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資料3-1 - 安全保障貿易情報センター
資料3-1 資料3-1 CISTEC ジャーナル 2010.1 発行 「CISTEC No.125 号の抜粋 2009年 米国政府及び産業界との対話」報告書 国際関係専門委員会 国際交流分科会 目次 I.はじめに ・・・・・・ 2 II.総括報告 ・・・・・・ 4 【帰国後の12月21日までの米国動向】 ・・・・・・12 III.訪問先個別議事録 ・・・・・・18 1. TechAmerica ・・・・・・18 2. GE(General Electric Company) ・・・・・・26 3. 財務省海外資産管理局(OFAC) ・・・・・・30 4. 全米製造業者協会(NAM) ・・・・・・34 5. 商務省BIS ・・・・・・41 6. エネルギー省(DOE) ・・・・・・50 7. ジョージア大学国際貿易安全保障センター(CITS) ・・・・・・54 8. 米国外国貿易協議会(NFTC) ・・・・・・64 9. 米国輸出入者協会(AAEI) ・・・・・・68 【略語集】 ・・・・・・73 添付資料 1 Ⅰ.はじめに 本年度は、春先はインフルエンザの流行から海外渡航自粛の企業が多く、最悪の場合は訪米ミッ ションの中止の可能性も存在していた。それゆえ、当初は訪米 WG とはせず、米国対話 WG とし てスタートした。2009 年 1 月に米国商務省が行った米国製部品(再輸出規制)に関するパブコメ に対し CISTEC として積極的な対応を行ったが、そのフォローや、新しい政権の標榜する 「Change!」が輸出管理体制にどのように影響するのかをたとえ訪問できずとも、情報入手し整 理する WG としての位置づけとした。米国対話 WG で事前に米国状況や、質問すべき内容の議論 を深めたことは、非常に有意義であった。また、結果としてインフルエンザの流行は深刻化して いるものの、海外出張や渡航自粛の部分はトーンダウンしたため、なんとか「米国政府・産業団 体との対話」を実施することができた。 今回は、米国輸出入者協会(AAEI)の厚意で下院外交委員会の政策スタッフであり、輸出管理法 (EAA)の作成責任者でもあるライス氏と面談が出来た。これも、長年の米国産業界との交流に よる関係性の強化と、CISTEC との意見交流の価値を評価してもらっていることによるものと考 える。さらに、エネルギー省(DOE)とも初めて面談を行い関係をスタートできたし、毛色がち ょっと違うが、輸出管理研究で有名なジョージア大の CITS(国際貿易安全保障センター)とも CISTEC 事務局の尽力から面談を持つことができ、関係の広がりを強く感じている。また、2008 年の欧州訪問時から、 「よりよい輸出管理のために」という整理で国際交流分科会として、産業界 として国際的な輸出管理の改善、効率化等の主張の投げかけを行っており、同様の内容を米国の 産業界にも投げかけ、大いに共感を得ることができた。 国際交流分科会としての、米国訪問は 2003 年から 1 年おきにこれで 4 回目となる。継続的な訪 問が対話の質を深め、CISTEC のステータス、すなわち日本の輸出管理業界のステータスを高め ていることは間違いなく、まさに「継続は力」であるという実感を持つ中、本年度も「継続」が できたことに安堵の気持ちを持っている。 我々は日々の輸出管理を行っているが、その法令・仕組みは、国際的な安全保障状況(=外交そ のものと言ってもよい)の射影である。オバマ政権となり、単独覇権主義から多極化、欧米の経 済問題(日本もだが)と中国の台頭と大きな国際情勢の変化は明白である。法制度という点での 我々への影響にはタイムラグがあり、今後も状況注視が必要であるが、我々の立場で最初の一歩 として注目すべきは、やはり米国の輸出管理体制の変化であろう。現時点では、確定情報が出る という段階ではなかったが、この時期に米国を訪問できたことは意義が大きかったと考える。我々 が肌で感じた部分をいくらかでも伝えることができたら幸いである。 今回も、米国輸出管理のリフォームを中心とした総括報告と、各社の訪問議事録との 2 段構成と した。 改めて、米国対話 WG のメンバー、訪米ミッションの参加メンバー、CISTEC 事務局の多大なご 2 尽力に感謝の念を表明したい。 今回の訪問先、参加メンバーを以下に記す。 