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核問題をめぐる最終合意を受けて 注目が集まるイランの石油・天然 ガス

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核問題をめぐる最終合意を受けて 注目が集まるイランの石油・天然 ガス
JOGMEC 調査部
増野 伊登
アナリシス
核問題をめぐる最終合意を受けて
注目が集まるイランの石油・天然
ガス開発
はじめに
2 0 1 5 年 7 月 1 4 日、イランと P5+1(国連安保理常任理事国の英米仏露中および独)は、イランの核開
発問題に関する最終合意に至った。合意文書のなかには将来的に解除の対象となる制裁事項が列挙され
ているが、
それら制裁の解除開始が一体いつになるのか、米国の対イラン制裁についてはどのようなペー
スで、どの分野に対する制裁から解除され始めるのか、不透明な点は多い。しかし、イランが依然とし
て石油・天然ガスともに世界有数の埋蔵量規模を誇る国であることに変わりはない。長期的に見れば大
きな伸び幅が見込めることは歴然で、欧州を中心に政府や企業各社も制裁解除を見据えて既に動き出し
ている。今後は、制裁解除のタイミングとペースに加え、現在進んでいる石油探鉱開発契約の改定作業
や、入札公開予定の上流案件選定の動きにも注目が集まる。
本稿では、最終合意の内容を整理するとともに、イランの石油・ガス開発の展望について論じる。
なお、本稿は 2 0 1 5 年 7 月 3 1 日時点の情報に基づいている。
1. イランの核問題をめぐる最終合意の概要と今後の展望
< 核開発関連 >
(1)
最終合意の内容
2 0 1 5 年 7 月 1 4 日、イランと P5+1 は「包括的共同行動
・イランはウラン濃縮に関する核開発研究を8年間制限。
計画」
(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)
・遠 心分離機の数を、現状の約 1 万 9,0 0 0 基から 5,0 6 0
の内容に関する最終合意に達した(http://eeas.europa.
eu/statements-eeas/2 0 1 5/1 5 0 7 1 4_0 1_en.htm)
。合意の
概要は以下のとおり。
基以下に削減。
・イランは、少なくとも1 5 年間は 3.6 7 %を超えるウラン
濃縮を行わない。保有する濃縮ウランを300㎏まで削減。
・西部アラクの重水炉については、相当量のプルトニウ
< 制裁関連 >
ムを産出しないよう設計を変更。
・米国、EU、国連による核関連制裁は、IAEA(国際原
・イランは、IAEA との合意に基づき、核関連施設への
子力機関)が、イランがウラン濃縮能力を大幅に削減
査察を受け入れる。IAEA が、核開発疑惑のある未申
するなど、あらゆる核関連措置を遵守したことを検証
告施設を新たに発見した場合には、イラン側には弁明
した後に凍結。ただし、違反
(合意内容の不履行)が生
責任が生じる。
じゅんしゅ
じれば再実施の可能性あり(制裁復活の是非を関係国
内で審議。それでも結論に達しない場合は国連安保理
核交渉の焦点の一つとなっていた「軍事施設への査察」
事会に持ち込まれ、投票が実施される)
。
の是非に関しては、JCPOA にも明記されていない。国防
・国連の対イラン武器禁輸については 5 年間、ミサイル
禁輸については 8 年間は解除されない方向。
機密に関わる軍関連施設への立ち入りに強硬に反対して
いたイランであるが、P5+1との合意後にザリーフ外相が
メディアに語ったところによると、未申告施設への査察
1 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
団の受け入れについては、軍事施設を念頭に置いたもの
能だ。これを覆すためには議席の 2/3 の票を集めなけれ
ではないと明言している。今後、
「未申告施設」の定義に
ばならないが、共和党票だけでは必要数に達しないため、
ついて、関係各国間で協議が行われることになるだろう。
議会は十分な反対票を確保することはできないと見られ
ている。しかし予断は許さない。共和党のなかには当選
(2)
今後の見通し
後直ちに合意を破棄するとの意向を表明している大統領
金融、保険、エネルギー、金属、造船業、自動車産業、
候補もいるからだ。
IT、軍事技術など多岐にわたる核関連制裁が解除された
また、過去には、北朝鮮やリビアなどをめぐって、前
場合、石油・天然ガス事業への投資や、イランとの交易
大統領時代の取り決めを次大統領が反故にする、否定す
拡大に向けた道筋も開けることになる。これを受け、制
るといったケースもある。米国では合意への反対を呼び
裁解除から数カ月のうちに、イランは原油輸出量を 6 0 万
かけるコマーシャルがテレビで日々流されているとのこ
~ 8 0 万 b/d 増加させることが可能との見方を示す機関も
とで、2 0 1 5 年 9 月 8 日からの議会再開に向けては、議会
あるが、留意すべき点は多い。
内部の合意反対派のみならず、イスラエルやサウジアラ
第一に、制裁が実際に解除されるまでには複数のプロ
ビアなども反対票集めのために民主党議員へのロビイ活
セスを経る必要があり、相応の時間を要するということ
動をより一層強化させていくだろう。一方のイラン側で
だ。第二に、仮に制裁が短期間で解除されたとしても、
は、 国 家 安 全 保 障 最 高 評 議 会(Supreme National
石油市場が約 3 0 0 万 b/d の供給過多にある現在、売り先
Security Council:SNSC。ロウハニ大統領が議長を務め、
の確保に課題があり、輸出量が一時的に飛躍的な伸びを
閣僚や軍人、最高指導者のハメネイ師が指名したメン
見せるとは考えにくいこと。また、第三に、大幅な増産
バーなどから成る)が合意内容を審査する予定で、両国
には外資企業の資金力と技術力が必要不可欠だが、外資
の審議プロセスに注目が集まる。
がイランに参入し、事業が軌道に乗るまでには数年単位
最も時間を要すると予想されるのが、制裁解除の大前
の時間が必要となる。
提であるⅣの「イランによる合意内容の履行を確認」
する
ほ
ご
プロセスだ。2 0 1 5 年 7 月 1 4 日、IAEA とイランは、核
< 制裁解除までの流れ >
の軍事利用疑惑を解明するためのロードマップを策定
まず、制裁解除までの主な流れについて。
し、年内の解決を目指すことで合意した(IAEA は 1 2 月
1 5 日に報告書を提出する予定)
。これが制裁解除に向け
連安全保障理事会が JCPOA を承認する決議を
Ⅰ. 国
採択
(2 0 1 5 年 7 月2 0日採択)
た第一歩となるわけであるが、以前、ケリー米国務長官
も指摘していたように、イランが合意内容を履行するた
↓
めには 4 カ月から 1 年の期間を要する可能性もあると見
Ⅱ. 関
係各国政府が、それぞれに JCPOA の内容を審
られており、一朝一夕に事態が進展するとは考えにくい。
査し、承認手続きを踏む
イランと IAEA をめぐるこれまでの経緯を考えると、軍
↓
事施設への査察などをめぐって、米国・イラン相互の合
保理決議から9 0日以内に JCPOA の施行を開始
Ⅲ. 安
意に対する理解の相違点が表面化し、イランによる核関
↓
連措置の履行が遅れるという可能性は否定できない。こ
Ⅳ . IAEA が、イランによる合意内容の履行を確認
のため、2 0 1 6 年初めに制裁解除の手続きが開始される
↓
というのが最短のシナリオではあるとはいえ、2 0 1 6 年
裁解除措置の開始
Ⅴ. 制
後半以降になることも十分考えられる。
Ⅱについて補足説明すると、2 0 1 5 年 5 月 2 2 日に成立
< 制裁解除のペース >
した「Iran Nuclear Agreement Review Act of 2 0 1 5」
次 に 問 題 と な る の が 制 裁 解 除 の ペ ー ス で あ る。
(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/signed-
JCPOA によれば、国連と EU は、
「IAEA がイランによ
legislation)に基づき、米国議会は JCPOA の内容を審査
る合意内容の履行を確認したと同時に、あらゆる核関連
することになる。6 0日間(7 月 2 0日~ 9 月1 7日)の審査期
制裁が解除(terminate)される」としている(ただし、既
間中、米政府は制裁の緩和措置を講じることはできない
述のとおり、国連の対イラン武器禁輸については 5 年間、
(この間国連も制裁を維持する意向)
。万一、議会が不承
ミサイル禁輸については 8 年間は維持される)
。一方で、
認決議をした場合、大統領は拒否権を行使することが可
米国は「IAEA による確認と同時に、核関連制裁の発動
2015.9 Vol.49 No.5 2
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
を停止(cease)する」という表現にとどまっている。
府がイラン側に対する一定の配慮を示した結果、最終合
「terminate」が完全なる終わりを想起させるのに対し、
意文書で新たに「cease」が用いられたものと考えられる。
「cease」
は単に停止するという程度の印象を受ける。
では、なぜ「terminate」ではいけなかったのだろうか。
2 0 1 5 年 4 月 2 日にイランと P5+1 が「枠組み合意」に達
以下には、枠組み合意時と、7 月 1 4 日の最終合意時点で
した時までさかのぼるが、当時、米国務省が発表した「イ
の米高官らによる発言のうち主なものを挙げたが、それ
*1
らを見る限り、米国による制裁は段階的に解除される可
において米政府がどのような表現を使っていたかという
能性が高い。イランへの譲歩姿勢も見せつつ、しかし段
と、
「cease」ではなく「suspend」だった。
「suspend」は
階的解除の可能性も含ませたいという米国側の事情があ
「cease」よりも更に一時的な停止、保留という意味合い
り、
「terminate」でも「suspend」でもない、中間の「cease」
ラン核プログラムに関する JCPOA のパラメーター」
