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英国の石油・エネルギー産業 - 石油エネルギー技術センター

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英国の石油・エネルギー産業 - 石油エネルギー技術センター
JPEC レポート
JJP
PE
EC
C レ
レポ
ポー
ートト
第 17 回
2014 年度
平成 26 年 11 月 6 日
英国の石油・エネルギー産業
米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポート
を主なベースとして、英国の石油・エネルギー産業
について紹介する。
1.
2.
3.
4.
5.
英国の位置と地勢
英国の主な一般情報
英国の主なエネルギー情報
北海ブレント原油
英国のエネルギー事情
英国の位置と地勢
図 1 のように、
英国はグレート
ブリテン島にス
コットランド、
イングランド、
ウェールズ、ア
イルランド島北
東部の北アイル
ランドの 4 つの
カントリー
(country)から
構成されている。
図 2 に示すとお
り、島の周囲は
北海、ノルウェ
ー海、
北大西洋、
アイリシュ海に
図 1 英国の 4 つのカントリー
囲まれている。
スコットランドの西部および北部海域にはヘブリディ
ーズ諸島、シェトランド諸島、オークニー諸島などの
島々が点在している。本国以外にアルゼンチン沖のフ
図 2 英国の概略地図
ォークランド諸島、カリブ海に浮かぶ英国領ヴァージ
ン諸島・カイコス諸島・ケイマン諸島など多くの海外領土も保有している(図 3 参照)
。
1.
1
1
2
3
3
5
JPEC レポート
図 3 英国の海外領土
2.
英国の主な一般情報(表 1 参照)
通称国名
表 1 英国の主な一般情報
英国
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
正式国名及び国旗
政体
首都
人口
公用語
通貨
名目 GDP
欧州連合(EU)加盟状況
立憲君主制
ロンドン
6,410 万人(2013 年)
英語
スターリング ポンド(GBP)
2 兆 5,360 億ドル(2013 年)
加盟(但し、EU の通貨統合には不参加)
2
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3.
英国の主なエネルギー情報(表 2 参照)
表 2 英国の主なエネルギー情報
英国
石油輸出国機構
(OPEC)
石油確認埋蔵量
石油の輸出入
原油精製能力
製油所数
ガス輸出国フォーラム
(GECF)
天然ガス確認埋蔵量
天然ガスの輸出入
特記事項
非加盟
30 億バレル
純輸入国
152.3 万 BPD
9
非加盟
0.24 兆 m3
純輸入国
非在来型炭化水素資源の
推定可採埋蔵量
シェールガス:0.74 兆 m3、
シェールオイル+コンデンセート:7 億バレル
北海ブレント原油
世界の原油価格のベンチマークとして最も広く使われている北海ブレント原油とは図 4
中の油田から産する 4 つの原油(Brent Blend 原油、Forties Blend 原油、Ekofisk 原油、Oseberg
原油)を混合したものを言う。Brent Blend 原油と Forties Blend 原油は北海の英国水域、
Ekofisk 原油と Oseberg 原油は北海のノルウェー水域から産出される。
4.
