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商品魅力の
特集
2
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2
ブ
ウェ 乗り 、
に
流
時
を
す
出
生み
ト
ッ
ヒ
商品魅力の
伝え方革新
ウェブ2.0時代の到来で、口コミが簡単に全国レベルで広
がるようになった。商品も広告もはんらんする今、消費者に
はほかの消費者の声が一番響きやすい。
それゆえ、2006年に大ヒット商品を生み出したマーケッター
は変化対応力を強く求められた。彼らの奮闘ぶりから見え
てきたのは3つの教訓だ。
杉山 泰一 [email protected]
教訓1 ●社内常識を疑え!● トヨタ自動車「bB」
現地現物で顧客の今をつかむ ―――――― 148
教訓2 ●売る気になるな!●タカラトミー「赤ちゃんけろっとスイッチ」
共感力を磨いてじわり攻める ――――――― 152
教訓3 ●知恵は社外でつかめ!● 明治製菓「アミノコラーゲン」
伝え方も消費者とともに育てる ―――――― 154
●時流はこうつかめ● 大塚製薬・サントリー・三菱電機・花王
調査を徹底し、自社流を確立せよ ――――― 156
APRIL 2007
日経情報ストラテジー
147
教訓
2
売る気になるな!
タカラトミー「赤ちゃんけろっとスイッチ」
具で
ー玩
ビ
の
ベ
未踏
50
万個
共感力を磨いてじわり攻める
ぐずり泣く赤ちゃんを笑顔に変えるメロディー
ベビー玩具一筋。育児に奔走する母親の大半はネ
を奏でるぬいぐるみ。数年の研究開発を経てタカ
ットの活用度が高いと実感していた。忙しくて外
ラトミーが2006年7月に発売した「赤ちゃんけろ
出できないので7∼8割がパソコンを所有という調
っとスイッチ」は空前の大ヒット商品となった。
査結果もあった。
「以前は育児誌が情報源のすべ
ベビー玩具は10万個で大ヒットといわれるが、こ
てだったが、この3年ぐらいでガラっと変わり、コ
の商品は12月末までに26万個出荷し、派生商品
ミュニティーサイトも重要になった」
を含めれば2007年3月末に50万個に届く勢いだ。
成功要因の1つは、徹底的に母親の身になって
徹底して
「ありのまま」
を発信し続ける
商品魅力の伝え方を考えたこと。CMや雑誌広告
川添はまず「ベビータウン」
「ベネッセウィメン
は打たず、口コミを起こす施策の実行を徹底した
ズパーク」など母親や女性向けの有力なコミュニ
のだ。口コミでじわりと火が付いた商品は、桁外
ティーサイトでアンケートを実施し、母親たちの
れの大ヒットやロングランになりやすい。
情報の集め方を定性分析。次のようなことが裏づ
マーケティング担当の川添陽子は入社以来6年
けられた。
「ママたちは宣伝くさいことを嫌う。特
にオピニオンリーダーはそう。メーカーが『効果
ある』といっても信頼性がない。せっかくの新機
能も宣伝くさいと関心をひけないし、彼女らに認
知してもらわないと情報は広がらない」
ベビーマーケティングチーム主任
の川添陽子。希望小売価格が
2310円の「赤ちゃんけろっとスイ
ッチ」は約半年で26万個売れた
川添が決断したのは、売りたい気持ちを抑えな
この教訓の
1
2
つのポイント!
