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今般、国内で発生したデング熱流行と 媒介蚊対策について
資料1-3 今般、国内で発生したデング熱流行と 媒介蚊対策について 澤邉 京子 国立感染症研究所 昆虫医科学部 1 デング熱媒介蚊の特徴とヒトスジシマカによるデング熱の流行 特 徴 ヒトスジシマカ ネッタイシマカ 熱帯~温帯地域 熱帯~亜熱帯 活動場所 野外で活動 屋内で活動 吸血嗜好 日和見的 ヒト嗜好性が強い 小規模 大規模 生息地 デング熱の流行 卵で休眠越冬 越冬休眠はしない (成虫は死滅する) (成虫は死滅する) 冬季に対する適応 寿命 成虫で平均約1カ月 デングウイルスの蚊体内での増殖 同程度に増殖する ヒトスジシマカによる デング熱の流行 ヒトスジシマカ ネッタイシマカ 近年侵入して定着 常在しない 近年侵入して定着 常在しない 常在する 生息しないが 南部には常在する シンガポール・フィリピン・中国など 常在する 常在する 日 本(東京) 常在する 常在しない 米 国(ハワイ州) 年(人) 2002 (82) 仏 国(ニース) 2010 (2) (エクスアンプロヴァンス) 2013 (1) 台 湾(台北市) (新北市) ヒトスジシマカ 2014 (37) 2014 (29) 2014 (153) Native Introduction ネッタイシマカ 2 国内におけるデング熱媒介蚊対策フローチャート *「デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き」から改変 媒介蚊対策の対象エリアの決定と調査・対策 チームの編成(所管部局・保健所) 成虫対策 幼虫対策 家屋、建物周辺における調査 幼虫採集と幼虫発生容器の記録 幼虫発生源の処分 捕虫網を用いた採集 種類の同定 種類と採集数の記録 重要な幼虫発生源の特定 調査は半日程度で 終了させる 幼虫発生源および成虫密度の地図上への記録と図化 結果報告(所管部局) ・防除計画の立案(所管部局、保健所、PCO協会 ほか) ・作業予定の公表および住民への協力要請と注意事項の発信 ・防除作業 → PCO協会への委託 ・デング熱に関する啓発 ・個人所有地での幼虫対策の協力要請 3 •平成25年度厚生労働科学研究費補助金(高崎班)の 研究事業の一環として作成、厚生労働省により8/27 に(案)、9/12に第1版がそれぞれ公表された 防除対策の実施と発生状況の監視 (10月下旬まで継続する) 成虫 幼虫 3 媒介蚊対策に関する国と自治体との協力 (1) 4月末:「デング熱国内感染事例発生 時の対応・対策の手引き」地方自 治体向け(案)を作成 西宮市 公園 4/21:東京都とガイドライン(案) の内容の議論、机上訓練の検討 8/27・28:西宮市で媒介蚊対策に 関する実地演習を実施 住宅街A 住宅街B 西宮市における蚊の発生状況評価 公園 住宅街A 半径50m 住宅街B 調査で想定している 最少エリア 半径50mの円 幼虫発生源 成虫密度(平均以下) 成虫密度(平均×2) 成虫密度(平均×3 ) 成虫密度(平均×4 ) 成虫密度(平均×5) 防除対象とする範囲 や起点は、調査地の 環境によって変える 4 必要がある ! 4 媒介蚊対策に関する国と自治体との協力 (2) 8/27:デング熱国内感染1例目の報道 実施日 ** 殺虫剤散布と薬剤の手配は各自治体が行った 防除対策に協力した場所 環 境 8/28,9/4 代々木公園(東京都) 公園 施設 9/4~6,8 国立オリンピック記念青少年総合 緑地 センター(渋谷区) 施設 9/5,8 新宿中央公園(新宿区) 公園 9/5,6,8 明治神宮(渋谷区) 緑地 施設 9/9,10 外堀公園*(千代田区) 緑地 施設 9/7 明治神宮外苑(新宿区) 緑地 施設 9/9,10 千葉市稲毛区施設周辺 公園 施設 神社 寺 学校 民家 9/12,13 台東区民家周辺 公園 倉庫 神社 寺 学校 民家 9/13,14 渋谷区民家周辺 廃屋 神社 寺 学校 民家 神社 神社 * 9/9都内19区および新宿御苑の担当者53名に対して外堀公園において8分間捕集法の指導を行った。 その他に、新宿御苑・上野公園・墨田公園(公園) 、文京区・江東区(民家周辺)、福岡県・福井県 5 (不明)に対しても媒介蚊対策に関する助言を行った。 