Brent Blend 原油は約 40 の油田からの原油をブレンドしたもので軽質かつ硫黄分が少な
い。Brent Blend 原油と名付けられた後、かつて豊富に産した Brent 油田からはほとんど産
出しなくなっている。1984 年のピーク時には Brent 油田単独で 40 万 BPD 生産していた。
他の 5 つの主要油田(Thistle、Dunlin、Cormorant North、Ninian、Magnus)の 1980 年代半
ばの生産量は 10 万 BPD を超えていたが、2012 年の生産量は約 7 万 BPD に減っている。
Brent Blend 原油はパイプライン経由で BP 主導の企業連合が操業しているシェトランド諸
島の Sullom Voe 石油基地へ移送されている。
一方、Forties Blend 原油は北海の英国海域の広範囲にわたって分布する 70 の油田からの
原油をブレンドしたものである。その中で Buzzard 油田が最大で 2013 年に英国の北海産原
油合計の約半分に当たる 17.9 万 BPD を生産した。
3
JPEC レポート
図 4 北海ブレント原油の構成油田(4 油田)の位置図とパイプライン
過去 5 年間に亘り Forties Blend 原油を除く 3 原油の出荷量は概して減少し、Forties Blend
原油は 2012 年から 2013 年にかけて約 7%伸びた。一方、ノルウェー石油監督局(NPD)
は Ekofisk 油田と Oseberg 油田からの石油回収を改善しようと試みている。因みに、2010
年から 2013 年までの北海ブレント原油の出荷量は平均 100 万 BPD であった。
北海ブレント原油の生産量の先細りは世界のベンチマークの価格変動を増す懸念を高め
ている。2014 年初頭、数年先にノルウェー産原油の生産量が少なくなれば、北海外の原油
を加え北海ブレント原油のベンチマークの手法を変更することが議論されたことがある。
北海ブレント原油の生産量が落ちているにも拘らず、当該原油の先物契約の人気は根強く
為替取引量の増加によって証明されている。
これらの油田は英国、特にスコットランドとノルウェーの経済水域の境界線付近に多く
存在しているが、油田の権益が英国政府の支配下にあること、スコットランド予算が英国
政府に決められている等の背景から、独立の気運が高まり、2014 年 9 月には独立住民投票
が行われた。投票は僅差で反対票が上回ったが、これを受けて英首相はスコットランドへ
の権限移譲を進める意向を示している。
4
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5. 英国のエネルギー事情
5.1. 各種エネルギー資源に関する概要
英国は EU 加盟国の中で最大の産油国であると同時に、オランダに次いで 2 番目に大き
い天然ガス生産国である。
英国の石油と天然ガスの生産量は 1990 年代後半にピークを迎え、
その後徐々に減少している。同国は何年もの間石油と天然ガスの純輸出国であったが、天
然ガスは 2004 年に、原油は 2005 年に純輸入国となった。さらに、2013 年には石油製品に
ついても純輸入国になってしまった。英国政府は国産エネルギー資源の減衰に対処するた
めの主要なエネルギー政策を打ち出した。即ち、既存の成熟油田と成熟ガス田からの増進
回収、エネルギー効率のアップ、化石燃料使用量の削減、ノルウェーとのエネルギー交易
の促進、再生可能エネルギーへの多大な投資による脱炭素指向などである。
図 5 左図のとおり、英国の一次エネルギー消費量合計は 2004〜2012 年の間に 16%減少
した。この減少は主にエネルギー集約型産業、エネルギー効率の改善、景気後退などが寄
与した結果である。
2000〜2012 年の間に発電分野における再生可能エネルギーの使用量は3 倍以上に増えた
が、依然として石油と天然ガスが英国のエネルギー消費量の大部分を占めている。図 5 右
図のとおり、
2012 年実績では石油と天然ガスが全エネルギー消費量のそれぞれ 37%と 33%
を占め、石炭も 16%を占めている。
図 5 英国の一次エネルギー消費実績(2001〜2012 年)
5.2. 石油
5.2.1. 石油分野の管理機構
石油探査ライセンスの授与を含む石油分野は英国のエネルギー&気候変動省(DECC)
によって規制・監督されている。2013 年 3 月、最新の貿易統計が英国のエネルギー資源の
輸入量が 1970 年代以来の最高レベルに達したことを指摘したため、
英国政府は石油と天然
