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www.drklaw.com 1 DRKLAW TALKS 73: 解雇 著者はこれまで、様々な
April 2010
DRKLAW TALKS 73: 解雇
著者はこれまで、様々な理由から、労働市場における雇用機会と解雇の新しい姿について、
注目をしてきました。雇用は、経済成長や個人に与えられた機会を示す指標となっているほ
か、法的に見ても、極めてシンプルな調和を保っています。もっとも、解雇が問題となる事
案では、使用者と労働者の双方に、公正さや正当性、あるいは法律上の是正手段について、
疑念が生じるのが通常です。本稿では、解雇の構成要素や解雇が労使双方に与える影響に加
え、どのようにすれば、この問題を平和的に解決できるのか、という点について解説します。
【解雇の意義】
労働法上、「解雇」とは、使用者が労働者による労働を拒否し、かつ、使用者が労働者に対
して賃金を支払わないことを言います。使用者は、解雇を実施した場合には、解雇手当
(severance payment)等の補償金を支払い、かつ、労働法が定める要件を順守すべき法的な
義務を負います。ただし、これは、法律が一定の事由を定めて使用者による解雇手当の支払
を免除している場合(例: 労働者が使用者の財産や名声に損害を与える意図を有していた場
合等。)を除きます。
【実務における解雇】
もっとも、実務的には、解雇には様々な異なった側面がありえます。例えば、使用者として
は、解雇対象となった労働者が重要な就業規則に違反したため、これにより、解雇手当支払
の有無を問わず、解雇の適法性を裏付ける十分な理由になると考えるかも知れません。これ
に対し、労働者は、自らが不当に解雇されたと思い込むかも知れません。
この場合、解雇対象となった労働者が労働裁判所(the Labor Court)に提訴し、不当解雇で
ある旨を主張すると、労働裁判所から次のような判決が下される可能性があります。
(1)労働者が就業規則ないし労働法に明白に違反しており、これにより使用者に解雇権が認めら
れる場合には、使用者には解雇手当その他の補償金を支払うべき義務はない旨の判決が下さ
れる可能性があります。
(2)不当解雇が認定されなかった場合には、使用者に解雇手当の支払義務を認めつつも、労働法
が定めるもののみ支払えば良い、とする判決が下される可能性があります。
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(3)裁判所が不当解雇を認定した場合には、(法定の解雇手当の支払に加えて、)使用者に対し、
(i) 当該労働者を同一賃金ないし賃金率で直近の地位にて職場復帰させることを命じる判決が下
される場合があり、また、
(ii) 使用者と解雇対象となった労働者とが共に稼働することはもはや不可能と裁判所が判断
した場合には、労働裁判所設置及び労働事件訴訟法に基づく補償金(compensation)を労働
者に支払うことを命じる判決が下される可能性があります。なお、この補償金の額の決定に
際しては、裁判所は、当該労働者の年齢、勤続年数、解雇により当該労働者に生じうる困難
の程度、解雇理由、当該労働者に支給される解雇手当の額等の諸要素を考慮します。
【解雇手当その他の補償金の支払を要さない解雇の具体例】
労働者が以下に該当する場合、解雇手当その他の補償金の支払は、概ね必要とされません。
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その職務を不誠実に執行し又は使用者に対し刑事犯罪行為を行なった場合。
使用者に対して故意に損害を生じさせた場合。
その職務を不注意に執行した結果、使用者に損害を生じさせた場合。
警告書が発せられている場合において、公正な就業規則又は業務命令に違反した場合。
連続する 3 労働日にわたり欠勤した場合。
終局判決により懲役刑/禁錮刑とされた場合。
【労働裁判所判例上の不当解雇の具体例】
労働裁判所は、解雇の不当性については、事案ごとに検討します。不当解雇の具体例は、以
下のとおりです。
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使用者の事業が損失を計上せずに複数年継続してきており、かつ、使用者が利益を計上
しているか、あるいは利益剰余金を有しており、又は使用者に財政難に陥る兆しが見られな
い場合における解雇。
組織再編ないし会社の再建に関し、合理的かつ適切な必要性が使用者に認められない場
合における解雇。
労働者に帰責性のない事由を理由とする解雇(例: 労働者の配偶者が競合他社で稼働し
ていること等。)。
合理的かつ適切な理由がない解雇(例: 労働者が使用者とは異なる意見を有している
等。)。
労働契約ないし就業規則に定められた事由以外の事由を理由とする解雇。
差別的意図ないし害意をもってなされた解雇。
いずれの場合においても、会社(= 使用者)の事業目的に従い会社を代理して活動する署
名権限ある取締役(authorized director)等の法定代理人は、会社に代わって活動している
以上、個人的な責任を問われることはありません。
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【労働裁判の回避に関する著者からのコメント】
労働裁判所における不当解雇訴訟を避けるには、使用者としては、解雇に関する合理的で疑
念の余地のない判断基準を盛り込んだ明確な就業規則を考案し、公表しておく必要がありま
す。また、使用者は、例えば就業規則の違反が生じるごとに警告書を発し、あるいは解雇予
告(termination letter)中において解雇の理由を記載しておく等の、適用法令が要求する
法的手続を順守する必要があります。
もっとも、使用者において、その解雇が不当解雇と解されるのかが判然としない場合には、
当該労働者の退職にあたり、使用者側から金員を上乗せして支払うことを提案すれば、これ
を労働者が受諾することにより、労使間で問題を平和裏に解決することも可能です。双方が
このように合意できれば、労働者としては職歴に汚点を残さずに済み、使用者としても不当
解雇訴訟に要する出費を削減できるものと思われます。
* Dherakupt International Law Office Ltd. (“DRK”)
シニア・パートナーAnuphan Kitnitchiva 弁護士
パートナーMonchai Vachirayonstien 弁護士
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