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4.文化政策をより良く知るための文献案内

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4.文化政策をより良く知るための文献案内
文化政策をより良く知るための文献案内
文化政策をより良く知るための文献案内
片山 泰輔
(三和総合研究所 芸術・文化政策室 主任研究員)
ここでは、文化政策についての理解を深めるのに役立つ文献紹介を試みる。最初に断っ
ておかなければならないのは、文化政策においては、数学や経済学のように、体系的な入
門書があって、そこから順々に理解を深めていける分野とは異なっているということであ
る。必ずしも文化政策学という体系が確立しているという状況にはなく、文化政策という
言葉の定義すらあいまいなのが現状と言ってよい。したがって、ここで紹介する文献は、
統一的な体系というよりも、文化政策の現実を記述した著作及び、政治学、経済学、行政
学、社会学等といった既存の諸社会科学から文化政策についてのアプローチの寄せ集めと
いう感じが強くなっている点を了承いただきたい。
1.概論的文献
こうした中でも、文化政策論のスタンダードなテキストとして、
*Pick, John. The Arts in a State, Bristol Classical Press, 1988.
をあげることができよう。ここでは、古代ギリシャの時代からルネッサンスの時代にお
けるパトロネージュから現代にいたる歴史的な考察に基礎をおき、文化政策の現代的な課
題である許認可、税制、教育、検閲等といった問題等にも触れている。
文化政策をも包含する広義のアートマネジメントの立場から書かれた入門者向けテキス
トとしては、
*伊藤裕夫・片山泰輔・小林真理・中川幾郎・山崎稔惠『アーツ・マネジメント概論』水
曜社、2001年
がある。ここでは、「アーツ・マネジメントは、単に『芸術を観客に紹介する』だけでな
く、
『芸術家の活動を保証し』創造を可能にすること、並びに芸術によって『社会の持つ潜
在能力の向上を支援する』ことまでをも含む」との考え方のもと、広義のアートマネジメ
ント論の中で文化政策の問題が位置付けられている点が特徴である。
2.各国事情
日本の文化政策への理解を深める上での必携の書物としては、
*根木昭・枝川明敬・垣内恵美子・大和滋『文化政策概論』晃洋書房、1996年
*根木昭『日本の文化政策』勁草書房、2001年
の2冊をあげることができる。わが国の文化庁がこれまで実施してきた諸政策の制度的な
変遷や諸課題を概観することができるとともに、前者では各国の文化政策についても概観
されている。
日本の現状を踏まえつつ、行政学、経済学等のアプローチで独自の検討を加えたものと
しては、
*後藤和子『芸術文化の公共政策』勁草書房、1998年
*中川幾郎『分権時代の自治体文化政策』勁草書房、2001年
が読み応えのある研究書となっている。上記には研究サーベイも豊富に含まれているの
で、そうした利用方法も可能である。
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また、米国事情を中心に、政治学者や社会学者等が中心となって文化政策を論じた論文
集としては、
*Mulcahy, Kevin V. and C.Richard Swaim ed. Public Policy and the Arts, Westview Press, 1982.
*Mulcahy, Kevin V. and Margaret Jane Wyszomirski ed. America’s Commitment to Culture,
Westview Press, 1995
*Benedict, Stephen ed. Public Money and the Muse --Essays on Government Funding for the Arts,
Norton, 1991
などが米国の文化政策上の主要な論点を把握する上で便利である。経済学的なアプロー
チでの優れた実証研究としては、
*Netzer, Dick, The Subsidized Muse, Cambridge University Press, 1978.
が必須文献といえる。
なお、米国事情について日本語で書かれたものとしては、下記の拙稿も参照されたい。
*片山泰輔「米国における芸術文化への公的支援政策の確立と意義」
『三和政策研究』Vol.1,
No.1, 1995年
*片山泰輔「米国連邦政府における芸術文化への公的支援政策の確立とその意義」
『文化経
済学会(日本)論文集』第3号 1997年3月
*片山泰輔「米国州政府による芸術文化支援と政府間関係」
『SRC REPORT』Vol.4, No.1,1998
年
*片山泰輔「米国における芸術支援とコミュニティ:パトロン、納税者、投票者」『文化経
済学』第2巻第1号(通巻第8号)、2000年3月
また、ケインズ以来、文化政策及びアートマネジメントの理論的・思想的リーダーシッ
プをとってきたイギリスの文化政策については、財政面からその特徴を概観したものとし
て、
*金武創「財政制度としての文化支援システム∼英国の経験から」『文化経済学』第1巻第
4号、1999年9月
が読みやすい。
3.諸社会科学からのアプローチ
様々な社会科学のアプローチからの文化政策研究をサーベイしたものとしては、
*河島伸子「文化政策研究の国際的動向について」『文化経済学』第1巻第3号、1999年3
月
が非常にバランスよくかつコンパクトにまとまっており、必須文献と言える。
文化政策についての経済学的なアプローチの柱は、公的支援の問題に収斂しており、そ
の根拠として公共財や経済波及効果の分析等がみられる。経済学的なアプローチで政策的
問題を論じた論文集としては、
*Hendon, William S. ,James L.Shanahan, and Alice J.MacDonald ed. Economic Policy for the Arts,
Abt Books, 1980.
*Peacock, Alan and Ilde Rizzo ed. Cultural Economics and Cultural Policies, Kluwer Academic
Publishers, 1994.
等が好著と言えよう。
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公的支援の問題についての経済学的なアプローチに絞ったサーベイとしては、下記の拙
稿も参照されたい。
*片山泰輔「芸術文化への公的支援と競争」日本経済政策学会編『日本の社会経済システ
ム』有斐閣、1995年
経済学的アプローチの中では、公的支援問題とともにかつての米国で流行した経済波及
効果の分析については、
*山田浩之・新井益洋・安田秀穂「文化支出の経済効果」
『文化経済学』第1巻第2号、1998
年10月
が産業連関表を使って分析した東京都における実証研究の結果をニューヨーク等の研究
結果と比較して論じており興味深い。
日本では数少ない社会学からのアプローチとしては
*川崎賢一「文化政策としてのCompartmentalization Strategy∼政策・市場・イエモト的集団
主義、同志的集団主義∼」
『文化経済学』第1巻第2号、1998年10月
が貴重な一石を投じている。
また、英米にはあまりみられないユニークなアプローチとして、ドイツにおける文化権
と比較しながら公法学的なアプローチで論じたものとしては、
*小林真理「文化法研究の視座∼『文化基本法』の原則∼」『文化経済学』第1巻第2号、
1998年10月
がある。
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