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毛虫に刺さ

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毛虫に刺さ
厚生科学審議会感染症部会
蚊媒介性感染症に関する小委員会の設置について
平成26年10月8日
厚生科学審議会感染症部会決定
1
設置の趣旨
国際的な人の移動の活発化に伴い、国内での感染があまり見られない
感染症について、国外から持ち込まれる症例が増加している。デング熱
についても、これまで、国外で感染した患者の国内での発症が一定数報
告されている。今般、デング熱に国内で感染した症例について、1940 年
代に報告されて以来、数十年ぶりに報告された。
デング熱のほか、蚊の媒介する感染症としては、ウエストナイル熱、
チクングニア熱、マラリア、日本脳炎などがある。デング熱やチクング
ニア熱については、今後とも、国外で感染した者が国内で蚊に刺される
ことにより、国内で感染が拡大するおそれがある。これらの蚊の媒介す
る感染症については、蚊への対策を講じることにより、その発生を予防
するとともに、そのまん延を防止することが重要である。
このため、蚊が媒介する感染症の発生の予防及びまん延の防止に向け
た今後の対策を検討するため、厚生科学審議会感染症部会運営細則(平
成 25 年 4 月 24 日厚生科学審議会感染症部会長決定)第1条に基づき、
厚生科学審議会感染症部会の下に「蚊媒介性感染症に関する小委員会」
を設置する。
2 委員
・ 委員会の委員長(以下「委員長」という。)は、厚生科学審議会感染
症部会運営細則第3条に基づき、厚生科学審議会感染症部会長の指名す
る者とする。
3 委員会
・ 委員会の運営は、厚生科学審議会令(平成 12 年政令第 283 号)
、厚生
科学審議会運営規程(平成 13 年 1 月 19 日厚生科学審議会決定)及び厚
生科学審議会感染症部会運営細則に定めるところによるほか、この決定
の定めるところによる。
・ 委員会の庶務は、厚生労働省健康局結核感染症課が行う。
資料1-1
デング熱国内感染事例
疫学情報
国立感染症研究所
感染症疫学センター
1
目次
1. デング熱とは?
2. ドイツ人デング熱症例の探知と「デング熱国
内感染事例発生時の対応・対策の手引き」
の作成
3. デング熱国内感染症例の疫学情報
4. まとめと課題
2
1. デング熱とは?
3
病型分類
• デングウイルスによる蚊媒介性
急性熱性疾患
• 4類感染症
デングウイルス感染症
50〜80%
症候性
無症候性
デング熱
デング出血熱
(WHOガイドライン1997)
重篤な出血
重症臓器障害
デングショック
症候群
非ショック
重症デング
(WHOガイドライン2009)
4
典型的なデング熱症例の経過
3
病日
5
7
9
11
13
15
40
体温 (℃) 39
38
37
36
減少
白血球数 (/ml)
血小板数(x103/ml)
ヘマトクリット (%)
減少
正常
IgM
ウイルス血症
5
2. ドイツ人デング熱症例の探知と
「デング熱国内感染事例発生時の
対応・対策の手引き」の作成
6
日本での感染が疑われたドイツ人デング熱症例
2013年9月発生、2014年1月報告
51歳女性、生来健康
日
本
国
内
旅
行
*
day-15
8/19
day-15~-13
8/19~21
上田(長野)
day-13~-10
8/21~24
笛吹(山梨)
day-10~-9
8/24~25
広島
day-9~-6
8/25~28
京都
day-6~-3
8/28~31
東京
day-3
8/31
成田発(フランクフルトへの直行便)
9/3
発熱(最高体温40℃)・嘔気→紅斑丘疹性発疹を伴う
9/9
ベルリンの医療機関に入院
IgG (IFA): 1:20,480 (陽性),IgM (IFA): 1:320 (陽性)
NS1 抗原(ELISA): 陽性, RT-PCR: 陰性
