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Title Author(s) セルロースからの直接エネルギー変換システム 菅野, 康仁 Citation Issue Date Text Version ETD URL http://hdl.handle.net/11094/334 DOI Rights Osaka University セル ロー スか らの直接エネルギ ー変換 システム Directenergyconversionsystemfromcellulose 2010年 大 阪 大 学 大 学 院 工 学研 究 科 菅 野 精 密科 学 ・応 用 物 理 学 専 攻 康仁 YasuhitoSugano 学位論文 Directenergyconversionsystemfromcellulose セ ル ロー ス か らの 直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 シ ス テ ム 大阪大学大学院工学研究科 精密科学 ・応用物理学専攻 博 士 後 期課 程3年 菅野 康仁 目次 第1章 序 論 1-1緒 言5 1-2既 往 の セル ロー ス 系 バ イ オマ ス か らのエ ネ ル ギー 変 換 技 術7 1-3燃 料電 池 を用 い たセ ル ロー ス 系バ イ オ マ ス か らのエ ネ ル ギ ー 変 換 技 術..8 1-3-1微 生 物 燃 料電 池15 1-3-2酵 素 燃 料 電 池17 1-3-3金 属 燃 料 電 池18 1-4本 研 究 の 目的 と意 義19 参 考 文 献22 第2章 セ ル ロー ス の電 気化 学 的直 接 酸 化 反 応 系 の構 築 2-1緒 言26 2-2セ ル ロー ス の溶 解27 2-2-1溶 解 前 後 にお け るセ ル ロー ス の 結 晶構 造 変 化30 2-3セ ル ロ ー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応31 2-4電 気 化 学 的酸 化 反 応 に よ るセ ル ロー ス の構 造 変 化37 2-5電 気 化 学 的酸 化 反 応 に対 す るセ ル ロー ス の分 子 サ イ ズ の影 響39 2-6セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の作 製 ・評価43 2-7ま とめ44 2 参 考 文献45 第3章 電 気 化 学 的 に直 接 酸 化 され た セ ル ロー ス誘 導 体 の構 造解 析 3-1緒 言47 3-2セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的 酸 化 反応 と反 応 電子 数47 3-3電 気 化 学 的 に酸 化 され た セ ル ロー ス 誘 導 体 の 構 造解 析49 3-3-1酸 化 セ ル ロー ス 誘導 体 の特 性 変 化49 3-3-2酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の構 造 変 化52 3-3-3酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の 分子 量 分 布58 3-4セ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応 機 構 に関 す る考 察60 3-5酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 の被 分 解 能 の評 価62 3-6ま とめ64 参 考 文 献65 第4章 セ ル ロー ス分 解 のた め の生体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 系 の創 生 4-1緒 言67 4-2生 体 構 造模 倣 型 人 工 触 媒 の作 製70 4-3生 体 構 造模 倣 型 人 工 触 媒 の触 媒 発 現 とpH依 4-4生 体 構 造模 倣 型 人 工 触 媒 の触 媒能 と機 能 化CNT量 4-5ア ミ ノ酸修 飾 によ る生体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 の触 媒 発 現 へ の影 響...。..76 4-6生 体 構 造模 倣 型 人 工 触 媒 の 反応 効 率80 3 存 性73 の 関 係74 4-7ま とめ87 参 考 文 献88 第5章 総 括89 業績 リス ト95 謝 辞101 4 第1章 序 論 1-1緒 論 産 業 革 命 以 降 、 石 油 な どの化 石 資源 か ら、 エ ネ ル ギ ー や 工業 原 料 を統 合 的 に 製 造 す る技 術 体 系 で あ るオ イ ル リ フ ァイ ナ リー は 、20世 紀 に お け る 先進 諸 国 の 発 展 に 大 き く貢 献 した 。 しか し、 化 石 資 源 の 大 量 消 費 は 、温 暖 化 や 大 気 汚 染 な どの 、 地 球 規 模 で の環 境 問 題 を深 刻 化 させ た 。 また 、化 石 資 源 の採 掘 可 能 埋 蔵 量 も、 石 油 で は約40年 程 度 と見 積 も られ 、資 源 の枯 渇 に よ るエ ネ ル ギ ー お よ び 物 質 供 給 問 題 が 危 惧 さ れ て きて い る。 この よ うな 環 境 お よ び エ ネル ギ ー ・物 質 供 給 問 題 の解 決 策 の 一 つ と して 、 従 来 の 化 石 資 源 の 消 費 型 社 会 か ら、 再 生 可 能 な 資 源 を利 用 した循 環 型 社 会 へ の転 換 が 必 要 で あ る と考 え られ て い る。 特 に、 環 境 負 荷 が 少 な く、 再 生 可 能 な 石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー の 導 入 が 重 要 で あ る と言 わ れ て い る。1-3再 生 可 能 工 ネ ル ギ ー には 、 太 陽光 や 風 力 、 波 力 、 地 熱 な どが 検 討 され て い るが 、 場所 に よ って 利 用 可 能 な 資 源 量 が 異 な る こ とや 、 自然 条 件 に左 右 され る とい った 問 題 が あ る 。そ こで 、 再 生 可 能 で あ る だ けで な く、 炭 素 源 の サ イ クル と して カ ー ボ ンニ ュ ー トラル な 資 源 で あ るバ イ オ マ ス が 注 目され て い る 。1-7バ イ オマ ス は、 太 陽 エネ ル ギ ー を有 機 物 の形 で 固定 化 した動 植 物 体 で あ り、 地 球 上 に 豊 富 に、 広 域 に分 布 して い る再 生 可 能 資 源 で あ る 。 そ の持 続 可 能 な管 理 の下 で 資 源 と して 使 用 され れ ば 、 地 球 温 暖 化 の原 因 の 一 つ と考 え られ て い るCO2の 増 大 に寄 与 しな い。 ま た、 廃 棄 物 系バ イ オ マ ス な ど を、 有用 物 質 に 5 変 換 す る こ と(バ イ オ マ ス リフ ァイ ナ リー)が 可 能 で あ るた め 、総 合 的 な エ ネ ル ギ ー の安 定 性 や 利 用 範 囲 の広 さ な どの 点 で 、バ イ オ マ スが 石 油 代 替 資 源 の 一 つ と して 期 待 され て い る(図L1)。 バ イ オ リフ ァイ ナ リー で は、 食 料 と競 合 しな い 、 食 品 廃 棄 物 や 林 地 残 材 、 農 業残 渣 な どの 廃棄 また は未 利 用 の セ ル ロー ス 系バ イ オ マ ス を 、 エ ネ ル ギ ー お よ び物 質 供給 源 と して有 効 利 用 す る こ とが 、特 に重 要 な 課 題 とな って い る。8冒16し か し、 セ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス は 難 分解 ・難 溶 解 性 で あ り、 そ の 利 活 用 は 円滑 には 進 ん で い な い とい う現 状 が あ る。図1.2は 、我 が 国 の 各種 バ イ オマ ス の利 用 状 況 を示 した もの で 、 林 地 残 材 や 食 品 廃 棄 物 、稲 ワ ラや もみ 殻 な どの 農 業 残 渣 な どの 利 用 率 が 低 い。 食 料 と競 合 しな い 、 これ らの セ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス を 有効 活 用 して い く ことが 、 資 源 の 少 な い我 が 国 に と って 、特 に 重 要 な 課 題 とな って い る。 6 1.2既 往 のセ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 技術 現 在 、セ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス の 実 用 的 な 利 用 に 向 け た研 究 開 発 が 求 め られ て い る 。セ ル ロー ス 系バ イ オ マ ス 、 特 に そ の 主 成 分 で あ るセ ル ロー ス は 、 エ タ ノー ル や 水 素 な どのエ ネル ギ ー 、 また は 機 能 性 の 樹 脂 や ポ リマ ー 、 プ ラス チ ッ クな どの物 質 供 給 源 と成 り得 るた め 、 さ ま ざ まな 分 野 で そ の 利 用 技 術 に関 す る 研 究 が 盛 ん に行 わ れ て い る 。 セ ル ロー ス は グル コー ス(ま 位)の た はセ ロ ビオ ー ス 単 ポ リマ ー で 、 植 物 の 細 胞 壁 な どに含 まれ 、 木 材 な どの 強 固 な構 造 に寄 与 して い る。 グル コー ス は 約2890kJ/molの ギ ブ ス エ ネ ル ギ ー を有 して お り、そ の ポ リマ ー で あ るセ ル ロー ス は 、 そ の分 子 量 に比 例 した潜 在 的 エ ネル ギ ー を有 し て い る。 この セ ル ロー ス を エ ネ ル ギ ー 利 用 に関 す る 代表 的 な 例 と して 、 セ ル ロ ー ス か らエ タ ノー ル また は 水 素 を生 成 す る試 み が 挙 げ られ る 。12'16難溶 性 のセ ル 7 ロー ス を、 酵 素 な どを 用 いて 、 グル コ ー ス な ど の可 溶 性 の 単糖 成 分 まで 分解 し (糖化 プ ロセ ス)、6,17-27次 に、 得 られ た 可溶 性 糖 成 分 を 、微 生物 を用 いて エ タ ノー ルや 水 素 な どの燃 料 物 質 に変 換 す る(発 酵 プ ロセ ス)。28-33こ れ らの燃 料 物 質 を燃 料 電 池 な どの エ ネ ル ギ ー 変 換 装 置 に供 給 す る こ とで 、最 終 的 にバ イ オマ ス か らエ ネ ル ギ ー を取 り出す とい う試 み が 行 わ れ て い る(エ ネル ギ ー 変 換 プ ロ セ ス)(図1.3)。 Figure1.3Conventionaltechnologyrelatedwithenergyconversionfromcellulosic biomass しか しな が ら、糖 化 お よび 発 酵 プ ロセ ス には 、 外 部 か らのエ ネ ル ギ ー 供 給や 特 別 な 操 作 が 必 要 で あ る他 、 各 プ ロセ ス 連結 間 にお け るエ ネル ギ ー損 失 な どの 問 題 が あ る(図1.4)。34,35特 に糖 化 プ ロセ スで は、 未 だ実 用 的な 糖 化 技 術 は確 立 され て お らず 、対 費 用 効 果 の 高 い 糖 化 技 術 の研 究 開 発 が 求 め られ て い る。 L3燃 料 電 池 を利 用 した セ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス か らの エ ネル ギ ー 変 換 技 術 バ イ オ マ ス をエ ネル ギ ー資 源 と して 利 用 す る場 合 、 バ イ オマ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 過 程 に 関わ る投 入 エ ネ ル ギ ー(ト ー タル エ ネ ル ギ ー コ ス ト)を 抑 え、 そ のエ ネ ル ギ ー 収 支 が 実 用 的 な 範 囲 に収 ま るか が 重 要 とな って くる。 8 バ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 は、 実 際 に バ イ オ マ ス を エ ネ ル ギ ー 資 源 と して利 用 す る際 の重 要 な 評価 基 準 とな って くる。 この よ うな 背 景 の 中 、 近 年 、 高 いエ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 を有 す る燃 料 電 池 を用 いた バ イ オ マ スか らの エ ネ ル ギ ー 利 用 に 関 す る研 究 が 盛 ん に行 わ れ て き て い る 。 36,37燃 料 電 池 は 、 燃 料物 質 の化 学反 応(∠G〈0)を 、 電 池 内 の 一対 の 電 極 上 にお け る電 極 反 応 と して 進 行 させ る こ と に よ り、 そ の化 学 エ ネ ル ギ ー を 直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 で き る電 気 化 学変 換 シス テ ム で あ る。そ のエ ネ ル ギ ー 変換 効 率η は 次 式 で 表 され 、 γ1=(∠1H-T∠s)/∠H(1.1) (∠H:エ ン タル ピー 変 化,T:絶 対 温 度,as:エ 9 ン トロ ピー変 化) 従 来 の 熱 機 関 の エ ネ ル ギ ー 効 率 の 上 限 を 規 定 す る カ ル ノ ー サ イ ク ル η=(THTL)/TH),(TH>TL))よ り も 高 く 、次 世 代 の エ ネ ル ギ ー 分 野 に お け る 重 要 な 基 幹 技 術 の 一 つ で あ る と 考 え ら れ て い る(図1.5)。(カ ル ノ ー サ イ ク ル で は 、THを 取 ら な い と 効 率 が 良 く な ら ず 、 実 際 の 発 電 効 率 は ∼40%程 気 化 学 反 応 で は 、理 論 発 電 効 率 は80%∼90%で て ら れ た2相 大き く 度 で あ る。 一 方 、 電 あ る 。)燃 料 電 池 は 、 分 離 膜 で 隔 構 造 内 に 、 外 部 回 路 で 連 結 して い る 一 対 の 電 極 が 組 み 込 ま れ た 比 較 的 簡 単 な 構 造 を 有 し て お り(図1.6)、 や 、 場 所 に 依 存 し な い 燃 料 補 給(充 大 型 化 か ら小 型 化 ま で の ス ケ ー ル 制 御 電)が 可 能 で あ る こ とか ら 、 携 帯 性 の 高 い 分 散 型 エ ネ ル ギ ー 供 給 装 置 と い う特 徴 も 有 し て い る 。 燃 料 電 池 か ら 得 ら れ る 電 力 密 度Pは 、 以 下 の式 で 表 され る。 P[W/m2]=E[V]×1[A]/S[m2](1.2) こ こ で 、Eは 起 電 力 、1は 外 部 回 路 に 流 れ る 電 流 、Sは 電 極 面 積 で あ る。 燃 料物 質 か ら 電 気 エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 し て い る と き 、 燃 料 電 池 の ア ノ ー ドお よ び カ ソ ー ドで は そ れ ぞ れ 酸 化 還 元 反 応 が 起 こ っ て い る 。 例 え ば 、 バ イ オ マ ス の 主 成 分 で あ る セ ル ロ ー ス((C6HloO5)。)の 構 成 糖 単 位 で あ る グ ル コ ー ス(C6Hl206)か ら 、 燃 料 電 池 を介 して 電 気 エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 す 場 合 、 次 の よ うな 半 反 応 が そ れ ぞ れ の 電 極 上 で 進 行 し て い る 。 ア ノ ー ド:C6Hl206+6H20→6CO2+24H++24e-(1.3) カ ソ ー ド:6CO2+24H++24e→12H20(1.4) 電 池 全 体 と して は 、 グ ル コ ー ス の 酸 化 反 応 で あ り、 以 下 の よ う に 表 さ れ る 。 C6HI206+6CO2→12H20(1.5) こ の と き 、 ア ノ ー ドお よ び カ ソ ー ド 間 に は 、 電 子 の エ ネ ル ギ ー 差 に 応 じ た 電 位 差(起 電 力)が 生 じ る(図1.7)。 10 Figure 1.5 Efficiency efficiency Carnot of Fuel cells and Carnot at standard limit is shown pressure, for comparison, Oxidation of substrate Figure referred Limit. to Higher Maximum Heating with 50°C exhaust Semi-permearble menbrane 1.6 Composition of general 11 Reduction fuel cells H2 fuel cell Value. temperature. of 02 The Figure1.70peratingpotentialoffuelcellsystemcreatedbyanodeandcathodeinthe viewofreactionsatelectricdoublelayer そ れ ぞ れ の 半 反 応 の エ ネ ル ギ ー 状 態 は 、 既 知 の 標 準 酸 化 還 元 電 位EOと して 参 照 す る こ と が で き 、 そ れ ぞ れ の 正 味 の 反 応 の 起 電 力 を 見 積 も る こ と が で き る(表 1.1)。 こ の 場 合 、 グ ル コ ー ス を 燃 料 と し て 得 ら れ る 燃 料 電 池 の 起 電 力 は 、 ∠E= Ecath。d,-Ean。d。 よ り1.25Vで 電 子 が 電 位 の 低 い 電 極(ア あ る こ と が わ か る 。こ の と き 電 極 に 負 荷 を つ な げ ば 、 ノ ー ド)か ら 高 い 電 極(カ が 流 れ る。 12 ソ ー ド)へ 移 動 して 電 流 Table1.1Standardoxidation-reductionpotentialsofhalfreaction(vs.SHE) Reac虹on O,÷ 2HNα 耳爭!V n ⇔2H、0 斗H÷ 一 斗e層 コ〒1⑪H+〒10e一 〈 ⇒Nっ+6H,0 .OL ÷0.80 CQ,_$H+_8e ⇔CH4-2Hユ0 -0 .25 NAD++H+÷2e喞 ⇔NADH -032 HCOOH+4H〒+4e' ⇔CH30H+Hユ0 -0 .36 C5HloO5+2H+÷2(ゴ ⇔C5H1ユ0δ CO1÷6H÷ ⇔CHヨOH+HユO -0 .斗0 ⇔CH30H+Hユ0 -0 .40 2H㌧2e' ⇔Hユ -0 .41 6COユ+2斗H7-÷2斗{ジ ⇔C5HuO5-6Hユ0 -x _43 2CO、+12H÷ {⇒CユH;OH-3Hユ0 -x _50 ÷6{∫ CH.COOH÷4H〒 コ ÷4e一 ÷12e' やHユ0 -0 .36 近年 、 こ の燃 料 電 池 の 仕 組 み を利 用 して 、 セ ル ロー ス を糖 化 処 理 して 得 られ る グル コー スか ら、 直 接 電 気 エ ネル ギ ー を取 り出 す グル コー ス燃 料 電 池 に関 す る研 究 開発 が 活 発 化 して お り、発 酵 プ ロセ ス を必 要 とせ ず 、 携 帯 性 の 高 い燃 料 電 池 を利 用 す る た め 、 よ り応 用 範 囲 を広 げた バ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 技 術 と して期 待 され て い る(図L8)。36-40地 球 上 に豊 富 に分 布 して い るバ イ オ マ ス を、 燃 料 電 池 を介 して そ の場 で 効 率 的 にエ ネル ギ ー に変 換 す る こ とが 可 能 に なれ ば、 場 所 に依 存 しな い分 散 型 エ ネ ル ギ ー 供給 シス テ ム の構 築 が 可 能 とな 13 り、持 続 可 能 な 循環 型社 会 の 形成 に大 き く寄 与 す る も の と考 え られ る。 Figure1.8Energydiagramofrecentenergyconversionsystemusingfuelcell 以 下 に 、 バ イ オ マ ス 成 分 を 燃 料 と し た 燃 料 電 池(バ イ オ 燃 料 電 池)に 関す る研 究 例 を紹 介 す る 。 バ イ オ 燃 料 電 池 は 、 燃 料 物 質 の 酸 化 還 元 反 応 に関 す る触 媒 系 の 違 い に よ り 、 主 に 三 つ の 種 類(微 池)に 生 物 燃 料 電 池 、 酵 素 燃 料 電 池 、 金 属燃 料電 分 類 され 得 る 。 14 1-3-1微 生物 燃 料 電 池 微 生 物 燃 料 電 池 は 、微 生 物 の代 謝 能 を 、 燃 料 物 質 の酸 化 還元 反 応 に 関 わ る触 媒 と して 利 用 す る燃 料 電 池 で あ る。41-44微 生物 に 限 らず 、 生 命 シス テ ム の本 質 は 非 平 衡 状 態 に あ り、 代 謝 とは広 い意 味 で エ ン トロ ピー 増 大 の方 向 に 抗 して 自然 エ ネ ル ギ ー を 取 り入 れ 、 利 用 す る全 過 程 の こ と と考 え られ る。 生物 は 原 理 的 に 開 放 系 で 、 決 して 平 衡 に は な く、 た え ず 高 エ ンタ ル ピー 、低 エ ン トロ ピー の栄 養 物(燃 料 物 質)を 反 応 系(代 取 り込 み 、特 定 の 基 質 か ら特 定 の生 成 物 に 至 る一 連 の酵 素 謝 経路)を 経 て 、低 エ ンタル ピー 、高 エ ン トロ ピー の物 質 に分解 し、 そ の過 程 で 自 由エ ネ ル ギ ー を獲 得 して い る。 代 謝 経 路 は 一般 に、 糖 、脂 肪 、 タ ンパ ク 質 な ど を分 解 して低 分子 の代 謝 中 間体 に分 解 す る 異化 経 路 と、 異化 で 得 られ た エ ネ ル ギ ー を利 用 して 低 分 子 化 合 物 か ら、 よ り複 雑 な 高 分 子 化 合 物 を合 成 し、 細 胞 合 成 を行 う同 化 経 路 に分 け られ る。 生 命 が 燃 料 物 質(例 マ ス 成 分 で あ る グル コ ー ス)か え ばバ イ オ らエ ネル ギ ー を獲 得 す る際 、 この 異化 経 路 にお い て 、 よ り分 子 量 の 小 さ い ピル ビ ン酸 な どに分 解 され る。 好 気 条 件 で は、 この ピル ビ ン酸 は 、さ らに トリカ ル ボ ン酸 回 路(TCA回 路)でNADHとFADH2を 生成 し、 これ らが 電 子 伝 達 系 で 酸 素 に よ り酸 化 され る とき 、 酸化 的 リン酸 化 でArp (ア デ ノ シ ン3リ ン酸)を 生成 す る 。1分 子 のArpが 加 水 分解 され る と、約31kJ の エ ネ ル ギ ー が放 出 され る 。細 胞 は、 燃 料 物 質 か ら変 換 したArpを 源 と して 蓄 え 、 必要 に応 じてArpを エネルギー 加 水 分解 し、 化 学 的 な 仕事 、運 動 、 輸 送等 に利 用 す る機 能 を有 して い る。 微 生 物 燃 料電 池 は 、 この燃 料 物 質 の異 化 、 お よ び そ の過 程 で 生成 され る電 子 給 与体(NADH,FADH2)と 酸 素 の酸 化 還 元 反 応 を燃 料 電 池 シ ス テ ム に組 み 込 む こ とで 、 燃 料 物 質 か ら電 気 エ ネ ル ギ ー を取 り出 す こ と を可 能 に して い る(図1.9(a))。45-50グ ル コー ス を燃 料 と した 場 合 、 そ れ ぞ れ の標 準 酸 化 還 元 電位 の値 か ら、 理想 的 には1.24V程 15 度 の 起 電 力 が 得 られ るは ず で あ るが 、実 際 には 微 生 物 代 謝 お よ び電 子 授 受 反 応 に お け る微 生 物 と電 極 間 の 抵 抗 に起 因す る エ ネ ル ギ ー ロ ス な ど によ り、 微 生物 燃 料 電 池 の起 電 力 は 、 理 論 値 よ りも低 くな る(図1.9(b))。 Figure1.9Schemeofmicrobialfuelcells.(a)Compositionofthefuelcell.(b)Potential lossineachstageofreactionprocesses. この 起 電 力低 下 を減 らす た め に、 電 極 表 面 との 電 子 伝 達 能 の 高 い微 生 物 の 探索 お よ び ス ク リー ニ ン グが 重要 とな って く る。 