...

海外農業投資をめぐる状況について

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

海外農業投資をめぐる状況について
海 外農業投 資をめぐ る状況に ついて
大 臣官房国 際部
平 成 2 8 年 5 月
1.食料安全保障のための海外農業投資促進
○
○
2007年から08年にかけて穀物等の国際価格は歴史的な高騰を記録した。
これを背景として、国民への食料の安定供給のため、国内農業生産の増大を基本としつ
つ、必要な輸入についてはその安定化・多角化を図るとともに、世界全体での生産の増大を
図っていく必要があることから、我が国からの海外農業投資を促進していく必要。
○ 大規模な海外農業投資が途上国の人に負の影響を与えるとの批判や懸念に対して、被投資
国、小農を含めた現地の人々、投資家の3者が裨益する、責任ある国際農業投資が重要。
 食料・農業・農村基本計画
(2010年3月)
 食料安全保障のための海外投
資促進に関する指針-海外投
資促進会議 (2009年8月)
 新たな食料情勢に応じた国際
的枠組について-中間報告
(2009年3月)
 食料・農業・農村基本計画
(2015年3月)
G8・G20・APEC等国際会議)
農業生産の増大
農業投資の拡大
責任ある農業投資の促進
穀物等の国際価格の高騰
 2007−08年
 2010年
 2012年
輸出規制
暴動の発生
途上国を中心に人口増加
高い水準で低迷する栄養不足人口
バイオ燃料生産の増大
地球温暖化の影響
国際的な食料需給が中長期的に逼迫
国民に対する食料の安定的な供給
途上国への大規模な海
外農業投資の動きは、農
地争奪 land grab 、ある
いは 新植民地主義 との
批判や懸念
国内の農業生産の増大【基本】
必要な農産物輸入の安定化・多角化
我が国からの海外農業投資の促進
責任ある国際農業投資の促進
国際的な行動原則の策定
 官民一体となった取組
 公的支援ツールの総合的活用
 我が国の行動原則との整合性
我が国及び世界の食料安全保障への貢献
2.食料安全保障のための海外投資促進に関する指針
○
国民への食料の安定供給のため、国内農業生産の増大を基本としつつ、必要な輸入についてはその安定化・多
角化を図るとともに、世界全体の農業生産の増大、農業投資の拡大が急務であることから、我が国からの海外農
業投資を促進していく必要。
○ 我が国からの海外農業投資に対する支援方策等を政府関係機関が一体となって検討等を行うために、2009
年4月に農林水産省、外務省が中心となって「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を設置し、同
年8月に「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を策定。現在、本指針に基づき、投資環境の整備、
ODAとの連携、公的金融の活用、海外農業投資に関する情報収集及び提供に取り組んでいる。
海外投資促進会議の構成員
外務省
財務省
農林水産省
経済局審議官
国際協力局参事官
大臣官房審議官(国際)
総括審議官
総括審議官(国際)
経済産業省
通商交渉官
大臣官房審議官(貿易経済
協力局担当)
国際協力銀行 国際業務戦略部長
国際協力機構 企画部審議役
日本貿易振興機構 農林水産・食品部長
日本貿易保険 総務部長
「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」の概要
1.対象となる農産物
対象となる農産物は、国際的な食料需給動向、食生活における重要性、
輸入依存度等を踏まえ、当面は、大豆、とうもろこし等とする。
2.対象となる地域
中南米、中央アジア、東欧等において、投資環境の整備とともに、農業
投資関連情報の収集・提供を重点的に実施する。
3.具体的な取組−官民連携モデルの構築
以下の公的支援ツールを総合的に活用する。
① 投資環境の整備(投資協定の締結等)