「訪問先」 TechAmerica GE(General Electric Company) 財務省 OFAC(海外資産管理局) NAM(全米製造業者協会) 商務省 BIS(産業・安全保障局) エネルギー省(DOE) ジョージア大学国際貿易安全保障センター (CITS) NFTC(米国外国貿易協議会) AAEI(全米輸出入者協会) 下院外交委員会 NNSA(国家核安全保障局) 「訪米団メンバー」 団長:高野順一 (三井物産株式会社 ロジスティクスマネジメント部 次長) 団員:藤本修 (富士通株式会社 安全保障輸出管理本部業務監査室 室長) 団員:加藤雅代 (株式会社日立製作所 輸出管理本部管理部 主管技師) 団員:川野辺幸夫 (東レ株式会社 安全保障貿易管理担当部長) 団員:利光尚 (三菱商事株式会社 コンプライアンス総括部安全保障貿易管理室 室長) 団員:齋藤登 (株式会社東芝 輸出管理部 次長) 事務局:押田努 (CISTEC 専務理事) 事務局:加藤もえ (CISTEC 情報サービス・研修部 研究員) 事務局:福井誠司 (CISTEC 調査研究部 主任研究員) 「米国対話 WG メンバー」(訪米団メンバーを除く) 池田 洋一郎 (株式会社島津製作所 輸出管理室輸出管理グループ 専門課長) 岸木 克征 (豊田通商株式会社 審査部貿易管理グループ(東京) スーパーアドバイザー職) 高田 雅志 (日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 国際資材調達部 トレードコンプライアンスグ ループマネージャー) 小野 恵美 (日本電気株式会社 輸出管理本部 主任) 佐藤 直 (日本無線株式会社 安全保障貿易管理グループ) 西川 康郎 (富士フイルム株式会社 コンプライアンス&リスク管理部 主任技師) 小林 雄治 (丸紅株式会社 大谷 学 (三菱重工業株式会社 原子力部 部長代理) 木戸秋圭一 (三菱商事株式会社 コンプライアンス総括部安全保障貿易管理室 室長代行) 貿易管理部安全保障貿易管理室 室長) 以上 3 Ⅱ.総括報告 1 米国の輸出管理体制のリフォームについて 1-1 今回訪米時点までの流れ 本年度の訪米ミッションの最大のテーマが、現在米国が検討中の輸出管理体制のリフォームであ る。当然我々の関心事は、①現在どのように進められており、②どのような方向にリフォームが なされ、③どのようなタイムテーブルで行われるか?ということになる。良い意味でも、悪い意 味でも米国が世界の輸出管理に与える影響は大きい。再輸出規制がある以上、直接の影響を受け るし、また、米国の改変の方向が日本の輸出管理体制の方向付けに少なからず影響を与えうる点 で間接的な側面があることは、言うまでもない。 米国では各種の産業団体が輸出管理の改善を働きかけてきたが、これらの団体が、輸出管理の近 代化を通じて安全保障と競争力の強化を図るという御旗の下に結集し、2007 年に CSC(Coalition for Security and Competitiveness)を結成してブッシュ政権に提言を行った。CSC はその後も 参加団体を拡大しながら、輸出管理の改革を求める活動を継続している。今回は、その中心であ る TechAmerica や NAM、NFTC との面談や、EAR(輸出管理規則)の根拠法である EAA(輸 出管理法)の書き換えを担当している下院外交委員会の中心スタッフである Rice 氏との面談から の情報をもとに、現時点でのリフォームへの流れをまとめてみたい。 まず、2009 年に起こった注目すべきトピックを整理すると下記のようになると考える。 (1) 1 月 米国学術会議による「Beyond “Fortress America” National Security Controls on Science and Technology in a Globalized World」 (2) 1 月-2 月 BIS での Parts & Components に関するパブコメの募集 (3) 8 月 オバマ大統領の指示と Berman 下院外交委員長の表明 (4) 9 月 CSC のレター (5) 10 月 Locke 商務長官のスピーチ(重要) 1-2 主要トピックの概要 それぞれの内容について、簡単に概要・大意をまとめる。 (1) 「Beyond “Fortress America” National Security Controls on Science and Technology in a Globalized World」(2009 年 1 月) TechAmerica 等で、この発表の影響が大きかったと情報を得た。日本ではそれほど大きな話題に はならなかったが、まさにタイトルの Beyond Fortress America(アメリカ要塞を越えて)に象 4 徴されている興味深い内容である。確かに大きな影響を与えていると感じるところである。 まずこのレポートでは、現状の認識を下記のように行っている。 冷戦時は、 ① 軍事技術、軍事転用可能な両用技術を含め、全般の科学・技術について米国が世界的にリー ドしており、これを敵対勢力に渡さないことが安全保障上重要であった。 ② また敵対勢力はソ連を中心とする東側陣営であり、単純且つきわめて分かりやすかった。 現状は、 ① そもそも軍事転用技術といってもむしろ民生側の技術が軍事的に応用発展する中、米国自体 が科学・技術をリードする状況になっていない。 ② 敵対勢力が単純に見える形になっていない。独裁国家から国家に依存しないテロリストの小 グループまで広がり、要塞の内と外という単純な図式では到底整理できない。 ③ むしろ、米国は科学・学術技術交流を深め、さらに優秀な才能をどんどん取り込まないと、 経済的発展が望めない状況である。現在の輸出管理やビザ発給の仕組みは明らかに、これを 阻害しており、このままでは米国の国力が低下する。これこそが、逆に国家安全保障の弱体 化に繋がる。 突き詰めると、技術の漏洩(貨物の不正移転も含む)リスクは、低減することは可能だが、ゼロ にすることは無理、原理原則にこだわるとリスクは低減されないまま、経済面での問題が出てく る。経済面の弱体化も国家安全保障の問題である。 (直接的な安全保障政策が優先するという構図 を否定している。) この結果として、下記のような幾つかの提案がなされている。 リストの見直し: 特に米国独自規制品目(ECCN の 900 番台)の見直し、毎年、本当にまだ必 要かを検討することのルール化 許可の窓口機関の設置: 輸出許可申請の窓口を一本化し、そこから担当政府機関にまわす形と する。また、許可に掛かった日数等をここでモニタリングする。 審議委員会(パネル) : 許可の拒否等に対する申し立て、リストの見直しにおいてその判断に対 する申し立て等を、審議する組織を作る。ここでは審査や許可発行ではなく、申し立てやクレー ム等に対しての判断を下す機能のみを持たせる。 EAA(輸出管理法)の書き直し: 上記の経済と安全保障のバランスの中、すでに米国外の市場 で同等技術が入手可能の場合の許可例外等の検討。 5 ビザ: 基礎研究者に対するビザの迅速化、米国の高名な学術権威者に対し、会議等に外国人の 招聘の権限の付与等。 (2) BIS での Parts & Components に関するパブコメの募集(2009 年 1-2 月) CISTEC も会員に再度アンケートを実施した上で対応し、長年の主張の繰り返しになるが、米国 の再輸出管理が米国の輸出にマイナスの影響を与えていることを強調した。 同じ論調での意見が多数あがっており、米国の再輸出規制が「BUY AMERICAN LAST」をもた らしているとの記事等が Export Practitioner に掲載されている。TechAmerica や NAM 等では、 CISTEC の主張が有効であったとのコメントをもらっている。 米国の総括的な輸出管理体制の見直しへの大きな圧力になったことは間違いない。ただし、現時 点で総括的な見直しの中、このパブコメに対応した個別の施策という形では改善策等は現れてい ない。 (3) オバマ大統領の指示と Berman 下院外交委員長の表明(2009 年 8 月) 8 月 13 日にオバマ大統領が National Economic Council(国家経済会議)と National Security Council(国家安全保障会議)に対して米国輸出管理体制の広範囲な見直しの指示をしたとの発表 があり、同時に、下院外交委員長の Berman 氏から 2010 年中の EAA の書き換えについてのアナ ウンスがあった。 (EAR の前提となる EAA は 1979 年の内容のまま失効しており、それを IEEPA を根拠とする大統領権限で 1 年毎の更新を続けているというのが現状である。) (4) CSC のレター(2009 年 9 月) CSC のメンバーが輸出管理の改善についての原則・方向性についての意見を公開。 多国間における協調と、同盟国間の緩和や、許可申請のプロセスの合理化等を訴えている。 (5) Locke 商務長官のスピーチ(2009 年 10 月) 商務省は、米国の輸出ビジネスの回復を目指す中、輸出管理体制の改革をあげていたが、ややこ こで踏み込んだ発言がなされた。 ① デュアルユース品についての同盟国向けの輸出の一部を許可不要にする。 ② 同盟国以外の輸出管理良好国向け審査にファストトラックを導入する。 また、前提となる現在の輸出管理体制の問題点等は、前述の(1) 「アメリカ要塞を越えて」のレ ポートを引用しており、このレポートの影響の大きさが伺える。 6 1-3 訪問時での発見と今後注目すべきこと(2009 年 11 月時点での) 今回、AAEI の厚意を得て、下院外交委員会の政策立案スタッフである Rice 氏の話を聞くことが でき大いに参考となった。 