微 生 物 燃 料 電 池 は 、 未 だ 実 用 的 な 段 階 で はな い が 、 燃 料 種 に合 わ せ て 微 生物 を選 択 す る こ とで 、 ほ と ん ど全 て の 16 バ イ オ マ ス 成 分 を燃 料 と して 利 用 す る こ とが 可 能 で あ る こ とや 、 燃 料 が 供 給 さ れ る 限 り(微 生物 が 生 きて い る限 り)、 比 較 的 安 定 に電 力 供給 で き る た め 、そ の 適 用 範 囲 は広 い。51し か し、 燃 料 電 池 に適 した 微 生物 の遺 伝 子 発 現 や 代 謝 制 御 な どが 難 し く、 電 池 出 力や 安 定 性 、 動作 環 境 な どに 問 題 点 が あ る。52燃 料 電 池 と微 生 物 を ひ とつ の バ イ オ燃 料 電 池 シス テ ム と して機 能 させ る に は 、 微 生 物 の 生 命 機 能 を シ ス テ ム と して 捉 え 、 細 胞 を構 成 す る部 品 の情 報 や 、 ハ イ ス ル ー プ ッ トに得 られ る遺伝 子 発 現 、 タ ンパ ク質 発 現 、 代 謝 物 濃 度 、代 謝 流 速 分 布 な ど の 情 報 を統 合 的 に解 析 し、 シス テ ム 同士 を合 理 的 に統 合 させ る必 要 が あ り、解 決 す るべ き課 題 は多 い と い う現 状 が あ る 。 1-3-2酵 素 燃 料 電 池 酵 素 燃 料電 池 は 、 上 述 した 代 謝 ネ ッ トワー ク にお い て 、 電子 伝 達 反 応 を触 媒 す る酵 素 そ の も の を電 極 上 に 固定 化 させ 、電 池 電 極 を 酵 素 反 応 の電 子 受 容体 と して 作 用 させ る こ とで 、 酵 素 の基 質 とな る燃 料 物 質 か ら電 気 エ ネ ル ギ ー を取 り 出す こ とが 可 能 な バ イ オ 燃 料 電 池 で あ る。53-58生体 触 媒 で あ る酵 素 を利 用 して い るた め 、 酵 素 燃 料 電 池 は 、 常 温 にお け る 動 作 、酵 素 の 基 質 とな り得 る全 て の燃 料 種 が 利 用 可 能 、 高 価 な 無 機 触 媒 が 不 要 な ど の特 徴 を有 して い る 。 また 、 酵 素 の持 つ 高 い基 質 選 択 性 か ら、 電 極 上 にお け る ク ロス 反 応(燃 還 元 も起 こる反 応)の 料 の酸 化 と 同時 に 心 配 が 少 な い た め 小 型 化 が可 能 で あ り、 ま た 高 い生 体 適 合 性 も有 して い る こ とか ら、 生体 埋 め込 み 型 の発 電 デ バ イ ス と して 、 医療 分 野 か ら も期 待 され て い る。59-61現在 の酵 素 燃 料 電 池 系 は、主 に グル コ ー ス オキ シ ダ ー ゼ(GOD)や グ ル コー ス デ ヒ ドロゲ ナ ー ゼ(GDH)を 触 媒 と して ア ノー ド電 極 上 に修 飾 した も のが 盛 ん に研 究 され て い る 。 これ らの 酵 素 に よ り、 グル コー スが 酸 化(C6H1206+1/202→C6HloO6+H20)さ れ て グ ル コ ノ ラク トンが 生 成 さ れ 、 理 17 論 的 に は1.18Vの 起 電 力が 得 られ る。 しか し、 上 述 した よ うに、 実 際 は電 池 の 反 応 段 階 で徐 々 に電 位 差 が 小 さ くな る。 酵 素 燃 料 電 池 の 場合 、 酵 素 が 触 媒 す る グル コー ス 酸 化 反 応 に 関与 す る電 子 を 電 池 電 極 に伝 達 して 、 燃 料 電 池 の発 電 機 能 が 有 効 とな るが 、 グル コ ー ス の酸 化 反 応 を行 う酵 素 の触 媒活 性 サ イ トは 、絶 縁 性 の タ ンパ ク質 構造 の 内部 に存 在 し、 電 極 と の間 で 電 子 伝 達 す る こ とが で きな い。 そ の た め 、 メ デ ィ エ ー タ ー(電 伝 達 物 質)を 子 介 して 酵 素 反 応 で 得 られ る電 子 を電 池 電 極 に伝 達 す る必 要 が あ る。 そ の 際 、 燃 料 物 質(グ ル コ ー ス)か ら酵 素 、 酵 素 か らメ デ ィエ ー ター に電 子 が 移 る に 従 い 、 徐 々 に酸 化 還 元 電 位 の低 下 が起 こ り、 電 池 の起 電 力が 低 下 す る。 ま た 、 使 用 す る メデ ィ エ ー タ ー の安 定 性 な ど に起 因す る、 燃 料 電 池 性 能 の 安 定 性 や 短 寿命 な どの 問題 点 が 存 在 す る。 1-3-3金 属燃 料 電 池 金 属 燃 料 電 池 は 、バ イ オ マ ス 由来 の燃 料 物 質 の酸 化 還 元 反 応 を、 微 生 物 や 酵 素 な どの 生 体 触 媒 で は な く、 金 属 の触 媒作 用 を用 い た 燃 料 電 池 で あ る。 い くつ か の 金 属 は 、 ア ル カ リ環 境 下 に お い て グル コー ス な どの ア ル ドー ス の酸 化 反 応 を 触 媒 す る ことが 報 告 さ れ て い る。62-64この 金 属 の糖 酸 化 に対 す る触 媒 能 を燃 料 電 池 電 極 と して 機 能 させ る こ とで 、 メデ ィ エ ー ター な ど を介 さず 、 電 極 表 面 で グ ル コー ス な どの 燃 料 物 質 と電 子 授 受 す る こ とが 可 能 な化 学 燃 料 電 池 に応 用 す る ことが で き る 。65そ の た め、 微 生物 燃 料 電 池 や 酵 素 燃 料 電 池 と比 べ て 電 圧 降下 の要 因 とな る要 素 が 少 な く、 よ り理 論 値 に近 い起 電 力(1.18V)を 考 え られ る。 また 、生体 触 媒 を使 用 しな い た め 、温 度 やpHな 得 られ る と こが ど反 応 環 境 のデ ザ イ ンが 可 能 とな り、 微 生物 燃 料 電 池 お よ び 酵 素 燃 料 電 池 とは異 な る 方 向か らバ イ オ マ ス 利 用 に関 す る燃 料 電 池 技 術 が 展 開 され る可 能 性 を有 して い る。 18 現 在 、 これ らのバ イ オ 燃 料 電 池 は、 ウ ォー クマ ンな どの 商 用 電 源 と して使 用 さ れ 、 今 後 は 、携 帯 電 話 や ノー トパ ソ コ ンな ど、他 の 携 帯 機 器 の電 源 装 置 と し て の 利 用 が 期 待 さ れ て い る。 この よ うに 、 バ イ オ マ ス か らのエ ネル ギ ー 変 換 過 程 にお け る プ ロセ ス 数 の減 少 は 、 エ ネル ギ ー 変 換 効 率 や 分 散 型 エ ネ ル ギ ー 供 給 性 の 向 上 な どが見 込 まれ 、 バ イ オ マ ス が よ り多 く の分 野 で代 替 資源 と して 利 用 され る こ とが 期待 され る。 しか し、既 存 の技 術 で は、 不 溶 性 の 高 分 子 で あ るセ ル ロー ス な ど のバ イ オ マ ス の 主 成 分 が 電 池 電 極 と電 気 化 学 的 に相 互 作 用 す る こ とが で き ず 、 燃 料 と して 利 用 可 能 な もの は 、 上 述 した グ ル コ ー ス な どのセ ル ロ ー ス 由 来 の 可 溶 性 の糖 成 分 に限 られ て い る 。 現 在 のバ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 技術 に は 、 依 然 と して 、 そ の主 成 分 で あ るセ ル ロー ス か ら、 グ ル コ ー ス に分 解 す る糖 化 プ ロセ ス が 必 要 で あ る とい う現 状 と課 題 が あ る。 1.4本 研 究 の 目的お よび 意 義 従 来 の バ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 技 術 で は 、 エ ネ ル ギ ー を 生 成 す るた め に 、 糖 化 や 発 酵 な ど、 外 部 か らエ ネル ギ ー を必 要 とす る い くつ か の プ ロセ ス が 必 要 で あ り、バ イ オ マ ス か らの エ ネル ギ ー 変 換 シス テ ム 系全 体 の エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 は低 い とい う現 状 が あ る 。 ま た 、 地 球 上 に豊 富 に 、広 域 に分 布 して い るセ ル ロー ス 系バ イ オ マ ス の分 散 型 エ ネ ル ギ ー 供 給 に適 した利 点 を十 分 に利 用 す る こ とが で きて お らず 、 エ ネル ギ ー資 源 と して の バ イ オ マ ス が 持 つ ポ テ ン シ ャル を最 大 限 に発 揮 で きて いな い。 本 研 究 で は 、バ イ オ マ ス の主 成 分 で あ るセ ル ロー ス を 、糖 化 も発 酵 プ ロセ ス も介 さず 、 従 来 のバ イ オ 燃 料 電 池 シ ス テ ム よ り も高 いエ ネル ギ ー 変 換 効 率 で 、 直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 で き る、 次 世 代 の バ イ オ 燃 料 電 池 シ ス テ ム 系 の 提 19 • 4-4%114 .Y9-(al Figure 1.10 Direct Figure 1.11 Energy 1.10t-3ct1.11)0 energy diagram conversion of direct system from energy conversion fuel cell 20 cellulose using system fuel cell. from cellulose using 未 利 用 ま た は 廃棄 され る セ ル ロー ス 系 バ イ オ マ ス は、 人類 の 生 活 圏 に豊 富 に 存 在 して お り、 そ れ らがonsiteで 携 帯電 話 な どの 携 帯 機 器 の 燃 料 源 と して使 用 で きれ ば、バ イ オマ ス の エ ネル ギ ー 利用 に関 す る技 術 レベ ル が 大 き く向 上 す る。 ま た 、 エ ネ ル ギ ー と同 時 に、 機 能 性 のセ ル ロー ス 系 ポ リマ ー な ど、 よ り付 加価 値 の高 い工 業 原 料 も製 造 す る ことが 可 能 で あ るた め 、次 世 代 の 重 要 な化 石 資 源 代 替 技 術 と して 、 持 続 可 能 な 循 環 型 社 会 の 形 成 に貢 献 で き る と考 え られ る。 ま た 、現 在 の セ ル ロー ス な ど の高 分 子 の改 質技 術 に 、電 気 化 学 的 手 法 を取 り入 れ る こ とで 、従 来 の改 質 技 術 で は制 御 の難 しか った 領 域 に応 用 ・展 開 で き 、 新 た な 機 能 性 新 素 材 や 、 ナ ノ材 料 な どを選 択 的 に生 成 で き る こと も期 待 され る。 本 論 文 の構 成 本 論 文 は 、本 章(序 論)を 含 めた 全5章 か ら構 成 さ れて い る。 以 下 に、 各 章 の 概 要 を述 べ る。 第2章 で は 、結 晶性 セ ル ロー ス を、 金 属 電 極 の糖 酸 化 に対 す る触 媒 能 を発 現 で き る環 境 下 で 、 そ の分 子 内 ・分 子 間水 素 結 合 を切 断 させ た とき の 、 セ ル ロー ス 分 子 と電極 表 面 との電 気 化 学 的 相 互 作 用 につ いて 述 べ る。 ま た 、 セ ル ロー ス を 直 接 燃 料 と して 作 動 す るセ ル ロー ス 燃 料 電 池 の特 性 を示 し、 セ ル ロー ス か らの 直 接 エ ネル ギ ー 変 換 シス テ ム につ いてn論 第3章 す る。 で は 、セ ル ロー ス を電 気 化 学 的 に酸 化 す る こ とで得 られ る酸 化 セ ル ロ ー ス 誘 導 体 の構 造 を 、X線 回 折 、 フー リエ 変 換 赤 外 分光 お よ び サ イ ズ 排 除 ク ロ マ トグ ラ フィ ー を用 い て 調 べ 、 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 反 応 の 前 後 にお け る構 造 変 化 に つ いて 述 べ る。 また 、 構 造 解 析 結 果 お よ び 反 応 電 子 数 と生 成 酸 化 21 セ ル ロ ー ス 誘 導 体 の 量 的 関 係 か ら 、 セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的 酸 化 に 関 す る 反 応 機 構 に つ い て 議 論 す る。 最 後 に 、酵 素 を用 い た酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の被 糖 化 能(分 第4章 解 能)を 調 べ 、 構 造 変 化 に伴 うセ ル ロ ー ス の 特 性 変 化 に つ い て 述 べ る 。 で は 、 セ ル ロ ー ス の 分 解 反 応 を 触 媒 す る 酵 素(セ 部 位 を 、 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ(CNT)を ル ラ ー ゼ)の 触 媒活 性 用 いて 再 構 築 した生 体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 に つ い て 議 論 す る。 また 、 本 人 工 触 媒 の触 媒 活 性 に影 響 を与 え る実 験パ ラ メ ー タ(pH ,CNT量 な ど)を 調 べ 、 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の 触 媒 反 応 機 構 に つ い て 考 察 す る 。 第5章 で は 、本 論 文 にお け る研 究 成 果 を ま と め る。 鑞 1B.Kamm&M.Kamm,Biorefinery-Systems,Chem.Biochem.Eng.Q.2004,18, 1-6. 2GW.Huber&A.Corma.SynergiesbetweenBio-andOilRefineriesforthe ProductionofFuelsfromBiomass.AngewChem.Int.Ed.2007,46,7184‐7201. 3L.R.Lynd,J.H.Cushman,R.J.Nichols&C.E.Wyman,Science.1991,251,1318. 4L.R.Lynd,C.E.Wyman&T.U.Gerngross,Biotechnol.Prog.1999,15,777. 5C.E.Wyman,Appl.Biochem.Biotechnol.1994,45/46,897. 6C.E.Wyman&N.D.Hinman,Appl.Biochem.Biotechnol.1990,24/25,735. 7GW.Huber,S.Iborra&A.Corma,Chem.Rev.2006,106,4044. 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Solantausta,EneYgyFuels.1991,5,399. 16D.Mohan,C.U.Pittman&P.H.Steele,EnergyFuels.2006,20,848. 17C.E.Wyman,Annu.RevEnergyEnviron.1999,24,189. 18N.Mosier,etal.B'o泥 ∫o蹴 距o肋01.2005,96,1986-1993. 19C.E.Wyman,etal.BioresourTechnol.2005,96,1959-1966. 20J.Soderstrom,etal.J.WoodChem.Technol.2005,25,187-202. 21A.Wingren,etal.Appl.Biochem.Biotechnol.2005,121,485-499. 22L.E.Gollapalli,etal.Appl.Biochem.Biotechnol.2002,98-100,23-35. 23E.Varga,etal.Appl.Biochem.Biotechnol.2002,98-100,73-87. 24PLSassner,etal.Enzy〃toノ レ壼cκPゐ.Technol.2006,39,756-762. 25K.Ohgren,etal.Appl.Biochem.Biotechnol.2005,121,1055-1067. 26C.Tengborg,etal.Biotechnol.PYOg.2001,17,110-117. 23 27C.Tengborg,etal.EnzymeMicrob.Technol.2001,28,835-844. 28B.S.Dien,etal.ノ 加p1.Microbiol.Biotechnol.2003,63,258-266。 29A.Mohagheghi,etal.Appl.Biochem.Biotechnol.2002,98-100,885-898. 30E.Palmgvist,&B.Hahn-Hagerdal,BioYesouYTechnol.2000,74,25-33. 31D.J.Schell,etal.、8∫o泥50蹴Technol.2004,91,179-188. 32K.L.Kadam,etal.Biotechnol.PYOg.2000,16,947-957. 331.SarvariHorvath,etal.Appl.Environ.Microbiol.2003,69,4076-4086. 34R.C.Saxena,D.K.Adhikari,&H.B.Goyal,RenewSust.Energ.Rev.2009,13, 167. 35K.Saga,etal.,J.Jpn.30c。Eη θ厂g..Res.2009,30,9. 36F.Davis&P.J.Higson,Biosens.Bioelectnon.2007,22,1224. 37R.A.Bullen,T.C.Arnot,J.B.Lakeman&F.C.Walsh,Biosens.BioelectYOn.2006, 21,2015. 38S.K.Chaudhuri&D.R.Lovley,Nat.Biotechnol.2003,21,1229. 391.Willneretal.,Science2002,298,2407. 40J.Kim,H.Jia&P.Wang,Biotechnol.Adv.2006,24,296. 41B.E.Logan,B.Hamelers,R.Rozendal,U.Schroder,J.Keller,S.Freguia,P. Aelterman,W.Verstraete&K.Rabaey,Environ.Sci.Technol.2006,40,17, 5181-5192. 42R.S.Berk&J.H.Canfield,Appl.Mick)biol.1964,12,10-12. 43J.B.Davis&H.F.Yarbrough,Science.1962,137,615-616. 44B.Cohen,J.BacteYiol.1931,21,18-19. 45K.Rabaey,N.Boon,S.D.Siciliano,M.Verhaege&W.Verstraete,Appl.EnVZYOn. Microbiol.2004,70,5373-5382. 24 46K.Rabae)もN.Boon,M.Hofte,W.Verstraete,E競m刀.Sci.Technol.2005,39, 3401-3408. 47D.RBond&D.R.Lovley,Appl.Eηv∫ π)n.Microbiol.2003,69,1548-1555. 48GReguera,K.D.McCarthy,T.Mehta,J.S.Nicoll,M.T.Tuominen,D.R.Lovley, Nature.2005,435,1098-1101. 49D.R.Bond,D.E.Holmes,L.M.Tender,D.R.Lovley,Science.2002,295,483-485. 50B.E.Logan,Environ.Sci.Technol.2004,38,160a-167a. 51D.R.Bond&D.R.Lovel)も ノ加 ρ1Eηvかoη 超070わ ∫01.2005,71,2186-2189. 52GT.R.Palmore&GM.Whitesides,AmericanChemicalSociety.1994,271-290. 53S.C.Barton,J.Gallaway&P.Atanassov,Chem.Rev.2004,104,4867-4886. 54J.Kim,H.Jia&P.Wang,Biotechnol.Adv.2006,24,296-308. 55Y.Yan,W.Zhen,L.Su,L.Mao,AduMater.2006,18,2639-2643. 56W.Zheng,Q.Li,L.Su,Y.Ya,J.hang&L.Mao,Electroanal.2006,18,587-594. 57R.Duma&S.D.Minteer,Polym.Materials.Sci.Eng.2006,94,592-593. 58D.Ivnitski,B.Branch,P.Atanassov&C.Apblett,E1εc〃oo加 配.Comm.2006,8, 1204-1210. 59S.Kerzenmacher,J.Ducree,R.Zengerle&F.vonStetten,JournalofPowerSources. 2008,182,1-17. 60A.Heller,Anal.Bioanal.Chem.2006,385,469-473. 61N.Mano,F.Mao&A.Heller,J.Am.Chem.Soc.2003,125,6588-6594. 62F.Matsumoto,M.Harada,N.Koura,S.Uesugi.Electrochem.Commun.2005,5,42. 63A.Kubo,Y.Kuwahara,1.Taniguchi.J.Electroanal.Chem.2006,590,37. 64M.Tominaga,M.Nagashima,K.Nishiyama,1.Taniguchi,EZectYOChem.Commun. 2007,9,1892. 25 第2章 2-1緒 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的直 接 酸 化 反 応 系 の構 築 言 本 章 で は 、結 晶 性 セ ル ロー ス を、糖 を酸 化 させ る金 の触 媒 能 が 発 現 で き る 環 境 下 に溶 解(分 子 分 散)さ せ 、 セル ロー ス 分 子 が 電 極 表 面 と電 気 化 学 的 に相 互 作 用 で き る環 境 を構 築 す る こ とで 、糖 化 お よ び 発 酵 プ ロセ ス を介 さず 、 セ ル ロー ス か ら直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー を取 り出 す こ とが 可 能 な 、ユ ニ ー ク な エ ネ ル ギ ー 変 換 シス テ ム につ いて 述 べ る 。 電 池 電 極 と燃 料 物 質 の電 気 化 学 反応 は 、 電 極 が 電解 質 溶 液 と接 して い る電 極 表 面(界 面)で 起 こる。 電 極 が 電解 質 に接 す る と電 極 界 面 に 静 電 気 的電 位 が 発 生 し、 バ ル ク 溶 液 か らは 異 な る 界 面構 造 で あ る電 気 二 重 層 が 形 成 され る。 電 気 二 重 層 の厚 さ は 数A程 度 で 、 この 領域 内 で 電 極 と燃 料 物 質 の電 子 授 受 反 応 が進 行 す る 。 グ ル コ ー ス な どの可 溶 性 の 単糖 成 分 は 、 この電 気 二 重 層 内 で 電 極 表 面 と電 気 化 学 的 に相 互 作 用 す る こ とが可 能 で あ り、 これ まで に多 くの 可 溶 性 糖 成 分 の 電 気 化 学 的 特 性 に関 す る知 見 が得 られ て き て い る。7-13これ らの研 究報 告 は 、 金 属 電 極 を用 い た グル コー ス燃 料 電 池 の 構 想 お よ び 開発 に大 き く寄 与 して い る 。 しか しな が ら、 グ ル コー ス の ポ リマ ー で あ る セ ル ロー ス は 、 単 に分 子 量 の増 加 だ けで な く、 一 本 一 本 の ポ リマ ー(セ ル ロー ス 分 子 鎖)同 士 に よ る化 学 結 合 ネ ッ トワー ク が 形 成 され た 不 溶 性 の 結 晶構 造 を 有 して い る。 そ の た め 、 電 極 表 面 近傍 の電 気 二 重 層 内 に各 セ ル ロー ス分 子 が 侵 入 す る こ とが 難 し く、 電 極 と電 気 化 学 的 に相 互 作 用 す る こ とが で き な い 。 実 際 、 これ まで にセ ル ロー ス な ど水 不 溶 性 の高 分 子 ポ リマ ー 分 子 と、 アル カ リ環 境 下 にお け る金 属 電 極 上 との電 極 電 気 化 学 的知 見 に 関 す る研 究 は ほ とん ど報 告 さ れ て お らず 、金 属 電 極 を用 い たセ 26 ル ロー ス か ら の直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 は 難 しい と い う現 状 が あ る 。 