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ボツリヌス神経毒素
●総 説● ボツリヌス神経毒素-無毒成分複合体の 構造と機能 井上 薫 ・藤永由佳子 ・横田憲治 ・小熊恵二 ボ ツ リヌス菌は,産 生す る神経 毒素の 抗原性か らA∼G型 Database Center for Life Science Online Service 神経 毒素もそ の分子 量は約150Kで に分類 される。 いずれの型 の あ るが,培 養上 清中で は神経毒 素は無毒 成分と結合 し て大 きな分子 サイズ(分 子量300K,500K,900K)のprogenitor る。 これ らのprogenitor toxinを 形 成 して い toxinの 構造 を遺伝子の塩 基配列 と,精 製 したprogenitor toxin 蛋 白質か ら解 析 した。無毒 成分 には血球 凝集(HA)活 性 を示す もの と示 さな いものがあ る が,こ の血 球凝集 素は,経 口摂取され たprogenitor toxinが 小 腸よ り吸収される際 に重 要 であ るこ とが 判明 した。 Key-words は じめ に 【ボ ツ リヌ ス神 経 毒 素 】 【progenitor ボ ツ リヌ ス 毒 素 は,ク ロ ス トリジウム属 に 分 類 され る ボ ツ リヌ ス 菌(Clostridium て の研 究 を進 め て い る 。 本 稿 で は,こ botulinum)が まず 説 明 し,次 産 生 す る強 力 な 神 経 毒 素 で あ る 。 こ の 毒 素 は分 子 量 約 150Kの 蛋 白質 で,食 toxin)【 赤 血 球 凝 集(素)】 genitor れ まで の 報 告 を い で 最 近 筆 者 らが 得 た ボ ツ リ ヌ スpro- toxinの 構 造 と機 能 に つ い て 解 説 す る。 品 中 や菌 の培 養 上清 中で は無 毒 成 分 と結 合 して 複 合 体(progenitor toxin)を I. ボツ リヌス菌,ボ ツ リヌス中毒 形 成 して 存 在 して い る。 神 経 毒 素 は 末 梢 神 経 の 神 経-筋 接 合 部 に 作 用 し,神 経 伝 達 物 質 で あ る ア セ チ ル コ リ ン の 放 出 を 阻 害 す る こ とが 知 ら れ て い た 。1990年 ボ ツ リヌ ス 菌 は,グ 代 に入 っ て か ら 神 経 毒 素 の ア ミノ 酸 配 列 が 決 定 さ れ,こ の蛋 白質 が プ ラ ム 陽 性 ・偏 性 嫌 気 性 の 大 桿 菌 で あ り,芽 胞 を形 成 す る 。 芽 胞 は 海 ・湖 沼 底(水)や 土 壌 中 に 存 在 し て お り,こ ロ テ ア ー ゼ 活 性 を 有 し,シ ナ プ ス 小 胞 が シ ナ プ ス 前 膜 実 の び ん 詰 め や 缶 詰,ハ に 融 合 す る際 に必 要 な 蛋 白 質(SNAP-25,シ botulusと レ ビ ン,シ ナ プ トブ ン タ キ シ ン)を 分 解 す る こ と が 明 らか に さ れ て き た 。 毒 素 の 作 用 機 構 が 解 明 さ れ る一 方 で,実 に経 口 摂 取 さ れ るprogenitor toxinの 構 造,そ の詳 細 近 年,筆 者 ら は ボ ツ リヌ スprogenitor toxinの 無 毒 成 分 に着 目 し,そ の 遺 伝 子 お よ び 蛋 白 質 の 解 析 を 進 め 菌 は1897年,Van Inoue,Yukako [Department Structure of and Fujinaga,Kenji Bacteriology,Okayama Function of Clostridium Yokota,Keiji University botulinum Medical Progenitor テ ン語 で toxinを 産 生 す る 。 Ermengemに 例 よ り最 初 に 分 離 さ れ た が,そ よ りハ ム の 食 中 毒 の産生 す る神経 毒素 の 抗 原 性 の 違 い に よ りA∼G型 に 分 類 さ れ る。 こ れ まで に ヒ トに は お も にA,B,E,F型 菌 が 中 毒 を きた して い る。 て きた 。 さ ら に,現 在 筆 者 ら は無 毒 成 分 の 機 能 に つ い Kaoru ム や ソ ー セ ー ジ(ラ 菜 や果 名 の 語 源 で あ る)な どの 嫌 気 的 な 環 境 下 で 発 芽 ・増 殖 し,progenitor 際 な 吸 収 機 構 は ま だ 明 らか に さ れ て い な い 。 い い,菌 れ が 死 ん だ 動 物,野 食 品 中 で 増 殖 した 菌 が 産 生 したprogenitor Oguma,岡 山 大 学 医 学 部 細 菌 学 教 室 School,Shikata-cho,Okayama (〒700 toxinは 岡 山 市 鹿 田 町2-5-1) 700,Japan] Toxins 2049 24 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.13(1997) 経 口 摂 取 さ れ た あ と,胃 を通 過 し,小 腸 上 部 か ら吸 収 され,リ ンパ 液 中 で 神 経 毒 素 と無 毒 成 分 に解 離 す る。 