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科学と人間生活 物はなぜ見えるのか?
科学と人間生活 テレビ学習メモ 監修:平 野 弘 之 物理編 #1 第 11 回 物はなぜ見えるのか? 今回学ぶこと 物が見えるのは、その物から来た「光」が目に入ったからである。光は、 物から出て、どのような進み方をして目に届いたのだろうか。今回は、光の 進み方を学習することにより、なぜ物がその形に見えるのかを学習する。ま た、生活の中での光の利用例として、光ファイバーのしくみを学ぶ。 学習前チェック 暗室の電灯を消したとき、暗室の中に置かれている物が見えなくなる理由 と、鏡の前に立ったとき、鏡に自分が映る理由を考えてみよう。また、レン ズがどのようなところで使われているかを考えてみよう。 入射光のなす角を入射角、垂線と反射光のなす角を ▼ : 光の進み方 反射角という。入射角と反射角は、常に等しい。 光が空気中から水中に進むとき、光の一部は水面 「見えている物」は 2 種類に分けられる。一つは、 太陽や電灯のように自ら光を発する「光源」と呼ば で反射し、残りは屈折して水中を進む。水面に引い れる物体で、もう一つは、光源から出た光を反射し た垂線と水面に進む入射光のなす角を入射角、垂線 ている物体だ。どちらの場合も、物体から来た光が と屈折光のなす角を屈折角という。また、このとき、 目に入ったから「見える」のだ。光源のない暗闇で 光が空気中を進む速さと水中を進む速さの比を、 (空 何も見えないのは、このためだ。 気に対する水の)屈折率という。ある入射角で進ん 鏡に物体が映るのは、物体からの光が鏡で反射し だ光の屈折角は、屈折率で決まる。 て目に入るからだ。鏡の面に引いた垂線と鏡に進む − 22 − 水に入れた棒を上から見たとき曲がって見えるの 高校講座・学習メモ 科学と人間生活 物はなぜ見えるのか? は屈折の効果だ。また、食用油に入れたビーカーが この「形」のことを像という。物体から出た光は、 見えなくなったのは、食用油とビーカーの屈折率が 凸レンズを通ると屈折する。物体上のある一点から ほぼ同じだからだ。油からビーカーに入射した光は、 出て凸レンズを通る光の道すじは無数にあるが、こ 油とビーカーの境界面で反射しない(もちろん、屈 れらの無数の道すじの光が一点に集まるときに像が 折もしない) 。そのため、ビーカーから目に来る光 できる。スクリーン上で、物体がぼやけて見えると がないので、見えなくなるのだ。 きは、これらの光がスクリーン上の一点に集まって いないときだ。いわゆる「ピンボケ」である。 : 光とレンズ : 全反射 虫メガネなど、物を拡大して見るときに使われる レンズが凸レンズだ。凸レンズは、中心部分が厚く 光が水中から空気中に進む場合、常に入射角より なっていて、光を集めることができる。一方、近眼 屈折角の方が大きい。入射角を大きくしていくと、 用のメガネに使われているレンズが凹レンズだ。凹 入射角が 90°に達する前に屈折角が 90°を超えてし レンズは、凸レンズとは逆に周辺部分が厚くなって まう。このとき、光は空気中へは進まず、水面です いて、光を広げる性質がある。 べて反射されてしまう。これを全反射という。ある 物体の前に凸レンズを置き、適当な位置にスク 種の光ファイバーは、全反射を利用している。 リーンを置くと、物体の「形」が見えることがある。 ▼ 今回のまとめ 光が屈折率の異なる二つの物質の境界面に進むとき、一部は反射し、一部は屈折す る。 物体を凸レンズの前方に置き、レンズの後方にスクリーンを置くと、物体の「形」 が見えることがある。この「形」を物体の「像」という。 光が水中から空気中に進むとき、入射角が大きくなると、光は全反射する。 − 23 − 高校講座・学習メモ