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不動産特定共同事業法

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不動産特定共同事業法
特集 改正 不動産特定共同事業法 改正 投資信託及び投資法人に関する法律
Interview ❶
不動産特定共同事業法
石川 卓弥 氏
国土交通省 土地・建設産業局 不動産市場整備課長
※所属先・役職はインタビュー時点のものです。
7 月 1 日より、一般財団法人不動産適正取引推進機構 調査研究部長
―不動産特定共同事業法の改正法 、成立おめでと
のりでしたが理解者の努力の賜だと思います。
うございます。本日は本改正に至るまでの経緯や
私は 2008 年 7月に 不 動産 業 課 不 動産 投 資 市
ご苦労された点をおうかがいするとともに 、法を
場整備室長に着任しました。直前は金融庁勤務
広く周知し活用を促進していくにあたり今後どの
でしたが不動産投資スキームには注目していまし
ようなことをされる予定なのか、政省令はどのよ
た。不特法は、運用資産が不動産に限られている
うな点に着眼して整備されていくのかなど、お話
ため 、国土交通省が主務官庁、金融庁一部共管と
をお聞かせいただきたいと思います。
いう法律で、もっと使ってほしいと考えていました。
まず、法改正にいたる背景についてお聞かせ下さ
い。
しかし J リートや TMK 等のスキームに比べ利用
が伸びないことから、不特法には使い難い部分が
あるかもしれない 、というのが当時の印象です。
不動産特定共同事業法の改正法案は本年 6月17
不特法を所管する不動産投資市場整備室長に
日に可決成立、6月21日に公布されました。長い道
就いてからは、サブプライムローン問題 、リーマン・
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Special
ショックと続き、J リート市場は低迷 、投資法人の
び国会のスケジュールが窮屈になり、結果としてそ
破綻が生じ 、J リート市場の再編が最重要課題とな
の通常国会は通らず、2012 年臨時国会で継続審査
りました。J リートは優良な不動産を長期保有し収
となるも解散により廃案になりました。
益を多くの投資家に分配する仕組みで、高い公益
この法律は、非耐震建築物の再生や遊休地の活
性をもった投資商品です。何としても守る必要があ
用に必要な資金を集めるのに、投資家から出資金
りました。2008 年12月に負ののれんを配当可能利
を募り( 銀行融資も併せ)、オーナーから老朽化し
益から控除する合併促進税制を打ち出し 、2010 年
た不動産を買い取り再生して市場に出す、民間資金
には J リートの合併が始まります。
を活用して不動産を動かそうというものです。大震
災後の社会下で老朽化不動産の再生と資産デフレ
幾度もの曲折を経て
2009 年に入りようやく不特法に取りかかれる状
態となりましたが 、同年 9月に政権交代がありまし
からの脱却が喫緊の課題であり、太田国交大臣も
法案の趣旨を良くご理解して下さり、2013 年 3月に
再度閣議決定後通常国会へ提出され 、ようやく成
立しました。
た。交代後就任された前原国交大臣は人口減少下
における好立地の不動産再生に熱心で、総合政策
※1:社会資本整備審議会答申( 平成19 年 5月)を踏
局( 当時)から不特法改正に関する資料を上げる
まえ 、我が国不動産投資市場の健全な発展に向
と、その必要性を理解され検討が再び本格化しま
け、有識者 、市場関係者及び行政が一体となっ
した。また、
「 投資家に信頼される不動産投資市
て検討を行うため 、平成19年9月に設置された。
場確立フォーラム」※1 でも議論されました。
当フォーラムにて、不動産特定共同事業におけ
4 種類の不動産証券化スキームにはそれぞれ長
る倒産隔離スキームの必要性が議論された。
所短所があります。そのうちの一つである不動産
特定共同事業は、他のスキームと異なり対象が不
動産に限られています。規制は柔軟で老朽化不動
産を取得し再生させる場合や、隣接ビルを追加取
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法改正に伴う苦労
金融庁所属時代に「 電子記録債権法 」をつくっ
得して一体開発する場合にもっと活用されてよい 、
た経験など立法の経験は度々ありましたが 、今回
倒産隔離の仕組みを入れて活用を促進するべきと
は初めて担当課長として法律改正に臨み責任ある
先のフォーラムから報告をいただきました。