そ の 後,神 経 毒 素 は胸 管 を 経 て 血 中 に 移 行 し,血 行 性 に 神 経-筋 接 合 部(end-plate)や 端 に 作 用 し,こ 自立神 経節 お よびそ の末 れ らの 部 位 で ア セ チ ル コ リ ンの 放 出 を 阻 害 す る と考 え ら れ て い る(図1のfood-borne botu- lism)a II. progenitor toxinの 構 造 と機 能 前 述 した よ う に ボ ツ リヌ ス 神 経 毒 素 は 食 品 や 培 養 上 Database Center for Life Science Online Service 清 中 で はprogenitor toxinと は19S毒 (500K),12S毒 素(300K)の3種 は3種 の毒 素,B,C,D型 E,F型 菌 は12S毒 図1 素 の み,G型 botulismと,乳 の ほ かwound 殖,毒 児 の 腸 管 内 で 起 こ るinfant botulismが botulismが あ る 。 こ 類 が あ り,A型 素 と12S毒 菌 は16S毒 菌 素, 素 の み を産 素 は神 経 毒 素 と血 球 凝 集(hemag性 を示 さ な い 無 毒 成 分(筆 者 ら は nontoxic-nonHAと 命 名 した)の 複 合 体 で あ り,19S毒 (HA)か 素 の 産 生 が 起 こ るfood-borne 素 glutination;HA)活 素 と16S毒 ボ ツ リ ヌ ス 中 毒 の 発 症 機 構 素(分 子 量900K),16S毒 菌 は16S毒 生 す る(図2)。12S毒 食 品 中 で 芽 胞 の 発 芽,増 し て 存 在 し て い る。pro- genitor toxinに 16S毒 素 は,12S毒 素 とHA活 性 を示す無 毒成 分 ら構 成 さ れ て い る1)。 し た が っ て,19S毒 素 はHA活 性 を 示 す が,12S毒 素と 素 は示 さな い。 あ る 。 Progenitor toxinはpH7.5 ∼8で 神 経 毒 素(7S)と 無毒 成 分 に解 離 す る た め,ア ルカ リ 条 件 下 で の 陰 イ オ ン交 換 ク ロ マ トグ ラ フ ィー に よ り神 経 毒 素 を単 離 す るこ とが で き る。 単 離 され た神 経 毒 素 に比 べ て progenitor pHや toxinは 胃液 の 消 化 管 の プ ロテ ア ー ゼ に 対 し て 強 い 抵 抗 力 を示 し,同 じ型 の 毒 素 で は分 子 量 の 大 き い ほ ど経 口 毒 性 が 高 い こ とが 知 ら れ て い る(19S>16S> 12S>7S)2,3)。 これ ら の こ とか ら,progenitor toxinの 無 毒 成 分 は 経 口摂 取 さ れ た 際 に 神 図2 培 養 上 清 中 のprogenitor 培 養 上 清 中 のprogenitor 経 毒 素 を 胃 液 や 腸 液 か ら保 護 toxinの 構 造 toxinは 神 経 毒 素(neurotoxin)と 無 毒 成 分 に は血 球 凝 集 活 性 を示 す も の(HA)と 無 毒 成 分 蛋 白質 との 結 合 物 で あ る 。 示 さな い も の(nontoxic-nonHA)が はサ ブ コ ン ポ ー ネ ン トか ら な る 。 各 成 分 の量 比 お よ び 結 合 部 位 に関 して は確 定 して い ない が(本 文 参 照),SDS-PAGEパ 2050 タ ー ンか ら考 察 さ れ た 各 毒 素 の 構 造 を模 式 的 に示 した 。 す る 役 割 を果 た して い る の で あ り,HA は な い か と考 え られ て い る 。 25 ボツリヌス神経毒素-無毒成分複合体の構造と機能 配 列 か ら,ど の 型 の 軽 鎖 に も ヒ ス チ ジ ン残 基 に 富 ん だ 亜 鉛 結 合 モ チ ー フ が 存 在 し,毒 素 は こ こ に1分 子 の 亜 鉛 を結 合 した メ タ ロエ ン ドペ プ チ ダ ー ゼ で あ る こ とが 明 ら か とな っ た5∼12)。 神 経毒 素が シナ プス前膜 か ら取 り込 まれ 作 用 す る ま で の 経 過 は以 下 の よ う に考 え られ て い る13,14)(図4)。(1)毒 素 は 特 異 的 レ セ プ タ ー に重 鎖 のC Database Center for Life Science Online Service 末 端 で 結 合 す る。(2)レ セ プ タ ー を 介 し た エ ン ドサ イ トー シ ス に よ り神 経 細 胞 内 に 取 り込 まれ,被 膜 小 胞(coated vesi- cle),エ ン ドソー ム,プ レ リソ ソー ム を形 成 す る。(3)酸 性 条 件 下 に な る と,毒 素 は レ セ プ タ ー と解 離 し,毒 素 の 重 鎖 の チ ャ ン ネ ル 形 成 ドメ イ ン に よ りエ ン ド ソー ム や プ レ リ ソ ソ ー ム の 膜 に孔 を形 成 し ,少 な 図3 く と も軽 鎖 は細 胞 質 内 に 移 行 神経 毒 素 の 構 造 (a)分 子 量 約150Kの よ り約50Kの 神 経 毒 素 は,自 分 の産 生 す る酵 素 あ る いは トリプシ ン処 理 に よ り,N末 部 分 に切 れ 目が 入 り,軽 鎖,重 鎖 の2本 端 鎖 構 造 とな る。この とき,毒 素 は 完 全 活 性 化 の状 態 で あ る 。さ らに 長 時 間 ト リプ シ ン 処 理 をす る か,他 の プ ロ テ ア ー ゼ処 理 を す る と,重 鎖 が 二 分 さ れ る 。重 鎖 のC末 端 側,N末 端 側 は,そ れ ぞ れ 結 合 ドメ イ ン,チ ャ ン ネ ル 形 成 ドメ イ ン で あ り,ま た 軽 鎖 は毒 性 ドメ イ ン と よ ばれ て い る 。