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デート DV の実態の検討(7)

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デート DV の実態の検討(7)
デート DV の実態の検討(7)
交際期間と加害行為・被害行為との関連
○松井めぐみ1・宮前淳子2・寺島瞳3・宇井美代子4・竹澤みどり5
(1岡山大学・2香川大学・3筑波大学・4玉川大学・5富山大学)
キーワード: デート DV,交際期間
A study of actual condition of Dating Violence (7): The relation with relationship length and offending or victimizing behavior
Megumi MATSUI 1, Junko MIYAMAE 2, Hitomi TERASHIMA 3, Miyoko UI 4 and Midori TAKEZAWA 5
(1 Okayama Univ., 2 Kagawa Univ., 3Univ. of Tsukuba, 4 Tamagawa Univ., 5 Univ. of Toyama)
Key words: Dating Violence, relationship length
目 的
デート DV や DV において,加害者は時間がたつにつれて
親密な関係の中でパートナーを支配し,恐怖を与えて服従さ
せる(日本 DV 防止・情報センター,2007)ことにより,被
害者は相手と別れることが出来ず,交際期間が長引くのでは
ないかと考えられる。一方で交際が長く続くのは,相手と適
切な関係を築けているためとも考えられ,交際期間の長さと
相手への加害行為,相手にされた傷つく行為との関連は明確
ではない。そこで本研究では,まずこれまで最も長かった交
際期間を訊ね,恋人にした加害行為,恋人からされた被害行
為との関連性をそれぞれ探ることを目的とする。
方 法
調査対象者,調査手続き,調査時期は全て,
「デート DV の
実態の検討(6)」と同じであった(竹澤ら,2012)。
調査内容:①最も長い(長かった)交際期間(以下,『最長
交際期間』),②自分が行った,恋人を精神的・身体的・性的
に,傷つけたり,見下したり,恋人が自分を怖い,嫌だと感
じるような行為(以下,『恋人にした行為』)③恋人にされて
精神的・身体的・性的に,傷ついた・見下された・怖い・嫌
だなどと感じた行為(以下,『恋人にされた行為』)の 3 つを
分析に使用した。
結 果 と 考 察
最長交際期間
調査回答者 158 名中,現在もしくは過去に恋人がおり,最
長交際期間を記入したのは 121 名(平均最長交際期間=16.75
ヶ月,SD=16.27)であった。交際期間の長さで 3 群に分けた
ところ,
「~6 ヶ月」の群は 32 名(27.05%),
「7 ヶ月~1 年半
まで」の群は 53 名(43.44%),「1 年半以上(~10 年まで)」
の群は 36 名(29.51%)となった。
恋人にした行為
KJ 法により,「拒否・冷たい態度」
「他の異性との関わり」
「別れを告げる」
「一方的な言動」
「欠点の指摘」
「怒る」
「見下
す」
「その他」の 8 カテゴリーが抽出された(竹澤ら,2012)。
恋人にされた行為
KJ 法により,
「見下し」
「浮気」
「嫉妬・束縛」
「ないがしろ・
放置」
「性的行為の要求」
「第三者への気のある素振り」
「約束
の反故」
「怒りをぶつける」
「趣味・主張の押しつけ」
「コント
ロール」「関係解消」「身体的暴力」
「性的行為の強制」「信頼
関係の破綻」
「性格への嫌悪」
「第三者への迷惑行為」
「その他」
の 17 カテゴリーが抽出された(竹澤ら,2010)。
最長交際期間と恋人にした行為との関連
『最長交際期間』と『恋人にした行為』との関連性を把握
することを目的に分析を行った。
『最長交際期間』を行,『恋
人にした行為』を列としたクロス表に対して,
「その他」を除
き双対尺度法を行い,分析結果を図にした。結果図とクロス
集計表から,交際期間「7 ヶ月~1 年半まで」の近くに「拒否・
冷たい態度」
「一方的な言動」
「他の異性との関わり」
「欠点の
指摘」が布置され,交際期間「1 年半以上」の近くに「別れ
を告げる」が布置されたが,交際期間「~6 ヶ月」は近くに
布置される行為がなかった。これらの結果から,交際期間が
短い人は,相手に対して傷つけるような行為をあまり行って
おらず,傷つける前に別れてしまっているのではないかと思
われる。逆に交際期間が「1 年半以上」と長い人の場合,
「別
れを告げる」以外の行為が近くに布置されなかったのは,ま
ず相手を傷つけるような行為をほとんど行わなかったため,
交際が長く続いたと考えられる。そして自分から「別れを告
げた」ことが,相手をとても傷つける行為であったと感じて
いるのであろう。また交際期間「7 ヶ月~1 年半まで」の人は,
最も多くの加害行為を行っている結果であった。おそらく,
半年以上付き合って,相手の欠点や嫌なところも目につくよ
うになり,相手に対する気持ちが揺らいでしまうため,冷た
い態度をとったり,他の異性と仲良くしてみたりという行為
をしてしまうのではないかと思われる。交際期間が半年を過
ぎ,相手のネガティブな面も見えてきた時に,傷つける以外
の方法で相手と付き合っていけるかどうかが,長く交際でき
るポイントなのかもしれない。
最長交際期間と恋人にされた行為との関連
『最長交際期間』と『恋人にされた行為』との関連性を把
握することを目的に分析を行った。
『最長交際期間』を行,
『恋
人にされた行為』を列としたクロス表に対して,
「その他」を
除き双対尺度法を行い,分析結果を図にした。結果図とクロ
「ない
ス集計表から,交際期間「~6 ヶ月」の近くに「浮気」
がしろ・放置」が布置され,交際期間「7 ヶ月~1 年半まで」
の近くに「嫉妬・束縛」
「性的行為の要求」
「見下し」
「関係解
消」「怒りをぶつける」が布置され,交際期間「1 年半以上」
の近くに「見下し」
「身体的暴力」
「約束の反故」
「浮気」が布
置された。これらの結果から,最長交際期間が「~6 ヶ月」
と短い人は,浮気や放置といった相手の心変わりを推測させ
る被害に多く遭い,交際が長続きしていないと思われる。交
際期間「7 ヶ月~1 年半まで」の人は,交際が進んで性的な行
為に関して被害を受けることが多くなり,束縛されるように
なるが,一方で関係を解消されて別れることもある。交際期
間「1 年半以上」の人は,見下されたり身体的暴力を振るわ
れたりする経験が多くなり,暴力や相手に対する恐怖から,
長期間付き合い続けたという可能性も考えられる。
ただし,本調査では恋人に対する加害行為や被害行為が,
最長交際期間中に行われたものであるのかどうかは確認して
いないので,関連性を正確に把握するためには,より詳細か
つ多人数への調査が必要である。
引 用 文 献
日本 DV 防止・情報センター(2007)デート DV ってなに?Q&A-
理解・支援・解決のために 解放出版社
竹澤みどり・寺島瞳・宮前淳子・宇井美代子・松井めぐみ(2010)
デート DV の実態の検討(1)-恋人との関係における否定的側
面の観点から- 日本心理学会第 74 回大会発表論文集,142.
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