Rice 氏からの話を中心に、その他面談時の情報等をまとめる。 (1) 米国は本気で輸出管理体制の抜本的変革を考えている。このような改革は難しいが、今回 は実現する可能性が高い。理由は、議会(Berman議員を委員長とする下院外交委員会)が EAAの書き換えを決意していること。またホワイトハウス(行政サイド)でも本気であり、 なにより国防総省(DOD)のGates長官が推進力となっている。 (彼がオバマ大統領を説得 した。) (2) 変革の方向性やその基本概念は、かなり画期的である。それゆえ、たとえばEAAの書き換 え等において、色々な反対勢力から改正要求がでて、結局成立はしないまたは成立しても 骨抜きというような可能性があるとも言える。NFTCのReinsch氏をはじめ、業界の見方と しては結局成立しないのでは?という見方の方が主流のようであった。しかし、たとえ成 立しなくてもEAAによって示される考え方は、今後、政策のあり方に強い影響を及ぼすの ではということであった。 (3) 今後注目すべきこと。具体的な動きの現れ方としては、下記の 3 つがポイントとなる、① ホワイトハウス(行政)の短期的対応、②EAAの書き直し、③そしてホワイトハウスの中 長期的な対応である。 ① ホワイトハウスの短期的な対応(2009 年 12 月): 現時点での情報は、前述の Locke 長官の発表の内容を超えるものはない。 1) EU+日本+豪州等の同盟国に対する緩和 ライセンス・フリーとするという発言もあったが、原子力技術の 2 国間協定等を考えれば、 本当のラインセンス・フリーは考えづらい。Locke 長官のスピーチの内容から見ると、EU で の ANNEX4 品目以外の ANNEX1 品目、あるいは EU の General License(CGEA EU001) の対象品目程度ではないか? また、ライセンス・フリーが新たなコンセプトとして導入されるのか?あるいはクロスカン トリーチャートの「x」が大幅になくなり NLR の対象を増やすのみかという対応についての 質問を行ったが、「未定」(あまり考えていない?)という印象があった。 2) ファストトラック国 ライセンス・フリー国の次に「安全な国」を設定し、そこでの審査を大幅に短縮するという 考えである。具体的な国名は入手できず。 3) 許可例外 ICT(Intra-Company Transfer)の改良 7 ② 新しい EAA(2010 年 1 月): 1) コントロールリストの見直し おそらく米国独自規制品目(900 番台)の大幅な削減があるだろう。それ以外の国際レジーム での規制品目についても、むしろ米国はそれを利用して規制強化を図ったケースもあるとい う視点を Rice 氏は持っており、なんらかの対応をしたい気持ちはある模様。だが EAA 上で の盛り込みかたは不明。 2) 高度技術産業や研究開発において米国の立場を維持することと安全保障における管理とのバ ランスを維持する責任を明確にする。前述の「アメリカ要塞を越えて」のコンセプトが影響 しているとの印象をもった。 大統領の責任と権限という形で EAA には現れるだろう。これも具体的な文章を早く読みたい ところである。 3) Compliance Assistance Program: Compliance Assistance Program という言葉が突然出た。これは、法令遵守支援の全体的な プログラムという意味合いではなく、現在の非常に複雑なエンドユーザー管理を助けるため のものという構想のようである。「現在の非常に複雑なエンドユーザー管理」は友好国であ っても、懸念ユーザーが存在するという事実から来るもので、2 年前の訪米ミッションにおい て「国別の管理から個々のユーザー別の管理へのシフト」を米国の大きな流れとして報告し た。その流れは当然ながら継続しているということ。具体的な形は見えないが、エンドユー ザーが信頼の置けるところか(Reliable)ちょっと疑義のあるところか(Questionable)危険 なところか(Dangerous)を輸出者が判断するのを政府が支援する仕組みを考えている模様。 「英国やドイツでは、企業が客先に疑問がある場合政府に相談する仕組みがうまく働いている。 米国もこのような方向を考えるべきだろう。」というコメントがあり、類推するに公開リス トベースではない問い合わせベースの仕組みのように思える。相談を受けることにより、政 府側でもリアルタイムで情報が入る(どのようなところがどのような item を入手しようとし ているといった)ことをメリットと考えている模様である。 4) 米国の諸官庁をもっと多国間で(同盟国との間で)輸出管理政策をハーモナイズさせる。