ありのままの情報を発
信し続ける
先進ブロガー(オピニオンリー
ダー)
は客観的な情報を好む
外部との協業を積極的
に実践
先進ブロガーとの自然な接点
を増やす
© Disney
152
日経情報ストラテジー
APRIL 2007
特集2
昨年9月6日のロイ
ヤルベビー誕生の
際に都心で急きょ
実施した商品の無
償 配 布 イベ ント。
パブリシティー 効
果が大きかった
がら、商品の「ありのまま」の情報を発信し続け
ることだ。他社との協業にも積極的に取り組み、
母親が商品に自然と触れる機会を増やす。広告を
集中投下して即座に販売に結びつけるやり方と違
って商品がほとんど認知されない怖さがあるが、
口コミが盛り上げる時期はコントロールできない。
いわば、急がば回れ作戦だ。
例えば上記のような母親が多いコミュニティー
の参加者に数十万通のメールマガジンを送り、商
くのマスメディアで取り上げられ、ネットでも話
品の存在をさりげなく告知。また紙媒体やネット
題になった。ブログや電子掲示板でけろっとスイ
媒体など多数の編集部に商品を貸し出し、ありの
ッチの話題が増え始めたのもこのころからだ。
ままの評価記事をたくさん書いてもらった。
協業作戦については、例えばTOHOシネマズ
「広告なし」
にドン引きした営業を説得
(東京・千代田)が運営する映画館で子連れの母
実は、一連の口コミ創出戦略を実行に移すまで
親向けに上映する特別な時間帯に、商品を無償
に社内の壁を2つ突破した。1つは幹部と営業部
で貸し出した。TOHOシネマズのこの企画には流
門が集う四半期ごとの最重点商品選考会。けろ
行に敏感なオピニオンリーダー的な母親が多い。
っとスイッチは2006年3月の選考会でベビー玩具
口コミを期待できる。
「けろっとスイッチをTOHO
として初めて選ばれた。おかげでベビー事業部の
シネマで見ました。スゴイいろいろやってるんで
営業部隊だけでなく、全社の営業部隊が男性客
すね∼」などの反響があり、狙い通りだった。ま
の多い家電量販店など普段と違う小売店まで売り
たショッピングセンターなどにある「こども写真
込んでくれた。この手厚い営業体制も口コミを喚
館スタジオアリス」の約90店でも貸与し、近接す
起し、記録的な販売数を後押しした。
る玩具ショップでの購入を促している。
2つ目は「宣伝計画を説明したら営業がドン引
消費者と商品のリアルな接点を増やす協業作戦
きしたこと」と川添は苦笑する。
「宣伝はパブリシ
の重要性は日々高まる。従来は井戸端会議レベ
ティーと口コミだけ」と言い切ったので、営業部
ルだった口コミが、いまは全国区に化けやすい。
門は不安に感じたのだ。もっとも川添は多数の母
それゆえターゲットが好む出来事に即応できれば
親の調査や意見、創設以来ベビー部門にいる先輩
多大な効果を期待できる。川添には9月6日のロ
の助言などを通じ、情報武装もできていた。だか
イヤルベビー誕生時の逸話がある。展示会で多忙
ら「ほかにはない機能があるから、パブリシティー
を極めていたのにたった5日の準備期間で、人脈
に掲載されやすい、口コミされやすい、他社と協
を駆使し、都内のいくつかの小売店で無償配布イ
業しやすい、オピニオンリーダーの目にとまりや
ベントを開いたのだ。川添が店頭に立つ様子は多
すい」と熱弁をふるって押し通した。 (文中敬称略)
APRIL 2007
日経情報ストラテジー
153
3
教訓
知恵は社外でつかめ!
明治製菓「アミノコラーゲン」
伝え方も消費者とともに育てる
を
万円
千
数 年で
4
0
0
1
億円
初年度の売り上げはわずか数千万円。それが4
商品魅力の伝え方を徹底的に見直し、社内の
年で年商100億円に化けた。明治製菓の美容食品
懐疑的な意見を幾度も乗り越えた伊藤の最大の武
「アミノコラーゲン(アミコラ)
」だ。
アミコラはコラーゲンを摂取するための食品。
器。それは驚異的な行動力だ。社内各部はもちろ
ん、時には大学教授を、時にはカリスマモデルの
個人の体質にもよるが、コラーゲンはハリのある
門をたたく。
「マーケティングはブランドに対する
美肌づくりに良いといわれている。
好意の創出が最終ポイント。そのためには独自性
同商品の発売を始めた2002年時点では「コラ
が必要で、極端に言えば自分が感じたことをやっ
ーゲンは塗るもの」というのが消費者の常識。飲
て、売る側の心を見せるべきだ」
。伊藤の行動力
む商品は画期的だったが、販売は苦戦した。マー
はこんな信念に支えられている。
ケティング担当の伊藤喜一は発売数カ月後に上司
から怒鳴られた。もっとも伊藤が所属する健康事
社外にも個人的なマーケティングチーム
業マーケティング部は多数の商品を抱え、アミコ
過去の成功体験に頼りがちになる社内の議論だ
ラはさほど期待されていなかった。担当者が誰な
けでは視野が狭くなりがち。そこで伊藤は、社外
のかもあいまいで十分な宣伝もしてなかった。
に個人的なマーケティングチームを作った。メン
バーは全部で3人。別の商品の販促のプレゼンテ
ーションを受けたのをきっかけに知り合ったプロ
モーション会社の2人が参加する。会社のしがら
健康事業マーケティング部
マーケティンググループ課
長代理の伊藤喜一。アミコ
ラは粉末、ゼリー、ドリンク
の3タイプある
みの無い環境で、プロが3人集まって議論すれば
この教訓の
1
2
154
日経情報ストラテジー
APRIL 2007
しがらみの無い社外
人脈を太くする
外部の意見や人材を徹
底活用
情報発信消費者 か
ら学ぶ
先進ブロガーの動きは次
の宣伝施策の鏡
つのポイント!
