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蛋白質核酸酵素:血中脂質転送蛋白質
血中脂質転送蛋白質 山下静也 Database Center for Life Science Online Service 血中脂質転送蛋白質には大き く分けてコレステロールエステル転送蛋白質(CETP)と リン脂質転送蛋白質(PLTP)が ある。CETPは はリン脂質の転送を行なう。CETPは 中性脂質を主として転送し,PLTP そのcDNAが クローニングされて以来,そ の性 状に関する最近の生化学的 ・分子生物学的知見の増加は著しい。本稿ではリポ蛋白質代謝 ならびに動脈硬化防御機構におけるCETPの 著明な高HDL血 役割について解説 し,CETP欠 損による 症をきたした症例のリボ蛋白質代謝異常,遺 伝子変異についても最近の 成績を紹介する。 【コ レス テ ロ ー ル エ ス テ ル 転 送 蛋 白 質 】 【リ ン脂 質 転 送 蛋 白 質 】 【 高 比 重 リポ 蛋 白質(HDL)】 は じ め に コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル(CE)や リ ド(TG)な 質 は,種 【欠 損 症 】 ト リグ リセ ど の非 極 性 脂 質 や リ ン脂 質 な ど の極 性 脂 々 の血 漿 リポ 蛋 白 質 問 や 細 胞 内 で 恒 常 的 に 交 低 下 し,ま た 遺 伝 性HDL欠 損 症 で 早発 性 冠動 脈硬 化 が 合 併 す る 。Badimonら4)はHDLと 白 質(VHDL)を 超 高 比 重 リポ蛋 含 む 分 画 を コ レ ス テ ロ ー ル 負 荷 ウサ 換 ・転 送 され て い る 。 本 過 程 に は,血 漿 中 で は血 漿 脂 ギ に静 注 した と こ ろ,動 脈 硬 化 巣 の 進 展 防 止 の み な ら 質 転 送 蛋 白 質(lipid transfer protein;LTP)1),ま ず退 縮 も観 察 さ れ た 。 し た が って,HDLは た 抗 動脈硬 化 細 胞 内 で は細 胞 内 脂 質 転 送 蛋 白 質 と よ ば れ る 一 連 の 蛋 作 用 を有 す る リポ 蛋 白 質 と考 え られ て い る。CETPは 白 質 が 関 与 し て い る とい わ れ る。 本 稿 で は血 漿LTPに レ シ チ ン:コ 関 して の み概 説 す るが,細 (LCAT),肝 胞 内LTPに 説2)を 参 照 され た い。 血 漿LTPの 関 して は他 の総 う ち,コ ル エ ス テ ル 転 送 蛋 白質(cholesteryl protein;CETPま TGの レス テ ロ ー ester transfer た はLTP-Ⅰ)3)は,主 はLTP-Ⅱ)は transfer protein;PLTPま た お もに リン脂 質 の そ れ を特 異 的 に 促 進 す る。 分 画 の コ レス テ ロ ー ル(HDL-C)は Shizuya Yamashita,大 University 2198 どの 酵 素 と と も Medical な わ ち コ レ ス テ ロ ー ル 逆 転 送 系 に お い て,HDLは 阪 大 学 医 学 部 第 二 内 科(〒565吹 Lipid Transfer Proteins コレ ス テ ロー ル の運 び役 と して の 役 割 を果 た して い る。 本 系 にお いて,CETPはHDLの 量 な らび に質 を修 飾 す る 関 す る最 近 の 生 化 学 的 ・分 子 生 物 学 的 な 成 績 を 紹 介 す る と と も 動脈硬 化 性疾 患 で School,Yamadaoka,Suita,Osaka565,Japan] 近 と くに 注 目 を集 め て い る。 末 梢 組 織 に 蓄 積 し た 余 剰 の コ レス 因 子 と し て 重 要 で あ る。 本 稿 で は,CETPに 高 比 重 リポ蛋 白 質(high density lipoprotein;HDL) Plasma 性 リパ ー ゼ(HTGL)な 代 謝 に深 く関 与 して い る た め,最 テ ロ ー ル を肝 臓 へ 逆 輸 送 し て処 理 ・排 泄 す る機 構,す と し てCEや 交換 ・ 転 送 反 応 を特 異 的 に促 進 し,リ ン脂 質 転 送 蛋 白 質(phospholipid に,HDLの レ ス テ ロ ー ル ア シ ル トラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ に,CETP活 田 市 山 田 丘2-2)[Second 性 に異 常 を き た す 病 態 や,従 Department of Internal 来 わが国 の Medicine,Osaka 血中脂質転送蛋白質 率 で 混 合 し,こ 23 れ に検 体(少 量 の 血 漿 ま た はd>1.21g/ ml分 画)を 加 え,一 定 時 間 イ ン キ ュ ベ ー トし た の ち,ヘ パ リ ン マ ン ガ ン 沈 降 法 ま た は超 遠 心 法 に て ドナ ー リ ポ蛋 白 質 と ア ク セ プ タ ー リポ 蛋 白質 を 分 離 し,ド ナーの放射 活性 の 減 少 速 度 ま た はア ク セ プ タ ー の 放 射 活 性 の 増 加 速 度 を測 定 す る1)。 図1 リポ 蛋 白 質 代 謝 に お け るCETPの CE:コ レ ス テ ロー ル エ ス テ ル,FC:遊 役割 離 コ レス テ ロ ー ル,R:受 容 体,HTGL:肝 西 田 らの グルー プの方 法5)は トリ グ リセ 放 射 標 識 したCEを コレステ ロ ール ,ホ ス フ ァ チ ジ ル コ リ ン Database Center for Life Science Online Service リ ド リパ ーゼ 。 み で 発 見 され て い るCETP欠 損 症 に つ い て も最 近 の知 を 含 むdiscoidal bilayer particleに 見 を概 説 す る。 脂 質 転 送 蛋 白質 の ひ と つ で あ るPLTP ドナ ー と し,LDLを に 関 し て は,必 ず し もCETPほ る 方 法 で あ り,感 受 性 が 高 い 。 い が,CETPと ど は解 明 され て は い な の 異 同 も含 め て 最 近 の 知 見 を紹 介 し た い。 組 み 込 み,こ れを ア クセ プ タ ー と して 活 性 を測 定 す これ まで にCETPに 対 す る 数 種 の ポ リ ク ロー ナ ル 抗 体 や モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 が 開 発 され て い る。Heslerら の モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(TP2)6)は,CEな Ⅰ .CETPの リボ蛋白質代謝における役割 転 送 を阻 害 す るが,TP6と す る もの の,CEやTGの そ の機 序 と し て は,末 梢 組 織 に 蓄 積 し た コ レ ス テ ロ ー ル がHDLに よ っ て ひ き抜 か れ に よっ てHDL上 でエ ス テ ル 化 され てCEが こ のCEは,CETPに (VLDL)や 応 形 成 され る。 よ っ て 超 低 比 重 リポ 蛋 白 質 中 間 比 重 リポ 蛋 白 質(IDL),低 白 質(LDL)な (図1),こ ,さ ら にLCAT反 ど の ア ポB含 比 重 リポ 蛋 有 リポ 蛋 白 質 へ 転 送 され れ と交 換 にTGがHDLへ と転 送 され る。 