ど ういうことか具体的に分かりづらいが、中国軍事規制での「失敗」(というニュアンスで言 っていた)、つまり米国は規制強化したが日本以外は協力してくれなかったというようなこ とが無いこと。 8 ③ ホワイトハウスの中長期的な対応(2010 年中): 現時点では見えていない。上記の Compliance Assistance Program や、同盟国間とのハーモナイ ゼーションがポイント。この部分は、改正 EAA の内容や考え方に大きく影響を受ける(たとえ改 正 EAA が成立しなかったとしても) 。 1-4 結論 大きな意味で、 「緩和」に向かう方向性が明らかになったと判断できる。オバマ政権のより経済重 視の流れからある意味当然かもしれない。リスト規制の見直しと国際協調が、日本の輸出管理へ の影響のキーワードとなる。 米国の輸出振興政策を考えると、中国向けは緩和の期待は大きい。 但し、国ではなく Entity ベースでの制裁は強化される可能性がある。OFAC では、そこのポリシ ーコントロール部門もあまり深く今回の改革には参加していないという印象もあった。 大きな変化の予兆として、Rice 氏との面談から、現在ヒントとしてあるものは、 ① Compliance Assistance Program (英・独の Early Warning の仕組みのようなもの、ちょ っと米国にはなじまない印象があるが)② 輸出許可を一部報告制に切り替える。 (あるいは、記 録と報告をベースとした新たな License Exception という形の可能性もある。)等である。 はっきりとした形のアイディアが見えるにはまだ時間が掛かる。 2 2-1 その他 国別の制裁 現時点では、強化・緩和の方向性は示されていない。キューバのビザ等、 「緩和の雰囲気」をかも し出している程度か。イランの核問題の決着がどのような形になるかもあり、どのようになるか。 2-2 インド向け 制裁というより、米国はインド政府に対する輸出管理の指導等、インド向け輸出に対して、広く支 援していくというスタンス。 3 よりよい輸出管理のために 2008 年の欧州対話ミッションで、日本のビジネスセクターが考える輸出管理のあり方について、 9 ポイントを提示し、共感を得た。米国自体が輸出管理体制の抜本見直しに進む中、改めて米国の 産業団体に対して下記を提示した。これは、デュアルユースの輸出管理を行っている産業界とし て進むべき方向をそれなりにまとめたもの。共感できるものがあれば、適切な時点でそれぞれの 政府に要望して欲しいというスタンスである。提示した米国産業団体からは、 「なかなか政府は動 かないだろうな」というコメントも個人からはあったものの、進むべき方向として共感を得た。 (1) リスト品目の削減と産業団体の協調行動 規制理由が分からなくなっている品目があるのではないか?そもそもエンドユース規制が施行さ れている場合と、リスト規制がすべてであった時期とでリストのあり方は変わってよいのではと いう考え方。 リストに関しては、現在のレジーム尊重だが米国・EU・日本の産業界で Foreign Availability や その他の理由で不要な品目は、情報交換を行い、自分たちの政府にどんどん圧力をかけレジーム の場で議論してもらおう。 (2) コンプライアンスの優れたものに対するインセンティブ AEO(Authorized Economic Operator)にしても C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)にしても、コンプライアンスの優れたものに対して緩和を行い、その分、当局は「怪 しい」部分の管理に資源投入するという考え方。輸出管理の世界にもこの考え方がもっとあって もよいのではという考え方。 (3) リスト規制の解釈だけでなく運用面でも出来る限りの共通化 自分の国では許可がいるのに、他国では許可不要では競合できない。リスト規制の解釈はできる 限り統一して欲しいし、輸出許可申請のための添付書類、客先から取り付ける誓約書の内容等も 少なくとも米国・EU・日本では統一して欲しい。デュアルユース品で規制を厳しくすることは構 わないが、そのレベルが違い、公平な競争ができないことが問題である。公平な競合の場を提供 して欲しい=Level Playing Field というキーワードを今回新たに提示したが、ここに特に共感が 得られた。 (4) ECCN 等リスト該当情報の一般化・普遍化 現在の国際貿易の複雑化を考え、現状では ECCN ということになるが、その貨物が該当品かどう かという情報を国際的に統一し、(たとえば HS CODE のように)通常の船積み書類等に記載す る情報とする。そして、輸出国ばかりではなく、積み替え国、あるいは輸入国の政府もリスト貨 物がどこに行くか、誰が使うかを注目・管理する体制を作った方が、より効率的な管理ができる のでは?