立場に伴う苦労を実感しました。法律をつくる、あ
法律を一部共管する金融庁と調整を進めたもの
るいは改正するのは大変な作業です。さまざまな
の、政局の混乱などもあり2011年の通常国会への
準備や閣議決定に向けた法制局の審査があり、国
法案提出は見送られました。そして 2011年 3月に
会提出後は幹部総出で各政党への説明など多くの
東北地方太平洋沖地震が発生。2011年秋の臨時
プロセスが伴います。筋が良いと思われる法案で
国会は東日本大震災関連一色となります。しかし
も多くの関係者と調整し納得してもらうのは大変で
それにより建築物の耐震性確保に光が当たり、社
す。特に不動産証券化は、リーマン・ショック前の
会的気運が醸成されることとなりました。
過熱感を引き起こしたとの声もあり、理解者ばかり
改めて 2012 年通常国会提出を目指し 、金融庁と
ではありません。国土交通省は住宅から海賊対策
細かい規制のあり方などを詰め 、2012 年2月末に
まで幅広く所管しますが 、内閣法制局の審査を経
閣議決定、通常国会に提出されました。しかし再
て閣議に付される法案数は限られます。今国会に
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.14
特集 改正 不動産特定共同事業法 改正 投資信託及び投資法人に関する法律
おける国土交通省の内閣提出法案は8本でしたが 、
年施行されました。この法律の成り立ちは理解でき
「 国土交通委員会は提出法案が多い」と指摘され
ますが 、当時は「 倒産隔離 」や「 SPC 」の概念が
ました。そのような状況でしたが、ARES の協力も
ありませんでした。90 年代半ばに日本の不動産投
得て関係各所に粘り強く必要性を訴えたことが奏
資に乗り出した外資系企業などから「 デベロッパー
功したと思います。
に直接預けるのでは大きなお金は引っ張れない」
と、欧米の常識である倒産隔離 SPC 、つまり
「器」
―改めて、今回の法改正のポイントをお話いただけ
ますか。
の会社の必要性が叫ばれるようになります。
「 器」
の会社は投資対象の不動産の保有に特化するよう
に定款で縛る、出資は「 器」の会社にする、運用は
倒産隔離スキームの導入が 、今回の改正の“ キ
モ”です。
投資運用会社に委託するという具合です。しかし 、
不特法上は、たとえ「 器」に過ぎない会社であって
従来の不動産特定共同事業は、不動産所有者
も、投資家から資金を集め 、不動産を保有する以
( デベロッパー)が投資家と個別に契約を結んで出
上、許可が必要となりコスト割れしてしまうというこ
資してもらい 、出資額に応じて配当するスキームで
とで、不特法の規制を回避する便法として不動産
すが 、不特法の施行前には財務体質がぜい弱なデ
の信託受益権化が進みました。信託受益権であれ
ベロッパーが経営破綻し 、投資家が投資した不動
ば不動産ではないので、仮に SPC が取得しても、
産が債権者の手に渡り、投資家被害が発生する事
不特法の適用はありません。当時は金商法もまだ
態も生じました。このスキームで不動産運用するに
なく、特段規制がなかったため 、GK-TK スキーム
は規制が必要ということで、デベロッパー規制法と
が急速に伸びました。
してできた経緯があります。
不動産特定共同事業法は1994 年に成立し 、95
その後改正 SPC 法( 資産流動化法 )が 2000 年
に施行、同年に投信法も改正され 、2006 年には金
融商品取引法の成立に伴い GK-TK は規制下に置
かれます。J リート、資産流動化法に基づくTMK、
GK-TK の3 つのスキームは全て「 器」の会社があ
ります。J リートには「 投資法人 」、資産流動化法
は「 特定目的会社 」、GK-TK には「 合同会社 」が
相当します。
不動産特定共同事業ではデベロッパー本体がお
金を集めて不動産を買うので「器」ではありません。
デベロッパーは、難易度の高い不動産も保有し 、リ
ゾート開発もします。特にプロ投資家からすると、
投資の最低条件である「 器」の不在により利用が
進みませんでした。
そこで、今回の改正法において、不動産の取得・
保有しかしないことを定款に記し 、なおかつ不動
聞き手
麻生 健
不動産証券化協会 事務局次長・業務部長
産の運用や販売勧誘を3 号事業者や4 号事業者と
いう不動産特定事業者に委託をするのであれば、
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「 器」に過ぎない事業者、つまり SPC は、これまで
2,574 億ドル( 2013 年 3月末 時点 )のうち211億ド
