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勢い増す船舶産業 更なる に向けて

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勢い増す船舶産業 更なる に向けて
英国の高速鉄道計画に対する
プロジェクトファイナンス
JBICは2014年4月、㈱日立製作所(日立)が出資する英国法人との間で、英国都市間高速鉄道計画(同計画)のうち、East Coast Main
Lineを対象としてプロジェクトファイナンスによる貸付契約 注を締結した。本融資は、同計画のGreat Western Main Lineを対象に2012年
7月にプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結したフェーズ1に続くものだ。
けが東京中心に関係者との調整を行うわけなので、時差の問題等もあり、
本件は、日立が出資する英国法人
コミュニケーションには非常に苦労しました」
が車両基地整備を行い、East Coast
インフラ・環境ファイナンス部門
運輸・通信事業部 第1ユニット
福岡 浩司 ユニット長
Main Lineの鉄道運行事業者に対し
▶雇用効果で地域経済にも貢献
て約30年間の車両リース、及び保守
それでも、4月15日には無事、契約を締結。同計画は今、本格的な
サービスを提供するために必要な資
実行段階へと向かっています。
「2016年からの生産開始に伴い、現地に
金をポンド建てで融資するものです。
新設される工場では 700人余りの新規雇用が生まれる見込みで、日本
また、本プロジェクトは、日本企業が
企業による地域経済への貢献が高く評価されています。また、新型車両
車両保守サービスという形で長期的
は輸送キャパシティが大きく、一層のエネルギー効率化も期待されて
にインフラ事 業を海 外で展 開する
います」
と、同じく本件を担当した畑副調査役は語ります。
ものであり、日本政府が進める「日本
JBICが日立の鉄道事業への参画をポンド建て長期資金により支援す
再興戦略 」等の政策に合致し、インフラビジネスの海外展開のモデル
ることは、民間資金活用による社会資本整備を積極的に進めてきた英国
事例とされています。
における日本の産業の国際競争力の
本件は、2012年7月に貸付契約を締結したフェーズ1の後、英国運輸
維持・向上に貢献します。また、今後も
省が車両追加発注に関して検討を続けた結果、2013年夏に当初計画
車両更新需要の拡大が見込まれる
より270両多い 497両の追加発注を決定。その後、具体的なストラク
英国において、日本企業のビジネス
機 会 創 出 に も つ ながるも の です。
チャーの検討が始まりました。
さらに、JBICが、英国政府の最重要
▶限られた時間の中で融資契約締結へ
プロジェクトの1つと位置付けられて
「フェーズ 2におけるプロジェクトファイナンス組成上のポイントは、
いる同 計 画に対して、フェーズ1と
タイムリミットが決まっている中で、いかにスムーズにストラクチャーに
一体的に支援する本融資は、日本と
関する関係者間の協議を終わらせ、融資契約を締結できるかでした」と
英国の経済関係強化に貢献すること
語るのは、本件を担当した福岡ユニット長です。
も期待されます。
インフラ・環境ファイナンス部門
運輸・通信事業部 第1ユニット
畑 迪伸 副調査役
「フェーズ 1の貸付契約締結後、英国政府が金融危機の教訓も踏まえ、
インフラプロジェクトの組成をスムーズに進めるための政府支援の枠
組みを作りました。フェーズ 2では、その支援について英国政府、スポ
ンサー、JBIC等の間で協議を行ったため、多大な時間を要しました。ファ
イナンスの組成開始からタイムリミットまでに残された時間は少なかった
(株)三菱東京 UFJ 銀行、
(株)三井住友銀行、
(株)みずほ銀行、三井住友信託銀行(株)、
(注)本融資は、
三菱UFJ信託銀行(株)、ソシエテジェネラル銀行、クレディ・アグリコル銀行、ロイズ銀行、香港上 海 銀 行
および 欧 州 投 資 銀 行( E I B )との 協 調 融 資 であり、協 調 融 資 総 額 は 約 2 0 億ポンド( J B I C 分 : 8 . 6 億
ポンド限度)です。
●Information
■ 原子力・新エネルギー部の所属部門の変更及び部門名の改称について
■「海外展開支援融資ファシリティ」の施策拡大について
お詫びと訂正
新
JBICは 2014年7月1日、日本政府が 2014年6月24日に発表
資源ファイナンス部門
した「「日本再興戦略 」改訂2014 」において、海外展開支援融資
P5の左下部分の文章に誤りが
ありました。
部門名の改称を行いました。
石油・天然ガス部
石油・天然ガス部
ファシリティについて、本邦企業の収益力向上に資する案件に
今回の変更は、従来型の電力分野と新エネ
鉱物資源部
鉱物資源部
重点化すると共に新手法(劣後ローン、LBOファイナンス)の導入
ルギー・省エネルギー・地球温暖化防止関連
原子力・新エネルギー部
分 野 等 を 同 一 部 門 に 集 約 化 す ることに
より、J BIC の 専 門 性 やノウ ハウを 高め、
より機動的、戦略的な業務遂行を図るもの
です。
が表明されたことを受けて、
「 海外展開支援融資ファシリティ」を
インフラ・ファイナンス
部門
インフラ・環境ファイナンス
部門
電力・水事業部
原子力・新エネルギー部
運輸・通信事業部
電力・水事業部
JBIC Today 2014 年 1 月 号
下から6行目「1.6ポイント下回り
ましたが、
」
とありますが、正しくは、
「1.6ポイント上回り更に、」
となり
改編し、実施要領骨子を改訂致しました。
ます。読者および関係者の皆様
詳しくは、JBICホームページをご覧ください。