が前面に押し出されている感があるため、恐らく米国政
が採用されたと思われる。
・対イラン制裁は一斉に解除されるというよりも、段階的に停止されるべきだ。
(2 0 1 5 年 4 月 6 日、アーネスト米ホワイトハウス報道官)
・対イラン制裁は、イランによる合意内容の履行状況を確認しつつ、段階的に停止される。
(2 0 1 5 年 4 月 9 日、ラスケ米国務省報道官)
・米国と、そして国連による制裁緩和は段階的に行われる。制裁が緩和されるためには、イランはまず主要な核
関連措置を履行する必要がある。これからの 1 0 年間で、国連による対イラン武器禁輸(5 年間は維持)や弾道ミ
サイル禁輸
(8年間は維持)
などを含め、
更なる緩和を受けるためには、イランは合意を遵守しなければならない。
(2 0 1 5 年 7 月 1 4 日、オバマ大統領)
・イランが核関連措置を遵守したということが立証された後で、P5+1 は核関連制裁を段階的に緩和していく。
ただし、既に決定された一部の緩和措置については例外である。
(2 0 1 5 年 7 月 1 4 日、ルー米財務長官)
米国の制裁がどのような道筋で解除
(あるいは停止)さ
融関連の制裁措置を解除すべしと主張しているが、金融
れていくのか、まだ不明な点は多い。段階的な緩和の後
制裁は他の分野よりも解除に時間がかかるとの専門家の
に全面解除というプロセスを経るとすると、イランに課
声も聞かれる。金融制裁解除の如何は、イランの石油・
されている制裁のうち、どの分野に対する制裁が優先的
天然ガス開発の進展にも直結する問題であり、早期の解
に解除されていくのか。2 0 1 5 年 6 月 2 3 日、イランのハ
除が期待されるところだ。
いかん
メネイ最高指導者は、合意への署名と同時にあらゆる金
2. イランの石油・天然ガス産業の展望:増産への意欲
(1)
石油生産の展望
ない原油のみの生産量で見た場合、2 0 1 1 年 5 月の 3 7 5 万
BP 統計によるとイランの原油確認埋蔵量は 1,5 7 8 億バ
6,0 0 0b/d に対し(同年の年間平均値は 3 6 2 万 b/d)
、2 0 1 5
レルに上り、ベネズエラ、サウジアラビア、カナダに次
年 6 月は 2 8 0 万 b/d と、過去 2 年間のうちに生産量はおよ
ぐ世界第 4 位の規模を誇る。NGL やコンデンセートを含
そ 1 0 0 万 b/d 減少したことになる
(図 2)
。
む原油生産量は 1 9 7 4 年に 6 0 6 万 b/d の最高水準に達す
原油輸出量も 2 0 1 2 年以降ほぼ半減しており(図 3)、
るも、イラン・イスラーム革命(1 9 7 9 年)とイラン・イラ
2 0 1 5 年の輸出量は 7 月時点で原油が 1 2 0 万 b/d 超(2 0 1 5
ク戦争
(1 9 8 0 ~ 1 9 8 8 年)
の発生を機に低迷した。戦争終
年第2四半期だけで見ると127万b/d)、またコンデンセー
結とともに生産量は徐々に回復基調にあったが、2 0 1 2 年
トについては約 3 0 万 b/d と見られる。輸出量の大半は
の米国と EU による原油の禁輸措置開始を受け、再び生
アジア向けであるが、原油のうちおよそ 2 0 万 b/d がト
産量は落ち込んだ(図1)
。NGL やコンデンセートを含ま
ルコとシリアに、また 5 万 b/d ほどのコンデンセートが
3 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
700
万b/d
NGL、コンデンセートを含む
イラン・ イスラーム革命
600
米・EUの原油禁輸開始
イラン・ イラク戦争
500
400
300
200
100
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
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1990
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1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
0
生産量
年
国内消費量
出所:BP 統計を基に作成
図1 イランの原油生産量と国内消費量
UAE に向かっている
(図 4)
。
万b/d
390
370
< イラン政府の生産方針 >
350
石油収入の激減に見舞われ
330
ているイランは、生産・輸出
310
量の拡大によってキャッシュ
290
を増やす必要に迫られてい
270
る。OPEC による生産調整の
250
是非に関しては加盟国間でも
意見が分かれるが、イランは
NGL、コンデンセートを含まない
2011年5月
375.6万b/d
約100万b/d減少
2015年6月
280万b/d
2011
出所:IEA 統計を基に作成
2012
自国の市場シェアの回復を最
優先させたい意向だ
2013
2014
2015
図2 イランの原油生産量
*2
。
2 0 1 5 年 4 月 1 4 日、イランの
ザンギャネ石油大臣は、世界
600
の石油市場の安定化に寄与す
500
るため、また制裁解除後のイ
400
ラン原油の市場への追加供給
を 見 据 え て、 イ ランを除く
OPEC 加盟国が生産量を 5 %
ずつ削減すべきだと述べた。
更に、5 月 1 8 日にはジャヴァ
ディ副石油大臣兼イラン国営
石油会社 National Iranian Oil
Company
(以降 NIOC と表記)
万b/d
米・EUの原油禁輸開始
300
200
100
0
年
出所:OPEC 統計を基に作成
社長も、イラン増産を見越し
図3 イランの原油輸出量
て加盟各国による生産抑制を
要請、クオータ(生産割り当
て)
制を復活させるべきとも発言している。
したいと述べた。また、
コンデンセートについては、
かねて、
今後の増産のペースについて、
2015年7月20日、
ザンギャ
2 0 1 7 年頃までに生産量をおよそ 2 倍の 1 0 0 万 b/dに増加
ネ大臣は、制裁が解除されて 7 カ月以内に原油生産量を
させる意向であることを明らかにしている。
1 0 0 万 b/d 増加させ、近い将来に4 7 0 万バレルにまで伸ば
輸出量については、制裁解除後 5 ~ 6 カ月で 1 0 0 万 b/
2015.9 Vol.49 No.5 4
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
d 増加させたいとし* 3、売り先
としてイランが優先する市場は
東南アジア、次に欧州であるこ
300
欧州
250
とを強調した。同日、NIOC の
200
Mohsen Ghamsari 国 際 問 題 局
150
長も、「制裁前においてもわれ
100
われのプライオリティは東南ア
50
ジアだった。およそ 2 5 0 万 b/d
0
の輸出量のうち 6 1 ~ 6 2 %以上
万b/d
2010
出所:OPEC 統計を基に作成
を同地域に供給していた」
とし、
欧州に新たな製油所建設の動き
2011
2012
アジア
アフリカ
2013
2014
年
図4 イランの原油輸出実績(地域別)
や投資先もなく、イラン原油が
日ごとに重質化している今、ア
ジア、特に東南アジアを重視する姿勢を、制裁解除後も
スパース・ガス田の開発進展に伴い増産傾向にある。と
おおよそ踏襲していくことになるだろうと述べた。
はいえ、米国はイラン産コンデンセートの輸入に関して
供給先候補の二番手である欧州は、2 0 1 2 年に禁輸措
UAE に対する圧力を強めているとも言われ、制裁解除
置が開始される以前はおよそ 6 0 万 b/d の原油をイラン
前に輸出拡大が円滑に進むかは不透明だ。
から輸入していた。このうちスペインに関しては、イラ
その上、石油市場が約 3 0 0 万 b/d の供給過多にある現
ンからの輸出再開を視野に入れて、2 0 1 5 年 9 月に Jose
状では売り先の確保に課題があることは確かで、短期間
Manuel Soriaエネルギー大臣をテヘランに送り込む予定
で輸出量が飛躍的に伸びる可能性は高くないと考える。
*4
と言われている 。
Shell の Ben van Beurden CEO は、2 0 1 5 年 6 月、イラン
に外国からの投資が集まることを期待しているとする一
< 売り先の確保に課題あり >
方、同国の原油市場復帰への期待に対しては「過剰だ」と
2 0 1 5 年 4 月に発表された Oil Market Report において
の見方を示した。制裁が解除されれば市場の意識に影響
国際エネルギー機関(IEA)が指摘するように、制裁解除
を与えることは考えられるが、世界の石油需要が今後長
後数カ月のうちにイランの原油生産量が 3 4 0 万~ 3 6 0
きにわたって伸びていくとするなら、
「長期的見地から見
万 b/d に増加するという試算が妥当であれば、2 0 1 5 年 6
て大した影響はないだろう」
とも述べている。
月時点で 2 8 0 万 b/d だった同国の生産量は、短期間で制
制裁が解除され、イランが輸出量を伸ばす道筋ができ
裁前の水準に回復することになる
(2 0 1 2 年に欧米が禁輸
たとしても、イラン産原油の減少によって空いた穴は既
措置を開始する以前のイランの原油生産量は約 3 6 0 万
に中南米や西アフリカ、またイラクをはじめとする産油
b/d)。つまり、制裁解除が最短シナリオに基づいて実
国によって埋められている。特に、2 0 1 2 年以降、米国
現するとすれば、早くて 2 0 1 6 年前半には最大 8 0 万 b/d
のシェールブームに伴って原油輸出量の減少に直面して
が追加で市場に流れ込み、油価を押し下げる要因となる
いたアンゴラとナイジェリアが対欧州輸出量を伸ばして
可能性があるということだ。
いる。この他、イラクの欧州向け輸出量も 2 0 1 1 年から
加えて、イランは Kharg 島沖と Assaluyeh 港沖合のタ
2 0 1 4 年の間に 1 2 万 8,0 0 0b/d 増加している。このため、
ンカーに 2,0 0 0 万~ 4,0 0 0 万バレルの原油・コンデンセー
禁輸が解除されたとしても、イランが欧州市場における
トを貯蔵していると言われ、制裁解除の様子を見ながら
