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添削問題解答解説 5-2 資源と産業1(農林水産業) 1
5-2 本科 / Z Study 解答解説編 / 高校 理科地歴 地理 見本 添削問題解答解説 資源と産業1 (農林水産業) 1 RGA5C2-Z1C1-001 問題 《農牧業の立地》 次の世界の農牧業地域を区分した地図と文章A~Dに関して,下記の問に答えよ。 (25点) a e 0° a d b c e b c d c a b b d A 乾燥の激しい夏季には柑橘類などの樹木作物を,温暖湿潤な冬季には小麦などの穀物を栽 培し,地域によっては羊やヤギの移牧も行われている。 B 広大な放牧地を利用して,品種改良を重ねた高品位の家畜を最新技術により飼育している。 こうして生産された食肉は,冷凍処理されて世界各地に輸出されている。 C 熱帯林を焼き払って作った草木灰を肥料としてタロイモ・キャッサバなどを栽培している。 地力の消耗が激しく土地生産性が低いため,移動を余儀なくされる。 D モンスーンアジアの沖積平野で見られ,一般に経営規模は小さいが,その作物は人口支持 力が高く,この地域の人々の主食となっている。 問1 文章A~Dはそれぞれどの農牧業地域について説明したものか。地図中のa~eの中か らそれぞれ1つずつ選び,地図中の記号と名称を“f―園芸農業地域”のように答えよ。 (16点) 問2 世界の農牧業に関する次の文章中の1~3( )に適する語句を記せ。(9点) 農牧業の立地には,農作物や家畜にとっての生育条件,すなわち気候・地形・土壌などの 自然条件と,文化・技術・経済といった社会条件が大きくかかわっている。例えば,気候で はAなどで栽培される小麦は積算温度が1,900℃以上必要である。また,土壌ではデカン高 原に広がる( 1 )は綿花栽培に適している。経済では,労働力の豊富な地域ではDのよ うに( 2 )的農業が行われる。 世界の農牧業は大きく3つのタイプに分けられる。CやDは自家消費を主目的とした自給 的農牧業と見ることができる。これに対してAは商品化して販売することを目的としている ことから, ( 3 )的農牧業である。さらにこの形がより進展し,大資本の下で大規模に 行われるようになったBのような形態は企業的農牧業と見なすことができる。 RGA5C2-Z1C1-002 解答 問1 A b―地中海式農業地域 B d―企業的放牧業地域 C c―焼畑農業地域 D e―アジア式稲作農業地域 問2 1 レグール 2 集約 3 商業 解説 問1 本問は,アメリカ合衆国の地理学者ホイットルセーの農 牧業地域区分に基づいている。この農牧業地域区分は,自給 的か商業的か,粗放的か集約的かといった違い,作物と家畜の組合せな どを指標として,世界の農牧業を13の地域に区分したものである。 A 地中海式農業地域であることは,夏季の乾燥,冬季の湿潤といった地 中海性気候区の特色や「柑橘類」 「移牧」というキーワードから容易に ◀移牧は,アルプス地方や 判断できる。この農業地域は地中海性気候区の地域とほぼ一致し,地図 中のbに相当する。夏季の耐乾性樹木作物はオレンジなどの柑橘類のほ 地中海沿岸の山地で多く 見られる。 か,ブドウ・オリーブなどの果樹やコルクガシなどで,いずれもb地域 が世界的な産地であり,重要な輸出作物でもある。一方,冬小麦はこの 地域の人々の主食となる穀物である。 B 品種改良された家畜,食肉の輸出などの内容から企業的放牧業地域で あり,南北アメリカ大陸やオーストラリア大陸に多く分布する地図中の dに相当する。この農業地域は機械化が進み,きわめて大規模に牧畜が 行われているという特徴がある。 C 熱帯林,草木灰,タロイモなどから焼畑農業地域とわかる。焼畑が行 ◀焼畑は森林や草原の再生 われている地域は,熱帯雨林やサバナの広がる地図中のcの範囲である。 力を奪わない適正規模で c地域の土壌は,主にラトソルなどのやせた赤色土であり,地表の植生 を焼いてできた灰を肥料とする。 D 地図中のeが相当するアジア式稲作農業地域では,特に沖積平野にお いて人口稠密地域が形成されている。しかし,灌漑・機械化・品種改良 の進んだ東アジアの稲作と,緑の革命を経たとはいえまだそれらの普及 行われるべきだが,近年 のブラジルのアマゾン川 流域のセルバの破壊は, 人口増加による過度の焼 畑も一因に挙げられてい る。 