中和試験:デングウイルス2型の感染
発 day 0
症 day 6
後
経
過
成田着(フランクフルトからの直行便)
Eurosurveillance 論文における結論: 症例の行動歴や潜伏期(3–14 日)を
考えると、笛吹でのブドウ狩り中に感染した(複数回蚊に刺されたという本人
の訴えあり)可能性が最も高いが成田空港やその他の場所での感染も否定
できない。
7
Eurosurveillance, Volume 19, Issue 3, 23 January 2014 (*旅程情報はProMedより)
「デング熱国内感染事例発生時の
対応・対策の手引き」:疫学調査のポイント
• 推定感染地の絞り込み
– 潜伏期内(発症前3~7日)の症例の屋外活動歴
– 症例の屋外活動の同行者や同居家族の発症の
有無
– 探知された他の症例の行動歴との照合
• 感染拡大リスクの評価
– 推定感染場所(絞り込めた場合)の状況確認:
媒介蚊の密度等
– ウイルス血症時期(発症前1日~後5日目)の症
例の行動歴・蚊の刺咬歴
平成25年度 高崎班
(厚生労働科学研究:我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立に関する研究)
8
デング熱国内発生の想定例
症例Aの推定感染地
(地点X)
ウイルス
(-)の蚊
a
ウイルス
(+)の蚊
感染性を有する
期間(蚊)
a
感染性を獲得する
までの期間(蚊)
症例Aに由来する感染拡大の可能
性がある地域(地点Y)
時間経過
ウイルス
(-)の蚊
ウイルス
(+)の蚊
b
b
a
感染性を有する
期間(蚊)
b
蚊の
刺咬
蚊の
刺咬
ウイルス
X X 血症期(ヒト)X X
ヘ ヘ
地点Xでの
0
屋外活動 ヘ ヘ
X X
~
O
0
A
B
ヘ ヘ
0
C
輸入例
ヘ ヘ
0
潜伏期(ヒト)
D
健常なヒト
X X
~
X~X
~
XX XX
~
~
X~X
~
A
A
初発例
ヘ ヘ
0
E
潜伏期
(ヒト)
?
ヘ ヘ
0
G
?
経過観察中
のヒト
ヘ ヘ
0
F
?
D
ウイルス
血症期のヒト
地点Xの例)代々木公園
地点Yの例)症例の立ち寄り先
平成25年度 高崎班
(厚生労働科学研究:我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立に関する研究)
9
3. デング熱国内感染症例の
疫学情報
(2014年10月6日11時現在)
10
発症日別報告数
(発症日不明の4例を除く151例)
報告数
12
代々木公園8/28午後5時
-8/29朝閉鎖
代々木公園またはその周辺のみ
n=122
10
9/4~代々木公園
A地区閉鎖
厚労省第1報
発表(8/27)
新宿中央公園のみ n=8
8
6
その他・不明 n=21
4
2
0
1日 3日 5日 7日 9日 11日13日15日17日19日21日23日25日27日29日31日 2日 4日 6日 8日 10日12日14日16日18日20日22日24日26日28日30日
8月
9月
発症日
11
【厚生労働省発表(2014年10月6日11時現在)に基づく。】
その他の疫学情報(n=155)
居住地
年齢群及び性別
年齢階級
男性
女性
計
10歳未満
4
1
5
10代
14
16
30
都道府県名
症例数
東京都
102
14
12
7
3
3
2
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
155
埼玉県
神奈川県
千葉県
新潟県
20代
27
26
53
大阪府
茨城県
30代
11
7
18
40代
12
11
23
静岡県
50代
11
2
13
青森県
60代
8
0
8
秋田県
山梨県
北海道
岩手県
群馬県
70代
4
1
5
計
91
64
155
山口県
愛媛県
高知県
計
12
【厚生労働省発表(2014年10月6日11時現在)に基づく。】
推定曝露日別報告数
(2014年8月1日-9月30日)