とくに貿易情報の電子化の流れを考えれば、有効な仕組みができるのでは? 10 (5) 米国の再輸出規制の見直し BIS のパブコメにも出したが、再輸出規制により米国製品を最初から外すという動きとなり、結 局、米国のコモディティー(汎用品というかそれほど付加価値の高くないもの)が悪影響を受け ている。すくなくとも英国・ドイツ・日本であれば再輸出規制を免除しても米国の安全保障に悪 影響があるとは考えられない。 11 【帰国後の 12 月 21 日までの米国動向】 報告書作成時から 12 月 21 日までの米国動向につき付記する。 (1) Regulations and Procedures Technical Advisory CommitteeにおけるBorman次官補代行の コメント(12 月 9 日)BISのBriefing 輸出管理リフォームのプロセスは順調に進行中である。省庁間協議は毎日のように行われており、 正式アナウンスは 2010 年の早い時期になるだろう。それには規制リストや懸念国の見直し等が 含まれ、次のステップとして輸出管理の体制や効率的な執行のための方法が決定される。このプ ロセスが進む間に DOC は短期的な対策を行う。米国が信頼する同盟国向に許可不要の品目を設 けることや、ファストトラックの仕組み等である。さらに、ICT(関係会社間移転)や暗号関連 に関する許可例外も見直し中である。場合によってはこれらも、正式アナウンスに含まれる可能 性もある。 (参考: 12 月中に短期的施策と言っていたが、やや遅れる模様である。但し、大きな方向性と しては本気で改革しようとしていることに間違いない。) (2) NAMによるRecommendations for Improving Dual-Use Export Controlsの提出(12 月 10 日) NAM は 現 在 進 め ら れ て い る 米 国 輸 出 管 理 の リ フ ォ ー ム に つ い て 下 記 の 8 つ の 推 奨 (Recommendation)をホワイトハウスに提示した。時代遅れの輸出管理を 21 世紀の現在にふさ わしいものに変えようというスタンスであり、Beyond Fortress America と共通するコンセプト が随所にみられる。今回の提案はとりあえず短中期的なもので、根本的な改革提案も別途提出す る予定とのことである。 (下記、今回の提案の概要を記す。 ) Recommendation #1:許可申請・発行の仕組みの改善と透明性の強化 そもそも輸出の件数が増えているのだから、情報の提供の仕方を改善し、輸出者の許可前の作業 や許可申請審査プロセスの効率化を図るべき。また、親しい同盟国や信用のおける需要者には特 別の扱いをすべき。 ICT の見直し LE(許可例外)を拡大する。 GBS の適用品目米国の独自規制品目やワッセナー品目にまで拡大。 (つまり、これらの品目をグループBカントリーに輸出するには許可が不要にする。) 12 輸出許可申請・発行の Fast Track 化 サンプル送付の待ち時間短縮 繰り返しの申請 有効期限を 2 年から 5 年までの延長 同盟国とその他の高度な輸出管理実施国への輸出・再輸出、またこれらの国からの再輸出を License Freeとする。 ( 参考: BISの示したLicense Freeは同盟国からの再輸出については、必ずしも明確では ないが、NAMは再輸出規制の緩和を明確に盛り込んでいることに注意すべきである。) 企業内の輸出管理システムから直接 SNAP-R を使用できる仕組みに改良 みなし輸出は少ない品目でのリストで規制し、専用の包括許可の創設 情報や電気通信の送受信に係る許可例外の見直し (ソフトのダウンロードや制限なく入手できる技術については、暗号機能の有無に関わらず、 規制対象外とする。) 禁輸国向けの民間航空機の運用安全のための許可例外の創設 少額特例の金額引き上げ VEU 制度の適用国・適用品目の拡大 許可条件の限定化・明確化をわかりやすい言葉で。 特殊な許可条件については、当局はその理由を明確に説明し、許可発行前に申請者が相談で きるようにする。 Technical Advisory Committee(諮問委員会)の改善 - 基準を緩和しメンバー数の増加 - 公開する会合の増加 - その WG の活動内容・記録の公開 OEM の場合、原則 OEM 元(製造者)が政府に CCATS を通じ事前該非判定を行うルールと する。もし申請者が OEM 元(製造者)ではない場合には BIS は該非判定結果を製造者にも 通知する。 EAR の用語定義(part772)の見直し、明確化(「専用設計」等) Recommendation #2 Foreign Availability(外部調達性)の重視 Foreign Availability の調査を十分に行うことにより、米国は他国の状況を理解できる。