ア ポB含 有 リポ 蛋 白 質 へ と転 送 さ れ たCEは,肝 LDL受 容 体 を介 して 細 胞 内 に取 り込 まれ て代 謝 され る。 CETPは 臓 の 漿CETPの らび にTGの い う 抗 体 はCETPに は結 合 転 送 に は影 響 を与 えな い。 血 濃 度 を測 定 す る 方 法 と して,Marcelら7)や Fukasawaら8)はCETPに 対 す る モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 を用 い た ラ ジ オ イ ム ノ ア ッセ イ(RIA)法,筆 者 ら9)は ポ リク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い た 方 法 を 開 発 して お り,わ が 国 にお い て もモ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を用 い たELISA法 の 開 発 が 進 行 中 で あ る 。Marce1ら7)に は 血 漿CETP濃 度 は 平 均1.7μg/mlと り,女 性 で は男 性 に比 べHDL-Cが ず,CETP濃 よれ ば,ヒ トで 報 告 され て お 高 い に もか か わ ら 度 は高 い 。 コ レス テ ロ ー ル 逆 転 送 系 に お い てHDLのCE 量 を調 節 す る。CETPの は,HTGLの 働 きに よ りTGに 働 き に よ っ てTG部 り小 さ なHDL(HDL3)粒 富 ん だHDL Ⅲ .CETPの 子 とな る と考 え られ て い る。 CETPの d>1.21g/ml分 Ⅱ .血 漿CETP活 精製とその性状 分 が 分 解 され て,よ 性ならびに濃度の測定方法 精 製 に は 種 々 の 方 法 が あ る が,通 ク ロマ トグ ラ フ ィー,CMセ ー に て部 分 精 製 さ れ 血 漿CETP活 性 の 測 定 に は種 々 の 方 法 が あ るが,原 則 的 に はCE部 分 を14Cま ー リポ 蛋 白 質(通 常 はHDL リ ポ 蛋 白質(通 常 はVLDLま た は3Hで 放 射 標 識 した ドナ 3)と 非 標 識 の ア ク セ プ タ ー た はLDL)と を一 定 の 比 常血 漿 画 よ り,フ ェ ニ ル セ フ ァ ロー スカ ラム マ トグ ラ フ ィ ー,ヒ ,さ ル ロ ー ス ク ロマ トグ ラ フ ィ ら にDEAEセ フ ァロ ー ス ク ロ ド ロ キ シ ア パ タ イ トク ロ マ トグ ラ フ ィ ー を経 て 完 全 精 製 され る。 この 方 法 の ほ か に,脂 質 エ マ ル ジ ョ ン を用 い る 方 法is),サ ク シニ ルLDLセ フ ァ ロー ス を用 い る方 法5),toyopearl column(Butyl-, 2199 24 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.39 No.13(1994) Val-Leu-Thr-Leu-Alaと う5個 い の ア ミノ 酸 か らな る ペ プ チ ド配 列 は他 の 蛋 白質 で は 見 い だ さ れ な い の で,脂 質代 謝 や脂 質転 送 に関係が深 い も の と推 定 さ れ る13)。 ノ ー ザ ン プ ロ ッテ ィ ン グ に よ り,ヒ は 肝 臓,小 トCETPのmRNA 腸,副 腎,脾 臓 な ど で 検 出 さ れ る12)。霊 長 類 で は 血 漿CETPと 肝 臓 の CETPmRNA含 量 とが 正 相 Database Center for Life Science Online Service 関 した こ と か ら,肝 臓 が 血 中 CETPの 図2 ヒ トCETPの 主 た る源 で あ る と考 え られ た14)が,最 ア ミノ酸 配 列 下 線 部 は グ ラ イ コシ レー シ ョ ン部 位 を示 す 。 はCETPは 近 の報告 で 肝 臓 の実 質 細 胞 よ り も非 実 質 細 胞 で 合 成 され る CM-,-HW)を 用 い る 迅 速 な 方 法11)な どが あ り,分 子 量 も64∼74Kと 方 法 に よ り若 干 異 な っ た成 果 が 得 られ て い る。Ohnishiら Kと69Kの2つ の 報 告11)で は,CETPは 分 子 量66 のバ ン ドか らな り,そ の い ず れ も比 活 性 が 等 し く,N末 CETPは476個 端 の ア ミ ノ 酸 配 列 も 同 一 で あ る。 の ア ミ ノ酸 か ら な る糖 蛋 白 質(図2)で, 非 極 性 ア ミ ノ酸 を 多 く含 む(約45%)た 疎 水 性 が 高 い 。CETPに 心 筋,骨 格 筋 がCETPのmRNAの 主 た る源 で あ り, 肝 臓 で は検 出 さ れ な い16)。 この 分 布 はLPLのmRNA の 分 布 と類 似 し てCETP活 も脂 肪 組 織,心 筋,骨 性 が 低 い マ ウ スや ラ ッ トで 格 筋,小 腸 に ヒ トCETPと の 遺 伝 子 が 存 在 す る が,CETPと め,き わ め て はpI4.6∼5.4の9個 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る15)。ハ ム ス ター で は脂 肪 組 織 と のアイソ なお解 明 され て いな い。 CETP遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー と思 わ れ る部 位 に は転 フ ォー ム が あ り,こ れ ら は シ ア ル 酸 の 付 加 数 の 差 に よ 写 因 子CCAAT/エ る もので,ノ 結 合 部 位 に類 似 した 配 列 が 存 在 す る17)。C/EBPの イ ラ ミニ ダ ー ゼ 処 理 でpl5.6の バ ン ドが 主 と な る。 類似 の 異 同 や そ の機 能 は ンハ ン サ ー 結 合 蛋 白 質(C/EBP)の 下 で は非 存 在 下 に比 し,CATア 存在 ッセイ に よ るCETPプ ロ モ ー タ ー 活 性 が 充 進 す る 。 肝 細 胞 を培 養 して い る 間 Ⅳ .CETP遺 伝子の構造 とその特徴 に,CETPmRNAは EBPmRNAの N末 端 の ア ミノ 酸 配 列 を用 い て ク ロ ー ニ ン グ され た ヒ トCETPcDNA12)は1,581bpの cDNAは 大 き さ で,ヒ ウ サ ギ のcDNAと ヒ トCETP遺 約80%の 伝 子 は 第16番 相 同性 を有 す る 。 染 色 体 の 長 腕(16q12∼ 16q21)に あ り,LCAT遺 CETP遺 伝 子13)の 大 き さ は約25kbで,16個 ン(32∼250bp)と15個 単 相 体 ゲ ノ ム1個 トの 伝 子 と近 接 す る。 また,ヒ ト肝 細 胞 で は発 現 が 低 下 し,し 下 がCETPmRNAの のエ キ ソ ピー 存 在 す る。CETP遺 伝 子 の 択 一 的RNAス 組 織 に お け るCETPcDNAを プ ク ロー ニ ン グ した 際 に, エ キ ソ ン9の 配 列 を 含 ま ないcDNAが キ ソ ン8の 配 列 は エ キ ソ ン10の ポ 蛋 白 質 の そ れ と は類 似 して い な い が,各 織 で は25%,肝 2200 発 現 の 消 失 と関 連 す る もの と考 ラ イ シ ン グが 起 こ る こ とが 明 らか に され て い る18)。