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メディエータ装飾プライマーを用いたDNA好感度センシングシステムの開発

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メディエータ装飾プライマーを用いたDNA好感度センシングシステムの開発
メディエータ修飾プライマーを用いた
高感度センシングシステムの開発
研究概要
近年、有害微生物による健康被害
の増加が問題となっており、早期の検出が重要視されて
いる。微生物の検出に培養法や免疫法が一般的であるが、
PCR products
時間を要すること、感度が低いこと、ごく一部の微生物し
か検知できないことなど多くの問題がある。本研究グルー
+
酵
プは今までに有害微生物のDNAレベルでの検出方法とし
F
F
素
てメディエータであるフェロセン修飾プライマーを用いて遺
eI
eI
II
I
基質 e 生成物
伝子増幅(PCR)を行い、カーボンナノチューブを電極素材
伝子増幅(PCR)を行い、カ
ボンナノチュ ブを電極素材
の一部として用いることで従来の約50倍の高感度でのフェ
ロセン誘導体の検出を可能とした(図1)。そこで今回の研
Electrode
究では、PCR過程を省き細胞1個から10個レベルでのDN
Aを検出できることを最終的な目的として、より高感度で安
図1 フェロセン検出型DNAセンサ
定なカーボンナノチューブ(NWCNT)の交互積層法による
電極修飾を検討することで高感度DNA検出系の構築を目
指した。
研究成果
350
300
Cu
urrent (nA)
250
200
150
100
50
0
0
3
6
9
12
15
18
21
24
27
30
33
Ferrocene amount (nmol)
図2 交互積層数のフェロセンの電気化
学的応答への影響
●:3 cycles, ■:6 cycles, ▲:10
cycles ○:15 cycles,
cycles,
cycles □:20 cycles,
cycles
△:25 cycles
18
16
14
12
I (nA)
まずカーボンナノチューブ(CNT)が高い導電性などを有
する特性を活かして、これと耐熱性脱水素酵素を交互積
層法によ て電極に積層しメディエ タであるフ ロセン誘
層法によって電極に積層しメディエータであるフェロセン誘
導体の電気化学的応答を測定した。積層数を検討したと
ころ、図2に示すように積層20回が大きい応答が得られた。
次に修飾電極の長期安定性を向上させるため、材料と
なるCNTの洗浄等の前処理法を検討した結果、交互積層
電極は作製から57日後において、電極調製直後と比較し
て48%から72%の応答を維持することができた。
最後に20層のMWCNT L P DH交互積層電極のフェロ
最後に20層のMWCNT-L-ProDH交互積層電極のフェロ
セン誘導体に対する検出限界の検討を行った。作製した
交互積層電極を用いて1 mMフェロセン誘導体 10 lの逐
次添加に対する電流応答を測定したところ、図3に示す様
な結果が得られた。この結果から20層のMWCNT-LProDH交互積層電極は10 pmolのFc-COOHが検出可能で
あり、さらに10 pmolの逐次添加していくと100 pmolまで直
線性を示すことがわかった
線性を示すことがわかった。
10
8
6
4
2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
Ferrocene amount (pmol)
図3 フェロセンに対する検量線電気化学的応答への影響
まとめと今後の課題
カーボンナノチューブと酵素を交互積層(20層)することにより、10~100 pmolオーダーでのフェロ
セン誘導体の検出が可能となった。これは、昨年の成果であるスクリーンプリント電極を用いる方
法と組み合わせることにより、さらにフェムトモルオーダーでの検出が可能となるので、PCR不要
のDNA検出システムの構築が期待できる。
研究名「メディエータ修飾プライマーを用いたDNA
高感度センシングシステムの開発」
末 信一朗(福井大学大学院工学研究科)
高城 啓一(若狭湾エネルギー研究センター)
平成22年度公募型共同研究
研究成果報告書
国立大学法人
福井大学大学院工学研究科
末
財団法人
信一朗
若狭湾エネルギー研究センター
高城
啓一
1. 緒言
現在、有害微生物による健康被害が依然として問題となっており、有害微生物の迅速な検出は
適切な防疫上の処置を実施するために必須である。従来の有害微生物の検出方法としては、培養
法 1)、免疫学的手法 2)、遺伝子工学的手法 3, 4)などがある。培養法は特定の菌が優先的に増殖す
る特殊な培地を用いて目的の菌を培養し、コロニー数を直接肉眼でカウントする方法で確実性は
高いが、菌の培養が必須であり、検出までに長時間を要するため、迅速な検出は不可能である。
また、免疫学的手法である ELISA 法 2)は抗原抗体反応に基づくため、特異性が高く、定量的な検
出が可能である。しかし、検出限界が 10 4∼10 6 cfu/ml と高いため、実際の検出の際には試料の
濃縮といった操作が必要となり、操作が煩雑である。さらに、遺伝子工学的手法には、PCR 法に
より検出対象の DNA を増幅して検出を行う方法 3, 4)や、DNA マイクロアレイを用いた方法 5)があ
る。DNA マイクロアレイを用いた代表的な方法としては、検出対象の DNA に蛍光色素を標識し、
予め基盤上に固定した検出対象の DNA と相補的に結合するプローブとハイブリダイズさせ、その
蛍光の有無及び強度により検出を行う蛍光標識法 6)がある。また、検出対象の DNA にビオチンを
修飾し、プローブとハイブリダイズさせた後、ストレプトアビジン等で標識した酵素を加え検出
対象の DNA と結合させ、基質等を加えることにより発色させる検出方法なども報告されている。
これらの遺伝子工学的手法は特異的かつ高感度な DNA の検出が可能であるが、PCR 法では増幅し
た DNA を確認するための電気泳動に時間がかかり、染色に用いるエチジウムブロマイドが発癌性
を持つために取り扱いに注意が必要であるといった問題がある。また、DNA マイクロアレイは検