② ODAとの連携(生産・流通インフラ整備等)
③ 公的金融の活用
④ 貿易保険の活用
⑤ 農業技術支援(共同技術研究、技術支援等)
⑥ 農業投資関連情報の提供 等
4.我が国の行動原則等(国際的に推奨し得る農業投資の促進)
3.海外投資促進の総合的な支援の枠組み
○
農業投資は、天候リスクに加え、輸出国によって輸出規制が実施されるなど投資リスクが高い
上、途上国では農産物の輸送に必要なインフラが整備されていないため、輸送コストが高くなるな
ど、民間投資を効果的に呼び込める状況にない。
○ 生産・流通インフラ整備へのODAの活用や技術移転、貿易保険など、公的支援ツールを総合的
に活用していくことで、官民連携による海外農業投資を促進している。
○対象品目
【民間企業】
生産
集荷
輸送
輸出
大豆、
とうもろこし等
○対象地域
中南米、
中央アジア、東
欧等
・農地取得・リース
・生産・収穫
・農地開発、灌漑・
保管施設
総合的支援
・集荷・貯蔵施設
・集荷、管理
・輸送・販売
・輸出ターミナル
・積み出し
総合的支援
【政府・関係機関】
ODAとの連携
 インフラ整備、技術支援
公的金融・貿易保険
農業技術
 研究機関、JICAを通じて
共同研究、技術支援
投資環境の整備
 投資協定等の締結
 政府間の経済対話
輸入の安定化
 輸出規制の抑制等の働
きかけ
情報提供
 農業投資関連情報
の収集・提供
現地調査・
ミッション派遣
我
が
国
及
び
世
界
の
食
料
安
全
保
障
へ
の
貢
献
4.海外農業投資促進に関する当面の取組
○
穀物等の需給動向の見通し及び民間企業や関心等を踏まえると、輸入先の安定化・多角化とし
て、南米ではブラジル、アルゼンチン、東欧ではウクライナが特に期待される。
○ 本邦企業に対しては、情報提供や投資環境の整備等を中心に支援するとともに、個別具体の案件
について、公的支援ツールを活用している。
【ブラジル・アルゼンチン】
○ 主要穀物等の生産量及び輸出量が年々拡大
→ 事業展開・拡大に対する本邦企業の関心が非常に高い
← 新興国のため、ODA等の支援ツールが限られる
農業投資関連情報の提供
農産物の安全性・品質管理における協力
規制緩和に向けた働きかけ
公的金融の枠組みの活用の検討
【ウクライナ・パラグアイ・ウルグアイ】
○ 主要穀物等の生産量及び輸出量の拡大の可能性
○ 現地情報の不足、我が国の実需者の品質ニーズに見合う生産管理・検
査体制確立の必要性
農業投資関連情報の提供
投資協定、技術協力の枠組み(ウクライナ)
ODA案件との連携(ウクライナ、パラグアイ)
本邦企業の関心:大
【生産・輸出拡大】
ブラジル(伯)
アルゼンチン(亜)
【輸出可能性大】
ウクライナ
(ロシア)
【伯・亜の補完】
パラグアイ
ウルグアイ
【主に小麦】
中央アジア
【将来性】
アフリカ
(モザンビーク)
5.我が国からの海外民間農業投資の最近の状況
○
①
我が国の企業は、カントリーリスクや天候リスクがあること等から穀物等の海外農業生産には従
来消極的であったが、最近では、新たな海外投資により穀物等の集荷・販売能力を強化するととも
に、農業生産を行う企業も出てきている。
● 丸紅(ブラジル、中国、ロシアにおける農業投資)
・穀物・肥料当の米国大手取引会社であり、全米3位の穀物集荷流通網(保管能力)を有するガビロン社を、JBICの融資を
受けて買収(2012年5月)。 http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2013/0812-6782
・ブラジルのサンタ・カタリーナ州サン・フランシスコ・ド・スル港にある港湾ターミナル事業会社テルログ・ターミナル社を完全
子会社化(2011年11月)。
・中国内外での飼料畜産インテグレーションを展開するため、中国最大手農牧企業山東六和集団(2010年)、新希望六和
(2012年1月)と戦略提携。
・ロシア東部の穀物集荷会社のアムールゼルノ社、港湾物流会社のフェテクシム社と包括提携(2010年4月)。