びし訂正いたします。
にご迷惑をおかけしたことをお詫
www.jbic.go.jp/ja/information/news/news-2014/0701-23233
運輸・通信事業部
この印刷物は、大豆油インキを包含した
植物油インキを使用しています。
国際協力銀行では、本誌を季刊で発行しています。
本誌に掲載されている画像、文章の無断転用・無断転載はお断りします。
JBICToday
国際協力銀行の広報誌
August 2014
特集
勢い増す船舶産業
更なる に向けて
発展
[わが社のグローバル戦略]
丸五ゴム工業株式会社 藤木達夫 代表取締役社長
技術と情熱を、歴史の街倉敷から世界へ
̶自動車用ゴム製品等の製造でインドネシアに進出
[ニュースを読む]
ホームページ:http://www.jbic.go.jp
旧
資源・環境ファイナンス
部門
Facebook:http://www.facebook.com/JBIC.Japan
JBICは 2014年7月1日、原子力・新エネル
ギー部の所属部門の変更及び そ れに伴う
JBIC Today(ジェービック トゥデイ)2014年8月号 2014年8月発行
のモデルとして
〒100-8144 東京都千代田区大手町1丁目4番1号 Tel.03-5218-3100 株式会社国際協力銀行 企画・管理部門 経営企画部 報道課
上、プロジェクト全関係者の拠点がロンドンであることに対して、JBICだ
▶インフラビジネスの海外展開
August 2014
フェーズ1に続き、フェーズ2でも日本企業を支援
国際協力銀行の広報誌
JBIC Today
SPOTLIGHT
日本企業によるインド初の病院運営事業に共同出資
[SPOTLIGHT]
英国の高速鉄道計画に対するプロジェクトファイナンス
特集
勢い増す船舶産業
更なる に向けて
発展
海洋立国である日本にとって、造船業は、様々な生活物資やエネルギー・鉱物資源等の海上輸送に不可
欠な船舶を供給するとともに、地域経済・雇用にも貢献する基幹産業です。リーマンショック後の景気後退
の中では、世界の新造船の受注量激減による需給ギャップ、急激な円高、中国・韓国等との競合に直面し、
受注競争力が低下しましたが、近年ようやく最悪期を脱し、回復の兆しが見られるようになっています。
今後もこの流れを維持し、日本の船舶・造船産業の持続的発展を実現するために、JBIC では本邦造船所
が建造する船舶の輸出を金融面から支援し、日本の造船業の国際競争力の維持・向上に貢献しています。
更なる需要増となることを視野に入れつつも、当面はなお
技 術 力・開 発 力を発 揮する形で顧 客・マーケットのニーズに
船舶産業の現状と
供給過剰の需給バランスに対応していく必要があります。
応えていくあるいは先取りしていくことが重要になります。
今後の競争力強化に向けて
もともと、
日本の船舶に対する国際的評価は高く、その最大
その際、キーワードとなるのは「資源」です。まず、各企業
船舶産業担当ユニット長に聞く
の理由は「信頼性」であると受け止めています。設計段階
においては、人的資源や知的資源等の経営資源の効率化
での 航 行 速 度、燃 費 性 能、安 全 性 等を完 成 時に確 実に
と最適化を図るとともに、次世代への投資を進めていくこと
実現する技術力の信頼性に加えて、納期の厳守、フレキシ
が必要になります。一方、市場としては拡大する資源エネル
リーマン・ショック後の景 気 減 退で大きな影 響を受けた
ブルな仕様変更への的確な対応力、アフターサービスの充実
ギー市場が重要なマーケットになります。シェールガス
(LNG
件数の実績を見ても、2009年度以降は各年度10隻、14隻、
等 、企 業 や 人に対 する高 い 信 頼 性 があります 。こうした
船)や原油(原油タンカー・FPSO 注 1・オフショア支援船 注 2 )、
20隻、13隻、17隻と安定的に推移し、2014年度はここまで
信頼性は、海事産業(造船業、海運業、舶用工業等)
におい
鉱物資源(バルカー)の今後の開発・需給動向のほか、将来
20隻となっています。
てそれぞれの企業・業界が長年の市況変化や競争に対面
の日本近海の海洋資源開発を含む海洋ビジネスも視野に
近年、
わが国の船舶受注が増加した背景には、船価の下落
する中 で 培ってきた 技 術・ノウハウと、海 事 産 業 全 体と
入れて取り組んでいくことが不可欠です。その意味では、海事
に底打ち感が出て来たこと、円高の是正、船舶に関するルー
しての総合力に裏づけられています。
産業のみならずエネルギー産業、製造業、金融業等が役割
ル
(CO 2 排出量規制、重油燃料禁止等)の厳格化等が挙げ
今後も、日本の船舶産業が競争力を発揮していくために
分 担・リスクシェアしながら取り組む必 要があり、海 洋 国 家
られ 、特に、円 高 是 正 で日本 の 船 舶 の 価 格 競 争 力 が 強
は、
こうした総合力を維持しつつ、省エネ船(環境性能や燃費
日本の官民一体の総合力が試されると言えるでしょう。
まったことが大きな要因です。ただ、こうした発注増の動きは
ま
まった
性能)等、日本がフロントランナーとなっている分野で、各社
(注1)FPSO
: Floating Production Storage and Offloading System の 略。浮 体 式 の 原 油 の
一次処理 ( 井戸元より生産された原油から、随伴ガス、水を分離すること)・貯蔵・積出設備。
2
JBIC Today August 2014
三木田 聖
■ わが国造船業の輸出船契約実績
2012年度
隻
船舶受注が回復傾向を示しています。JBIC の船舶輸出案
まだ一部の船主に限られており、
今後、海運市況が回復し、
まだ一部の船主
部の船主
主
産業ファイナンス部門
船舶航空・金融プロダクツ部
第1ユニット
(船舶・航空機・衛星)
ユニット長