シェアをすぐに回復できる見込みはないだろう。将来的
徐々に取り崩していく可能性はある(2 0 1 5 年 7 月 2 3 日
に需要増が見込まれるアジアを視野に入れていくことが
付ロイター記事によると、イラン側は原油在庫の存在を
予想されるが(禁輸開始以前、イランの輸出量のおよそ
否定しており、ペルシア湾に貯蔵されているのはコンデ
4 分の 3 がアジアに向けられていた)、原油供給過多の現
ンセートと重油であるとの情報もある)
。事実、7 カ月
状が続く限り、イランが市場シェア争いに勝つためには
以上 Kharg 島沖合に停留していたタンカーが 7 月にシン
価格を低く抑えるなどの対応を取ることが必要だ。
ガポールに向けて出港したと見られる。また、コンデン
セートについては、厳密には制裁の対象外であるので比
< 老朽油田の自然減退と、インフラの老朽化がネック >
較的輸出しやすい環境にあるほか、後述するとおりサウ
生産量の早期大幅増に疑問を抱く理由は他にもある。
5 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
アルメニア
アゼルバイ ジャン
トルクメニスタン
カスピ海
Astara
トルコ
Tabriz
Rasht
Neka
Qazvin
Tehran
Rey
Sanandaj
Saveh
Kermanshah
Arak
イラク
イラン
Ahwaz
Esfahan
Masjid-e-Suleiman
Yaran
Azadegan
Marun
Aghajari
Yadavaran
Gachsaran
Bibi Hakimeh
Abadan
Darquain
Bandar
Khomeini
クウェート
Kerman
Shiraz
Doroud
Firuzabad
North Pars
Golshan
Assaluyeh
South Pars
Bandar Abbas
Ferdowsi
Lavan Island
バーレーン
North Field(カタール)
製油所
油田
Balal
Sirri
カタール
UAE
サウジアラ ビア
オマーン
ガス田
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図5 イランの主要油・ガス田
Aghajari、Ahwaz、Bibi Hakimeh、Gachsaran、Haft
らの生産量だけでもイラン全体の約 5 割を占めている。
Kel、Karanj、Marun、Masjid-e-Suleiman、Parsi、
禁輸措置を受け、このうち一部の油田は生産の抑制また
Salman(Salman 以外は、Zaglos 堆積盆に位置する陸上
は停止を余儀なくされており、制裁解除後は比較的短期
油田)等の既存老朽油田から産出される原油がイラン全
間で制裁前の生産量レベルに回復すると予測する機関も
体の生産量の 9 割を占めているが(図 5)
、2 0 1 5 年 2 月に
ある。しかし、米国エネルギー省(DOE)エネルギー情
発表された IEA の Medium-Term Oil Market Report に
報局(EIA)、Wood Mackenzie(エネルギー・金属分野
よれば、生産開始から 7 0 年以上が経過している油田か
に特化したコンサルタント会社)や Goldman Sachs のア
2015.9 Vol.49 No.5 6
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
ナリストが指摘するように、生産抑制中の油田が現在ど
量のほとんどを国内消費と油層圧力維持に充てており、
のような状態にあるかについては不明な点が多く、生産
過去数年間は供給不足に陥っている。現在のところトル
再開のためにはメンテナンスが必要となる可能性も否め
コやアルメニアに向けて少量を輸出するにとどまってい
ない(EIA:2 0 1 5 年 7 月の Short-Term Energy Outlook。
る た め、 輸 出 国 と し て の 存 在 感 は 薄 い。 と は い え、
Wood Mackenzie:2 0 1 5 年 6 月 2 5 日付 Bloomberg 記事。
2 0 1 4 年の天然ガス生産量は 1,7 2 6 億㎥ / 年(1 6 7 億 cf/d)
Goldman Sachs:2 0 1 7 年 7 月 1 4 日 Bloomberg 記事)。制
と、前年比で86億㎥ /年増となり、増加傾向にある(図6)。
裁解除を見据えて既にイランが油田の生産再開に向けた
ガス田開発とエネルギー効率化の両方に進展が見られれ
準備を進めているとも言われるが、資金的な制約がある
ば、今後輸出量が拡大していく可能性はあるだろう。
ことを考えれば疑問は残る。
また、これら油田はいずれも、油層内の圧力低下によ
< イラン政府の生産方針 >
る生産量減退という問題を抱えているので、このままで
2 0 1 5 年 5 月 1 8 日、ジャヴァディ NIOC 社長は、イラ
いけば、中期的には現在と同レベルの生産量を維持し、
ンの天然ガス生産能力が 7 億㎥ /d(2,5 5 5 億㎥ / 年)に到
その後徐々に自然減退していくと考えられる。回収率の
達したと発表するとともに、今後は毎年 1 億㎥ /d(3 6 5
維持・向上には外資企業の資金力と増進回収(EOR:
億㎥ / 年)ずつ増加し、第 6 次五カ年計画(2 0 1 6 年 3 月~
Enhanced Oil Recovery)
の技術が必要不可欠だ。
2021年3月)が完了するまでに13億㎥ /d(4,745億㎥ /年)
このほかにも、2 0 1 5 年 4 月 1 4 日のザンギャネ大臣の
に拡大させる目標であると発言した。BP 統計によれば
発言によれば、イラン南部の石油関連施設はそのほとん
2 0 1 4 年のガス生産量は 1,7 2 6 億㎥ / 年であるので、能
どが建設から 4 0 年以上経過しており、新設備建設の必
力拡大が計画どおりに進めば、およそ 5 年の間に 3 倍弱
要性に迫られている。こうしたことも含め、今後イラン
の増加が見込めることになる。このほか、国営ガス会社
は上流分野に対する 2 0 0 億ドルの投資を必要とするとの
National Iranian Gas Company(以降 NIGC と表記)も、
ことだが、ここ 1 ~ 2 年の短期間でそれらが実現すると
2 0 2 5 年までに世界のガス取引量の 8 ~ 1 0 %までシェア
は考えにくい
(イラン側からは、2 0 1 8 年にかけて、石油・
を拡大させたいとしている(BP 統計では 2 0 1 4 年のシェ
天然ガス事業全体に対して 1,0 0 0 億ドル以上の投資が必
アは 0.8 5 %と 1 割に満たない)。
要との声も聞かれる)
。
以上を踏まえると、制裁解除のタイミングに関しては
< サウスパース・ガス田の開発促進が鍵 >
不透明性が残るものの、イランの原油輸出量は短期的に
イランの主力ガス田は他でもない洋上のサウスパース
は 2 0 万~ 3 0 万 b/d 増程度にとどまり、イランが目標と
だ(図 7)。1 3 兆 5,0 0 0 億㎥(4 7 7 兆 cf)という世界有数
する 1 0 0 万 b/d の増加が可能になるまでには少なく見積
の埋蔵量規模を誇る同ガス田は、イランの確認埋蔵量の
もっても 1 年、外資企業の参入状況如何では、2 0 1 7 ~
およそ 4 割を占めるほか、ガス産出量は国内総生産量の
2 0 1 8 年になる可能性も
あると考える。
億m3/年
(2)
天然ガス生産の展望
1,800
埋蔵量規模から見る
1,600
と、イランは世界第 1 位
1,400
の天然ガス賦存国であ
1,200
1,000
る。BP 統計によると確
800
認埋蔵量は34兆㎥
(1,201
600
兆 cf)で、世界全体の 2
400
割弱を占める。しかし、
埋蔵量第2位のロシア
(32
200
0
年
兆 6,0 0 0 億 ㎥ =1,1 5 3 兆
cf)と第 3 位のカタール
(2 4 兆 5,0 0 0 億 ㎥ =8 6 6
兆 cf)とは異なり、生産
7 石油・天然ガスレビュー
生産量
国内消費量
出所:BP 統計を基に作成
図6 イランの天然ガス生産量
アナリシス
約 7 割に上るという。サウス
製油所
イラク
パース・ガス田の 3 0 弱ある
Esfahan
Ahwaz
油田
ガス田
Azadegan
開発フェーズのうち、かつて
Aghajari
Yadavaran
T o t a l、E n i、S t a t o i l、
Bandar
Khomeini
Gazprom、Petronas などの外
クウェート
Firuzabad
North Pars
Golshan
ズ 1 ~ 1 0 は既に生産を開始
Kerman
Shiraz
Burgan
(クウェート)
資企業も一部携わったフェー
イラン
Gachsaran
Abadan
Assaluyeh
サウスパース・ガス田
サウジアラビア
している(表 1)
。しかし、制
Bandar Abbas
Ferdowsi
Lavan Island
バーレーン
裁によって外資が軒並み撤退
カタール
したことで、それ以降の開発
North Field
(カタール)
UAE
Ghawar
(サウジアラビア)
は 遅 れ に 見 舞 わ れ て い る。
オマーン
2 0 1 5 年 3 月にフェーズ 1 2 の
こ
生産開始に漕ぎ着けたイラン
IRAN
QATA
R
は、こ れ を 皮 切りに サ ウ ス
サウスパース・ガス田(イラン側)
パース・ガス田開発の進展に
Assaluyeh
ガス処理施設へ
14
弾みをつけるべく、2 0 1 5 ~
2 0 1 6 年にかけてフェーズ 1 5
~ 1 6 と 1 7 ~ 1 8 も生産 段階
1,19
に移行させる予定だ。フェー
4
9
20
16
10
6
21
2
ズ 1 2 は将来的には 3 0 0 億㎥ /
15
5
17,18
7
3
8
13
年 を、 ま た 1 5 ~ 1 6 と 1 7 ~
11
1 8 は合わせて 4 0 0 億㎥ / 年を
12
生産する計画である。また、
ジャヴァディ NIOC 社長によ
ノースフィールド・ガス田
(カタール側)
れば、サウスパースの全開発
フェーズが完成すれば、イラ
ンのガス生産量は 4,0 0 0 億㎥
/ 年近くにまで増加すること