(b)各 域 を ■ で,相 型 の 毒 素 間 で相 同 性 が 非 常 に高 い領 同 性 が 比 較 的 高 い 領 域 を □ で 示 す 。 軽 鎖 の 中央 部 分 の 相 同 性 が 非 常 に 高 い 領 域 に あ る亜 鉛 結 合 モ チ ー フ(HEXXH)に1分 子 のZn2+が 結 合 し,エ ン ドペ プチ ダ ー ゼ 活 性 を示 す 。 す る。(4)軽 鎖 は,シ ナプス小 胞 が シ ナプ ス前膜 へ ドッキ ン グ(docking)お (fusion)す よ び 融 合 る た め に必 要 な 蛋 白 質 群 で あ る シ ナ プ トブ レ ビ ン,シ ン タキ シ ン,SNAP-25 を 分 解 す る こ と に よ り神 経 伝 達 物 質 の放 出 を阻 害 す る。 III. 神経毒素の構造と機能 な お,最 近B型 毒 素 の レ セ プ タ ー と して,ガ オ シ ド と シ ナ プ トタ グ ミ ン(synaptotagmin)が 神 経 毒 素 は菌 体 内 で は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を少 な く と も1個 は もつ1本 の 後,プ (heavy chain)と あ る こ とが 報 告 さ れ て い る15)。 鎖 ポ リペ プ チ ド として 産 生 され る 。 そ ロ テ ア ー ゼ を産 生 し て い る菌 で は,特 位 に切 れ 目(ニ ング リ 重要 で ッ ク)が 約50Kの 入 り,分 子 量 約100Kの 軽 鎖(light 定 の部 IV. progenitor toxin遺 伝 子 の構 造 重鎖 chain)の2本 これ まで の 研 究 か らA,B,E,F型 菌 毒素遺 伝 子 は 鎖 ポ リペ プ チ ド とな る4)(図3)。 ニ ッ クが 入 る こ と に よ 菌 の 染 色 体 に,C,D型 り毒 素 活 性 は100倍 は プ ラ ス ミ ドに存 在 す る こ とが 明 らか に され て い る16)(表 ほ ど上 昇 す る。 遺 伝 子 解 析 に よ り決 定 さ れ た 神 経 毒 素 の 全 ア ミノ 酸 1)。 先 に筆 者 らはC型 菌 は フ ァー ジDNAに,G型 菌 菌 の フ ァー ジゲ ノ ムか らprogeni2051 26 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.13(1997) リー に結 合 す る モ チ ー フ と して 知 られ て い るArg-GlyAsp(RGD)配 列 を も っ て い る こ と が 明 らか と な り,腸 管 細 胞 へ の 接 着,吸 収 過程 へ の関与 が 考 え られた 。 現 在 ま で にA∼G型 菌 の 神 経 毒 素18∼29),A,C,D型 菌 のnontoxic-nonHAとHA,B,G型 nonHAとHAの 菌 のnontoxic- 一 部,E,F型 菌 のnontoxic-nonHA 遺 伝 子 の塩 基 配 列 が 決 定 され て い る17,30∼43)(表1)。A ∼G型 菌progenitor toxin遺 伝 子 の 構 成 を 図6に た 。A,B,D,E,F型 菌progenitor toxin遺 示 し 伝子 も C型 菌 と同 様 に ク ラ ス タ ー を形 成 して 存 在 して い る。 し か し,調 節 遺 伝 子 と考 え られ て い るorf-22(p-21)遺 Database Center for Life Science Online Service 伝 子 の位 置 は,A,B型 た 。Eお よびF型 菌 とC,D型 菌 で は異 な って い 菌 に はnontoxic-nonHA遺 伝 子 と神 経 毒 素遺 伝子 の みが 存在 してい た。最 近 の報 告 に よる と,G型 HA遺 菌 はA,B型 菌 と 同 様 にorf-22遺 伝 子 とnontoxic-nonHA遺 い るが,そ 伝 子 の 問 に位 置 して の 上 流 に はha-33遺 ha-70遺 伝 子 が 伝 子 で はな く,ha-17, 伝 子 が 存 在 し て い る(ha-33遺 伝子 の存 在 の 有 無 に つ い て は 不 明 で あ る)。 神 経 毒 素 の型 間 の相 同 性 図4 ボ ツ リ ヌ ス 神 経 毒 素 の 作 用 機 構(仮 ア セ チ ル コ リ ンの 放 出 は,ア 説) は ア ミノ 酸 レベ ル で32∼60%で あ る 。 これ に対 し て無 セ チ ル コ リン小 胞 が活 性 帯 に融 合 し エ キ ソ サ イ トー シ ス で な され る。 ボ ツ リヌ ス 毒 素 は この 部 分 に 作 毒 成 分 の相 同 性 は35∼100%で 用 す る 。 毒 素 は重 鎖 のC末 比 較 的 高 い 値 を示 した。 と くにA,B型 端 側 部 分 で レ セ プ ター に 結 合 し,レ セ プ タ ー を介 して 神 経 細 胞 内 に 取 り込 ま れ る。 次 いで,重 鎖 のN末 あ り,神 経 毒 素 間 よ りも 間,C,D型 間 の 無 毒 成 分 で そ れ ぞれ 高 い 相 同 性 が 認 め られた(図6)。 端 側 部 分 で エ ン ドソ ー ム ま た はプ レ リソ ソー ム の膜 に孔 を形 成 し, 細胞 質 に 移 行 し,軽 鎖 が 毒 作 用 を発 揮 す る と考 え ら れて い る 。 破 傷 風 毒 素 お よび ボ ツ リヌ スB,D,F,G型 毒 素の軽鎖 はシナプス 小胞 の 膜 に存 在 す る シ ナ プ トブ レ ビン を,ま た,ボ 型 毒 素 の軽 鎖 は,シ ナ プ ス 前 膜 に 存 在 す るSNAP-25を,C型 の 軽 鎖 はSNAP-25と た 。 