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平 成 25 年 度 山 梨 県 医 師 会 優 秀 賞 受 賞 記 念
vi 平 成 25 年 度 山 梨 県 医 師 会 優 秀 賞 受 賞 記 念 講 演 要 旨 耳下腺上皮筋上皮癌の一例:免疫組織学的検討 五十嵐 賢 山梨大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 上皮筋上皮癌は稀な唾液腺腫瘍で,組織学的 に分葉状,多結節性に拡がり,不完全な線維性 に内側は上皮細胞,外側は淡明な筋上皮細胞の 被膜構造であった。二層性が明らかな小腺管を 二層腺管構造が特徴である。低悪性度であるが, 形成し,内腔の上皮成分は少量の好酸性細胞質 他の唾液腺腫瘍と組織学的に重複する variant を有していた。また淡明な細胞質をもつ,多形 の報告があり,鑑別診断や治療に際し臨床的 ∼紡錘形の筋上皮成分を認め,典型的な上皮筋 な問題となる可能性がある。今回,典型的な 上皮癌であった。脈管浸潤はなかったが,神経 上皮筋上皮癌の一例に対し免疫組織学的検討を 周囲への浸潤と脂肪組織への浸潤が一部に認め 行った。 られた。 症例は 87 歳の女性。4 か月来の左耳下部の 免疫組織学的検査で,腺管内側の上皮細胞は, しこりを主訴に前医を受診した。FNA で class2 AE1/AE3(pan-cytokeratin),CAM5.2,EMA と良性腫瘍が考えられたが,CT で周囲の組織 などが陽性。外側の筋上皮細胞は p63,SMA, への浸潤が疑われ生検を施行,耳下腺の上皮 vimentin が陽性であった。S-100 は上皮,筋上 筋上皮癌の診断となり加療目的に当科紹介と 皮ともに陽性。Ki-67 は腺管内腔の上皮細胞の なった。初診時,顔面神経麻痺はなく頸部リン 1%で,外側の筋上皮細胞の 3%で陽性であっ パ節は触知せず。MRI で左耳下腺内に最大径 た。 ま た 上 皮 細 胞 は p53,Her-2/neu 陰 性 で 5 cm,T1 強調像で均一な低信号,T2 強調像で Bcl-2 でわずかに陽性,CEA は陽性で,筋上皮 充実成分と嚢胞成分から構成される不均一な信 細胞は p53,Bcl-2 陰性で Her-2/neu と CEA で 号で,造影効果のある腫瘤を認めた。左耳下腺 わずかに陽性であった。 全摘術を施行,腫瘍は境界明瞭で多発する結節 典型的な上皮筋上皮癌の一例であったが,そ を認め嚢胞成分を伴っていた。 の診断及び治療における免疫組織学的解析の有 病理組織検査で,腫瘍は大型の主結節の周囲 用性について若干の考察を加えて報告した。