脂 肪 変 異mRNAは,各 エキ ソ ンご 低 え られ る 。 伝 子 の配列 や構 成 は他 の脂 質代 謝 に関連 す る酵素 や ア と に比 較 す る とシ グ ナ ル 配 列 の 疎 水 性 の コ ア 中 に あ る 株 化 され た ヒ たが って,C/EBPの 脂 肪 細 胞 に お い てCETP遺 ト の イ ン トロ ン か ら な り(図3), あ た り1コ 急 速 に 消 失 す る が この変 動 はC/ 量 と平 行 す る 。C/EBPは mRNAに 見 いだ され た。 エ 配 列 へ と直 接 結 合 し た 組 織 に よ って 割 合 が 異 な り,脂 肪 組 臓33%,脾 臓46%で あ った 。 この 変 異 よ っ てつ く られ る 蛋 白 質 をCOS細 胞 で一 過 血中脂質転送蛋白質 単 球 由 来 マ ク ロ フ ァー ジ は時 間 依 存 性 にCETP活 培 養 液 中 に分 泌 す るが,ホ 加 に よ り,約1.6倍 セ チ ルLDLを 一方 ,ヒ 性 を ル ボ ー ル ミ リス テ ー トの添 に増 加 す る 。 マ ク ロ フ ァー ジ に ア 負 荷 す る と,CETP分 泌 量 は増 加 す る 。 ト腸 管 上 皮 細 胞 モ デル のCaCo2細 来 のHepG2と 25 胞 で は肝 由 は異 なって,細 胞 培 養 液 中 の脂 肪 酸 濃 度 に よ っ てCETP分 泌 が 制 御 され て い る こ とか ら,肝 臓 よ り も む し ろ腸 が ヒ ト血 漿CETPの 量 を お も に調 節 し て い る の で は な い か と の 報 告 も あ る19)。 cDNAか ら推 定 され る蛋 白 質 部 分 の 分 子 量 は53,108 と推 定 され るが,HepG2を 用 い た 実 験結 果 か ら,細 胞 内 で ア ス パ ラ ギ ン結 合 の 糖 鎖 が 付 加 さ れ,分 Database Center for Life Science Online Service きな 成 熟 蛋 白質(Mr=74,000)と 子 量 の大 して 細 胞 外 へ 分 泌 さ れ る と考 え られ て い る20)。 上 記 の 組 織 以 外 に,CETPは 存 在 し,ま 脳 脊髄 液 や精 液 中に も た ヒ トの ニ ュ ー ロ ブ ラ ス トー マ や ニ ュ ー ロ グ リオ ー マ 細 胞 の 培 養 液,ヒ CETPの ツ ジの 脈 絡 叢 な どで も 存 在 が 確 認 さ れ て い る21)。そ の 局 所 に お け る 役 割 は不 明 で あ る 。 Ⅵ .CETP活 性の種差 血 漿CETP活 性 は 動 物 種 に よ っ て 大 き く異 な る 。 種 々 の脊 椎 動 物 に お け るCETP活 性 は大 き く分 け て,① 図3 ヒ トCETP遺 文 献13よ 低 活 性 群:ラ り引 用 。 チ メ ン チ ョ ウ,ト ビ,ヒ らびにTG転 送 活性 は欠 損 し カ ゲ,モ ト,ワ ラ ビー,③ サ ギ,マ ス,の3群 length CETPの も変 動 す る。 た と え ば,CETP活 分 泌 を む し ろ抑 制 した こ とか ら,活 性 性 の 高 低 に伴 っ て,そ トや イ ヌで は,HDLが EとCEに 推 察 され る。 合成と細胞内プロセシング で,後 一方 上 述 の よ う に,CETPは 織,小 腸,腎 臓,骨 肝 臓,脾 格 筋,心 臓,副 腎,脂 肪組 筋 な どの 臓 器 で 合 成 さ れ る。 細 胞 種 と して は,ヒ ト単 球 由 来 マ ク ロ フ ァー ジ,B リンパ球,脂 腸 上 皮 細 胞,CaCo2細 細 胞(そ 肪 細 胞,小 の 例 と して ヒ ト肝 癌 細 胞 由 来 株HepG2細 述 す るCETP欠 ,CETP活 で,HDL粒 の リポ 蛋 白 質 像 性 が非 常 に低 いラ ッ 主 た る リポ 蛋 白 質 で あ り,ア ポ 富 ん だ 大 きなHDLと 動 物 で はVLDLやLDLはTGに V.CETPの ク ロ ネ ズ ミ,ウ に分 け られ る22)。ヒ トは 中 間 群 に 属 す る 。CETP活 細 胞 か ら の分 泌 量 を調 節 して い る可 能 性 も ワ トリ,シ ル モ ッ ト,ヒ キ ガ エ ル,ヘ 高 活 性 群:フ て い た 。 この 蛋 白 質 は 細 胞 か らあ ま り分 泌 され ず,full 型CETPの ッ ト,マ ウ ス,ヒ ツ ジ,ウ シ,ブ タ,イ ヌ,② 中 間 活 性 群:ニ 伝 子 の構 造 性 に 発 現 させ たが,CEな 性 を 比 較 す る と,活 な っ て い る 。 これ らの 富 み,CEに 乏 しい の 損 症 患者 に部 分 的 に類 似 す る。 性 が 非 常 に高 い動 物 で は,LDLが 子 は小 さ く,ま た アポEやCEに 主体 富 むHDL は認 め られ ない。 胞,肝 胞) な どの 細 胞 で 合 成 され る こ とが 確 認 され て い る 。 ヒ ト 2201 26 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Ⅶ .CETPの Vol.39 No.13(1994) リポ蛋 白質代謝における役割 1.CETP静 注 の リポ 蛋 白 質 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 血 漿CETP活 性 を欠 損 す る ラ ッ トに 精 製 したCETP 添 加 し た の ち の リポ蛋 白 質 代 謝 の 変 化 の特 徴 は,①CE と ア ポEに 富 む 大 粒 子HDL(HDL1)の 前 に は 認 め られ な か っ たLDLの VLDLのCE含 消 失,② ピ ー クの 出 現 量 の 増 加,④HDL分 性 の1.5∼4倍 せ る と,HDL-Cの ③ 画 に お け るTG の ピー ク の 出 現 で あ っ た23)。ま た,CETPを ヒ トのCETP活 投与 静 注 して 程 度 に まで 活 性 を増 加 さ 低 下,VLDL-C,LDL-C,ア ポB Database Center for Life Science Online Service の 増 加 が 観 察 され た24)。 2.CETP抗 体 静 注 の リポ 蛋 白 質 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 血 漿CETP活 CETPに 性 を 有 す る動 物,た とえ ば ウサ ギ に 対 す る ポ リク ロ ー ナ ル抗 体 を静 注 す る と,CE お よ びTG転 送 活 性 は完 全 に抑 制 さ れ た が,ホ スファ 図4 チ ジ ル コ リン転 送 活 性 は20%し 静 注 後,HDL-CEは か 抑 制 され な か っ た25)。 有 意 に増 加 し,HDL-TGは に低 下 し た25)。ウ サ ギ にCETPに 対 す る中和 モ ノクロ ー ナ ル 抗 体 を静 注 し た 実 験 で も,HDL-CEが 逆 にHDL-TGは らのCEの 有意 CETPに よ る脂 質 転送 モ デル リー キ ャ リア と して のCETP,B:CETP,VLDL,HDLの 3者 が複 合体 を形 成,C:CETP2量 低 下 した26)。さ ら に,HDLや 異 化 と血 中 か らのCEの ク リア ラ な っ て い る 。2つ め はCETPが CETP-ア ク セ プ ター リポ 蛋 白 質 の3者 と同 様 で あ るが,CETPは よ る脂 質 転 送 は必 ず し も一 定 の 方 向 性 を有 さな い が,そ の速 度 はLCATに CEとTGのheteroexchange(HDLのCEをVLDL め 二 量 体 とし て働 い てい る。 