ガス分野の継続的な開発を奨励する計画を示した。これらの計画は石油産業界が税金を確
実に準備すること、サプライチェーンの支援、従業員の技能開発などを含んでいる。
5
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英国政府は石油生産における直接的な利害関係を有していないが、石油分野の法人税と
補充課税(supplementary tax)からの収入が英国の法人税収入全体の約 25%を占めているた
め、政府にとって石油分野は重要な位置づけとなっている。2011 年以来、英国の大陸棚
(United Kingdom Continental Shelf:UKCS)における石油の生産や投資に影響を与える数
多くの税制変更があった。加えて、利益に石油収入税(petroleum revenue tax:PRT)が課
せられる油田に対する課税率について、以前は 75%であったものが 81%に上げられた。一
方、PRT の対象にならない油田は現在 62%(以前は 50%)の税金を払っている。
この増税の結果として、複数の UKCS プロジェクトは競争力が弱くなった。高い税金と
操業コストの増加が、新しい油田開発と利用されなくなった油田への投資を減退させてい
る。仮に増税がないとしても、UKCS での操業コストは老朽化した施設の解体費用によっ
て悪化し法外に高くなっており投資家を落胆させている。新しい税率が実行された直後、
スタットオイルの「Mariner 油田開発」とシェブロンの「Bressay 油田開発」を含むいくつ
かの開発プロジェクトが中断された。加えて、英国拠点の多国籍公益企業 Centrica 社は新
しい税率のもとでは多くのプロジェクトが非経済的だとみなして、全ての開発活動の見直
しを始めている。
5.2.2. 製油所
2012 年 7 月にイングランドの Coryton 製油所(17.2 万 BPD)が閉鎖されたことにより、
2013 年末時点の英国の原油精製能力合計は 152.3 万 BPD となっている。現在、英国には 9
製油所があり、内訳および場所は表 3、図 6 のとおりである。イングランド 5 製油所・ス
コットランド 2 製油所・ウェールズに 2 製油所あり、北アイルランドにはない。
インド拠点の多国籍複合企業体エッサールグループの子会社(Essar UK Ltd.)が英国最
大の Stanlow 製油所(27.2 万 BPD)を操業している。他に大きい製油所をもつ会社として、
エクソンモービル(ExxonMobil Rifining & Supply Co.)が Fawley 製油所(26.0 万 BPD)
、フ
ィリップス(Phillips 66)が South Killingholm 製油所(22.1 万 BPD)
、米国のバレロ(Valero
Energy Corp.)が Pembroke 製油所(21.0 万 BPD)を操業している。
2012年7月のCoryton製油所の閉鎖および、
他の複数の製油所で運転停止があったため、
2013 年における英国の石油製品生産量は対前年で 5.2%減少した。特にディーゼル燃料、
軽油、重油、航空燃料の生産量が大幅に減少した。
英国の製油所は一般的に自動車ガソリンと重油を製造している。そのため中間留分とジ
ェット燃料の内需を満たすことができていない。2014 年の英国の石油精製分野の政府レビ
ューによると、2012 年におけるディーゼル燃料の内需の 44%・航空燃料の 64%を輸入に依
存したとなっている。
6
JPEC レポート
表 3 英国の製油所概要
製油所
立地
原油精製能力
操業会社
South Killingholm
Eastham
イングランド
イングランド
Fawley
イングランド
Stanlow
Killingholm South
Humberside
Dundee
イングランド
22.1 万 BPD Phillips 66
2.7 万 BPD AB Nynas Petroleum
ExxonMobil Rifining &
26.0 万 BPD
Supply Co.
27.2 万 BPD Essar UK Ltd.
イングランド
20.6 万 BPD Total SA
スコットランド
Grangemouth
スコットランド
21.0 万 BPD
Petrolneos Rifining Ltd.
Pembroke
Milford Haven
ウェールズ
ウェールズ
21.0 万 BPD
10.5 万 BPD
Valero Energy Corp.
Murco Petroleum Ltd.