セ ル ロー ス と 電 極 を電 気 化 学 的 に相 互 作 用 させ るた め に は 、 まず 金 属電 極 の 糖 酸 化 に対 す る 触 媒 能 が発 現 で き る環 境 下 で 、セ ル ロー ス 分子 の結 晶 性 を壊 す必 要 が あ る。 2-2セ ル ロー ス の溶 解 結 晶性 セ ル ロー ス は 、 分 子 内 ・分 子 間 水 素 結 合 お よ び 分 子 間 の疎 水 結 合 に よ って そ の結 晶 構 造 を維 持 して い る(図2.1)。 セ ル ロー ス の溶 解 は、 セ ル ロー ス 分 子 間 に 形成 され て い る これ らの結 合 をす べ て 切 断 し、 セ ル ロー ス 分 子 間 の相 互 作 用 を 緩和 させ 、 セ ル ロー ス分 子 鎖 を分 子 レベ ル で 分 散 で き て い る こ とを示 す 。 この 状態 を形 成 させ る には 、 セ ル ロー ス 中 の水 素 結 合 あ る い は疎 水 結 合 を 切 断 す る こと に加 えて 、これ らの相 互 作 用 を妨 げ るよ う にセ ル ロー ス分 子 のOH 基 の一 部(あ る い はす べ て)を ブ ロ ッ ク して お く必 要 が あ る。 Figure2.1Chemicalstructureofcellulose 27 セ ル ロー ス の 溶 解 に 関 す る研 究 は、 繊 維 工 業 の分 野 で 盛 ん に行 わ れ て お り、 現 在 さ ま ざ まな セ ル ロー ス 溶 剤 に 関す る研 究 が 行 わ れ て い る。 セ ル ロー ス は ア ル カ リ性 環 境 下 で は 比 較 的 安 定 で あ り、水 酸 化 銅 エ チ レ ン ジ ア ミ ン溶液 等 の ア ル カ リ性 のセ ル ロー ス 溶 剤 の研 究 な どが 報 告 され て い る。 また 、非 水 系 セ ル ロ ー ス 溶 剤 と して 、 ジ メ チ ル ス ル ポ キ シ ド、 ジ メチ ル ホ ル ム ア ミ ド、 ジ メチ ル ア セ トア ミ ドな どを 主溶 媒 と した 溶 媒 系 に 関 す る研 究 も盛 ん に行 わ れ て い る。 こ れ らの 溶 媒(系)は 、 セ ル ロー ス の水 酸 基 と反 応 あ る い は強 い相 互 作 用 し、 不 安 定 な 誘 導体 あ る い は錯 体 を 形成 させ 、セ ル ロー ス の 溶解 状態 を維 持 して い る 。 一 部 の セ ル ロー ス 溶剤 は 、再 生セ ル ロー ス 成 形 品 の 工 業 生 産 に利 用 さ れ て い る 。 も っ と も大 量 に生 産 さ れ て い る の が レー ヨ ン繊 維 で あ る 。 まず セ ル ロ ー ス を 20%程 度 の水 酸化 ナ トリウム 水 溶 液 に浸 漬 し、 液 体 の二 硫 化 炭 素 を加 え る こ と に よ り、 セ ル ロー ス の水 酸 基 の 一部 が キ サ ン トゲ ン酸 塩(R-0-CS2Na)と い う誘 導 体 とな って 可 溶 化 され 、 粘 セ ル ロー ス 溶 液 が 得 られ る。 この セ ル ロー ス の キサ ン トゲ ン酸塩 溶 液 を希 硫 酸 一 無 機 塩(硫 酸 ナ トリウ ム)含 有 水 溶 液 中 に注 入す る こ と に よ り、 キサ ン トゲ ン酸 塩 部 分 が セ ル ロ ー ス 水 酸 基 か ら外 れ 、 繊 維 状 の 再 生 セ ル ロー ス ゲル が 生 成 し、 これ を乾 燥 す る と レー ヨ ン繊 維 が 得 られ る 。 この キ サ ン トゲ ン酸 塩 法 で は 、有 毒 な 硫化 水 素 が 発 生 す る た め 、環 境 に負 荷 を与 え な い 新 しいセ ル ロー ス の 溶 剤 の研 究 開発 が 求 め られ て い る。 2-2-1溶 解 前後 にお け るセ ル ロー ス の結 晶構 造 変 化 セ ル ロー ス の溶 媒 は い くつ か報 告 され て い るが 、 本 研 究 で は 、3種 類 の溶媒 (イ オ ン液 体 、 水 酸 化 ナ トリウム/チ オ 尿 素 混 合 溶 媒 、水 酸 化 ナ トリ ウム)を 用 い て セ ル ロー ス の 溶解 を検 討 した 。 まず 、 イ オ ン液 体 を用 い た 場 合 、 セ ル ロー 28 ス は 溶 解 した が 、非 常 に高 い粘 性 が あ る とい う難 点 が あ った 。 ま た 、水 酸 化 ナ トリ ウム とチ オ 尿 素 の 混 合 溶 媒 を用 い た 場 合 、 低 温 処 理(-15°C)の 後、セル ロ ー ス は 良 く溶 け た が 、 電 気 化 学測 定 時 、 電 極 表 面 へ のチ オ 尿 素 の 吸 着 現 象 が 激 しい とい う問 題 点 が あ っ た 。 一方 、 水 酸 化 ナ トリウム のみ を用 い た 場 合 、 低 温 処 理(-15°C)の 後 セ ル ロー ス が 溶解 し、 さ らに これ らの 問題 は観 察 され な か っ た た め 、本 実 験 にお け るセ ル ロー ス溶 媒 と した 。図2.2は 、セ ル ロー ス の溶 解 前 後 にお け るセ ル ロー ス 含 有 水 酸 化 ナ トリウ ム 溶 液 の顕 微 鏡 画 像 を示 して お り、 溶 解 前 で は セ ル ロー ス の構 造 が 観 察 され て い る の に対 し、溶 解 後 で は これ らの 構 造 が 観 察 され な くな った ことが わ か る 。ま た 、図2.3は 、セ ル ロー ス の溶 解 前 後 にお け るセ ル ロー ス のX線 回 折(XRD)パ ター ン を示 して い る。 溶解 前 で は 、 セ ル ロ ー ス の結 晶構 造 に 由来 す る二 つ の主 要 な 回折 ピー ク(2θ=20,23°)が 検出 され て い るの に対 し、 溶 解 後 で は これ らの 回 折 ピー ク は検 出 され て お らず 、セ ル ロー ス の結 晶性 力嘸 くな って い る(ま た は10㎜(X線 の結 晶 サ イ ズ に まで 低 下 して い る)こ 回折 の検 出 限界)以 下 と を示 して い る 。13こ の溶 解 機 構 は 、 ま ず 水 が 水 酸 化 ナ トリウ ム と水 和 構 造 を形 成 し、 次 に この水 和 構 造 体 がセ ル ロー ス と相 互 作 用(溶 媒 和)し て 、 セ ル ロー ス を溶 解 させ る と考 え られ て い る。 そ のた め 、 水 和 構 造 の維 持 あ る い は溶 媒 和 促 進 の た め 、低 温 ほ ど溶 解 が進 ん で い る と考 え られ る。 セ ル ロー ス の結 晶 性 の 低 下 は 、 上述 した セ ル ロー ス分 子 内 ・ 分 子 間 水 素 結 合 ネ ッ トワー ク の崩 壊 を示 唆 して お り、セ ル ロー ス 分 子 鎖 一一 本一 本 が 、 水酸 化 ナ トリウ ム 溶液 中で ラ ン ダ ム な 配 向性 を有 した 状 態 を 形 成 して い る と考 え られ る。 これ らの 結 果 か ら、 この セ ル ロー ス溶 液 を用 い る こ とで 、 電 極 界 面 との 間 で 電 子 授 受 可 能 な 電 気 二 重 層 領 域 に ま で個 々 の セ ル ロー ス 分 子 が 到 達 で き る 可 能 性 が 考 え られ 、 金 電 極 と電 気 化 学 的 に相 互作 用 す る こ とが 期 待 され る。 29 Figure 2.2 Microscopic Figure 2.3 X-ray diffractgrams images of cellulose in alkaline solution. of cellulose solution. (i) cellulose sample before dissolution, (ii) cellulose sample after dissolution. 30 2-3セ ル ロー ス の 電気 化 学 的酸 化 反 応 作 製 した セ ル ロー ス 溶 液 を用 い て 、 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 特 性(電 応 答)を 流一 電位 調べた。電流一 電 位 応 答 は 、 ポ テ ン シオ ス タ ッ トを用 いた サ イ ク リッ ク ボ ル タ ン メ ト リー に よ り測 定 し た 。 サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ ン メ ト リー(cyclic voltammetry;cv)は 、 電 位 走 査 法 と も呼 ば れ 、 電 驪 位 を初 期 電 位(E、)から掃 印 速 度(v)で 反 転 電位(Eλ)まで掃 印 した の ち逆 転 し、E1まで も ど した とき に流 れ る電 流 を測 定 す る手 法 で あ る。Eiを 電 極 反 応 の起 こ らな い 電位 に 、 ま たEλ を電 極 反 応 が 拡 散 律 速 とな るよ うな電 位 で 走 査 す る と、 反 応 電 流 の ピー ク 波 形 を示 す 電 流 電 圧 曲線(サ イ ク リ ック ボル タモ グ ラ ム)が 得 られ る。 負 電 流 が観 測 され る 場 合 、 電 極 表 面 にお い て還 元 反応 が 優 先 的 に進 行 して い る こ と を示 す 。 ま た、 正 電 流 が観 測 され る場 合 、酸 化 反 応 が 優 先 的 に進 行 して い る こ と示 す 。 本 実 験 で は、このCV測 定 を用 い て 、金 電極 表 面 にお け るセ ル ロー ス の酸 化 電 流 の検 出 を試 み た 。本 実 験 にお け るCV測 電 極 、参 照 極 と してAg/AgC1電 ∼0 .4、走 査 速 度5mV/secと 定 で は、作 用 極 と して金 電 極 、対 極 と して 白金 極 か ら成 る電 気 化 学 セ ル を作 製 し、走査 範 囲一 〇.1 して 電 気 化 学 測 定 を行 った(図2.4)。 Figure2.4Electrochemicalcell.(i)Anode,(ii)Cathode,(iii)SaturatedKCl 31 図25は 、金 電 極 表 面 にお け るセ ル ロー ス のサ イ ク リ ック ボル タモ グ ラム(電 流 一 電 位 曲線)を 示 して い る 。 セ ル ロー ス が 無 い、 ま た は溶 解 して い な い場 合 、 走 査 電 位 に対 す る酸 化 電 流 は ほ とん ど検 出 され な か った 。 一 方 、セ ル ロー スが 溶 解 して い る 場合 、走 査 電 位0.09Vお よび0.24Vに お いて 、 二 つ の酸 化 ピー クが 検 出 さ れ た 。 これ は、 セ ル ロー ス を水 酸 化 ナ トリウム 溶 液 中 に分 子 分 散 させ る こ とで 、 バ ル ク 中 のセ ル ロー ス 分 子 鎖 一 本 一 本 が 、 電 子 授 受 可 能 な 電 極 表 面 近 傍 の電 気 二 重 層領 域 に た ど りつ くこ とが 可 能 とな り、金 電 極 表 面(Au-OH)上 にお け るセ ル ロー ス 分 子 の 吸 着(Au-OH-Cellulose)、 電 子 授 受(Cellulose→Oxidized cellulose+ne)、 い った 一 連 の反 応 を含 む 、 セル 電 極 表 面 か らの離 脱(Au-OH)と ロー ス の 電気 化 学 的酸 化 反 応 が 進 行 した も の と考 え られ る。 32 Figure 2.5 Electrochemical Cyclic voltammograms characterisation of 2% (w/v) cellulose and its sugar units: of (a) cellulose solution in 1.33 M NaOH after cold treatment (picture inset) (i), cellulose in 1.33 M NaOH before cold treatment (picture inset) (ii), and 1.33 M NaOH control (iii). (b) cellobiose in 1.33 M NaOH (i), and control (ii). (c) glucose 1.33 M NaOH (i), and control (ii). Scan rate 5 mV/s, with 40 mM phosphate buffer solution, pH 7.0 (PBS) as the supporting electrolyte. 33 ま た 、 セ ル ロー ス が 溶 液 中 に分 子 分 散 した こ と によ り、 反 応 溶 液 内 の セ ル ロー ス のmol濃 度 お よ び拡 散 速 度 が増 加 し、 次 式 で 示 され る コ ッ トレル の 式 に従 っ て セ ル ロー ス の酸化 電 流 が検 出 され た もの と考 え られ る。 nFAD。112C。 i(t)_ X1/2tl/2 こ こで 、i(t)は電 流値 、nは 電 子 数 、Fは フ ァ ラデ ー 定 数 、Doは 拡 散 係 数 、Coは 基 質 濃 度 、tは 走査 時 間 を表 す 。 ま た酸 化 ピー クが 一 つ 以 上検 出 さ れ た こ とか ら、 セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的酸 化 反 応 は 、 複 数 の 電 子 伝 達 が 関与 す る多 電 子 酸 化 反 応 で あ る可 能 性 も示 唆 して い る。 こ こで 、セ ル ロ ース の構 成 糖 単 位 で あ る グル コー ス お よ び セ ロ ビオ ー ス(グ ル コ ー ス の2量 体)の サ イ ク リ ック ボ ル タ モ グ ラム と比 較 して み る と、各 糖 成 分 に は 、 そ れ ぞ れ 特 有 の電 気 化 学 的応 答 を示 す ことが わ か る 。 各 糖 成 分 の酸 化 ピー ク電 位 お よび 酸 化 ピー ク電 流(Ip。)をTable2.1に 示 す 。 Table 2.1Electrochemicalparameters LLLL./GLI. of sugars Peakpotential(V) Peak potential (V) Current (mA) Glucose 0.32 40 Cellobiose 0.25 0.25 20 Cellulose 0.091 nn 34 最 も高 いEp。 を 示 した のは セ ル ロー ス(0。09V)で た の は グル コ ー ス(0.32V)で ー ス(40mA)で あ り、 最 も低 いEp。 を示 し あ った 。 ま た 、最 も高 い1。pを示 した の は グル コ あ り、最 も低 い1。pを示 した のは セ ル ロー ス(1mA)で あ っ た 。セ ロ ビオ ー ス のEp、 はセ ル ロー ス とグル コ ース のE。pの 中間 よ りも グル コ ー ス側(0.25 V)、1。pは両 者 の ほ ぼ 中間値(20mA)で あ っ た 。 この 結 果 か ら、糖 を構 成 す るモ ノ マ ー糖 単位 が増 加 す る に従 い、糖 の電 気 化 学 的酸 化 反 応 にお け るE。pが ネ ガ テ ィ ブ側 に シ フ トし、1。pが減 少 す る傾 向が 示 唆 され た 。 この 傾 向 は 、電 極 界 面 にお ける ポ リマ ー 特 有 の 電 気 化 学 的 挙 動 と して 、 意 義 深 い知 見 が 得 られ た もの と思 わ れ る。 得 られ た ボ ル タ モ グ ラム が セ ル ロー ス 由来 の もの で あ る こ と を確 認 す るた め に、 セ ル ロー ス 溶液 内 に含 まれ る グル コー ス を測 定 した 。 そ の結 果 、作 製 した セル ロ ー ス 溶液 内 に は、 約0.03mg!mlの グル コー ス が 含 まれ て い る こと が わ か っ た 。 そ こで 、 標 準 グ ル コ ー ス 溶 液 と して 、 同 濃 度 の グ ル コ ー ス(0.03 mg/ml)を 含 む 水 酸 化 ナ トリウ ム水 溶 液 を調 整 し、 同様 のサ イ ク リッ ク ボ ル タ ン メ トリー を行 い、 セ ル ロー ス の ボ ル タ モ グ ラム と比 較 す る こ とで 、 セ ル ロー ス 溶 液 内 に含 まれ る グル コー ス の影 響 につ いて 調 べ た 。図2.6は 、金 電 極 表 面 にお け る標 準 グル コー ス溶 液 のボ ル タモ グ ラム を示 して お り、 グル コー ス 特 有 のE。p 付 近 に 、 酸 化 ピー ク が検 出 され た 。 こ こで 、 セ ル ロー ス の ボ ル タモ グ ラム と比 較 して み る と、 走 査 電 位 に対 す るセ ル ロー ス の酸 化 電 流 は 、 標 準 グル コ ー ス の 酸 化 電 流 よ りも大 き く、 セ ル ロー ス 溶 液 内 に含 まれ る グ ル コ ー ス は 、セ ル ロー ス の電 気 化 学 特性 に対 す る影 響 が 小 さい こ とが わ か っ た(図2.7)。 この 結 果 か ら、 得 られ た ボル タモ グ ラム は、 セ ル ロー ス 特 有 の もの で あ る と考 え られ る。 35 Figure 2.6 Cyclicvoltammogram of standard glucose sample. (blue line: 0.03 mg/ml of glucose in 1.33 M NaOH, black line: 1.33 M NaOH) Figure 2.6 Cyclicvoltammograms of cellulose and standard glucose sample. (red line: 2 % (w/v) cellulose in 1.33 M NaOH, blue line: 0.03 mg/ml of glucose in 1.33 M NaOH, black line: 1.33 M NaOH) 36 以 上 の 結 果 か ら、糖 の酸 化 に対 す る金 電 極 の触 媒 能 が 発 現 で き る環 境 下 で セ ル ロー ス の 分 子 内 ・分 子 間 水 素 結 合 を崩 壊 させ る こ とで 、電 極 上 で セ ル ロー ス を電 気 化 学 的 に直 接 酸 化 で き る こ とが 示 され た 。 また 、 グル コ ー ス や キ シ ロー ス 、セ ロ ビオ ー ス な ど、 可 溶 性 の 糖 類(六 単糖 、 五 単 糖 、 オ リゴ 糖 な ど)の 金 属 電 極 表 面 にお け る電 気 化 学 的 特 性 に 関 す る報 告 例 は多 く存 在 す るが 、14セ ル ロー ス の よ うな 、 水 不 溶 性 の 多 糖 類 の電 極 表 面 にお け る電 気 化 学 的 特 性 に 関す る報 告 は ほ とん どな い こ と を考 え れ ば、 本研 究 で 得 られ たセ ル ロー ス の ボル タ モ グ ラム は 、 多 糖 類 の金 属 電 極 上 にお け る新 し い電 気 化 学 的 知見 と して 、 今 後 の新 しい研 究 展 開 に寄 与 す る と思 わ れ る 。 2-4電 気 化 学 的 酸 化 反 応 によ るセ ル ロー ス の構 造 変化 セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的酸 化 反 応 は、 セ ル ロー ス 分 子 と電 極 表 面 にお け る電 子 授 受 反 応 で あ るた め 、 酸 化 反応 前 後 に お い て セ ル ロー ス分 子 の 構 造 が 変 化 し て い る と考 え られ る。 本 項 で は 、 フー リエ 変 換 赤 外 分 光(FT-IR)を 用 いて 、 電 気 化 学 的 な 酸 化 反 応 の 前 後 にお け る セル ロ ー ス の構 造 解 析 を行 っ た。FTIR測 は 、真 空凍 結 乾 燥 処 理 によ り粉 末 上 に した 試 料 を用 い た。図2.7に よ び 電 気 化 学 的 酸化 反 応 前後 に お け るセ ル ロー ス のFTIRス 定で 、溶 解 前後 お ペ ク トル を示 す 。溶 解 前 の セ ル ロー ス には 、 い くつ か の特 徴 的な 鋭 い 吸 収 ピー クが 観 察 され た 。 セ ル ロー ス の 溶解 後 に は 、 これ らの ピー ク強 度 が 変 化 し、特 にOH基 3300cm-1付 近 の ピー ク 強 度 が減 少す る変 化 が 観 察 され た。 つ ぎ に 、セ ル ロー ス が電 気 化 学 的 に酸 化 され る と、Cニ0ま 1400cm1付 に 由来 す る た はC-0-Hの 近 の 吸収 ピー ク強 度 が 顕 著 に増 加 した。15 37 内 角偏 角 振 動 に帰 属 す る Figure2.7FT-IRspectraofcellulosesample.(i)cellulosebeforesolubilization;(ii) celluloseaftersolubilization(beforeoxidation);(iii)celluloseafteroxidation.IRspectra werecollectedfrom650to4000cm'1.Theoxidisedcellulosesampleswerecollected fromcelluloseafterundergoingcyclicvoltammetryuntildisappearingoftheoxidation peak(4500scancycles). この 結 果 は、 電 気 化 学 的 に酸 化 され たセ ル ロー ス は 、 分 子 鎖 上 の カ ル ボ ニ ル 基 が増 加 したセ ル ロー ス 誘導 体 に変 化 した 可 能 性 を示 して い る。興 味 深 い こと に、 酸 化 反 応 前後 に お いて 、セ ル ロー ス溶 液 の粘 性 の増 加 が 確 認 され た(Table2.2)。 酸 化 さ れ た セ ル ロー ス 誘 導体 が 、 この溶 液 粘 性 の増 加 に 寄 与 して い る 可能 性 が 考 え られ る。 この電 気 化 学 的 に酸 化 され た セ ル ロー ス 誘 導体 につ いて は 、3章 で 詳 しく述 べ る。 38 Table2.2.Viscosityofcellulosesolutionbeforeandafteroxidationbycyclic voltammetricanalysis(CV). SamplesH20Cellul°ses°luti°nCellul°ses°luti°n(after(b eforeoxidation)oxidation) Viscosity1 mPa.s] .36.5312.9[ グル コー ス な ど の可 溶 性 単糖 類 の 金 電 極 上 にお け る電 気 化 学 的 酸 化 反 応 で は 、 グ ル コ ー ス の 還 元 末 端 で あ る ア ル デ ヒ ド基 が 、 ア ル カ リ 環 境 下 に お け る 金 の 触 媒 活 性 部 位(Au-OH)に よ り 酸 化 さ れ 、カ ル ボ キ シ ル 基 に 変 化 す る と い う 反 応 機 構 が 報 告 され て い る。 セ ル ロー ス は グル コ ー ス のポ リマ ー で あ るた め 、そ の 分子 鎖 に 還 元 末 端 と し て ア ル デ ヒ ドが 存 在 し て お り 、 上 述 し た ア ル カ リ 環 境 下 に お け る金 電極 の糖 酸 化 に対 す る触 媒 能 が セ ル ロー ス 分 子 に対 して 作 用 した とす れ ば 、 少 な く と も 、 セ ル ロ ー ス の 還 元 末 端 で あ る ア ル デ ヒ ド基 が 酸 化 さ れ 、 カ ル ボ キ シ ル 基 に 変 化 して い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 以 上 の 結 果 か ら、 電 気 化 学 的 に セ ル ロー ス を 酸 化 させ る こ と で 、 少 な く と も 分 子 鎖 上 の 還 元 末 端 が 酸 化 さ れ 、 カ ル ボ キ シル 基 に変 化 したセ ル ロー ス 誘 導 体 が 形 成 され た 可能 性 か 示 唆 さ れ た 。 2-5電 気 化 学 的酸 化 反 応 に対 す るセ ル ロー ス の分 子 サ イ ズ の影 響 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 にお け る反 応 機 構 に 関す る知見 を得 る た め 、 セ ル ロ ー ス の1、pに 対 す る セ ル ロ ー ス の 分 子 サ イ ズ の 影 響 に つ い て 調 べ た 。 異 な る サ イ ズ の セ ル ロ ー ス 試 料 を 調 整 す る た め に 、 ボ ー ル ミル を用 い た 物 理 的 な 破 砕 処 理 を行 っ た 。 ボ ー ル ミル 処 理 さ れ た セ ル ロー ス の分 子 サ イ ズ は、 動 的光 散乱 法(DLS)に よ りそ の 大 き さ を 測 定 し た 。 最 終 的 に 、DLS測 39 定 値 で お よ そ100㎜ お よび500㎜ を中心 に分 布 す るセ ル ロー ス試 料 を調 整 す る こ とが で きた 。 