代々木公園または周辺のみ
(n=70〈122例中、曝露日が1日だけの症例のみ〉)
7
6
9/4代々木公園
A地区閉鎖
5
報 4
告
数 3
2
1
0
1日 3日 5日 7日 9日 11日13日15日17日19日21日23日25日27日29日31日 2日 4日 6日 8日 10日12日14日16日18日20日22日24日26日28日30日
新宿中央公園のみ(n=5 〈同8例中〉 )
推定曝露日
4
3
報
告 2
数
1
0
1日 3日 5日 7日 9日 11日 13日 15日 17日 19日 21日 23日 25日 27日 29日 31日 2日 4日 6日 8日 10日 12日 14日 16日 18日 20日 22日 24日 26日 28日 30日
推定曝露日
13
計75例のうち、発症日のわかる72症例から算出した潜伏期:中央値6日(範囲2-13日)
【厚生労働省発表(2014年10月6日11時現在)に基づく。】
臨床症状*のまとめ
(複数回答あり。n=149)
*届出票の項目
2日以上続く発熱
重複ないように
集計。
あわせて100%
上記以外の発熱
頭痛
発疹
全身の筋肉痛と骨関節痛
重複ないよう
に集計。
あわせて64%
全身の筋肉痛のみ
骨関節痛のみ
TOURNIQUETテスト陽性
腹水
胸水
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
感染症発生動向調査より2014年10月1日現在
14
検査所見*のまとめ
(複数回答あり。n=149)
10万/mm3以下の血小板減少
*届出票の項目
重複ないよう
に集計。
あわせて79%
上記以外の血小板減少
白血球減少
ヘマトクリットの上昇
血清蛋白の低下
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
デング出血熱(届出基準:2~7日持続する発熱、血管透過性の亢進、10万/mm3以下の血小板減少、出血傾向の4つ全
てを満たす症例)が1例報告されたが、WHOガイドライン(2009年)による「重症デング」ではない。
感染症発生動向調査より2014年10月1日現在
15
参考)感染地別診断週別報告数
(2014年第1~39週、n=292)
70
60
国外 n=143
50
国内 n=149
報告数
40
30
20
10
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39
診断週
感染症発生動向調査より2014年10月1日現在
16
4. まとめと課題
17
まとめ
• ドイツ人事例の発生をうけて、対応についての準
備を進めている中での事例の発生であった
• 代々木公園およびその周辺という限られた地域で
短期間に多数の症例の集積が見られ、ヒトスジシ
マカを主媒介蚊とする地域においては稀な事例で
あった
• 代々木公園関連の症例はピークを越えたが推定
感染地不明の事例報告が東京都等から継続して
いる
• WHOガイドライン(2009年)による「重症デング」の
症例は国内感染事例では探知されていない
18
疫学調査の課題と対応(予定)
• 代々木公園およびその周辺地域における感染リス
ク要因の検討→単回曝露の症例等についての活動
内容(時間帯・場所)の追加調査を予定
• 推定感染地の絞り込み・感染拡大の評価の手法の
検討→自治体による行動歴調査の現状の情報収集
を予定
• 輸入症例に対する対応との整合性についての検討
19
資料1-2
デングウイルス検査法と遺伝子解析
ハワイ(20012002)に学ぼう!
平成26年10月8日、感染症部会
国立感染症研究所 高崎智彦
1
デング熱検査法の実際
PCR(遺伝子検出),
ウイルス分離、遺伝
子解析
(抗体の出現)
IgM-ELISA
(血中にウイルスが存在)
非構造蛋白抗原(NS1 Ag)
[回復期]
[Febrile period]
発熱中
発
熱
解
熱
NS1抗原検出ではウイルス型別(血清型)は判明しない!
