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抑うつ症状はメンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応

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抑うつ症状はメンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応
日心第70回大会(2006)
抑うつ症状はメンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応性を亢進する
津田 彰 2 田中豪一 3 矢島潤平 4
1 久留米大学高次脳疾患研究所 2 文学部 3 札幌医科大学医学部 4 別府大学文学部
○岡村尚昌1
key word:抑うつ症状,スピーチ課題,心理生物学的ストレス反応
【 問題と目的 】
上昇した。このことは、メンタルストレス・テストとして採用した
近年、抑うつ症状と心臓血管系反応との関連性を検討した研究が
スピーチ課題が抑うつ気分を喚起する上で妥当であったことを示し
数多く行われるようになり、抑うつ症状が心筋梗塞や高血圧症のリ
ており,適切な実験系が設定されたと考える.また、高抑うつ群の
スクファクターであることが明らかにされつつある。同時に、抑う
抑うつ反応は低抑うつ群のそれより常に高値を示した。
つ患者のカテコールアミン(ノルアドレナリン、アドレナリン)の
心臓血管系ストレス反応性について、両群の HR、SBP と DBP の基
サーカディアンリズムが乱れていること、ストレス負荷時のこれら
礎値は同じであったが,高抑うつ群ではストレス負荷による上昇が
の反応の制御機能が低下していることなどが指摘されている。
顕著であった。特に、高抑うつ群の DBP は、低抑うつ群と比較して
また、抑うつ傾向者は、どのストレッサーに対しても抑うつ反応
基礎値への回復が遅れた。このことは、日常場面で体験される主観
を示すのではなく、自分の抑うつスキーマに合致する内容をもった
的な抑うつ反応と、実験室で急性的に惹起される心臓血管系反応の
ストレッサーに対して特異的に抑うつ反応を示すと考えられている。 増加との間に生態学的な妥当性があることを示唆している。
もしそうであるならば、抑うつ傾向者ほど、実験室場面において抑
free-MHPG については、両群ともストレス負荷による上昇は認めら
うつ気分を喚起させるようなメンタルストレス・テストを負荷した
れなかったが、高抑うつ群は低抑うつ群に比較して常に高値であり、
際の、心理生物学的ストレス反応性は顕著であると思われる。
回復期では順応期と比べて有意に高くなった(Fig. 1)。
そこで本研究では、大学生の中から高抑うつ群と低抑うつ群を抽
高抑うつ群でのみ、スピーチ課題によって喚起された主観的抑う
出し,実験室場面において、抑うつ気分を経験した日常生活での出
つ気分と、
課題期のfree-MHPG の上昇との間に有意な相関を認めた。
来事をスピーチ課題として負荷した際の心理生物学的ストレス反応
抑うつ症状の強い個人は、そうでない個人に比較して急性ストレス
(主観的抑うつ反応、カテコールアミン反応、心臓血管系ストレス
に対する主観的抑うつ反応が強く、それがストレス負荷後のカテコ
反応)を比較検討した。
ールアミン神経系の活性と関連することが示唆される。また、心臓
血管系ストレス反応と主観的抑うつ反応とに関連はなかった。
【 方 法 】
以上の結果から、高抑うつ群は低抑うつ群に比較して、抑うつ気
被験者:参加の同意の得られた健康な大学生 55 名(男性 16 名,女
分を喚起させるスピーチ課題の心理生物学的ストレス反応が顕著で
性 39 名、年齢 23.4±1.0)を対象に、Center for Epidemiological
あり、基礎値への回復も遅れることが明らかとなった。すなわち、
Studies Depression Scale (CES-D)を実施し、高抑うつ群(CES-D ≧
抑うつ症状はメンタルストレス・テストに対する心理生物学的スト
16)23 名と低抑うつ群(CES-D < 16)32 名を抽出した。
レス反応を亢進することが分かった。これらの知見は、抑うつ症状
手続き:実験室に入室後、逆手中指に血圧と脈拍(HR)を測定する
が頻繁にストレッサーと相互作用しあうことによって,心筋梗塞や
ためのカフを装着した。10 分間の順応期後,唾液を採取し、抑うつ
高血圧症の罹患性を高かめる1つのメカニズムとなっていることを
状態を測定する質問紙への記入を求めた.2 分のスピーチ準備後、3
示唆する.
分間のスピーチ課題を施行し,30 分間の回復期を設定した.ストレ
ス負荷終了後と回復期後に唾液を再度採取し、質問紙への記入を求
めた。
した最も抑うつ的な出来事をスピーチしてもらった。
カテコールアミン反応の測定:唾液を試料として、ノルアドレナリ
ンの最終代謝産物である free-MHPG を測定した。
心臓血管系ストレス反応:フィナプレス法によってHR、収縮期血圧
(SBP)
、拡張期血圧(DBP)を 1 拍毎に非観血的に連続測定した。
抑うつ反応の測定:抑うつ気分の程度を 7 段階(1:まったく感じな
い ~ 7:非常に感じる)で評定した。
【 結果と考察 】
主観的抑うつ反応については、スピーチ課題後に両群とも有意に
(ng/ml )
メンタルストレス・テスト:抑うつ気分を喚起するため、以前体験
16
14
12
10
8
6
4
2
0
*
CES>16
CES<16
Baseline
* p < .05 ( vs Baseline)
Post-task
Recovery
Fig. 1 スピーチ課題負荷によるMHPG の変化
( OKAMURA Hisayoshi, TSUDA Akira, TANAKA Gohichi,
YAJIMA Jumpei)
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