22
23
24
0
20
40
km
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図7 サウスパース・ガス田
表1 サウスパース・ガス田―生産開始済み開発フェーズの概要
フェーズ
参加企業(*を付した企業がオペレーター)
概要
フェーズ 1
・2 0 0 4 年 1 月生産開始。
Petropars(イラン)* 1 0 0 %→ 2 0 0 4 年 9 月、操業権を
・ガス 8 7 億㎥ / 年、コンデンセート 4 万 b/d、LPG1.5 万 b/d を生産
Pars Oil and Gas Company(POGC)(同)に移管
中(2 0 1 4 年時点)。
フェーズ 2 ~ 3
Total(仏)* 4 0 %、Petronas(マレーシア)3 0 %、
Gazprom(露)3 0 %→ 2 0 0 3 年 1 月、操業権を POGC
に移管
・2 0 0 2 年 6 月生産開始。
・ガス 1 7 6 億㎥ / 年、コンデンセート 8 万 b/d、LPG3 万 b/d を生産
中(2 0 1 4 年時点)。
フェーズ 4 ~ 5
Eni(伊)* 6 0 %、Petropars 2 0 %、NICO(イラン)
2 0 %→ 2 0 0 5 年、操業権を POGC に移管
・2 0 0 4 年 8 月生産開始。
・ガス 1 8 6 億㎥ / 年、コンデンセート 8 万 b/d、LPG3.5 万 b/d を生産
中(2 0 1 4 年時点)。
フェーズ 6 ~ 8
・2 0 0 8 年 8 月に生産開始。
Petropars * 6 0 %、Statoil(ノルウェー)4 0 %→ 2 0 1 0
・ガス 7 0 億㎥ / 年、コンデンセート 8 万 b/d、LPG2 5 万 b/d を生産
年、操業権を POGC に移管
中(2 0 1 4 年時点)。
フェーズ 9 ~ 1 0
POGC *(イラン)1 0 0 %
・フェーズ 9 は 2 0 0 9 年 3 月、フェーズ 1 0 は 2 0 1 1 年 8 月に生産開始。
・ガス 1 7 0 億㎥ / 年、コンデンセート 7.5 万 b/d、LPG3 万 b/d を生産
中(2 0 1 4 年時点)。
フェーズ 1 2
Petropars * 8 0 %、
Sonangol(アンゴラ)2 0 %→ 2 0 1 2 年 2 月に撤退
・2 0 1 4 年 3 月に生産開始。
・Iran LNG 向けを想定。
・ガス56億㎥ /年、コンデンセート2.5万b/dを生産中(2014年時点)
。
・2 0 1 4 年 6 月、初の NGL カーゴ(9 5 万バレル)を出荷。
出所:各種情報を基に作成
2015.9 Vol.49 No.5 8
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
になる。しかし、経済制裁による資金・技術不足を理由
ンの国内消費量は 6 0 %近く伸びた(図 6)
。政府は国内
に開発スケジュールが当初の計画よりも大幅に遅れてい
ガス価格の値上げを検討しているとされるが、実施に移
る現状に鑑みれば、4,0 0 0 億㎥ / 年の達成には時間を要
される段階にまでは至っていない。また、需要に大きく
すると言わざるを得ない。IEA は、2 0 2 0 年までの生産
影響する人口の変動については、イラン・イラク戦争直
量の伸びは250億㎥ /年にとどまると予測している
(2015
後から開始した多産奨励策を背景に 1 9 7 0 ~ 1 9 9 0 年の
年 Medium-Term Gas Market Report)
。
2 0 年間で人口がほぼ倍に膨れ上がった。このため、政
輸出に関しては、トルコ、欧州、湾岸産油国やパキス
府はそれまでの方針を変更し人口抑制策を講じてきた。
タンへのガス供給構想がある。当面実現性が高いのは、
1 9 8 0 年に 6.5 %だった出生率が、2 0 1 3 年には 1.9 %にま
LNG プラントが十分に活用されていない近隣のオマーン
で減少したことなどを受け(世界銀行)、国内のガス需要
や UAE、またはクウェートに向けた供給だろう。米・イ
は約 2,0 0 0 億㎥ / 年で頭打ちになるとの見方もある。今
ラン間の核交渉に際して仲介役を担ったオマーンに関し
後需要の伸びが鈍化すれば、輸出量が徐々に増加してい
ては、国内ガス需要が増加する一方で、既締結の LNG 輸
く可能性はあるだろう。しかし、2 0 1 3 年 1 1 月、ハメネ
出契約も履行せねばならず、Dolphin パイプラインでカ
イ最高指導者は「国にとって若者のイメージは必要不可
タールからUAE を経由してガスを輸入している。オマー
欠」とし、人口を 7,5 0 0 万人から 1 億 5,0 0 0 万人に増加さ
ンのタイトガス開発が今後どれほどの進展を見せるかに
せたい意向を明らかにした。これによりイラン政府の方
もかかるが、イランは、6 月にオマーン向けのガス輸出
針はまたも 1 8 0 度転換し、人口増加を推進するため、
の商業性調査をコンサルタント会社に委託したとの情報
CM による呼びかけや政府公式お見合いサイトの開設な
もあり、オマーン向けパイプライン構想の検討を開始し
どが行われている(2 0 1 5 年 6 月 1 9 日付読売新聞記事)。
たようだ。供給先としてUAEも考えられるが、
同国のシャ
人口の増減は国内需要を大きく左右する要因ともなるの
ルジャ首長国に本拠地を置くCrescent Petroleum との間
で、今後の動向を注視していく必要がある。
では、2 0 0 1 年に締結した契約に基づく販売価格が低す
ぎるとしてガスの供給を止めるなど、係争に発展してい
(3)外資参入までの道のりは険しい
る。本件に関しては、2 0 1 4 年にイラン側が敗訴。イラ
石油と天然ガスのどちらにも当てはまることとして、
ン側によれば 1 0 0 億ドル以上の損失となるようだ。油価
今後大幅な増産を成し遂げるためには外資の資金力と技
下落の現状では、販売価格交渉においてイランは更に難
術力が必要不可欠だ。2 0 1 3 年 8 月に大統領に就任した
しい局面に立たされることになるだろう。
ロウハニ師は、ザンギャネ氏をはじめ、ハタミ政権時代
一方、イランは近々イラクに向けてガス供給を開始す
に石油行政を担い、外国企業とも良好な関係を保ってい
る予定だ(最終的には 9 1 億㎥ / 年〈8 億 8,0 0 0 万 cf/d〉を輸
る元幹部らを石油省の要職に呼び戻した。かつて外資と
出予定)
。2 0 1 5 年 5 月 1 9 日のマジェディ・イラン石油省
の開発契約を多数締結した実績を持つザンギャネ大臣の
次官の発言によると、パイプライン敷設の進捗状況につ
下、外国企業を受け入れるための態勢づくりが進んでい
いてはイラン側が 8 0 %、イラク側が 9 5 %完成している。
る。とりわけ注目されるのが、対外開放の対象となる石
しかし、治安の悪化により建設作業が遅れ、供給開始時
油・天然ガス上流案件の選定状況だ(詳しくは 3.(1)を
期は 2 0 1 6 年 3 月に延期された
(当初は 2 0 1 4 年を予定)
。
参照頂きたい)
。とはいえ、制裁解除までに 1 年間を要
治安問題ではトルコ向けパイプラインも被害を受けて
する可能性があることは先に述べたとおりであり、正式
いる。2 0 1 5 年 7 月 2 4 日、トルコ東部(イランとの国境か
な入札実施は更にその後ということになる。また、もう
ら1 5km の Ağrı 地方)でイラン・トルコ間パイプラインが
一つ重要なこととして、改定が進んでいる新石油契約方
爆破された。クルドとの抗争や武装勢力 ISIL の問題が解
式 IPC(Iran Petroleum Contract)が、評判の悪かったバ
決しない限り、ガス供給が途絶する懸念は常につきまと
イバック契約に代わってどれだけ国際石油会社(IOC)の
うことになる。このほか、
欧州向けガス供給構想もあるが、
関心を引くことができるかが大きな課題だ。
ガス価格下落の現状ではパイプラインの整備にも商業性
2 0 1 3 年 9 月に設置された特別委員会が契約条件の見
の面で問題があり、短期間で実現する見込みは薄い。
直しに当たっており、委員長を務めるメフディ・ホセイ
最後に国内需要の動向についても触れておきたい。ガ
ニ氏が 2 0 1 5 年 6 月に語ったところによると、2、3 項目
スは、イランの 1 次エネルギー消費量全体の半分以上を
を残しほぼ完成しているという。IPC のお披露目を兼ね
占めると言われ、政府による補助金政策が国内需要を更
た説明会がロンドンで開催されるとの案内はかねてある
に押し上げている。2 0 0 4 ~ 2 0 1 4 年の 1 0 年間で、イラ
ものの、開催日程については延期に次ぐ延期に見舞われ
9 石油・天然ガスレビュー
ひ
ろ
め
アナリシス
ている。2 0 1 5 年 7 月 2 8 日には、説明会の開催時期を 9
3 7 条と、2 0 1 5 年 7 月 2 0 日に採択された国連安保理決議
月から 1 2 月 1 4 ~ 1 6 日に延期するとの発表があったば
2 2 3 1 の第 1 4 条に言及されており、制裁が解除されてか
*5
かりだ 。制裁解除の見通しが立った頃に大々的に発表
ら再発動される間にイランとの間で締結された契約に対
したいというイラン政府の思惑があるものと思われる。
して、制裁は適用されることはないと規定している* 6。
なお、IPC の全貌については依然明らかになっていな
しかし、条文の後半には、「それら契約内容の実行が
い点が多いとはいえ、治安面ではイラクよりも、またコ
JCPOA とこれまでの国連安保理決議に違反していない
スト面では西アフリカやブラジルよりも好条件の揃って
という条件の下で」という旨の記述もあり、解釈が難し
いるイランの契約条件が改善されれば、外資にとっては
い。制裁が元に戻された場合、それまでに結んだ契約が
十分投資意欲をそそられる要因となるだろう。
白紙に戻ることはなくとも、制裁が再び解除されるまで
増産に向けた課題は他にもある。イラン側の官僚的な
は一時事業を停止もしくは規模を縮小せざるを得ないと
意思決定プロセスや実務面の非効率性、地政学上のリス
すると、外資にとってはリスクが高すぎる。今後企業は