出対象の DNA に蛍光標識を行うため、時間と手間がかかることや検出装置が高価であるといった
問題がある。以上の理由から、これらの手法は現場サイドでの実用性は乏しいと考えられる。
これらの問題点を解決する手段として、電気化学的手法を用いた DNA センサが注目されている。
これは目的遺伝子の存在を電気信号に変換することにより検出を行う手法であり、DNA 検出の迅
速、簡便、高感度かつ低コスト化が望める。現在までに、検出対象の DNA に酵素を標識した後、
基板上のプローブとハイブリダイズさせ、酵素反応による電流応答を測定する方法 7, 8)や、メデ
ィエーターにアグリジニン、ナフタレン誘導体等の有機化合物を結合させたインターカレーター
を基板上でハイブリダイズした検出対象の DNA に特異的に結合させ、メディエーターによる電流
応答を測定する方法 9)等が報告されている。しかし、これらも DNA に直接標識をするため操作が
煩雑であり長時間を要する、インターカレーターが発癌性を有するため取り扱いが困難である等
の様々な問題があり、現場サイドでの実用性は乏しい。そのため、より迅速、簡便、高感度かつ
安全な検出方法の確立が求められている。
そこで、本研究室では高感度、特異的に増幅できる PCR 法と迅速、簡便かつ安全に検出が行え
る電気化学的手法を組み合わせた検出法に着目してきた。これまでに耐熱性酵素を修飾したレポ
ータープローブとビオチンを修飾したキャプチャープローブを用いて PCR により増幅を行った
検出対象の DNA を電極上に固定化し、センサの構築を行った(Fig. 1-1)。そして、酵素反応によ
る電流応答を測定することで検出対象の DNA の高感度な検出に成功してきたが、電極上への PCR
増幅産物の固定化が必要であるなど、操作が煩雑であった 10)。この問題点を改善するために本
研究室の寺澤が、検出対象の DNA にメディエーターを修飾し、メディエーターによる電流応答を
測定することで直接的な DNA 検出を可能にするシステムの検討を行った 11)。しかし、この際に
電流応答を増幅させる目的で用いた L-リジン脱水素酵素とジアホラーゼによる酸化還元反応系
では両酵素の至適 pH が異なるため、検出反応機構としての安定性や反応効率を低下させ、セン
1
サとして感度が不充分であった。そこで、本研究では、ジアホラーゼを必要としないため至適
pH 等について考慮する必要がなく、FAD 結合型であるため反応溶液への補酵素の添加も必要とし
ない超好熱性アーキア Aeropyrum pernix 由来色素依存性 L-プロリン脱水素酵素(L-ProDH)12)を
用い、同様の検討を行った。しかし、L-ProDH の酵素反応のみでの電流応答の増幅では検出感度
が不充分であったため、さらなる検出感度の向上が必要であった。そこで、我々は新たなセンサ
素子としてカーボンナノチューブに着目した。カーボンナノチューブは高い導電性、
広い表面積、
高い力学的強度及び化学的安定性等の優れた性質を持っており、様々な分野への応用が進んでい
る。近年、バイオセンサへの応用が積極的に行われており、電極上にカーボンナノチューブを修
飾することで、酵素を用いたバイオセンサの検出感度を向上させることが報告されてきている
13-18)
。本研究では、L-プロリン脱水素酵素及びカーボンナノチューブを電極上に修飾し、DNA セ
ンシングシステムの検出感度向上について検討を行った。
2. 実験
2.1.
超好熱性アーキア由来 L-プロリン脱水素酵素(L-ProDH)の発現と精製
2.1.1. 試薬
Q Sepharose Fasr Flow はGE Healthcareより入手した。2,6-Dichlorophenolindophenol sodium,
hydrate (DCIP)は和光純薬製を用いた。組換体酵素誘導用の発現特殊培地としてOvernaight
Express ™ Autoinduction Systems (Novagen 製 ) を 用 い た 。 発 現 用 宿 主 Escherichia coli
BL21-Codonplus (DE3)-RILP Competent Cells はSTRATAGENE 社より入手した。また超好熱性ア
ーキアAeropyrum pernix 由来の新規色素依存性L-proDHプラスミドpET11aベクターは米子工業
高等専門学校物質工学専攻の里村武範助教(現福井大学大学院工学研究科講師)より恵与して頂
いたものを用いた。
2.1.2. 組換体大腸菌の大量培養
LB 培地5 ml に濾過滅菌(Millex®-HV 0.45 mm [MILLIPORE])した100 mg/ml アンピシリンナト
リウム水溶液を培地量に対して1/1,000 量添加後、組み換え大腸菌を植菌耳を用いて植菌し、
180
rpm, 37°C, 16 h にて振トウ培養し、前培養とした。組換体大腸菌の本培養はOvernight Express
™ Instant TB Medium 120 g を純水2000 ml に溶解した後、グリセリン20 ml を添加し、2000 ml
バッフル付き三角フラスコに約500 ml ずつ分注した。その後、121°C, 15 min で高圧蒸気滅菌
を行った。植菌時に0.5%アンピシリンナトリウム水溶液を培地量に対して1/100 量添加し、前培
養した菌体懸濁液を培地量に対して1/100 量添加して植菌を行い、130 rpm, 37°C, 16 h にて
振トウ培養を行った。培養終了後10,000 rpm, 4°C, 15 min 遠心分離を行うことで菌体を集菌
した。この菌体を100 mM NaCl を含む20 mM potassium phosphate buffer (pH 7.0)(Buffer A)
で懸濁洗浄し、再度遠心分離を行った。再度、同様に洗浄を行った後、菌体量の4倍量のBuffer A
を加え懸濁した。次に、この菌体破砕液を50 ml のトールビーカーに20 ml とり、超音波発生機
UD-201(トミー精工)を用いて、標準チップ、発振モード50%、出力を10 に合わせ、調節ツマミ
で液面がはじかれず気泡が出ないよう調節し、氷水中で冷却しながら処理時間1.5 min の超音波
破砕を3回繰り返し行なった。このようにして破砕した菌体破砕液を11,000 rpm, 4°C, 20 min 遠