1.2 万 BPD AB Nynas Petroleum
9 製油所合計
152.3 万 BPD
図 6 英国の製油所の場所
7
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5.2.3. 石油パイプライン
英国には大規模な石油パイプライン網が構築されている。北海のプラットフォームで生
産された石油をスコットランドの沿岸部やイングランド北部沿岸部の石油基地へ運んでい
る。それらは次のとおりである。
・ BP は Forties 油田群と Cruden Bay 石油基地を結ぶ
「Forties-Cruden Bay パイプライン」
(口
径 36 インチ・全長 177km)を運用している。
・ 英国の Britoil 社は Bruce 油田およびForties 油田とCruden Bay 石油基地を結ぶ石油パイ
プライン(口径 24 インチ・全長 241km)を操業している。一方、カナダ拠点の Talisman
Energy 社は Piper 油田」
とオークニー諸島の Flotta 石油基地を結ぶ石油パイプライン
(口
径 30 インチ・全長 209km)を操業している。
・ シェルとエッソは共同でCormorant 油田とシェトランド諸島のSullon Voe 石油基地間の
石油パイプライン(口径 36 インチ・全長 150km)を操業している。又、そこには北海
の石油プラットフォーム群とこれらの本管を繋ぐ多くの小口径配管が存在する。
・ 英国の数少ない陸上の原油パイプラインとしては、BP が運用している Wytch Farm 油
田と Fawley 製油所およびサザンプトンの石油輸出基地を結ぶ地下埋設配管(全長
145km)が該当する。
・ 英国保有の国際原油パイプラインでは、コノコフィリップスが運用している「Norpipe
石油パイプライン」
(口径 34 インチ・全長 354km)がある。当該パイプラインの輸送
「Ekofisk 石油システム」内のノルウェーの油田群(ノルウェー水
能力は 91 万 BPD で、
域と英国水域の両方に位置する付随油田を含む)とイングランドの Teesside 石油基地
および製油所を結んでいる。
5.2.4. 石油の埋蔵量と生産
2014 年 1 月時点の英国の原油確認埋蔵量は 30 億バレルである。EU 加盟国中では最大で
あるが、2013 年 1 月の水準より 4.6%減少している。
英国の油田の大多数は図 7 の英国の大陸棚(UKCS)に位置し、石油生産のほとんどが
北海の中部および北部水域で行われている。2013 年には新プロジェクトに対し 230 億ドル
投資されたにも拘らず、UKCS での産油量は一定の比率で減り続けている。因みに、2012
〜2013 年の間にオフショア油田の産油量は 9%減少した。成熟油田の産油量減少に加え、
嵐と気象の悪条件が北海での石油生産を妨げている。2013 年に Buzzard 油田を含む多くの
油田が維持補修や計画外の停止のため産油量が落ちたことも要因の一つとなっている。
複数の石油会社が北海で多くの油田を開発した後、
英国の産油量は1980 年代半ばと1990
年代後半にピークに達した。しかし、それ以来英国の産油量は徐々に減少している。2013
年内にいくつかの新しい油田が生産を始めるが、その産油量が既存の成熟油田の減衰分を
埋め合わせるには不十分なため、英国の産油量は減り続けるであろう。EIA の短期エネル
ギー見通しも、英国の産油量は 2015 年を通して減少し続けると予想している。減少の主な
要因は、英国の油田の全体的な成熟と将来における油田の新発見の減少である。又、主要
8
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な消費市場に近いことが英国における探査活動の魅力であるが、最近の増税が長期的には
英国の油田開発の魅力に悪影響を及ぼすだろう。
カナダ・カルガリー拠点の Nexen 社が英国で最大の石油生産事業者で、2013 年に 5 つの
油田を操業し、英国の原油生産量合計の約 24%に当たる 18.8 万 BPD を生産した。2013 年
実績で最も産油量が多かった油田は Nexen 社が操業している Buzzard 油田(Forties Blend
原油構成の最大油田)で、年間平均 17.9 万 BPD 生産した。だが、同年に技術的かつ運転
上の問題が続き、当該油田の生産能力 20 万 BPD 超には達し得なかった。因みに、2007 年
に操業開始した Buzzard 油田は 2008 年に生産量のピークを迎え、その後 2013 年まで年ご
とに減ってきている。BP も主要な石油生産事業者で、英国のオフショアで 18 の油田を操
業し 2013 年に約 7.2 万 BPD を生産した。