こ の た め,シ V. progenitor toxinの 詳細 な分 子 構 成 ツ リヌスA,E 毒素 シ ン タキ シ ン の両 方 を切 断 す る こ とが 判 明 し ナ プ ス 小 胞 の 活 性 帯 へ の 融 合 が 阻 止 され,神 経 伝 達 物 質 放 出 の阻 害 が 起 こ る と考 え られ て い る。 1. progenitor 構 成,配 toxinの 精 製 列 が 決 定 さ れ た これ ら の 遺 伝 子 か ら発 現 し た 蛋 白 質 が どの よ うに会 合 してprogeniotor 成 し て い る の か を調 べ るた め に,progeniotor tor toxin遺 伝 子 の ク ロ ー ニ ング を行 な い そ の 全 塩 基 配 列 を決 定 し た17)。そ の 結 果,以 た(図5)。(1)C型 nonHA遺 下 の こ とが 明 らか にな っ 伝 子(cnt),HA遺 伝 子(cha)は cha-33,cha-17,cha-70の3つ クラ スタ 伝 子(cha)群 のORF(読 枠)よ り構 成 され て い る 。(3)chaはctxやcntと き に 転 写 さ れ る。(4)orf-22はHA遺 逆 方 向 のORFと 養 上 清 を60%飽 は 650M陽 菌(A-NIH株)の 培 ロ 除 いた の ち,SP-Toyopearl イ オ ン交 換 カ ラ ム に よ りク ロ マ トグ ラ フ ィー を 行 な った 。NaClの 濃 度 勾 配 に よ り溶 出 した5つ の 蛋 白 み取 り 質 の ピー ク の う ち後 半 の2つ は逆 向 が マ ウ ス に対 し て 致 死 活 性 を示 し た(図7)。 伝 子群 の 下流 に toxinの 和 の 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム で 分 画 し,プ タ ミ ン処 理 に よ りRNAを 神 経 毒 素 遺 伝 子(ctx),nontoxic- ー を 形 成 し て 存 在 し て い る。(2)HA遺 精 製 を 試 み た44)。 ボ ツ リヌ スA型 toxinを 形 の ピー クの フラ ク シ ョン 一 方,各 フ ラ ク シ ョ ン に つ い て ヒ ト赤 血 球 を 用 い て凝 集 活 性 を して 存 在 して い る。(5)cha-70の 塩基 配 列 か ら推 定 さ れ るア ミノ 酸 配 列 は,Clostridium per- HA活 性 が 認 め られ た 。 この結 果 か ら4番 目 の ピー クが エ ン テ ロ トキ シ ンの 細 胞 侵 入 性 に か か わ る HA活 性 を もつprogenitor fyingensの 部 分 と相 同 性 が あ る こ と,さ 2052 らに イ ン テ グ ウ ン フ ァ ミ 調 べ た 結 果,3番 素),5番 目 と4番 目の ピ ー ク がHA活 目の ピ ー ク の フ ラ ク シ ョンに toxin(16Sお よび19S毒 性 を もた な いprogenitor ボツリヌス神経毒素-無毒成分複合体の構造 と機能 ボ ツ リヌ ス神 経毒 素 お よ び無毒 成 分 の 構 造 遺伝 子 Database Center for Life Science Online Service 表1 27 a)ア ミノ 酸 残 基 数 は 、ORFの1番 b)分 子 量 はGENETYX-MAC(Software c)論 文 に 菌 株 名 の 記 載 が な か っ た た め、GenBankに toxin(12S毒 素)で 最 初 のMetか らス トッ プ コ ドンの 手 前 ま で の塩 基 数 か ら推 定 さ れ る ア ミ ノ酸 残 基 の数 を記 した 。 Co.,Ltd.,Tokyo,Japan)に よ り計 算 した 。 Development 記 載 され て あ っ た菌 株 名 を記 した 。 あ る こ とが 予 想 さ れ た た め,そ れ ぞ れ の画 分 をゲ ル濾 過 に よ り精 製 した 。 さ らに,5∼20% の シ ョ糖 密 度 勾 配 遠 心 を行 な い,16S毒 素 と19S毒 を分 離 し た。B,C,D型 菌 の 培 養 上 清 か ら も陽 イ オ ン 交 換 カ ラム ク ロ マ トグ ラ フ ィー とゲル 濾 過 に よ り16S毒 素 素 と12S毒 素 を精 製 した 。 2053 28 蛋白質 核酸 酵素 Vol.42 No.13(1997) 末 端 ア ミ ノ 酸 配 列 を 解 析 し, 遺 伝 子 配 列 か ら推 定 さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 と比 較 し た 結 果, 120Kの バ ン ド はnontoxic- nonHA,52K,35K,20 K,19K,15Kの HAの バ ン ドは サ ブ コ ンポ ー ネ ン トで あ る こ とが 判 明 した 。52Kと20 Kな 図5 ボ ツ リ ヌ スC型progenitor 最 上 段 にC型 22)遺 フ ァ ー ジ(c-st)の 伝 子 の 構 造 を,転 toxinの Database Center for Life Science Online Service 端 の 数 カ 所 とN末 訳 産 物(→)お 下 段 に 示 し た 。