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わが校の 取り組み・ 私の工夫 - Kei-Net

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わが校の 取り組み・ 私の工夫 - Kei-Net
《シリーズ》
わが校の
取り組み・
私の工夫
第
9回
― 推薦・AO入試編―
このシリーズでは、主に高等学校の取り組みや、個々の先生
方の実践事例を紹介する。
2008年11月から12月下旬にかけて、河合塾が高校教員を対
象に実施したアンケートでは、近年、拡大を続ける推薦・AO
入試について、
「
(積極的に利用したがる志向が)強まっている」
「やや強まっている」との回答が6割近くあり、推薦・AO入試
に対する生徒のニーズが高まっている様子が感じられる。
今回は、秋田県立横手清陵学院高等学校と宮崎県立高鍋高等
学校の2校の推薦・AO入試への取り組みをレポートする。
Contents
◇学校事例
秋田県立横手清陵学院高等学校 …… P30
宮崎県立高鍋高等学校 ……………… P33
※記事中の先生方の所属・分掌は、すべて取材時(2009年2月)のものです。
学校事例
秋田県立横手清陵学院高等学校
学びの特色を生かした
推薦・AO入試対策と
生徒の興味を志望動機に高める指導
400年の歴史をもつ小正月行事「かまくら」で有名
な横手市。JR奥羽本線の横手駅から東に2.5km に位
置する秋田県立横手清陵学院中学校・高等学校は、秋
打ち放しのコンクリートと木
材が組み合わされた現代的な
デザインの校舎
に創立された。文部科学省の中高一貫教育推進校の研究
指定も受けている(2004∼2006年度)
。
高等学校は、1学年が普通科3クラス、総合技術科2
田県立横手工業高校(昭和18年創立)を前身とする、
クラスで構成され、普通科・総合技術科それぞれ独自の
全国初の工業系学科をもつ公立中高一貫校である
特徴的なカリキュラムを通じて、生徒の進路選択をサポ
普通科と総合技術科を合わせもつ同校は、1期生が
ートしている。
受験する 2007 年度入試において、国公立大学の推
はじめに、2008年度に国公立大推薦・AO入試希望者
薦・AO入試で 26 名、一般入試を含めると延べ41名
9名全員を合格させた総合技術科の進路対策について見
の合格者を出し、注目を集めた。
今回は、3期生を送り出したばかりの横手清陵学院
高等学校の推薦・AO入試に関する状況を、進路指導
主事の木村利夫先生(数学)
、進路指導部副主任の小
山隆先生(数学)
、総合技術科担当の伊藤哲先生(工
業)にお話をうかがった。
てみよう。
総合技術科の前身にあたる横手工業高校時代は就職希
望者が大半を占め、企業への太いパイプにより県内外の
大手企業へも生徒を送り出してきた。成績上位層ほど就
職を希望する傾向が強かったが、現在は4 年制大学への
進学希望者と就職希望者の割合が
専門的な課題研究とユニークな面接指導が
推薦・ AO 入試突破の鍵となる
半々になってきている。「現状では
国公立大学に一般入試で合格する
学力は、まだまだ育っていません。
壮大な敷地に斬新なデザインの校舎を有する横手清陵
反面、推薦・ AO 入試で志望をか
学院は、中学校(1年生3クラス、2・3年生2クラス
なえる強みが総合技術科にはある
ずつ 計240名)を併設する中高一貫校として、2004年
と思います」(伊藤先生)。その強
30 Guideline April・May 2009
伊藤哲先生
みとは、高校時代の学習や活動が推薦・ AO入試の募集
(資料)横手清陵学院高校「清陵プロジェクトⅡ−探究−」
要件に合致し、評価されやすい点と、就職指導で培った
中学校1年∼3年
清陵プロジェクトⅠ
面接トレーニング方法にある。
基礎的探究スキルの習得
総合技術科では、2年次以降はシステム工学類(機
械・メカトロ技術)、情報工学類(電気・コンピュータ
技術)、環境工学科(土木・建築技術)を選択し、より
専門的な分野に進む。そこで、理論や実技を徹底的に学
びながら就職や学部選択の意志を固めていくことができ
る。さらに、週2コマの課題研究の時間では、自分の進