のように許可を取る必要はなく届出でよいとしてい
ル( 約10%)を不動産投資に振り向けており、不
ます。本来許可がいる事業者を一定の要件の下で
動 産 ポートフォリオの中 身には「 Value Add と
届出で済ませるのだから「 特例事業者」というわけ
Opportunistic 」が含まれます。既存のビルを高値
です。これにより、不特法においても、不動産以外
で買い取っても賃料は急激に上昇しない 、バリュー
のリスクから隔離され投資しやすい「 器」が認めら
アップ物件に手を入れれば高いリターンを得られる
れたというのが重要なポイントだと思います。
可能性もあります。カルパースはコア投資とバリュー
アップ投資の両方に目配せしており、これが不動産
バリューアップ投資の意義
投資のバランスだと私は考えます。翻って日本はコ
ア投資ばかりです。背景にはバリューアップ投資
“ 使いやすい他のスキームを使えばいい”と言う
の仕組みがないためで、
“ 使いやすいスキームだけ
こともできます。しかし J リートは比較的ピカピカの
使ってください”では無責任であり、国交省にもそ
不動産を対象とします。GK-TK は物件の売り手が
の責任があると思っています。今回の法改正によ
前もって信託受益権にしておく必要がありますが 、
り、
「 届出制 」で器となる会社設立を認め 、資金が
地方の物件や老朽化した物件 、屋外広告がサイズ
集めやすくなります。少しでも多くの民間資金を我
オーバーなど難ある物件は信託しづらいものが多
が国不動産のバリューアップや再生・開発に振り向
いし 、売り手が信託受益権化を拒否する場合もあ
けたいと考えています。
ります。TMK は税の特典があるものの、資産流動
地方の駅前には老朽化が進んだビルや商業施設
化計画を細かく記さなければならないなど縛りが
が多くあります。地域のモニュメントである駅前の
あり、ある程度規模の大きいものでないと使えませ
建物が古いまま放置されるのは、地域の元気を削
ん。
ぐことにもなります。不動産の再生が促進されれ
リーマン・ショック前の2007年だけで約 8.8 兆円
ば地域経済の活性化にも資するでしょう。
が不動産投資市場に流れ込んでいました。日本は
政治的社会的に安定し 、法制度も充実し 、賃料は
―今回の法改正ならびに今後の政省令の議論の中
安定しています。世界の投資家がある程度の不動
で、どのように法制の全体像を想定されているの
産ポーションを持ちたいと思う国の一つです。その
でしょうか。
中で、不動産特定共同事業法は長い間改正できず、
“ 不特法は使い難い 、使いやすいスキームを使って
ください”ととらえられても仕方ない状態が続き、
同事業の許可類型を追加しています。これまでは
結果的に投資対象は耐震性に問題のない優良なビ
自らお金を集めて不動産を運用するデベロッパー
ルや TMK になじむ大規模開発等に限られてしま
やゼネコンの「 1号」と販売勧誘を行う「 2 号」のみ
いました。優良不動産への投資も結構なことです
でした。
が 、数少ない都心の優良不動産に投資が集中する
新たに創設される「 3 号」事業は、特例事業者か
ことの副作用として生じた値動きが「 プチバブル」
らの委託を受けて不動産投資に係る業務を行う事
と言われることもあったのだと思います。
業 、つまり運用業務です。
「 4 号」事業は、特例事
ところで、CalPERS
( カルパース:カリフォルニ
ア州職員退 職 年金 基 金 )は全 ポートフォリオ約
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特例事業者制度の創設に合わせ、不動産特定共
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.14
業者が当事者である不特契約の締結の代理・媒介
を行う事業 、つまり販売勧誘業務です。
特集 改正 不動産特定共同事業法 改正 投資信託及び投資法人に関する法律
1号・2 号は自己の信用力でお金を集めるため 、大
投資法人が不動産を買う場合に、登録免許税や不
企業でないとなかなか難しく、仮に1号を取得して
動産取得税の軽減が措置されています。冒頭触れ
も「 あなたの会社は知らない 、資金は預けられな
た J リートの公益性に鑑みても、もっと伸ばすべき
い」となり得ます。しかし 3 号、4 号では、投資家に
分野であるため 、制度活用の促進のために税の特
販売勧誘して資金を集め 、不動産を保有する特例
例があるのです。
事業者から不動産運用を受託することとなり、準大
J リートと同様に「 器」の仕組みが認められた