心を行なうことで残存する菌体の残渣を除去し、上清のL-ProDH を含む粗酵素液を回収した。
2
2.1.3. L-ProDHの精製
粗酵素液を湯浴にて80°C, 10 min 熱処理を行った後、速やかに氷上にて室温まで急冷処理し、
11,000 rpm, 4°C, 15 min 遠心を行なうことで変性タンパク質を除去した。Q Sepharose Fast
Flow の調製は、Q Sepharose Fast Flow を純水で膨潤させガラス棒で攪拌した後、沈殿させて
上清の微粒子を取り除いた。十分に膨潤させたQ Sepharose Fast Flow を脱気後、カラムに充填
しQ Sepharose Fast Flow カラム(30 mmD/80 mmL)を作製した。作製したカラムをBuffer A (4 bed
vol.)で平衡化後、熱処理を行った酵素液をQ Sepharose Fast Flow カラムに流し、さらにBuffer
A (5 bed vol.)を流し洗浄を行なった。溶出はNaCl濃度100 mM→500 mMの直線濃度勾配法(Linear
gradient)で行い、フラクションコレクターRediFrac で3 ml 毎に分画した。各画分について酵
素活性とO.D.280 nm を見ることで溶出プロフィールを作成し、それをもとに酵素の活性画分を
回収し、Buffer A に対して透析することで脱塩を行った。
2.1.4. 酵素活性の測定
300 mM Tris-HCl緩衝液 750 ml、1 mM DCIP 100 ml 及びL-proDH 100 ml を混合し、50°C, 5
min 予備加温した。すばやく1 M L-proline 溶液を50 ml 加え全容量を1000 ml にして分光光
度計内に移し、50°C における吸光度の経時変化を測定した。酵素活性は本活性測定条件下で酵
素が1 min に1 mmol のDCIP (吸光係数 e = 21.5 mM-1・cm-1)を分解する量を1 unit と定義した。
タンパク質濃度の測定にはブラッドフォード法を用いた。
2.2.
L-ProDH 及びカーボンナノチューブ(CNT)を用いた DNA センシングシステムの構築
2.2.1. 試薬
o-Nitroaniline (o-NA)、ethyleneimine (polymer) (30% in water) (PEI) はナカライより入
手した。Ferrocene monocarboxylic acid (Fc-COOH)はシグマ社製を用いた。マルチウォールカ
ーボンナノチューブ(MWCNT)は東京化成より入手した。シングルウォールカーボンナノチューブ
(SWCNT) 分散液は株式会社日立化成より恵与して頂いた。この分散液には両性イオン界面活性剤
が分散剤として使用されており、疎水基と CNT が疎水結合し、親水基を水溶液側へと向けた構造
をとっている。
2.2.2. 電気化学測定
電気化学的測定はElectrochemical Analyzer Model 800B (BAS 社製)を用いた3電極方式で行
った。作用電極はPFCE 3 カーボン電極(BAS 社製)、対極は白金電極(BAS 社製)、参照極はAg/AgCl
電極(RE-1B、BAS 社製)を用いた。
2.2.3. 電極上へのo-NA重合膜の作製及び電気化学測定
2.2.3.1. 溶液の調製
・ 0.1 M H2SO4
超純水50 ml に濃硫酸(95%) 0.29 ml を滴下し、攪拌後、常温で保存した。
・ 0.01 M o-NA solution
超純水 10 ml に 95% H2SO4 0.6 ml を攪拌しながらゆっくりと添加した。さらに、この溶
液に o-NA 14.7 mg を添加し、溶解させ 0.01 M o-NA 溶液を調製した。
3
・ 0.01 M o-NA solution including 1 mg/ml SWCNT
1 mg/ml SWCNT 分散液 10 ml に 95% H2SO4 0.6 ml を攪拌しながらゆっくりと添加した。さ
らに、この溶液に o-NA 14.7 mg を添加し、溶解させ 1 mg/ml SWCNT を含む 0.01 M o-NA 溶
液を調製した。
2.2.3.2. 電極上への o-NA 重合膜の作製
基盤となる炭素電極をラッピングペーパーを用いて研磨することで表面を更新し、0.1 M H 2SO4
に 1 h 浸漬して洗浄した。この電極を 2.2.3.1.で調製した溶液に浸漬し、+1.5 V の一定電位を
かけて 25 min 電解重合を行った後、+1.7 V を 10 s、-0.7 V を 50 s の 2 電位の反復電解反応で
1 h 電解重合を行った。次に、重合を終えた電極を 1 M H2SO 4 に浸漬し、-0.7 V の定電位で 2 h
還元した後、さらに+0.5 V の定電位で 10 min 酸化した。
2.2.3.3. o-NA 重合膜修飾電極の Fc-COOH に対する電流応答性
300 mM KPB (pH 6.5) 2800 ml に 2.42 units/ml L-proDH 100 ml を添加した基礎反応溶液を
37°C に恒温し、ゆるやかに攪拌しながら窒素ガスで 10 min バブリングを行い、溶存酸素を除
去した。その後、窒素雰囲気下で参照電極(Ag/AgCl)に対して+0.45 V の印加電圧をかけ、バッ
クグラウンドが安定するまで放置し(1-2 h)、100 mM L-proline 100 ml を添加後、0.3 mM Fc-COOH
10 ml を逐次添加して電流応答の測定を行った。
2.2.4. SWCNT 及び L-proDH 固定化電極の作製及び電気化学測定
2.2.4.1. 電極上への SWCNT の修飾及び L-proDH の固定化
前述の方法で研磨洗浄した電極上に 1 mg/ml SWCNT 分散液を 10 ml 滴下し、室温で風乾した。
次に、この SWCNT 修飾電極を 2.42 units/ml L-proDH 溶液に浸漬し、室温で 1 h 反応させた後、
超純水で静かに洗浄した。これにより、L-proDH を SWCNT に結合している両性イオン界面活性剤
へと静電的に吸着させた。
2.2.4.2. 物理的吸着による SWCNT 修飾電極の Fc-COOH に対する電流応答性