こ の 試 料 を用 い て 、 セ ル ロー ス の サ イ ク リッ ク ボ ル タ モ グ ラム を測 定 し、 分子 サ イ ズ の違 い によ る1、pの変 化 を比 べ た。そ の結 果 、セ ル ロー ス の分子 サ イ ズ が 、DLS 測 定 値 で500㎜ け る1。pが約13%増 か ら100㎜ に80%減 少 す る と、セ ル ロー ス の金 電 極 表 面 にお 加 した(図2.8)。セル ロー ス の 分子 サ イ ズ とそ の長 さが 線 形 的 に関 連 して い る とす る と、 分子 サ イ ズ が80%減 ル ロー ス 分子 数 は5倍 少す る こ とで、 重 量 あ た りの セ に増 加 す る はず で あ る 。 さ らに 、そ れ ぞ れ のセ ル ロー ス 分 子 が 還 元 末 端 を有 す る と仮定 す る と、1。pが 最 大500%増 加 し得 る はず で あ る。 溶 液 中 に お け るセ ル ロー ス 分 子 の拡 散 速 度 な どの諸 律 速 因子 の影 響 を考 慮 して も、分 子 サ イ ズ の減 少 量 に対 す る1。pの増 加 量 が 極 め て小 さ い。以 上 の結 果 か ら、 セ ル ロー ス の 分子 サ イ ズ を 減 少 させ る こ とで 、金 電 極 表 面 にお け る1。pが増 加 す る こ とが わ か った 。 しか し、分 子 サ イ ズ の減 少 に伴 う還 元 末 端 の増 加 量 と、 得 られ た1、pの増 加 量 の 一 致 が 認 め られ な か った 。 これ は 、 アル カ リ環 境 下 にお け る セ ル ロー ス と金 表 面 の 電 子 授 受 反 応 が 、 既 存 の グ ル コ ー ス な どの モ ノマ ー 分 子 とは 異 な る 、ポ リマ ー分 子 特 有 の反 応 機 構 を有 して い る可 能 性 が 考 え られ る。 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 に関 す る反 応 機 構 の よ り詳 し い考 察 に つ い て は 、 第3章 で後 述 す る。 40 Figure 2.8 Electrochemical characterisation of cellulose samples: (a) size distribution after nano-particulation to (i) 100 nm and (ii) 500 nm. (b) cyclic voltammograms of (i) 100 nm, (ii) 500 nm and (iii) without cellulose. Scan rate 5 mV/s, with 40 mM phosphate buffer solution, pH 7.0 (PBS) as the supporting electrolyte. 41 2-6セ ル ロー ス燃 料 電 池 の作 製 ・評価 2-3項 よ り、金 電極 の 有 す る糖 酸 化 に対 す る触 媒 能 を発 現 で き る環 境 下 で 、セ ル ロー ス の分 子 内 ・分 子 間 水 素 結 合 を切 断 す る こ とで 、 セ ル ロー ス が 電 極 表 面 と電 気 化 学 的 に 相 互 作 用 で き る反 応 場 を構 築 す る こ とが 可 能 とな り、 セ ル ロー ス が 電 極 上 で 直 接 酸 化 され 得 る こ とがわ か っ た。 そ こで 、 バ イ オ マ ス の主 成 分 で あ るセ ル ロ ー ス か ら、 糖 化 も発 酵 プ ロセ ス も介 さ ず 、 直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー を 供 給 す る こ とが 可 能 な 、ユ ニ ー クな セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の作 製 を試 み た 。 図2.9 は、 実 際 に作 製 した 燃 料 電 池 の構 造 で あ る。 セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の電 流 電 圧 曲 線 を、 異 な る抵 抗(100Ω 一100kΩ)を 用 い て デ ジ タル マル チ メー ター によ り測 定 した 。 セ ル ロー ス 燃料 電 池 の電 力密 度P(W/m2)は 、 以 下 の 関係 か ら求 め た 。 P[W/m2]=E[V]XI[A]/A[m2](2-1) こ こで 、Eは 電 池 電 圧[V]、1は を示 す 。 図2.10に 外 部 回 路 に流 れ た 電 流[A]、Aは 電 極 表 面 積[m2] 、 セ ル ロー ス燃 料 電 池 の電 池 特 性 を示 す 。 測 定 の結 果 、セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の最 大 電 流 密度 は497mA/m2、 最 大 電 力 密 度 は44mW/m2で あっ た 。 こ の値 は 、 グ ル コ ー ス な どのバ イ オ マ ス 由来 の糖 成 分 を燃 料 とす るバ イ オ 燃 料 電 池 よ り も低 い 。16し か し、 先 に述 べ た よ うに 、既 存 の エ ネ ル ギ ー 変 換 技 術 で は 、電 気 エ ネ ル ギ ー を取 り出す 過 程(糖 化 お よ び 発 酵 プ ロセ ス)で 、外部 か らエ ネル ギ ー を投 入 す る必 要 が あ る 。 さ らに 、既 存 の プ ロセ ス の組 合 せ で 成 る エ ネ ル ギ ー 変 換 系 で は 、 各 プ ロセ ス の連 結 箇 所 に お け るエ ネ ル ギ ー 損 失 な ど の 問 題 も抱 え て い る 。 これ らの要 素 を考 慮 す る と、本 研 究 で 構 築 で き た セ ル ロ ー ス 燃 料 電 池 系 は 、従 来 の も の と比 べ て 、 燃 料 物 質 か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 が 高 い 、 新 しいバ イ オ マ ス か らのエ ネ ル ギ ー 変 換 シ ス テ ム と して 提 案 で き る も の と思 われ る 。 42 Figure 2.9 Diagram and cross-sectional picture of the cellulose fuel cell system . Figure 2.10 Characteristics of cellulose fuel cells. (i) current density, (ii) power density. Fuel cell parameters were measured using several values of resistance with a digital multi-meter. 43 2-7ま とめ 本 章 で は 、 金 の糖 酸 化 に対 す る触 媒 能 が 発 現 で き る アル カ リ環 境 下 で 、電 気 化 学 的 に不 活 性 な セ ル ロー ス の 結 晶 構 造 の維 持 に寄 与 して い る分 子 内 ・分 子 間水 素 結 合 を切 断 す る こ とで 、 セ ル ロー ス分 子 鎖 一 本 一 本 が 溶 液 中で ラ ンダ ム な 配 向 性 を有 し、 金 電 極 と電気 化 学 的 に相 互 作 用 で き る電 気 化 学 的 に活 性 な状 態 を形 成 させ 、金表 面 上(Au-OH)で セ ル ロー ス を直 接 、電気 化 学 的 に酸 化 で き る こ とを 見 出 した 。 ま た 、 水 不 溶 性 多 糖 類 の最 初 の電 気 化 学 的 知見 と して 、 セ ル ロー ス の サ イ ク リ ック ボ ル タ モ グ ラム を得 る ことが で き た 。 また 、 電 気 化 学 的 に酸 化 され た セ ル ロー ス は 、 分 子 上 のカ ル ボ キ シル 基 が 増 加 した セ ル ロー ス 誘 導 体 に 変 化 す る こ とが わ か った 。 さ らに 、実 際 にセ ル ロ ー ス を直 接 燃 料 と して 作 動 す る、 セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の 作 製 に 成功 した 。 これ に よ り、 バ イ オ マ ス の 主 成 分 で あ るセ ル ロー ス か ら、 糖 化 も発 酵 プ ロセ ス も必 要 とせ ず 、 直 接 電気 エ ネ ル ギ ー に 変 換 す る こ とが 可能 な 、 新 しいバ イ オ マ ス か らの エ ネ ル ギ ー変 換 シ ス テ ム 系 の 構 築 に成 功 した 。 ま た 、 この エ ネ ル ギ ー 変 換 シ ス テ ム 系 は 、 エ ネ ル ギ ー 変 換 と物 質 変 換 が 、電 極 上 の 電子 授 受 反 応 を介 して 共 役 して い る た め 、 エ ネ ル ギ ー 供 給 と平 行 して 、物 質 供 給 も可 能 で あ る と い う特 徴 も有 して い る。従 来 のセ ル ロー ス の 改 質 技 術 で は 、 エ ネ ル ギ ー を消 費 して 目的 生 成 物 を得 て い る こ と を考 え れ ば 、 本 シス テ ム 系 は 、 セ ル ロー ス か ら電 気 エ ネル ギ ー を 取 り出 し な が ら、 ポ リマ ー 系 工 業 原 料 も同 時 に生 成 で き るユ ニ ー ク なセ ル ロー ス リ フ ァ イ ナ リー シス テ ム と い う特徴 も有 して い る 。 44 Scheme1.Pathwaytocelluloseoxidationonagoldelectrode.(i)Cellulose crystallisedstate;(ii)Dissolutionbreaksintra/internalhydrogenbonds;(iii) Nano-particulationincreasestheamountofreducingterminals. 参 考 文 献 1R.C.Saxena,D.K.Adhikari&H.B.Goyal,Renew.Sust.Energ .Rev.2009,13, 167-178. 2E.M.Rubin,Nature.2008,454,841-845. 3S.K.Chaudhuri&D.R.Lovley,Nat.Biotechnol.2003,21,1229-1232. 41.Willneretal.,Science2002,298,2407-2408. 5J.Kim,H.Jia&P.Wang,Biotechnol.Adv.2006,24,296-308. 45 6EMatsumoto,M.Harada,N.Koura&S.Uesugi.E1εc'π)the〃Z.σ 硼 42-46. 7AKubo,YKuwahara&1.TaniguchiJE7θ α π)anal.Chem.2006,590,37-46. 8M.Tominaga,M.Nagashima,K.Nishiyama&1.Taniguchi,Electrochem.Commun. 2007,9,1892-1898. 9C.Jin&1.Taniguchi,Matey.Lett.2007,61,2365-2367. 10A.Lue,L.Zhang&D.Ruan,Macromol.Chem.Phys.2007,208,2359-2366. 11D.Klemm,B.Heublein,H.P.Fink&A.Bohn,Angew.Chem.Int.Ed.2005,44, 3358-3393. 12J.Cai&L.Zhang,Macromol.Biosci.2005,5,539-548. 13A.Isogai,etal.,Cellulose,1998,5,309-319. 14S.Takashi,etal.,Biotechnol.Bioeng.1979,XXI,1031-1042. 15X.Yin,A.Koschella&T.Heinze,React.Funct.Polym.2009,69,341-346. 16S.Kerzenmacher,J.Ducree,R.Zengerle&F.vonStetten,J.PowerSources.2008, 182,1-17. 46 翩 η.2005,5, 第3章 電 気 化 学 的 に直 接 酸 化 され たセ ル ロー ス誘 導 体 の構 造 解 析 3-1緒 言 前 章 よ り、 セ ル ロー ス が電 気 化 学 的 に酸 化 され る こ とで 、そ の 分 子 鎖 上 にお け るカ ル ボ ニ ル 基 が 増 加 した セ ル ロー ス 誘 導 体 に変 化 す る こ とが 示 唆 され た。 本 章 で は 、 こ の 電 気 化 学 的 に 生 成 さ れ た 酸 化 セ ル ロ ー ス 誘 導 体 の 、X-ray diffraction(XRD),Fouriertransmissioninfraredspectroscopy(FT-IR),Sizeexclusion chromatography(SEC)を 用 いた 構 造解 析 を行 った 。 さ らに、 セ ル ロー ス の酸 化 反 応 に 関 与 した 電 子 お よび 生 成 した 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の量 的 関 係 を考 察 し、 セ ル ロ ー ス の 電 気 化 学 的酸 化 反 応 に伴 う酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 へ の反 応 機 構 の 解 明 を試 み る。 また 、 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の酵 素(Cellulase)に よ る被 分解 能 を 調 べ 、 得 られ た セ ル ロー ス 誘 導体 の特 性 評 価 を行 った 。 3-2セ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応 と反応 電 子 数 本 項 で は 、 電 気 化 学 的 に酸 化 さ れ た セ ル ロー ス 誘 導 体 の試 料 作 製 と、 そ の 時 セ ル ロー ス の 酸 化 反応 に関 与 した 電子 数 に つ いて 述 べ る 。図3.1は 、電 気 化 学 セ ル 系 へ の電 位 の 掃 印 開 始 時 お よ び修 了 時 にお け る 、 セ ル ロー ス の ボ ル タモ グ ラ ム 、 お よび この 時 セ ル ロー ス の酸 化 反応 に 関与 した 電 気 量(ク ー ロ ン[C])を 、電 位 の掃 印 回数 に対 して プ ロ ッ トした もの を示 す 。 この 図 か ら、セ ル ロー ス か ら 金 電 極 表 面 へ の電 子 授 受 数 は、 電 位 の掃 印 回数 の増 加 に した が い 、指 数 関数 的 に減 少 して い る こ とが 分 か る。 これ は 、 セ ル ロー ス と金 電 極 表 面 に お け る電 子 伝 達 速 度 に、 セ ル ロ ー ス の 電 極 表 面 へ の 拡 散 速 度 が 追 い つ いて い な い 可 能 性 が 47 考 え られ る。 この結 果 を基 に、 本 実 験 に お い て セ ル ロー ス の酸 化 反 応 に 関 与 し た総 電 気 量(3,75C)を 考 察 に 用 い た(3-4参 求 め、セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 に関 す る反 応 機 構 の 照)。 Figure3.1Theelectrochemicaloxidationofcellulose.(a)Cyclicvoltammogramof celluloseusingAuelectrodeunderthealkalinecondition.(i)Initialcycle(1scan),(ii) Middlecycle(500scans),(iii)Finalcycle(3,000scans) .Scanrange:-0.1VtoO.4V, Scanrate:50mV/s(respecttoAg/AgCI).(b)Thecoulombvalueduringcellulose oxidation.(lnset:coulombvalueduringO^-500scansofCV.) 48 3-3電 気 化 学 的 に酸化 され た セ ル ロー ス誘 導 体 の構 造 解 析 3-3-1酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の特 性変 化 電 気 化 学 的 に酸 化 され た セ ル ロー ス は 、分 子 上 のカ ル ボ ニ ル 基 が 増 加 した セ ル ロー ス 誘 導 体 に変 化 す る ことは 、既 に2章 で 示 され た 。 こ こで は 、 カ ル ボ ニ ル 基 の増 加 に よ る、酸 化 セ ル ロー ス 誘導 体 の特 性 変化 につ い て述 べ る 。3-2項 で 作 製 した酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体含 有 水 酸 化 ナ ト リウ ム 水 溶液 に、 塩 酸 を徐 々 に加 え てpHを 中性(7.0)に 調 整 した。そ の 結 果 、溶 液 中 に分 子 分 散 して い た セ ル ロー ス の析 出 が 観察 され た(再 生セ ル ロー ス)。 先 に述 べ たが 、 セ ル ロー ス が 水 酸 化 ナ トリウム 水 溶液 に溶 解(分 が セ ル ロー ス 分 子 上 のOH基 子 分 散)し て い る 時 、OH一 イ オ ン(NaOH由 来) と相 互 作 用 してお り、1-3セ ル ロー ス 分 子 上 のOH 基 同士 に よ る 分 子 内 ・分 子 間相 互 作 用 が 弱 ま って い る状 態 が 形 成 され て い る と 考 え られ る(図3.2)。 Figure3.2Chemicalstructureofcelluloseafterdissolution. 49 そ の 結 果 、 セ ル ロー ス 分 子.,本 一 本 が 溶液 中 に分 散 す る こ とが 可 能 とな り、 無 色 透 明な セ ル ロー ス 溶 液 を得 る こ とが で き る 。 こ こで 塩 酸 を滴 下 す る と、 中 和 効 果 によ りセ ル ロー ス 分 子 と相 互作 用 して い たOH一 が取 り除 か れ 、セ ル ロー ス分 子 のOH基 由来 の分 子 内 ・分 子 間水 素 結 合 が 再 び 形 成 され る。 そ の 結果 、 結 晶 性 のセ ル ロー ス(再 生 セ ル ロー ス)が 析 出 し、溶 液 が 白濁 した もの と思 わ れ る 。 この 中 和溶 液 を 、遠 心 分 離(12,000rpm,15min)に よ り上 清 と沈 殿 成 分 に分 け 、凍 結 乾 燥 処 理 して 粉 末 状 試 料 を調 整 した 。 この電 気 化 学 的 酸 化 お よ び 中和 処 理 した セル ロー ス 溶 液 の 上清 お よび 沈 殿 成 分 の粉 末 試 料 の構 造 特 性 を、FT-IR を用 い て解 析 した。 興 味深 い ことに、 カル ボニル基 に帰属す る吸収 ピーク の増加 は、 上清試 料 の FT-IRス ペ ク トル に現 れ 、沈 殿 試 料 の ス ペ ク トル に は現 れ な か った(図3.3)。 こ の結 果 か ら、 電 気 化 学 的 に酸 化 され た カ ル ボ ニ ル 基 リ ッチ な セ ル ロー ス 誘 導 体 は 、親 水 性 の カ ル ボニ ル 基 の 増 加 に伴 う水 と の親 和 性 が 増 加 した 、 水 可 溶 性 の セ ル ロ ー ス誘 導 体 に変 化 した 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。また 、沈 殿試 料 のFT-IRス ペ ク トル は 、酸 化 され る 前 の元 の 結 晶 性 セ ル ロー ス のス ペ ク トル に似 て い る こ と か ら、 沈 殿 成 分 は再 生 セ ル ロー ス で あ る と考 え られ る。4-6 50 Figure 3.3 FT-IR analysis of cellulose samples. (a) FT-IR spectra of cellulose samples (i) cellulose (before dissolution), (ii) cellulose (after dissolution, before electrochemical oxidation), (iii) cellulose (after electrochemical oxidation). (b) FT-IR spectra of water soluble and insoluble parts in cellulose after electrochemical oxidation. (i) supernatant (soluble part), (ii) pellet (insoluble part). Resolution: 4 cm-1. Range: 650 to 4000 cm'. 51 3-3-2酸 化 セ ル ロー ス 誘導 体 の構 造 変 化 前 項 で は 、金 表 面 にお け るセ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応 によ り、 水 不 溶 性 のセ ル ロー ス が 、 水 可 溶 性 の酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 に変 化 した 可 能 性 が 示 さ れ た 。 本 項 で は 、 電気 化 学 的 な酸 化 反 応 が セ ル ロー ス の構 造 に与 え る影 響 を よ り詳 し く理解 す るた め に 、XRDお よびFT-IRを 用 いて 、 セ ル ロー ス の酸 化 反 応 の 前 後 にお け るセ ル ロー ス溶 液 の水 可 溶 成 分 お よ び 水 不 溶 成 分 の 構 造 解 析 を行 った 。 そ の際 、3-3-1項 で 作 製 した酸 化 セ ル ロー ス含 有 水酸 化 ナ トリウ ム水 溶 液 を元 に、 図3.4に 示 した試 料 調 整 を行 い、 本 構 造 解 析 用 の試 料 と した 。 構 造 解 析 の前 に 、 こ こで 調 整 した試 料 を用 い、 セ ル ロー ス 溶 液 の 水 可 溶 成 分 お よ び 水 不 溶 成 分 の 重 量 を測 定 した。 そ の結 果 、 電 気 化 学 的酸 化 反 応 の前 後 に お い て 、 セ ル ロー ス 溶 液 の水 可 溶/不 溶 成 分 比 に変 化 が あ る こ とが 分 か っ た(図 3。5)。興 味 深 い こ と に 、3000回 6.4%(8.2×103[gDの の電 位 走 査 を伴 う電 気 化 学 的酸 化 反 応 の 後 、 セ ル ロー ス溶 液 内 の水 可溶 成 分 が 増 加 し、水 不 溶 成 分 比 は減 少 して いた 。 この結 果 は 、 セ ル ロー ス の 電気 化 学 的酸 化 に よ り、 セ ル ロー ス 溶 液 内 の水 不溶 成 分 が 、 水 可 溶 性 成 分 に変 化 した 可 能 性 を示 し、3-3-1項 で 示 唆 さ れ た電 気 化 学 的酸 化 に よ る水 可 溶 性 セ ル ロー ス 誘 導 体 の存 在 を支 持 して い る。 こ こで 、電 気 化 学 的酸 化 前 のセ ル ロー ス 溶 液 にお いて 、微 量(2%程 度)の 水 可 溶 成 分 の 存 在 が 示 唆 され て い るが 、 これ は 透析 処 理 によ る水 酸 化 ナ トリ ウム 成 分 を完 全 に(100%)取 ー ス のOH基 り除 く こ とが で き ず 、 水 酸 化 ナ トリウム 由来 のOH一 が セ ル ロ に作 用 して い る分 子 分 散 状 態 の セ ル ロー ス(Cellulose -0δ一Hδ+・OH-) に起 因す る もの で あ る と考 え られ る。 ま た 、 酸化 反 応 後 の セ ル ロー ス溶 液 の 量 が 酸 化 前 に 比 べ て 減 少 して い るが 、 これ は透 析 ・遠 心 分 離 ・凍 結 乾 燥 を含 む試 料 作 製 の全 過 程 に お け る 、 人為 的操 作 に起 因 す る 試 料 回収 率 の 低 下 に 由来 す る 52 も の で あ る と考 え られ る。 Cellulosesolution l Dialysis l △ Centrifugation (12,000叩m,15min) SupernatantPellet lWasingwithmilli-Qwater(twice) Centrifugation (12,000rpm,15min) A SupernatantPellet ↓F・eeze岫g Cellulosepowder lDiss°luti°n Cellulosesolution l Electrochemicaloxidation l Dialysis l △ Centrifugation (12,000rpm,15min) SupernatantPellet lFreezedryingl SolublecomponentsInsolublecomponents ll XRDandFT-IRmeasurement Figure3.4.Samplepreparationforstructureanalysis 53 Figure3.5Massbalanceofsupernatantandpelletcomponentsasadryweight incellulosesolutionbeforeandafterelectrochemicaloxidation.Thetotalmass includesthesupernatantandpelletpartsincellulosesolutionafterdissolution processwasdefinedas100%ofvolume.Eachsamplewasmeasuredby balancerafterfreezedryingtreatment.