が不十分な東南アジア・南アジアの稲作とでは,土地生産性に大きな差 がある。 なお,デンマークを中心とした北ヨーロッパや北アメリカの五大湖周 辺,オーストラリア東岸を含む地図中のaは,酪農地域である。酪農は, 冷涼な気候とやせた土壌のため穀物栽培には適さないが,大消費地に近 い土地で成立する場合が多い。やせ地を改良し,根菜類(カブなど)や 牧草(クローバーなど)を栽培して家畜の飼料とし,各種の乳製品を生 産している。 問2 1 インドのデカン高原に分布するレグールは,玄武岩が風化して 生成された肥沃な黒色の間帯土壌である。レグールは綿花栽培に適し, ◀綿花はアオイ科の植物で, 黒色綿花土ともいわれる。 2 集約的農業とは,単位面積当たりの肥料や労働力の投下量が大きく, かつ土地利用率の高い農業をいう。粗放的農業はその反対である。一般 生育期は高温多雨,収穫 期は乾燥を好む。 RGA5C2-Z1C1-003 に,アジア式稲作農業や園芸農業などは集約的農業であり,焼畑農業や 企業的穀物農業などは粗放的農業である。 3 世界の農牧業を,生産物をどう利用するかで区分している。もっぱら 自家消費に重点が置かれるものが自給的農牧業であり,農牧業のもとも との姿といえる。これに対し,生産物の商品化を主な目的としたものが 商業的農牧業である。その利潤性をさらに高め,大規模効率化した形態 が企業的農牧業である。これは資本主義経済の進展に伴い出現した。 ▼農牧業の区分 自給的農牧業 焼畑農業,遊牧,オアシス農業, 商業的農牧業 地中海式農業,混合農業(商業的混合農業・自給的混合農業) , 酪農,園芸農業(近郊農業・遠郊農業) 企業的農牧業 企業的穀物農業,企業的放牧業,プランテーション農業 集団制農牧業 かつて社会主義国で多く見られた農業 アジア式稲作農業,アジア式畑作農業 2 RGA5C2-Z1C2-001 問題 《世界の農牧業》 次の文章を読み,下記の問に答えよ。 (25点) 約₁万年前,人間は野生の動植物の中から有用なものを選び,作物や家畜として栽培・飼育 するようになった。その後,作物や家畜は原産地から他の地域に伝播していき,各地に特色の ある農耕文化を発生させた。これらの農耕文化は伝播していく過程で互いに影響を及ぼし合い, 現在世界に見られる様々な形態の農牧業に発展していった。 ①18世紀後半以降,西ヨーロッパで自家消費を主目的とする農牧業から商業的農牧業への移 行が進んだ。まず,中世ヨーロッパで広く行われていた( ₁ )が輪栽式農業へと発展し, それがやがて,穀物と飼料作物を輪作で栽培し,肉用家畜や家禽を飼育・販売する( 2 ) や②園芸農業などに分化していった。 20世紀に入ると,農牧業を合理的・企業的に経営しようとする動きが,北アメリカ・西ヨー ロッパ・ソ連・東ヨーロッパなどで広がった。特にアメリカ合衆国では,穀物生産部門を中心 にこのような経営による農牧業が高度に発達した。今日,アメリカ合衆国の穀物流通は ( 3 )と呼ばれる巨大穀物商社によって掌握されている。( 3 )は穀物の取引だけでな く,種子の開発, ( 4 )と呼ばれる肉牛肥育場の経営,飼料や肥料の供給など,多岐にわ たるアグリビジネスにも進出している。また,多国籍企業として世界各地に加工・流通・営業 の拠点を設置して,穀物に関わる情報を収集し,世界の穀物価格の決定に大きな影響力を持っ ている。 問1 文章中の空欄₁~4( )に適する語句を記せ。(12点) 問2 下線部①に関して,18世紀後半から西ヨーロッパで「商業的農牧業」への移行が進んだ。 この理由を,契機となった歴史的な出来事を明らかにして,40字以内で説明せよ。(6点) 問3 下線部②に関して,大都市から離れた地域で行われる「園芸農業」を何というか。 (3点) 問4 次のア~エのグラフは,米と小麦の生産国・輸出国(2004年)を示したものである。小 麦の輸出国のグラフに該当するものを1つ選び,記号を記せ。(2点) その他 24.3 8.4 アメリカ 合衆国 26.6% 世界計 1億1,880 万t フランス 12.5 カナダ 12.7 アルゼンチン 中国 14.6% インド 世界計 11.4 その他 51.2 6億2,956 万t 15.5 6.3 オーストラリア フランス パキスタン 6.3 10.6 9.3 7.2 アメリカ 合衆国 ロシア ベトナム その他 18.0 世界計 2,899 万t ベトナム 14.1 アメリカ合衆国 タイ 34.5% インド 16.5 その他 27.7 5.9 6.6 バングラデシュ 世界計 6億665 万t 8.9 中国 29.8% インド 21.1 インドネシア FAO資料による。 