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- 25 - (2) 物質の状態変化を調べよう(第1学年) 【実験1】 ろうの変化を
(2) 物質の状態変化を調べよう(第1学年) 【実験1】 ■ ろうの変化を調べる 実験のねらい ろうが状態変化を起こすとき(固体と液体)の体積と質量について調べ,物質の状態が固体から液 体に変化するとき質量は変化しないが,体積は大きくなることを見いだします。 〈実験の手順〉 50 ㎝3か 100 ㎝3のビーカーが見 ① 固体のろうの質量を量ります。 ② ろうを加熱して液体にします。 ③ 液体になったら加熱をやめ,油性ペ やすいでしょう。 青い炎が5~6㎝見える ンで印を付けます。 程度の小さな炎でゆっくり ④ 質量を測定し①と比べます。 と加熱します。また,ビー ⑤ 冷やして体積の変化を見ます。 カーを二重にして湯せんで 注 溶かすのもよいです。 意 熱くなっているので注意 します。 液体のろうは 70℃以上の高温になっ ているので,軍手などを使用してやけ どをしないようにして運びます。 注 ■ 意 実験の留意点 ○ 液体のろうは,高温なのでやけどに十分注意させます。 ○ 容器は口径が小さいものを選ぶようにすると,固体になったときの中央部のへこみが観察し やすくなります。 (入れる固体のろうは,50 ㎝3のビーカーでは 20g程度,100 ㎝3ビーカーでは 30g程度) ○ 加熱中は,ビーカーを倒さないように注意させます。 ○ 加熱中は,かき混ぜないようにさせます。 ○ 質量の測定に上皿てんびんを用いる場合は,左右の皿に等しい質量の厚紙を載せ,その上に手 で持てるくらいに冷やしたビーカーを載せるようにし,熱で皿が変形しないように注意させます。 ○ 急速に冷やすほど中心のくぼみが大きく,くぼみが分かりやすくなります。 〔冷やすときの目安(室温 28℃):20gのろうの場合,氷水で 12 分,水道水で 20 分,室温放置 で 30 分以上〕 ○ 冷やすときは,ビーカーの中に水が入らないようにさせます。もし入った場合は,再利用しま せん。再加熱した場合に,ろうや水が飛び散ることがあり危険です。 - 25 - 【実験2】 ■ エタノール(沸点 78.3℃),アセトン(沸点 56.6℃)の変化を調べる 実験のねらい 物質の状態が液体から気体,あるいは,気体から液体へと変化が起こるとき,体積の変化が大き いことを実験,観察によって見いだします。 【エタノールを加熱する場合】 初め,沸騰した湯をエタノールの入 180mm × 250mm 程 度 の っている部分に直接掛けるようにしま 透明なポリエチレンの袋 す。また,袋が膨らみ始めたら,膨ら を用意します。 注 んだところに掛けるようにします。 意 熱湯を掛けるときはやけ どに注意します。 【アセトンを加熱する場合】 注 アセトンを入れたポリエチレンの袋 意 を熱湯に当てて実験を行います。この アセトンは,引火性が特に とき,袋の中で沸とうしている様子を 強いので,火気厳禁です。 見ることができます。 80℃くらいの湯で大丈夫です。 ■ 実験の留意点 ○ ポリエチレンの袋にエタノールやアセトンを入れるときは,十分に換気を行わせます。 ○ エタノールやアセトンを加熱するときは,引火を防ぐため火気厳禁です。 ○ 熱湯を用いますので,やけどに注意させます。 ○ エタノールの場合は,1回で2L くらいの熱湯が必要になるので,実験の回数に応じて多量の 熱湯を用意しておく必要があります。 【参考】 固体のエタノール,液体の酸素を見よう 液体窒素を用意します。容器に入れたエタノールを液体窒素に触れさせ,固体にすることができま す。同様に,気体の酸素を大きめのポリエチレンの袋に入れ,液体窒素に触れさせると,次第に気体 の体積が減って,袋の底部に液体の酸素(青みがかった透明な液体)がたまります。細長い風船に気体 を入れたものを液体窒素に触れさせた場合も同様の結果が得られます。 なお,液体窒素は,専用の容器(ジュワーびん)に入れて,きっちりと栓をしないようにします。液 体窒素が染み込んで凍傷を起こすので,軍手は使いません。小分けするときには,口の細い容器には 絶対に入れないようにします。びんが破裂する可能性が高くなり危険です。 - 26 - 【実験3】 ■ パルミチン酸(融点 63.0℃,沸点 351.0℃)を加熱したときの温度変化を調べる 実験のねらい 固体のパルミチン酸が,加熱によって液体に状態変化していくときの温度変化について調べ,物 質が状態変化するときの温度変化についての特徴を見いだします。 