クの高まりが外資呼び込みの妨げになり得ると分析する
イランにおける新規事業のリスク評価に相応の時間をか
アナリストもいる。また、制裁の解除と契約条件の改定
けることが当然予想される。商業性の評価を経て、外資
という 2 点が実現したとしても、イランによる合意内容
企業が権益を獲得し、更に人員、資金、技術を投入し、
の不履行が発覚した場合には制裁再発動(いわゆる
最終的に事業が動き出して軌道に乗るまでには、数年単
「snapback」
)の恐れがある。
「snapback」については、
位の期間を要することになるだろう。
2 0 1 5 年 7 月 1 4 日の「包括的共同行動計画」
(JCPOA)第
3. イランの石油・天然ガス産業の展望:今後注目される開発案件
イランのエネルギー産業を短期的視点から捉えた場
ついてはイラン国内でも意見が割れている。ザンギャネ
合、増産に向けては多くの課題があることは確かだ。し
石油大臣は、Gachsaran や Marun などの大型老朽油田の
かし、埋蔵量規模で考えれば石油・天然ガスともに世界
回収率向上事業を挙げているが、国営 NIOC 幹部らは、
有数のポテンシャルを有していることは既述のとお
りで、投資環境が改善され、十分な資金と技術が投
入されれば、長期的には生産量が大きく伸びる可能
表2 対外開放の可能性がある油田一覧
性はある。本章では、今後注目していくべき上流・
下流案件を紹介する。
油田
隣国との国境にまたがる油田
その他の油田
1 South Azadegan(Phase1)
1 Mansuri(Phase2)
2 North Azadegan(Phase2)
2 Band-e-Karkheh
3 Yadavaran(Phase2)
3 Jofayr
4 Reshadat
4 Somar
5 Foroozan
5 Danan(Phase2)
約 5 0 の油・ガス田
(とそれに付随するインフラ事業)
6 South Pars Oil Layer(Phase1)
6 Darquain(Phase3)
が対象候補として挙がっているようだ(表 2、表 3、
7 Arvand
7 Susangerd
図 8)
。このほか、南東部 Jask における石油ターミ
8 Dehloran(Phase2)
8 Sepehr
ナルと貯蔵タンクの建設、南西部 Goreh・Jask 間パ
9 Peydar Gharb
9 Cheshmeh Khosh
(1)
対外公開が予定されている油・ガス田について
現在イランは入札公開対象となる上流案件の選定
に取り掛かっている。今のところ公式の発表はない
ものの、報道などによれば、探鉱・生産段階を含む
イプラインや、南西部 Bahregan における石油ター
ミナルの建設、随伴ガス回収事業、石油・ガスプラ
ントに併設する住居やレクリエーション施設の建設
なども開放対象として検討されているようだ。
ただし、どの案件を優先的に外資に開放するかに
1 0 Aban(Phase2)
1 0 Resalat
1 1 Sohrab
1 1 Abuzar
1 2 Changouleh
1 2 Doroud
1 3 Esfandiar(Phase1)
1 3 Norouz
1 4 Arash
1 4 Zagheh
出所:各種情報を基に作成
2015.9 Vol.49 No.5 10
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
隣国との国境にまたがる油・ガス田(サウスパース・ガ
を生産していることを考えると、外資参入で増産につ
ス田(カタールとの国境上)
、Farzad ガス田・Foroozan
ながる可能性は十分にある。
油田・Esfandiar 油田(サウジアラビア)
、Salman 油
田(UAE)など)の開発を優先事項に掲げている。な
お、サウスパース・ガス田(開発フェーズ 1 1)に関
表3 対外開放の可能性があるガス田一覧
しては、ジャヴァディ NIOC 社長が公開対象になる
ガス田
との見解を表明している一方で、ザンギャネ大臣は
隣国との国境にまたがるガス田
これを否定している。今後、開放対象案件選定に向
けたイラン国内の動きを注視していく必要がある。
その他のガス田
1 South Pars(Phase1 1)
1 Dey
2 Salman(Phase1)
2 Sefidzakhor-Halegan
ちなみに、主力油田の自然減退を食い止めたいの
3 Salman(Phase2)
3 Sefidbaghoun
は理解できるが、なぜ NIOC は国境上に位置する油・
4 Farzad A
4 Aghar(Phase2)
ガス田の開発を急ぐのか。イランのアザデガン油田
5 Farzad B
5 Farashband:Refining Facilities
やヤダバラン油田と地質的に連続した構造を持つイ
6 Reshadat
6 Varavi:ガス圧送ステーション
7 Dalan Kangan At Balal
7 Kangan:ガス圧送ステーション
8 Arash
8 Nar:ガス圧送ステーション
ラクのマジュヌーン油田や、サウスパース・ガス田
と連続しているカタールのノースフィールド・ガス
9 Homa:ガス圧送ステーション
田などが例として挙げられるが、経済制裁の影響で
1 0 Behregansar Gas Layer
資金不足に陥っているイランは、国境地帯の開発進
1 1 Tangebijar(Phase2)
展において隣国から大きく後れを取っており、早急
1 2 Kish(Phase3)3D Seismic
に生産段階に移行あるいは増産させたいという事情
1 3 Kish(Phase1)
出所:各種情報を基に作成
がある。
(2)注目される石油関連
事業
Changouleh
今後注目すべき事業
として挙げられるのは、
Dehloran Ph2
国との国境をまたぐ油
Bend-e-Karkheh
Peydar Gharb
既 述 の と お り、 老 朽 大
型油田の EOR 案件と隣
Tangebijar Ph2
Danan Ph2
Aban Ph2
Cheshmeh Khosh
Somar
Sohrab
Doroud
Jofayr
イラク
Susangerd
S.Azadegan Ph1
N.Azadegan Ph2
Sepehr
Mansuri Ph2
イラン
Yadavaran Ph2
Darquain Ph3
田 の 開 発 案 件 だ。 前 者
に 関 し て は、 イ ラ ン の
主要油田の回収率は 1 5
~ 2 5 %にとどまると言
Norouz
Abuzar
クウェート
わ れ、 外 資 の 技 術 導 入
Esfandiar Ph1
によって向上の余地が
ある(表 4)。また、後者
Homa : ガス圧送ステーション
Kangan:
ガス圧送ステーション
Farzad A/B
の国境にまたがるアザ
Varavi : ガス圧送ステーション
サウジアラビア
S. Pars Ph11
ン油田などが挙げられ
S. Pars Oil Layer Ph1
る(表 5)。両油田は孔隙
バーレーン
こうげき
率の低さから技術的な
Dalan Kangan At Balal
カタール
困難を抱えてはいるが、
Shell がオペレーターを
務めるイラクのマジュ
ヌ ー ン 油 田 が 2 2 万 b/d
11 石油・天然ガスレビュー
Nar :
ガス圧送ステーション
Foroozan
に つ い て は、 イ ラ ク と
デガン油田やヤダバラ
Aghar Ph2
Arash
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図8 対外開放の可能性がある主要油・ガス田
Kish Ph3
3D Seismic/
Kish Ph1
Reshadat
Resalat
Salman Ph1, Ph2
アナリシス
< 隣国との国境にまたがる主要油田の開発状況 >
②北アザデガン油田
アザデガン油田
CNPC が操業を請け負っている北アザデガン油田の現
陸上の南部アザデガン油田においては、2 0 0 4 年 2 月
生産量は 2 万 b/d 程度(当初の予定では 2 0 1 3 年 1 月に 7
に国際石油開発帝石株式会社
(INPEX)
が NIOC との間で
万 5,0 0 0b/d)にとどまると見られる。2 0 1 5 年 4 月末に国
同油田の評価・開発に係る契約を締結し、7 5 %の権益
営 PEDEC(Petroleum Engineering and Development
を取得したが(2 0 0 6 年 1 0 月には権益の 6 5 %を NIOC の
Company)のBehbahani局長が発言したところによると、
子会社である Naftiran Intertrade Company〈NICO〉に譲
第 1 開発フェーズはおよそ 9 割が完了しているとのこと
渡すると同時に、オペレーター権も移管)
、2 0 1 0 年 1 0 月、
で(当初の完成予定時期は 2 0 1 4 年末)、イラン暦 Tir 月
同プロジェクトから撤退することについて NIOC との間
(2 0 1 5 年 6 月 2 2 日~)に 7 万 5,0 0 0b/d で生産を開始する
で合意したことを表明し、権益を返還している。
予定であった。しかし、今のところ実際に第 1 フェーズ
の生産が開始されたという発表はない。今後は、第 2 開
①南アザデガン油田
発フェーズ(更に 7 万 5,0 0 0b/d の生産を予定)の開発請
イラクとの国境地帯に位置する南アザデガン油田の原
負業者の選定が行われることになる。北アザデガン油田
始埋蔵量は 2 6 0 億バレルとも言われる。2 0 0 9 年に中国
については短期的には大幅増産の見込みは薄く、2 0 1 5
国営 CNPC が同油田の開発に関する 2 5 億ドルの合意を
年後半に約 3 万 b/d、2 0 1 8 年頃に第 1 フェーズの目標量
締結し、生産開始当初は 5 2 カ月以内に石油 3 2 万 b/d(天
7 万 5,0 0 0b/d に達するのではないかと考えられる。
然ガスについては約 2 0 億㎥ / 年)を生産する予定であっ
た。しかし事業は計画どおり進まず、生産量は 5 万 b/d
ヤダバラン油田
以後、伸び悩んだ。これを受け NIOC は、2 0 1 4 年 4 月末、
中国国営 SINOPEC が操業を請け負っているヤダバラ
