬送されたが,軽症で命に別状がなく,結果として
82 世帯 137 人の島民全員がその日のうちに屋久島町宮之浦地区に避難できた。(注…上記の人数
や時間は,報道等による速報的な発表によるもので,屋久島町等による正式のものではない。)
筆者は,鹿児島大学地域防災教育研究センターによる「口永良部島新岳噴火災害応急対策支援
活動」として,噴火翌日以降,5 月 30 日~6 月 2 日,6 月 6~8 日,6 月 13~15 日,6 月 27 日~
30 日,7 月 17~20 日,9 月 12~14 日の計 6 回入島し(2015 年の回数),屋久島町宮之浦地区の避
難所や仮設住宅団地などを視察した。特に 6 月については「調査」より「支援」を主目的に,屋
久島町や鹿児島県に助言した。本稿では,まずはこの活動について前半で報告する。また,避難
生活が落ち着きをみせた 7 月に,屋久島町の協力を得ながら,避難者へのアンケート調査を行っ
た。後半ではこのアンケート調査について,単純集計の結果ながら簡易的に報告する。
2.口永良部島新岳噴火災害応急対策支援活動
(1) 避難所生活に係わる助言
口永良部島新岳噴火災害による避難者のための避難所が,屋久島町宮之浦地区の「老人憩の家」
「宮之浦公民館」「縄文の苑」の 3 箇所で,避難当日の 5 月 29 日夕方から開設された。
写真1「宮之浦公民館」避難所
2015 年 5 月 30 日 筆者撮影
写真2 「老人憩の家」避難所
2015 年 5 月 30 日 筆者撮影
5 月 30 日に 3 つの避難所内の様子を視察した筆者は,避難所ごとに避難者の男女別年齢構成,
家族構成,建物の広さや間取りなどの大きな違いに気づいた。一般に,避難所の運営は避難者自
らが組織的に行い,行政関係者は基本的に支援にまわるが,避難所ごとの前述の特性や避難者の
- 237 -
意思に応じて運営の仕方を一律にしないことを助言した。また,避難所内の居住空間を①個人空
間,②共用空間,③応接空間に 3 つに分け,間仕切りやカーテン等で個人空間をつくることも提
言した。特に 1 つの避難所では,他に比べて狭く,避難者1人当たりの利用面積が最低とされる
2 ㎡を下回っており,かつ「女性が着替える場所」や「子どもの勉強部屋」が十分に確保されて
いなかった。そこで,不必要な荷物や運ばれ過ぎた支援物資を避難所外に運んで空間を増やすこ
とを提案した。他にも,町職員負担軽減のための勤務体制の改善,支援物資仕分けセンターの開
所と分配システムの構築,見舞金の支給にかかわる規約と様式などについて助言した。これらは,
東日本大震災による被災地などでの筆者の経験と研究に裏付けられたものであった。
写真3「縄文の苑」避難所
2015 年 5 月 30 日 筆者撮影
写真4 「老人憩の家」に積まれた支援物資
2015 年 5 月 31 日 筆者撮影
写真5「宮之浦公民館」居住スペース
2015 年 6 月 1 日 筆者撮影
写真6「支援物資センター」内部
2015 年 6 月 2 日 筆者撮影
(2) 仮設住宅に係わる助言
仮設住宅が建設中であった 7 月下旬には,入居方法や自治会の編成等について避難者間で話し
合いがもたれていた。屋久島町の仮設住宅は,与論島タイプのプレハブ仮設住宅の改良型であり,
屋久島に特徴的な夜の「山風」と昼の「海風」を室内気候の改善に活用するべく斜面の最大傾斜
方向にほぼ直角に交わる向きに棟が配置されている。
「窓を開けた生活」が前提なることから,生
活音,タバコ臭や生活臭を隣人間でよく感じやすくなることから,同じような生活習慣者がまと
まって入居することを提案した。また,雨天日等を除いて室内での喫煙行動を制限し,仮設団地
用地内の東端と北端に屋根つきの「喫煙スペース」を2箇所設置して,風向きに応じて喫煙場を
利用することを提言した。これらについては,仮設住宅自治会でほぼ取り入れられ,実行された。
また,共同での洗濯物の外干し場所の設置,身長が低い女性などのために仮設住宅室内から洗
濯物を干しやすくするための木製テラスの増設なども助言した。下着を干すことも考慮して一人
暮らしの男女についてはできるだけ居住を分け,