・第6回日露投資フォーラムにおいて、ロシア企業2社(鉄道会社FESCO、統一穀物会社)とともに、ロシア極東地域の港湾
における穀物ターミナル建設及び穀物輸出拡大に関する事業可能性調査の共同実施について合意(2014年3月)。
● 三菱商事(ブラジルの穀物会社に増資)
・ブラジルの穀物会社であるセアグロ社の第3者割当増資に応じて同社株20%を取得、またセアグロ社から集荷穀物の優
先購買権を確保することに合意(2012年1月)。出資比率を80%に引き上げ子会社化(2013年6月)。
・穀物メジャーのカーギル社と折半出資で、米国内陸部の穀物集荷設備を運営する合弁会社を設立(2012年3月)し、集荷
施設へ投資する計画。
・本邦2企業とともに、中国中糧集団(COFCO)の食肉事業を統括する持株会社に資本参加(2011年6月)。大豆供給を
提携。
・穀物・油糧種子を調達する子会社を設立し、ブラジル大手加工食品会社ブラジルフーズと大豆調達を提携(2011年1月)
● 伊藤忠商事(米国に共同で穀物輸出ターミナル建設、ブラジルの穀物集出荷事業に出資)
・穀物メジャーのブンゲ・ノース・アメリカ及び韓国最大バルクキャリアーの米国法人との合弁による新会社を設立し、米国西
海岸最大級の穀物輸出ターミナルを建設(2009年6月)。
・ ブラジルにおいて、穀物集荷・輸出事業及び大豆種子の開発・販売事業を行うナチュラーレ社に出資(2015年3月)。
http://www.itochu.co.jp/ja/business/food/project/14/
5.我が国からの海外民間農業投資の最近の状況
②
● 住友商事(豪州のターミナル・内陸集荷会と経営統合、ブラジルで農業生産マルチサポート事業)
・港湾ターミナル・サイロ運営会社のオーストラリア・バルク・アライアンス(ABA)社を完全子会社化。(2010年4月)さらに穀
物集荷・販売会社のエメラルド社とABA社を経営統合(2011年12月)。
・ブラジル・マットグロッソ州の農業生産資材問屋アグロアマゾニア社に出資し、農業生産マルチサポート事業に参入(2015
年2月) 。 http://www.sumitomocorp.co.jp/news/detail/id=28344
● 三井物産 (ブラジルで農業(農地保有)、穀物の集荷販売を行う会社を完全子会社化、貨物輸送事業への参画)
・穀物を中心とする農業事業及び穀物集荷・販売を行うマルチグレイン社を完全子会社化(2011年5月)。
https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2011/1205854_6494.html
・鉄道や港湾ターミナル等の事業等を行うVLI社に出資し、穀物や肥料等の貨物輸送事業に参画(2013年9月)。
https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2013/1205710_6496.html
● 双日(アルゼンチンに農業生産法人設立、ロシアでのパートナーシップ締結、ブラジルでの穀物集出荷企業への投資)
・アルゼンチンに農業生産法人会社を設立。中部の湿潤パンパ地帯に農地を確保し、大豆、コーン等の生産を開始(2010
年11月)。
・ロシア穀物協会とアジア市場におけるロシア小麦の販売促進に向け、戦略的パートナーシップ契約を締結(2009年11月)。
・ブラジルにおいて農地を保有し穀物集荷事業等を行うCGGトレーディング社に、JBIC、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、日
本生命相互保険会社との協調融資により出資(2013年10月)。 http://www.sojitz.com/jp/news/2013/10/20121022.php 、
http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2013/0331-19587
● 双日食料(日本向けにウクライナで食用大豆を栽培)