2
ウイルス血症と抗体上昇の関係
ウイルス血症
INDEX 比
10 pfu/mL
6
NS1抗原
IgM抗体
IgG, 中和抗体
-3 -2 -1
0
1
2
3
4
5
病日
6
7
8
9
10
3
デングウイルスの構造_NS1抗原とは
プラス鎖RNAウイルス(11kb長)
3つの構造蛋白、7つの非構造蛋白、非翻訳領域から構成される
5’ Nontranslated region (NTR)
0
1000
C prM
M
2000
E
3000
3’ NTR
4000
5000
NS1 NS2A NS2B
Structural
Proteins;
構造蛋白質
6000
NS3
7000
8000
9000
NS4A NS4B
10000
NS5
Nonstructural
Proteins;非構造タンパク
非構造タンパクであるが、哺乳類の細胞
では細胞外に放出される。
4
デングウイルスは1~4の血清型に分類され、さらに
デングウイルス1型は5つの遺伝子型に分類される
今回の流行株は
デングウイルス1型
遺伝子Ⅰ型
China/GD-D13202(Guangzhou)(KJ545459)Chaina/13
14-100J(第1例目:代々木)
68
Bali 2010a(JN415489)IndonesiaBali/10
S330/05(EU069595)Singapore/05
84
88 T3352/04(EU069623)Singapore/04
62
D1/Taiwan/806KH1405a/2014
98
02-20(AB178040)Thailand/02
SG(EHI)D1209Y03(FJ469907)Singapore
14-181J(静岡県の症例)
61
39
D1/Thailand/0910aTw(JF967888)Thailand
97
93
D1/Taiwan/511CH0909a(JQ403519)Taiwan
70
My01D144168(AY618211)Myanmar/01
DENV-1/VN/BID-V1862/2008(FJ410220)Vietnam/08
D1/Taiwan/811KH0807a(JQ403517)Taiwan/08
93
100
Thailand 2008b(JN415527)Thailand/08
98
72
DEN1/GZ/OY(FJ176779)China/06
66
DV1 SL 2009c(HQ891315)SriLanka/09
85
SG(EHI)D1/41934Y09(JF960217)Singapore/09
DENV-1/KH/BID-V2002/2006(FJ639686)Cambodia/06
Mochizuki(AB074760)Japan/43 日本の1943年の分離株(マウス脳継代)
P72-1244(AF425622)Malaysia/72
88
95
0.005
5
ウイルス遺伝子解析数(ヒト)
E領域:13株、全遺伝子領域4株
で終了している。
Bali 2010a(JN415489)IndonesiaBali/10
14-100J (代々木)
China/GD-D13202(Guangzhou)(KJ545459)C...
China/GD-D13202(Guangzhou)(KJ545459)C(2)
別のウイルスであることが重要!
D1/Thailand/0910aTw(JF967888)Thailand
D1/Taiwan/511CH0909a(JQ403519)Taiwan
14-181J (静岡 県)
E領域塩基配列の相同性(71年前の国内分離株との比較)
%にすればそれ程大きな開きはない。
・ 14-100J vs 14-181J : 98% (1485 塩基中、1461塩基一致)
・ 14-100J vs Mochizuki : 94% (1485 塩基中、 1398塩基一致)
・ 14-181J vs Mochizuki : 94% (1485 塩基中、 1398塩基一致)
ID
推定感染場所
1
代々木
3
代々木
4
代々木
10
代々木
67
新宿中央公園
69
代々木
86
千葉市
105
代々木
115
代々木
129
不明
132
静岡県
144
隅田公園
156
西宮市
6
全遺伝子領域の解析・比較
代々木株(LC002828)と千葉株は、全
遺伝子領域で2ヶ所の塩基置換があ
るが、アミノ酸配列では100%一致であ
