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慢性疾患をみる 脳神経外科医の戯言 慢性疾患をみる 脳神経外科医の

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慢性疾患をみる 脳神経外科医の戯言 慢性疾患をみる 脳神経外科医の
2006/12/14 thu.
第三種郵便物認可
05
慢性疾患をみる
脳神経外科医の戯言
その1
脳外科医の守備範囲
脳神経外科という言葉からどういう仕事を皆さんは
想像するでしょう。
“難しい仕事”
“大変な仕事”
“細
かい仕事”
“脳外科医は器用だ”などでしょうか。し
かしそれは仕事の内容は脳外科の仕事の一部でしかあ
りません。
脳外科医の扱うべき疾患は多彩です。何時間もかか
る高度な手術を必要とする脳腫瘍、一刻を争う交通
事故の患者の緊急手術、今まで何も変わらずに生活し
ていた人に襲いかかる一瞬にして命を奪うこともある
脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)等々。こ
れらの共通点はすでに病気になった人・すでに受負傷
した人を治療するという点です。
健康な生活を送るには、病気やけがを治すことも一
つの方法であるのは言うまでもありません。しかし、
それには回復できないかもしれない可能性があるとい
う高いリスクが伴います。私はそういう場面に数多く
遭遇してきました。それならば、その高いリスクを下
げるためにはどうすればよいのでしょうか。それは病
気にならないように予防することです。しかしこれに
関しては、喉元過ぎないと熱さがわからないのか、予
防の重要性を認識できずにいるというのが現状でしょ
う。それは一般の方だけではなく脳外科医にもいえる
ことです。我々脳神経外科医の多く、特に若い医者は
病気の患者さんの治療には興味があり手術の腕を磨こ
うと努力をします。しかし、予防にはほとんど興味を
持ちません。尤も私もそうであるように手を動かした
いから外科医になったので、当然のことではあります
が。
車は故障したら修理します。車が故障する前に定期
的に整備すれば故障する頻度は下がります。すなわち
予防です。脳ドックは日本で生まれた独自の予防医学
です。生活習慣病が脳卒中の危険因子である以上、
脳外科医は生活習慣病に代表される慢性疾患の管理
も重要な仕事の一つです。中でも栃木県は長年の間脳
卒中死亡率ワーストワンという不名誉な記録を打ち立
ててきた訳で、ことさら予防医学の重要性が問われる
でしょう。
医療の分業
餅は餅屋に任せた方がおいしい餅ができるのは周知
のことです。医療も同様で受診する診療科をわけ、専
門性の高い医師に診察してもらい、的確な診断と治療
を行うことが効率の良い医療へと繋がるでしょう。同
じ診療科の中ではどうでしょう?重症度によってかか
る施設をわけることがより、満足のいく医療を受けら
医学博士 星 道生
れるはずです。が、多くの人は大きな病院は診断能力
が高く、治療も優れていると誤解しています。東京に
行かなくては手に入れられない物は確かにたくさんあ
りますが、隣のスーパーにある日常品を求めて東京に
行く人はまずいないでしょう。重症で多くの医師や高
度な設備が必要な患者はそれを受けられる病院に行く
べきですが、軽症な場合や慢性疾患の場合は小回りの
きく近くの診療所で十分であるだけではなく、より密
接な丁寧な医療が受けられ、満足できる場合の方が多
いのではないでしょうか。
ではなぜ、大病院志向が変わらないのでしょうか。
患者さんは“もしもの時には?”と考えるからです。
もしもの時の答えは、
“もしもの時でも任せて下さい”
という安心を与えることでのみ解決できると信じてい
ます。すなわち我々クリニックの医者は患者さんにこ
ういった安心感を与える努力をする必要があると思っ
ています。
ハードな難易度の高い手術をする脳外科医がいるこ
とが必要であるのと同様に、生活習慣病の管理を丹念
にする脳外科医がいてもおかしくないでしょう。両者
の目的は同じなのです。ただ、健康をどの段階で保と
うとするかの違いがあるだけなのです。
私自身がいわゆる世間で思われている脳神経外科医
としてやってきたことに未練がないといえば嘘になり
ます。今でもバリバリと最前線で手術をして自分の手
で患者さんを治療したいという気持ちは変わりませ
ん。しかし、すべてを満遍なくこなすことはやはり不
可能であり分業が必要と実感しました。外科医である
ので手術をあきらめることはできず、基幹病院で手術
を行えることの確約の上で、それならばと、今回の脳
神経外科だけに特化した、充実した設備のある無床診
療所を立ち上げました。前線にいた(今からもいたい
と思っていますが)脳外科医として、また慢性疾患を
扱う脳外科医として両方の眼から何かをお伝えできれ
ばと思っております。
○著者プロフィール○
星脳神経外科 院長
駒場東邦高校・慶應義塾大学医学部卒
日本脳神経外科学会 専門医
慶應義塾大学医学部脳神経外科医学博士
慶應義塾大学病院研修医を経て
12年7月 栃木県済生会宇都宮病院脳神経外科出向(副医長)
17年4月 栃木県済生会宇都宮病院脳神経外科医長に就任。
18年11月 星脳神経外科開院。
URL http://www.geocities.jp/hoshinogeka
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