英国産原油には Forties Blend 原油、Brent Blend 原油、Flotta 原油の 3 種がある。軽質で硫
黄分が少ない Forties Blend 原油と Brent Blend 原油については前述(4. 北海ブレント原油)
したが、Flotta 原油は英国産原油の中で最も品質が劣り且つ生産量も最も少ない。2012 年
の生産量はおよそ 5 万 BPD で、カナダ拠点の Talisman Energy 社が操業しているオークニ
ー諸島の Flotta 石油基地から出荷されている。
9
JPEC レポート
図 7 英国の大陸棚(UKCS)
5.2.5. 石油の消費と輸入
図 8 に示すとおり、英国の石油消費量は 2005 年の 180 万 BPD から徐々に減少し、2012
年から 2013 年は横ばい状態となっている。2012 年の石油消費量は図 9 のとおり、産業分
野(63%)と輸送分野(29%)でその 90%以上を占めている。1990 年以降、ディーゼル車
に切り替えるドライバーが増えたことと車の燃料効率が上がったことにより、自動車用ガ
ソリンの需要は落ちてきている。一方、中間留分特にディーゼル燃料と航空燃料の消費量
が徐々に増えている。因みに、2013 年の消費実績では燃料油が 36%、灯油系ジェット燃料
が 19%、自動車用ガソリンは 19%であった。
2013 年に英国は約 4 万 BPD の石油製品の純輸入国となった。これは石炭産業のストラ
イキのため石油製品の需要が増え純輸入国となった 1984 年以来では初めてのことである。
2012 年には国内の精製事業者は石油製品の内需の 61%しか満たせず、
残りの 39%は輸入に
10
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依存した。2005 年以来、英国は原油の純輸入国となっている。2013 年の原油輸入元は図
10 のとおり、ノルウェーが最大で 42%、以下アフリカ諸国(特にアルジェリア 14%、ナイ
ジェリア 13%)41%、ロシア 7%、サウジアラビア 4%と続いている。
図 8 英国の原油生産量と消費量(2001〜2013 年)
図 9 英国の分野別石油需要比率(2012 年)
11
図 10 英国の原油輸入元(2013 年)
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5.2.6. 石油の輸出
かつては主要な石油輸出国であっ
た英国は国内石油生産量の低下と共
に輸出量も低下した。しかし、英国
は原油と石油製品の純輸入国ではあ
るが、依然として欧州における最大
の石油生産国および輸出国の一つを
維持している。
2012 年に 57.6 万 BPD の原油を輸
出した。図 11 のとおり、輸出先の
80%以上は EU 加盟国で、特にオラ
ンダ(39%)とドイツ(26%)が多
い。EU に加盟していない国では、
韓国(12%)と米国(5%)が多い。
ドイツへの輸出原油は同国で精製さ
れ消費されているが、オランダへの
輸出原油は同国経由でさらに他の諸
国へ輸出される原油も含まれている。
図 11 英国産原油の輸出先(2012 年)
5.3. 天然ガス
5.3.1. 天然ガスの埋蔵量と生産
2014 年 1 月時点の英国の天然ガス確認埋蔵量は 2,430 億 m3 である。これらの多くは英
国の大陸棚(UKCS)の随伴ガス田、北海のオランダ水域に隣接した Southern Gas Basin の
非随伴ガス田、アイリシュ海の非随伴ガス田の 3 エリアに存在している。一方、天然ガス
生産は現在 Southern Gas Basin の Shearwater-Elgin エリアに最も集中している。当該エリア
には 5 つのガス田(Elgin、Franklin、Halley、Scoter、Shearwater)がある。
英国の天然ガス生産量は 2000 年にピークを記録して以来、毎年減り続けている。2013
年の天然ガス生産量は内需の 1/3 強を満たしたに過ぎず、益々輸入に依存するようになっ
ている。
5.3.2. 天然ガスの消費と輸入
2013 年の英国の天然ガス消費量は対前年 1%減の 736 億 m3 で、
自国産で賄ったのは 35%
で、残りは輸入に依存した。
(図 12 参照)
。2004 年から英国は天然ガスの純輸入国になっ
ている。2013 年実績では、輸入天然ガスの 84%はパイプライン経由で残りは LNG で輸入
している。
パイプライン経由の輸入天然ガスの約 60%はノルウェーから、
16%はオランダ、
7%はベルギーからであった。英国は 2030 年までに、天然ガスの 76%を輸入に依存しなけ
ればならないと予想されている。2012 年の天然ガスの消費先は図 13 のとおりで、発電
(23%)と家庭向け(40%)を合わせて全消費量の 63%を占め産業向けは 24%であった。
12
JPEC レポート