手・中堅クラスでも十分に利用可能と見込んでいま
改 正不動産特定共同事 業法では、特 例事 業者
す。政省令等の詳細はこれから整備しますが 、資
( SPC )が不動産を買いますが 、その際には、登録
本金要件は現在の1号事業者のように1億円まで求
免許税・不動産取得税がかかります。遊休地や老
める必要はなく、ハードルを下げてより多くのやる
朽化不動産を購入しバリューアップして売却するこ
気のある事業者に門戸を開きたいと思っています。
とには高い公益性が認められます。この趣旨の下、
一方で許可業者の監督を緩めるつもりはありませ
平成 25 年度の税制改正で、特例事業者に税の特
ん。宅建業免許をきちんと取る、ARES マスター
例制度を設けることになりました( 優良ビルや更地
等の資格者を業務管理者に置くなど、事業者には
を買って転売する場合は非適用。)。この趣旨につ
しっかりとした態勢を求めます。
いてもはっきりとガイドラインに記載し 、適切な利用
デベロッパーは地方に行けばいくほど規模が小
さくなりますが 、地元の不動産を最もよく知りアイデ
を促していく予定です。
情報提供と支援
アがあります。彼らに欠けているのが信用力なら
先週末の沖縄を皮切りに、全国 10ブロックで説
ば、
「 万が一の場合にも不動産は SPC が保有して
明会を開催します。耐震建替事業や環境対応事業
いるので安心です」と、地元の投資家や金融機関
は地域活性化に役立ち、耐震化は住む人や働く人
にそのアイデアを広めていけるようにしたいです。
の安心につながります。証券化スキームを利用して
多数の投資家から出資を募り、金融機関からの融
―今回 、衆議院・参議院の各国土交通委員会で附帯
決議
資も併せて先立つ資金をつくり、バリューアップに
がなされ 、3 つ事項が挙がっています。今
つなげる事業は公益性が高い。ただ、再生事業は
後の制度活用促進に向けて考えられていること
リスクも高く資金が集まり難い。制度導入をしやす
をお聞かせください。
くするため 、平成24年度の補正予算で措置した
「耐
※2
附帯決議は、国会での審査の過程で議論になっ
震環境対応促進ファンド」の出資対象に、改正不
特法の SPC を追加しました。不動産再生に関して
た点を端的に要約しており、大変重いものです。
最も柔軟で使いやすい制度であることは間違いあ
ガイドライン
りません。こうした証券化の仕組みを使う再生事
ガイドラインは、これから新しい制度を利用しよ
業は今後増えると考えます。ファンドの資金を入れ
うとする民間事業者や投資家等の方々に、実務的
て呼び水にし 、成功例がいくつも出てくれば最高の
な許可基準 、監督指針などを具体的に示し 、安心
PR になるでしょう。
感を与えようとするもので、現在、政省令改正と合
人材育成
わせ作成しているところです。なお 、今回の改正
東京や大阪には金融機関も多く、複雑な証券化
で関係者から高い評価をいただいたのが 、税の特
事業のノウハウや専門的知識を有するプロは大勢い
例です。例えば、J リートにも税の特例があります。
ます。そのような人材が地方都市では足りているの
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Special
か? と国会議員の方々も懸念されていました。調
めること。
べてみると、地方でも証券化を利用して再生につな
②地域の金融機関等が積極的に事業参加し 、有効
げたケースも数多くあります。地場の金融機関や東
な不動産ストックの形成に資するよう、制度に
京の再生ファンドが事業の手伝いをすることに加
ついて周知するとともに 、地域の不動産投資市
え、現地にも不動産証券化手法に精通した人材を
場を担う専門知識を持った人材の育成に努める
増やしていく必要があります。ARES にも協力して
こと。
頂き、不断の努力を欠かさないようにします。
監督強化
③投資家が 、特例事業者の倒産リスク等の特例事
業に係るリスクを過 度に負うこととならないよ
監督強化は当然の流れです。AIJ や安愚楽牧場
う、金融庁等の関係省庁と連携し 、不動産特定
などの問題が起こり、ファンドは大丈夫か?と社会
共同事業者及び特例事業者に対する監督に万全
から一部不信感を持たれています。特例事業者は
を期すこと。
届出制となるので、3 号、4 号事業者の審査は慎重
にします。この事業では投資家をプロに限るため
―半年後の施行ということで、政省令等の整備を短
大きな事故にはつながり難いとは思いますが 、ひと
期間で進められることと認識しています。施行に
たび不祥事が生じれば本事業に限らず不動産投
向けた課題等があれば挙げていただければと思
資市場全体に対する信頼を失墜しかねません。金