る。
ID
1
10
129
86
推定感染場所
代々木
代々木
不明
千葉市
7
マレーシア渡航歴のある西宮市の事例について
1. デング熱潜伏期間内(12~14日)マレーシアに渡航歴有。
2. 帰国後、市内の通学と市内のバイト。市外には出ていない。
3. 9/22:夕方17時頃、バイトに行くための着替え中、連続8ヶ所蚊
に刺された。
4. 9/28:突然の高熱で発症。近医受診。WBC1800 10/1:病院へ。
WBC1000以下、血小板8万
5. ウイルス遺伝子はE領域で代々木株に100%一致した。
6. 潜伏期を考えると発病6日前の9月22日に感染蚊に刺された可
能性が高い。
7. 国内での飛び火による感染事例の可能性が大きい。
デング熱の潜伏期間は、2~14日とされているが、多くは3~7日である。
8
ま と め
• NS1抗原検出キットは、ウイルス型別判定は
できないが、血中からウイルスが検出できな
くなっても検出でき、有用である。
• 昨年のドイツ人症例は2型感染であった。今
年の静岡県の別株の検出を考慮すると、来
夏も輸入症例からの国内流行が発生する可
能性があり、診断体制の強化が必要である。
• 西宮市の「国内飛び火」事例疑いから、迅速
な症例探知と患者の行動調査が必要である。
9
資料1-3
今般、国内で発生したデング熱流行と
媒介蚊対策について
澤邉
京子
国立感染症研究所
昆虫医科学部
1
デング熱媒介蚊の特徴とヒトスジシマカによるデング熱の流行
特 徴
ヒトスジシマカ
ネッタイシマカ
熱帯~温帯地域
熱帯~亜熱帯
活動場所
野外で活動
屋内で活動
吸血嗜好
日和見的
ヒト嗜好性が強い
小規模
大規模
生息地
デング熱の流行
卵で休眠越冬
越冬休眠はしない
(成虫は死滅する) (成虫は死滅する)
冬季に対する適応
寿命
成虫で平均約1カ月
デングウイルスの蚊体内での増殖
同程度に増殖する
ヒトスジシマカによる
デング熱の流行
ヒトスジシマカ
ネッタイシマカ
近年侵入して定着
常在しない
近年侵入して定着
常在しない
常在する
生息しないが
南部には常在する
シンガポール・フィリピン・中国など
常在する
常在する
日 本(東京)
常在する
常在しない
米 国(ハワイ州)
年(人)
2002 (82)
仏 国(ニース)
2010 (2)
(エクスアンプロヴァンス) 2013 (1)
台 湾(台北市)
(新北市)
ヒトスジシマカ
2014 (37)
2014 (29)
2014 (153)
Native
Introduction
ネッタイシマカ
2
国内におけるデング熱媒介蚊対策フローチャート
*「デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き」から改変
媒介蚊対策の対象エリアの決定と調査・対策
チームの編成(所管部局・保健所)
成虫対策
幼虫対策
家屋、建物周辺における調査
幼虫採集と幼虫発生容器の記録
幼虫発生源の処分
捕虫網を用いた採集
種類の同定
種類と採集数の記録
重要な幼虫発生源の特定
調査は半日程度で
終了させる
幼虫発生源および成虫密度の地図上への記録と図化
結果報告(所管部局)
・防除計画の立案(所管部局、保健所、PCO協会 ほか)
・作業予定の公表および住民への協力要請と注意事項の発信
・防除作業 → PCO協会への委託
・デング熱に関する啓発
・個人所有地での幼虫対策の協力要請
3
•平成25年度厚生労働科学研究費補助金(高崎班)の
研究事業の一環として作成、厚生労働省により8/27
に(案)、9/12に第1版がそれぞれ公表された
防除対策の実施と発生状況の監視
(10月下旬まで継続する)
成虫
幼虫
3
媒介蚊対策に関する国と自治体との協力 (1)
西宮市
4月末:「デング熱国内感染事例発生
時の対応・対策の手引き」地方自
治体向け(案)を作成
公園
4/21:東京都とガイドライン(案)
の内容の議論、机上訓練の検討
8/27・28:西宮市で媒介蚊対策に
関する実地演習を実施
住宅街A
住宅街B
西宮市における蚊の発生状況評価
公園
住宅街A
半径50m
住宅街B
調査で想定している
最少エリア
半径50mの円
幼虫発生源
成虫密度(平均以下)
成虫密度(平均×2)
成虫密度(平均×3 )
成虫密度(平均×4 )
成虫密度(平均×5)
防除対象とする範囲
や起点は、調査地の
環境によって変える
4
必要がある !