50 mM KPB (pH 6.5) 2900 ml を 37°C に恒温し、ゆるやかに攪拌しながら窒素ガスで 10 min
バブリングを行い、溶存酸素を除去した。その後、窒素雰囲気下で参照電極(Ag/AgCl)に対して
+0.45 V の印加電圧をかけ、バックグラウンドが安定するまで放置し(1-2 h)、100 mM L-proline
100 ml を添加後、0.3 mM Fc-COOH 10 ml を逐次添加して電流応答の測定を行った。
2.2.4.3. SWCNT 修飾量の最適化
感度の向上に最も効果的な SWCNT 修飾量を決定するために、電極上への SWCNT 修飾量を 50, 80,
100, 150 mg と変化させて電極を作製し、30 mM Fc-COOH 10 ml の逐次添加に対する電流応答を
測定した。
4
2.2.5. MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の作製及び電気化学測定
2.2.5.1. 溶液の調製
・2.5% K2Cr2O7 in 10% HNO3
HNO3 (60%) 8.3 ml に K 2Cr2O 7 1.25 g を溶解後、超純水で 50 ml に fill up し常温にて保存
した。
・1 mg/ml PEI solution in 0.04 M barbital buffer (pH 9.0)
まず、PEI (30%) 15 ml を超純水で希釈し、4 M HCl を用いて pH 7.0 に調節後、超純水で
45 ml に fill up し 10% PEI 溶液を調製した。次に、10% PEI 溶液 1 ml と超純水 70 ml を混
合し、sodium barbital 0.825 g を添加後、1 M HCl で pH 9.0 に調整した。その後、超純水
で 100 ml に fill up し、1 mg/ml PEI を含む 0.04 M barbital buffer (pH 9.0)を調製した。
2.2.5.2. MWCNT-PEI 複合体分散液の作製
MWCNT に付着している金属粒子等の不純物を取り除くために、硝酸を用いた還流により MWCNT
の洗浄を行った。丸底フラスコに MWCNT 100 mg を量り取り、3 M HNO3 を添加した。これを還流
装置に取り付け、110°C で 12 h 還流を行った後、超純水で中性になるまで洗浄を行った。その
後、MWCNT をコニカルチューブに移し、2400 g で 2 h 遠心した。洗浄処理後の MWCNT と濃硝酸と
濃硫酸の混酸(v/v 1:3)を混合し、バス型ソニケーターを用いて 6 h 超音波処理を行うことで
MWCNT を酸化し、カルボキシル基を導入した。その後、14,000 g で 1 h 遠心して MWCNT を沈殿さ
せ、超純水で中性になるまで洗浄した後、pH 8.0 の Tris バッファーで置換して MWCNT 上のカル
ボキシル基をマイナスにチャージさせた。次に 14,000 g で 1 h 遠心して MWCNT を沈殿させ、上
清を廃棄した後、デシケーター内で 3 日間放置し、さらに減圧乾燥を 2 h 行って MWCNT を完全に
乾燥させた。乾燥後、MWCNT を 1 mg/ml PEI を含む 0.04 M barbital buffer (pH 9.0) に 1 mg/ml
の濃度になるように添加し、5 min 超音波処理を行うことで MWCNT-PEI 複合体分散液を調製した。
2.2.5.3. MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の作製
前述の方法で研磨洗浄した電極を 2.5% K2Cr 2O7 in 10% HNO 3 に浸漬し、+1.2 V で 10 s 電解酸
化を行い、電極表面にカルボキシル基(負電荷)を導入した。この電極を正電荷をもつ 1 mg/ml
MWCNT-PEI 複合体分散液に 20 min 浸漬し、超純水でゆるやかに洗浄後、pH 7.0 の 1 mg/ml L-ProDH
溶液 (中性付近では負に帯電 )に 20 min 浸漬した。以下同様に浸漬、洗浄を繰り返し、
(MWCNT-PEI/L-ProDH)層を 6 層積層した。また、コントロールとして、L-ProDH の替わりにアル
ギン酸ナトリウム(Alg-Na)を用いて同様に積層したものを作製した。
2.2.5.4. MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の Fc-COOH に対する電流応答性
50 mM KPB (pH 6.5) 2900 ml を 37°C に恒温し、ゆるやかに攪拌しながら窒素ガスで 10 min
バブリングを行い、溶存酸素を除去した。その後、窒素雰囲気下で参照電極(Ag/AgCl)に対して
+0.45 V の印加電圧をかけ、バックグラウンドが安定するまで 1-2 h 放置し、100 mM L-proline
100 ml を添加後、0.3 mM Fc-COOH 10 ml を逐次添加して電流応答を測定した。
2.2.5.5. 積層数の最適化
前述と同様の方法で 3, 6, 10, 15, 20, 25 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極を作製し、30 mM
5
Fc-COOH 10 ml の逐次添加に対する電流応答性の比較により、最適積層数の決定を行った。
2.2.5.6. MWCNT-L-ProDH を 20 層積層した交互積層電極の長期安定性の検討
前述と同様の方法で 20 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極を作製し、2 ヶ月間の安定性を検討
した。各経過日数における検出感度の測定は 30 mM Fc-COOH 10 ml の逐次添加により行った。
また、測定時以外は 4°C にて保存した。
2.2.5.7. MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の検出限界の検討
前述と同様の方法で 20 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極を作製し、1 mM Fc-COOH 10 ml の逐
次添加に対する電流応答を測定した。
2.3.