の独自技 術や得 意 分 野の特 長を活かしながら、さらなる
(注2)オフショア支援船
: 海洋石油・ガス田の開発および生産を支援する船舶。
2013年度
総トン
隻
総トン
貨物船
11
520,198
30
1,570,570
バラ積船
170
7,515609
348
13,176,839
油送船
15
1,338,880
36
1,685,800
油鉱兼用船
0
0
0
0
その他
0
0
4
58,170
196
9,374,607
(116.6)
<4,239,540>
418
16,491,379
計
(175.9)
<7,984,890>
日本船舶輸出組合の組合員会社が契約した 500総トン以上の鋼船が対象。
( )
は前年度同月比。< >は CGT
( 標準貨物船換算トン数 )
。
出所:日本船舶輸出組合 輸出船契約実績をもとに作成
JBIC Today August 2014
3
勢い増す船舶産業 更なる発展に向けて
P a c i f i c B a s i n S h i p p i n g L i m i t e d( P a c i f i c Basin)
2014 F
2011
2012
2010
2009
2007
2008
2005
2006
2004
2001
2002
2003
2000
1997
1998
1999
1995
1994
■国別保有トン数
2013 E
JBIC は 2014 年 4 月、香 港 系 大 手 海 運 オ ペレ ーター
1996
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
その他
コンテナ
ガス
石油
ドライバルク
GDP Real(Bil.US$)
の間で、3次元海底資源探査船 注2 2隻の購入資金として船舶
輸出バイヤーズ・クレジットの貸付契約を2件締結しました。
日本郵船
COSCO
拠点とした海底資源探査サービス企業大手であり、本融資
APM Maersk
は、三菱重工業㈱が同社の長崎造船所(長崎県長崎市)
で建造する3次元海底資源探査船2隻を、PGS TITANS
2012年10月の2隻への融資に続くものです。
(注2)3次元海底資源探査船
: 海底の地層構造を立体的に解析するための装備・性能を備えた船。音波
米国
川崎汽船
韓国
China Shipping
香港
Oldendorff
シンガポール
MSC
台湾
Swiss Marine
ノルウェー
Teekay
0 20 40 60 80 100120140160
0
10 20 30 40 50 60 70
により生成された衝撃波が海底面や地層境界で反射して戻ってきたものを、船尾から曳航するケーブル
▼ 担当者に聞く
バイクレ)の適用を決定しました。
産業ファイナンス部門
船舶航空・金融プロダクツ部 第1ユニット
副調査役
本 融 資のうち、1 6 隻 分については、日本の造 船 4 社 が
木瀨 恵子
建造するばら積み貨物船をPBVH が購入するための資金
に内蔵された振動センサーで受信し、地質構造を3次元的に解析する。
出所:商船三井
(左:IHS-Fairplay のデータをもとに作成、右:各社公表データをもとに作成)
●近年の取り組み事例(3)
FPSO 長期傭船サービス事業に必要な資金として利用され
日本の造船所が建造する
大型鉱石運搬船の輸出を支援
ます。なお、本融資は、国内外の金融機関との協調(協調
シンガポール共和国法人向け
融 資 総 額 11 億 2,875 万 米ドル)によるもので、ブラジルで
船舶輸出バイヤーズ・クレジット
MODEC が関与するプレソルト層油田向け FPSO 傭船事
として、融資金額計約1億5210万米ドル(JBIC 分)の輸出
「本件の実質的な船舶購入者であるPacific Basin は、
クレジットライン( 融 資 枠 )を設 定 するための 一 般 協 定を
香港を拠点とする、中型ばら積み貨物船で世界最大手の
締 結 。また2 隻 分については、ツネイシホールディングス㈱
海運オペレーターです。かねてより日本の造船技術を高く評価
JBIC は2013年12月、㈱商船三井の100% 出資子会社
本プロジェクトは、MODEC が 超 大 水 深( 水 深 2,000∼
(本社・広島県福山市)が100% 出資する中華人民共和国
しており、船価が低水準で推移している状況をチャンスと捉え、
であるシンガポール共和国法人 MOL Cape(Singapore)
3,000メートル)対応の FPSO1基を建造し、CMV27が20年
法人常石集団(舟山)造船有限公司(常石舟山)が建造す
2013年から本格的な仕込みを始めました。同年3月には4隻、
Pte. Ltd.(MOL Cape)
との間で、大型鉱石運搬船2隻の
間に亘り、Guara B.V. に対して傭船サービス(リース及び
るばら積み貨物船をPBVH が購入するための資金として、
8月には2隻の購入資金をJBIC が支援しており、今回もJBIC
購入資金として融資金額計約6070万米ドル
(JBIC 分、2隻
運 転・保 守 点 検 等のオペレーション)の提 供を行うもので、
融資金額計約2280万米ドル
(JBIC 分)のローカル・バイクレ
の融資を活用することで18隻という大型発注が実現しました。
分 計 )を限 度とする船 舶 輸出バイヤーズ・クレジットの貸 付
本 FPSO は Carioca 鉱区の開発に利用される予定です。
の貸付契約を締結しました。
JBICとして、船舶輸出案件でバイヤーズクレジットのクレ
契約を締結しました。
本 案 件を担 当した、産 業ファイナンス部 門 船 舶 航 空・
本融資は、日本の造船会社の海外現地法人である常石
ジットライン枠を適用するのは今回が初めてだったので、その
MOL Capeは、シンガポールを拠点とし、商船三井グループ
金 融プロダクツ部 第 1 ユニットの白石 剛 規 調 査 役はこう