南アザデガン事業の権益を没収する旨の公式な通達を
ン油田は、約 5 万 b/d を生産していると見られ、2 0 1 5
CNPC に対して行っている。外資の参入によって開発の
年中には開発フェーズ 1 の完了に伴い 8 万 5,0 0 0b/d(当
進展が加速するという可能性はあるものの、現在のとこ
初目標では2014年10月初旬)に増加させたいとしている。
ろ同油田の生産量が 1 0 万 b/d 台に到達するのは 2 0 1 8 ~
しかし、これまでの事業進展状況を考慮すると、1 ~ 2
2 0 2 0 年頃になると見られている。
年は遅れる可能性が高い。
サウスパース・ガス田
(コンデンセート)
サウスパース・ガス田から産出さ
表4 EOR 技術の適用が期待される老朽油田
れるコンデンセートは今後伸びてい
制裁前の生産量(万 b/d)
確認埋蔵量(億 bbl)
生産開始年
くことが予想される。2 0 1 5 年 6 月
Ahwaz
80
148
1960
時点のイランのコンデンセート生産
Marun
50
120
1965
量は約 4 5 万 b/d(IEA、図 9)で、ザ
Gachsaran
50
60
1940
ンギャネ石油大臣はこれを 2 0 1 7 ~
Bibi Hakimeh
10
29
1964
5
7
1939
2 0 1 8 年に 1 0 0 万 b/d にまで増加さ
195
364
―
油田名
Aghajari
計
出所:各種情報を基に作成
せたいと発言している。
2 0 1 5 年 5 月 7 日、 ジ ャ ヴ ァ デ ィ
NIOC 社長は、制裁解除の如何にか
かわらず、2 0 1 6 年 3 月までに、イ
表5 隣国との国境をまたぐ主要油田
ラクとの国境上に位置するアザデガ
油田名
*推定値 確認埋蔵量
生産量(万 b/d)
(億 bbl) 地質的に連続した構造を持つ油田
Azadegan
7
50
Majnoon(イラク)
Foroozan
3.5
7
Marjan(サウジアラビア)
Dehloran
0.5
7
Abu Ghirab(イラク)
5
10
Majnoon(イラク)
16
74
―
Yadavaran
計
出所:各種情報を基に作成
ン、ヤダバラン、南ヤラン油田から
の総生産量を、現在の 1 0 万 b/d か
ら 2 5 万 b/d まで増加することを目
標にしている。なお、カールーン西
部に位置するこれら油田群の生産能
力を 3 年間で 7 4 万 b/d まで増強する
2015.9 Vol.49 No.5 12
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
45
産するプラントを建設するこ
万b/d
とに関して既に暫定的な合意
40
に達しており、2 0 万トン / 年
35
の ABS 樹脂などを生産する
30
ことを目標に掲げている。
25
20
(3)注目されるガス関連事業
15
国 営 ガ ス 会 社 NIGC の
10
Azizollah Ramezani 国際問題
5
局長が 2 0 1 5 年 6 月に語った
ところによると、世界のガス
0
2003 2004 2005 2006
(注)2015 年は 1 ~ 6 月の平均値
出所:IEA 統計を基に作成
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図9 イランのコンデンセート生産量
2013
2014
2015
年
取引量におけるイランのシェ
アを 2 0 2 5 年までに 8 ~ 1 0 %
まで増加させたいとする同社
の目標達成のため 1,0 0 0 億ド
ルの資金が必要で、およそ半
分の額については外国からの
ための 2 0 0 億ドルのプロジェクトは 2 0 1 8 年末までには
投資を期待しているとのことである。このうち 2 0 0 億ド
完了する予定とのことである。制裁解除のタイミングが
ル超が中流事業に充てられ、ガスの処理能力および脱水
不透明であるため、計画が後ろ倒しになる可能性はある
能力を 2 0 2 5 年までに現状の 2 倍の 1 2 億㎥ / 年にまで増
ものの、外資の参入による増産が期待されるところだ。
強するという。また、中流拡大計画のうち、最も多くの
資金が投入されるのが国内パイプライン網の整備だ。
< 石油化学事業 >
6 3 億ドルをかけて全長 2,7 5 0km のパイプラインを敷き、
石油化学産業の発展もイランが以前より掲げている目
2 0 1 7 年に送ガス能力を 1 0 億㎥ / 年増加するとしている
標の一つだ。石油・天然ガスの輸出収入に対する過度の
ほか、南部の Assaluyeh から北西部の Bazargan までを
依 存 か ら 脱 却 す る た め、 第 4 次 五 カ 年 計 画(2 0 0 5 ~
結ぶ全長 1,8 0 0km のパイプライン(5 6 インチ)建設には
2 0 1 0 年)中に多額の資金が投入された。2 0 1 0 年に発表
5 1 億ドルが投入される計画だ。加えて、能力 1,7 2 5MW
された第 5 次五カ年計画(2 0 1 0 ~ 2 0 1 5 年)においては、
のガス圧送ステーションを 1 6 基建設する計画もある。
オレフィン系炭化水素、ベンジン、メタノール、化学肥
料などの生産能力を 2 0 1 5 年までに 2 倍に増強する計画
< イラン・パキスタン間ガスパイプライン >
であった。経済制裁の影響で計画は予定どおりに進んで
このほか、イラン・パキスタン間ガスパイプラインの
いないが、2 0 1 5 年 7 月 1 4 日のイラン核開発に関する最
建 設 計 画 に中 国 が 乗り出し て いる( 図 10、図 11)
。
終合意を受け、石油化学製品の生産量は将来的には伸び
2 0 1 5 年 4 月 2 0 日に習近平国家主席がイスラマバードを
ていこう。特にイランのエチレン生産能力(6 3 0 万トン)
訪問し、パキスタンにイラン産ガスを輸送するためパイ
は注目に値し、中東ではサウジアラビア(1,5 9 0 万トン)
プラインを一部中国企業が建設することで合意したよう
に次ぐ規模を誇る。経済制裁の煽りを受けてプラントの
だ(両政府は、両国間に「経済回廊」を築き上げることを目
稼働率は低水準のままで、ポリエチレンをはじめとする
標に、Gwadar 港から中国南西部をつなぐ道路の建設と
派生商品の輸出ポテンシャルは大きい。
線路の敷設も計画している)
。本プロジェクトは「Peace
石化関連の最新動向としては、中東地域では最大規模
Pipeline」と名付けられ、パキスタンの Abbasi 石油大臣に
となる石化複合施設を南西部の Assaluyeh に建設する計
よれば「既に建設中」とのことである。パキスタン政府は
画があり、イランと Maire Tecnimont(伊)が 2 0 1 5 年 3
数カ月にわたり、中国政府
(直接の交渉相手は国営石油会
月 1 日 に 協 議 を 開 始 し て い る。 こ れ に 伴 い、 同 社 の
社 CNPC 傘下の China Petroleum Pipeline Bureau)との
Pierroberto Folgiero CEO はテヘランを訪問したよう
間で同事業への投資に関して協議を続けていた。
だ。両者は、Pars エネルギー経済特区に ABS 樹脂(アク
両国間の合意に基づき、中国は総工費の 8 5 %を負担
リロニトリル・ブタジエン・スチレン)と合成ゴムを生
する(南西の Gwadar 港から南部 Nawabshah までを結ぶ
13 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
全長 7 0 0km)。投資額は 1 5 億~ 1 8 億ドル(LNG 受け入
2 0 1 5 年 7 月 2 3 日、
「
(イ・パ間パイプラインの建設は)
れターミナルも含まれる場合は 2 0 億ドル)になる見込み
われわれにとって死活問題である。制裁が解除されれば
である。一方のパキスタン政府は、Gwadar 港からイラ
すぐにでも(イランからのガス輸入を)進めたい」と発言
ン国境までの 8 0km の建設を担当する。建設完了までに
している。イランとパキスタンの間では、まだ販売価格
は 2 年間を要するとされ、完
成すれば、エネルギー不足に
直面しているパキスタンに対
Kabul
Tehran
して 4,5 0 0MW の電力供給が
Islamabad
可能となる(ちなみに同国の
エネルギーミックスのうちガ
A F G H A N I S TA N
スは 5 割弱を占める)
。イラ
ン側の 9 0 0km に及ぶパイプ
IRAN
ラインは既に建設が完了して
いる(最後の 2 5 0km について
PA K I S TA N
は未完成との情報もある)
。
Nawabshah
Assaluyeh
イランは過去数回にわたり、
パキスタンに対して建設の
BAHRAIN
Karachi
ペースを速めるよう要請して
Gwadar
Q ATA R
いた。シャリフ・パキスタン
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
首相の外務担当顧問を務める
図10 イラン・パキスタン間ガスパイプライン
Syed Tariq Fatemi 氏 は、
Finland
Norway
m
a
re
Vyborg
m
or
d
55
St
Bc
Sweden
N
NEL
No
Greifswald
Germany
Olbernhau
O PAL
AL
MID
Rehden
n
er
rth
ts
gh
Li
Russia
Belarus
Poland
Orenburg
Yelets
z
Soyu
Soyuz
ood
herh
Brot Ukraine
Czech
Uzhgorod
Hungary
CA
C
Kazakhstan
Austria
T
(1
00)
Greece
Turkey
am
Dzhubga
0
St
ue
Bl Samsun
Tanap
16
AP
(315)
Georgia
S
Caouth
uca
sus
C-3
Bulgaria
Russkaya
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rkish Str
Tu
re
CA
Slovenia
Croatia
Bosnia- ?