います。
融庁とも密接に連携し 、人員を当てて監督検査は
しっかり行っていきます。
まず政令や省令をつくり、パブリックコメントに
付す必要があります。また、内部では許可申請の
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※ 2:付帯決議の概要
審査基準を策定し 、先述のガイドラインもつくらな
①建築物等の再生事業に有効に活用されるよう、
ければならない。一連の業務を半年で行うわけで
ガイドラインの作成等の情報提供に努めるとと
相当厳しい状況ですが 、経済対策との趣旨もある
もに 、民間投資の拡大に向けた支援の実施に努
ため早く施行するのが国会の意向であり政府の考
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.14
特集 改正 不動産特定共同事業法 改正 投資信託及び投資法人に関する法律
えでもあります。
率を使って再生すれば、テナントも付き易く、事業
政省令の内容は多岐にわたりますが 、一番のポ
として成立し易いのはわかります。しかし隣地との
イントはプロ投資家の範囲です。現行の不動産特
境界紛争があり買い取りが進まない 、土壌汚染が
定共同事業法の中にもプロ投資家という概念はあ
見つかるなど隠れたリスクが存在する場合もままあ
り、相手がプロ投資家であれば一部説明を省略で
ります。目利きができない個人投資家には、あくま
きる、建築確認 、開発許可前の広告禁止はしない
でも信用力のあるデベロッパーに投資をする現行の
など、規制緩和は平成 9 年の改正でされています。
スキームや J リートが適しており、逆に SPC スキー
プロ投資家の範囲は省令に定義されています
ムはプロ投資家に制限しています。ただ、プロ投資
が 、生損保や信託銀行、資本金 5 億円以上の企業
家の定義が狭いのは問題ですし 、
「 投資家に信頼
など、金商法上のプロ投資家の範囲に比べかなり
される不動産投資市場確立フォーラム」でも同様の
狭いと感じています。例えば投資ファンドが不特事
提言がありました。最終的にはパブコメに付され適
業に投資をする場合も不特法上はプロ投資家と認
当な範囲が判断されるでしょう。投資する意欲のあ
めないというのは違和感があります。金商法では
る投資家が投資できない規制は望ましくなく、でき
投資ファンド、一部の年金基金、有価証券10 億円
るだけ範囲を広げていきたいと考えます。
以上残高がある一般法人、個人富裕層はプロ投資
家の扱いとなります。
改正法では、SPC スキームを使う場合に勧誘し
ていい投資家はプロに限るとしています。例えば
―ARES も 、より良い制度となるよう尽力したいと
思います。本日は貴重なお話をありがとうござい
ました。
駅前の一等地や観光地の商業施設などを空き容積
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Special
Appendix
不動産特定共同事業法の一部を
改正する法律について
国土交通省 土地・建設産業局 不動産市場整備課
不動産投資市場整備室
1.はじめに
不動産特定共同事業法( 以下「 不特法 」といいます。)は 、投資家から出資を受けて不動産取
引を行い 、その収益を投資家に分配するいわゆる不動産証券化事業を規制する法律で 、平成 7
年から施行されております。今般 、不動産特定共同事業法の一部を改正する法律( 平成 25 年法
律第 56 号。以下「 改正法 」といいます。)が 、本年 6 月 17 日に可決成立し 、6 月 21 日に公布され
ました注 1。本稿では 、改正法の目的及び具体的な内容についてご紹介いたします。
2.改正法の目的及び概要
我が国には 、約 2,500 兆円に上る膨大な不動産が存在していますが 、成熟社会を迎える中で老
朽化・遊休化した不動産が増加しています。特に 、駅前や中心市街地などの好立地であっても
老朽化・遊休化した不動産が多数存在していることから 、これらの不動産に民間資金を導入し
て改修 、建替え等を推進することにより 、地域経済の活性化や資産デフレからの脱却を図るこ
とが期待されています。
不動産を再生させるための改修 、建替え等には多額の資金が必要となるため 、投資家からの
出資を受けて不動産を再生させ 、再生した不動産の運用による収益の分配を行う不動産証券化
の活用が極めて有効です。しかしながら 、現行の不特法では 、事業者の行っている他の事業の
影響を受ける( 倒産隔離がされていない )ため 、投資家が出資をためらうという問題がありま
した。