cha-70遺 端 か ら 約20Kの い し19Kの サ ブ コ ン ポー ネ ン トは,C型 伝 子 の 構 成 神 経 毒 素(CtX),nontoxic-nonHA(cnt),HA(cha),ORF-22(orf- 写 の 方 向(→),翻 各 コ ン ポ ー ネ ン ト(│-│)を な く と もN末 toxin遺 よ び プ ロ セ シ ン グ を 受 け たprogenitor 伝 子 が コ ー ドす る 蛋 白 質 は 翻 訳 後 少 部 分 で 切 断 さ れ てHA-53とHA-22∼23の2個 ha-70遺 菌 と同 様 に, 伝 子 が コー ドす る蛋 白 質 が 翻 訳 後 少 な くと もN末 端 の 数 カ 所 とN末 の サ ブ コ ン ポ ー ネ ン トと な る。 端 か ら約20 Kの 部 分 で 切 断 さ れ て生 成 す る こ と が 明 らか に な っ た(図 5)。 次 に各 コ ン ポ ー ネ ン トの SDS-PAGEに お け るバ ン ド強 度 を デ ン シ トメ ー タ に よ り測 定 し,モ ル 比 を 算 出 し た(表 2)。 この 結 果 は 測 定 に よ り数 値 の ば らっ き が み ら れ た が, HA-52,HA-19∼20,HA15は 神 経 毒 素 を1.0と 合,一 貫 して1.5以 35は3.6以 した 場 上,HA- 上 の 値 を 示 した 。 し た が っ て,1分 子 の神 経 毒 素 に 対 し て 少 な く と も2分 子 以 上 のHAの サ ブ コンポーネ ン トが 結 合 し,そ HA-35は 図6 progenitor ボ ツ リ ヌ スA∼G型 を■ で,無 toxinの 遺伝 子 構 造 を模 式 的 に 示 した。 神 経 毒 素 遺 伝 子(tx) 毒 成 分 遺 伝 子 で 現 在 まで に 塩 基 配 列 が 決 定 され て い る もの を ■ いない もの を□ 他 のHAサ で,決 定 さ れて で 示 し た。 最 下 段 に 全 型 間 で の ア ミ ノ酸 配 列 の 相 同 性 を示 し た。F(p)は proteolytic F型 菌 を示 す 。 最 近F型 菌 に も他 の 菌 と同 様 のp-21遺 伝 子 と他 の 菌 とは 異 な るp47遺 伝 子 が 存在 して いる こ とが 明 らか に な っ た32)。nt:nontoxic-nonHA遺 伝 子,ha:HA遺 伝 子 を示す。 て16S毒 素 を形成 してい る と 思 わ れ た。 こ れ に 対 し て nontoxic-nonHAは1分 神 経 毒 素 に対 し て1分 SDS-PAGEパ 16S毒 素 の 構 造 精 製 し たA型 PAGEパ 菌16S毒 素 の 還 元 条 件 下 のSDS- タ ー ンは93Kと58Kの 神 経 毒 素 の 重 鎖,軽 鎖 のバ ン ドの ほか に120K,52K,35K,20K,19K, 15Kの 2054 子の 子 が結 合 して い る と考 えて い る 。 B,C,D型 2. ブ コンポ ー ネ ン ト よ り も多 量 に 結 合 し toxin遺 伝 子 の 構 成 菌progenitor の なか で も バ ン ドを示 し た(図8)。 各 コ ン ポ ー ネ ン トのN て い た が,各 い た(図9)。 タ ー ン はA型 菌16S毒 菌16S毒 素 の 素 に よ く類 似 し コ ン ポ ー ネ ン トの分 子 量 は 多 少 異 な っ て 29 ボツ リヌス神経毒素-無毒成分複合体の構造と機能 S毒 素 は分 子 量 が900Kで る こ と,HA活 あ 性 を有 す る こ と以 外 は分 子 構 造 に 関 す る情 報 は得 られ てい なか った。 筆 者 らは 阪 口 らの 方 法 に 準 じて 19S毒 素 を 精 製 し,SDS- PAGEを 行 な った 。 精 製 され た19S毒 素 はす べて のバ ン ド を16S毒 素 と同 じ位 置 に 示 し,そ れ らのN末 配 列 も16S毒 た(図8)。 Database Center for Life Science Online Service 図7 A型 ボ ツ リ ヌ ス 菌 培 養 上 清 のSP-Toyopearl 650Mに よ る イ オ ン 交 換 ク ロ マ トグ ラ フ ィーの 溶 出 パ ター ン A型 ボ ツ リヌ ス菌 培 養 上 清 を硫 安 分 画 後,SP-Toyopearlに を 行 な っ た。 ○:280nmに お け る 吸 光 度,▲:HA活 よ る イ オ ン交 換 ク ロ マ トグ ラ フ ィー 性,---:NaCl濃 端 ア ミノ酸 素 と同 じで あ っ こ の結 果 か ら19S 毒 素 は16S毒 素 と同 じ コ ン ポ ー ネ ン トか ら構 成 さ れ て い る こ とが 明 ら か に な っ た 。 デ ン 度。 シ トメ トリ ー に よ る 解 析 の 結 果 か ら算 出 さ れ た モ ル 比 で は, 19S毒 素 のnontoxic- nonHA,HA-52,HA-19 ∼20 ,HA-15は16S毒 素の 各 コ ン ポ ー ネ ン トと ほ ぼ 同 じ 値 を示 した が,HA-35は16S 毒 素 の約2倍 の 値 を 示 した(表 2)。 したが って 筆 者 らは,19S 毒 素 は16S毒 り,HA分 素 の2量 体 で あ 子 内 に組 み 込 まれ て い な いHA-35が2個 の16S 毒 素 を架 橋 す る よ う な 形 で 存 在 して い る の で は な い か と考 え て い る(図2)。 4. 図8 精 製 19Sお し た ボ ツ リ ヌ スA型 よ び16S毒 菌19S,16S,12S毒 素 のnontoxic-nonHA,12S毒 素 のSDS-PAGEパ 素 の106K,13Kコ タ ー ン ン ポ ー ネ ン トのN末 端 ア ミノ 酸 配 列 を右 に 示 した 。 