みたい分野や、興味のある分野を個人テーマとして深耕
する。テーマには、「移動する茶室(簡易茶室の製作)」
「エコカーの研究と製作」「相撲ロボットの製作」、「未来
エネルギーの研究」など、大学での研究につながりそう
な研究が並ぶ。こうした高校生活 3年間の学びや研究成
教科の活動
情報科・工業科
情報の収集・発信
公民科
情報の収集・新聞の見方
理科
探究活動
国語科
レポート・論文の書き方
高校1年
清陵プロジェクトⅡ
第1期「探究基礎」
活動はホームルーム単位
基礎的探究スキルの習得
探究プロセスの習得
高校2年
清陵プロジェクトⅡ
第2期「探究」
活動はゼミ単位
英語科
コミュニケーション
主体的・実践的な探究活動
他教科
関連事項の学習
高校3年
清陵プロジェクトⅡ
第3期「探究発展」
その他の活動
各種行事
・大学出前講義
・各種講演会
・韓国訪問
・企業・大学見学
・海外修学旅行 等
SSH関連活動
高大連携
探究的な部活動
・自然科学部
・メカトロ部
・家庭クラブ
主体的・実践的な探究活動
果を、推薦・AO入試で生かすことができる。実際の経
他教科の学びの意欲 進路への動機付け
験から志望動機を明確にしやすく、かつ志望する学問分
高い志をもって意欲的に人生を歩むことのできる人間
野に関連する研究成果をもっている点は、一つ目の強み
であるといえよう。
第二外国語として韓国語の授業や異文化理解に関する授
二つ目の強みは、長年の就職活動から生まれた面接指
業、人文コースには、社会や文化を考察する授業、数理
導にある。総合技術科では就職希望者、推薦・AO入試
コースには、数学特論、数学研究など深い理解を促す科
希望者ともに、3年次の4月になると面接指導が始まる。
目が、それぞれ設置されている。韓国のジョンバル高校
「面接練習は、廊下やホール、中庭など人目の多いとこ
とは年2回交流をもち、さらに中国、アメリカ、タイな
ろに椅子を持ち出して行います。せっかくしっかりした
どからの留学生を受け入れるなど国際交流にも積極的
考えを持っていても、緊張して思ったことを話せないよ
で、国際コースの生徒を中心に海外留学への意識も高い。
うでは面接官に気持ちがきちんと伝わりません。そこで、
2009年度入試において、普通科では、推薦・AO入試
視線が集まる場所であえて面接の練習をするのです。そ
で7名の合格者を出した。内訳は畜産系1名、農学系2
のうちに生徒は、周りの視線や雑音が気にならなくなり、
名、工学系3名、教育系1名と、
度胸が据わり、集中力が続くようになります」
(伊藤先生)
理系が6名を占める。東北大学工
ちなみに、小論文は800字程度のものを数多く書くよ
学部への合格者も誕生した。「コー
う指導している。2∼3日に1本のペースで書き、受験
ス独自の学びによる人間力の育成
までには最低でも10本は仕上げるという。強みが入試の
が、推薦・AO入試に合格する生徒
場面で通用するよう磨きあげるには、教員の働きかけに
を育てることとイコールになると
よるところが大きい。
期待しています」(木村先生)
木村利夫先生
普通科では、大学の推薦・AO入試枠が今後増加する
人間力の育成と志望動機の発掘を行い
推薦・ AO 入試への挑戦を促す
ことを見越して、進路の方向を明確にし、「○○大学で
次に、普通科を見てみよう。普通科では、2 年次から
着手している。その基盤となるのが、「清陵プロジェク
生徒の希望に沿って、国際コース、人文コース、数理コ
トⅡ― 探究 ―」である。総合的な学習の時間を利用した
ースに分かれる。コースの中身を、進路実現のためだけ
テーマ研究だ。1年次は進路探究・探究基礎、2年次は
でなく、教養を身につけ充実した学びを体験できるよう
分野別ゼミに所属し生徒自身が設定したテーマに対して
配慮しているのが特徴的だ。例えば、国際コースには、
個人研究を行う(資料)
。
学びたい」という志望動機発掘から指導する体制作りに
Guideline April・May 2009 31
わ
が
校
の
取
り
組
み
・
私
の
工
夫
第
9
回
︱
推
薦
・
A
O
入
試
編
︱
「2年生のテーマ研究では、
『うわさが発生する仕組み』
、
試合格者 26 人に対し、2年目は 13 人、3年目は 16 人と