改正法においては 、不特法の新たなスキームとして 、専ら不動産特定事業を行う特別目的会
社( いわゆる SPC )を設置し 、投資家はこの SPC に出資することによって 、他の事業の影響を
排除する( 倒産隔離する )ことができる仕組みが導入されました。この SPC については不特法
の許可の代わりに届出のみで不動産特定事業を行うことができることとされていますが 、投資
家保護の観点から 、SPC は不動産取引や投資家の勧誘に係る業務を 、許可を受けた不動産特定
共同事業者に委託しなければならないこととされています。
新スキームを活用することで 、これまで自社の信用力だけでは資金調達が難しい場合も多
かった地方の中小デベロッパーや建設業者が行う不動産の再生事業等に対しても 、投資家も出
資しやすい環境が整うこととなり 、地方の商工会 、地方の金融機関 、地方公共団体等も事業に
参加いただき 、地方の不動産の再生が進むことも期待されています。
注1
施行は、改正法の公布の日から起算して 6 月を超えない範囲内において政令で定める日からとなります。
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ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.14
特集 改正 不動産特定共同事業法 改正 投資信託及び投資法人に関する法律
3.具体的な内容
倒産隔離された SPC による不動産特定共同事業の実施を可能とするため 、以下のような措置
が講じられています。
( 1 )SPC による不動産特定共同事業の要件
現行の不特法では不動産特定共同事業の許可を受けなければ不動産特定共同事業を行えない
ものの 、改正法では専ら不動産特定共同事業を行うことを目的とする SPC が 、許可を受けた不
動産特定共同事業者に不動産取引や投資家の勧誘に係る業務を委託するとともに 、SPC に投資
できるのはプロ投資家に限る等の一定の要件を満たす場合には 、届出を行うことで不動産特定
共同事業を行えるものとされています。
プロ投資家の範囲については 、省令において規定されることとなりますが 、現行の不特法に
おけるプロ投資家は銀行 、信託会社 、保険会社 、資本金が 5 億円以上の株式会社等と範囲が限定
されているため 、今回の改正を機に 、より広く民間資金を呼び込むという観点から 、プロ投資家
の範囲を広げることを検討しております。
( 2 )SPC から業務の委託を受ける不動産特定共同事業者への行為規制等
SPC から業務の委託を受ける不動産特定共同事業者には 、従前通りの許可制が堅持されてい
るため 、現行の不特法と同等の規制が課されることになります。また 、委託を受けて事業を行
うという仕組みにおける投資家保護の観点から 、自己保有の不動産を不当に高い価格で SPC に
売却するような自己取引等の禁止注 2 や 、委託を受けた業務の全部を第三者に委託する行為の禁
止等の規制が追加されています。
(3 )
税の特例措置
改正法とあわせて 、税の特例措置が設けられ 、SPC が一定の築年数の建築物の改修 、建替え
等を目的として不動産を取得する場合 、登録免許税においては 、移転登記が本則税率の 1,000 分
の 20 から 1,000 の 13 へ 、保存登記も本則税率の 1,000 分の 4 から 1,000 分の 3 へと軽減され 、また 、
不動産取得税についても 、課税標準の 2 分の 1 が控除されることとなります 注 3。
4.おわりに
今後 、改正法に対応する政省令 、法令等の解釈・運用を示すガイドラインを整備することを予
定しており 、ARES においては 、改正法に対応したモデル約款も作成される予定です。
また 、不動産特定共同事業のより一層の推進を図るために 、不動産特定共同事業に関する
ケーススタディを実施すること等により 、先導的なモデルケースを示すとともに 、不動産証券
化の企画 、運営ができる人材の発掘 、育成も行っていくことが必要であると考えています。
注2
自己取引等の禁止については、投資家の保護に欠けるおそれのない場合について例外を認めることとし、具体的な例外に
ついては省令で規定されることになります。
注3
具体的な要件は、租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(平成 25 年政令 169 号)及び地方税法施行令の一部を
改正する政令(平成 25 年政令第 179 号)をご参照ください。
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