舟山の取引を対 象とすることにより、日本の造 船 会 社のグ
仕組みづくりは大変でした。通常は船舶1隻ごとに、1つの
における大型ばら積み船専門のオペレーターであり、本融
語ります。
「本融資は、
日本企業の海洋分野での国際競争力
ローバルな受注力強化・販売拡大を支援すると共に、日本
融資契約を締結するのですが、今回は18隻もの受注なの
資では、日本の造船会社である㈱名村造船所が日本国内
の向上に貢献するという点で大きな役割を果たしました。加
業に対するJBIC の PF 案件としては5件目となります。
注3
から輸出される船舶については、クレジットラインを活用する
で、個別に対応するのではお互いにとってリーズナブルでは
の造船所で建造する25万重量トン
(DWT
ことで、日本の輸出企業各社の個別船舶輸出契約を包括
ありません。加えて、日本の造船所の競争力の上昇を背景
搬船2隻を MOL Cape が購入する資金に充てられます。
的 かつ機 動 的に支 援し、日本の造 船 業の国 際 競 争 力の
に、J B I C に持ち込まれる案 件 相 談も増えてきており、1 度
維持・向上に貢献するものです。
(注1)ローカル・バイヤーズ・クレジット
クレジットラインの枠組みを作っておけば、今後、いろいろな
: 日系 現 地 法 人 等による設 備や技 術の輸出・販 売に必 要な資 金を、
当該現地法人等の取引先に対して融資するスキーム。
初めて適用したものです。前 例のない仕 事は苦 労を伴い
■海事産業の国内循環
荷主
荷物の運送
※船主との兼業含
※海運業との兼業含 従業員数:外航 約1,400人(推計)、内航 約24,000人 海外調達
(金額ベース)
25 %
外国商船隊
向け
造船業
71%が国内造船所向け
(金額ベース)
29 %
海外造船所
向け
舶用工業
船隊の88%
国内調達(隻数ベース)
事業所数:約1,100事業所、従業員数:約85,000人
営業収入:約2兆7,000億円(主要13社合計)
舶用品の95%
国内調達(金額ベース)
事業所数:約670事業所
従業員数:約41,000人
生産高:約1兆1,000億円
出所:国土交通省 新造船政策検討会第1回資料3をもとに作成
でも、
日本周辺海域に相当量の存在が期待されるメタンハイド
レート等の資源開発が大きなテーマとなっています。大水深
鉱区におけるFPSO 等の建造・操業技術・ノウハウの向上を
図り日本企業の優位性を高めることが、将来の日本近海での
●近年の取り組み事例(4)
日本企業が参画する海洋資源分野事業を支援
ますが、ゼロから生み出すことにはやりがいがあります。これ
ブラジル沖超大水深油田向け FPSO
からも時流をとらえて、お客さまのニーズに合わせた支援を
傭船事業に対するプロジェクトファイナンス
船舶の提供(用船契約)
船主(オーナー) 事業者数:外航 約1,100事業者、内航 約1,800事業者 12 %
75%が日本商船隊向け
: Dead Weight Tonnage( 載貨重量トン数)の略で、その船に積み込むことのできる貨物・
燃料・食糧・飲料水・乗員及び所持品等の合計重量。
えて、2013年4月に閣議決定された新たな『海洋基本計画』
海洋資源開発につながると期待されています。
更に、多 様 化・複 雑 化 する国 際 海 洋ビジネスにおいて、
主体的・戦略的に活動する日本企業を迅速・的確に金融面
から支援していくことにつなげたいと考えています」
続けたいと考えています」
事業者数:外航 約210事業者、内航 約700事業者
従業員数:外航 約6,000人、内航 約46,000人
営業収入:外航 約5兆6,500億円
海運業
(注3)DWT
)
の大型鉱石運
ところで応用がきくと考えたのです。実は、ローカル・バイクレ
も2013年8月に2隻の購入資金を融資する際に JBICとして
4
ギリシャ
ドイツ
Vessels Holding Limited(PBVH)
との間で、ばら積 み
1
ジット及びローカル・バイヤーズ・クレジット注(以下、
ローカル・
(運航船腹量、百万DWT)
商船三井
中国
が購入する資金に充てられます。PGS 向けの融資としては、
貨 物 船 計 1 8 隻 の 購 入 資 金として、融 資 金 額 計 約 1 億
(百万GT)
日本
本件の実質的な船舶購入者であるPGS は、
ノルウェーを
出所:商船三井
(ClarksonsとIMF のデータをもとに作成)
の 100% 出 資 子 会 社 で ある英 領 バ ージン諸 島 法 人 PB
7 , 5 0 0 万 米ドル( J B I C 分 )を限 度とするバイヤーズ・クレ
■船社ランキング
子会社である同国法人 PGS Titans AS(PGS TITANS)
と
(全世界GDP兆ドル)
及びローカル・バイヤーズ・クレジット
1991
香港系海運大手向け輸出クレジットラインの設定
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1992
日本の造船所及び日系海外現法が建造する
ばら積み貨物船の輸出・販売を支援
荷動き量(億トン)
●近年の取り組み事例(1)
1993
■海上荷動きと世界 GDP の推移
5%
海外調達
●近年の取り組み事例(2)
日本の造船所が建造する
3次元海底資源探査船輸出を支援 ノルウェー王国法人向け
船舶輸出バイヤーズ・クレジット
JBIC は2014年7月、三井海洋開発㈱(MODEC)等が
出資するオランダ王国法人 Carioca MV27 B.V.(CMV27)
との間で、融資金額5億6,437.5万米ドル(JBIC 分)
を限度
とするプロジェクトファイナンス
(PF)による貸付契約を締結
しました。
本融資は、ブラジル沖合 Carioca 鉱区の権益を保有する
JBIC は2014 年 3月、ノルウェー 王 国 法 人 Petroleum