RGA5C2-Z1C2-002 問5 日本の農牧業に関する説明として正しいものを,次のア~エの中から�つ選び,記号を 記せ。 (2点) ア 日本は稲作農業が盛んなため,EUの主な国々に比べて食料自給率が高い。 イ 日本の農家は兼業化が進んでおり,農家の5割以上は副業的農家である。 ウ 1995年に日本の食料政策の根幹であった減反政策が廃止され,食糧管理制度が施行さ れた。 エ 1991年に鶏肉とオレンジが輸入自由化され,肉類と果実の自給率が低下した。 解答 問1 � 三圃式農業 2 混合農業 3 穀物メジャー 4 フィードロット 問2 産業革命により工業が発達し,都市に人口が集中して,農産物の需要が増大した ため。 (39字) 問3 遠郊農業(輸送園芸) 問4 ア 問5 イ 解説 問1 1 中世ヨーロッパで広く行われていた農業は三圃式農 業である。三圃式農業は,耕地を夏作地・冬作地・休閑地の 3つに分け,これらを毎年交代させて3年周期で一巡させる農法である。 夏作地では大麦・エン麦など,冬作地では小麦・ライ麦などが栽培され た。休閑地には家畜を放牧して,その排泄物で地力回復をはかった。 2 小麦・ライ麦などの食用穀物とカブ・テンサイ・牧草などの飼料作物 を輪作し,肉牛・豚など肉用家畜や鶏・アヒルなど家禽を飼育・販売す る農業を混合農業という。 ◀混合農業は土地生産性・ 労働生産性ともに高い。 3 アメリカ合衆国の,穀物の流通過程を一手に支配している巨大穀物商 社を穀物メジャーという。また,農畜産物の生産から加工・流通・販売 など,農牧業に関連する産業を総称してアグリビジネスという。穀物の 集荷・貯蔵・運搬だけでなく,種子の開発や農機具の製造など,各種の アグリビジネスに進出している穀物メジャーは,国内だけでなく,多国 籍企業として,穀物の国際市場にも影響を与えている。 4 アメリカ合衆国のグレートプレーンズやトウモロコシ地帯(コーンベ ルト)にはフィードロットと呼ばれる肉牛肥育場が見られる。 ◀肥育とは,家畜の肉量を 増やし,肉質をよくする 問2 「歴史的な出来事」として「18世紀後半」 「西ヨーロッパ」から,18 ために,運動を制限し, 世紀後半にイギリスで始まった産業革命を想起してほしい。産業革命は, 良質の飼料を与えて飼育 技術革新による工場制手工業から工場制機械工業への発展の結果起こっ することをいう。 た,産業・経済・社会の一大変革である。次に,商業的農牧業が市場出 荷を目的とした農牧業であることを踏まえて,産業革命と農産物の市場 拡大との関連が明確になるように論述を組み立てたい。18世紀後半,イ ギリスで産業革命が始まると工業が発達し,都市に労働者を中心に人口 が集中した。都市人口の増加に伴い農産物の需要が増大し,農産物の流 通が盛んになったため,市場への出荷を目的とする商業的農牧業が発達 した。 RGA5C2-Z1C2-003 問3 市場への出荷を前提とする園芸農業は,輸送費や鮮度の問題から大 都市近郊に立地する近郊農業が一般的であった。しかし,輸送手段や保 存技術の発達により,市場より温暖な暖地や冷涼な高冷地などの遠隔地 にも立地するようになった。このように大都市から離れた地域で行われ る園芸農業を遠郊農業という。遠郊農業は,遠距離輸送を伴うため輸送 園芸(トラックファーミング)ともいわれる。 問4 稲は生育期に高温多雨が必要で,米の主産地はモンスーンアジアで ある。小麦は成長期に冷涼湿潤,成熟期に温暖乾燥を好み,比較的冷涼 な温帯や冷帯の半乾燥地帯が主産地である。生産量>輸出量であること と併せて,アは小麦の輸出国,イは小麦の生産国,ウは米の輸出国,エ は米の生産国と判定する。小麦は商品作物としての性格が強いが,米は 自給用としての国内消費量が多く,輸出に向けられる比率が低い。 問5 ア EU(ヨーロッパ連合)の主要国は,EC(ヨーロッパ共同 体)時代からの共通農業政策などにより食料自給率を高めた。一方,日 本の食料自給率は米を除き非常に低い。 ウ 1995年の新食糧法の施行に伴い,従来日本の食料政策の根幹であった 食糧管理法(1942年制定)に基づく食糧管理制度が廃止された。減反政 策は1970年代初頭から本格的に実施されるようになった,米の生産調整 政策である。 エ 1991年に輸入自由化が実施されたのは,牛肉とオレンジである。