「女性スペース」や「男性スペース」のような緩
- 238 -
やかな「仮設団地内での性別の空間的な利用区域」を提言した。
さらに,岩手県宮古市や鹿児島県与論町での仮設住宅での温湿度環境とそこでの生活に係わる
調査に基づくと,屋久島の気候環境下のプレハブ系仮設住宅では夏季に窓を開けるだけの換気の
みでは室内気候が改善せずに熱中症にかかる危険度が高いことが予想された。そこで,電気代が
かかるが日中中心のエアコンの適切な使用と,火気の使用で高温となる台所での調理時の換気扇
の使用を推奨した。またトイレでは,エアコンの冷気が最も届き難くかつ外側に断熱材が施され
ていないために、夏に高温、冬に低温になりやすい。特に脳梗塞や心筋梗塞の病歴者などはトイ
レ利用時に温度差があることをよく知り,利用前に換気扇を回すか,ドアを開けておくか,また
冬には便座を暖めておくなどして「温度差」を小さくすることを助言した。
一方,仮設団地が立地する「傾斜地」に関連して,以下を助言した。仮設住宅建設地周辺の「南
西-東北方向」道路の一部の勾配が国土地理院の地形図から読み取ると約 1/15(傾斜約 3.81°)
であり,車いす利用者が屋外で移動できる「スロープ」の上限値とほぼ同じであった。従って,
「散歩」などの身体活動を行う場合には,前期高齢者などでは,体力に合わせて「南西-東北方
向」道路(坂道)での移動も取り入れて運動強度を調整することと,一方、やや体力的に弱い後
期高齢者などの場合には,仮設団地の敷地内での周回移動や等高線沿いの道路(東南-南西方向)
を中心に利用することが望ましいことなどを伝えた。
また,買い物ができる最寄りのスーパー「わいわいらんど」までの距離は約 600m で,体力に応
じて徒歩で約 8~16 分の所要時間で到達できることが予想される。岩手県宮古市での仮設住民の
徒歩生活範囲は、道のりで 500~1000m であることから,後期高齢者などの体力的な弱者の買い物
行動での支援の必要性を説明した。そして,仮設住宅から徒歩 500m 以内でできるだけ近いところ
での「息抜きの場」の創設,男性高齢者への配慮,口永良部島にかかわる情報の定期的・直接的
な伝達などについても助言した。
写真7 口永良部島災害仮設住宅団地
2015 年 9 月 13 日 筆者撮影
写真8 風向きを考慮して使われる喫煙所
2015 年 9 月 13 日 筆者撮影
3.避難者への避難生活にかかわるアンケート調査
(1) 目的
口永良部島新岳噴火災害による全島避難から 1 ヶ月過ぎた 7 月前半の段階では,避難生活もあ
る程度落ち着いてきたように見えた。そこで,避難者の生活を今後の少しでも改善するための基
礎資料を得るために,避難生活の実態をある一定の尺度で把握できるアンケート調査を実施する
こととした。本章では,単純集計の結果を中心に簡易的に報告する。
(2) 調査方法
質問紙は,2015 年 7 月に作成した(※本稿ではページ数との関係から質問紙を掲載しない)。
避難所の「老人憩の家」および「縄文の苑」には 7 月 17~19 日に筆者が赴き,滞在する避難者に
直接依頼した。また,避難所を 5~6 月に退去して公的住宅に移り住んでいた避難者については,
屋久島町の協力を得て町職員等が 8 月に対応してくれた。なお,質問の全てに回答しなかった方
もおり,単回答の各問で合計した人数が合わない場合がある。また,結果としての表については,
本稿のスペースとの関係で,番号通りの配列となっていないところもある。
- 239 -
(3) 対象者の属性
アンケート調査の協力者は,53 名(男 27 名,女 21 名,不明 5 名)で(表1), 40 代(11 名)
と 60 代(15 名)が多く,60 代以上では 25 名と全体のほぼ半数を占めている(表2)。調査時点
での「住まい」は,21 名が 2 カ所の避難所,14 名が町営住宅等の公的住宅等,10 名が民間賃貸
住宅となっている(表3)。また,一人暮らしが 20 名,夫婦での二人暮らしが 17 名と多い(表4)。
「口永良部島での仕事」は,会社員・公務員 12 名,自営業 11 名,無職 10 名の順に多かったが(表
