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プロダクトアウトでなくコンセプト

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プロダクトアウトでなくコンセプト
シリーズ ❶
ISV
第 26回
プロダクトアウトでなくコンセプト
総勢725人ものITシステム担当者が集結するイベントはそうそうない。今年3月、システム運用管理大手の
ビーエスピー(BSP)
と兄弟会社のビーコンインフォメーションテクノロジー(ビーコンIT)が開催した「Beacon
ユーザシンポジウム」は、その希有な例だ。このイベントで登壇したBSP社長の竹藤浩樹は、自分のスマート
フォンをポケットから取り出して、壇上から「壮観だ」と写真を撮影した。見下ろす出席者が自社の方向性を
決める――。今回ほどそう実感したことはない。
取材・文/谷畑良胤
report & text by Yoshitane Tanihata
「プロダクトアウトでは勝てない」
。BSP社長の竹藤が最近よ
分析」を徹底的に行った。
く口にする言葉だ。システム運用管理の負担は、企業のIT利活
例えば、通常のオペレー
用が進まない元凶と言う人さえいる。日本企業のIT投資に占め
ション運用やプログラム
る運用管理費は6割以上。 お守り 優先で、戦略的なIT投資に
の開発・修正は汎用的で、
費用が回らない。期せずして、クラウドコンピューティングが
長期間保有する価値が薄
普及し、ユーザー側も「持たざるIT」を指向し始めた。運用管
い。
「この部分は、どんど
理費を減らしながらセキュアなシステムを構築できれば、メリ
んクラウド側に移ってい
ットが大きいからだ。ただ、その波が押し寄せて来れば来るほ
く」
(竹藤)
。一方、クラウ
ど、BSPの製品は売れなくなる。3年ほど前まで、竹藤はずっ
ド環境を含めたシステム
とジレンマを抱えていた。
機能全体を効率化する設
「ユーザー企業の運用管理面のコスト削減意識はシビアだ」
計分野やサービスマネジメント、ITを戦略的に使うための企画・
Beaconユーザ会では、運用と開
発に関する内容のセッションが行
われていた。そのすべての会場に
BSPの竹藤浩樹社長の姿があった
構想部分は、
「競争力の源泉」の部分で、固有的であって外に
(竹藤)
。そんな流れを感じ取り、悩んだ時期もある。考えた末
に、
「当社は、顧客の話を聞ける会社だ」という結論に行き着い
切り出すことが少ない。
た。Beaconユーザ会などを利用して、聞く耳を高く立て、ユ
運用管理に必要なハードウェアが増えるほど、BSP製品は
ーザーが向かおうとする方向を見定めた。
「コンセプトが重要
ライセンスを稼げる。クラウドや仮想化でハードが減るから、
だ」
。竹藤はそう感じ、ベンダー都合のプロダクトアウトでな
自社ビジネスに暗雲が立ちこめる――。悩んでいられた時間は
く、システムをデータセンター(DC)へ外出しする動きが高ま
決して多くはなかった。明確に意見を具申してくれるユーザー
るトレンドを勘案した「運用レス」というコンセプトを打ち出
企業がいなければ、
「運用レス」というコンセプトは生まれてい
した。昨年のことだ。極論をいえば、オンプレミス(企業内)
なかったに違いない。
とクラウド環境にあるシステムを「完全に自動化する」という
それでも、今の企業システムの流れは、社内に置かれたシ
メッセージでもある。
ステムがDCに移ったに過ぎない。竹藤は言う。
「DCの分を含
それを実現するうえで、BSPは企業の「IT部門の業務価値
め、巨大インフラ資産をもたないシステムの運用管理が重要に
なる」
。たとえ話として、こんな例を示してくれた。高級ホテル
BSPが考えるIT部門の業務価値分析
長期間保有価値
保守対応
方針決定
システム
機能設計
IT業務
汎用的(外部)
プログラム
開発/修正
オペレーション
運用
高
業務プロセス
設計
[汎用]
業務プロセス
設計
[固有]
サービス
マネジメント
戦略IT
アーキテクト
ガバナンス
企画・構想
PM
業務理解
[有]
固有的(内部)
システム
エンジニア
インフラ
外部サービス、パッケージを活用し、 低
高品質・低コストを目指す
第3種郵便物認可
企業の競争力や
社会的貢献価値を高める
のシェラトンは、不動産業者が保有するホテル施設を活用して、
PM
業務理解
[無]
マネジメントで他社と差異化して高いホスピタリティを追求し
ている。格安航空会社(LCC)も、航空機を保有せずにリース
で調達して運行する。航空機を購入したのでは、減価償却を
終えるまで、安価な航空券を提供できないだろう。
BSP製品の方向性を決めるのは、
「ファブレス(自社設備を
保有せず、利用面だけに集中する)という考え方だ」と、竹藤
は語る。時代の変化に応じて、迅速に自社コンセプトも変化さ
出典:ビーエスピー
せる。このことが勝ち残りで重要となる。
[敬称略]
(つづく)
2013 4/ 15
MON
vol. 1477
Article
13
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