ブラジル国営石油会社ペトロブラスをはじめとするコンソー
G e o - S e r v i c e s A S A(P G S)が1 0 0 % 出資する船 舶 保有
シアムが 設 立したオランダ 王 国 法 人 Guara B.V. 向 けの
本 FPSOと同型のもの
JBIC Today August 2014
JBIC Today August 2014
5
勢い増す船舶産業 更なる発展に向けて
天 然ガスバリューチェーンの総 合 支 援に向けた取り組 み
●近年の取り組み事例(5)
LNGの長期安定的な確保への
取り組みを支援
液化天然ガス(LNG)輸送のための
を行っています 。これは 天 然ガスのガス田 開 発( 上 流 )
から L N G プラント建 設・生 産( 中 流 )、L N G 船による輸
送( 下 流 )に 至るまでの バリューチェーンの 各 段 階 で日
本 企 業を J B I C が 支 援 するもので、たとえば 、豪 州イク
LNG船調達に対する融資
シス L N G プロジェクトに対 する支 援 がその 一 例 です 。
JBICは2013年10月、関西電力㈱が70%、商船三井が30%
通 常 、資 源メジャーがオペレーターを務 める中で、同
出資するバハマ国法人 LNG FUKUROKUJU SHIPPING
プロジェクトは、国 際 石 油 開 発 帝 石 ㈱ が日本 企 業として
CORPORATION(FUKUROKUJU)及び LNG JUROJIN
初 めて、ガス・コンデンセート田 注 4 の 開 発 から L N G 等 の
S H I P P I N G C O R P O R A T I O N( JUROJIN)
との間で、
生 産までを一 貫して行うとともに、国 際 石 油 開 発 帝 石 ㈱
それぞれ107億5400万円限度(JBIC 分)
、109億5500万円限
等 の日本 企 業 が 権 益 の 約 7 割を保 有 する資 源 開 発 事
1917年創業の海運業を発祥とする常石造船株式会社(本社・広島県福山市)は、ばら
積み貨物船を中心にコンテナ船やタンカー等を開発・建造する国内有数の造船メーカー。
国内に加え、海外に製造拠点を持ち、地域社会と共に発展する事業をめざしている。
遠又 哲宏氏
ツネイシホールディングス株式会社
取締役
度(同)の貸付契約に調印しました。
業です 。また、生 産される L N G のうち約 7 割 が日本 向け
本融資は、FUKUROKUJU が川崎重工業㈱が新造す
に供 給される予 定です 。すでに、J B I C はガス田 開 発 及
る LNG 船を、また JUROJIN が 三 菱 重 工 業 が 新 造 する
び L N G プラント建 設を支 援していますが、今 回 、生 産さ
LNG 船を、それぞれ調達するための資金に充てられ、各船
れた L N G を日本に輸 入するために必 要な L N G 船の調 達
舶は主に豪州オーストラリア・パシフィックLNG プロジェクト及
も支 援 することで、上 流 から下 流までのす べての段 階で
れまで拡大してきた新造船の供給能力
た「TESSシリーズ」や「カムサマック
船はグローバルな製品であり、JBIC
び豪州イクシス LNG プロジェクトで生産されるLNGを関西
日本の企 業が参 画 することになりました。イクシスプロジェ
に対して需要が激減し船価の低迷が続
スバルカー」がロングセラーを続け、高
が持つ金融スキームやグローバルネッ
電力が日本に輸入するために使用される予定です。
クトに対 する J B I C の一 連の支 援が、天 然ガスのバリュー
いていました。一方で、中国での過剰
い評価を得ています。この過程で培っ
トワークには期待しています。特に昨
チェーン総 合 支 援 のモデルケースとなるものと期 待して
います 」
▼ 担当者に聞く
(注4)コンデンセート田 : ガス田から液体分として採取される原油の一種。
資源ファイナンス部門
石油・天然ガス部 第3ユニット
調査役
回復基調の市場で勝ち残るために
リーマンショック後の造船市場は、そ
な恩恵を受けています。
の柱となってきたことを考えると、非常
また、技術面では、当社が得意とす
に時宜を得たファイナンスを提供して
るばら積み貨物船の分野で独自開発し
頂いたと感謝しています。
設備の整理や日本での円高是正等に
た省エネや環境面での技術ノウハウは
年は、海外の船主からの発注で当社が
よって、日本の造船の競争力が回復し
相当のものがあると自負しており、今
中国で造った船に対して、ローカル・バ
てきています。実際、当社でも 2013
後も、その技術力を活かし商品の差別
イヤーズ・クレジットという形で日本サ
年初めから受注が回復しはじめ、受注
化を進めていきたいと考えています。
イドからファイナンスを供与してもら
は 堅 調 に推 移してきました が、海 運
い、大きな支援となりました。
船舶のグローバルなビジネス展開に
おける JBIC への期待
成長が続くアジアの物流においては
こうした市場環境の中で勝ち残るた
造船所と聞くと大きなイメージがあ
ジアへの展開に一層力を入れていき
めに、当社は独自の競争力を発揮した
りますが、当社のモットーは 小さく生
たいと考えています。JBICには引き
いと考えています。まず、国内に加え
んで大きく育てる 。地元広島県常石
続き、資金面はもちろん、海外との商
海外にある 2つの製造拠点、そして同
で実践してきたように、地域に根差し
談や海外進出の場面で、早い段階から
船型の連続建造により培った高い品質
て地域と共に大きく発展していくこと
現地の官公庁や金融機関の情報を提
と原価コントロール力です。標準船を
です。20年前、フィリピンに進出した
供してもらえればと期待しています。
日本のLNG船の現状
ベースに、製造コストや工程管理等の
