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脳の性分化機構の解明
生命科学部門 生体制御学領域 脳の性分化機構の解明 准教授 塚原伸治 (TSUKAHARA Shinji) e-mail: [email protected] URL: http://endocrine.seitai.saitama-u.ac.jp/ 参 考 成 果 概 要 ● 動物モデルを⽤いて、脳の内部構造がどのようにして雌雄で違っているの 脳構造の性差は、発達段階でアポトーシスと呼ばれる現象によって 死んでゆく細胞の数が雌雄で違うために起こる。 か、さらに、脳の性決定に性ステロイドホルモンがどのように作⽤するの 雄 ラッ ト より も 雌ラット で 小さくな る SDN-POA (赤矢印の部分)では、 雌ラットにおいてより多くの細胞がカ スパーゼ-3* の活性化が起こって死 んでいる(黒い細胞) かを明らかにした。 ● 研究成果は、男⼥(雌雄)の脳の違い、性同⼀性、性指向性(異性愛、同 性愛)などの理解に役⽴つばかりでなく、様々な原因*による脳の性分化 *カスパーゼ-3: アポトーシス細胞死を引き起こす実行分子 異常の原因究明に繋がる。 左図: 発達ラット脳の内部写真 赤矢印の部分は、 SDN-POA と呼ばれる領域 *化学物質の内分泌かく乱作⽤や先天性疾患など 死細胞数の性差は、アポトーシス関連分子の発現をホルモンが調節することで起こる。 説 明 発達ラットの SDN-POA では、Bcl-2 と Bax*の発現に性差があり、性ステ ロイドホルモンを投与した雌ラットで は雄型の発現パターンに変化する ● 脳の性別はホルモンによって決まる ♀ 未分化な脳は遺伝子型 (XX と XY)に関係なく、 発達期にホルモンが 作用するか否かによって 雄型にも雌型にもなり得る *Bcl-2 と Bax: カスパーゼ-3 の活性を調節するアポトーシ ス関連分子 Bcl-2 は抑制作用、Bax は促進作用をもつ 雌型脳 ♂ 雄型脳 アンドロゲン (男性ホルモン) ホルモンが作用しない 雌ラットの SDN-POA ホルモンが作用する 雄ラットの SDN-POA ● 脳の中には雌雄(男⼥)で違った形をした部分がある 赤矢印の部分は、 雄と雌で違っている ラットの脳 雌ラットの方が雄ラット よりも小さい ラットだけでなく、 ヒトにもある 脳の内部構造の性差を引き起こす 細胞死のメカニズムと 成熟ラット脳の内部写真: 赤矢印の部分は、SDN-POA と呼ばれる領域 性ステロイドホルモンの作用