〈実験の手順〉 パルミ チン酸 温度計 ① 割り箸 口径 15 mm の試験管 にパルミチン酸を3g 入れ,ゆっくり加熱す 試験管を 二重にする るため,5㎝程度の割 り箸(つまようじ数本) 温度計は,試料の中に深く差し込 を入れた口径 18 mm の み,ガスバーナーの火の強さを中火 試験管に挿入します。 程度にします。そうすると,試料の ② 温度をゆっくりと上昇させること 左の図のように装置 ができ,グラフを作成すると物質の を組んで,パルチミン 状態変化と温度変化の関係がよく 酸の温度を 70℃くらい 分かります。 になるまで 30 秒ごとに 温度を測定します。 注 3 意 3 500 ㎝ ビーカーに 200 ㎝ 程度 の水と突沸を防ぐために沸騰石を 入れます。 注 意 やけどに注意します。 ○ 金網は熱くなっていますので,触れないようにします。 ○ 温度計の示度を見るときは,ビーカーの水の蒸気に注意 二重にした試験管はビーカーの底 からわずかに離して固定します。 します。 ■ 実験の留意点 ○ 実験装置を組み立てる場合,スタンドの固定部分のねじの操作は慎重に行わせ,ガラス器具の 破損に気を付けさせます。 ○ パルミチン酸の融け始めと融け終わりの様子や温度を見逃さないように,注意して観察させま す。 ○ 70℃を越えたらガスバーナーの火を消し,余熱で温めるようにさせます。 ○ 実験直後の試験管やビーカーは熱くなっているので,軍手などをはめて取り扱い,やけどしな いように注意させます。また,試験管を取り外す際に,ビーカーを倒さないように気を付けさせ ます。 ○ 試料は一度融解したものを使用した方が,正確な測定値が得られやすくなります。 ○ 実験後,試験管内のパルミチン酸が固まった後温度計を取り出し,ゴム栓等で試験管に封をし, 冷暗所に保存しておけば再利用できます。 - 27 - 【実験4】 ■ 水とエタノールの混合液からエタノールを取り出す 実験のねらい 水とエタノールの混合液を蒸留し,エタノールを取り出す実験を行うことで,沸点の違いを利用 して液体を分離できることを見いだします。 混合液に沸騰 注 ガラス管の先は,蒸 意 火を消す手順 留液に触れないよう 石を入れます。 ① 蒸留液側のガラス管を試験管やビーカ に,試験管の底から3 ーの中から出し,試験管内の蒸留液が逆 ㎝くらいの位置に設定 流しないようにします。 します。 ② 試験管の ガスバーナーを加熱している試験管か ら離して火を消します。 底を弱火で 注 意 加熱します。 底から 水は 300 ㎝3のビー 約 2 cm カーに8分目程度入 に印を付 れておきます。 ける。 〈実験の手順〉 ① 混合液を弱火で加熱します。 ② 蒸留液が付けた印のところまで集まったら,試験管を取り替えて3本 の試験管に順に集めていきます。 ③ 3本目の試験管に蒸留液が集まったら,上の手順で火を消します。 ④ 蒸留液について「におい(図1参照)」,「皮膚に付けたときの感じ」, 図1 「脱脂綿に付け,火を付けたときの様子」を調べます。 ■ においのかぎ方 実験の留意点 ○ ガスバーナーの火力(弱火)とやけどに注意させます。火が強過ぎると混合液が激しく沸騰し, 液がそのままガラス管を伝って移動してしまうことがあります。 ○ 水とエタノールの混合液を加熱するときは,必ず沸騰石を入れ突沸を防ぎます。 ○ 上の「火を消す手順」に沿って火を消し,集めた蒸留液やビーカーの中の水の逆流を防ぎます。 ○ 蒸留液を集める試験管(口径 15mm)には,底から約2㎝のところに印を付けさせておきます。 ○ 蒸留液は,3本の試験管に順に集めていきます。 ○ 試験管を変えるときはガラス管やゴム管がかなり熱くなっているので,軍手をはめるなどして やけどしないように注意しつつ,素早く試験管の交換を行わせます。また,蒸気も高温なので触 れないように気を付けさせます。 ○ 片付けは,加熱した試験管が十分冷めてから行わせます。 【参考】 エタノールを含む液体の蒸留 ワインやみりんなどを用いて蒸留実験を行うと,無色透明の蒸留液が得られます。アルコール含 有量が 14%程度なので,試験管を用いて 10 ㎝3の液体を蒸留すると,理論上は 1.4 ㎝3のエタノー ルが得られることになります。蒸留後には,べたつきがある物質が残ります。これは,糖分が多い ので粘性が高く,焦げ付きやすいので,蒸留液を試験管3本(6㎝3)に採ったら,すぐに実験を終え るようにします。 - 28 -