い も促 進 させ るが,そ れ は脂 肪 酸 作 用様 式 につ いて は図 の 説 が あ る3)。1つ は,CETPが ドナ ー リポ 蛋 白 質(HDL)と Ⅸ.血 漿リポ蛋白質 におけるCETPの ヒ ト血 漿 をPAGグ ラ ジ エ ン トゲ ル に て 泳 動 し,モ ノ 結 合 し て 脂 質(CE,TG, る と,CETPは 大 部 分 がHDL3分 分 布 し,LDL分 CETPはHDL3サ ing HDLに イ ズの 粒 子 に多 い が,pre一 βmigrat- に て重 力 を か け る と,CETPは もにd=1.18∼1.25g/ml)分 質(VLDL)と 結 合 して 結 合 脂 質 を交 換 し,最 後 に ア ク 時 間 超 遠 心 を続 け る と,HDLと キ ャ リア ー と 白 質 欠 失 画 分(d>1.25g/ml)に HDLに 画に 結 合 して い る と の報 告27)も あ る。 超 遠 心 法 受 け 取 り,次 い で ア ク セ プ タ ー リ ポ 蛋 白 セ プ タ ー リ ポ 蛋 白 質 か ら解 離 す る とい うping-pongモ 画 やVHDL分 画 に は ご く 一 部 が 結 合 し て い る7)。 リン 脂 質)を デ ル で あ る。 こ の場 合,CETPはCEの 分布 ク ロ ー ナ ル 抗 体 を用 い て イ ム ノ ブ ロ ッ トし た 報 告 に よ 交 換)を 活 性 化 す る こ と に よ り,中 性 濃 度 に よ り変 動 す る。CETPの 2202 は2つ よ 成 速 度 の数 倍 といわ れ てい る。 また,CETPは 4に 示 した よ う な3つ か らな る 衝 突 複 ず れ の モ デ ル で 働 くか はな お 不 明 で あ る。 各 リポ 蛋 白 質 間 で のCETPに のTGと1:1で ド ナ ー リ ポ 蛋 白 質- 合 体 を つ くっ て 働 くモ デ ル で あ る。 も う1つ Ⅷ.脂 質転送機構 脂 質 のnet transferを が複 血漿か ン ス に重 要 と考 え られ る 。 るCE生 体,VLDL,HDLの3者 合 体 を形 成 。 増 加 し, ク リア ラ ンス は注 射 後 減 少 した 。 したが っ て, CETPはHDL-CEの A:フ は ア ポ 蛋 白 質A-Ⅱ よ り小 さ く重 いHDL(お 画 に 移 動 す る。 さ ら に長 の結 合 は切 れ て リポ蛋 回 収 され る。 の有 無 に よ り,Lp(A-Ⅰ 血中脂質転送蛋白質 とA-Ⅱ)粒 子 とLp(A-Ⅰ の み)粒 子 に 分 け る こ とが で き る。 ゲ ル濾 過 カ ラ ム やapoA-Ⅰ イ ム ノ ア フ ィニ テ ィ ー カ ラ ム を 用 い た 実 験 で は,ヒ い て は約80%の 27 トの 正 脂 血 症 者 に お 血 漿CETPがLp(A-Ⅰ し て お り,こ れ はLCATの の み)と 結 合 分 布 と類 似 し て い た と い う27}。 Ⅹ .構 造機能連関 CETPのC端 末 の26個 のア ミノ酸 配 列 はCE転 性 を 中 和 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(TP2)に 送活 対 す るエ ピ トー プ で あ り,中 性 脂 質 転 送 活 性 の 発 現 に 重 要 で あ Database Center for Life Science Online Service る。Fukasawaら はCE転 送 は抑 制 しな いが,TG転 送 を 完 全 に 抑 制 す るモ ノ ク ロー ナ ル抗 体 を作 製 した8)。 こ の こ とか ら,CEとTGの 結 合 部 位 は異 な っ て い る こ と が推 察 さ れ る。Heslerら28)は,CETPを プロテアーゼ で部 分 的 に分 解 し,CETPがCE転 送 活 性 に必 要 な 三 次 構 造 を有 してい る ことを報 告 した 。 また,linker insertion scanning mutagenesisに ∼53,No よ り,ア .165,No.373∼379がCE転 ミ ノ 酸No.48 端 のア ミ ノ 酸No.454∼457(-Phe-Leu-Leu-Leu-)が リポ 蛋 白 またLCAT,リポ よびTGの ドロ ラ ー ゼ,コ 転 送 に必 須 で あ る こ と, 多 糖 結 合 蛋 白 質,bactericidal meability-increasing protein,コ 端 にお け る中 性 脂 質 結 合 部 位 形 成 の モ ミ ノ酸)は 疎 水 性 の 面 が コ レ ス テ ロ ー ル 分 子 と 直 接 接 触 す る 。 第461∼466ア 酸 の 間 のターン に よ り,疎 水 性 ア ミ ノ 酸(454∼461)が ミノ コ レス テ ロー ル エ ス テ ル と も うひ と つ の 接 触 面 を 形 成 す る 。 こ の部 位 の 二 次 構 造 は α ヘ リ ッ クス ま た は β ス トラ ン ドで あ る 。 文 献3よ り引 用 。 per- レ ス テ ロ ー ル7α レ ス テ ロー ル エ ス テ ラ ー ゼ,ホ CETPのC末 デル 両 親 媒 性 のC末 端 のヘ リ ック ス(第466∼476ア 送 に重 要 で あ る こ とが 示 され た29)。Au-Youngら30)も,C末 質 へ の 結 合 とCEお 図5 ヒ ルモン 341,No.396の4カ 396Asn:Glnの 所 が 想 定 さ れ るが,88Asn:Gln, 変 異 蛋 白 質 は細 胞 か ら分 泌 さ れ な い。 感 受 性 リパ ー ゼ な ど の脂 質 代 謝 に 関 与 す る 酵 素 ・蛋 白 また,341Asn:Gln変 質 に お い て,こ 野 生 型 に 比 しCE転 送 活 性 が 高 い 。 し た が っ て,血 漿 CETPはAsp341に お け る糖 鎖 付 加 の程 度 の差 を反 映 す れ と類 似 の ア ミ ノ 酸 配 列 が 見 い だ さ れ る こ と を 報 告 した 。 Wangら31)はHis466か Asp460の CE転 らLeu475の 変 異 でTP2のCETPへ 部 分,あ るい は :Leu468,Phe461,Phe454な ?.CETP活 どの 疎 水 性 ア ミ ノ酸 の 変 送 活 性 の 著 し い低 下 を起 こす がTP2へ 合 は 正 常 で あ る こ と を示 した。 この こと よ り,C末 α ヘ リ ッ ク ス の 疎 水 面 がCE転 送 に 関 与 し,TP2が 性 に及 ぼすリボ蛋 白質の組成,ア ポ蛋白質 の影響 の結 端の 局 HDLか はTGを 示 唆 さ れ る。Tallら た,リ 端 の ア ミノ酸 配 列 が どの よ らのCEの 転 送 は,VLDLやLDLな 多 く含 む ほ どCEを 受 け 取 る能 力 は大 きい。 ま ン脂 質 や 蛋 白 質 な ど をLDLが う に し て 中 性 脂 質 結 合 部 位 を形 成 す るか に つ い て,興 ど,HDLか 味 深 い モ デ ル を想 定 して い る(図5)3)。 一方 ,cDNAの 塩 基 配 列 よ りア スパ ラ ギ ン結 合 糖 鎖 CETPを の 結 合 部 位 と し て,ア 増 加 す る こ とに よ る。HTGLもLPLと ミ ノ 酸No.88,No.240,No. どの ア クセ プ ター リポ 蛋 白 質 の 組 成 に よ り影 響 され る。