5),避難先では,無職 18 名,会社員・公務員 12 名となり,無職が増えたことが分かる(表6)
。
「今のお仕事」については,無回答者が 8 名おり,無職の人数がより多くなる可能性がある。
表1 性別
男
女
計
27
21
48
表2 年齢
20~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
60~69歳
70~79歳
80歳以上
計
4
6
11
5
15
8
2
51
表4 同居している家族構成
避難所
公的住宅等
民間賃貸住宅
親戚宅等無償の民間住宅
自宅
計
21
14
10
3
0
48
一人暮らし
夫婦だけの世帯
親と子の世帯
親と子と孫の世帯
その他
計
20
17
8
1
5
51
表6 今のお仕事
表5 島でのお仕事
会社員・公務員
自営業
農林漁業
学生
家事専業
パート・アルバイト
無職
その他
計
表3 住まい
12
11
6
0
6
6
10
2
53
会社員・公務員
自営業
農林漁業
学生
家事専業
パート・アルバイト
無職
その他
12
1
5
0
0
6
18
3
45
写真9 町から無償提供された畑
2015 年 9 月 13 日 筆者撮影
(4) 避難生活にかかわる回答
Q1「避難先の生活環境」については,普通 22 名,良い 14 名と「総じてそれなりに良い」印象
がある(表7)。屋久島町職員を始めとして多くの方々が避難所等での生活改善に働いていたこと
を口頭で大いに評価していた人が多く,本来劣悪な生活環境であったが,好意的に回答した結果
と思われる。Q2-1「不安や心配」については,
「新岳の活動」が 42 名と最も多く,
「口永良部島の
家や家財」39 名,「口永良部島の車やバイク」28 名と続き,屋久島町での避難生活に関係するこ
とよりも,口永良部島に係る事柄を,多くの方々が深く心配していることが分かる(表8)
。
現在交流している方々の人数については,Q3-1「口永良部島の方」が「1~3 人」の方が 21 名,
「4~6 人」が 15 名がと多く(表9)
,Q3-2「屋久島の方」では,
「1~3 人」が 18 名で,
「いない」
方が 15 名であった(表10)。表9と表10から,屋久島の方々との付き合いも含めて社交的に
広く交流している方が存在する一方で,交流している口永良部の方も「いない」方が 3 名おり,
交流が極めて限定的な避難者の存在を指摘することができる。これは,Q4-1「頼れる人」がいる
かの問いに対して「いない」と 4 名が回答したこととも関連しており(表11)
,コミュニティの
中での「孤立者」の存在が示唆される。Q4-2「誰を頼れるか(複数回答)」については,「屋久島
の友人・知人」23 名で「口永良部島の友人・知人」20 名を上回っており,屋久島にもともといた
友人・知人あるいは新たにできた友人・知人が多く,避難先の屋久島でのコミュニティに溶け込
んでいる方々の存在が伺えた(表12)。そして,次いで「家族(現在同居中のもの)」17 名,
「屋
久島町役場の職員」15 名となっている。屋久島町職員は,特に初期段階で避難所に 24 時間体制
で常駐し,かつ献身的に支援したことなどから避難者の信頼を得ただろうことが伺える。
- 240 -
表7 Q1 避難先の生活環境
とても良い
良い
普通
悪い
とても悪い
計
表9
7
14
22
4
1
48
Q3-1 交流_口永良部の方
いない
1~3人
4~6人
7人以上
計
表8
3
21
15
14
53
表10
Q3-2 交流_屋久島の方
いない
1~3人
4~6人
7人以上
計
15
18
10
10
53
Q2-1 不安や心配
非常に どちらかとい どちらかとい
感じない 計
感じる うと感じる うと感じない
①仕事・働く場
14
16
8
11 49
②家庭
14
9
8
15 46
③子育て・子どもの教育
2
9
8
17 36
④家族の介護
5
6
7
26 44
⑤食生活
14
12
13
11 50
⑥買い物
7
7
17
19 50
⑦外出
9
10
11
19 49
⑧住まい・居住環境
13
11
15
9 48
⑨病気・健康
10
16
9
14 49
⑩収入・経済