(i:supernatantbeforeoxidation,ii: pelletbeforeoxidation,iii:supernatantafteroxidation,iv:pelletafteroxidation) さ ら に詳 し く電 気 化 学 的 酸 化 反 応 に伴 うセ ル ロー ス の 水 可溶 成 分 お よ び水 不 溶 成 分 の構 造 変 化 を調 べ るた め に 、酸 化 反 応 前後 にお け る 各セ ル ロー ス試 料 の 構 造解 析 を行 った 。図3.6に ス 溶液 の 水 可溶 成 分 のXRDお 、電 気化 学 的 な 酸 化 反 応 の 前 後 にお け る 、セ ル ロー よ びFT-IRス ペ ク トル を示 す 。XRDス ペ ク トル か ら、 電 気 化 学 的酸 化 反 応 の 前後 にお い て 、 セ ル ロー ス の 結 晶性 に大 き な変 化 は 検 出 され ず 、セ ル ロー ス の溶 解 以 降 、そ の構 造 は ア モ ル フ ァス に近 い状 態 に あ る こ とが わ か った。13,14また 、FT-IRス ペ ク トル で は、酸 化 反 応 の 前 後 にお いて 、 カル ボ ニル 基 に 帰属 す る 吸収 ピー ク(1400cm雪1)の 強度 が 顕 著 に変化 して お り、セ ル ロー ス の酸 化 に よ り、そ の分 子 上 のカ ル ボ ニ ル 基 が 増 加 した化 学 構 造 に変 化 54 Figure 3.6 Structural analysis of water soluble and insoluble parts in cellulose samples before and after electrochemical oxidation. (a) XRD spectra of water soluble part in cellulose samples. (In-set shows FT-IR spectra.) (i) before dissolution), (ii) after dissolution, (before electrochemical oxidation), (iii) after electrochemical oxidation. 55 した こ とが 改 めて 示 され た 。7-9こ れ らの結 果 は、 セ ル ロー ス 分子 鎖 上 のOH基 が 酸 化 され て 親 水 性 のカ ル ボ ニ ル基 に変 化 し、セ ル ロー ス分 子 のOH基 由来 の 分 子 内 お よ び 分 子 間水 素結 合 ネ ッ トワー ク の 形 成 を妨 げ 、水 可 溶 性 のセ ル ロー ス誘 導 体 が 形 成 され て い る可 能性 を示 唆 して い る。10-12方 応 の前 後 にお け るセ ル ロー ス 溶液 の 水 不溶 成 分 のXRDお 、電気 化 学 的酸 化 反 よ びFT-IRス で は 、水 可 溶 成 分 と は異 な る構造 変 化 が観 察 され た(図3.7)。XRDを ペ ク トル 用 い た測 定 結 果 か ら、 結 晶 性 セ ル ロー ス を、 水 酸 化 ナ トリウム を用 い て 水 中で 分 子 分 散 可 能 な 状 態(Cellulose-OOHS+・OH-)に した後 、透 析 によ り水 酸 化 ナ トリウ ム 由来 の OH一 を取 り除 いて 再 び 結 晶化 させ た 再 生 セ ル ロー ス は、特 に20=23° にお け る ピ ー ク 強 度 が低 下 して い る こ とが 示 され 、 も と のセ ル ロー ス とは 異 な る結 晶構 造 を有 して い る こ とが わ か った 。こ の と き のFT-IRス ペ ク トル に顕 著 な変 化 は な く、 各 吸収 ピー ク 強 度 が 低 下 す る とい う現 象 が確 認 され た 。 さ らに、 電 気 化 学 的酸 化 反 応 の後 、透 析 処 理 によ り結 晶化 させ た 再 生 セ ル ロー ス のXRD測 23°にお け る ピー ク強 度 が さ らに低 下 し、 他 にZe=Zo° 定 で は 、20- にお け る ピー ク強 度 も顕 著 に低 下 して い る こと を示 す 結 果 が 得 られ た 。 この 結 果 は 、 電気 化 学 的 酸 化 処 理 後 の再 生セ ル ロー ス は、 も とのセ ル ロー ス お よ び 電 気 化 学 処 理 前 の再 生 セ ル ロー ス とも異 な る、 よ り低 結 晶性 の構 造 を有 して い る こ と を示 して い る。 この 低 結 晶 性 の再 生 セ ル ロー ス は、 セ ル ロー ス の 電 気化 学 的 酸 化 によ りそ の 分 子 鎖 上 のOH基 が カ ル ボ ニ ル 基 に変 化 した が 、 セ ル ロー ス の 分子 内 ・分 子 間水 素結 合 の 形 成 を完 全 に 阻 害 で き る程 度 に まで 酸 化 され て い な い不 完 全酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 が 再 結 晶 化 した も ので あ る と考 え られ る。 セ ル ロー ス の酸 化 反 応 が さ ら に進 行 す れ ば 、 分 子 内 ・分 子 内相 互 作 用 を 阻 害 す る に足 る カル ボ ニ ル 基 を有 す る 、 水 溶 性 の酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 が 形 成 され る もの と推 察 され る。 これ ま で 、セ ル ロー ス の溶 解 処 理 が 、 再 生 セ ル ロー ス の構 造 に与 え る影 響 につ いて 研 56 Figure 3.7 XRD spectra of water insoluble part in cellulose samples. (In-set shows FT-IR spectra.) (i) before dissolution, (ii) after dissolution, before electrochemical oxidation, (iii) after electrochemical oxidation. Experimental parameters in XRD are following. Cu Ka radiation at 40 kV and 30 mA with a scan range of 0.04°. The diffraction angle range: 16 to 30°. 57 究 した報 告 例 は存 在 す る が 、セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 処 理 が 、 再 生 セ ル ロ ー ス の構 造 に与 え る影 響 に関 す る報 告 は ほ とん どな い 。15'17以上 の構 造 解 析 結 果 か ら、 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 反 応 に よ り、 も との水 不 溶 性 の セ ル ロ ース が 、 カ ル ボ ニ ル 基 の増 加 した 分 子 構 造 に変 化 し、 次 第 に分 子 内 ・分 子 間 の水 素 結 合 相 互 作 用 が 弱 ま り、 最 終 的 にそ の結 晶性 が低 下 した ア モ ル フ ァス状 の 水可 溶性 酸 化 セル ロー ス誘 導 体 に変 化 した ことが 示 唆 され た 。 3-3-3酸 化 セ ル ロー ス 誘 導体 の 分子 量分 布 水 可 溶 性 の 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 に 関 す る よ り詳 しい情 報 を得 るた め に、 サ イ ズ排 除 ク ロマ トグ ラ フ ィー(SEC)を 用 い た 、酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 の分 子 量 分 布 を測 定 した 。sEcで は 、shodex製 3.8に 、再 生 セ ル ロー ス(in-set)お のカ ラムoHpacksB805HQを 用いた。図 よ び酸 化 セ ル ロー ス 誘 導体 の ク ロマ トグ ラム を示 す 。 電 気 化 学 的 酸 化 反 応 前 の 再 生セ ル ロー ス の ク ロマ トグ ラム で は 、 一 つ の ピー ク が検 出 さ れ た の に対 し、 電 気 化 学 的 酸 化 反 応 後 の 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の ク ロ マ トグ ラム で は、 複 数 の ピー ク が検 出 され た 。 こ の結 果 は 、 金 表 面 に お け るセ ル ロー ス の 電 気 化 学 的酸 化 反応 に よ り、 一種 類 の セ ル ロー ス か ら複 数 の酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 が 生成 した こと を示 唆 して い る 。SECで は 、 分 子 サ イ ズ に起 因 す る保 持 時 間 の違 い を利 用 して 、 分 子 サ イ ズ の大 き い分 子 か ら検 出 され る。 し か し、 本 実 験 結 果 は分 子 サ イ ズ の 違 い に よ る影 響 で は な く、 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の分 子 上 に存 在 す る カル ボ ニル 基 お よ び 水酸 基 の 割 合 の 変 化 と、SECカ ラ ム 内充 填 材 の 表 面 官 能 基 との化 学 的相 互 作 用 の違 い に起 因す る もの と考 え られ る。 58 Figure3.8SECspectrumofwatersolubleoxidizedcellulosederivatives.Flowrate:1.O ml/min,Injectionvolume:30オ1,sampleconcentration:1.Omg/ml(w/v),mobilephase: milli-Qwater,coulumntemp:25°C.Somepolyethyleneglycol(PEG)wereusedasa MWmarker.(lnsetfigureisSECspectrumoforiginalcellulosebeforeoxidation.) 先 に 示 し た カ ル ボ ニ ル 基 に 帰 属 す る1400cm1に お け る吸 収 ピー ク強 度 の 増加 は 、 酸 化 反 応 の 程 度 の 異 な る 複 数 の 酸 化 セ ル ロ ー ス 誘 導 体 の 平 均 と して 検 出 さ れ た も の で あ る と 考 え られ る 。 ま た 、 仮 に ク ロ マ トグ ラ ム の 保 持 時 間 の 違 い が 分 子 サ イ ズ の違 い に起 因す る 場合 、金 表 面 上 にお いて セ ル ロー ス の水 酸 基 が 酸 化 さ れ 、 カル ボ ニ ル 基 に変 化 す る 反応 以 外 に 、 セ ル ロー ス 分子 鎖 の 切 断 に関 わ る反 応 も 起 こ っ て い る こ と を 示 唆 す る 。 これ ま で に 、 セ ル ロ ー ス が 水 酸 化 ナ ト リ ウ 59 ム 水 溶 液 中 に分 子 分 散 で き る状 態(Cellulose-0δ一Hδ+・OH-)にある とき 、セ ル ロー ス 分 子 のC1位 お よ びC4位 C3、C5、C6位 は高 磁 場側(低ppm側)に は 低磁 場側(高ppm側)に シ フ トし、 そ の他 のC2、 シ フ トす る とい う13C-NMRを 実 験 結 果 が 報 告 され て い る。溶 液NMRに 用 いた お け る化 学 シ フ トの変 化 は 、主 に電子 密 度 の 変化 に対 応 して い る た め 、 この とき の セ ル ロー ス 分 子 は、C2、C3、C5、 C6の 電 子 密 度 が 減 少 し、C1お よ びC4の 電 子 密 度 が 増 加 して い る こと を意 味 し て い る 。 セ ル ロー ス分 子 が 切 断 され る場 合 、 そ の構 成 糖 単 位(グ 士 のC1お よびC4位 ル コ ー ス)同 によ る化 学結 合 で 形 成 され るβ一1,4一 グ リコ シ ド結 合 が 切 断 さ れ る こ と と同 義 で あ る。このセ ル ロー ス 分 子 の グ リコ シ ド結合 に 関わ るClお びC4位 よ 炭 素 の電 子 密 度 の偏 りが 、金 表 面 にお け る電 気 化 学 的 反応 に よ る電 子 授 受 反 応 を介 して 、 セ ル ロー ス 分 子 の分 解 反 応 に寄 与 して い る とす れ ば、非 常 に 興 味深 い研 究 が 展 開 され る も の と考 え られ る。 3-4セ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応 機 構 に 関す る考 察 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 反 応 の 反 応 機 構 を明 らか にす るた め に 、金 表 面 に お け るセ ル ロー ス の酸 化 反 応 に 関 与 した電 子 と、 生 成 した 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の 量 的 関係 を調 べ た 。 これ ま で に、 セ ル ロー ス の 構 成糖 単 位 で あ る グ ル コ ー ス が 、 ア ル カ リ環 境 下 にお け る 金 属 電 極 上(ex.Au-OH)で 電 気化 学 的 に酸 化 さ れ る反 応 は、 グ ル コー ス の還 元 末 端 で あ るア ル デ ヒ ド基 が 、 電 極 上 で カル ボ キ シ ル 基 に変 化 す る2電 子 反応 で あ る こ とが解 明 され て い る。18・19フ ァ ラデ ー の 電 気 分 解 の法 則 か ら、 反 応 電 子 数 と反 応 生成 物 との 関 係 は 、 以 下 の よ う に表 さ れ る。 一 〔多〕〔M〕(3.1) 60 ここで 、mは ー 定 数(96 反応 生成 物 の量[9]、Qは ,500Cmorl)、Mは 反 応 に 関与 した 電 子 数[c]、Fは フ ァラデ 反 応 物 質 の分 子 量[gmol-1]、zは 反 応電 子 数 を表 す 。 グル コー ス の電 気 化 学 的 酸 化 反 応 と同 様 に、 そ の ポ リマ ー で あ るセ ル ロー ス の 電 気 化 学 的 酸 化 反 応 が2電 子 反応(zニ2)で あ る とす る と、反 応 生成 物 で あ る酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 は 、 フ ァ ラデ ー の 電気 分 解 の法 則 か ら約9.7g生 成 され る こ と にな る。しか し、実 際 に 生成 した酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の 重量 は8.2×10"3g(3-3-2 参 照)で あ り、 理 論 値 と実 測 値 に大 きな 差 異 が あ る。 この 結果 は 、セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的 酸 化 反 応 で は 、2電 子 以 上 の電 子授 受 反応 が 関 与 して い る こ とを示 唆 して い る。 これ まで の 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の構 造 解 析 結 果 と併 せ て 考 察 す る と、 アル カ リ環 境 下 にお け る金 電極 上 の電 気 化 学 的 な セ ル ロー ス の 酸 化 反 応 機 構 は、 セ ル ロ ー ス 分 子 鎖 の還 元 末端 で あ る ア ル デ ヒ ド基 か らカ ル ボ キ シル 基 へ の2電 子 反 応 、 お よび セ ル ロー ス 分子 鎖 上 の 複数 の水 酸 基 か らカル ボ ニル 基 へ の1電 子 反 応 を有 す る、 多 電子 酸化 反応 で あ る可能 性 が 考 え られ る 。実 際 、 高 分 子 ポ リマ ー で あ るセ ル ロー ス の還 元 末 端 が 酸 化 され 、 親 水性 の カ ル ボキ シル 基 に変 化 した だ け で 、 分 子 全 体 の水 と の親 和 性 が 増 加 した水 溶 性 物 質 に変 化 し た とは 考 え に くい 。 そ こで 、 セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 反 応 によ り、 どの程 度 の 水 酸 基 が カル ボ ニ ル 基 に変 化 した か を 、 フ ァ ラデ ー の電 気 分解 の法 則 お よ び 実測 値(m:8.2×lo-3[9](3-3-2参 照),Q:3.75[c](3-2参 照),M:5.o×105[gmol-1] (3-3-3参 照))か ら見 積 も った 。そ の結 果 、 本実 験 に お け るセ ル ロー ス の電 気 化 学 的酸 化 反 応 に お い て 、少 な く と も約2370電 子 が酸 化 反応 に関 与 して い る こ とが 示 され た 。 これ は 、 一分 子 のセ ル ロー ス鎖 上 に存 在 す る水 酸基 の約28.4%が カ ル ボ ニ ル 基 に変 化 した こ と を示 唆 して い る。 この試 算 結 果 か ら、 一 分 子 のセ ル ロー ス が 水 に溶 解(分 子 分 散)可 能 とな る の に必 要 な カ ル ボ ニ ル 基 の割 合 を推 察 す る こ とが で き た。 以 上 の 結 果 か ら、 アル カ リ環 境 下 に お け る金 表 面 上 のセ 61 ル ロー ス の 電 気 化 学 的 酸 化 反 応 は 、 そ の還 元 末端(ア シル 基 に変 化 す る2電 す る複 数 の1電 3-5酸 ル デ ヒ ド基)が カルボキ 子 反 応 お よび 、 分 子鎖 上 の 水 酸 基 が カル ボニ ル 基 に変 化 子 反 応 を伴 う、 多 電子 酸 化 反応 で あ る可能 性 が 示 され た 。 化 セ ル ロー ス 誘 導体 の被 分解 能 の評 価 セ ル ロー ス が 水 可 溶 性 の酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 とな る こ とで 、 も と のセ ル ロ ー ス と どの よ うな 特 性 変 化 が あ る のか を調 べ た 。 本 項 で は 、セ ル ロー ス の特 性 の 一 つ と して 、 酵 素 に よ る被 分解 能 につ い て 述 べ る。 セ ル ロー ス 誘 導 体 の被 分 解 能 は 、T.reesei由来 のセ ル ラーゼ(2mg/ml)と を 、50mMの 各種 セ ル ロー スサ ン プル(10mg/ml) クエ ン酸 緩 衝 液 中(pH:4.8)に て50°Cで 反 応 させ 、 生成 した グル コ ー ス濃 度 を 、 酵 素 法 を用 い て測 定 し、 元 の結 晶 性 セ ル ロー ス と比 較 す る こ とで 評 価 した 。 図3.9は 、酵 素 によ る基 質 の 分 解 反 応 時 間 に対 す る 、分 解 生成 物(グ ル コー ス)濃 度 を示 して い る 。 こ の結 果 か ら、 酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 の被 糖 化 速 度 は 、 も との セ ル ロー ス お よ び 再 生 セ ル ロー ス よ り も高 い こ とが わ か る。 特 に、 酵 素 反 応 初 期 にお け る基 質 の 分解 速 度 に 大 き な 差 異 が み られ る。 これ は 、 セ ル ロー ス お よ び 再 生 セ ル ロー ス は 水 不 溶 性 で あ り、 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 は 水 可 溶 性 で あ るた め 、 基 質 と酵 素 の 接 触 確 率 が 異 な る こ とに起 因 して い る もの と考 え られ る。 図3.10は 、 各 基 質 の 酵 素 によ る被 糖 化 率 を示 して い る 。そ の結 果 、 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 の被 糖 化 能 は 、 も との セ ル ロー ス お よ び 再 生 セ ル ロ ー ス よ りも約3倍 高 い こ とが 示 され た 。 また 、 この酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 の被 分解 能 は 、CMCの 分 解 能 に 匹敵 す る ことが わ か った 。 これ らの結 果 か ら、水 不 溶 性 セ ル ロー ス を電 気 化 学 的 に酸 化 して 得 られ た水 可 溶 性 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 は 、酵 素 によ って よ り分 解 しや す い物 質 特 性 を有 して い る こ とが わ か っ た。 62 Figure 3.9 Glucose yield against the enzymatic reaction time. (i) cellulose (original), (ii) insoluble part of cellulose after electrochemical oxidation, (iii) soluble part of cellulose after electrochemical oxidation, (iv) carboxymethyl cellulose (CMC). 63 Figure3.10Enzymaticsaccharificationrateofcellulosesample.(i)cellulose (original),(ii)insolublepartofcellulose(afteroxidation),(iii)solublepartof cellulose(afteroxidation),(iv)CMC. 3-6ま とめ 水 不 溶 性 の セ ル ロー ス を電 気 化 学 的 に直 接 酸 化 させ る こ とに よ り、 分 子 鎖 上 にお け る カ ル ボ ニ ル 基 が 増 加 した 、 水 可 溶 性 の セ ル ロー ス 誘導 体 が 生 成 す る こ とが 示 され た 。この 水可 溶 性 のセ ル ロー ス 誘 導 体 は 、元 のセ ル ロー ス に比 べ て 、 酵 素 に よ る 被 糖 化 能 が 高 い とい う特 徴 を有 す る こ と もわ か った 。 また 、 一 つ の 電 気 化 学 的 反 応 場 で 得 られ る セ ル ロー ス 誘 導 体 は 一 種 類 で は な く、 複 数 種 存 在 す る可 能 性 が 示 唆 され た。 さ らに、 セ ル ロー ス の 電 気 化 学 的酸 化 反 応 の メカ ニ ズ ム に関 す る研 究 結 果 も得 られ 、セ ル ロー ス 分子 鎖 の 還 元 末 端(COH基)だ な く、 分 子 鎖 上 の複 数 のOH基 けで が 酸 化 され る多電 子 反 応 で あ る可能 性 が 示 唆 さ 64 れ 、 グ ル コ ー ス な ど 、 他 の 燃 料 物 質 の 酸 化 反 応 が2電 子 反 応 で あ る こと を考 え れ ば 、 セ ル ロ ー ス が 燃 料 と し て 非 常 に 高 い ポ テ ン シ ャ ル を 有 し て い る こ とが わ か っ た 。電 気 化 学 的 な セ ル ロー ス の 酸 化 反 応 に 関 す る反 応 機 構 の解 明 は 、セ ル ロ ー ス か ら の エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 の 向 上 だ け で な く、 選 択 的 に 、 特 定 の セ ル ロ ー ス誘 導 体 を生 成 あ る い はデ ザ イ ンす る こ とが 可 能 な 制 御 系 の 構 築 に も大 き く 寄 与 す る ことが 期 待 され る。 本 研 究 成 果 に よ り 、従 来 の セ ル ロ ー ス な ど の 難 溶 性 ポ リ マ ー の 改 質 技 術 分 野 に 、 電 気 化 学 的 手 法 を導 入 で き る ことが 示 さ れ 、 電 極 電 位 や そ の 材 質 、 界 面 状 態 な ど 、 各 種 電 気 化 学 的 パ ラ メ ー タ が 加 わ り 、 従 来 の 化 学 的 改 質 で は 制 御 の 難 しか っ た 領 域 に応 用 ・展 開 で き る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ れ に よ り 、 新 た な 機 能 性 新 素 材 や 、 ナ ノ 材 料 な ど を 選 択 的 に 生 成 で き る こ と も期 待 さ れ る 。 