・日本向けに、ウクライナ穀物企業や米国穀物企業と提携し、ウクライナで非遺伝子組み換え大豆を農家に栽培を委託を開
始(2013年3月)。
● 兼松(米国に食品大豆供給基地を確保)
・ ホンダトレーディングの米国子会社が所有する事業資産を買収し、食品原料大豆の種子開発、契約栽培、販売事業を201
3年春より開始。非遺伝組換え大豆の日本向け輸出を現在の1割から2割程度まで拡大を目指す(2012年12月)。
● ギアリンクス(南米で日本向け大豆栽培)
・2003年にアルゼンチンで農地を購入し、大豆等を栽培し、高品質のものを日本へ輸入。パラグアイの日系農協から非遺
伝子組換大豆等を日本へ輸入。
5.我が国からの海外民間農業投資の最近の状況
③
● 豊田通商(南米に強い穀物メジャーと包括提携、ブラジルにおける穀物インフラ事業への投資)
・ ブラジルやアルゼンチンの穀物、油糧種子の販売促進や積出・保管施設への投資を拡大するため、南米に強い大手穀物
会社であるニデラ社と包括提携 (2010年11月)。
・ JBIC、三菱東京UFJ銀行等による協調融資、NEXIによる貿易保険により、ブラジルにおいて穀物インフラ事業を展開するノ
バアグリ社を完全子会社化(2015年1月)。
http://www.toyota-tsusho.com/press/detail/150130_002737.html https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press2015/0626-39742
● イービストレード(ロシア極東でそば栽培)
・輸入先の多角化を図るため2012年から地元農家と提携してそば栽培を開始。(2012年8月)
● 全農(米国農業組合と合弁会社設立)
・米国最大の穀物農協連合会であるCHSと日本向け飼料用穀物(小麦調達優先)を扱う合弁会社設(2012年5月)
● 三菱重工・双日(ロシアへの肥料プラント輸出)
・JBIC、三菱東京UFJ銀行、シティバンク銀行、みずほ銀行による協調融資、NEXIによる貿易保険により、ヴォログダ州で肥
料製造事業を行うロシア企業にプラント設備を輸出(2013年6月)。http://www.mhi.co.jp/news/story/130625.html
http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2013/0116-16919 http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/005060.html
・JBICによる融資、NEXIによる貿易保険により、タタルスタン共和国で肥料製造事業を行うロシア企業にプラント設備を輸出
(2010年11月)。http://www.mhi.co.jp/news/story/101111.html、 https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press2011/0620-6465 、http://www.nexi.go.jp/topics/newsrelease/003913.html
● NEXI (アルゼンチン及びブラジルの穀物企業に対する融資に対する貿易保険引受)
・三井住友銀行がブラジルで穀物の生産・集荷事業等を行うアマッジ社に行う融資に対して、融資期間中、一定量の穀物を日
本に輸出する等の条件で、貿易保険を引受(2014年8月)。丸紅(株)はアマッジ社と提携関係。
http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/005403.html
・アイエヌジーバンク エヌ・ヴイ東京支店がアルゼンチンで穀物の生産・集荷事業等を行うCAGSA社に行う融資に対して、融資
期間中、一定量の穀物を日本に輸出する等の条件で、貿易保険を引受(2015年9月)。 丸紅(株)はCAGSA社との間で年