VLDL 所 の 立 体 障 害 に よ っ て 中 性 脂 質 転 送 を抑 制 す る こ とが はC末 の 型 の 混 合 し た も の と考 え ら れ る。 の 結 合 が 消 失 す るが, 送 活 性 は 保 持 さ れ る こ と,Leu475,Phe471, 異 はCE転 る2つ 異 蛋 白 質 は分 泌 は 良 好 で あ るが, らのCEを 介 す るHDLか 進 す るが,こ 多 く含 め ば含 む ほ 受 け取 る能 力 は大 きい。LPLは らVLDLへ の 機 序 と して はVLDLの のCEの 転 送 を促 表 面 の脂 肪 酸 が 同 様 の 影 響 を有 2203 28 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.39No.13(1994) し て い る。 脂 肪 酸 をア ッセ イ溶 液 に 添 加 す る と,CETP を介 す るCEの 転 送 が 充 進 す る32)。オ レ イ ン酸 ナ トリウ ム で は反 対 方 向 へ のTG転 LDLへ のCEの 送 を 伴 わ ず に,HDLか ら 一 方 向 の転 送 が 起 こ る。 これ は脂 肪 酸 がCETPのVLDLやHDLへ の 結 合 を促 進 させ るため したPBC症 ポE3欠 例 で はCETP活 損(ア 性 やHTGL活 性 は 一 般 に 増 加 す る こ とが 知 ら れ て い 昇 す るが,こ パ ル ミチ ン酸,ス CE転 テ ア リン酸)はHDL3か 送 を促 進 す る 。CE転 影 響 を受 け る 。CEの CEな らび にTG転 また,血 送 はCEの エ マ ル ジ ョン とLDLと ポE欠 コ レ ス テ ロ ー ル はハ ム ス タ ー で は脂 肪 組 織,心 組 成 で 長 鎖 脂 肪 酸 に 富 む もの は, 漿CETP活 A-Ⅰ やA-Ⅱ らLDLへ 構造 によって も リ ン脂 質 か らな る の 間 に お け るCE転 送 は,ア ポ を添 加 す る と充 進 す る と報 告 して い る。 ア 損 症 の 患 者 の 血 漿 を 用 い て,Kinoshitaら34)は discoidal bilayer particleか がVLDLに ア ポEを らVLDLへ 臓 のCETPmRNAは 増 加 す る。 食 事 性 の 格 筋 に お け るCETPmRNAの のCEの 転送 と り入 れ る こ とに よ り充 進 す る こ で は脂 肪 組 織 で 発 現 充 進 が 起 こ る。 一 方,ラ ッ トで は 性 は増 加 し 絶 食 に よ り脂 肪 組 織 や 心 筋 でCETPmRNAは す る16)。これ に対 し,LPLmRNAは また,妊 娠40),あ 増加 絶 食 で減 少 す る。 る種 の 薬 物(プ ロ ブ コ ー ル41,42),オレ イ ン酸 ナ ト リ ウ ム な ど)で もCETP活 性 が増加 す る こ とが 知 られ て い る 。 家 族 性 高 コ レ ス テ ロー ル 血 症 患 者 や あ る種 の 高HDL血 と を示 し た。 こ の 効 果 は ア ポEがCETPのVLDLへ り,CETP活 告41)した が,蛋 症 患 者 で,プ ロ ブコ ール投 与 に よ 性 が 増 加 す る こ と は 筆 者 らが は じめ て 報 白質 レ ベ ル で も増 加 す る こ とが 示 さ れ た42)。プ ロ ブ コ ー ル 投 与 後 のCETPmRNAレ 性に影響する因子 ト ない。 の 親 和 性 を 高 め る こ と に よ る。 ?.血 漿CETP活 臓,骨 発 現 を充 進 させ,ヒ 高 コ レ ス テ ロー ル 血 症 に な って もCETP活 性 はア ポ 蛋 白 質 に よ っ て も影 響 に上 白 質 量 の 増 加 に よっ てい る。 こ の 際,肝 送 活 性 を促 進 さ せ る。 を受 け る。Nishikawaら33)はTGと れ はCETP蛋 性 は2∼3倍 リス チ ン酸, の にも 動 物 に高 コ レス テ ロ ー ル食 負 荷 を行 な う と,CETP活 酸(カ プ リル 酸 や カ プ リ ン酸)はCE転 送 へ の影 響 は な 合併 増加 す る。 る39)。た とえ ば,ウ サ ギ で はCETP活 鎖 や 長 鎖 脂 肪 酸(ラ ウ リ ン酸,ミ ポE2/2)の 性 は正 常 の 約5∼6倍 と推 定 され る。 遊 離 脂 肪 酸 の な か で も,短 鎖 飽 和 脂 肪 い が,中 Database Center for Life Science Online Service して い る。 と くに,ア ベル の 変 化 につ い て は ヒ ト脂 肪 組 織 で は む し ろ減 少 して お り, 肝 臓 な どで の増 加 が起 こ って い る可能 性 が推 察 さ れ 1.CETP活 CETP活 る43)。 性 に影 響す る一 次 性 因子 性 に 影 響 す る 因 子 と し て 最 も重 要 な もの は 遺 伝 性 のCETP欠 す る 。CETP活 損 症 で あ ろ う。 これ につ い て は後 述 性,蛋 白 質 量 に は 種 差,性 女 性 で は男 性 に比 し約28%高 差 が あ り, い7)。 筆 者 ら は肥 満 者 に 認 め ら れ る低HDL血 CETP活 症 の成 因 に 性 の 増 加 が 関 与 す る こ と を 示 し た44)。CETP 活 性 は 体 脂 肪 量,と く に皮 下 脂 肪 量 と有 意 の 正 相 関 を 有 し,減 量 に伴 っ て 低 下 す る 。CETPは ヒ トで は脂 肪 組 織 で も産 生 さ れ る こ とか ら,肥 満 者 で は脂 肪 組 織 の 2.CETP活 CETP活 性を 上昇 させ る 二次 性 因子 絶 対 量 の増 加 に 伴 っ て,産 性 が 上 昇 す る疾 患 と して は,原 発 性 胆 汁 性 肝 硬 変 症(PBC)35),イ で も,高 カ イ ロ ミク ロ ン血 症,高 コ レ ス テ ロー ル 血 症, 家 族 性 高 コ レス テ ロー ル 血 症,家 族 性 複 合 型 高 脂 血 症, 型 高 脂 血 症 の 患 者 に お い て,CETP活 等 度 の 高TG血 性 の 増 加 が認 Ⅲ 症 で はCETP活 性 に変 3.CETP活 CETP活 下 症,無 性 が 低 下 す る 疾 患 と して は,甲 状 腺 機 能 低 β リポ 蛋 白 質 血 症,狭 肝 疾 患92),な イ ドホ ル モ ン37),D-ガ 増 加 す る。PBCで 併 す る こ とが 多 い が,CETP活 は高HDL血 症 を合 性 は む し ろ著 明 に増 加 臓 移 植 患 者, どが 報 告 され て い る。CETP活 CoA環 性 の低下 とと 心 症,心 性 を低 下 させ る環 境 因 子 と し て は飲 酒45),運 動46),薬 物(HMG- 化 はな い38)。家 族 性 高 コ レ ステ ロー ル 血 症 やⅢ 型 高 脂 血 2204 量 も増 加 性 を低 下さ せ る 二次 性因 子 症 患 者 で 食 事 療 法 を 行 な う と,CETP活 も にHDL-Cは 生 さ れ るCETPの 症 に つ な が る もの と推 定 され る。 ンス リ ン 依 存 型 糖 尿 病36),ネ フ ロー ゼ 症 候 群37),高 脂 血 症 な どが あ る。 高 脂 血 症 のなか め られ るが,中 す る こ とが 低HDL血 元 酵 素 阻 害 剤47),魚 油48),ω 一3脂肪 酸,ス ン ヒ ビ タ ー50)が あ る 。 