14
9
10
16 49
⑪人間関係
14
15
11
9 49
⑫口永良部島民の行方
20
21
1
7 49
⑬口永良部島の家や家財
39
5
2
3 49
⑭口永良部島の車やバイク
28
6
4
8 46
⑮口永良部島の家畜やペット
19
6
4
13 42
⑯口永良部島の畑や庭など
26
9
3
10 48
⑰口永良部島の事務所や職場
26
8
0
10 44
⑱口永良部島の船
13
4
6
19 42
⑲新岳の火山活動
42
3
2
2 49
表11 Q4-1 頼れる人
いる
いない
計
48
4
52
表13
Q5 避難生活で心がけ・実践
身体を動かすこと、運動
23
規則正しく生活すること
24
バランスの良い食事
18
睡眠をしっかりとること
22
よく笑うこと
10
人と会い、話をすること
15
良好な人間関係を保つこと 23
その他
3
計
138
表15
Q7 住みたい場所
口永良部島
屋久島
鹿児島市
どこでもよい
その他
計
一番 二番
41
2
4
11
1
5
1
3
2
0
49
21
Q5「避難生活で心がけ・実践」していることについては,
「規則正しく生活すること」24 名,
「身
体を動かすこと,運動」と「良好な仁限関係を保つこと」が 23 名である(表13)。半数程度の
方が厳しい避難生活の中でもポジティブに生きようとされていたことが伺える。Q6「必要な支援
サービス(複数回答)」については,
「『一時帰島(入島)』の定期的な確保」42 名,「口永良部島
の火山にかかわる情報提供」24 名,「口永良部島の家屋や畑などの現状にかかわる情報提供」23
名と,次いで「島民の交流の確保」11 名が多かった(表14)。なお,このうち「口永良部島の
火山にかかわる情報提供」については,アンケートを行う前から避難者の希望を直接聴き,鹿児
島地方気象台に「仮に火山活動が活発なまま変わらない状態であっても定期的に避難者に直接伝
- 241 -
えることが『こころのケア』にもつながる」との説明も付してこの「情報提供」の希望を伝え,
避難者向けの「新岳火山活動の説明会(仮称)」を不定期に開催して頂いていた。Q7「住みたい場
所」については,一番が「口永良部島」41 名で圧倒的だが,8 名の方が口永良部島以外を選択し
ている(表15)。避難生活が長引く程,口永良部島以外を選択する割合が高くなると思われる。
表12
Q4-2 誰を頼れるか
家族(現在の同居のもの)
口永良部に住む親戚(別居のもの)
屋久島に住む親戚(別居のもの)
鹿児島に住む親戚(別居のもの)
その他の親戚
口永良部の友人・知人
屋久島の友人・知人
鹿児島の友人・知人
その他の友人・知人
口永良部の区長・民生委員等
口永良部の消防団員
屋久島町役場の職員
社会福祉協議会の職員
医師・看護師・保健師
ボランティア
その他
計
17
4
8
13
13
20
23
11
8
6
8
15
4
8
4
2
164
表14
写真10 避難者の自主的な「火山の勉強会」
2015 年 9 月 13 日撮影
Q6 必要な支援サービス
避難所の住環境の改善
入居住宅の住環境の改善
雇用の場の確保
子どもの支援(居場所づくり,学習支援等)
子育ての支援(保育,学童保育等)
家族の介護の支援
相談窓口
運動機会の確保による健康づくり
島民の交流の確保
保健・栄養指導
「一時帰島」の定期的な確保
口永良部島の家屋や畑などの現状にかかわる情報提供
口永良部島の火山にかかわる情報提供
その他
計
表16 Q8 からだの調子
とても良い
良い
普通
良くない
大変良くない
計
6
9
23
11
1
50
表17
Q9 食事の量
とても増えた
増えた
変わらない
減った
とても減った
計
2
11
21
13
3
50
表18
1
8
6
3
0
3
4
1
11
1
42
23
24
0
127
Q10 食欲
とても増えた
増えた
変わらない
減った
とても減った
計
1
3
33
10
3
50
(5) 避難者自身の健康などにかかわる回答
Q8「からだの調子」については,
「普通」23 名と多かったが,
「良くない」11 名,
「大変良くな
- 242 -
い」1 名がおり(表16)
