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警察職員の公用車使用に関する件
平 成 25年 3 月 14日 高知県監査委員 同 同 同 森 梶 坂 朝 田 原 本 日 英 大 千 満 二 介 代 夫 高知県職員措置請求監査報告書 第1 1 請求の受理 請求人 「略」 2 請求の内容 請求人提出の高知県職員措置請求書による措置内容及び 求の理由は、次のとおりである。 (1 ) 措 置 内 容 高知県警察本部の交通機動隊所属の警察職員A(以 「警察職員A」という。)は、公用車を自宅に持ち り、通勤や出張の用に供していた。また、同本部の本 長は、運転手付き公用車で総務課所属の警察職員B( 下「警察職員B」という。)を同乗させて通勤の用に している。 関係する職員に対して、こうした行為により過払い なった県費の内容を算出して、返還させることを求 る。 (2 ) 請 求 の 理 由 ( 要 約 ) ア 警 察 職 員 A は 、 平 成 23年 か ら 平 成 24年 に か け て 、 日、高知市布師田にある交通機動隊に配備された公 車を自宅に持ち帰り、自宅から交通機動隊や吾川郡 の町枝川にある高知県警察本部の運転免許センター 通勤や出張の用に供していた。 警察職員Aには、自宅から交通機動隊に通勤する めの通勤手当の名目で県費が支出され、交通機動隊 ら運転免許センターに公用車を持ち込む際には、旅 名目で県費が支出されている。 したがって、警察職員Aが公用車を自宅に持ち り、自宅から運転免許センターに行き、同センター ら交通機動隊に帰れば支払われた旅費及び通勤手当 不 法 取 得 、 即 ち 、 刑 法 第 252条 ( 横 領 ) 第 1 項 に 該 する。 ゆえに、当該警察職員Aの行為について、過払い れた県費の内容を算出して、公庫へ返還させなけれ ならない。 請 下 帰 部 以 供 と め 連 用 い に た か 費 帰 か の 当 さ ば イ 高知県警察本部の本部長は、自宅から運転手付きの 公用車で、本部長秘書役の警察職員Bを同乗させて通 勤の用に供している。 したがって、両名に対して通勤手当が支給されてい れば、公用車のガソリン代は公用車を自己の占有に供 し て お り 、 刑 法 第 252条 ( 横 領 ) 第 1 項 に 該 当 す る 。 ゆえに、過払いされた県費の内容を算出して、公庫 へ返還させなければならない。 (3 ) 事 実 を 証 す る 書 面 平 成 24年 12月 18日 付 け 高 知 新 聞 の 記 事 の 写 し 3 請求の要件審査 本 件 請 求 は 、 平 成 25 年 1 月 17 日 に 受 付 し 、 要 件 審 査 の 結 果 、 地 方 自 治 法 ( 昭 和 22 年 法 律 第 67 号 。 以 下 「 法 」 と い う 。 ) 第 242条 に 規 定 す る 要 件 を 具 備 し て い る も の と 認 め 、 同日付けで受理した。 第2 1 監査の実施 証拠の提出及び陳述 (1 ) 請 求 人 に 対 し て 、 法 第 242条 第 6 項 の 規 定 に よ り 、 平 成 25年 2 月 1 日 に 証 拠 の 提 出 及 び 陳 述 の 機 会 を 与 え た 。 請 求 人 か ら 、 陳 述 の 日 ま で に 平 成 23年 3 月 20日 付 け 高 知 新聞の記事の写しの書面が提出された。 (2 ) 執 行 機 関 に 対 し て 、 平 成 25年 2 月 1 日 に 陳 述 の 機 会 を 与えた。 2 監査対象事項 請求の趣旨及び陳述内容から、次の事項を監査対象とし た。 (1 ) 警 察 職 員 A が 公 用 車 を 自 宅 に 持 ち 帰 り 、 出 勤 や 出 張 の用に供していたことに係る通勤手当及び出張旅費等の 支出が違法又は不当な公金の支出に当たるかどうか。 (2 ) 本 部 長 及 び 警 察 職 員 B が 公 用 車 を 通 勤 の 用 に 供 し て いることに係る通勤手当及び燃料費の支出が違法又は不 当な公金の支出に当たるかどうか。 (3 ) (1 )に つ い て 、 警 察 職 員 A に 損 害 賠 償 責 任 が あ る か ど う か 、 ま た 、 (2 )に つ い て 、 本 部 長 及 び 警 察 職 員 B に 損害賠償責任があるかどうか。 3 監査対象機関 本件公用車の使用に係る執行機関である高知県警察本部警 務部総務課、同部監察課(以下「監察課」という。)及び交 通部交通機動隊(以下「交機隊」という。)を監査対象機関 とした。 4 委員監査の実施 平 成 25年 2 月 27日 に 実 施 し た 。 第3 監査の結果 請求人の主 以下、その 1 事実関 監査の (1 ) ア 張は認められないので、本件請求を棄却する。 理由について述べる。 係の確認 結果、次の事実を確認した。 警察職員Aの公用車使用について 警察職員Aの職務等 白バイ・パトカーの訓練の指導責任者として、 年 10月 に 行 わ れ る 全 国 白 バ イ 安 全 運 転 競 技 大 会 ( 下「全国大会」という。)に向けた特別訓練の指 を行うとともに、捜査指揮や決裁などの事務処理 も従事していた。 特別訓練は、全国大会の優勝を目標に、毎年4 から9月にかけて、運転免許センター(以下「セ ター」という。)の施設(吾川郡いの町枝川)、 ヶ峰訓練場(香美市土佐山田町雪ヶ峰)及び交機 内の訓練場(高知市布師田)を利用し、実施して た。 警察職員Aは、こうした一連の訓練において白 イの乗り方指導、競技コースの設定など、訓練全 の監督を行っていた。 イ 公用車の不適切な使用の概要 (ア ) 使 用 状 況 警察職員Aは、センターで早朝訓練が実施さ る場合には、交機隊に出勤してから公用車でセ タ ー に 行 っ て い た 。 そ う し た な か で 、 平 成 22年 か ら 平 成 24年 度 に か け て 、 次 の と お り 自 宅 か ら ンターまでの間及び交機隊から自宅までの間に いて公用車を自宅に持ち帰り、自己の移動に利 し た こ と ( 以 下 「 公 用 車 の 不 適 切 使 用 」 と う。)を監察課が認定していることを確認した な お 、 こ れ に よ り 警 察 職 員 A は 平 成 24年 12月 日付けで所属長訓戒の処分を受けている。 a 早朝訓練前日 自宅から自家用車で出勤し、勤務終了後 交機隊から公用車で帰宅 b 早朝訓練当日 (a ) 午 前 5 時 か ら 5 時 30分 に か け て 自 宅 ら公用車でセンターに出勤 (b ) 午 前 6 時 前 に セ ン タ ー に 到 着 後 、 公 車に常時積載している訓練資材を使って コース設定等の訓練準備 (c ) 午 前 7 時 か ら 8 時 30分 ま で ス ラ ロ ー 訓練 (d ) 午 前 8 時 30分 に 早 朝 訓 練 の 終 了 後 、 機隊又は雪ヶ峰に順次移動し、応用バラ 毎 以 導 に 月 ン 雪 隊 い バ 体 れ ン 度 セ お 用 い 。 3 、 か 用 、 ム 交 ン ス訓練とトライアル・モトクロス訓練 (e ) 午 後 6 時 30分 頃 交 機 隊 に 帰 隊 なお、監察課では、警察職員A及び複数の関係 職員からの事情聴取により、上記のa及びbの (a )の 行 程 以 外 で の 不 適 切 な 使 用 は 認 め ら れ な かったとしている。 今回の監査においても、監察課が認定したほか に不適切な公用車の使用を特定できる事実は確認 できなかった。 (イ ) 使 用 回 数 早朝訓練の前日の交機隊から自宅までの使用及 び翌朝の自宅からセンターまでの使用を合わせて 1 回 と す る と 、 平 成 22年 度 は 5 月 か ら 8 月 ま で の 間 で 公 用 車 ( 高 知 33て 7064) に よ り 27回 、 平 成 23 年 度 は 4 月 か ら 9 月 ま で の 間 で 同 車 両 に よ り 47 回 、 平 成 24年 度 は 4 月 及 び 5 月 の 間 で 公 用 車 ( 高 知 500そ 6697) に よ り 4 回 、 合 計 78回 あ っ た こ と を 、 高 知 県 警 察 車 両 等 管 理 運 用 規 程 ( 昭 和 46年 12 月 高 知 県 警 察 本 部 訓 令 第 20号 。 