メディエータ修飾プライマーの調製
2.3.1. PCR プライマー
PCR に使用したプライマーはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の mecA 領域を部分的に増
幅する 2 つのプライマーを用いた。また、各プライマーの 5’末端側にはフェロセン修飾のため
のアミノ基が導入されており、各ヌクレオチドの合成は Operon に委託した。
Sense primer
Antisense primer
5’-TGGTCTTTCTGCATTCCTGG-3’
5’-GTTGTAGTTGTCGGGTTTGG-3’
2.3.2. フェロセン修飾プライマーの調製
無水メタノール 5 ml に Fc-COOH 2.3 mg を溶解し、CDI 4.9 mg を添加した後、室温で 1 h 攪
拌することで Fc-COOH のカルボキシル基を活性化させた。ここに無水メタノールで懸濁した 5
nmol のアミノ基修飾プライマーを添加し、室温で 1 h 攪拌して反応させた。反応液は Microcon
YM-3 を用いて濃縮した。
2.3.3. HPLC による精製
合成されたフェロセン修飾プライマーのみを回収するために HPLC を用いた精製を行った。
HPLC は Table 1 及び 2 の条件で行った。
Table 1 HPLC conditions
Column
5C18-AR-300, 250x 4.6 mm (i.d.)
Column temperature
Detection wave length
Room temperature
260 nm
Carrier
Flow rate
10% Methanol
1.0 ml/min
50 ml
Injection volume
6
Table 2 HPLC analysis
Time
(min)
Carrier conc.
Super pure water Methanol
0.0
10.0
90%
90%
10%
10%
40.0
50.0
0%
0%
100%
100%
HPLC での溶出は Table 2 で示す様に 10%メタノールで 10 min 溶出した後、次の 30 min でメタ
ノール濃度 10%→100%の直線濃度勾配法により溶出を行った。HPLC にて精製した溶液はエバポレ
ータを用いて 70°C にて減圧濃縮し、さらに真空ポンプで減圧乾燥を行った。その乾燥物を Te
buffer に溶解し、Microcon TM-3 を用いて濃縮した。得られたフェロセン修飾プライマーは使用
するまで-20°C にて保存した。
2.3.4. フェロセン修飾プライマーを用いた PCR による Target DNA の増幅
PCR は Takara Ex Taq (タカラバイオ株式会社)の Kit を使用して行った。反応液の組成を Table
3 に、PCR サイクルの条件を Fig. 1 に示す。また、これらの条件は添付のプロトコールを参考に
して設定した。
Table 3 Composition of PCR
Sterilized water
32 ml
10 x PCR buffer
dNTP mixture
5 ml
4 ml
Ferrocene modified sense primer
Antisense primer
1 ml
0.5 ml
Extracted DNA
Takara Ex Taq
7 ml
0.5 ml
Total volume
50 ml
7
94°C
94°C
5 min
30 s
72°C
72°C
23 s
7 min
55°C
30 s
35 cycles
4°C
∞
Fig. 1 Condition for PCR cycles
2.3.5. アガロースゲル電気泳動
1 x TBE buffer 200 ml にアガロース 2 g を添加し、電子レンジにて溶解させた。ゲルが約
60°C になったらゲル形成トレイに流し込み、約 1.5 h 静置してゲルを固化させ、1%アガロース
ゲルを作製した。作製したゲルを電気泳動装置にセットし、1 x TBE buffer を満たした後、DNA
と Loding dye を 5:1 の比で混合したサンプルをウェル中にアプライし、100 V, 35 min 泳動を
行った。泳動終了後、ゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸し、5 min 振トウした後、純
水で 10 min 振トウして余分な EtBr を除去した。その後、トランスイルミネーターを用いてバ
ンドの観察を行った。
3. 結果及び考察
3.1.