また、 (外 部調達可能なものを規制から外すことにより)当局は資源を重要な品目に集中できる。また、同 盟国外だけでなく同盟国内の調達性も考慮する必要がある。米国が規制している品目のほとんど はワッセナー加盟国から簡単に入手できることから、 (再輸出規制のある)米国製品の競争力を低 下させている。 調達性調査局を再度立ち上げるべきである。 米国独自規制品目についても Foreign Availability を認める(特に規制の正当性が証明される 13 国際レジーム加盟国での調達性 産業界と連携し調達性調査のためのシステムを確立すべき Foreign Availability を証明するために必要な証拠の範囲の明確化 Foreign Availability が存在する(外国で容易に入手できる)ことの証明は請願者の義務であ るが、Foreign Availability の推定が確認されたときに、その存在を否定するには政府側が十 分な証明を示す必要がある。 Foreign Availability の情報を登録する仕組み、個々の会社がそれぞれ調べる手間を省く Foreign Availability の審査の作業日程期間の設定 Recommendation #3 暗号 輸出規制の影響を受ける他の多くの産業と同様に、暗号においても、技術の急速な進歩とあらゆ る場面で使用されるという特質から、現行の規制の多くが時代遅れとなり、単に米国のメーカー の競争力を削ぐだけのものになってきている。暗号規制は複雑すぎて米国の輸出者にとって理解 も遵守も困難である。ハードもソフトも、ますます多くの製品が何らかの暗号機能を組み込むよ うになってきたために、 「暗号品目」として判定され直しているのが現状である。その結果、多く の製品が輸出許可の対象になったり、許可と同様に負担のかかる審査や輸出後の報告義務の対象 になったりと厳しい規制を受けている。BIS における暗号製品の許可申請件数の増加や審査の遅 延はここに起因している。 米国の安全保障の主要な要素である競争力を阻害する無用な規制や負担を課すことのないように、 暗号規制は徹底的に見直すべきである。特に、広範な商品(ハード、ソフト)に暗号機能が組み 込まれたり、暗号機能がグローバル化したりしている現状を踏まえて、暗号政策を根本的に再構 成する必要がある。この改革は、産業界の規制遵守の一助として、また行政コストの削減のため、 暗号規則の簡素化に注力すべきである。このような目的のために以下の諸策を提言する。 同盟国の運用と軌を一にして、市販品や日用品、コンポーネントの審査を不要とする。 市販品や広く入手可能な製品用に設計されたコンポーネントを市販品扱いとする。 輸出後の報告義務を廃止する。 米国独自規制を廃止する。例えば、オープン暗号インタフェース”(OCI)製品の規制。 公知のソフトや誰でもがアクセス可能なソフトだけを用いた暗号製品を規制の対象外とする。 暗号を主機能としていない製品を暗号規制の対象外とする。 暗号規制全般を見直して、より簡明な記述とし、規制が過剰な負担とならないようにする。 暗号審査、事前通知、許可申請を簡素化し、審査済みの情報の活用により再申請を不要とす る。これにより、政府は限られたリソースをより懸念の高い暗号製品に集中できるようにな る。 多岐にわたる「市販」の条件を整理して、許可例外 ENC を簡素化する。例えば、広く入手可 能なソフトの取扱いを統合する。 14 Recommendation #4 規制リストの合理的な見直し 現在の新規技術のライフサイクルは半年から 1 年だが、たくさんの規制は何十年も前に作られて いる。BIS として見直しは開始しているが、もっと徹底的に行うべき Sun Set ルールの設定。すべての規制リストの項目に「掲載期間」を設定し、期限がきたら、 継続する特別な理由がなければ自動的に除外される。 Foreign Availability が確認されたら、自動的にリストから削除あるいは License Exception が適用できるようにする。 米国軍事品目リスト(USML)に掲載されていない品目は、2010 年末までに、CCL に移行し て適切なレベルの規制対象とする。 規制リストが政策あるいは国際レジームの方針に沿っていることを確認する。 外部調達が可能なもの、現地で製造可能なもの、世界中で製造されており米国単独で規制し ても当該品目や技術の入手制限が困難なものを規制から外す。 (但し、反テロ、不拡散、ミサ イル関連など、外交政策上の理由による規制が必要なものを除く。) Recommendation #5 国際協力 国家安全保障は国際安全保障の基盤の上に成立する。