ときも、最初は 2万トンクラスの船の
LNG 船とは主成分がメタンの超低温の液体を圧力で管理しながら大量に輸送する船のことです。日本の造船会社は、安全性、信頼性の
面で効率化を図っています。海外進出
建造から始めました。その後、段階的
高い MOSS 方式( 自立球体タンクを円筒形の支持構造で固定する方式 )を主に採用し、日本の造船会社では下記のような新船型を開発
で は フィリピ ン に 1994年、中 国 に
に工場を拡張し、2010年には 18万ト
しています。
2003年に工場を建設しました。両拠
ンクラスの貨物船を建造するフィリピ
点ともすでに現地に溶け込み、生産や
ンを代表する造船会社へと成長しまし
マーケットがまだ弱く、市場の動向に注
視が必要と考えています。
深谷 聡子
「 近 年 、発 電 用 燃 料として 天 然ガスの 重 要 性 が 高ま
る中で、J B I C はその 長 期 安 定 的な確 保に貢 献 す べく、
三菱重工業の新船型
「さやえんどうEXTREM」
ストレッチタンク
(縦長タンク)
を採用
することで容積効率の向上を実現。
推進機関を改良し、熱効率
の向上を図り燃費を削減。
6
地域に根差したグローバル戦略と JBIC への期待
JBIC Today August 2014
球形タンクを船体一体式船殻でカバー。
これにより、船殻重量軽減、風圧抵抗低
減を可能に。
川崎重工業の新船型
自社開発の防熱システムを採用
し、LNG の自然気化を最小限に
抑える。
球形タンクの赤道部に円筒部を追加する
ことによりタンク容積を増やしたストレッチ
球形タンクを搭載した世界最大のモス型
LNG 運搬船。
管理面で多くのノウハウが培われてい
た。そ の 際、JBICからの 支 援で一 気
ます。海外進出を決断する際の重要な
に生 産 力を上げることができたので
理由だったコスト競争力の面でも大き
す。以来、フィリピン工場が当社生産
船が重要な役割を持つので、今後はア
油とガスの両方を焚くことが 可能な
DFD 電気推進システムを採用し、幅広
い船速域で優れた燃費性能を発揮。
JBIC Today August 2014
7
丸五ゴム工業株式会社(岡山県倉敷市)
わ が 社のグローバル戦 略
わが社の
グローバル戦略
日本の自動車メーカーの期待に応える
インドネシアの自動車市場は近年、順調に成長している。
2013年 の 販 売 台 数 は 前 年 比 約10%増 の 約123万 台と、
ASEANトップのタイ
( 2013年は前年比約7%減の約133万
台 )を急 追している。そのうち日本 車のシェアは約 9 割と、
ジャパンブランドへの評価は極めて高い。そうした中で、日本
の自動車メーカーの期待に応えるためにも、インドネシアへの
進出は不可欠と判断したと藤木社長は言う。
「自動車メーカーは日本と海外で同じ車種を生産することが
多く、その部品を日本では当社から調達し、海外では別の会
社から調達するとなると効率が悪いので、どの国においても
当社が対応することを目指しています。そこで、当社としては
インドネシアでもインドでも中国でも生産できる環境にしておく
ことが重要で、それが結果として日本での受注確保に有利
に働くわけです。逆に言うと、そうした環境がないと日本での
インドネシア・西ジャワ州
受注も難しくなるので、自動車部品メーカーとして今後も競争の
土俵に上っていくために海外拠点の整備は不可欠なのです」
技術と情熱を、歴史の街倉敷から世界へ
̶自動車用ゴム製品等の製造でインドネシアに進出
ASEANのモーター大国として、今後も市場の伸びが期
生み出される製品は、国内の全自動車メーカーで使われるほど高い信頼を得ている。
海外展開にも早くから積極的に取り組み、2011年には、堅調な自動車市場の拡大が続くインドネシアに、
出資子会社「PT. MARUGO RUBBER INDONESIA(PTMI)」を設立。PTMI を通じて、
日本の自動車メーカー向けを中心とした自動車用ゴム製品の製造・販売事業を強化し、市場シェアの拡大を狙っている。
藤木 達夫
代表取締役社長
している。丸 五ゴムのインドネシア進出は優れた戦 略 的な
決断だったのだ。
これからも日本で維持します。そうした技術面のことを考える
と、今後も日本国内の生産規模は現状並みを維持する必要
丸五ゴム工業株式会社(以下、丸五ゴム)
は、1954年の設立以来、防振ゴムや高機能ホースといった
自動車用ゴム製品等の製造を手掛ける。
「お客さまに対して常に新しい価値を提供していく」という企業姿勢から
丸五ゴム工業株式会社 待されるインドネシアを、日本の自動車メーカーは非常に重視
歴史と文化の街・倉敷から世界へ
があります」
丸五ゴムの「五」には、世界の五大陸へ飛躍しようという願
PTMIでは第1期の工場建設・設備設置が終わり、2013
いが込められているという。グローバル経営の真価が問われ
年初めから防振ゴムの生産を開始。現在は、第2期工事が
る中で、歴史と文化の街・倉敷から世界へ、丸五ゴムはその
ほぼ終わりつつある段階で、完成後は高機能ゴムホースの
モノづくりの情熱と技術を広く伝え続けていこうとしている。
生産が始まる。
「 今後、受注も増えてくると思うので設備の増
強も考えています。今回、初めてJBICの融資を利用しました
JBICの関わり
が、機会があればぜひまたお願いしたいとも思っています」
世界を視野に積極的な展開
世界最先端の水準にあると言われる日本のゴム製品製造
技術。競争の激しい自動車業界で鍛えられた丸五ゴムの技
術水準もまた、世界トップクラスにある。
「耐久性という意味で
も高温・高圧の厳しい環境で使用されるので、また、開発段
階においても事前に自動車メーカーと綿密なすり合わせを行
2014年4月、JBIC は三菱東京 UFJ 銀行との協調融資により、
( 藤木社長 ) PTMIの今後の課題は、売上増の実現だ。