,体調を崩している方が 12 名と全体の 2 割以上に及んだ。Q9「食事の
量」でも,個々に「減った」13 名「増えた」11 名など,増減があった方は半数以上の 29 名に及
んでいる(表17)。Q10「食欲」では,「変わらない」33 名に続いて「減った」10 名でどちらか
というと「食欲が減退した」方々が目立つ(表18)
。後述の回答とも関連して,生活環境の劇的
な変化などに起因する精神的なストレスなどが主因としてこれらに関与したものと思われる。
Q11「運動の量」については,
「減った」25 名,
「変わらない」10 名,
「とても減った」9 名と続
き,運動量が減少した方が 34 名と 7 割程度に及んだ(表19)。口永良部島では好きな時に畑に
出たり散歩をしたりした生活を送っていたが,屋久島の避難所では特に発災直後には報道関係者
が避難所の入口などに待ち構えて,外に出ると大勢に取り囲まれてマイクを向けられる状態であ
った。これを嫌う方々が多く,避難所に籠りがちな生活送ったことが大いに関係しているだろう。
Q12「睡眠」については,
「眠れない」25 名,
「変わらない」10 名,
「とても眠れない」9 名と続き,
眠れなくなった方が 34 名と 7 割程度に及んだ(表20)。Q13「体重」については,
「変わらない」
24 名,「減った」11 名,「増えた」9 名と続き,増減した方は半数程度の 26 名に及ぶ(表21)。
Q14「気持ち」については,
「穏やか」
「とても穏やか」な方は 0 名で,
「落ち着かない」
「とても落
ち着かない」が計 31 名となっている(表22)
。Q15「張りや意欲」については,「変わらない」
24 名,「ない」19 名,「ある」6 名と続く(表23)
。気持ちとしては「落ち着かない」ものの,
避難生活を打開等するために気持ちに「張りや意欲」を持ち続けている方の存在が示唆される。
表19
Q11 運動の量
とても増えた
増えた
変わらない
減った
とても減った
計
2
3
10
25
9
49
表22
表20
Q12 睡眠
よく眠れる
眠れる
変わらない
眠れない
とても眠れない
計
Q14 気持ち
とても穏やか
穏やか
変わらない
落ち着かない
とても落ち着かない
計
表21
2
3
10
25
9
49
とても増えた
増えた
変わらない
減った
とても減った
計
表23
0
0
21
22
9
52
Q13 体重
5
9
24
11
1
50
Q15 張りや意欲
とてもある
ある
変わらない
ない
とてもない
計
1
6
22
19
4
52
4.おわりに
本稿では,
「口永良部島新岳噴火災害応急対策支援活動」と「避難者への避難生活にかかわるア
ンケート調査」の報告を行った。前者は,平成 27 年度地域防災教育研究センター「教職員研修」
で 2016 年 1 月に実施した研修内容にも反映されており,本報告書の別稿「
『防災士』養成と『防
災ネットワーク設立』」の中でも多少紹介している(本報告書 P93~111)。また,屋久島町とも信
頼関係を築けたことから当時の災害対応に係る資料を個人情報が見えない形で断片的に頂いてい
る。今後は,避難者の活動量に係る既行の調査や研修時に行った避難所の生活環境調査の結果等
も交えて,
「口永良部島新岳噴火災害における応急対応の検証研究」を,別稿に取りまとめたい意
向である。この中で,単集計の簡易的な分析に留まった後者についても,再度分析し直したい。
地域防災教育研究センターの平成 27 年度プロジェクト研究では口永良部島に関連するものが
本研究を除いて他に 4 件あった。本報告書への成果の取りまとめで一段落ついた後に,何らかの
形で連携して,研究成果を一般公開したいという個人的な考えがある。特に,口永良部島島民や
屋久島町は,
「地元の大学」である鹿児島大学に口永良部島の復旧復興支援を大いに期待しており,
一定の貢献を果たした「応急対策支援活動」のみに止まらずに継続的な支援等の活動を,次年度
の平成 28 年度には考えて行く必要があるだろう。
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