Herzegovina
Serbia
Italy
Trans
Ba
lka
n
Romania
Uzbekistan
Azerbaijan
Erzurum
( 160)
Akkas
Iraq
●
100
Trans- Turkmenistan
Caspian
300
Dauletabad
Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
IGAT
Syria
Tabriz
Afghanistan
Iran
Asaluyeh
T
87
Kandahar
33API
0
Peace
Gwadar
●
Multan
Pakistan
Nawabshak
●
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図11 イラン・カスピ海周辺のガスパイプライン網
2015.9 Vol.49 No.5 14
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
をはじめとする契約条件の詳細について合意に至ってお
であるのみならず、相手がイランの場合には、制裁の再
らず、今後の進捗が期待される。
発動というリスクも抱えねばならないことになる。これ
一方、かつて米国は、パキスタンに対し制裁の可能性
らを考慮に入れた場合、最も楽観的な評価をしても、イ
をちらつかせることでパイプラインの建設を阻止しよう
ランの LNG プラントが完成するには少なくとも 2 0 1 8
とした経緯がある。1 9 9 5 年、イラン産ガスをパキスタ
~ 2 0 1 9 年まで待つ必要があるだろう。
ンとインドに供給する IPI(Iran-Pakistan-India)パイプ
もともと計画されていた LNG 案件中、唯一進展して
ライン構想が誕生したが、契約内容をめぐる対立、パキ
いるのはAssaluyeh港近くのIran LNG(1,100万トン/年)
スタン情勢の悪化や、米国からの圧力もあり、インド政
だ(表 6)。建設予定地は Assaluyeh の石油化学プラント
府は 2 0 0 9 年に計画からの脱退を表明した。米国は、ア
に近いほか、サウスパース・ガス田からのパイプライン
フガニスタンを介してトルクメニスタンからガスを供給
の揚げ地でもあり、多くの利点を有している。2 0 0 7 年
する TAPI(Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan-India)
に建設が開始された Iran LNG は、米国による経済制裁
パイプライン建設案のほうを後押ししていたが、同計画
を回避するため、液化技術の提供に関してドイツの化学
については関係国間の協議が長く続き、
決着していない。
工業メーカー Linde を採用したが、2 0 1 2 年初めに EU
による制裁が発動したことで事業は中断されていた。現
<LNG 事業 >
在建設工事の進捗率は 5 0 %と言われているが、NIGC に
仮に、最短シナリオどおり 2 0 1 6 年初めに制裁が解除
よれば、イラン側が建設を進めているのは貯蔵タンクや
されたとしても、LNG の輸出が開始するのは数年先に
積み出し桟橋のみで、液化設備についてはまだ手つかず
なるだろう。世界の LNG 市場が供給過多にあり、アジ
の状態だ。ドイツの Gabriel 副首相兼経済・エネルギー
アにおける需要の伸びが鈍化傾向にある一方で、豪や米
大臣が 2 0 1 5 年 7 月 1 9 日にテヘランを訪問した際には、
においては LNG 出荷プラントの建設案件が多数立ち上
大臣に随行した 6 0 名の企業団のなかに Linde 社の幹部
がっている。更に、油価下落の影響を受け LNG 価格も
も含まれていたとのことで、Iran LNG の具現化に向け
落ち込む昨今、イランの LNG 輸出計画がそう容易に軌
た何らかの進展が見られるかもしれない。なお、2 0 1 5
道に乗るとは考えにくいからだ。支出削減を進める石油
年 6 月には、かつて Persian LNG に参画していた Shell
企業にとっても、LNG 案件は費用のかかる大規模事業
も代表団をテヘランに派遣している。
表6 計画中あるいは過去に計画されていたイランの LNG 案件
名称
参加企業(制裁前)
生産能力
対象ガス田
状態
Iran LNG
NIOC 5 0 %、BP 2 5 %、
Reliance(印)2 5 %
1,1 0 0 万トン / 年
(2 トレイン)
サウスパース
(フェーズ 1 2)
Pars LNG
NIOC 5 0 %、Total 3 0 %、 1,0 0 0 万トン / 年
Petronas 2 0 %
(2 トレイン)
サウスパース
(フェーズ 1 1)
保留
Persian LNG
NIOC 5 0 %、Shell 2 5 %、 1,6 2 0 万トン / 年
Repsol 2 5 %
(2 トレイン)
サウスパース
(フェーズ 1 3・1 4)
保留
NIOC LNG
NIOC 5 0 %、BG 2 5 %、
Eni 2 5 %
サウスパース
(フェーズ 1 2)
棚上げ
8 0 0 万トン / 年
(2 トレイン)
5 0 %完成
(液化処理設備除く)
出所:各種情報を基に作成
4. 欧米を中心とした各国・各社の動き
米国の石油メジャーについては、1 9 7 9 年のイラン・
などの欧州企業を中心とした外資が上・下流事業に携
イスラーム革命以来いずれも対イラン投資活動を行って
わっていた。最近では、制裁の解除を見越した欧州勢を
いない。しかし、制裁による撤退を余儀なくされるまで
中心に、イランとの人脈構築を強化しようとする各国政
は、Shell、Total、Eni、Lukoil、Statoil、OMV、Repsol
府や企業の動きが目立っている。
15 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
(1)Iran Oil & Gas Show 2 0 1 5
率化、再生可能エネルギー事業などに参画してくれるこ
2 0 1 5 年 5 月 6 ~ 9 日、 テ ヘ ラ ン で、 第 2 0 回
とを望むと発言している。一方、ドイツ商工会議所は、
「石
International Iran Oil, Gas, Refining and Petrochemical
油やガスの探索機器、化学薬品、医療品、食料品などド
Exhibition(通称:Iran Oil & Gas Show 2 0 1 5)が開催さ
イツ製品への潜在的需要は非常に大きい」と見ている
れた。イラン企業 1,2 0 0 社のほか、欧州やアジアをはじ
(2 0 1 5 年 7 月 2 1 日付毎日新聞記事)。
め 2 9 カ国
(英、仏、ベルギー、スペイン、オーストリア、
また、フランスのファビウス外務大臣も 7 月 2 9 日に
スイス、伊、独、モナコ、露、ウクライナ、カザフスタ
テヘランを訪問、オランド大統領からのパリへの招待状
ン、トルコ、UAE、印、シンガポール、韓、中、マレー
をロウハニ大統領に手渡すとともに、9 月には仏企業団
シア等)から約 6 0 0 社の外国企業が参加したと報じられ
もイランを訪問予定だと伝えた。このほか、英政府やイ
た。欧州勢の存在感が増した本年の展示会では、イラン
タリア政府も経済視察団の派遣を検討中との報道が見受
の石油・天然ガス産業が持つ潜在能力の活用に焦点が当
けられる。
てられたようだ。
欧州勢の関心の高さと積極姿勢を窺うことのできる
事例は他にもある。2015年7月23 ~ 24日にかけて、ウィー
(2)
欧州企業および政府を中心とした動き
ンで「Iran-EU Conference – Trade & Investment」と題
Shell は、2 0 1 5 年 6 月、同社の代表団がテヘランを訪
する対イラン投資セミナーが開催された * 7(図 1 2)。
問し、NIOC と会談したと発表している。Shell の報道担
イラン貿易振興機構主催の下、独・イラン商工会議所、
当によれば、同社がイランから 2 0 1 0 ~ 2 0 1 1 年の間に
仏・イラン商工会議所、英・イラン商工会議所の 3 者に
買い付けた原油の未払い代金
(2 0 億ドル)
について協議し
よる共催で、オーストリア連邦経済会議所で開かれた
たとのこと。また、制裁が解除されれば、
「イランのエ
同イベントには、イラン側から、Nematzadeh 産業・鉱
ネルギーポテンシャルを開発するために Shell として何
業・交易大臣、Zamaninia 商業・国際問題担当副石油大
ができるのか、イラン政府と模索していきたい」とも発
臣、その他国営ガス会社 NIGC、国営石油化学会社 NPC
言している。Eni の Claudio Descalzi CEO も、2 0 1 5 年以
の幹部らがスピーカーとして出席し、金融、エネルギー、
降数回にわたってテヘランを訪問しているとの情報もあ
鉱業、自動車・重機産業、ナノテクノロジー、医療エ
り、イランへの再参入の可能性を前向きに検討している
ンジニアリング分野などにおける投資環境について話
ことが窺われる。世界最大規模の商社 Glencore も、制裁