『なぜ走幅跳で6m跳べるか』『輪廻の思想』など実にユ
年度によって上下している。これは 、その年の生徒の
ニークな題材が上がりました。こうしたテーマ研究に取
気質や学年教員の考え方によるところが大きく影響して
り組むことで、自分が何に興味があるのかを知ると同時
いる。
「国公立の推薦・AO入試の場合、積極的に声掛け
に、情報収集力、思考力、判断力、表現力を養い、小論
をすればそれなりの人数は揃いますが、合格率は下がり
文やディベートの技法を身につけていくことがねらいで
ます。逆に、選ばれた生徒だけが受験すれば、受験者数
す。日頃から興味があることをテーマに調べていくうち
は少ないですが、総合技術科のように全員合格も可能で
に自分の進路の方向性が見えてくる生徒も現れ、推薦や
す。推薦・AO入試は今や、欠くことのできない入試制
AO入試への足掛かりとなるケースも少なくありません」
度の一つ。日々の教育の中で基礎学力と人間力を育て、
(木村先生)。このように意識の喚起を促し、積極的な動
機を持つ生徒が、推薦・AO入試を志望するようになる。
9 月になると希望する生徒を対象に面接・小論文指導
興味の方向を見出し、合格へとつなげていくよう努めな
ければなりません」
(木村先生)
総合技術科では資格取得(危険物取扱者、電気工事士、
がスタートする。「総合技術科では
初級システムアドミニストレータなど多数)に積極的で、
早くから面接の練習があちこちで
そのための勉強を家庭学習とし、これをきっかけに家庭
始まっていますので、普通科の生
学習の定着を図っている。簡単に取得できる資格であっ
徒達も、徐々に心の準備をするよ
ても合格するとさらに難度の高い資格に挑戦する気持ち
うです」(小山先生)。面接指導に
が生まれ、自分の興味ある学系以外にも関心を持つよう
になる。学ぶことへの興味や楽しさが、普通科目への関
は、担任のほか、それぞれ専門の
立場から指導を行う教員にも協力
小山隆先生
心にもつながっていくようだ。
を仰いでいる。そのひとりが、キャリアアドバイザーだ。
4月からは、いよいよ中学1年から横手清陵学院で学
面接慣れし、よどみなく答える生徒も、質問の角度を変
んだ生徒が高校3年生になる。中高一貫教育の成果に、
えると途端に揺らぎだす。キャリアアドバイザーは、教
期待が高まることだろう。
員とは別のアプローチで将来のことを尋ね、考えさせ、
志望の意志を固めさせる一翼を担っている。また、秋田
県が全国で初めて実施した博士号取得者対象の教員募集
で採用された教員が、同校には 2名赴任している。専門
秋田県立横手清陵学院高等学校
◇所在地:秋田県横手市大沢字前田147−1
分野は素粒子論とモーターなど電力工学で、博士号を持
つ教員による専門的な口頭試問と突っ込んだ面接だ。こ
うした教員による本番さながらの模擬口頭試問を経験す
ることで、知識も度胸も身についていく。
「小論文指導では全教員が協力し、生徒の志望する学
科や系統に関連の深い教員が担当します。夏休み終盤か
らスタートして提出・添削を繰り返すうちに、初めは何
を言いたいのかわからない文章が多いのですが、材料の
集め方や文の組み立て方、伝える力などを学んでいき、
10 本くらい書くころには文章もしっかりします」(小山
先生)
日常の学びの延長線上に
推薦・ AO 入試を据える
同校では、第1期卒業生の国公立大学の推薦・ AO入
32 Guideline April・May 2009
◇設立: 2004年(平成16年)4月
◇学級編成:[全日制]普通科:1学年3クラス 総合技術科:1学年2クラス
◇総生徒数:591名(2008年4月7日現在)
◇特色
工業系学科をもつ中高一貫校として、中学校のカリキュラムに
旋盤などの実技授業を取り入れるなど、製造技術に関心を持たせ
るような環境が整っている。部活動も盛んで、加入率は8割を超
える。男子・女子陸上競技部、水泳部、男子ソフトテニス部、柔
道部、バドミントン部などは、県大会で優秀な成績を修めている。
また、メカトロ部は全日本ロボット相撲東北大会「高校の部」で
1位、2位を独占した。無線部は韓国にて開催されたARDF大会世
界選手権への出場を果たしている。
◇卒業生の進路:2008年(平成20年)3月卒業生
