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北米
2016年11月17日
トランプ次期大統領の財政政策を見る
トランプ氏の政権移行チームは経済の優先事項に減税、規制緩和、貿易とインフラ投資をあげています。型破りな言
動ばかりが報道されていたトランプ氏ですが、債券、株式など市場の動向を占う上では政策の把握が大切です。
トランプ次期大統領:インフラ投資の資金確
保に向け、インフラ銀行設立を検討か
トランプ次期米大統領の政権移行チームは2016年11月16日
に「インフラ銀行」設立も含め、道路・港湾改修の資金調達方
法を模索していると述べています。インフラ銀行は大統領選
の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が提唱した構想で、トラ
ンプ陣営は選挙戦中、考慮に値しないと批判していました。ト
ランプ陣営はインフラ銀行は官僚に支配されると批判、新た
な政府機関を創設しなくてもインフラ資金は調達可能だと主
張、インフラ建設計画への民間投資の活用などを訴えてい
ました。
どこに注目すべきか:
トランプ政策、インフラ投資、CRFB
トランプ氏の政権移行チームは経済の優先事項として税金
(減税)、規制緩和、貿易そしてインフラ投資をあげています。
型破りな言動ばかりが報道されていたトランプ次期大統領で
すが、債券、株式など市場の動向を占う上でも政策について
把握することが大切です。
トランプ氏の政策は財政拡大であることを背景に米国国債
市場では国債利回りが上昇(価格は下落)しています。そこ
で、米政府の財政政策をモニターする超党派のNPO法人
「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」のデータをもとにトラン
プ氏の財政政策を振り返ります。
トランプ氏の政策が実行された場合債務残高対GDP(国内
総生産)比率がどこまで上昇するかをCRFBが試算していま
す(図表1参照)。7月の推計では同比率は127%と財政悪化
が懸念される水準でした。その後のトランプ氏の政策の調整
を反映して9月の推計では同比率は105%へと低下していま
す。内容を見ると、減税幅を縮小させたことなどが主な背景
で、債務持続可能性を維持するため、まだ高水準とはいえ、
現実的な数字へ歩み寄りを示したように見受けられます。
ただし、注意としてCRFBの試算でインフラ投資は空欄となっ
ています。トランプ氏は今後10年で1兆ドル規模のインフラ
ピクテ投信投資顧問株式会社
投資を画策しているようです。ただ、インフラ投資は民間資金
の活用も視野に入れる一方、インフラ銀行の話を持ち出すな
ど、財源の出所には不透明な要因も見られます。なお、図表2
ではクリントン氏がインフラ投資に見込んでいた額の2倍(過
去のトランプ氏の発言から)を推計値として表示していますが、
上ぶれする可能性は考えられます。
選挙が予想外の結果だったこと、大統領に加え議会も共和党
となったことから政策実行性への期待が高まり、特に国債市
場で大きな反応が見られます。しかし政策の中身は不透明な
部分もあり、冷静な対応も必要と思われます。
図表1:クリントン、トランプの負債(対GDP)の増加予想
150%
120%
90%
60%
30%
0%
7月時点 9月時点
87%
86%
127%
クリントン氏
105%
トランプ氏
※図表1はクリントン、トランプ氏の政策を実行した場合の10年後の政府債
務残高対GDP比率のCRFBによる推定値で、現在同比率は約75%
図表2:CRFBによるトランプ次期大統領経済政策コスト
項目
金額
社会保障関連
オバマケア修正
薬価引下げ
メディケイド改善
税制
法人税
個人所得税
項目
金額
-0.05 その他歳出
-0.60
-0.50
-0.45
国防費増額
-0.05
-0.60
インフラ投資
0.50
0.45
その他
-4.50 移民政策
-0.05
-0.70
-2.85 利払い
-0.90
合計
-5.90
-0.75 財政への影響
その他
※図表2のマイナスの数字は負債の増加を示す。単位は兆ドル、直近分
※CRFBはインフラ投資を含まないため図表2ではクリントン氏の倍を使用
※合計値「財政への影響」はCRFBの数字はインフラ投資を除いた-5.3兆ドル
出所:CRFB(Committee for a Responsible Federal Budget) のデータを使用し
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