図 12 英国の天然ガス供給元
(2013 年)
図 13 英国の分野別天然ガス需要比率
(2012 年)
5.3.3. 天然ガスパイプライン
5.3.3.1. 国内天然ガスパイプライン
下記のとおり、英国にはオフショアのプラットフォームから沿岸部の陸上基地に天然ガ
スを運ぶ 4 つの国内天然ガスパイプラインシステムが構築されている。陸上基地に受け入
れた後、その天然ガスを全国に配送する責任は National Grid 社や Scotia Gas Networks 社な
どの公益企業が負っている。
・ シェルが運営している「Shearwater Elgin Area パイプライン(SEAL)
」
:Shearwater Elgin
Area からイングランドの Bacton 陸上基地へ天然ガスを送る。
・ エクソンモービルが運営している「Scottish Area Gas Evacuation パイプライン
(SAGE)
」
:UKCS の油田からの随伴ガスをスコットランドの St.Fergus 陸上基地へ送
る。口径 30 インチ、総延長 322km。
・ BP が運営している「Central Area Transmission System(CATS)
」
:北海中部のガス田群と
イングランドの Teesside 基地を結んでいる。口径 36 インチ、総延長 402km。
・ シェルが運営している「Far North Liquids and Gas System(FLAGS)
」
:
「Brent 石油シス
テム」の随伴ガス田とスコットランドの St.Fergus 陸上基地を結んでいる。総延長は
455km。
5.3.3.2. 国際天然ガスパイプライン
1つの企業連合体がイングランドの Bacton とベルギーの Zeebrugge 間の国際天然ガスパ
イプラインを運営している。1998 年に開通した当該パイプラインは双方向の操業が可能で
ある。即ち、順モードでは英国から天然ガスを欧州大陸へ輸出することができ、逆モード
では英国への輸入もできる。開通以来概ね順モードだったが、晩秋と冬期は逆モードの傾
13
JPEC レポート
向にあった。当該パイプラインは 3 段階で拡張され、現在の輸送能力は順モードで日量
5,660 万 m3、逆モードで日量 7,075 万 m3 である。
・ 英国は又、トタールが運営している北海ノルウェー水域の Frigg ガス田とスコットラン
ドの St. Fergus 天然ガス基地を結ぶ「Frigg ガスパイプラインシステム」を通じて天然ガ
スを輸入している。
・ 英国とアイルランドを接続している「UK-Eire ガスパイプライン」はスコットランドの
Moffat からアイルランドのダブリンまで走っている。
・ 2006 年 12 月 1 日、初めて英国とオランダを結ぶ「Balgzand-Bactongg ガスパイプライ
ン(BBL)
」が開通し、オランダ本土から英国へ天然ガスが供給され始めた。当該パイ
プラインは全長 236km で輸送能力は日量およそ 4,245 万 m3 である。
・ 英国とノルウェー間には 3 本の天然ガスパイプラインがある。2007 年に開通した
「Langeled 天然ガスパイプライン」は全長 1,173km で輸送能力は日量およそ 7,075 万
m3 である。北海の Sleipner Riser プラットフォームを経由して、ノルウェーの Ormen
Lange ガス田とイングランドのEasington を結んでいる。
「Vesterled 天然ガスパイプライ
ン」
は北海の Heimdal Riser プラットフォームとスコットランドの St.Ferguss 陸上基地を
結んでいる。輸送能力は日量およそ 3,679 万 m3 である。
「Tampen 天然ガスパイプライ
ン」は Stratfjord ガス田と FLAGS を結んでいる。輸送能力は日量およそ 2,490 万 m3 で
ある。
5.3.4. LNG
2011 年に英国の LNG 需要量が初めてスペインの需要量を上回り、EU 加盟国中で最大の
LNG 輸入国となったが、2012 年に英国の LNG 需要量は再びスペインに抜かれた。2012
年はパイプライン経由(主にノルウェーから)の天然ガス輸入量が増え、逆に LNG 輸入
量が落ちたためである。2012 年から 2013 年にかけては LNG 輸入量が 28%も減少した。な
ぜなら、英国での天然ガスの需要減と LNG の世界市場における競争の激化(特に原発を
停止している日本との強い競合)が主因であった。
今のところ、英国の輸入 LNG のほとんどはカタールから供給されているが、2013 年 3
月に英国拠点の多国籍公益企業 Centrica 社はヒューストン拠点の Cheniere Energy 社と米国
ルイジアナ州の Sabine Pass LNG プラントからの LNG を 20 年間に亘り輸入する協定を結
