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OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香川生物(KagaWa Seibutsu)(19):137−138,1992. 香川県三豊郡高瀬町で発見されたヌー・トリア 本多宏之・金子之史・真鍋哲也* 〒760 高松市幸町1−1香川大学教育学部生物学教室 *〒767 香川県三豊郡高瀬町 麻小学校 Ar・eCOrdonMγOCaStOrCO)pZLSfromtheTakaseTown,Mitoyo,KagawaPrefecture HiroyukiHoNDA,BiologicalLaboratorγ,FbcultyqfEducation,Rbgawa 仇よuerS乙とγ,7もゐαmα亡S弘彷qJ哩)α花 YukibumiKANEKO,BiologicalLaboratory,FbcultγOfEdu、Cation,Kagawa Uね£uer8よ己γ,乃ゐαmα£s弘760,ノ(pα花 *TetsuyaMANABE,AsaPriTnarツSchool,nhase・−Cho,Mitoγ0,Kagawa767, Jdpα花 でいたが,骨格は完全にとり出すことができた。 ヌ・−・トリア〃γOCαS£orco)p㍑Sほ,カブロミ ス科の大型寄歯類で,南緯200以南の南アメリ 剥皮前の外部形態の測定値を表1に示す。 この標本(K6518)ほ雄であり,上・下顎臼 カが原産地である。日本には1931年10月にフラ 歯M3の萌出ほ既に.完了していた。解剖してみ ンスから8頭輸入されたのが最初で,1939年6 月にアメリカ合衆国から150頭輸入されて毛皮 ると,内臓破裂ほしていなかったが,左腹部の 獣としての養殖が本格化し,関東以西の各地で 筋組織がズタズタになって出血しており,左の 養殖された(三島,1942)。しかし,1945年の 第10肋骨から第13肋骨にかけて6カ所にわたり 敗戦とともに.軍用毛皮として−の需要は無くなり 骨折し,左の誹骨も2カ所が骨折していた。頭 養殖場ほ全て放棄され,−・部の地域で野生化し た(三浦,1976)。 蓋骨にほはとんど損傷はなく,下顎骨の左下顎 角が破砕していたが完全に復元できた。 頚骨の測定にほ1/20mmが最小目盛のダイヤル 香川県でも戦前にヌ・−・トリアを養殖していた ことがあり,1942年1月で全国4番目の128頭 の飼育数であったが(三島,1942),これまで 式ノギス(ミツトヨ製)を用い,測定部位は①∼ (可はCorbet(1964)に,⑲∼⑱はPatterson(19 ヌ・−・トリアの野生化個体の正式な報告例は香川 83)に従った。⑭∼⑯についてほそれぞれ⑭下 県でほなかった。1990年9月8日に三豊郡高瀬 顎の白歯群の全長,⑯下顎の切歯歯茎後端から 町の麻小学校前の道路においてヌ・−トリアの死 体が発見され,真鍋哲也によって香川大学に持 ち込まれた。そこで,香川県における野生化個 体の発見でほ最初の正式な記録として,ここに 報告する。 持ち込まれたヌ−トリアの死体(図1)は, 香川大学教育学部生物学教室冷凍庫で保存され た。持ち込まれた時点で左側面外皮が相当傷ん 図1日 死体で発見されたヌ、−・トリア.国中の スケ・−ルほ170mmである.. −137− OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 表1ヌ1−トリアの外部・頭骨の計測値. によれば,上・下顎白歯M3は生後約13∼14カ 全 長(mm) 1034.0 頚胴長(mm) 646.6 尾 長(mm) 387,4 後足長(mm) 左側=1295 右側=1290 耳介長(mm) 左側= 329* 右側= 27.4 体 重(g) 6716 2 1 3 3 2 3 86 98 76 81 8 1 2 3 たものと思われる。年齢については三浦(1977) 128.BlackwellSci.,Publ.リ0Ⅹford. 化・定着,岡山県の場合.晴乳動物学雑誌 6:231−237. .1977.陸棲哺乳額の齢査定技術,ヌ −トリアを中心に.哺乳類科学(34):43−53. 6 点から左側面から自動車等に跳ねられて死亡し 乃e月b花dあ00ゐ0/月r宜££sん肋mれαZs:116− 39 三浦慎吾.1976.分布からみたヌ・−トリヤの帰 値を示す。 このヌ・−・トリアは外傷・内部損傷・骨折の3 mentofmammals..1nH..N.Southern(Ed.), 8 突起外縁間の最大幅,である。表1にその測定 Corbet,G..B.1964.Preservationandmeasure− 4 臼歯歯茎前端までの長さ,⑯後頚骨の左右の副 85 6 *左の耳介は裂け,部分欠損していた。 引 用 文 献 ∩︶ ⑭ 下 顎 白 歯 長(mm) ⑯ 下 顎 歯 隙 長(mm) ⑯ 後頭骨副突起幅(mm) 4 ⑲ 上 顎 歯 隙 長(mm) ⑯ 切 歯 孔 長(mm) 1 ⑪ 上 顎 臼 歯 長(mm) 9 ⑲ 脳 函 最 小 幅(mm) 45 朝日稔教授に謝意を表す。 5 長(mm) 本稿をまとめるにあたり,貴倭な文献を快く 25 提供していただいた兵庫医科大学生物学教室の 0 顎 84 2 ⑦ 限 高 間 幅(mm) (む 脳 函 高(mm) 39 浦,1977)。 7 ㊥ 乳様突起間最大幅(mm) @ 下 70 リアの寿命ほ最高8∼11年といわれている(三 3 ¢)頬 骨 弓 幅(mm) 24 わからないといわれ,また野生条件下のヌ・−ト 3 蓋 長(mm) 0 @)口 ら,少なくとも生後2年以上を経過しているも 76 のと推測される。ただし,1歳以上の年齢ほ白 74 歯セメント貿の組織を諷べてみないと正確にほ 0 5 7 7 (む 基 底 長(mm) になり25カ月目に.約120mmに至るという。した がって,この標本ほ外部と頭蓋全長の討測健か 7 1 ㊤ 頭 蓋 基 底 長(mm) 約120mmになって,成長が止まるという。また 頭蓋全長ほ生後約15カ月目から成長がゆるやか 7 ① 頭 蓋 全 長(mm) 月冒に萌出が完了し,頭胴長ほ生後約18カ月目 で約600mmになり,後足長は生後約13カ月目で 三島康七.1942.淡水獣㌢−トリアの養殖.育 生社弘道閣,束京,98pp仙 Patter・SOn,B.D.1983..Onthephyleticweight Ofmensuralcranialcharacter・Sin chipmu− nksandtheiralユies.Fieldi7W2bologγ,New Series(20):1−24. ー138−