・卒業生173名(大学・短大等進学者102名 専門学校等進学者
32名 就職ほか39名)
・進学先内訳 国公立大29名 私立大66名 国公立短大5名
私立短大2名
学校事例
宮崎県立高鍋高等学校
入学者層の変化が
全教員が一致団結する進路指導体制を生み出した
路指導体制の強化につながり、そのノウハウを蓄積する
東に日向灘を臨む高鍋町は、宮崎市より大分県寄り
に車で40分ほどのところに位置している。高鍋藩秋
月家3万石の城下町としての歴史を持つ町だ。
宮崎県の高校入試制度変更により、宮崎県立高鍋高
等学校は、今までとは異なる進路意識、学力層の生徒
を迎えることとなった。2008年度も例年通り、28名
の国公立大学への推薦・AO合格者を送り出したとは
いえ、今まで通りの進路指導方法で対応するには困難
礎となった。
まず、高鍋高校の推薦・AO入試に関する2008年度の
年間スケジュールを見ておこう(資料1)。3年生の4月
から、推薦・AO入試への取り組みが活発に行われてい
ることに気がつく。5月には、推薦志望者をリストアッ
プし、生徒に対する個別の働きかけが始まる。推薦・
AO入試希望者の予備調査、三者面談を経て、夏休み中
が予想された。こうした背景の中、危機感をもって取
には、生徒全員の調査書をほぼ完成させている。それと
り組んだ2008年度の進路指導を、篠原有三教頭先生、
いうのも、秋の出願時期は授業も佳境に入る。さらには、
光永憲一進路指導主事、井之上稔先生(国語)に振り
推薦書や志望理由書の作成、小論文指導、面接指導にも
返っていただいた。
時間が割かれるので、担任の負担を少しでも軽減するた
めに調査書を早期に作成するという方法がとられている
時期を前倒しにして臨んだ1年
全教員による進路指導体制を強化
(資料 1)高鍋高校 2008年度 推薦・AO入試への
取り組み計画(1 学期)
わ
が
校
の
取
り
組
み
・
私
の
工
夫
第
9
回
︱
推
薦
・
A
O
入
試
編
︱
「面接指導などでは『なぜ、その大学に行きたいのか』
『大学に入ったら何をしたいのか』『将来はどうなりたい
のか』この3点がベースになります。これらは、推薦・
AO入試を受験するかどうかに関わらず、その後の人生
の基本方針を、生徒と教員が共有することに他なりませ
ん。ここに、大きな教育的意義があります」(篠原教頭)
宮崎県では 2008 年度より、公立高校普通科の通学区
域が撤廃され、全県一学区制に変わった。これにより、
高鍋町周辺の生徒も、近隣の宮崎市、西都市の高等学校
への進学が可能となった。それまで、コンスタントに
80 名程度の国公立大学合格者を輩出してきた高鍋高校
にとって、進学指導体制の変更を余儀なくされた。大学
進学希望者も著しく減少し、教員は今後への危機感を募
らせることとなった。
しかし、例年にない緊張感は、結果的に基礎学力向上
への取り組みや、推薦・AO入試への取り組みなど、進
Guideline April・May 2009 33
のだ。推薦希望者が決定した時点で、管理職を含む全教
員が生徒一人ひとりの指導を担い、小論文や面接・集団
討論の指導が始まる。そして、本番。発表。合格発表後
全教員による参加体制を整え
国語科、担任の負担を軽減
には、生徒と保護者を対象に1月以降の学校生活を指導
面接や小論文指導の方法にも
する。引き続き補習を受講しセンター試験を受験するの
工夫がなされた。面接指導では、
はもちろんのこと、パソコン技術の習得や第2外国語な
まず同じ系統の学部・学科を希
ど、大学入学後のための準備学習を促している。
望する生徒で4∼5名のグルー
プを作った。指導に当たるのは
受験大学を拡大するため
県外の大学にも出向いて情報収集
高鍋高校が 2008 年度、特に力を入れた取り組みのひ
3 年生の担任や管理職を含む運
営委員会のメンバーだ。「この方
光永憲一先生
法だと担任以外が面接指導者に
とつに「大学視察訪問」が挙げられる。3年生の担任が
なる確率が高くなり、生徒を別の角度から評価すること
県外の国公立大学を自ら訪問し、大学担当者より推薦・
ができます。また、文系志望の生徒には、国語・地歴・
AO入試の概要を聞きとるというものだ。訪問先は23大
公民の教員が、理系志望の生徒には数学・理科の教員が