んだ。Cheniere Energy 社は輸出するために必要な認可を受ける必要があるが、2018 年内に
年間 24 億 m3(天然ガス換算)の LNG の輸出が始まる見通しである。
現在、英国は下記の 4 つの LNG 輸入基地を保有している。
・ ロンドン拠点の多国籍企業 National Grid 社が運営している Grain LNG 基地:イングラ
ンド南部・テムズ川河口のフー半島の東端のグレイン島(Isle of Grain)に位置してい
る。2005 年に稼動開始、天然ガス換算で日量 5,380 万 m3 の LNG の受け入れ能力があ
る。
・ 米国拠点の Excelerate Energy 社が運営している Teesside LNG 基地:2007 年 2 月から商
14
JPEC レポート
業運転を開始した。英国で 2 番目の LNG 受入基地である。且つ英国で最初の波止場で
の LNG 再気化基地で日量 1,130 万 m3 の天然ガスを英国市場に供給する能力がある。
・ BG、Petronas、4Gas の 3 社が共同で運営する Dragon LNG 基地:ウェールズ南部アイ
リッシュ海沿岸の Milford Haven に位置している。2009 年 9 月に稼動開始した。LNG
の受け入れ、貯蔵、再気化を行う基地で再気化能力は日量 1,640 万 m3 である。
・ カタール国営石油(QP)
、エクソンモービル、トタールの 3 社が共同運営する欧州最大
の South Hook LNG 基地:ウェールズの Milford Haven に位置している。2009 年 10 月に
稼動開始した。初期能力は日量 3,110 万 m3 であったが、フェーズ 2 で日量 5,940 万 m3
まで拡大した。
5.4. 非在来型炭化水素資源(シェールガスおよびシェールオイル)
英国の北部、中部および南部に広く分布している頁岩層(図 14 参照)の中に相当量のシ
ェールガスとシェールオイルが埋蔵されている。これに加えて、英国地質調査所(BGS)
の発表ではシェールガス原始埋蔵量は、23.3~64.6 兆 m3(中心値 37.6 兆 m3)であり、イ
ングランド北西部に英国の天然ガス需要の 40 年分のシェールガスの埋蔵があるとも報告
している。また、BGS
はイングランド南西部
Weymouth から南東部
Weald にシェールオイ
ルの埋蔵を発見したと
2014 年 7 月に発表し、
Weald 地域には北海の
1/3 の埋蔵量があると
述べた。
北米と比べて、英国
の頁岩層の地質はかな
り複雑である。又、英
国における頁岩層のテ
ストも未だ初期段階で
ある。最初のシェール
井探査が周辺断層の一
連の小規模地震の引き
金となり、18 ヶ月間一
時中断された。
その後、
政府はシェール開発の
環境リスクは小さく管
理できるとの結論を下
し、2012 年 12 月によ
り厳しい監視制御のも
図 14 英国のシェールガス/オイル資源分布図
15
JPEC レポート
とでのシェール採掘の再開を許可した。
<出典および参考資料>
(1) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、United Kingdom Country Analysis
Brief、http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=UK
(2) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、TODAY IN ENERGY (FEB.2,201
2) 、http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=4830
(3) dbd-data.co.uk 、http://www.dbd-data.co.uk/bb2001/uk.htm
(4) Cheniere Energy 、Home Page 、http://www.cheniere.com/corporate/about_us.shtml
(5) Talisman Energy 、Home Page 、http://www.talisman-energy.com/
(6) 外務省ホームページ、各国情勢 、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]
までお願いします。
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次回の JPEC レポート(2014 年度 第 18 回)は
「ノルウェーの石油・エネルギー産業」
を予定しています。
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