12S毒 素の 構造 精 製A型 菌12S毒 タ ー ン は神 経 毒 素 の2本 のバ ン ドの ほか に, 106Kと13Kの 3. 19S毒 素の 構造 19S毒 素 はA型 で あ り,Lamannaら 子 量 約900Kの た(図8)。 菌 の み が 産 生 す るprogenitor が 最 初 に 酸 沈 殿 と塩 析 を用 い て分 結 晶 毒 素 と して 得 た45)。 そ の 後,阪 らが カ ラ ム ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー,シ を用 い てA型 toxin 菌 か ら19S毒 口 ョ糖 密 度 勾 配 遠 心 素 を精 製 した46)。 しか し19 この2本 さ れ,13Kコ nonHAと 106Kコ 配 列 の145Phe以 素 のnontoxic- 端 ア ミ ノ 酸 配 列 を 示 し た 。 一 方, ン ポ ー ネ ン ト のN末 nontoxic-nonHAの バ ン ドを示 し の バ ン ドは 非 還 元 条 件 下 で も観 察 ン ポ ー ネ ン ト は16S毒 同 じN末 素 の SDS-PAGEパ 端 ア ミ ノ 酸 配 列 は, 塩 基 配 列 か ら推 定 さ れ るア ミノ酸 降 に 一 致 し た 。 こ の結 果 か ら,12S毒 2055 30 蛋白質 表2 A型 核酸 酵素 Vol.42 ボ ツ リ ヌ ス 菌19Sお No.13(1997) よ び16S毒 素 の各 コンポーネ ン トの モ ル 比 が,G型 菌 のnontoxic-nonHAは,2回 列 は 有 し て い る が,2回 (129∼141)で の く り返 し配 目 の く り返 し配 列 を含 む 部 分 の ア ミ ノ酸 の 相 同 性 が 低 い こ とが 確 認 さ れ た 。 した が っ て,(1)こ の く り返 し構 造 を もつ こ とに よ っ てnontoxic-nonHAが プ ロ テ ア ー ゼ に よ る切 断 を 受 け や す くな る,(2)く り返 し部 分 に切 断 が 起 こ る こ と に よ り,HAが12S毒 は12S毒 素 に 結 合 で き な くな る,あ 素 とHAと るい の 結 合 が 解 離 す る,と い う こ とが 推察 された 。 5. free-HA,free-HA-35 Database Center for Life Science Online Service SP-Toyopear1650Mに 素 の 無 毒 成 分 は,16S毒 末 端 か ら140残 フ ィー でNaClの 素 のnontoxic-nonHAがN 基付 近 の部 位 で切 断 を受 けた結 果生 じ よ るイ オ ン交 換 ク ロマ トグ ラ 濃 度 勾 配 に よ り溶 出 した2番 目 の ピ ー ク は,SDS-PAGEお よ びN末 目 と3番 端 ア ミノ 酸 配 た 産 物 で あ る こ とが 明 らか に な った 。 同 様 の 結 果 がB, 列 の 解 析 の 結 果 か ら他 の蛋 白質 と結 合 して い ないHAや C,D型 HA-35(free-HA,free-HA-35)で Kの 菌 の12S毒 素 で も得 られ て い る36)。13Kと106 コ ン ポ ー ネ ン トは どち ら も12S毒 素 と して 会 合 し た(図11)。SP-Toyopearl て お り,こ れ らの コ ン ポ ー ネ ン ト と神 経 毒 素 は 互 い に 示 した よ う にfree-HAはHA活 非 共 有 結 合 で 結 び つ い て い る と考 え られ た 。 HA-35は nontoxic-nonHAが 切 断 を 受 け るN末 基 付 近 の ア ミノ酸 配 列 をA∼G型 端 か ら140残 で比 較 した と ころ,興 清 中 に もfree-HAとfree-HA-33が く り返 さ れ て い た(図10)。A,B,C,D型 菌12S毒 素 のnontoxic-nonHAの 量 はA,B型 切 断 は2回 菌 の培養 上 存 在 す る こ とが 確 認 さ れ た(筆 者 ら:投 稿 準 備 中)。D型 も わ ず か にfree-HA-33の 基 と135∼148残 基 で2回 性 を 示 した が,free- 活 性 を 示 さ な か った 。free-HA-35はHAの 性 を獲 得 す る の か も し れ な い 。 最 近,B型 基 の ア ミノ 酸 か らな る配 列 が,97∼110残 溶 出 パ タ ー ンで も 他 の サ ブ コ ン ポ ー ネ ン トと結 合 す る こ とに よ ってHA活 味 深 い配 列 が 観 察 され た 。す なわ ちL-L/N-S-L-I/MS/T-T/S-A/T-I-P-F-P/L-Y/F-G/Aの14残 あ る こ とが 判 明 し 650Mの 菌 の培 養上 清 中 に 存 在 が 認 め られ た が,そ の 菌 と比 較 す る とか な り微 量 で あ っ た 。 目 の くり 返 し配 列 の 内 部 で 認 め られ た 。 E,F型 菌 のnontoxic- nonHAは この2回 目の くり返 し配 列 を もた ず,こ の付近 の 配 列 が 欠 失 し て い た 。 他 方, E型 菌 か ら精 製 した12S毒 素 のnontoxic-nonHAのN末 端 ア ミノ酸 配 列47)は 遺 伝 子 の 配 列 か ら推 定 され るN末 端の ア ミノ酸 配 列37)と 同 一 で あ っ た た め,こ の切 断 を受 け て い な い こ とが 推 察 され た 。 