間40万トンの穀物等の取引を目指す覚書を締結。 http://www.nexi.go.jp/topics/newsrelease/2015091602.html
6.海外農業投資の事例①
具体的成果:ブラジルにおける穀物輸送インフラ企業買収資金融

豊田通商(株)は、(株)国際協力銀行(JBIC)及び(株)三菱東京UFJ銀行等との協調融資により、
概要・意義
NovaAgri社の株式を100%買収し完全子会社化(2015年1月)。ブラジル産穀物(大豆、とうもろこし等)の
日本を含むアジア諸国向け安定供給体制の確立と穀物ビジネスの更なる拡大を企図。

双日(株)は、 (株)国際協力銀行(JBIC) 、(株)三菱東京UFJ銀行、(株)みずほ銀行及び日本生命保
険相互会社による協調融資により、CGGトレーディング社に出資(2013年10月)。本出資によりブラジル
産穀物(大豆、トウモロコシ等)を優先的に買い取る権利を獲得し、アジア・日本市場に加えて、世界大豆
貿易量の7割を輸入する中国市場向けに販売。

豊田通商(株)及び双日(株)は、ブラジル北部の主要港湾であるイタキ港において、現地法人を通じた
コンソーシアムにより穀物ターミナルを共同運営。
事業内容
NovaAgri、CGGはコンソーシアムを組みイタキ港の港湾ターミナルを運営
イタキ港(公営)
NovaAgri
サイロ及び港湾ターミナル運営、輸出業務(今後集
荷事業参入予定)
(買収総額250億円、JBIC融資額132百万米ドル、2015年6月調印)
CGG
農地開発、集荷、サイロ及び港湾ターミナル運営、
輸出業務
(融資額94百万米ドル、2014年3月調印)
( 株)国際協力銀行(JBIC)の資料を基に作成
6.海外農業投資の事例②
○
三井物産は、2007年にブラジルで穀物の集荷・販売を行うマルチグレイン社に資本参加し、
当該社を通じて農業事業会社であるシングー社を傘下に収め、農業事業にも進出。2011年には
マルチグレイン社を完全子会社化。大豆をはじめとする作物の生産から輸出まで一貫管理する体制
構築。
【 事業方針】
・グローバルな食料需要に対応するため、最も生産余力があると言われるブラジルにおい
て、広大な農地と穀物物流インフラを保有するブラジル企業に出資。
【集荷・販売事業】(自社所有及びリース)
□ 港湾設備(大豆輸出5箇所 小麦輸入1箇所)
○ 倉庫及び積替設備(18箇所)
ー 鉄道運営会社のVALE社と長期鉄道輸送契約
【農業事業】
☆ 農場117千ha
△ 綿繰工場(5箇所)
マラニョン州
(9,864ha)
大豆・とうもろこし
イタキ 港
バイア 州 (97,074ha)
タブレロ農場
( 農業事業と集荷・販売事業)
・食の安全・安心・安定供給とバリューチェーンの構築
(非遺伝子組換大豆の生産等)
・企業型農業による高収益農業生産モデルの確立
・内陸倉庫・内陸輸送を絡めた広範な集荷網と穀物輸出
ターミナルを活用し、物流の最適化
大豆・綿花・とうもろこし
生産から輸出まで一貫管理体制の例
・タブレロ農場(灌漑設備保有)で、生育状況と品質の管理
ア ラ ツ港
ミナスジェラエス州
イリェウス港 (9,701ha)
大豆・綿花・とうもろこし
の下、非遺伝子組換大豆を栽培。
・収穫後、異物混入や他品種と混合しない物流ルートにより、
内陸貯蔵・内陸輸送から輸出(イリェウス港又はアラツ港)
ツ バロン港
サン トス港
資料:三井物産資料等から作成
農場(灌漑設備配備)
農場のサイロへ貯蔵
輸出ターミナル
7.海外農業開発の取り組み事例
セラード開発事業経緯・目的
セラード開発事業成果
・1974年に田中総理(当時)がブラジルを訪問し
た際のガイゼル大統領(当時)との共同声明及
び1976年の閣議了解に基づき、国家プロジェ
クトとして実施。
・ブラジルにおける農産物の生産増大、地域開
発の促進、世界の食料供給の増大と安定化へ
の貢献等が目的。
セラード開発事業概要
位置図
① 事業期間:1979年∼2001年
(第1期事業∼第3期事業)
② 資金協力事業:
・総事業費約684億円
セラード