以 下 「 管 理 運 用 規 程」という。)に定める運行記録簿により確認し た。 (ウ ) 関 係 地 点 間 の 距 離 警察職員Aの自宅は、交機隊とセンターの経路 の近くに位置し、監察課では自宅経由で移動した としても、ほぼ同じ距離としていたが、今回改め て実走行による計測を行ったところ以下のとおり であった。 a 交機隊と警察職員Aの自宅 12.4k m b 警察職員Aの自宅とセンター 5.8k m c 交機隊とセンター 17.7k m これによると、交機隊から警察職員Aの自宅経 由 で の セ ン タ ー ま で の 距 離 ( 18.2k m ) が 、 交 機 隊 か ら 直 接 セ ン タ ー に 向 か う 距 離 ( 17.7k m ) よ り も 0.5k m 長 く な っ て い る 。 (エ ) 通 勤 手 当 及 び 出 張 旅 費 等 の 支 出 の 状 況 a 通勤手当 平 成 22年 度 か ら 平 成 24年 度 ま で に お い て は 、 通 勤 手 当 決 定 ( 改 定 ) 書 に よ り 月 額 8,000円 の 通勤手当が決定され、支給されていた。 通 勤 手 当 に 関 す る 規 則 ( 昭 和 33年 高 知 県 人 事 委 員 会 規 則 第 10 号 ) 第 15 条 に よ り 、 通 勤 手 当 は、出張、休暇、欠勤等により月の初日から末 日までの期間の全日数にわたって通勤しない月 は、支給するこ とができないと 定められてい る。 ら 額 こ 切 す b る 旅 用 旅 c (2 ) つい ア 隣 事 を の 庁 等 保 め の 県 イ 転 に 秘 職 長 車 部 勤 る も し 本部 て 本部 本部 接す 故な 行っ また 警察 ・退 の有 持し に宿 公用 なお 警察 警察 警察 車又 出勤 書業 員宿 の登 また に同 庁舎 して なお ない 又は とを 運行 使用 る支 旅費 出張 条例 費が の県 費の 燃料 78回 会計 とに た。 長及 長 長 る ど て 、 職 庁 事 つ 舎 車 、 本 職 職 は 、 務 舎 庁 、 乗 に い の の 公 へ い 本 員 時 即 つ か を 四 部 員 員 徒 退 と の に 退 し 帰 る 、 日 一 確 記 が 給 同 が 部 認 録 確 は 規 含 を し 簿 認 認 則 ま 支 た を で め に れ 給 。 確 き ら し ( 支 内 支 費 の 書 推 た 昭 給 出 給 職 和 さ 張 は 員に 29年 れる は、 なか は、認定された通勤手段によ ている場合に、通勤手当の全 しないこととする規定はない 認したところ、公用車の不適 た期間において、規定に違反 れなかった。 対 高 が 旅 っ し 知 、 費 た て 県 宿 の 。 は 条 泊 支 、 例 を 給 職 第 伴 の 員の 36号 わな 対象 旅 ) い 外 費 に 公 の に 基 用 た 関 づ 車 め す き 使 、 不適切使用に要した燃料費を算定でき 類等は存在しておらず、運行記録簿を 計するほかない状況であることを確認 び警察職員Bの通勤に伴う公用車使用に 通 宿 邸 の る 部 を の 応 、 ら 使 国 と B B 歩 勤 し 近 随 勤 、 庁 。 勤 舎 部 対 。 長 指 移 の 確 の 用 の 同 の は に し て 傍 行 時 本 し (高知市鷹匠町)にある私邸部分に 分において、本部長は突発的な事件 応や急を要する事案の検討、決裁等 は 揮 動 態 実 登 し 他 様 通 、 よ て 本 に し に 部 、 県 監 中 勢 に 庁 て 3 の 勤 職 り い 部 あ て お 長 そ 警 督 で が 連 に い 県 対 察 す あ 求 絡 際 る の 応 本 る っ め が し 。 