L-ProDH の精製
粗酵素、熱処理後、イオン交換クロマトグラフィー後の各段階における精製結果を Table 4 に
示す。
Table 1 Purification of L-proline dehydrogenase from recombinant cell
Total
activity
Total
protein
Specific
activity
(units)
(mg)
(units/mg)
Crude extract
137
2989
Heat treatment
Q Sepharose Fast Flow
92.2
78.8
Steps
282.4
102.5
Fold
(-)
Yield
(%)
0.046
-
100
0.326
0.769
7.09
16.7
67.3
57.5
この結果を里村助教の精製結果と比較したところ、最終的な比活性は里村助教のものと比べて
約 17%であることがわかった。この原因としては、タンパク質濃度の測定に異なる方法を用いた
ことが考えられる。
8
イオン交換クロマトグラフィーによる精製によって得られた酵素の純度を SDS-PAGE により確
認した。その結果、Fig. 2 に示す様に、ホモ二量体である本酵素を構成するサブユニット (47
kDa)による単一バンドが確認された。これより、本酵素が目的対象であることがわかり、電気化
学測定での使用に際して十分な純度であることが確認できた。
(kDa)
240
140
100
70
50
47 kDa
35
Right lane : purified A. pernix L-ProDH
25
Left lane : WIDE-VIEW™ Prestained Protein
Size MarkerⅡ(Wako)
20
15
Fig. 2 SDS-PAGE of purified L-ProDH
o-NA 重合膜修飾電極の Fc-COOH に対する電流応答性
o-NA 重合膜修飾電極を用いて 0.3 mM Fc-COOH 10 ml の逐次添加に対する電流応答を測定した
ところ、Fig. 2 に示す様な結果が得られた。●, ▲, ■で示した酵素反応を利用しない場合に
おいて未修飾の電極よりも重合膜修飾電極の方が高い電流応答を得ていることから、重合膜が導
電性をもち、電極の有効な表面積を拡大していることがわかった。また、SWCNT 有無の比較から
重合膜内に SWCNT を封入することで重合膜修飾電極の感度を向上させることがわかった。しかし、
重合膜修飾電極が未修飾の電極の約 50%の電流応答しか得られていないことから、重合膜内での
Fc-COOH の拡散が酵素反応による Fc-COOH の還元速度に追いついていないことや重合膜の電子伝
達速度が遅いために一定時間に電極上に運ばれる電子の数が限られてしまっていることなどが
考えられる。これに加え、SWCNT を封入した o-NA 重合膜は非常に脆く、小さな衝撃で崩れてし
まうため、膜上への酵素の固定化は現実的ではなかった。そこで次に、SWCNT を物理的吸着によ
り電極上に修飾し、SWCNT に修飾されている両性イオン界面活性剤に酵素を静電的に固定化する
ことで SWCNT の修飾及び L-proDH の固定化を試みた。
3.2.
9
160
140
DI (nA)
Current
(nA)
120
100
80
60
40
20
0
0
3
6
9
12
15
18
21
24
27
30
33
Ferrocene amount (nmol)
Fig. 2 Current response of PFCE 3 carbon electrode coated poly-o-NA
including SWCNT to successive addition of 3 nmol Fc-COOH
●:Bare carbon electrode
300 mM KPB (pH6.5) 3000 ml
○:Bare carbon electrode
300 mM KPB (pH6.5) 2800 ml + 2.42 units/ml L-proDH 100 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
▲:Carbon electrode coated poly-o-NA
300 mM KPB (pH6.5) 3000 ml
△:Carbon electrode coated poly-o-NA
300 mM KPB (pH6.5) 2800 ml + 2.42 units/ml L-proDH 100 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
■:Carbon electrode coated poly-o-NA including SWCNT
300 mM KPB (pH6.5) 3000 ml
□:Carbon electrode coated poly-o-NA including SWCNT
300 mM KPB (pH6.5) 2800 ml + 2.42 units/ml L-proDH 100 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
10
3.3.
物理的吸着による SWCNT 修飾電極の Fc-COOH に対する電流応答性
o-NA 重合膜は脆く、十分な導電性を有してないことがわかったため、次に物理的吸着により
SWCNT を修飾し、静電的吸着により L-proDH を固定化した電極を作製し、0.3 mM Fc-COOH 10 ml
の逐次添加に対する電流応答を測定したところ、Fig. 3 に示す様な結果が得られた。この結果
から、SWCNT による電流量増幅効果が確認でき、さらに SWCNT 及び L-proDH が充分な強度で修飾
及び固定化されていることがわかった。この理由としては、基盤となる電極として、電極表面が
ポーラス状になっている PFCE 3 carbon electrode を用いたことで、より強く SWCNT を吸着した
ことが挙げられる。この方法によって充分な安定性を得られることがわかったため、次に最適な
SWCNT 修飾量の検討を行った。
180
160
DI (nA)
Current
(nA)
140
120
100
80
60
40
20
0
0
3
6
9
12
15 18
21 24
Ferrocene amount (nmol)
27
30
Fig. 3 Current response to successive addition of 3 nmol Fc-COOH
●:Bare carbon electrode
50 mM KPB (pH6.5) 3000 ml
■:SWCNT modified carbon electrode
50 mM KPB (pH6.5) 3000 ml
▲:SWCNT modified carbon electrode (1st measurement)
50 mM KPB (pH6.5) 2900 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
○:SWCNT modified carbon electrode (2nd measurement)
50 mM KPB (pH6.5) 2900 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
□:SWCNT modified carbon electrode (3rd measurement)
50 mM KPB (pH6.5) 2900 ml + 100 mM L-Pro 100 ml
11
33
3.4.