5 媒介蚊対策において助言した内容 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 殺虫剤散布前に成虫密度調査を行う:8分間捕集法 成虫密度により蚊に刺されるリスクを評価する 殺虫剤処理範囲・方法を決定する 殺虫剤処理後の成虫密度調査を行う:8分間捕集法 薬剤散布の効果判定を行う 次の対策を検討する 幼虫対策を行う 注意点 1. CDCトラップによる捕集数は8分間捕集法に比べて劣り、 調査結果が出るまでに時間がかかる 2. 殺虫剤散布に際しては、ウイルス陽性地域を優先するので なく、成虫密度の高い場所を優先する(多くの場合は一致 している) 3. 地形や植生等によって柔軟に散布方法を変える 6 6 <媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例1> 都内公園における対策 9 1 86 A 8 10 16 9 殺虫剤の 散布を助言 8分間捕集法による 蚊の成虫密度調査 19 C 13 殺虫剤処理前: 444雌(平均14.3) 2 3.5 0 3 9 8 6 6 0 8/28 殺虫剤散布域のヒトスジシマカ 成虫の密度 散布前の密度:35雌(平均2.9) 散布後の密度:48雌(平均6.0) 6 0.5 39 3 2 B 20 3 2 4.5 D 0 5 25 数字は一人8分当たりの雌数 7 <媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例2> 都内共同利用施設における対策 殺虫剤の散布を助言 8分間捕集法による蚊の成虫密度調査 殺虫剤処理前:79雌/14地点(平均5.6) 処理後:すべて0 非常に効果的な媒介蚊対策 8 が行われた! 8 <媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例3> 都内住宅地における対応 寺 小学校 公園 調査・防除に関する制約: 患者が刺されたとされる場所 が特定されることがないこと を強く希望された。 → 調査範囲を広く設定し、 場所の特定を困難にした。 調査範囲:半径100 mの円で 半径100m 150m 殺虫剤の 散布を助言 は狭すぎて場所が特定される 恐れがあったため、調査時に 対象とする範囲を変更した。 → 学校と公園は調査に含める べきであるため、半径150 m の円が含まれる街区を対象と 8分間捕集法による蚊の成虫密度調査 殺虫剤処理前:185雌/13地点(平均14.2) 処理後:11雌(平均0.8) し、その中で調査の許可が取 れた場所の成虫密度を調査し 9 た。駆除に関する了解は事前 に取ることができた。 本州~九州の場合 来季に向けた蚊対策スケジュール(具体案) 成虫対策:定点調査( CDCトラップ) による成虫密度モニタリングを継続 幼虫対策:幼虫発生源の除去と清掃 11 月 成虫対策:樹木の剪定 幼虫対策: ・水の入った雨水マスの調査 ・放置された人工容器の除去と清掃 ・ゴミ置き場等の清掃 南西諸島 (年平均気温12℃以上の地域) 成虫対策:定点調査( CDC トラップ)による成虫密度 のモニタリングは周年実施する * ネッタイシマカの侵入にも注意する 幼虫対策:幼虫発生源の除去と清掃 成 虫 捕 集 法 4 月 幼虫対策: ・幼虫の発生した雨水マスへはIGRを投与、 水抜き等を実施 ・幼虫発生源の除去と清掃 CDCトラップ 8分間捕集法 5 月 成虫対策:定点調査( CDCトラップによる 成虫密度のモニタリングを開始 7~8 月 成虫対策:下草刈り 幼虫対策:自治体主導、住民参加による 幼虫発生源の除去と清掃 ・ 8分間捕集法による成虫密度調査を実施 ・リスク評価→適切な媒介蚊対策を実施する 幼 虫 発 生 源 10 10 媒介蚊対策のまとめと今後の課題 1. 約70年ぶりのデング熱国内発生事例に対して、媒介蚊対策 にあたる関係者の知識と技術が十分ではなかった 2. 調査・対策を行う上での情報共有の徹底が必要である 3. 適切に媒介蚊対策を施せば、成虫密度は下がることを確認した 感染症媒介昆虫類に対する知識と理解を深める → 各自治体に知識(と経験)のある人材を配置する → 対策担当者への啓発と教育が必要 → 媒介蚊に関する講習・研修の機会を増やす → 住民への情報発信に努め、蚊媒介性感染症に対する 理解を深める 11