し合われた。
解除をにらみイラン側との接触を図っている。同社の報
ロ シ ア も イ ラ ン と の 関 係 を 強 化 し て い く 姿 勢 だ。
道担当によると、石油部門のトップを務める Alex Beard
2 0 1 5 年 7 月、Novak エネルギー大臣は、対イラン投資
氏が代表団を率いてテヘランを訪問し、将来的なビジネ
と石油・天然ガス分野における協力について協議する
スチャンスについてイラン側と意見交換したとのことで
ため、両国の高官が今秋にも会談を持つ予定だと明か
ある(2 0 1 5 年 7 月 3 日付 Financial Times 記事)
。また、
した。とはいえ、ロシア企業のイラン進出の可能性に
Schlumberger などのサービス会社も意欲を見せており、
ついては、イランが何を提供できるかにかかっており、
同社の報道担当は、制裁解除後にイランにおける投資ポ
現在のところロシアにとってイランに進出するだけの
テンシャルに関する評価を始めたいとの意向を明らかに
利点(privileges)はないように見受けられるとも Novak
した
(2 0 1 5 年 7 月 2 3 日付 Wall Street Journal 記事)
。
大臣は発言している。確かに、外資の呼び込みにおい
欧州では政府主導でイランに接近する動きもある。最
ては、契約方式の改定をはじめとする投資環境の整備・
終合意からわずか 5 日後の 2 0 1 5 年 7 月 1 9 日には、ドイ
改善こそが、制裁の解除と並んで重要な要素となって
ツの Gabriel 副首相兼経済・エネルギー大臣が 6 0 名の企
くるだろう。
業団を引き連れテヘランを訪問し、ロウハニ大統領やザ
ロシア企業の反応はどうだろうか。国営大手 Rosneft
ンギャネ石油大臣ら閣僚と会談した。
企業団のなかには、
の Mikhail Leontyev 副社長は、
「メジャーはどの企業も
自 動 車 大 手 の Daimler や Volkswagen、 電 機 大 手 の
イランに関心を持っており、当社も例外ではない」とす
Siemens に加え、Iran LNG にも技術を提供する予定だっ
る一方、油価下落を受けて企業各社が支出削減策を採っ
た化学工業メーカー Linde の幹部も含まれていた。ザン
ている今、参入までの道のりは平坦ではないとも付け加
ギャネ大臣は、2 0 1 5 年 7 月 2 0 日付の Shana 記事で、新
えている。このほか、制裁を受けて 2 0 1 0 年に Anaran
しい契約方式の発表後に、中小規模も含め多くのドイツ
開発プロジェクト(イラクとの国境沿いに位置する Azar
企業がイランの石化・精製・貯蔵分野や、エネルギー効
油 田 と Changuleh 油 田 の 開 発 事 業 ) か ら 手 を 引 い た
うかが
2015.9 Vol.49 No.5 16
核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発
Lukoil に つ い て は、
Vagit Alekperov 社長が
かねてイランの有望プロ
スペクトを調査している
と発言、Anaran プロジェ
クトへの再参画に期待を
寄せている
(同社は 2 0 1 5
年 4 月にテヘラン事務所
を再開)。一方、2 0 0 9 年
に上記 2 油田の開発に関
するMOU
(Memorandum
of Understanding)をイラ
ンとの間に締結した
Gazprom Neftは、 特 定
の事業を念頭に置いた協
議が進んでいることはな
いとし、コメントを避け
出所:http://www.iraneuropeconf.com/?q=en
図12 セミナー公式ウェブサイトのトップページ
ている。このほか、2 0 1 2
年に地質調査の対象とな
る地域の選定に関してイランと MOU を交わしたと報じ
ことではないだろう。
られた Zarubezhneft も、イランの動向に注目している
一方、ExxonMobil、Chevron、ConocoPhillips などの
ようだ。
米国メジャーが、制裁解除を後押しするためのロビイ活
動を行う可能性も指摘されている。事実、2 0 1 5 年 5 月
(3)
米国企業
には ExxonMobil がロビイスト会社 Nickles Group(元米
欧州企業の積極性と好対照をなすのが米国企業だ。
上院議員 Don Nickles が代表を務める)と契約したと報
1 9 9 5 年にはクリントン元米大統領が大統領令を発出し、
じ ら れ た が(2 0 1 5 年 5 月 2 1 日 付 Bloomberg 記 事 )
、
洋 上 の Sirri 油 田(A、E) 開 発 に 乗 り 出 そ う と す る
ExxonMobil は直ちに反論声明を発表し、これは、イラ
ConocoPhillips を押しとどめた過去もあり、米国企業の
ンの状況を監視するためでありロビイ活動ではない、と
イラン進出にはまだ高いハードルがあるとの見解が根強
報道内容を否定した。イラン側は米国大手の参入を熱望
くある。今後、米国による対イラン制裁の解除がいつ始
しているが、政治的配慮から、また米国内での世評の低
まり、
どのようなペースで進められるかが鍵を握ろうが、
下を恐れ、企業はイランへの関心を表明することに慎重
両国の間に横たわる強い不信感をぬぐい去るのは容易な
にならざるを得ないとの印象を受ける。
おわりに
イランの核問題をめぐる最終合意の実現に伴い、同国
で、イランに関心を寄せている外資企業が多いことも確
が比較的短期間で石油・天然ガスの生産量を増加させる
かである。改定作業中の新契約方式が外資をどれだけ引
のではないかとの観測が市場で広まっている。しかし、
きつけられるかにかかるが、世界最大規模の資源ポテン
制裁解除のタイミングとペースがまだ不透明であるこ
シャルを持つイランは非常に有望な投資対象となる可能
と、売り先の確保に課題があること、また外資参入から
性を秘めている。イランの将来的な成長を見据え、長期
事業の開始までには数年単位の時間が必要であることな
的視野でビジネスチャンスを開拓していくためにいま何
どを考えれば、留意すべき点は多い、と指摘した。一方
をなすべきなのか。各企業の今後の動向に注目が集まる。
17 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
< 注・解説 >
* 1: D
OS,“Parameters for a Joint Comprehensive Plan of Action Regarding the Islamic Republic of Iran’s Nuclear
Program”, Apr 2, 2 0 1 5, http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2 0 1 5/0 4/2 4 0 1 7 0.htm
* 2: ザ
ンギャネ石油大臣は、2 0 1 5 年 5 月 6 日、テヘランで開かれた国際見本市 International Iran Oil, Gas, Refining
and Petrochemical Exhibition(通称:Oil and Gas Show)において、
「不公平な制裁により、イランは市場シェア
の 6 割を失った」
と発言している。
* 3: 以
前、ザンギャネ大臣は解除の後 1 ~ 2 カ月で 5 0 万 b/d、6 ~ 7 カ月で更に 5 0 万 b/d 増加させることができると
発言しており、多少の矛盾はあるものの、増産を志向している点に変わりはない。
* 4: 2 0 1 1 年のスペインのイランからの原油輸入量は 7 5 0 万トン(1 5 万 b/d)と、同国の原油輸入量全体の 1 5 %、中東
からの輸入量のうち約半分を占めていた。
細については、以下公式ウェブサイトを参照のこと:http://www.iranoilgas-summit.com/
* 5: 詳
* 6: 国
連安保理決議 2 2 3 1 の内容については以下を参照のこと:http://www.un.org/press/en/2 0 1 5/sc1 1 9 7 4.doc.htm
セミナーの詳細については以下 URL を参照頂きたい:http://www.iraneuropeconf.com/?q=en
* 7: 同
執筆者紹介
増野 伊登(ましの いと)
愛媛県松山市出身。
学 歴:2008 年、慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。
職 歴:2011 年 8 月から 2013 年 8 月にかけ、専門調査員として在アラブ首長国連邦(UAE)
日本国大使館に勤務。2013 年 11 月より JOGMEC 調査部に勤務。中東・アフリカ地
域(イランとイラク、東部・南部アフリカ)を担当。
趣 味:25 年来の趣味は漫画。とにかく面白い漫画を発掘することに至上の喜びを感じる。
近 況:仕事でも趣味でも目を酷使しているので、視力の低下はもちろんのこと、ドライア
イをこじらせて困っている。
2015.9 Vol.49 No.5 18
Fly UP