SWCNT 修飾量の最適化
感度の向上に最も効果的な SWCNT 修飾量を決定するために、電極上への SWCNT 修飾量を 50, 80,
100, 150 mg と変化させ、電流応答の測定を行ったところ、Fig. 4 の様な結果が得られた。そ
の結果、50 mg よりも 80 mg、100 mg よりも 150 mg の方が低い電流応答性を示した。この理由
として、電極の作製及び電流応答の測定は 100, 50, 150, 80 mg の順番で行っており、150 mg
の電極を作製する時点で SWCNT 懸濁液が一部凝集を始めていたことから、SWCNT の分散に用いら
れた両性イオン界面活性剤が SWCNT から脱離してしまっている可能性が示唆された。そこで、
SWCNT 分散液の受理から約一ヶ月後に作製した修飾電極と約二ヶ月後に作製した修飾電極の
Fc-COOH に対する電流応答性の比較を行い、時間経過による影響を検討した。その結果を Fig. 5
に示す。同量の SWCNT 修飾量で比較したところ、受理から約二ヶ月後に作製した SWCNT 修飾電極
では約 25%の電流応答しか得られなかった。Fig. 4 の結果も考慮すると、この SWCNT 分散液は作
製後約一ヶ月を境に急激にその電流応答増幅効果を失っていくことがわかった。以上のことから、
今回、最適な SWCNT 修飾量の決定はできず、増幅効果を失った SWCNT 分散液の回復方法及び新規
SWCNT 分散液の作製方法の検討が必要となった。
160
140
Current
(nA)
DI (nA)
120
100
80
60
40
20
0
0
0.3
0.6
0.9
1.2 1.5
1.8 2.1
Ferrocene amount (nmol)
2.4
2.7
Fig. 4 Current response to successive addition of 0.3 nmol Fc-COOH
●:50 mg SWCNT modified
■:80 mg SWCNT modified
▲:100 mg SWCNT modified
◆:150 mg SWCNT modified
12
3
3.3
160
140
Current
DI (nA)(nA)
120
100
80
60
40
20
0
0
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
2.1
2.4
2.7
3
3.3
Ferrocene amount (nmol)
Fig. 5 Current response of 100 mg SWCNT modified carbon electrodes
to successive addition of 0.3 nmol Fc-COOH
●:One month after the acceptance
■:Two months after the acceptance
3.5.
MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の Fc-COOH に対する電流応答性
日立化成株式会社から恵与して頂いた SWCNT 分散液は、分散剤が徐々に SWCNT から脱離し、さ
らに超音波処理を行ってもその分散性を回復しなかったため、引用文献 18)を参考に新たに分散
液を調製した。その分散液を用いて MWCNT と L-proDH を交互に積層した電極を作製し、0.3 mM
Fc-COOH 10 ml を逐次添加して電流応答の測定を行ったところ、Fig. 6 の様な結果が得られた。
その結果、MWCNT-L-ProDH 交互積層電極は L-proDH 遊離条件下での結果と比較し、約 2 倍の電流
応答を示した。また、MWCNT-Alg-Na 交互積層電極の電流応答との比較から、L-proDH の積層が証
明された。これにより、LBL 法によって MWCNT 及び L-ProDH が電極表面上に固定化されることが
確認できたため、次に最適な(MWCNT-L-ProDH)層の積層数を検討した。
13
350
300
DI (nA)
Current
(nA)
250
200
150
100
50
0
0
3
6
9
12
15
18
21
24
27
30
33
Ferrocene amount (nmol)
Fig. 6 Current response to successive addition of 3 nmol Fc-COOH
●:Bare carbon electrode
50 mM KPB (pH 6.5) 3000 ml
■:Bare carbon electrode
50 mM KPB (pH 6.5) 2800 ml + L-ProDH 100 ml + 100 mM L-proline 100 ml
▲:MWCNT and Alg-Na modified carbon electrode
50 mM KPB (pH 6.5) 2800 ml + L-ProDH 100 ml + 100 mM L-proline 100 ml
○:MWCNT and L-ProDH modified carbon electrode
50 mM KPB (pH 6.5) 2900 ml + 100 mM L-proline 100 ml
3.6.
(MWCNT-L-ProDH)層の積層数の最適化
前述の結果より、両センサ素子の積層が確認されたため、次に積層数の最適化を行った。3, 6,
10, 15, 20, 25 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極を作製し、30 mM Fc-COOH 10 ml の逐次添加
に対する電流応答を測定したところ、Fig. 7 の様な結果が得られた。これより、最適積層数は
20 層であるとわかった。25 層で電流応答が低下した原因としては、交互積層による検出感度の
向上効果よりも積層数の増加に伴う阻害効果の方が大きくなったためであると考えられる。
14
400
350
DI (nA)
300
250
200
150
100
50
0
0
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
2.1
2.4
2.7
3
3.3
Ferrocene amount (nmol)
Fig. 7 Comparison of current response for adsorption number of MWCNT-L-ProDH layers
●:3 cycles, ■:6 cycles, ▲:10 cycles, ○:15 cycles, □:20 cycles, △:25 cycles
3.7.
MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の長期安定性
3.6.の結果より、最適積層数が 20 層であるとわかったため、次に長期安定性の検討を行った。
電極作製後の各経過日数における電流応答を 30 mM Fc-COOH 10 ml の逐次添加により測定した。
その内、Fc-COOH の添加量 0.3 及び 3 nmol における検出感度の推移を Fig. 8 に示す。この結果
より、MWCNT-L-ProDH 交互積層電極は作製から 57 日後の測定において、作製当初の 48%から 72%
の検出感度を維持していることがわかった。作製後 14 日間で急激に検出感度が低下している原
因としては、物理的吸着により修飾されていたセンサ素子が洗浄工程で除去されておらず、それ
らがこの 14 日間で溶液中へ溶けだした可能性が考えられる。
15
400
350
300
DI (nA)
250
200
150
100
50
0
0
7
14
21
28
35
42
49
56
Time (day)
Fig. 8 Long term stability of the current response with a MWCNT-L-ProDH modified electrode
●:0.3 nmol Ferrocene, ■:3.0 nmol Ferrocene
3.8.