学、北は東北大学にまで及んだ。「この視察の背景には、
担当するように組めば、口頭試問の指導も充実します」
受験する大学を拡大したい、という狙いがあります。宮
(光永先生)。進路指導部がまとめた「合格への道シリー
崎大学一極集中では、県内の高校での競い合いとなって
ズ 面接・口頭試問・集団討論編」では、面接や集団討
きます。それを避けるためには、県外、特に九州以外の
論で取り上げられるテーマを学系別に分類し、教員の指
大学を視野に入れる必要があると感じました。とはいえ、
導内容を一定以上に保てるよう配慮している。解答例も
そういった大学の推薦・AO入試への知識やノウハウが
併記してはいるが、生徒には解答例を示さず、自分の言
十分とは言えません。そこで、3年生の先生方に全国に
葉で伝える指導を心がけた。特定の生徒を担当するこの
行っていただいたのです」
(篠原教頭)
方法は、教員の責任が明確になり、指導教員としての意
集められたデータは、推薦・AO入試希望者を対象と
した説明会で報告する。また、大学視察報告書(資料 2)
識も高まる効果もあった。
小論文についても、同様に全教員が担当教員となって
にまとめられ、全教員の資料となる。報告書には要項か
指導にあたった。「国語科の教員が、経済状況や芸術面
らは読み取れない大学側の生の声が盛り込まれた。例え
に必ずしも詳しいとは限りません。専門や得意分野を持
ば、「AO 入試では、自己推薦書がつまらないと一次試
つ教員が指導担当になることで、国語科の負担を軽減す
験で落ちる」「センター試験は一定の学力の担保」「生徒
るだけでなく、指導内容も充実します」
(篠原教頭)。さ
の生の息づかいを聞
まざまなテーマで最低 10 本は書くように声を掛けたと
くためにも、志望理
(資料2)高鍋高校 大学視察報告書
いう。
由書に手を加えるの
小論文・面接それぞれの担当教員は、課題が1つ終わ
は最小限にしてほし
るごとに生徒が持参する「推薦入試カレンダー」(資料
い」など。こうした
3)に印鑑を押し、クラス担任は、一週間に一度、進捗
活動の成果は、筑波
状況をチェックする。「推薦入試カレンダーは、受験終
大学、横浜国立大学、
了後に集計し、『合否を分けたものは何か』を分析する
広島大学、山口大学、
基礎資料にします。ちなみに今年の合格者は、小論文欄、
都留文科大学など九
面接欄ともに 10 以上の印鑑が押してある生徒がほとん
州以外の国公立大学
どでした」
(光永先生)
の合格者となって現
われている。
高鍋高校のこうした一連の活動を支えたのは、全教員
を巻き込んだ体制に他ならない。「管理職や副担任、
1・2年生の担任、臨時教員全員に、学校全体で一丸と
34 Guideline April・May 2009
(資料 3)高鍋高校 推薦入試カレンダー
れば、今年以上に早めの展開が
可能になるでしょう」
(井之上先生)
推薦入試カレンダー
○
○
○
○
さらに、基礎学力の定着を目
出願書類締切日、試験日、合格発表日を朱書きすること。
小論文1編につき1個の印鑑を担任の先生からもらうこと。
面接(集団)、口頭試問の練習1回につき1個の印鑑を担任の先生からもらうこと。
1週間に1度担任に提出しチェックを受けること。この用紙は試験が終了したら担任
に提出すること。
的に1・2年生に向け自宅学習
の課題を毎日出す、という例年
受験校( ) 3年( )組 ( )番 氏名( )
日 曜
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
10月
日
小論文 面接
1
2
3
4
5
6
7
中間テスト
8
中間テスト
9
中間テスト
10
11
模試
12
模試
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
県進学模試
29
県進学模試
30
曜
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
11月
日
小論文 面接
1
模試
2
模試
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