参 考 文 献 1M.R.Edward,Nature.2008,454,841-845. 2M.F.Demirbas,Appl.EneNg.2009,86,5151-5161. 3N.Mosier,C.Wyman,B.Dale,R.Elander,Y.Y.Lee,M.Holtzapple&M.Ladisch, B'o照 ε50z鋼cε.Technol.2005,96,673-・:・ 4R.W.Kessler,U.Becher,R.Kohler&B.Goth,Biomass.β'oε 237-249. 5R.C.Saxena,D.K.Adhikari&H.B.Goyal,Renew.Sust.EneYg.Rev.2009,13, 167-178. 6S.K.Chaudhuri,D.R.Lovley,Nat.Biotechnol.2003,21,1229-1232. 7T.Heinze&T.Liebert,.Prog.Polym.Sci.2001,26,1689-1762. 8S.J.Eichhorn,C.A.Bailline,N.Zafeiropoulos,L.Y.Mwaikambo,M.P.Ansell,A. 65 ηεアg.1998,14,3, Dufresne,K.M.Entwistle,P.J.Herrera-Franco,GC.Escamilla,L.Groom,M. Hughes,C.Hill,T.GRials&P.M.Wild,J.Mater.Sci.2001,36,2107-2131. 9A.Samir,F.Albin&A.Dufresne,Biomacromolecules.2005,6,612-626. 10K.Dieter,H.Brigitte,P.F.Hans&B.Andreas,AngewChem.Int.Ed.2005,44, 3358-3393. 11C.D.Blasi,E.GHernandez&A.Santoro,Ind.Eng.Chem.Res.2000,39,873-882. 12X.Yin,A.Koschella&T.Heinze,React.Funct.Polym.2009,69,341-346. 13T.Sasaki,T.Tanaka,N.Nanbu,Y.Sato&K.Kainuma,Biotechnol.Bioeng.1979, XXI,1031-1042. 14S.Y.Oh,D.LYoo,Y.Shin,H.C.Kim,H.Y.Kim,Y.S.Chung,W.H.Park&J.H. Youl,CaYbohyd.Res.2005,340,2376-2391. 15A.Isogai&R.H.Atalla,Cellulose.1998,5,309-319. 16J.Cai,L.Zhang,Macromol.Biosci.2005,5,539-548. 17A.Lue,LZhang&D。Ruan,漁 αo襯o乙Chem.∫)hys.2007,208,2359-2366. 18LBecerik,Turk.J.Chem.1999.23,57-66. 19S.B.Aoun,Z.Dursun,T.Koga,GS.Bang,T.Sotomura&1.Taniguchi,2004.J. E7θc∫70α ηα乙C乃 θ〃z.567,175-183. 66 第4章 セル ロ ー ス 分 解 の た め の 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 系 の 創 生 4.1緒 言 2章 お よ び3章 か ら、本 研 究 で提 案 した セ ル ロー ス か らの直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 シス テ ム は 、糖 化 お よ び 発 酵 プ ロセ ス を必 要 とせ ず 、 セ ル ロー ス か ら直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー お よ び機 能 性 ポ リマ ー を同 時 に生 成 可 能 な 、 新 しいバ イ オ マ ス か ら のエ ネル ギ ー ・物 質 変 換 シ ス テ ム 系 の 実 現 可 能 性 を示 した 。 しか し、 エ ネル ギ ー 供 給 とい う観 点 か ら見 た 場 合 、 セ ル ロー ス か ら得 られ る電 力 が低 い とい う問 題 点 が あ る。 セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の 電 力 密 度 の 向 上 は 、地 球 上 に広 域 に分 布 し て い るバ イ オ マ ス をon-siteで 利 用 で き る可 能 性 を秘 めた 、 次 世 代 の エ ネ ル ギ ー 供 給 シ ス テム の構 築 に貢 献 す る ことが期 待 され る。 セ ル ロー ス 燃 料 電 池 の 電 力 密 度 を決 定 す る 重 要 な 要 素 と して は、 主 に電極 間 電 位 差 、電 流 密 度 、 反 応 物 質1分 子 当 りの電 子 授 受 数 な どが 考 え られ る。 電 極 電 位 お よび 電 流 密 度 の 向 上 に向 けた 研 究 は 、 燃 料 電 池 分 野 を は じめ と した 多 く の 領 域 で 取 り組 まれ て お り、 反 応 物 質 に 適 した電 極 材 料 を使 用 す る こ とや 、 電 極 表 面 をナ ノ構 造 化 し、糖 酸 化 に対 す る新 た な触 媒 能 を発 現 させ る こ とに よ り、 電 極 間 電 位 差 の増 加 や 、 有 効 反 応 表 面 積 の増 加 に伴 う見 か け の電 球 密 度 の 向上 が見 込 まれ る 。 また 、 燃 料物 質1分 子 当 りか ら得 られ る電 子 数 の 向 上 に関 して は 、 グ ル コー ス の ポ リマ ー で あ るセ ル ロー ス は 、グル コー ス な ど他 の低 分子 燃 料 物 質 と比べ て 、 十 分 酸 化 され た後 に お いて も、 モ ノマ ー 単 位 に まで 分 解 され る こ とで 、電 極 上 で 酸 化 され 得 る構 造 を有 す る燃 料 物 質 を新 た に供 給 す る こ とが で き 、 さ らに 多 く の電 力が 得 られ る こ とが 見 込 ま れ る。 本 シ ス テ ム で は 、セ ル ロー ス を電 気 化 67 学 的 に酸 化 す る ことで 、被 分 解 能 の 高 い 、水 溶 性 の 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 が 生 成 され る こ とが 示 され た(3章 参 照)。 機 能性 電 極 の作 製 な ど、 上述 した 既 存 の 最 適 化 に よ り、 よ り多 くの エ ネ ル ギ ー お よび 分 解 され や す い酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 が 生 成 さ れ 、 この 誘 導 体 を分 解 ・糖 化 させ 、 さ らにエ ネル ギ ー を取 り出す こ とで 、従 来 の グル コー ス な ど を用 いた バ イ オ 燃 料電 池 よ り も、燃 料 物 質 か ら の エ ネ ル ギ ー 変 換効 率 の 高 い 燃 料電 池 シ ス テム 系 の構 築 が 可能 とな る。 しか し、 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 を分 解 ・糖 化 す る ため に 、従 来 の 糖 化 プ ロセ ス を再 び 取 り入 れ て は 、本 研 究 の コ ンセ プ トと一 致 しな い 。 そ こで 、新 た にセ ル ロー ス の 加 水 分 解 反 応 を触 媒 す る酵 素 の触 媒活 性 部 位 の 構造 を、 人 工 的 に燃 料 電 池 電 極 また は 電 池 内構 造 に形 成 させ る こ とで 、 従 来 の バ イ オ 燃 料 電 池 に 比 べ て 、 エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 お よ び 分 散 型 エ ネル ギ ー 供 給 性 に優 れ た 、 新 しいセ ル ロー ス 燃 料電 池 シス テ ム 系 が構 築で き る と考 え られ る。 Figure4.1Schemeofdirectenergyconversionfromcellulosewithhighefficiency 68 自然 界 で は 、酵 素(Cellulase)が セ ル ロー ス を分解 す る際 、 酵 素 の 活 性 中心 で あ る2つ のカ ル ボ キ シル 基 が セ ル ロー ス 内 の β一1,4一 グ リコ シ ド結 合 を切 断 す る反 応 を触 媒 す る。1-3こ の2つ の カル ボキ シル 基 の間 に は数Aの 距 離 が あ り、 この空 間 内 で セ ル ロ ー ス の グ リコ シ ド結 合 が 切 断 され る。 一方 の 基 はマ イ ナ ス 電荷 を 帯 び 、 も う一方 の基 は電 荷 を帯 びて いな い構 造 を持 って お り、 この2つ の基 が 同 時 にR-1,4一グ リコ シ ド結 合 に作 用 す る と い う反 応機 構 が報 告 され て い る 。4-6 本 章 で は 、カ ー ボ ンナ ノチ ュー ブ(CNT)な どの ナ ノ材 料 を用 い て 、 このセ ル ラ ー ゼ の活 性 中心 を模 した 構 造 を 人 工 的 に 再 構 築 し 発 現 を試 み る(図4.1)。 、糖 の 分解 を触 媒 す る反 応 の 現 在 、ゼ オ ライ トを は じめ 、 金 属 や 担 持体 な どのナ ノ 材 料 の種 類 、 ま た は そ の粒 子 径 の大 き さ と触 媒 能 の 関 係 を検 討 す る研 究 は よ く 行 わ れ て い る が 、 ナ ノ材 料 を用 い て 、 上 述 した酵 素 な ど の生 体 分 子 が 持 つ 、 独 特 の構 造 を模 した触 媒 能 の発 現 に 関す る研 究 報 告 は ほ とん どな い。川A単 位の 制御 は 難 しい が 、 そ れ で も確 率 的 に酵 素 の 活 性 中心 模 倣 構 造 に よ る 、 糖 の分解 反 応 を発 現 で き る 可 能 性 が 考 え られ る 。 本 章 で 提 案 す る生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 は 、 セ ル ロ ー ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 の 向 上 だ けで な く、触 媒 科 学 の分 野 に新 た な方 向性 を示 す こ とがで き る と考 え られ る。 69 Figure4.1Hypothesisofsugardegradationbycarbonnanotubestructuredbiomimetic catalyst. 4-2生 体構造模倣型人工触媒の作製 生 体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 を構 築 す るた め 、糖 の 分 解 反 応 に対 す る触 媒活 性 部 位 と な るカ ル ボ キ シル 基 を 修 飾 し、 本 人 工 触 媒 の 基 本 構 成 単 位 とな る CNT(COOH-CNT)を 作 製 した 。CNT表 面 に お け るCOOHの 修 飾 は、 これ まで 多 く の 方 法 が 報 告 され て い る 。12-14本 研 究 で は 、 酸 処 理 を用 い た 一 般 的 な 方 法 70 (HNO3:H2SO4,1:3,(vん)で COOH-CNTのFT-IRス 調 整 し た 。14図4.2に ペ ク トル を 示 す 。COOH-CNTのFT-IRス (1430,1460)、1640お C-0-Hお 、COOH-CNTを よ びOHの よ び2980cm-1に COOH-CNTを よび ペ ク トル で は 、 お い て 、 カ ル ボ キ シ ル 基 由 来 の>C=0、 内 角 振 動 吸 収 ピ ー ク が 検 出 さ れ た の に 対 し 、CNTのFT-IR ス ペ ク トル で は 、 こ れ ら の 吸 収 ピ ー ク は 検 出 さ れ な か っ た 。14こ 酸 処 理 に よ りCNTに 、CNTお の結 果 か ら、 糖 の 触 媒 活 性 部 位 と な る カ ル ボ キ シ ル 基 を修 飾 し た 作 製 で き た こ とが 確 認 さ れ た 。 Wavenumbers[cm1] Wavenumbers[cm'] Figure4.2FT-IRspectraofCNTandCOOH-CNT:(A)TherangeofOHbending vibrationderivedfromcarboxylate,(i)CNT,(ii)COOH-CNT.(B)TherangeofC=O bendingvibrationderivedfromcarboxylate,(i)CNT,(ii)COOH-CNT. 71 作 製 したCOOH-CNTを 用 いて 、セ ル ラ ーゼ の活 性 部 位 構 造 を模 倣 した 人 工触 媒 の作 製 を試 み た。 ア ミ ノシ ラ ン処 理 を施 した1×1.5cmの ま た はCOOH-CNTを 滴 下 し、80°Cの オー ブ ンで 乾 燥 させ た 。この 操作 を繰 り返 し、 ガ ラス基 盤 上 にCNTま た はCOOH-CNTが 成 させ た 。 図4.3に 、作 製 したCNTお 像 を示 す 。SEM観 ガ ラス 基 盤 に 、CNT 察 か ら、CNTお 造 上 の違 い は な く、 と も にCNTが 積 層 した マ トリ ッ クス構 造 を形 よ びCOOH-CNTマ よびCOOH-CNTマ トリッ クス のSEM画 トリッ クの 間 に大 き な構 何 層 に も折 り重 な っ て で き た、 複 雑 な ナ ノ構 造 を有 して い る こ とが わ か る。 また 、CNT同 士 が 近 接 した 領 域 も観察 す る こ と が で き 、 これ らの構 造 が 、 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の触 媒 発 現 に寄 与 す る もの と考 え られ る 。 Figure4.3SEMimagesofCNTbasedmatrix.(a)1オmscale,(b)100nrriscale. 72 4-3生 体 構 造模 倣 型 人 工触 媒 の触 媒 発 現 とpH依 存性 本 節 で は 、4-2節 で 作 製 し た 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の 触 媒 発 現 に つ い て 議 論 す る 。 本 人 工 触 媒 の 触 媒 発 現 を 評 価 す る た め に 、10mMの ル コ ー ス 分 子 のC1お よ びC4位 がR-t,4一 グ リ コ シ ド結 合 し て 成 る グ ル コ ー ス の 二 量 体)を 含 む ク エ ン 酸 リ ン 酸 緩 衝 液 をCNTお 100オ1滴 下 し て24時 測 定 し た 。 図4.4に セ ロ ビ オ ー ス(グ よ びCOOH-CNTマ トリッ クス に 間 反 応 させ 、 溶 液 中 の グ ル コ ー ス 濃 度 を 、 酵 素 法 を 用 い て 、 異 な るpH環 ッ ク ス 上 の グ ル コ ー ス(分 境 下 に お け るCNTお 解 生 成 物)濃 よ びCOOH-CNTマ 度 を示 す 。 Figure4.4EffectofpHonnano-structurebasedcatalystagainstdegradationof cellobiose:(i)CNTmatrix,(ii)COOH-CNTmatrix. 73 トリ 本 人 工触 媒 を用 い たセ ロ ビオ ー ス の 分解 実 験 の結 果 、COOH-CNTマ を用 い た 場合 の方 が、CNTマ トリ ックス を用 い た場 合 よ りも、 基 質 の 分解 成 分 で あ る グル コ ー ス の濃 度 が 高 か った 。 この 結 果 は 、CNT上 のCOOHが ー ス の 分解 反 応 に影 響 して い る こと を示 して い る 。 また 、CNTマ 用 い た 場 合 、 異 な るpHに COOH-CNTマ トリッ クス セ ロ ビオ トリッ クス を 対 す る グル コー ス 濃 度 の変 化 は み られ な か った が 、 トリ ック ス を用 い た場 合 、 生成 した グル コ ー ス濃 度 にpH依 が あ る こ とが わ か り、COOH-CNTマ トリ ック ス 上 の 反 応環 境 場 のpHが3.0の 存性 と き 、 反 応 溶 液 内 の グル コー ス 濃 度 が 最 も高 か っ た 。 一 般 に、 官 能 基 の プ ロ トン 化/脱 プ ロ トン化 の平衡 条 件 はpK値 で 与 え られ る。カ ル ボ キ シル基 のpK値 3.1∼4.4で あ る こ と を 考 え る と 、COOH-CNTマ COOH/CO()一 のカ ップ リン グ構 造 が 形 成 す る確 率 が 高 いpH3.0付 現 した 結 果 は 、 よ り実 際 の酵 素(セ ル ラー ゼ)の が約 トリ ック ス の触 媒 能 が 、 近 で最 も高 く発 触 媒 活 性 部 位 が 形 成 す る反 応 場 に近 い構 造 を構 築 で き た可 能 性 を示 唆 して い る。 4-4生 体 構 造模 倣 型 人 工触 媒 の触 媒 能 と機 能 化CNT量 の 関係 生体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 の触 媒 発 現 が 、 実 際 の酵 素(セ ル ラー ゼ)の 触媒活性 部 位 に近 い構 造 を形 成 す る確 率 が 支 配 的 に 関与 して い る場 合 、触 媒 反 応 に 関与 す るCOOH-CNTの 増 加 量 に比 例 して 、触 媒 発 現 も増 加 す る と考 え られ る。そ こ で 、 異 な るCOOH-CNT量 で 構 築 され たCOOH-CNTマ トリ ック ス を用 い た場 合 に対 す る生 成 グ ル コ ー ス 濃 度 を調 べ 、本 人 工 触 媒 の触 媒 発 現 に 関 す る考 察 を試 み た 。COOH-CNT量 の 異 な るマ トリック ス は、COOH-CNTの る こ とで作 成 した 。 図45に 滴 下 回数 を制御 す 、本 人 工 触 媒 を構 成 す るCOOH-CNT量 成 グル コー ス 濃度 を示 す 。 この 図か ら、COOH-CNT量 74 に対 す る 生 が増 加 す る に つれ て 、反 応 溶 液 内 の グル コー ス 濃 度 が 増 加 した こ とが わ か る。 こ の結 果 か ら、 あ る一 定 の確 率 の元 で 、糖 の グ リコ シ ド結 合 を切 断 す る の に必 要 なCOOH/COO構 成 され てお り、 さ らにCOOH/COO一 が 増 加 す る こ とで 、COOH/COσ 造が形 構 造 を 形 成 す る確 率 因子 で あ るCOOH-CNT 構 造 の絶 対 数 が 増 加 し、 この構 造 が 寄 与 す る糖 の 分解 反 応 が 促 進 され た と考 え られ る。 以 上 の 結 果 か ら、本 章 で提 案 した 生体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の 糖 の 分 解 反 応 は 、COOH-CNTを 用 い て 再 構 築 した COOH/COO'構 造 が 触 媒 して お り、 ま た そ の 触 媒 発 現 量 は 、 人 工 触 媒 に お け る COOH/COO構 造 の形 成 確 率 に依 存 して い る可 能 性 が 示 唆 され た 。 Figure4.5ConcentrationofglucoseproducedagainsttheamountofCOOH functionalizedCNTonaglasssubstrate. 75 4-5ア ミ ノ酸 修 飾 に よ る生 体 構 造 模倣 型 人 工触 媒 の触 媒 発現 へ の影 響 こ れ ま で の 結 果 か ら、 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の 擬 似 活 性 部 位 で あ る COOH/COO一 構 造 の 形成 確 率 の増 加 に比 例 して 、本 人 工触 媒 の 反応 効 率 が増 加 す る可 能 性 が示 唆 され た 。本 節 で は 、酸 性 ア ミ ノ酸 をCOOH-CNTに 人 工触 媒 構 造 内 にお け る活 性 部 位(COOH/COσ 化 学 修 飾 させ 、 構 造)の 形成 確 率 の 増 加 を試 み 、 糖 分 解(β一1,4一 グ リコ シ ド結 合 の切 断 反 応)の 触 媒 反 応 効 率 の 向上 を試 み る 。本 実 験 で は 、 二 つ のカ ル ボ キ シル 基 を有 す る酸 性 ア ミ ノ酸 で あ る グ ル タ ミ ン酸 お よ び ア ス パ ラギ ン酸 を用 いた(図4.6)。 Figure4.6Chemicalstructuresofaminoacid.(i)Glutamicacid,(ii)Asparticacid. COOH-CNTへ の修 飾 に は 、EDCを ボ キ シ ル 基(COOH)と 反応 促 進 剤 と して用 い 、COOH-CNTの カル グル タ ミ ン酸 ま た は アス パ ラギ ン酸 の ア ミ ノ基(NH3)を 化 学 結 合 させ た ア ミ ノ酸修 飾CNTマ トリッ クス を新 た に作 製 した 。 図4.6か らわ か りよ うに、ア ミ ノ酸 修 飾 人 工触 媒 で は、そ の 構 成 単位 で あるCOOH-CNT上 の 一 つ の カ ル ボ キ シル 基 に対 して 、 二 つ の カル ボ キ シル 基 を有 す るア ミ ノ酸 の ア ミ ノ基 と結 合 す るた め 、 カ ル ボ キ シル基 の 数 が最 大2倍 76 に増 加 す る(図4.7)。 そ の た め 、 ア ミ ノ酸修 飾 人 工触 媒 の触 媒 活 性 構 造 の 形 成確 率 が 増 加 し、そ の触 媒 活 性 が ア ミ ノ酸 を修 飾 して い な い もの よ り高 くな る可 能 性 が 考 え られ る。 Figure4.7SchemeofaminoacidmodificationonCOOH-CNT こ の ア ミ ノ酸 を修 飾 した こと に よ る本 人 工触 媒 の触 媒活 性 へ の影 響 を調 べ るた め に 、4-3節 と同様 の 測 定 を行 い、 ア ミ ノ未 修 飾 の触 媒 活 性 と比 較 した。 まず 、 グル タ ミン酸 を修 飾 した こ とに よ る 人 工 触 媒 活 性 へ の影 響 に つ い て 議 論 す る。 図4.8は 、 グル タ ミ ン酸 修 飾(Glutamicacid-COOH-CNT)人 工触 媒 の 異 な るpHに お け る グ ル コ ー ス 生 成 量 を示 して い る。 この 図 か ら、 グル タ ミ ン酸 修 飾 人 工触 媒 を用 いた 場 合 の 生 成 グル コー ス濃 度 にpH依 存 性 が あ り、反 応 溶 液 のpHが3.0 の と き最 も高 い グル コー ス が 生 成 され た こ とが わ か る。また 、 この とき(pH:3.0) の 生 成 グル コ ー ス 濃 度 は 、 グ ル タ ミ ン酸 未 修 飾 の人 工触 媒 を用 いた 場 合 よ り も 約1.6倍 高か った 。 77 Figure4.8EffectoftheglutamicacidfunctionalizedCNTmatrixagainstthecellobiose degradationatdifferentpHvalues. ま た 、 図4,9に グル タ ミ ン酸 修 飾 人 工触 媒 を構 成 す るCOOH-CNT量 に対 す る 生 成 グル コ ー ス 濃度 を示 す 。 この 図 か ら、人 工触 媒 を構 成 す るCOOH-CNT量 が増 加 す る と、 生 成 グル コ ー ス量 が 増 加 す る傾 向 が 示 唆 され るが 、 ア ミ ノ酸 を修 飾 して いな い 人 工触 媒 の結 果(4-4節)と 比 べ る と、COOH-CNTの 増 加 量 と生 成 グル コ ー ス の増 加 量 の 関 係 が リニ アで は な か った 。 これ らの結 果 か ら、 本 人 工触 媒 を構 成 す るCOOH-CNTに グル タ ミ ン酸 を修 飾 す る こ とで 、糖 の分 解 反応(ロー1,4一 グ リ コ シ ド結 合 の 切 断)に 対す る触 媒 活 性 が 向 上す る こ とが 示 され た 。 78 Figure4.9Concentrationofglucoseproducedagainsttheamountofglutamicacid functionalizedCOOH-CNTmatrix. これ は 、 人 工 触 媒 内 の カル ボ キ シル 基 の 数 が 増 加 し、 糖 の分 解 に対 す る触 媒 反 応 を発 現 で き る 、 よ り多 くの触 媒 部 位(COOH/COO構 造)が 形成 され た た め 、 触 媒 活 性 が 増 加 した と考 え られ る。 