(うちODA279億円)
・入植者717戸が、融資を受けて農地造成、灌
漑整備等を実施。34.5万haを開拓し大豆等を
生産
③ 技術協力事業及び共同研究事業等
【出典:日伯セラード農業開発協力事業合同評価調査総合報告書他】
① 事業の波及効果が大きく、セラード地帯の大豆
生産量が大幅に増大。
・大豆生産量は事業実施前後で約150倍に増。
②我が国の食料輸入先の多角化に貢献。
[日本の大豆輸入実績]
( )内は輸入数量の割合
1977年
2014年
アメリカ
342.8万トン
(95.2%)
184.9万トン
(65.4%)
ブラジル
5.8万トン
(1.6%)
59.0万トン
(20.9%)
11.3万トン
38.9万トン
その他
セラード地帯の耕地
大豆の作付け状況
11
8.(1)責任ある国際農業投資に向けた我が国の取組
○
我が国は、G8ラクイラ・サミットの機会に「責任ある農業投資」の促進を提唱し、国連総会の際に、ラウンド
テーブルを共催。そこで我が国の指針を紹介し、多くの国から賛意。現在、FAOなど4つの国際機関が中心にな
り、被投資国、小農を含めた現地の人々、投資家の3者が裨益するための「責任ある農業投資原則」(PRAI)を
策定し、PRAIの現場での検証と実用化に向けた取組みが進められている。我が国も世界銀行のパイロット事業
やFAOの責任ある農業投資のための政策ガイダンス策定等を支援。
○ これら成果は、世界食料安全保障委員会としての責任ある農業投資原則の策定に関する協議に貢献。
G8、G20、APEC等
日 本
2 0 09.07 G8ラクイラ・サミット
→行動原則の策定に取り組む
ことに合意
2 0 10.10 APEC食料安保大
臣会合(新潟)
→PRAIの国際的合意に向
けてCFSで議論していくこ
とに合意
2 0 11.06 G20農業大臣会合
( パリ)
→国際機関によるPRAIの検
証と実用化の事業を歓迎
2 0 12.05APEC食料安保担当
大臣会合(カザン)
→PRAIパイロット事業を歓迎
FAO:国際連合食糧農業機関
世銀:世界銀行
UNCTAD:国際連合貿易開発会議
IFAD:国際農業開発基金
AU連合:アフリカ連合
資
金
拠
出
FAO
共
催
世銀
UNCTAD
IFAD
2 0 09.09 「責任ある国際農業投資」ラウン
ドテ ーブル(ニューヨーク)
→ 国際機関による行動原則案
我が国の指針
2 0 10.04 ラウンドテーブル・フォローアッ
プ( ワシントンDC)
→ 責任ある農業投資原則(PRAI)
米国・AU連合
2009.10∼2013.06
FAOトラストファンド拠出事
業
パイロッ ト事業推進
農業投資データベース
整備
政策ガイダンスの作成
2011.06∼013.07
日本開発政策・人材育成基金(世
銀)
PRAIの現場での検証と実用化の
ためのパイロット事業
PRAI
成果をCFSの議論へインプット
FAO世界食料安全保障委員会
(CFS)
各国政府・国際機関のほか、市民社会組織、民
間セクターなど幅広い参加
「国家の食料安全保障の文脈におけ
る土地所有、漁業、森林の責任ある
ガバナンスのための任意のガイドラ
イン(VGGT)」
VGGT
2 0 12.05 38回CFS会合
→VGGTを採択
C FS としての
「 責任ある農業投資(rai)原則」
2 0 12.10 第39回CFS会合
→r ai原則協議プロセスを採択
→2 年後のrai原則の採択を目指す
rai原則
被投資国、小農を含めた現地の人々、投資家の3者が裨益する、責任ある国際農業投資
8.(2)土地所有等の責任あるガバナンスのための任意ガイドライン
○
FAOは、栄養不足と貧困の撲滅に向けた取り組みに貢献するため、「国家の食料安全保障の文
脈における土地所有、漁業、森林の責任あるガバナンスのための任意ガイドライン」(VG)を採
択(2012年5月)。
○ VGは、各国政府が土地等の権利に関する法律の策定や行政実施の際に参照する原則や実務的事