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15
16
17
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24
25
期末テスト
26
期末テスト
27
期末テスト
28
期末テスト
29
30
31
曜
になかった動きを行っている。
12月
小論文 面接
月
火
水
木
金
土 模試
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土 模試
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
一方、いままでAO入試対策に
井之上稔先生
ついては、推薦入試に比べて積
極的とはいえなかった。しかし、難関大学に挑戦させる
ためには、AO入試対策も必要だ。「入学当時は、専門学
校に行きます、と言っていた生徒が何かをきっかけに変
わり、学業にも積極的になり成績も向上する。しかし、
せっかくやる気になっても、推薦入試では評定平均値が
足かせになってきます。大学進学に前向きになった生徒
には、学力もしっかりつけさせた上で、ぜひAO入試を
薦めたい」(篠原教頭)
高校時代に頑張った生徒を、一人でも多く希望に沿っ
た進路に送り出したい。推薦・AO入試に対応するため
生徒の育成をしているわけではなく、本来の教育活動の
延長線上に推薦・AO入試への挑戦があるという高鍋高
なって取り組んでほしい、と機会があるごとに呼びかけ
校の基本的な考え方が、ここにもまた反映されている。
わ
が
校
の
取
り
組
み
・
私
の
工
夫
ましたが、教員もよく応えてくれました」
(篠原教頭)
2009 年度はさらに前倒しし
2 学期は学力向上に専念を
宮崎県立高鍋高等学校
◇所在地:宮崎県児湯郡高鍋町大字北高鍋4262
同校では、受験に関するガイダンスや企業見学会、マ
ナー講習会、大学教授を招いての出前講座を2008年度は
17回実施している。これに加え、2009年度以降、進学へ
の意識を喚起させるために、総合的な学習の時間などを
◇創立: 1923年(大正12年)財団法人高鍋中学校開校
1948年(昭和23年)学制改革により近隣3校を統合して設置
◇学級編成:[全日制]普通科:1学年6クラス 生活情報科:1学年1クラス
利用して、学部・学科別の横断的なコースを設置したい
◇総生徒数:826名(2008年4月現在)
と考えている。早い時期から将来のイメージや学部学科
◇特色
安永7年(1778年)に創立された藩校「明倫堂」の建学の精神
を受け継ぐ、今年創立86年を迎えた歴史と伝統を持つ高校。山形
県立米沢興譲館高等学校は、姉妹校である。部活動が盛んで、加
入率は7割を超える。なかでもラグビー部は、連続6回花園(全
国高校ラグビーフットボール大会)への出場を果たす偉業を成し
遂げている。女子テニス部も全国総合選抜大会へ2年連続4回目
の進出を決めた。他にも、ホッケー部、空手部、水泳部などが県
大会で優勝、あるいは上位の成績を収めている。また、文化部で
は、放送部、美術部、書道部などが、団体・個人の部で優秀な成
績を収めている。
への理解を促し、3年生の4月には推薦・ AO入試を含
めた意思決定をさせる。さらに余裕をもって面接・小論
文対策に時間とパワーを割ける体制を築きたい。受験対
策のスタートが早まれば受験への意識が高まり、一般入
試を希望する生徒も夏休みや2学期は学力向上に専念と
考えてのことだ。「前倒しで動いたことにより、例年だ
とドタバタする9月や10月に手厚い対応が取れたことが
結果に結び付いたと考えています。現在は、3年生の1
学期を意思決定の時間にしていますが、2年生の3学期
には推薦志望者のリストアップができるような体制を作
◇卒業生の進路先:2008年(平成20年)3月卒業生
・卒業生 288 名(大学・短大進学者 169 名、専門学校等進学者
81名、就職ほか38名)
・合格者内訳(延数):国公立大78名、私立大119名、短大43名
Guideline April・May 2009 35
第
9
回
︱
推
薦
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