特集2
新鮮で有効なアイデアが生まれやすい。
「3人とい
う人数も絶妙。2人の意見が分かれても、誰かが
フォローするので話が先に進みやすい」
伊藤はマーケティングに関する長年の経験や社
外チームでの議論などを経て、
「アミコラはおいし
くはないので、効果を頭で理解しないと飲み続け
てもらえない。消費者の心理は『認知』『理解』
『購入』
『継続』に大別できる。今回の宣伝活動は
『理解』にじっくり時間をかけるべきだ」という仮
健康食品では異例の高頻度で内容を更新し続けている小冊子。サンプル
商品と一緒に配る。ターゲット層に人気の嶋田夫妻のインタビューも掲載
説を立てた。しかも、サンプルと一緒に配る小冊
子やウェブサイトを上手に活用すれば、消費者に
策だと考えた。広告代理店の女性に相談したとこ
対して継続的に深い『理解』を促しやすい。
ろ、嶋田ちあきと嶋田真理子を薦められた。有名
まずは自分自身が商品への理解を深めるべき
だ。そう考えた伊藤は、2003年度のてこ入れ策を
なメイクアップアーチストとモデルの夫妻だが、
広告にあまり出ないことでも知られていた。
練る際、コネもツテも無い大学教授を訪ねた。コ
そこで伊藤は、個人的なファンの1人としてア
ラーゲンの美容効果を徹底的に学ぶためである。
ミコラ1ケース10缶を嶋田夫妻の事務所に送った。
こうしてできた小冊子は、
「なんでこんなに字が
しかし音沙汰はなかった。ところが、である。半
細かいの」
「グラフなんて読まれないよ」
「マニア
年後に偶然目にした嶋田真理子のインタビュー記
ック過ぎる」などと社内から冷ややかな声が出た。
事。お気に入り商品の1つとしてアミコラが紹介
しかし美容に関心が高く情報発信意欲も高い消費
されていたのだ。翌日、伊藤は事務所を訪問。意
者に受けた。年に1∼2回という高頻度で小冊子
気投合した嶋田夫妻は広告や冊子に登場してくれ
を更新し続けるうち、ネット上に口コミを書く人
た。2006年からはアミコラ専用サイトでブログを
が増えたのだ。そんな情報発信消費者をつかむ意
執筆。毎日多数のコメントが届く人気ぶりだ。
義は長期的に見ても大きい。消費者による情報の
アミコラは2004年度と2005年度に化粧品の口
発信手段がブログから別の何かに変わったとして
コミサイトである「アットコスメ」の美容サプリ
も、それをキャッチアップする可能性が高いから
メント部門で年間口コミランキング1位を獲得す
だ。そこから次の有効な宣伝手段を見つけやすい。
るほど、認知度が高まっていった。現在は2006年
競合がうらやむカリスマを味方につけた
春に放映した初のCM効果もあるのでなおさら。
社内には「サンプル配布はもう止めていいのでは」
さらに消費者の『理解』を促すためにはターゲ
という声もある。だが伊藤はこう言う。
「冊子を
ット層である「30代の働く女性で美容にお金をか
更新し続けることで『自分たちと一緒にアミコラ
ける人」が共感しやすい人を味方につけるのが得
も育っている』と感じてほしい」
APRIL 2007
(文中敬称略)
日経情報ストラテジー
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