MWCNT-L-ProDH 交互積層電極の Fc-COOH に対する検出限界
3.7.結果より、20 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極が充分に安定であることがわかったため、
次に Fc-COOH に対する検出限界の検討を行った。作製した 20 層交互積層電極を用いて 1 mM
Fc-COOH 10 ml の逐次添加に対する電流応答を測定したところ、Fig. 9 の様な結果が得られた。
この結果から 20 層の MWCNT-L-ProDH 交互積層電極は 10 pmol の Fc-COOH を検出可能であり、さ
らに 10 pmol の逐次添加において充分な直線性を示すことがわかった。
18
16
14
DI (nA)
12
10
8
6
4
2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
Ferrocene amount (pmol)
Fig. 9 Current response to successive16
addition of 10 pmol Fc-COOH
110
3.9.
フェロセン修飾プライマーの精製
HPLC により精製を行った結果、リテンションタイム 10.86 min 及び 17.26 min 付近に Fc-COOH
及び CDI と異なるピークが確認された。これら2つのピークの一方が目的のフェロセン修飾プラ
イマーであると考え、ピーク付近の溶出液を回収し、PCR を行うことで回収した合成物がプライ
マーとして機能するか確認した。
3.10.
PCR による Target DNA の増幅
調製したフェロセン修飾プライマーを sense primer とし、MRSA のゲノム DNA がもつ mecA 領
域の PCR 増幅を行った。得られた PCR 増幅産物を電気泳動にて確認した結果を Fig. 10 に示す。
この結果、回収した溶液を用いた PCR では、目的の領域が増幅されないことがわかった。この原
因としては、精製の工程を重ねる毎にプライマーをロスしてしまい、充分な濃度を確保できてい
ない可能性が考えられる。今後は、合成に使用するアミノ基修飾プライマーの量を増やし、再度
合成を試みる予定である。
M
P
1
2
Lane M : Size marker
400 bp
383 bp Lane P : Positive control
Lane 1 : Ferrocene modified primer
(retention time 10.86 min)
Lane 2 : Ferrocene midified primer
(retention time 17.26 min)
Fig. 10 Electrophoresis of PCR products
総括
カーボンナノチューブと酵素を交互積層(20 層)することにより、10∼100 pmol オーダーでの
フェロセン誘導体の検出が可能となった。これは、昨年の成果であるスクリーンプリント電極を
用いる方法と組み合わせることにより、さらにフェムトモルオーダーでの検出が可能となるので、
PCR不要のDNA検出システムの構築が期待できる。
17
引用文献
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18
共同研究成果
[学術論文]
H. Zheng, L. Linb, Y. Okezaki, R. Kawakami, H. Sakuraba, T. Ohshima, S. Suye
Electrochemical behavior of dye-linked L-proline dehydrogenase on glassy carbon electrode
modified by multi-walled carbon nanotubes.
Beilstain J. Nanotechnol., 1, 135-141 (2010).
[学会発表]
桑田 典明、桶崎
陽友、鄭
海涛、末
信一朗
カーボンナノチューブ修飾電極と耐熱性 L-プロリン脱水素酵素を組み合わせたバイオセンシン
グシステム
日本農芸化学会 2010 年度大会 講演番号:3ABa11
平成 22 年 3 月 29 日
山口かよ, 桶崎陽友, 米田一成, 櫻庭春彦, 大島敏久, 末信一朗
バイオセンサへの応用を目指したエラープローン RCA による耐熱性 L-アスパラギン酸脱水素酵
素の機能改変
日本農芸化学会 2010 年度大会 3ABa12 平成 22 年 3 月 29 日
桶崎陽友、山口かよ、鄭 海涛、米田一成、櫻庭春彦、大島敏久、末 信一朗
改変型 L-アスパラギン酸脱水素酵素を用いたL-アスパラギン酸バイオセンサの機能改善
日本農芸化学会 2010 年度大会 3ABa13 平成 22 年 3 月 29 日
桑田 典明、桶崎 陽友、鄭 海涛、末
第 47 回化学関連支部合同九州大会
信一朗
カーボンナノチューブ修飾電極による DNA センシングを目指した高感度バイオセンサ
ポスター番号:3_7.001
平成 22 年 7 月 10 日
末信一朗、桶崎陽友, 山口かよ, 大島敏久,
エラープローン RCA を用いた遺伝子改変による L-アスパラギン酸脱水素酵素のバイオセンシン
グのための機能向上
第 47 回化学関連支部合同九州大会 ポスター番号:3_7.034
平成 22 年 7 月 10 日
[国際会議]
K. Yamaguchi, Y. Okezaki, K. Yoneda, H. Sakuraba, T. Ohshima, S. Suye
Functional improvment of thermostable L-aspartate dehydrogenase using error-prone RCA
19
The 16th Symposium of young Asian Biochemical Engineer’s Community (YABEC)B-7
平成 22 年 11 月 22 日
N. Kuwata, Y. Okezaki, H. Zheng, S.Suye
The 2010 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
High sensitive biosensing system using carbon nanotube modified electrode with dye-linked
L-proline dehydrogenase
Area 13 Security 62
平成 22 年 12 月 16 日
Y. Okezaki,
H. Zheng, K. Yoneda, H. Sakuraba, T. Oshima, S. Suye
The 2010 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
Novel L- Aspartate amperometric biosening using thermostable L-asparatate dehydrogenase
Area 1 Security 505
平成 22 年 12 月 17 日
K. Yamaguchi, Y. Okezaki, K. Yoneda, H. Sakuraba, T. Ohshima, S. Suye
2010 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
Area 01 Analytical 506
Evolution of L-aspartate dehydrogenase for optimum pH shift using error-prone RCA for
biosensing
平成 22 年 12 月 17 日
20
Fly UP