「工場の敷地、
設備にもまだ余裕があるので、早くフルに使うことで増産を図
丸五ゴムとの間で400万米ドル(JBIC 分)の貸付契約を締結した
( 協 調 融 資 総 額 は600 万 米ドル )。本 融 資 は、丸 五ゴムがインド
ネ シ ア 共 和 国 に お い て 設 立 し た 出 資 子 会 社 PT. MARUGO
りたい」
と力強く語る藤木社長は、自らも時々、現地に足を運
RUBBER INDONESIA が、自動車用ゴム製品の製造・販売事業
んで経営の進捗状況を確認する。
「 丸五ゴムの海外生産比
を実施するための 必要な資金として実施された。中堅・中小企業
率は、
まだ20%に満たないので、今後さらに高めていかなくて
を含 む日本企業 の 海外事業活動を支援 する「 海外展開支援融資
はなりません。一方で、設計・開発技術やモノを作る技術は、
ファシリティ」の一環だ。
いながら進めるので、技術的にも品質的にもかなり高い水準
にあると思います」。開発と技術強化への情熱を感じさせな
がら、藤木社長はそう語る。
社
名
丸五ゴム工業株式会社
模での活用・展開が求められてきた。そのため、丸五ゴムも早
創
業
1919年
(大正8年)5月
くから世界を視野に積極的な生産拠点展開を進めてきた。
立
1954年
(昭和29年)1月
資
本
金
9,600万円
まず 1 9 8 8 年 、米 国テネシー州に進 出したのを皮 切りに、
代
表
者
代表取締役社長 藤木達夫
マレーシア
( 1994年 )、中国( 2004年 )、
タイ
( 2010年 )、
インド
事 業 内 容
工業用ゴム製品の製造販売
本社所在地
〒710-8505 岡山県倉敷市上富井58
(2012年 )で合弁会社を設立。また、2011年にはインドネシア
工
本社工場、
矢掛工場
場
西ジャワ州カラワン県において丸五グループ 100%出資の子
会社PTMIを設立した。
8
①
②
こうした高水準の日本のゴム製品製造技術には、世界規
【会社概要】
設
■ 丸五ゴムを支える技術
JBIC Today August 2014
①本社工場精練(ゴム練)工程
必要な機能に応じ、数百種類のゴム配合を使い
分けて日当たり18,000kgのゴム生地を生産。
②製品紹介
左:防振ゴム製品
右:ラバーホース製品
JBIC Today August 2014
9
日 本 企 業 によるインド 初 の
病院運営事業に共同出資
関 連 事 業 を 強 化 し ていま す 。本 件 は 、イ ン
日 本 企 業による医 療 事 業の海 外 展 開 を
ドで初めて行われる日 本 企 業による総 合
現 地 通 貨 建て出 資により 支 援
株 式 会 社 国 際 協 力 銀 行︵ J B I C 、総 裁
能 を 活 用 し て 現 地 通 貨 に よ る リ ス クマ ネ
病 院 運 営 事 業 で あ り 、J B I C が 出 資 機
社 、セ コ ム 医 療 シ ス テ ム 株 式 会 社︵ 以 下
事 業 展 開 を 支 援 し 、日 本 の 産 業 の 国 際 競
ー の 供 給 を 行 う こ と で 、日 本 企 業 の 海 外
渡 辺 博 史 ︶は 、
﹁ 海 外 展 開 支 援 出 資 ファ
シ リ テ ィ﹂の 一 環 と し て 、セ コ ム 株 式 会
﹁ セ コ ム 医 療 シ ス テ ム ﹂︶、豊 田 通 商 株 式
争 力 の 維 持・向 上 に 貢 献 す る ものです 。ま
会 社︵ 以 下﹁ 豊 田 通 商 ﹂︶、イ ン ド 法 人
る 現 地 の 医 療 サ ービ スの 質 の 向 上 に 貢 献
VSK Holdings Private
及びインド法 人 TAKSHASILA
は 、日 本 の 医 療 技 術・サ ー ビスの 国 際 展 開
することが期待されています。さらに、本件
L i m i t e d ︵ 以 下 ﹁ V S K ﹂ ︶ た 、本 件 を 通 じ て 、医 療 設 備 の 充 実 等 に よ
HOSPITALS OPERATING
を 支 援 す る も の で あ り 、日 本 政 府 の 政 策
P R I V A T E L I M I T E D︵ 以 下
6 3 0 百 万 ル ピ ーの T H O の 優 先 株 式 取 ︵﹁ 健 康・医 療 戦 略 ﹂︶を踏まえたものです。
﹁ T H O ﹂︶等 と の 間 で 、J B I C に よ る
得に関する株 主 間 契 約を締 結しました。
本 件 は 、セコム 医 療 シス テム 、豊 田 通 商
及 び V S K が 2 0 1 2 年 月 にインド南
部 の 都 市 バン ガ ロ ー ル に 設 立 し た 合 弁 会
社 THO を通じて行う私 立 総 合 病 院 SA
KRA World Hospitalの
運 営 事 業 を 支 援 す る ものです 。
セ コ ム 医 療 シ ス テ ム は 、日 本 国 内 で 病
院 運 営 支 援 等 の 医 療 サ ービス 事 業 を 展 開
し て い ま す が 、今 後 、新 興 国 を 中 心 に 海 外
見 込 ま れ る 中 、積 極 的 な 海 外 展 開 を 企 図
で 高 度 な 医 療 サ ー ビ スへの 需 要 の 増 加 が
し ていま す 。豊 田 通 商 も 医 療 事 業 、医 薬 品
を 推 進 す る 専 門 部 署 を 新 設 す る 等 、医 療
※2014年6月5日国際協力銀行プレスリリース
4
す。インドではまだ看護師の職業的な地位が低いとされてい
人口が増加を続けるインドにおいては、医師、看護師、ベッ
ますが、SAKRA病院では、看護師も医師と同等の立場で患
ド数等医療インフラの不足が課題とされています。たとえば、
者と向きあい、チームとして治療にあたることで質の高い医
人口1000人当り病床数で見ると、世界平均が約4床なのに