次 に 、 ア ス パ ラギ ン酸 を修 飾 した こ と に よ る 人 工触 媒 活 性 へ の影 響 につ いて 議 論 す る。図4.10は な るpHに 、ア スパ ラギ ン酸 修 飾(Asparticacid-COOH-CNT)人 お け る グル コー ス生 成 量 を示 して い る。 この 図 か ら、ア スパ ラギ ン酸 修 飾 人 工触 媒 を用 いた 場合 の 生成 グル コ ー ス濃 度 に もpH依 のpHが3.0の 工触 媒 の 異 存 が あ り、反 応 溶 液 とき最 も高 い触 媒 活 性 を発 現 した ことが わ か る。 79 Figure4.10EffectoftheaminoacidfunctionalizedCNTmatrixagainstthecellobiose degradationatdifferentpHvalues. しか しな が ら、 グル タ イ ン酸 修 飾 人 工触 媒 と比 べ て 、 アス パ ラギ ン酸 修 飾 人 工 触 媒 の 触 媒 活 性 は低 い こ とが 示 され た。 興 味 深 い こ とに、 セ ル ラ ー ゼ に類 す る 天 然 の 酵 素 の多 くが 、 グル タ ミン酸 由 来 の カ ル ボ キ シル 基 を触 媒 活 性 部 位 と し て 機 能 させ て い る こ とが 知 られ て い る。 本研 究 の 今 後 の成 果 に よ り、 酵 素 の部 分 的 な 立 体構 造 の意 義 を 明確 にで き る可 能 性 が 考 え られ る。 4-6生 体 構 造模 倣 型 人 工触 媒 の 反応 効 率 前 節 まで の結 果 か ら、 本 研 究 で構 築 した 生体 構 造 模 倣 型 人 工触 媒 が 、被 模 倣 酵 素(セ ル ラー ゼ)と 同様 の触 媒能 を発 現 で き る こ とが 示 され た 。本 節 で は 、 80 こ の 生 体 構 造 模 倣 型 人 工 触 媒 の 触 媒 能 を 、 他 の 生 体 触 媒(酵 較 ・評 価 し 、 本 人 工 触 媒 の 触 媒 効 率 お よ び 反 応 速 度 論 素)の 触 媒 能 と 比 を 考 察 す る 。 表4.1に 、 生 体 構 造 模 倣 触 媒 お よ び 生 体 触 媒 の 特 異 活 性 の 値 を 示 す 。 Table4.1Thespecificactivityofsugardegradablecatalysts. CatalystSpecificactivityReferences [nmol/min/mg] exoglucanase(derivedfromAspergillussp.)44015 (3-glucosidase(derivedfromAspergillussp.)102015 (3-glucosidase(derivedfromappleseed)38016 Bio-mimeticnano-structurebasedcatalyst3.82Thiswork 本 人 工触 媒 の基 質 に対 す る特 異 活 性 は約3.82nmol/min/mgofcatalystで の天 然 の 生 体 触 媒 で あ る 酵 素(セ ル ラー ゼ)と あ り、 他 比 較 す る と、 本 人 工触 媒 の触 媒 効 率 が 極 め て 低 い こ とが わ か る。 これ は 、 人 工 触 媒 に お い て 、 糖 の分 解 反 応 を 発 現 可 能 なCOOH/COO構 構 成 す るCOOH-CNTの 造 の数 が 少 な い ことが 考 え られ る。恐 ら く人 工 触 媒 を ほ と ん どが 、理 想 的 なCOOH/COO一 構 造 を形 成 す るた め の足 場(scaffolds)として機 能 して い る もの と思 わ れ る。 この 考 察 か ら、 実 用 的な 触 媒 能 を有 す る 人工 触 媒 の構 築 を考 慮 した 場 合 、前 節 で 述 べ たCOOH/COσ の形 成 確 率 は低 い と い う こ とが 示 され た 。 ま た 、 本 人 工触 媒 が 模 倣 した構 造 は、 酵 素 の触 媒 活 性 部 位 に 由 来 す る構 造 だ けで あ り、 酵 素 の 持 つ 他 の重 要 な 機 能(基 質 の 認 識 お よび 結 合 機 能 、 基 質 の触 媒 部 位 へ の誘 導 ・配 向 制 御 機 能 、 触 媒 反 応 後 の 基 質 と の離 脱 機 能 な ど)を 発 現 す る構 造 は 、本 人 口触 媒 に は 形 成 され て い な い 。 そ の た め 、天 然 の 酵 素 の触 媒 効 率 に比 べ て 、そ の 機 能 の一 部 しか 発 現 で 81 き な い 本 人 工 触 媒 の 触 媒 効 率 は 低 か っ た も の と考 え ら れ る 。 こ こ で 、 表4.1で 示 し た 酵 素 の 分 子 量 お よ び 単 位 重 量 あ た りの 酵 素 分 子 の 数 [㎜ 、it/mg]を 試 算 し た も の を 表4.2に 示 す 。 Table4.2Molecularweightandthemolecularnumberofenzyme. Totalnumberof CatalystMolecularweight molecule [unit/mg] Exoglucanase(Aspergillussp.)575001.04696×1016 β一glucosidase(Aspergillussp.)400001.505xlOl6 (3-glucosidase(appleseed)120(kDa)5.018×1015 人 工 触 媒 の 分 子 量 に つ い て は 、 そ の 構 成 単 位 で あ る ひ と つ のCNTをlunitと て 、 特 異 活 性 を 試 算 し た 。CNTは 直 径55㎜ 、 長 さ1.2オmの し 棒 状 構造 と して扱 い 、 炭 素 一炭 素 結 合 間 距 離 を1.42Aと し た 。17本 層 数 の 定 量 は 未 確 認 で あ る が 、4,5層 程 度 か ら数 十 層 の 範 囲 で あ る と 仮 定 し た 。 仮 に4層 CNTが 構 造 と し て 試 算 す る と 、lmgのCNTマ 実 験 で 使 用 し たCNTの 断 面 の ト リ ッ ク ス に 約5.64・1012個 の 存 在 す る こ とが 示 唆 され た 。 これ らの情 報 を元 に、 次 式 に従 って 一 分子 の 触 媒 当 り の 特 異 活 性E[㎜ol/min/unitofcatalyst]を 求 め た。 Specificactivity[nmoUmin] E[nmoUmin/unit]_ Totalnumberofmoleculeinonemgofcatalystsample[unit/mg] そ の 結 果 、本 人 工触 媒 の 一分 子 当 りの特 異活 性 の方 が 、 酵 素 の 一 分 子 当 りの特 異 活 性 よ り も 高 か っ た(図4.ll)。 82 Figure4.11Specificactivityofcellobiosedegradationagainsttheoneunitofcatalysts. この結 果 は 、 本 人 工 触 媒 の 重 量 当 りの活 性 部 位 数 が 、 酵 素 の 重 量 当 りの 活 性 部 位 数 よ り も多 い可 能 性 を 示 唆 して い る。 一般 に、 セ ル ラー ゼ に類 す る 酵 素 は、 数 百kDaの タ ンパ ク質 複 合体 で あ り、 そ の各 々の タ ンパ ク質 複 合 体 に(主 に) 一 つ の活 性 部 位 を持 つ 。15・16その た め 、個 々 の触 媒 一・ 分子 当 りの活 性 は 、 重 量 が 大 き く反 応 サ イ ト数 が 一 つ しか な い酵 素 よ りも、 重 量 が 酵 素 の タ ンパ ク質 複 合体 と比 べ て 軽 く、 ま た低 い 形 成 確 率 な が ら も複 数 の 反 応 サ イ トが 存 在 す る可 能 性 を有 す る 生体 模 倣 型 人 工触 媒 の方 が 高 い と い う結 果 が 得 られ た もの と考 え られ る。 この 結 果 か ら、本 人 工 触 媒 は 、触 媒 重 量 当 りの触 媒 反 応 サ イ ト数 が 酵 素 に比 して 多 い と い う特 徴 が 示 され た 。 83 次 に 、 本 人 工 触 媒 の触 媒 活 性 部 に寄 与 す る カ ル ボ キ シ ル 基 の 数 を 中和 滴 定 に よ り求 め 、CNT上 にお け るカ ル ボ キ シル 基 の 密 度 を試 算 した 。中和 滴 定 で は 、1mM の水 酸 化 ナ トリウム 水 溶 液 に、 水 に分 散 させ たCOOH-CNT(lmg/ml)溶 に滴 下 して い き、 滴 下 量 に対 す るpH変 液 を徐 々 化 を測 定 した(図4.11)。 Figure4.11NeutralizationtitrationofsodiumhydroxideusingtheCOOH-CNT: (i)CNT,(ii)COOH-CNT. 本 滴 定 に お け る 中 和 反 応 で は 、 以 下 の 反 応 が 進 行 して い る と 考 え られ 、 CNT-(COOH)x+X・NaOH→CNT-(COONa)x+X・H20 図4.11の 結 果 お よび 次 式 か ら、CNT一 分 子 あた りに存 在 す るカ ル ボ キ シル 基 の 数 を見 積 も った 。 84 riNaOH x= 1TICNT・(cooH)n!McNT(cooH)n (nN。OH:10[オmol](反 応 した 水酸 化 ナ トリウ ム 量)、mcNT(cooH)。:3.3[mg](平 点 に達 す るま で のCOOH-CNT量)、McrrT(cooH)。:1.15×108[g/mol](CNTの 衡 分子 量)) そ の 結 果 、一 つ のCNT上 に約3.48×105unitの こ とが 示 され た 。 これ は 、CNTの カル ボキ シル 基 が修 飾 さ れて い る 単位 表 面 積1nm2当 り に約1.68unitの キ シル 基 が存 在 して い る こ とにな る。 この 一 つ のCNT上 カル ボ に お け るカル ボ キ シル 基 間 の平 均 距 離 は 、 触 媒 サ イ トと して 機 能 す る カル ボ キ シル 基 間 の距 離 よ り も 大 き く、 ま た 、CNT上 に修 飾 され た カル ボ キ シル 基 の配 向 性 も、CNT平 して垂 直方 向 に修 飾 さ れ る と考 え られ て い る た め 、一 つ のCNT上 面 に対 で糖 の分 解 反 応 が進 行 す る可 能 性 は 少 な く、少 な くと も二 つ 以 上 のカ ル ボ キ シル 基 修 飾CNT が触 媒 サ イ トの 形 成 に必 要 で あ る こ とを 示 して い る 。 ま た 、仮 に二 つ のカ ル ボ キ シル 基 修 飾CNTが 近 接 して いた と して も、CNT上 の全 て の カ ル ボ キ シル 基 が 糖 の 分解 反 応 に有 効 な 触 媒 サ イ トの形 成 に寄 与 す る とは 限 らず 、 多 くのカ ル ボ キ シル 基 が 触 媒 サ イ トの形 成 に寄 与 で き て いな い可 能 性 が 十 分 考 え られ る。 さ ら に、 触 媒 反 応 に寄 与 す る一 対 のカ ル ボ キ シル 基 は 、 一 方 が プ ロ トン化 して お り他 方 は 脱 プ ロ トン化 して い る状 態 で は じめ て 糖 の分 解 活 性 サ イ トと して 機 能 す る と考 え られ る た め 、 有 効 な 触 媒 サ イ トの 形 成 確 率 は さ らに 低 くな る と考 え られ る。図4.12は 、本 人 工触 媒 を構 成 す るCNT一 分 子 あ た りに存 在 す る有 効 な 触 媒 サ イ ト数 を見 積 も った 結 果 を示 す 。人 工 触 媒 を構 成 す るCNT一 の触 媒 サ イ ト数(Y[unit/molecule])は 、一 分 子 の 生 体 触 媒(酵 85 素)に 分子 あた り は 一 つ の触 媒 Figure4.12Thenumberofactivesitespermoleculeofcatalyst.OneCNTstructurewas consideredasonemoleculeofcatalyst. サ イ ト が 存 在 す る [㎜01/min/molecule]励 こ と か ら 、 本 人 工 触 媒 お よ び 生 体 触 媒 の 特 異 活 性 匕を 取 る こ と で 見 積 も っ た 。 EB;t・t且yst[nmol/min/molecule] Y[unit/molecule]_ EEnzyme[nmol/minmolecule] そ の結 果 、一 つ のCNTに 、一つ 以 上 の触 媒 サ イ トが 存 在 す る可 能 性 が 示 唆 され 、 本 人 工触 媒 で は 、 天 然 の 生体 触 媒 よ りも多 く の触 媒 活 性 サ イ トが 形 成 され 得 る と い う特 徴 が 示 され た 。 また 、本 試算 結 果 はCNTを4層 最 小 値 で あ る。 さ らに 、本 人 工触 媒 で は、CNTお 構 造 と して 見積 も った よ びCOOH基 の 配 向 性 の最 適 化 は行 わ れ て い な いた め 、そ の触 媒 反 応 効 率 は、 長 い進 化 の過 程 で 最 適 化 され て きた 天 然 酵 素 の カ ル ボ キ シル 基 間 の距 離 お よ び 配 向 性 が 寄 与 す る触 媒 反 応 効 率 よ り も低 い可 能 性 が十 分考 え られ る。 そ の た め 、CNTが4層 86 以 上 の構 造 を有 す る可 能 性 と、個 々 の触 媒 サ イ トの反 応効 率 の違 い を考 慮 す る と、実 際 のCNT 一 分 子 あ た りの触 媒 サ イ ト数 は今 回見 積 も った 値 よ りも多 い と思 わ れ る 。 今後 の 最 適 化 、特 にCNTお (COOH/COOり よ びCOOHの 配 向性 の 制御 によ る理 想 的 な 触 媒 活 性 部位 の形 成 確 率 の 向 上 によ り、 さ ら に糖 分解 の触 媒 効 率 の 増 加 が 期 待 され る。 4-7ま とめ 糖 のR-1,4一グ リコ シ ド結 合 を加水 分 解 す る酵 素 セ ル ラーゼ の触 媒 活 性 部 位 の構 造 を、ナ ノ材 料 で あ るCNTを 用 いて 再構 築 し、セ ル ラー ゼ と 同様 の糖 の分 解 機 能 を発 現 す るバ イ オ ミ メテ ィ ックな 人 工 触 媒 を構 築 す る ことが で き た 。本 人 工触 媒 の触 媒 活 性 は 、カル ボ キ シル 基 のpK値 付 近 で 最 大 とな り、また 人工触 媒 中 に存 在 す る カ ル ボ キ シル 基 の量 の増 加 と と も に、触 媒 活 性 が 増 加 す る こと が 示 され た。 これ は 、 本 人 工 触 媒 が 、糖 の 加 水 分 解 反 応 を触 媒 す る活 性 部 位 構 造 の 形 成 確 率 に依 存 して い る こ とが 示 唆 され た。 また 、 カ ル ボ キ シ ル 基 の数 が 等 し い グル タ ミ ン酸 お よ び ア スパ ラギ ン酸 を修 飾 した 人 工 触 媒 の活 性 に違 いが 認 め られ 、 ア ミ ノ酸 の 構 造 由来 の機 能 に 起 因す る 興 味 深 い要 素 が あ る こ とが 示 され た 。 これ は 、 セ ル ラー ゼ の活 性 部 位 を形 成 す るカ ル ボキ シル 基 の多 くが 、 グル タ ミ ン酸 由 来 の も ので あ る 理 由 を解 き 明 か す 方 向 に展 開で き る も の と思 わ れ る。 本 章 で 展 開 され て き た 生体 構 造 模 倣 型 の 人 工 触 媒 に 関す る概 念 は 、本 論 文 の 目的 で あ る セ ル ロー スか らの効 率 的 な 直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 系 の 構 築 だ けで な く、 既 知 の 反 応 機 構 を扱 う他 の 生体 関 連 分 野 に も大 き く寄 与 す る こ とが で き る と考 え られ る 。 本 人 工 触 媒 に 関 す る研 究 は 、従 来 とは 異 な る方 向 か ら生命 の 本 質 に迫 る研 究 展 開 に貢 献 で き る可能 性 を秘 め て い る と思 わ れ る 。 87 参 考 文 献 1R.H.Doi&A.Kosugi,NatureReviewsMicrobiology.2004,2(7),541-551. 2C.Sanchez,BiotechnologyAdvances.2009,27,185-194. 3R.E.Nordon,S.J.Craig&F.C.Foong,BiotechnolLett.2009.31,465-476. 4A.Ochiai,T.Itoh,Y.Maruyama,A.Kawamata,B.Mikami,W.Hashimoto&K. Murata,J.BIOL.CHEM.2007.282,NO.51,37134-37145. 5A.Vasella,G.J.Davies&M.Bohm,CuYrentOpinioninChemicalBiology.2002. 6,619-629. 6A.White&D.R.Rose,Curr.Opin.3跏c.Biol.1997,7,645-651. 7C.M.Thomas&T.R.Ward,Appl.OYganomet.Chem.2005,19,35-39. 8G.L.Elizarova,G.M.Zhidomirov&V.N.Parmon,CatalysisToday.2000,58, .. 9Z.Fang&R.Breslow,Org.Lett.2006,8,2,251-254. 10V.R.Choudhary,S.K.Jana&B.P.Kiran,Catal.Lett.1999,59,217-219. 11A.V.Krishnan,K.Ojha&C.Pradhan,OrganicProcessResearch&Development. 2002,6,132-137. 12C.M.Thomas&T.R.Ward,Appl.Organomet.Chem.2005,19,35-39. 13C.Zhou,S.Wang,Q.Zhuang&H.Zhewen.CARBON.2008,46,1232-1240. 14M.K.Kumar&S.Ramaprabhu,J.Phys.Chem.B.2006,110,11291-11298. 15PS.Bagga,D.K.Sandhu&S.Sharma.ゐ 勿 16H.L.Yu,J.H.Xu,W.T.Lu&GQ.Lin,Enzyme.Microb.Tech.2007,40,354-361. 17M.T.Yin,M.L.Cohen,Phys.RevB.1984,29,12,6996-6998. 88 乙Bαc嬬o乙1990,68,61-68. 第5章 総括 本 研 究 で は 、 バ イ オ マ ス の 主 成 分 で あ るセ ル ロー ス を、 糖 化 も発 酵 プ ロセ ス も介 さ ず 、従 来 のバ イ オ 燃 料 電 池 シス テ ム よ りも高 いエ ネル ギ ー 変 換 効 率 で 、 直 接 電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 で き る 、ユ ニ ー ク な セ ル ロー ス燃 料 電 池 シ ス テ ム 系 構 築 を試 み 、 バ イ オ マ ス の新 しい利 用 技 術 の 提 案 を行 っ た 。 これ に よ り、 地 球 上 に豊 富 に、 広 域 に分 布 して い るバ イ オ マ ス を、 分 散 型 エ ネ ル ギ ー 供 給 源 と し て 利 用 す る実 現 可 能 性 を示 し、 次 世代 の エ ネ ル ギ ー 供給 網 シス テ ム の 構 築 ・デ ザ イ ン に寄与 す る こ とが 期 待 され る。 そ の 最 初 の段 階 と して 、 金 の糖 酸 化 に 対 す る触 媒 能 が 発 現 で き る ア ル カ リ環 境 下 で 、電 気 化 学 的 に不 活 性 なセ ル ロー ス の結 晶構 造 の 維 持 に寄 与 して い る分 子 内 ・分 子 間 水 素 結 合 を切 断 させ 、 セ ル ロー ス分 子 と金 電 極 が 電 気 化 学 的 に相 互 作 用 で き る 反 応 環 境 を見 出 す こ と に成 功 した 。 これ に よ り、 従 来 不 可 能 で あ った セ ル ロー ス か らの直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 が 可能 とな り、 従 来 技 術 に必 須 の糖 化 お よ び発 酵 プ ロセ ス を介 さ ず 、 直 接 セ ル ロー ス か ら電 気 エ ネル ギ ー 供 給 が 可 能 な 、 新 しいバ イ オ 燃 料 電 池(セ ル ロー ス 燃 料電 池)系 の構 築 に成 功 した 。 さ らに 、セ ル ロー ス の化 学 エ ネ ル ギ ー を電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 した 後 、 水 不 溶 性 の セ ル ロー ス が 水 可 溶 性 の 酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 に変 化 す る こ とが わ か っ た。 この 結 果 を も と に 、 酸 化 反 応 の前 後 に お け るセ ル ロ ー ス の 構 造 お よ び 反 応 特 性 を調 べ 、セ ル ロー ス の電 気 化 学 的 酸 化 の反 応 機 構 の側 面 が 明 らか にな っ た。 これ らの 結 果 か ら、 エ ネ ル ギ ー と 同時 に ポ リマ ー 系 工業 原 料 も生 成 で き るセ ル ロー ス リ フ ァイ ナ リー シ ス テ ム に展 開で き る可 能 性 が 示 され 、 セ ル ロー ス の直 接 エ ネ ル ギ ー 変 換 シ ス テ ム 系 の 新 しい可 能 性 が 示 され た 。 また 、 ひ とつ の電 気 化 学 反 応 場 で 得 られ る酸 化 セ ル ロー ス 誘 導 体 は一 種 類 で は な く、 複 数 種 存 在 す 89 る こ とが 示 唆 さ れ 、従 来 の セ ル ロー ス の 改 質 技 術 に も応 用 ・展 開で き る こ とも 示 され た 。 ま た 、 この 酸 化 セ ル ロー ス誘 導 体 は 、 も との セ ル ロー ス に比 べ て 、 酵 素 に よ る被 糖 化 能 が 高 い こ とが わ か った 。 本 論 文 で は 、 この分 解 しや す い酸 化 セ ル ロー ス 誘 導体 を さ らにエ ネ ル ギ ー 源 と して利 用 す る こ とで 、 燃 料 物 質 か らのエ ネル ギ ー 変 換 効 率 の高 いセ ル ロー ス 燃 料 電 池 の 改 良 を試 み 、 糖 の分 解 反 応 を触 媒 す る 新 しい 人 工酵 素 の創 生 を試 み た 。 そ の 結 果 、 化 学 修 飾 した カ ー ボ ンナ ノチ ュー ブ(CNT)を 用 い て 、糖 を分解 す る酵 素 セ ル ラー ゼ の触 媒 活 性 中心 の 構 造 を 人 工 的 に再 構 築 し、酵 素 と 同様 の触 媒 機 能 を発 現 す る 、 バ イ ミメ テ ィ ッ ク な 人 工触 媒 の 創 生 に成 功 した 。 現 在 、 ゼ オ ライ トを は じめ 、 金 属 や 担 持 体 な どの ナ ノ材 料 の種 類 、 ま た は そ の粒 子 径 の大 き さ と触 媒 能 の 関 係 を検 討 す る研 究 は よ く行 わ れ て い る が 、 ナ ノ材 料 を用 い て 、 上 述 した 酵 素 な どの 生体 分 子 が 持 つ 、 独 特 の 構 造 を模 した触 媒 能 の発 現 に関 す る研 究 報 告 は ほ とん どな い。A 単位 の 制 御 は 難 しいが 、 そ れ で も確 率 的 に酵 素 の活 性 中心 模 倣 構 造 に よ る 、糖 の分 解 反 応 を発 現 で き る可 能 性 が 考 え られ る。 本 研 究 で 提 案 す る 人 工 触 媒 に よ り、 酵 素 の 部 分 的 な機 能 評価 が で き る可 能 性 が 考 え られ 、 セ ル ロー ス か らの エ ネ ル ギ ー 変 換 効 率 の 向 上 だ けで な く、従 来 とは 異 な る方 向か ら生命 の本 質 に迫 る研 究 展 開 に寄 与す る こ とが 期 待 され る。 