警 を 員 警 る 長 る い い の の 宿 察 。 の 本 る て 宿 後 舎 本 庁 使 部 。 も 舎 、 部 者 て ら 取 て の と も れ れ も 事 し 、 る る 従 務 て 事 こ 態 前 を 夜 件 と 勢 か 統 間 、 か を ら 括 ・ 事 ら 確 運 し 休 故 、 保 転 、 日 や 秘 す 手 所 、 災 密 る 付 属 登 害 を た き 察本部においても、高知 行っている。 ( 部 舎 用 長 高 庁 に す の 知 舎 出 る 宿 市 ( 勤 公 舎 鷹 高 し 用 に 匠 知 た 車 向 町 市 後 に か ) 丸 、 よ い か ノ 自 り 、 ら 内 ら 、 本 自 ) の 同 部 、本部長が使用する公用 に本部長を送った後、本 自転車又は徒歩により退 ウ 通勤手当の支給状況 本 部 長 の 宿 舎 及 び 職 員 宿 舎 は 本 部 庁 舎 か ら 1.5 kmの距離となっている。本部長については、一般 職 の 職 員 の 給 与 に 関 す る 法 律 ( 昭 和 25 年 法 律 第 95 号)、また、警察職員Bについては、警察職員の給 与 に 関 す る 条 例 ( 昭 和 29年 高 知 県 条 例 第 15号 ) に よ り、通勤距離が2km未満である場合には通勤手当 を支給するものから除くことが規定されており、両 名に通勤手当は支給されていない。 2 監査委員の判断 以上の監査結果に基づき、本件請求について次のとおり 判断する。 (1 ) 警 察 職 員 A の 公 用 車 使 用 に つ い て 本件公用車の使用は、「1 事実関係の確認」の (1 )の ア の と お り 、 公 務 に 位 置 づ け ら れ て い る 早 朝 訓 練の実施を効率的に行う上での合理性があるにして も、「1 事 実 関 係 の 確 認 」 の (1 )- イ の (ア )の と お り、管理運用規程に基づく公用車の管理、運用に関す る規定に反する不適切なものであった。 しかしながら、公用車の不適切使用が確認できた期 間において、通勤手当については、「1 事実関係の 確 認 」 の (1 )- イ - (エ )の a の と お り 、 違 法 又 は 不 当 な支出はなかった。また、旅費については、「1 事 実 関 係 の 確 認 」 の (1 )- イ - (エ )の b の と お り 、 支 出 された事実がなかった。 燃 料 費 の 支 出 に つ い て は 、 正 規 の ル ー ト ( 17.7 km)を使用した場合にも必要なものであり、「1 事 実 関 係 の 確 認 」 の (1 )- イ の (ウ )の と お り 、 不 適 切 使 用 に よ っ て 500m 長 く な る と 理 論 的 に 経 費 は 増 加 す るが、実際の走行においては時々の交通事情などによ る変動もあることから、これは許容の範囲内と考えら れる。 加えて、効率的な早朝訓練を行いたいとする警察職 員Aの動機も鑑みて差額返還を求めないとした監察課 の措置は一定容認できるものである。 これらのことから、当該金額を返還させるまでの違 法又は不当な公金の支出には該当しない。 したがって、上記のとおり違法又は不当な公金の支 出とする理由がないので、警察職員Aに返還の義務は ない。 (2 ) 本 部 長 及 び 警 察 職 員 B の 通 勤 に 伴 う 公 用 車 使 用 に ついて 本部長及び警察職員Bの通勤の状況等は、「1 事 実 関 係 の 確 認 」 の (2 )の と お り で あ り 、 公 用 車 の 使 用 について問題はなく、公用車使用に伴う燃料費の支出 は、 し 出で はな 以上の も理由が 違 た は い こ な 法 が な 。 と い 又は不当な公金の支出ではない。 って、上記のとおり違法又は不当な公金の支 いので、本部長及び警察職員Bに返還の義務 から、本件における請求人の主張にはいずれ ものと判断する。