また, 最 近16S毒 な い(12S毒 G型 素 の み しか 産 生 し 素 を産 生 し な い) 菌 のnontoxic-nonHA の ア ミノ 酸 配 列 が 発 表 さ れ た 2056 図9 精 製 し たA,B,C,D型16S毒 A型 菌(NIH株),B型 た16S毒 た め,1本 菌(Okra株),C型 素 をSDS-PAGEに 素 のSDS-PAGEパ 菌(Stockholm株),D型 か け た 。B型 菌 の16S毒 鎖 ポ リペ プ チ ドの ま まのwholeの ター ン 菌(CB-16株)か ら精 製 し 素 の 神 経 毒 素 は ニ ッ キ ン グが 完 全 で は ない 神 経 毒 素 の バ ン ドが 観 察 され る。 ボツ リヌス神経毒素-無毒成分複合体の構 造と機能 31 の 血 球 凝 集 活 性 はN-ア セチ ル ノ イ ラ ミ ン酸 に よ っ て 阻 害 され た。 こ れ ら の こ と か ら,ボ ヌ ス19Sお よ び16S毒 ツリ 素 は赤 血 球 表 面 の 糖(鎖)を 認識 し て 凝 集 活 性 を生 じ て い る こ と が推 察 され た 。 そ の性 質 はA, B型 問,C,D型 間でそれぞ れ 類 似 し て い た が,A型 とB 型 で は 多 少 認 識 し て い る糖 (鎖)が 異 な っ て い る と思 わ れ Database Center for Life Science Online Service た。 図10 A30),B32),C34),D36),E37),F38),G39)型 菌nontoxic-nonHAのN末 端 部 分 の ア ミノ酸 配 列 の 比較 と切 断 部位 A∼G型 で,6種 つ い で,ボ よび16S毒 以 上 の 型 間 で 相 同性 が 認 め られ た ア ミノ酸 を 太 字 で示 した。E,F型 め ら れ た 部 分 につ い て は,4種 で欠 損 が 認 以 上 の 型 で相 同性 が認 め られ た ア ミノ酸 を太 字 で 示 した。 く り返 し構 造 は 下 線 で 示 し た。A∼D型 菌 のnontoxic-nonHAの 切 断 部 位 を ▼ で 示 し て い る。 ツ リヌ ス19Sお 素 は,赤 血 球 表 面 の どの よ う な糖(鎖)を 認識 して 赤 血 球 を凝 集 させ る の か を 解 析 し た 。 赤 血 球 か ら糖 脂 質 を抽 出 し,展 開 した 薄 層 プ レー ト上 で19Sお VI. progenitor toxinの 性 状--A,B,C,D型 精 製 した16Sお よ び19S毒 素 のHA活 前 述 し た よ う に,19Sお 菌か ら 毒 素 と の結 合 を調 べ た(図12)。 よび16S そ の 結 果,A,B型 菌 性 の性 質 よ び16S毒 素 は赤 血 球 凝 集 能 を 示 す こ とが 古 くか ら知 られ て いた 。 筆 者 らはA,B, C,D型 HA活 菌 か ら16Sお よ び19S毒 素 を精 製 し,そ れ らの 性 の 性 質 を調 べ た とこ ろ,以 下 の よ うな 結 果 が 得 られ た(筆 者 ら:投 稿 準 備 中)。 A型19S,16S毒 素,Cお よ びD型16S毒 素はヒト 赤 血 球 に対 し て 凝 集 活 性 を 示 し た が,B型16S毒 素 は 活 性 を 示 さ な か っ た 。 ノ イ ラ ミニ ダ ー ゼ 処 理 に よ っ て 赤 血 球 表 面 の シ アル 酸 を除 いた 血 球 を用 いた場 合,Cお よ びD型16S毒 お よ び16S毒 素 の 凝 集 活 性 は減 少 した が,A型19S 素 の凝 集 活 性 は ノ イ ラ ミニ ダ ー ゼ 処 理 に よ る影 響 を 受 け な か っ た 。 ま た,B型16S毒 素 は ノイ ラ ミニ ダ ー ゼ 処 理 し た 赤 血 球 に 対 し て の み凝 集 活 性 を 示 し た 。 他 方,い toxinに くつ か の 糖 の 共 存 下 でprogenitor よ る 凝 集 を調 べ た とこ ろ,A,B型19Sお 16S毒 素 の 凝 集 活 性 はD-ガ ラ ク トー ス(Gal),N-ア チ ル-D-ガ ラ ク トサ ミン(GalNAc),D-フ ラ ク トー ス(Lac)に セ コー ス(Fuc), よ り阻 害 さ れ た 。 阻 害 の 強 さ はA 型 でLac>Gal,GalNAc>Fuc,B型 Fuc>GalNAcの よび 順 で あ っ た 。Cお でLac,Gal> よびD型16S毒 図11 素 19S毒 精 製 し た ボ ツ リ ヌ スA型 菌 神 経 毒 素,12S毒 素,free-HA,free-HA-35のSDS-PAGEパ 素, ター ン 2057 Database Center for Life Science Online Service 32 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.13(1997) 図13 図12 血 球 か ら抽 出 し た 糖 脂 質 へ のprogenitor 中 性 糖 脂 質 画 分(N),モ 画 分(D),ポ ノ シ ア ロ 糖脂 質 画(M),ジ リシ ア ロ糖 脂 質 画 分(P)を グ ラ フ ィ ー で展 開 し,A(19S毒 (16S毒 素)型progenitor toxinの 結 合 シア ロ糖 脂 質 それぞれ薄層 クロマ ト 素 と16S毒 素 の 混 合 物),B,C,D ス タ ン ダ ー ド糖 脂 質 に 対 す るC型 お よ びD型16S毒 素 の結 合 SPG(シ ア ロ シ ル パ ラ グ ロ ボ シ ド),各 種 ガ ン グ リオ シ ドを薄 層 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー で 展 開 し,C型 お よ びD型16S毒 素 との 結 合 を 調べた。 