90 Summary The demand a lack for energy of sufficient alternative based energy reported. techniques infrastructure. from using cells specialised reaction a much due to cutting of fermentation types based of sugar for these cellulose need for complicated this technique via as a viable important research transfer if cellulose progress from electrochemical process cells from functional of soluble been hydrogen and devised and developed. mainly tapped of its stored cells. In this respect, sugars surface 91 supply now, various the fuels to be produced wide source. is a crucial electrodes direct step. of steps and allows enabling The adoption the intermediate energy, on gold or silver reported. energy as an energy Reducing electric However, limits and fermentation Until and still need substantially system been for distributed of biomass to the electrode have process. these into the without electrode conversion fuel cell technology. in bio fuel biomass this have whole can convert of application been can be widely for operating which derived for utilization components oxidation fuel energy like saccharification green to be made biomass input such as glucose saccharification conversion Unfortunately, its energy cells have cells are monosaccharide from very biofuel and energy for to exploit of biomass. range from techniques as an topics component on anodic broader important using of sugars of sugars of conventional and biomass intensively equipment, energy Utilizing is generated the main bio industrialisation, one of the most fermentation sugar-based chemical have A number growth, sources. becoming energy cellulose, Recently, oxidation Biofuel society. processes, from require renewable-energy saccharification, these produced due to population is increasingly including Using ethanol source sustainable source energy cost-effective energy material is increasing further electron Indeed, under is the alkaline conditions has However, as complicated cellulose far have chapter we not been are 2, direct electrode. characteristics To the best to increase generated both the electric and could of characteristics of structure. Since it possible an analytical surface. cells. utilization we considered and, develop current energy, and study cellulose We characterized generated. new power Main present with of a sustainable to technique results in each report achieved of the on basic conditions. A We nano-particulated cellulose and cellulose The based without but for utilization cell and steps cell system reagents in the is simple, and of biomass time. This constituents, industry. cellulose on gold, using system saccharification biomaterial-based oxidation fuel important fuel to both of the derivatives 92 was alkaline of water-soluble electrochemical the structure regard first under initial generation. cellulose is the derivatives possibilities the production using This experiments lead to the development 3, we report and evaluated. is economical raises this of cellulose and cellulose for electrical of dissolved knowledge, oxidation These of cellulose water-insoluble conditions. the processes. In chapter fuel direct electrochemical on an electrode oxidation of our successfully managed proof-of-concept on conditions, protocols electrochemical labour-intensive, reports of their rigid crystalline certain directly of sugar-based as follow. fuel cell was constructed less no The because dissolution of electrochemical fermentation are as cellulose. under can be oxidized development there mostly is possible are summarized to the aware, such cellulose cellulose utilization leading studied of cellulose In chapter gold as the present in which reported, polysaccharides dissolution exploit been derivatives under XRD, the FTIR, from alkaline and SEC techniques. The results suggest that some hydroxyl groups on cellulose molecule are oxidized into the carbonyl groups due to electrochemical oxidation. We further demonstrated that these oxidized cellulose derivatives are more readily degraded by cellulase enzymes more readily than the original cellulose. In addition, the calculation of electron transfer during electrochemical oxidation process between cellulose molecule and gold electrode revealed it to be a multiple electron transfer reaction process. These results have direct application to the development of a novel cellulose refinery technology water-soluble with simultaneous electricity generation and production of cellulose derivatives. To be able to utilize cellulose, one of the major constituents of biomass- yet very hard to directly tap into- should be considered a key contribution to bio-refinery in the near future. In chapter 4, I claim successful construction of a bio-inspired catalyst based on the CNT matrix functionalized with carboxylate groups. This nanostructure is capable of catalyzing sugar degradation reaction by cleaving the 13-1,4-glycosyl bonds of the sugar substrate by the same way as the natural cellulase. Our construct successfully mimicked the active center of the sugar degrading 13-glycosyl hydrolases. The catalyst functioned optimally at pH ----3.0. Our work will allow for the construction of an array of artificial catalysts that mimic the conformation of the active centers of enzymes, for which the structure—catalysis relationships speculated. are already With some improvement, known or at least can be partially such bio-inspired catalysts can be used in bioprocess industries, especially in bio-energy conversion, thereby avoiding the use of hazardous microbial cultures or expensive natural enzymes. Recently, for on-site utilization of biomass, a unique fuel cell was developed capable of generating electricity 93 directly direct from cellulose.13 energy sources, for constructs complex enzymatic This novel catalysis, macroscopic We propose conversion system example, wastes, can be used enzyme that that the integration will as a fuel for systematic conformations to enable for us to use generating evaluation gain of this artificial of the a better biomass from electricity. functional insight into catalyst with ubiquitous Moreover, individual the a such parts mechanisms of of activity. bio-mimetic natural approach catalytic biological processes, can enhance the scientific which in turn, will, networks. 94 understanding provide information of synthetic related to 業 績 リ ス ト 本 学 位 論 文 に 関 す る 原 著 論 文 1.YasuhitoSugano,Mun'delanjiVestergaard,HiroyukiYoshikawa,Masato SaitoandEiichiTamiya, "Di rectelectrochemicaloxidationofcellulose:Acellulose-basedfuelcellsystem," Electroanalysis.(doi.10.1002/elan.201000045). 2.YasuhitoSugano,Mun'delanjiVestergaard,MasatoSaitoandEiichiTamiya, "C arbonnanotubestructuredbiomimeticcatalystforpolysaccharidedegradation," (submitted). 3.YasuhitoSugano,HoaLeQuynh,Mun'delanjiVestergaard,Sathuluri RamachandraRao,HiroyukiYoshikawa,MasatoSaito,YamaguchiYoshinoriand EiichiTamiya, "Electrochemical4ε γ∫ 磁 翩 加(fcell ul・se・ngo14プOYenhancedcellulase degradablesubstratesandstructuralcharacterization,"(submitted). 95 関 連 原 著 論 文 1.LeQuynhHoa,YasuhitoSugano,HiroyukiYoshikawa,MasatoSaitoand EiichiTamiya, "Abi ohydrogenfuelcellusingaconductivepolymernanocompositebasedanode," BiosensorsandBioelectronics.(doi:10.1016/j.bios.2010.04.017) 総 説 ・解 説 等 1.菅 野 康 仁,民 谷 栄 一. "セ ノ〃 ロ ー ズ 燃 料 露 勉" 燃 料 電 池,Vb1.9,No.1,2009. 国 際 会 議 発 表 1.YasuhitoSugano,JunichiNaruse,LeQuynhHoa,HiroyukiYoshikawa,Masato SaitoandEiichiTamiya, "Celluloserefinerysystemusingdirectelectrochemicaloxidation ," 7thAsianConferenceonElectrochemistry(7thACEC).Kumamotouniversity, Japan,2010。05.18-22(口 頭 発 表) 2.YasuhitoSugano,MasatoSaito,andEiichiTamiya, "Directelectricitygenerationfromcelluloseusingfuelcell ," FirstInternationalSymposiumonAtomicallycontrolledFabricationTechnology. Osakauniversity,Japan,2009.02.16-17(ポ ス タ ー 発 表) 96 3.YasuhitoSugano,Masato.SaitoandEiichiTamiya, "Bi ofuelCellswithCelluloseNano-Particles," TheElectrochemicalSociety,PacificRimMeeting2008.Honolulu,Hawai, 2008.10.13.(口 頭 発 表) 国 内会 議 発 表 口頭 発 表 1.菅 野 康 仁 、 成 瀬 淳 一 、HoaLeQuynh、 "燃 釋 露 抛Pシ ズ テ ム を::た 電 気 化 学 会 第77大 2.菅 野 康 仁,成 会.富 瀬 淳 一,吉 吉 川 裕 之 、 斉 藤 真 人 、 民谷 栄 一 セ ノ〃∠コー ズ の 瓦 広 生 戎 物 の 繃" 山 大 学 五 福 キ ャ ン パ ス,2010.03.29 川 裕 之,斉 藤 真 人,民 谷 栄 一 "セ ノ〃ロ ー ズ 燃 響 馳" 第61回 3.菅 日 本 生 物 工 学 会 大 会.名 野 康 仁,成 古 屋 大 学 東 山 キ ャ ン パ ス,2009.09.23 瀬 淳 一,HoaLeQuyn,吉 川 裕 之,斉 藤 真 入,民 谷 栄 一 "セ ノ〃σ 一 ズ か ら の 直 髪 工 ネ ノ〃ギ ー 変 契 シ ズ テ ム" 2009年 4.菅 電 気 化 学 秋 季 大 会.東 京 農 工 大 学 小 金 井 キ ャ ン パ ス,2009.09.11 野 康仁 、 成 瀬 淳 一 、 斉藤 真 人 、 民 谷 栄 一 "セ 泓 ・Q一 ズ の ナ ノ 撤 デ 危 と バ イ 撚 電 気 化 学 会 第76大 会.京 響 窓 勉 へ の 旃" 都 大 学 吉 田 キ ャ ン パ ス,2009.03.30 97 5.菅 野 康 仁,MinhazUddinAhmed,斎 "茉 棚 藤真 人,民 谷 栄 一 ノゾイ才 マズ か らの靂 気 盈 ・ 学工 ネル ギ ー変 麓" 電 気 化 学 会 第75大 会.山 梨 大 学,2008.03.29 6.菅 野 康 仁 、 山村 昌平 、高 村 禅 、 民谷 栄 一 "纖 の縱 第59回 勿 を舅 の 、 を ググ ノセノ〃ロ ーズ 系 バ イ 才 マズ の糖 准" 日本 生物 工学 会.大 会 広 島大 学 東 広 島キ ャ ンパ ス,2007.09.25-27 7.菅 野 康 仁 、 山村 昌平 、 池 田 隆造 、 高 村 禅 、 民谷 栄 一 "纖 の担 子 慮 を房 のた 禾 嬲 農 芸化 学 会2007年 ハ"イ才 マズ カ)らの羶 盈 プ ∠ コセズ" 度大会、東京農業大学 世 田谷 キ ャ ンパ ス,2007.03.24-27 8.菅 野 康 仁,池 田 隆造,石 川 光 祥,山 村 昌平,高 村 "禾 砺 禅,民 谷 栄 一 バ イ 才 マズ か らの微 塗 物 変 麓 〆 ごよ る丞 素 鑵" 電 気 化 学 会 第73回 大 会 、 首 都 大 学 東 京 南 大 沢 キ ャ ンパ ス,2006.04.Ol-03 9.菅 野 康 仁 、 清 水 和 幸 。フt務欝 の αc朗 遺宏 デ 磯 が 培 養得 性 及 び瀚 影 響" 生 物 工 学 会 九 州 支 部 大 会2005 98 罠懸 タンノ1° グ 質の発 現 〆 ご及 ぼ す ポスター発表 10.菅 野 康 仁,成 瀬 淳 一,HoaLeQuyn,吉 川 裕 之,斉 藤 真 人,民 谷栄一 "セ ノ〃ム7一 ズ 燃 料 霞 勉" 第3回 11.菅 電 気 化 学 研 究 会.神 戸 大 学,2009.11.28 野 康 仁 、 山村 昌平 、 池 田隆 造 、 高 村 禅 、 富 山雅 光 、 民 谷 栄 一 "蠍 の艦 物 を ー ー た 禾1糊 バ イ 才 マ ズ の 撈 盈 シ ズ テ ム" 北 陸 地 区 講 演 会 と 研 究 発 表 会.富 12.菅 山 大 学 工 学 部,2006.11.18 野 康 仁 、 山村 昌平 、池 田隆 造 、石 川 光 祥 、高 村 禅 、 富 山雅 光 、 民谷 栄 一 "蠍 の 汐 脅擲 擶 を ノ万の た 禾 祠!房ソゾイ 才 マズ か ら の エ ネ 生 体 機 能 関 連 化 学 部 会(第21回)・ 命 化 学 研 究 会(第9回)合 ノ ψ ギ ー 変 契" バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 部 会(第9回)・ 同 シ ン ポ ジ ウ ム.京 生 都 大 学,2006.9.28-30 特許等 1.民 谷 栄 一,菅 野 康 仁.電 気 化 学 を 用 い た ポ リ マ ー の 製 造 方 法 と 生 成 物 ,特 願 2010-073902 そ の 他(受 賞 暦 等) ポ ス ター 賞 1.菅 野 康 仁.駟 2.菅 野 康 仁.最 霾気盈槊 纉200g.ll.28 優 秀 ポ ズ タ ー 貫.石 川 県 加 賀 市 バ イ オ マ ス タ ウ ン 構 想 事 業 .2005 99 新 聞記 事 3.民 谷 栄 一,菅 野 康 仁.木 謝 か ら直 醗 経 産 業 新 聞2009.04.17 100 雷 鰍 磨 毒嬲 ノ1"イ才 震抛 〆 ご」 置.日 謝辞 本 研 究 は 、 民谷 栄 一 教 授 の ご指 導 の も と、 大 阪 大 学 大 学 院 工学 研 究科 精 密 科 学 ・応 用 物 理 学 専 攻 にお い て行 わ れ た もの で あ る。本 研 究 を遂行 す る に あ た り、 多 くの方 々 に ご協 力頂 き ま した 。 こ こで厚 く御 礼 申 し上 げ ます 。 博 士 前期 過 程 か ら博 士 後 期 課 程 の問 、 終 始 懇 切 な ご指 導 、 ご鞭 撻 を賜 りま し た。 大 阪 大 学 大 学 院 工学 研 究 科 教 授 民 谷 栄 一 先 生 に謹 ん で感 謝 申 し上 げ ま す 。 本 学 位 論 文 作 成 に あ た り御 検 討 いた だ き 、 有 益 な御 教 示 を賜 りま した 本 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 笠 井 秀 明先 生 、 小林 慶裕 先 生 、神 戸 大 学大 学 院 工学 研 究 科 教 授 近 藤 昭 彦 先 生 に厚 く御 礼 申 し上 げ ます 。 本 学 大 学 院 工 学 研 究 科 助 教 吉 川 裕 之 先 生 には 日々 の研 究 に 関 して ご意 見 、 ご 指 導 賜 りま した 。 心 よ り御 礼 申 し上 げ ます 。 X線 回 折 測 定 に ご協 力頂 き ま した本 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 今 中信 人 先 生 、 助 教 田村 真 治 先 生 に厚 く御 礼 申 し上 げ ます 。 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 観 察 に ご協 力 頂 き ま した 本 学 産 業 科 学研 究 所 教 授 松 本 和 彦 先 生 、 准 教 授 前 橋 兼三 先 生 、助 教 大 野 恭秀 先 生 に厚 く御 礼 申 し上 げ ます 。 電 極 素 材 の 作 製 に ご協 力 頂 き ま した 、本 学 大 学 院 工 学 研 究 科 講 師 清 野 智 史 先 生 に厚 く御 礼 申 し上 げ ます 。 日々 の研 究 に あた りご意 見 い た だ き ま した 山 口佳 則 特 任 准 教 授 、 斎 藤 真 人 助 教 に御 礼 申 し上 げ ます 。 日々 の研 究 生活 にお い て 、 よ く議 論 して 頂 い たMun'delanjiVestergaard博 HaMinhHiep博 士 、MohammadM.Hossain氏 、HoaLeQuynh氏 士、 に、心 よ り深 く 感 謝 い た しま す 。 日々 の研 究 生 活 で 共 に切 磋 琢 磨 し、 大 変 お 世 話 にな っ た 田 中嘉 人 博 士 、安 國 101 良平 博 士 、GuillaumeLaurent博 士 、佐 武 主 康 氏 、横 山委 未 氏 、谷 山俊 一氏 に深 く 感 謝 いた します 。 日々 の研 究 室 生 活 にお いて 様 々 な 形 で ご協 力 、 ご意 見 い た だ き ま した 民 谷 研 究 室 の皆 様 に 感 謝 いた します 。合 田真 紀 子 様 、 川 和 田晴 己 様 、信 岡美 穂 様 、 五 条 久 美 子 様 、 藤 原 泰 子 様 に は 、 日々 の研 究 生 活 を送 る上 で 様 々 な御 援 助 を賜 り ま した 。 心 よ り感 謝 申 し上 げ ます 。 最 後 に 、進 学 の 機 会 を与 えて 頂 く と共 に 、終 始 暖 か く見 守 って くれ た 家 族 に 深 く感 謝 し ます 。 102