そのためには国際協力が必要であり、協力 して共通の目標や政策や運用を実施すべき。国際協力は米国の輸出者に公平な競合の舞台を提供 し、世界をより安全なものとするのに貢献する。 ( 参 考 : 原 文 は Multilateral cooperation levels the international playing field for U.S. exporters とある。我々が提唱した level playing field の実現を目指して、お互い政府に訴えかけ ていこうと方向性に賛同してもらったが、早速、その言葉をそのまま使っての提言をしてもらっ たことは非常に嬉しいものがある。 ) レジームの加盟国を増やすように働きかける。 実質的には遵守体制が出来ているが、レジームに加盟できていない国向けのカントリーグル ープを設定する。 レジームの決まりを採用して法制化する国を増やす努力をする。 米国の規制の有効性を高めるために、特定技術の製造能力を持つレジーム参加国との間で、 当該技術に関する適切な許可方針の合意を進める。 Recommendation #6 品目管轄(Commodity Jurisdiction)決定の過程における商務省の役割を 強化する 2008 年に NSC(国家安全保障会議)は、国務省、国防総省、商務省に対して、それぞれが協力 して、品目管轄の決定過程を省庁間で調整し、改善案を提出するように指示した。それ以降、動 きはあったが、まだ十分ではない。品目管轄の決定過程は依然として省庁間でぶつかり合ってお 15 り、ある製品・サービス・技術がどの省庁の許可体系に属するのか、そしてその品目をどう判定 するのかについての決定でもめている。そのため、審査は遅延し、混乱を呼び、機会損失につな がっている。従って、輸出管理に関して、以下の改革が求められる。 省庁間の調整強化の継続、先端技術の知見の深化、専門家の共有などにより、省庁間の品目 管轄決定過程を改善する。 防衛品目(サービス・最終品目を含む)の客観的な定義を定める。多国間で軍事品目として 規制されているものや米国の重要な軍事能力を支える場合のみに米国軍事品目リスト (USML)に指定するという方針を反映して、重要な軍事機能や規制の実効性を判断基準と する。 品目管轄の申請者に対しては、詳細な回答を与える。重要な軍事機能の説明、商用品として の流通性の欠如、USML 上の品目番号を含めて、USML で規制する安全保障・外交政策上の 根拠などの情報。 国務省による品目管轄の決定過程の透明性を商務省と国防総省が検証できるように努める。 デュアルユース品の判定と規制への取り組み方をハーモナイズ(共通化)するように、ワッ セナー・アレンジメントやその他の国際レジームの参加国と協業する。 国防総省防衛技術安全保障局(DTSA)が防衛品目の調達や防衛産業基盤の活力に関してより 良い見通しと説明責任を持てるように、DTSA の活動に AT&L(国防総省の取得・技術・兵 站担当)の適切な参加を確保する。 管轄に関する省庁間の主張が衝突したときの最終調停者としての NSC の役割を確認・強化す る。 Recommendation #7 執行 輸出管理の法令を遵守する仕組みは非常に重要な部分である。米国の会社はすでに素晴らしいプ ログラムを持っているが、政府と連携して改良を続けている。さらに透明性をまし、普及させる ため、そして産業界とより協力し対話するため BIS は下記のことを行うべきである。 米国内外へのアウトリーチの強化 自主開示のプロセスの改善 懲罰決定に際し抗弁の機会を設ける Recommendation #8 中小製造業者向けの配慮 現状の輸出管理の仕組みでは、中小製造業者は非常な不利を被っている。彼らには、大企業のよ うな法令遵守担当スタッフはいない。さらに、ワシントン事務所もなければ、政府渉外担当もい ない、結果、輸出許可当局との直接アクセスがほとんどない。輸出許可取得が遅れることにより しばしば深刻な金銭的な損失を受ける場合がある。政府は、これら中小企業向けにもっと力を注 ぐべきである。 16 中小製造業者専任の相談窓口・許可担当を設ける BIS と DDTC 協同で改善勧告作成タスクフォースを 60 日以内に作る。 (3) BIS幹部の指名と承認 1) Eric Hirschhorn 次官 12 月 17 日に上院銀行委員会で指名が承認された。今後、上院本会議で承認されて正式決定と なる見込み。 2) David Mills 次官補(Export Enforcement) 12 月 1 日、大統領による指名が公表された。 3) Kevin Wolf 次官補(Export Administration) 12 月 17 日、大統領による指名が公表された。 17