項を取りまとめたもの。土地所有に関して初めて国際的に合意されたもので、任意のものではある
が、貧困撲滅等に一定の効果をもたらすものと期待されている。
経緯及び概要
 FAOは、特に途上国における脆弱な土地所有管理が社会的
不安をもたらし、投資や経済成長の抑制を招いているとの観点
から、栄養不足と貧困の撲滅に向けた取り組みに貢献するため、
2010年、VGの作成に着手
VGは、各国政府、農業者団体、民間セクター等が使用すること
を目的とした拘束力のないガイドラインであり、土地所有等の管
理に関する規制(投資、再配分、収用、土地取引の上限設定
等)や手続き規則の必要性を記載。
任意ガイドラインの内容
第一部∼第七部で構成。主な内容は以下の通り。
第一部(導入):ガイドラインの目的、適用範囲(任意であるこ
と、各国の国内法及び国際法等と整合性が取れていること)
第二部(一般事項):責任ある所有管理の目的と原則、権利と
責任、法的枠組み等
第三部(土地所有権利・遵守事項に関する法的認識および位
置付け):権利保護、公共自然資源、固有・慣習的な土地に関
する権利、非公式な所有形態
第四部(土地権利・遵守事項の移管および変更):市場、投資、
土地区画整理・調整、賠償、再配分、土地収用・補償
2012年5月CFS(食料安全保障委員会)特別会合で採択。
第五部(手続き規則):土地登記、価値判定、課税、空間計画
規制、土地権利に係る紛争処理決議、越境に関する事項
被投資国、小農を含めた現地の人々、投資家の三者が裨益す
るための「責任ある農業投資原則」(PRAI)とVGは相補的な関
係。
第六部(緊急支援及び気候変動への対応):気候変動、自然
災害、暴力的紛争
第七部(実施、モニタリング、評価の促進)
8.(3)農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則
○ 2007-08年の世界的な食料価格高騰を契機として、途上国への大規模な海外農業投資が急増。その一部が「農地争奪」等と報じられ、国際社会
が注目。これに対し、我が国は、2009年G8サミットにおいて「責任ある農業投資」を提唱。これを契機として、FAO、世銀等国際4機関が中心となり、
被投資国、小農を含めた現地の人々、投資家の三者が裨益するための「責任ある農業投資原則(PRAI)」を策定(2010年)。
○ その後、FAOに事務局がある世界食料安全保障委員会(CFS)において、加盟国、民間企業、市民社会団体等を含む幅広い関係者が参加し、「責
任ある農業投資原則」を考慮しつつ、新たな原則を議論。2014年10月のCFS総会で「農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則」
が採択された。
原則の概要
(1 ) 導入 ●農業及びフードシステムにおける責任ある投資を促進し、食料への権利の実現を支援。●ステークホルダーの役割・責任を特定し、その
行動を導く枠組みを提供。●本「原則」は、任意で、法的拘束力を持たず、国内法・国際法における既存の意義と一貫して、解釈、適用される。
(2 ) 10の原則
原則2: 持続可能で包括的な経済開発と貧困
撲滅への貢献
原則3: ジェンダーの平等と女性のエンパワー
メントの促進
原則4: 若年層の参加とエンパワーメント
原則5: 土地所有、漁業、森林、水へのアクセ
スの尊重
農 業 及びフードシス
テムにおける責任あ
る投資 のための原則
原則1: 食料安全保障と栄養への貢献
原則6: 天然資源の保全、持続可能な管理、強靱
性の向上と災害リスクの減少
原則7: 文化遺産と伝統的知識の尊重、多様性と
技術革新の支援
原則8: 安全で健康に配慮した農業宇とフードシス
テムの促進
原則9: 包括的で、透明性のあるガバナンス構造、
諸手続、苦情処理メカニズムの包含
原則10: 環境の評価と対処、説明責任の促進
(3 ) ステ ークホルダーの役割・責任
国家、小農とその団体、農家を含む企業、市民社会団体等のステークホルダーの役割と責任、及びこれらに共通する役割。
Fly UP