た と え ぼ,慢 は100mg/dlを テロ ラ ク トサ ミ ン49)など),CETPイ 超 え る 著 し い 高HDL血 性 飲酒者 のなか に 症 を呈 す る症 血中脂質転送蛋白質 例 が 存 在 す る 。 これ らに お い て はCETP欠 に 血 漿 ア ポA-Ⅰ,C-Ⅲ,Eが とpolydisperse LDLが 損 症 と 同様 表1 CETP欠 29 損症 ホ モ接 合 体 の 血 清 脂 質 な らび に アポ 蛋 白質値 増 加 し,拡 大 したHDL 認 め られ る45)。また,CETP活 性 は著 し く低 下 し て お り,禁 酒 させ る とCETP活 上 昇 と と も にLDLはmonodisperseと 性の な り,HDLの サ イ ズ は縮 小 す る。 し た が っ て,慢 性 大 量 飲 酒 者 に み ら れ る 高HDL血 症 とLDLの 変 化 はCETP活 性低下 と強 く関 連 す る こ とが 推 察 さ れ る。 ま た,慢 性 大 量 飲 酒 者 に お い て はLDLはLDL受 低 下 し て い る が,一 容 体 に対 す る親 和 性 が カ 月 の禁 酒 後 に は親 和 性 は 正 常 化 す る。 一方 ,9∼12カ 月 の長 期 間 の 運 動 に よ り,CETP蛋 Database Center for Life Science Online Service 白 質 量 が 低 下 す る と報 告 され て い る46)。これ は運 動 に よ る脂 肪 量 の 減 少 が 一 因 か も しれ な い 。 CETPに 対 す る イ ン ヒ ビ ター は,数 種 の動 物 の 血 漿 リポ 蛋 白 質 を含 有 しな い分 画 か ら分 離 ・精 製 され て い る50)。ラ ッ トで は こ の イ ン ヒ ビ ター が存 在 す る た め に, 血 漿CETP活 性 が 見 か け上 低 下 し てい る可 能 性 が 示 唆 され て い る。 ヒ トで は こ の イ ン ヒ ビ ター は分 子 量32K で,CEお よびTGの CETPイ 転 送 を阻 害 す る。Nishideら51)も ン ヒビ ター を含 むHDLの る が,こ れ ら のCETPイ び にHDL代 図6 亜 分 画 を分 離 して い ン ヒビ タ ーの 生 理 的 意 義 な ら 成 熟LDL形 成 過 程 に お け るCETPの a:LPLま た はHTGLに らのCE転 送。 お り,こ れ はCETPに 性 が低 下 して 対 す るイ ン ヒ ビ ター が 増 加 して い る た め と報 告 され て い る52)。 容 体 に高 親 和 性 で あ る の で,コ ?. CETP欠 CETP完 損症と高HDL血 症 全 欠 損 症 の ア ポB含 損 症 は筆 者 らの施 設 も含 めて30家 系以 上 発 筆 者 ら の 経 験 した 症 例 の血 清 脂 質 ・ア ポ 蛋 白 質 値 を 示 す 。 総 コ レ ス テ ロ ー ル は高 値 で, 正 常 の3∼6倍 と きわ め て 高 値 を示 す 。 ア ポ 類 似 す る54)。 有LDLを 平 衡密 度勾 画 に 分 け,PAGGEに と,正 常 人 で は 各 分 画 に1本 対 し,CETP欠 見 され て い る。 表1に レス テ ロ ー ル 負 荷 時 に あ る種 の 動 物 で 出現 す るHDLcに 配 超 遠 心 法 にて16分 HDL-Cは よ るHDLか 謝 にお ける役 割 は必 ず し も明 らかで はな い 。 上 述 の 無 β リポ 蛋 白 質 血 症 で はCETP活 CETP欠 役割 よ る 脂 肪 分 解,b:CETPに て泳動 する の バ ン ドが 見 ら れ る の に 損 症 で はd=1.025∼1.053g/mlの 広 範 囲 に わ た っ て各 分 画 に2つ のバ ン ドが 存 在 し55),CE に富 み 均 一 な 成 熟LDLの 生 成 に はCETPの 役 割 が重 要 で あ る こ とが 推 察 さ れ る(図6)。 CETP欠 損 症 の ヘ テ ロ接 合 体 で は,血 清 脂 質,リポ 蛋 白 質 で はア ポA-1,C-Ⅲ,Eが 著 し く増 加 し,ア ポ 蛋 白 質 分 画 の コ レ ス テ ロ ー ル 値,ア Bは 低 値 傾 向 を 示 す 。HDL-Cの 増 加 はHDL2分 の 粒 子 サ イ ズ は ホ モ 接 合 体 と正 常 との 中 間 的 な病 態 を (d=1.063∼1.125g/ml)の み に見 られ,PAGグ エ ン トゲ ル 電 気 泳 動(PAGGE)に はpolydisperseで 画 ラジ よ る解 析 で は,LDL 呈 す る が,HDL-コ あ る 。CETP欠 ポ 蛋 白 質 値,HDL レス テ ロー ル は正 常 値 を 示 す もの も 損 症 の ホ モ 接 合 体,ヘ テ ロ接 合 体 お よ 小 粒 子 化 し,逆 にHDLは 巨大化 し て い る53)。通 常 のLDL(d=1.019∼1.063g/ml)分 画 HDL2-コ レ ス テ ロ ー ル 値 と負 の 相 関 を示 す56)。 し た が 位 に泳 動 され る リ っ て,血 漿CETPレ に は,ア ガ ロー ス 電 気 泳 動 でslOWα ボ 蛋 白 質 が 認 め ら れ る。 こ の リポ蛋 白 質 はCEに ア ポEを 富 み, 主 た るア ポ蛋 白 質 と し,線 維 芽 細 胞 のLDL受 び コ ン ト ロ ー ル を 含 む 集 団 に お い て,CETP活 ベ ル がHDLの 量 な らび に 質 を調 節 す る1因 子 に な っ て い る と考 え られ る 。LDL-コ テ ロ ー ル とCETP活 性 は レス 性 との 間 に は有 意 の 相 関 は認 め な 2205 Database Center for Life Science Online Service 30 蛋 白質 核 酸 酵素 図7 正 常HDLお Vol.39 No.13(1994) よ びCETP欠 a):ρ<0.01(CETP欠 損 症 患 者HDLの 損 症 患 者HDL2と 比較),b):ρ 抗 泡沫 化 能 く0.01(HDL3を い。 添 加 しな い場 合 と 比較)。 性 お よび 蛋 白質 は ま っ た く検 出 され ず,ホ CETP欠 損 症 ホ モ 接 合 体 に見 られ る 異 常 リポ 蛋 白 質 同 様 の リポ 蛋 白質 像 を 有 す る症 例 も存 在 し た 。 この よ と細 胞 との相 互 作 用 につ いて 検 討 す る と,患 者 のCEに う な症 例 の な か か ら,最 近,筆 乏 し い ア ポB含 科 斎 藤(現:山 のLDL受 有LDLは 正 常LDLに 比 し線 維 芽 細 胞 容 体 に親 和 性 が 乏 しい 。 また,正 形大 学)ら 者 ら は千 葉 大 学 第 二 内 の グ ル ー プ と と もに エ キ ソ ン 15の ミス セ ン ス点 変 異 を発 見 し た60)。 こ の変 異 に よ り 常HDLは マ ク ロ フ ァー ジ に 対 す る抗 泡 沫 化 作 用 な ら び に脱 泡 沫 442番 目 のAspがGlyに 化 作 用 を有 す る が,患 者 のCEに 性 異 常 を 生 ず る もの と推 定 さ れ る 。 また,エ れ らの 機 能 を もたず,必 erogenic)な 富 む大 きなHDLは こ ず し も抗 ア テ ロ ー ム性(antiath- 病 態 で あ る と は い え な い と思 わ れ る(図 7)57)。 