療 サービスの 実 現を目 指し、看 護 師を育 成しています。
対し、SAKRA病院があるバンガロールでは約2床ほどといわ
SAKRA病院では、インドの医師や看護師を日本に招待した
れています。バンガロールはインドでも有数の都市ですが、そ
り、日本からインドへ医師を派遣したりして、こうした日本のノ
れでもこの様な水準です。
ウハウの定着を図っています。
インドには、日本のような国民皆保険制度がなく、保険加
日本政府も医療の国際展開を支援しています。
入率も限定的であり、医療機関は診察料が無料で主に低∼
昨年6月に策定された日本再興戦略注においても医療セク
中間所得者層を対象とする公立病院と、中間所得者層以上
ターが成長分野の1つとして位置づけられており、同戦略及
を対象とし、有料だが高機能な私立病院に 2極化していま
び同じく昨年6月に策定された健康・医療戦略注においては、
す。経済成長に伴い、中間所得者層が増加し、私立病院が
2020年までに新興国を中心に日本の医療拠点を10か所程
提供する高機能な医療サービスのニーズが高まることが見
度創設することや、健康・医療戦略では 2030年までに海外
込まれる中、SAKRA病院もそうしたニーズに対応することを
の医療技術サービス市場を5兆円程度獲得することが目標
意図しています。
とされています。本件はこうした日本政府の政策も踏まえたも
今回の出資を決定するまでには、どのようなハードル
のであり、医療分野で海外展開を図る日本企業の事業を
がありましたか。
JBICが出資という形でリスクマネーを供給し支援するものです。
JBICとして医療セクター支援の実績は必ずしも豊富では
共同出資者は JBICに対し、リスクマネーの量的補完に加
ない中、出資決定に至るまでには多岐に亘る検討が必要と
え、たとえば公的金融機関としてのステイタスを活かして、有
なりました。例えば、インドの医療保険制度を理解することか
事の際に現地当局と協議・交渉し、スムーズな解決を図る役
ら始まり、設立間もない医療機関に、
どのくらい患者が来るの
割も期待していると理解しています。JBICとしても、出資に際
かの検証等、さまざまな調査・分析やシミュレーションを重
してのデューデリジェンス、出資後のモニタリングを通じて得
ね、現地実査や、マネジメントインタビュー等も実施しました。
た知見、ノウハウを活用しつつ、本件だけでなく、次の海外で
今年3月に開院して以来、ここまでの SAKRA病院の立
の病院プロジェクト、あるいは海外への医療機器輸出プロジ
ち上げ状況はいかがですか。
ェクト等、さまざまな形で医療の国際展開支援に取り組んで
来 院 患 者 数は計 画を上 回っており、運 営は順 調です。
いきたいと考えています。
SAKRA病院の医師の能力・評価や病院周知活動の結果が、
順調な滑り出しを後押ししているものと思いますが、今後は
ニュースを 読 む
【ニュースを読む】
インドの医療セクターの現状は、どうなっていますか。
(注)
日本再興戦略については平成26年6月に改定されています。
健 康・医 療 戦 略については、平成26年5月の健康・医療戦略推進法及び独立行政法人日本医療研究
開発機構法の成立を受け、従来の取り組みを踏まえつつ、新たな「健康・医療戦略」が策定されています。
SAKRA病院の特色である日本の医療ノウハウを活用した医
療サービスも、
さらに注目されると期待しています。たとえばイ
ンドでは手術等が終わったら、割合すぐ退院するのが通常と
いうことですが、SAKRA病院には、近隣には無い、広いリハビリ
センターがあり、患者は退院後の日常生活が問題なく送れる
SAKRA病院は、他にも日本の医療ノウハウを活用して質の
産業ファイナンス部門
産業投資・貿易部 第1ユニット
(当時)
副調査役
高い医療サービスを提供しています。例えばチーム医療で
齋藤 景介
よう、日本のノウハウも活用したリハビリ治療を受けられます。
■ インドの人口と中間層の推移
■ インドの生活習慣病の増加(図:入院の原因)
JBIC は今年6月、日本企業によるインド初の病院運営事業を支援すべく出資を行った。運営の対象となるSAKRA
(億人)
World Hospital( 以下「SAKRA 病院」)は、脳神経センター、心臓センターをはじめとする6つのコアセンターと、
14
4%
12
内科、耳鼻咽喉科、放射線科、リウマチ科、麻酔科、内分泌・糖尿病科、眼科、精神科、皮膚科、呼吸器科、救急外来
等の17診療科を持つ私立総合病院であり、現地の医療サービスの質の向上に貢献することが期待されている。
ここでは、インドの医療ビジネスの現状や開院後の SAKRA 病院の経営状況等、ニュースだけでは伝えきれない
4%
10
※本案件に関する記事は、2014年6月6日 日本経済新聞朝刊に掲載されました
10
JBIC Today August 2014
5%
2%
22%
8
3%
7%
その他
9%
5%
3%
循環器系疾病
24%
6
16%
4
人口の
2
41.9%が中間層に
0
2000
部分について、本案件を担当した産業ファイナンス部門 産業投資・貿易部(当時)の齋藤景介副調査役に聞いた。
3%
2008
2010
2015
2020
2025 (年)
予測
高所得層(世帯可処分所得35千ドル以上)
中間層(世帯可処分所得5千ドル以上35千ドル未満)
低所得層(世帯可処分所得5千ドル未満)
出所:在インド日本大使館ウェブサイト「インド経済資料」をもとに作成
2001
消化器系疾病
筋骨格系疾病
妊娠・出産
事故
15%
44%
癌
呼吸器系疾病
34%
2012
出所:ジェトロ インドの医療機器市場と規制
(2012年3月)
をもとに作成
JBIC Today August 2014
11
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