toxinと の 結 合 を 調 べ た 。 を ノ イ ラ ミニ ダー ゼ 処 理 した場 合 に は,16S毒 の19Sお C,D型 よ び16S毒 菌 の16S毒 素 は赤 血 球 の 中 性 糖 脂 質 画 分 に, 素 は お も に赤 血 球 の 酸 性 糖 脂 質 画 は観 察 され な か っ た 。(3)16S毒 素の付着 素(1×105MLD)を 管 内 に投 与 し経 過 を 観 察 し た と こ ろ,モ 腸 ル モ ッ トは 約 分 に結 合 す る こ とが 明 ら か に な っ た 。 種 々 の ス タ ン ダ 6時 間 後 か らボ ツ リ ヌ ス 中 毒 特 有 の 症 状 を呈 した 。8時 ー ド糖 脂 質 を 用 い て 同 様 の 実 験 を行 な っ た と こ ろ ,C, 間 後 に血 液 を採 取 し て,マ D型 菌 の16S毒 べ た 結 果,血 素 は ガ ン グ リオ シ ド,シ ア ロ シ ルパ ラ ウ ス に対 す る 致 死 活 性 を 調 清 中 に約200MLD/mlの 毒 素 活性が検 出 グ ロ ボ シ ドな どの シア ル 酸 を含 む糖 脂 質 と結 合 し た が, さ れ た 。 しか し,12Sあ グ ロ ボ シ ドや ラ ク ト シル セ ラ ミ ドな どの 中 性 糖 脂 質 に は,8時 は結 合 しなか った(図13)。A,B型 素 活 性 も検 出 す る こ どが で き な か っ た 。 菌 の19Sお よび16S 毒 素 が ど の よ うな 糖 脂 質 と結 合 す る の か を 現 在 解 析 中 で あ る。 る い は7S毒 素 を 投 与 した 場 合 間 後 で も症 状 は ま った くみ られ ず,血 これ らの 結 果 か らC型16S毒 清 中の毒 素 は,分 子 内 のHA成 分 に よ り,小 腸 上 部 の 微 絨 毛 に シ ア ル 酸 を 介 して 付 着 前 述 し た よ う に ボ ツ リヌ スprogenitor toxinは 分 子 し,こ のHA成 分 を 利 用 す る こ と に よ り,神 経 毒 素 が 量 が 大 き い ほ ど強 い 経 口 毒 性 を示 す こ と が 知 られ て い 血 中 に 取 り込 ま れ や す くな っ て い る こ とが 明 らか に な る。 そ こで,progenitor った 。 toxin無 毒成 分 の役割 を明 ら か に す る た め に,モ ル モ ッ トを用 い て,C型 genitor 菌 各 種pro- toxinを 結 紮 した 腸 管 各 部 に 注 入 し た場 合 と, 固 定 し た 消 化 管 各 部 に添 加 した 場 合 の 毒 素 の 結 合 を調 おわ りに べ た 。 さ ら に モ ル モ ッ トを 開 腹 し,毒 素 を 小 腸 内 に 注 リヌス神 経毒 素 が神 経終 末 に存在 す るシナ プス小 胞 の 入,縫 ドッキ ング-融合 に関与 す る蛋 白質群 を特 異的 に分解 す 合 後,8時 間 目 に 採 取 した 血 清 中 の 毒 素 活 性 を 強 力 な神 経伝 達物 質放 出 阻害 を起 こす ボツ マ ウ ス を 用 いた バ イ オ ア ッセ イ に て測 定 した と ころ,以 るプ ロテ アーゼ で あ る ことが明 らか にな り,そ れ と同 下 の 結 果 が 得 られ た48)。(1)C型16S毒 時 に毒素 プロ テア ーゼ の基質 蛋 白質 の機 能 の解析 も進 微 絨 毛 に 結 合 し た が,胃 素 は小 腸 上 部 の お よび大腸 の上 皮細 胞膜 には 展 して い る。 素 に は付 着 活 その 一方 で,神 経 毒素 と結 合 してい る無毒 成分 の生 性 は ま っ た くみ られ な か っ た 。(2)小 腸 上 部 の 組 織 切 片 体 内で の作 用が,最 近 の筆者 らの研 究 に よ り,少 しず 付 着 しなか っ た 。 一 方,12Sお 2058 よ び7S毒 ボツ リヌス神経毒素-無毒成分複合体の構造と機能 つ 明 らか に な っ て き て い る 。 しか し,赤 血 球 と小 腸 上 皮 細 胞 上 に 存 在 す る レ セ プ タ ー の 同 定,ま た 巨大 な 毒 素 蛋 白 質 複 合 体 で あ るprogenitor 消化 管 に結 toxinが 合 し た あ と ど の よ う に 吸 収 さ れ て い くの か?と い った 点 な ど は ま だ 未 解 決 で あ り,今 後 も こ れ ら の こ と を 中 心 に研 究 を 進 め る 予 定 で あ る。 筆者 らの研究 の一部 は北海道立衛 生研究所食 品微生物 科,東 京 農業 大学生物 産業 学部生物化 学教室,札 幌 医科大 学微 生物 学講 座 の方々お よび神戸市 看護大 学基礎 医学系 渡辺定 博博 士,大 阪 府立母 子保 健総合 医療 セ ンター 本 家孝一博 士 との共同実験 で あ る。 Database Center for Life Science Online Service 文 1) 献 Sakaguchi,G.,Kozaki,S.,Ohishi,I.:in Protein Bacterial Toxins(ed.Alouf,J.E.,Fehrenbach,F. 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