置 換 さ れ る た め,CETPの 全 欠 損 症 の遺 伝 子 異 常 を 解 析 す る と,大 部 分 は イ ン トロ ン14の に ス ト ップ コ ドン を 生 じ る 変 異 も報 告 さ れ て い る61)。 最 近,筆 者 ら は 高HDL血 ス プラ イ ス ドナ ー部 位 のG→A変 血 症 の 頻 度 は他 の地 域 に 比 し,き 異 の ホ モ 接 合 体 で あ っ た 。 本 変 異 の 日本 人 の 一 般 人 口 に お け る遺 伝 子 頻 度 は 約0.0049で の5∼8倍 HDL-C〈100mg/dlの 100mg/dlの あ り,60mg/dl≦ 症 例 で は約0,0618,HDL-C≧ な りの 症 例 の 高 症 が 本 変異 に起 因 し と,わ が 国 に は ホ モ接 合 体 が 人 に1人 の頻 度 で 存 在 す る も の と推 定 され る。 しか し,上 記 変 異 の ヘ テ ロ 接 合 体 の中 には血 中CETP活 2206 スプ わ め て 高 く,ま た そ スプ ライス異常 が他地域 の頻 度 で認 め られ た 。 本 地 域 で は平 均 寿 命 が 日本 人 の平 均 に 比 して や や 短 く,ま た,80歳 以 上 の長 症 例 で は 約 て い る(表2)58,59)。 概 算 す る 約4.2万 症 や イ ン トロ ン14の 田 県 大 曲 市)を 発 見 し た 。 本 地 域 に お い て は,高HDL の 成 因 と し て イ ン トロ ン14の HDL血 活 キ ソ ン10 ラ イ ス異 常 が 高 頻 度 に集 積 す る 東 北 地 方 の 一 地 域(秋 CETP完 0.1754か モ接合体 と 表2 日本 人 の 一 般 人 口お よ び高HDL血 ス プラ イ ス異 常 の頻 度 症 患 者 に お け るCE丁P遺 伝 子 イ ン トロ ン14 血中脂質転送蛋白質 寿 者 に お い て,高HDL血 頻 度 が80歳 た,さ 症 な ら び にCETP欠 損症 の 未 満 の群 に比 較 し て む し ろ少 な か っ た 。 ま ら に,こ の 地 域 でHDL-C値 と安 静 時 心 電 図 で ル 負 荷 に よ る動 脈 硬 化 が 容 易 に 誘 発 され,HDL-コ テ ロ ー ル 値 は低 い 。 こ の こ と か ら,CETPは 脈 硬 化 惹 起 性(atherogenic)で 上 記 の よ う にCETP欠 HDL-C値 が60mg/dlの 均 寿 命 が や や 短 縮 し て い る こ と,本 りHDLが 高 くな る とむ し ろ頻 度 が増 加 して い た。 した が っ て,CETP欠 損 に よ る 高HDL血 症 は抗 動 脈 硬 化 ランスジェニ ックマウス 損 症 に 見 られ る大 粒 子HDLは 精 製CETPを 伝 子 を組 み込 ん だ トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス がAge110nら62)に Database Center for Life Science Online Service 地 域 で80歳 損 症 の頻 度 が80歳 以 上の 未 満 と比 較 し て む し ろ少 な くな る こ と を 考 慮 す る と,CETPは よ っ て 開 発 され,そ の のVHDL類 患者血 清 に 添 加 す る こ とに よ り消 失 し,HDL3よ も小 さなVHDL類 トCETP遺 損 症 の 集 積 して い る地 域 で は平 長 寿 者 に おい て,CETP欠 CETP欠 最 近,ヒ む し ろ動 む し ろ抗 動 脈 硬 化 性 で あ る可 能 性 も示 唆 さ れ る。 性 で は な い と考 え られ る 。 XIV.CETPト レス あ る との 考 え もあ る が, 虚 血 性 変 化 を 有 す る 者 の 頻 度 と の 関 係 を み る と, 付 近 を ボ トム とし て,こ れ よ 31 り 似 の 小 さな 粒 子 に 変 換 され る66)。こ 似 粒 子 をゲ ル濾 過 法 に よ り精 製 し,そ の性 状 を分 析 し た と こ ろ,本 粒 子 は リ ン 脂 質 と蛋 白 質(主 リボ蛋 白質 代 謝 の変 化 につ い て分 析 され た。 ヒ トCETP と して ア ポ 蛋 白 質A-Ⅰ)か 遺 伝 子 は メ タ ロ チ オ ネ イ ン プ ロ モ ー タ ー を付 加 し た ミ よ る マ ク ロ フ ァー ジ の 泡 沫 化 を 強 く抑 制 す る と と もに, ニ ジ ー ン として 導 入 され て お り,高Zn食 肝 臓,小 腸 で の発 現 が 誘 導 され る 。 このマ ウスで はHDL はや や減 少 し,HDLの LDL値 を負 荷 す る と, 粒 子 径 も縮 小 す るが,VLDLや は必 ず し も増 加 し な い 。 また,コ レステ ロール い っ た ん コ レ ス テ ロ ー ル を 蓄 積 し た マ ク ロ フ ァー ジ の 脱 泡 沫 化 を も強 力 に 促 進 し た(図8)。 HDLは この よ うな 小 粒 子HDLの ラ ン キ ン グ 領 域 を付 加 した ミニ ジ ー ン を 導 入 し て作 製 一方 ,CETPの か ら肝 細 胞(HepG2)へ の 分 布 が よ りヒ トのin vivoの 分 布 に類 似 す る。 この ト 告 が あ るが,こ 一方 ,CETPト レステ ロー ル負荷 に 発現 誘 導 が認 め られ る。 ラ ン ス ジ ェ ニ ツ ク マ ウス と ヒ トア ポA- 遺 伝 子 を過 剰 発 現 す る トラ ンス ジ ェ ニ ッ クマ ウⅠス と を 交 配 させ,CETP/ア ス で はHDLの ポA-Ⅰ 生 成 に も関 与 す る こ とが推 察 その 他 の機 能 として,CETPはHDL し た トラ ンス ジ ェ ニ ッ クマ ウ ス63)で は,CETPmRNA 性 やmRNAの 粒子 抗 動 脈 硬 化 作 用 が 強 い と考 え られ て い るが,筆 され る。 よ りCETP活 従 来,小 者 らの研 究 成 果 は これ を 支 持 す る もの で あ り,CETPが 負 荷 に よ って はCETPmRNAの 発 現 は誘 導 され な い。 一方 ,ヒ トCETP遺 伝 子 の5'側 お よび3'側 の本 来 の フ ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス で は,コ ら な り,ア セ チ ルLDLに のCE転 の効 果 はCETPの 送 を 促 進 す る との 報 細 胞 への直接効果 で はな く,細 胞 によ り分 泌 され た リポ 蛋 白 質 へHDLのCE が 転 送 され,こ れ が 肝 臓 のLDL受 容 体 を介 して細 胞 内 に取 り込 まれ る もの と推 定 され て い る 。 また,CETPは 線 維 芽 細 胞,平 滑 筋 細 胞,J774マ ク ロ フ ァー ジな どの トラ ンス ジェニ ッ クマ ウ 量 な らび に粒 子 径 の減 少 が よ り著 明 に観 察 され て い る64}。Tallら の トラ ン ス ジ ェ ニ ッ クマ ウ ス で は コ レス テ ロ ー ル 負 荷 に よ っ て も動 脈 硬 化 性 病 変 が 得 られ な か っ た が,最 近Upjohnの グ ル ー プ に よ りあ る 種 の マ ウ ス を使 う と動 脈 硬 化 性 病 変 が 出 現 した とい う 報 告65)も あ り,な お 不 明 の 点 が 多 い 。 ?.CETPの 生理的役割と動脈硬化症との関連 上 述 の よ う に,血 CETP活 漿CETP活 性 は 種 差 が 著 し く, 性 が低 い動物 で は コ レステ ロー ル負荷 に よる 動 脈 硬 化 が 惹 起 さ れ に く く,血 漿HDL-コ レ ス テ ロー ル 値 が 高 い 。 逆 に,活 性 の 高 い 動 物 で は コ レ ス テ ロ ー 図8 マ ク ロフ ァー ジの 泡 沫 化 に 及 ぼ すVHDL類 似粒子の 効 果(脱 泡 沫化) 2207 32 蛋 白質 核 酸 酵素 表3 CETPとPLTPの Vol.39 No.13(1994) 一方 生 化 学 的性 質 の比 較 ,細 胞 内 に存 在 す る脂 質 転 送 蛋 白 質 の ひ と つ に, microsomal triglyceride transfer protein(MTP)71)が あ る 。 この 蛋 白 質 は肝 臓 や 副 腎,小 腸 な どで 細 胞 内 のTG の 転 送 に 関 与 して お り,肝 臓 で はVLDLの 集 合に重要であ る こ とが 推 定 さ れ る 。 最 近, CE:コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル,TG:ト リ グ リ セ リ ド,PL:リ 本 蛋 白 質 の 欠 損 に よ り無ベー ン脂 質 。 タ リポ 蛋 白 質 血 症 を きた し た 細 胞 か らのCEの 除 去 を促 進 す る こ とが知 られて い るが, Database Center for Life Science Online Service そ の 機 序 に つ い て は な お 明 らか で は な く,HDLな どの リポ 蛋 白 質 を 介 す る 間 接 的 効 果 で あ る可 能 性 が あ る。 症 例 が 報 告 され てお り,そ の遺 伝 子 変 異 も同 定 された72)。 そ の他,細 胞 内 脂 質 転 送 蛋 白質 と して,細 胞 内 リ ン脂 質 転 送 蛋 白 質 や 小 腸 の コ レ ス テ ロ ー ル 転 送 蛋 白質 な ど が あ るが,そ の 性 状 や 機 能 の 詳 細 は割 愛 す る。 ?.リ ン脂質転送蛋白質およびその他の脂質転送蛋白質 これ まで,脂 質 転 送 蛋 白 質 の うち,CETPを 述 べ て きた が,リ 中心 に ン脂 質 転 送 蛋 白 質(PLTP)に 簡 単 に紹 介 す る 。PLTPは つい て 血 中 に 存 在 し,ホ スファチ お わ りに 本 稿 で はCETPに 関 す る最 近 の 知 見 を概 説 し,ま た そ の異 常 に 関 す る 最 近 の 成 績 を紹 介 し た 。 今 後,新 し い 変 異 の 発 見 と と もに,CETP遺 伝 子発 現調 ジ ル コ リ ンな どの リ ン脂 質 の 交 換 ・転 送 に関 与 す る。 表 節 機 構 の 詳 細 が 分 子 レベ ル で 解 明 さ れ る こ とが 期 待 さ 3はPLTPの れ る。 ま た,CETPと PLTPの 性 状 をCETPと 比 較 し た も の で あ る。 分 子 量 やplはCETPの それ と類 似 す るが,血 動 脈 硬 化 と の 関 連 につ い て は今 後 さ ら に大 規 模 な疫 学 調 査 が 必 要 と考 え られ る。 一 方, 漿 中 に お け る 分 布 は 両 者 で 異 な っ て い る67)。最 近, PLTPにつ PLTPはHDL粒 ろ で あ り,今 後 こ の 方 面 で の研 究 の 進 展 が 望 まれ る 。 子 の 変 換 にお い て 重 要 で あ る こ とが 明 らか にな って きた68)。CETPはCE,TG,PLの 交換 ・ 転 送 に 関与 す るが,PLTPはCE,TGの せ ず,VLDLあ 転 送 には 関与 る い は リ ン脂 質 リ ボ ソー ム か らの リ ン 文 脂 質(ホ ス フ ァ チ ジ ル コ リ ン)のnet transferに 関 与 して い る。 お そ ら く,生 体 内 でPLTPはlipolysisの に,カ い て は最近 遺伝 子 クロー ニ ングされた とこ 問 イ ロ ミ ク ロ ン,VLDLお よ び そ の レム ナ ン トか ら の過 剰 の表 面 成 分 がHDLへ と転 送 され るの を促 進 す 献 (文 献 番 号 を 太 字 に し た も の は と く に 重 要 で あ る こ と を 示 す) 1)Tollefson,J.H.,Albers,J.J.:Methods 129,797-816(1986) 2)Wirtz,K.W.A.:Annu.Rev.Biochem.,60,73-99 (1991) る の で あ ろ う。CETPは 血 中CEお べ て に か か わ り,PLTPは 血 清PLの よ びTG転 送 のす 転 送 の約50%に か か わ っ て い る と考 え ら れ て い る69)。CETPは 定 で あ る が,PLTPは 4)Badimon,J.J.,Badimon,L.,Fuster,V.:J.Clin. 熱 に安 不 安 定 で あ る。 ま た,CETPは 対 す る抗 体 はPLTPを させ ない し,逆 にCETPに L,Nishida,T.:J.Biol.Chem.,264,4082-4087 (1989) 免疫 沈降 対 す る抗 体 はPLTPを Invest.,85,1234-1241(1990) 5)Kato,H.,Nakanishi,T.,Arai,H.,Nishida,H. ヘ パ リン-セ フ ァ ロ ー ス カ ラ ム に 結 合 し な いが,PLTP は結 合 す る。PLTPに 3JTall,A.R.:J.LipidRes.,34,1255-1274(1993) 免疫 6)Hesler,C.B.,Tall,A.R.,Swenson,T.L., Weech,P.K.,Marcel,Y.L.,Milne,R.W.:J. Biol.Chem.,263,5020-5023(1988) 沈 降 させ な い 。 以 上 の こ と か ら,PLTPはCETPど 明 らか に異 な っ た 蛋 白 質 で あ る と考 え られ る。 最 近,ヒ ト血 漿PLTPのcDNAが 2208 ク ロ ー ニ ン グ され た70)。 は 7)Marcel,Y.L.,McPherson,R.,Hogue,M.,Czarnecka,H.,Zawadzki,Z.,Weech,P.K.,Whitlock,M.E.,Tall,A.R.,Milne,R.W.:J.Clin. Enzymol., 血中脂質転送蛋白質 Invest.,85,10-17(1990) S)Fukasawa,M.,Arai,H.,Inoue,K.:J.Biochem., 111,696-698(1992) 9)Yamashita,S.,Sprecher,D.L.,Matsuzawa,Y., Sakai,N.,Tarui,S.,Harmony,J.A.K.,Wetterau,J.R.:Clin.Chim.Acta,194,145-160(1990) 10)Hesler,C.B.,Swenson,T.L.,Tall,A.R.:J. Biol.Chem.,262,2275-2282(1987) 11)Ohnishi,T.,Yokoyama,S.,Yamamoto,A.:J. Lipid 29)Wang,S.,Deng,L.,Brown,M.L.,Agellon,L. B.,Tall,A.R.:Biochemistry,30,3484-3490(1991) 30)Au-Young,J.,Fielding,C.J.:Proc.Natl.Acad. 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