4
媒介蚊対策に関する国と自治体との協力 (2)
8/27:デング熱国内感染1例目の報道
実施日
** 殺虫剤散布と薬剤の手配は各自治体が行った
防除対策に協力した場所
環 境
8/28,9/4
代々木公園(東京都)
公園
施設
9/4~6,8
国立オリンピック記念青少年総合
緑地
センター(渋谷区)
施設
9/5,8
新宿中央公園(新宿区)
公園
9/5,6,8
明治神宮(渋谷区)
緑地
施設
9/9,10
外堀公園*(千代田区)
緑地
施設
9/7
明治神宮外苑(新宿区)
緑地
施設
9/9,10
千葉市稲毛区施設周辺
公園
施設
神社
寺
学校
民家
9/12,13
台東区民家周辺
公園
倉庫
神社
寺
学校
民家
9/13,14
渋谷区民家周辺
廃屋
神社
寺
学校
民家
神社
神社
* 9/9都内19区および新宿御苑の担当者53名に対して外堀公園において8分間捕集法の指導を行った。
その他に、新宿御苑・上野公園・墨田公園(公園) 、文京区・江東区(民家周辺)、福岡県・福井県
5
(不明)に対しても媒介蚊対策に関する助言を行った。
5
媒介蚊対策において助言した内容
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
殺虫剤散布前に成虫密度調査を行う:8分間捕集法
成虫密度により蚊に刺されるリスクを評価する
殺虫剤処理範囲・方法を決定する
殺虫剤処理後の成虫密度調査を行う:8分間捕集法
薬剤散布の効果判定を行う
次の対策を検討する
幼虫対策を行う
注意点
1. CDCトラップによる捕集数は8分間捕集法に比べて劣り、
調査結果が出るまでに時間がかかる
2. 殺虫剤散布に際しては、ウイルス陽性地域を優先するので
なく、成虫密度の高い場所を優先する(多くの場合は一致
している)
3. 地形や植生等によって柔軟に散布方法を変える
6
6
<媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例1>
都内公園における対策
9
1
86
A
8
10
16
9
殺虫剤の
散布を助言
8分間捕集法による
蚊の成虫密度調査
19 C
13
殺虫剤処理前:
444雌(平均14.3)
2
3.5
0
3
9
8
6
6
0
8/28 殺虫剤散布域のヒトスジシマカ
成虫の密度
散布前の密度:35雌(平均2.9)
散布後の密度:48雌(平均6.0)
6
0.5
39
3
2
B
20
3
2
4.5
D
0
5
25
数字は一人8分当たりの雌数
7
<媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例2>
都内共同利用施設における対策
殺虫剤の散布を助言
8分間捕集法による蚊の成虫密度調査
殺虫剤処理前:79雌/14地点(平均5.6)
処理後:すべて0
非常に効果的な媒介蚊対策
8
が行われた!
8
<媒介蚊対策に関する国と自治体との協力・例3>
都内住宅地における対応
寺
小学校
公園
調査・防除に関する制約:
患者が刺されたとされる場所
が特定されることがないこと
を強く希望された。
→ 調査範囲を広く設定し、
場所の特定を困難にした。
調査範囲:半径100 mの円で
半径100m
150m
殺虫剤の
散布を助言
は狭すぎて場所が特定される
恐れがあったため、調査時に
対象とする範囲を変更した。
→ 学校と公園は調査に含める
べきであるため、半径150 m
の円が含まれる街区を対象と
8分間捕集法による蚊の成虫密度調査
殺虫剤処理前:185雌/13地点(平均14.2)
処理後:11雌(平均0.8)
し、その中で調査の許可が取
れた場所の成虫密度を調査し
9
た。駆除に関する了解は事前
に取ることができた。
本州~九州の場合
来季に向けた蚊対策スケジュール(具体案)
成虫対策:定点調査( CDCトラップ)
による成虫密度モニタリングを継続
幼虫対策:幼虫発生源の除去と清掃
11 月
成虫対策:樹木の剪定
幼虫対策:
・水の入った雨水マスの調査
・放置された人工容器の除去と清掃
・ゴミ置き場等の清掃
南西諸島
(年平均気温12℃以上の地域)
成虫対策:定点調査( CDC
トラップ)による成虫密度
のモニタリングは周年実施する
* ネッタイシマカの侵入にも注意する
幼虫対策:幼虫発生源の除去と清掃
成
虫
捕
集
法
4 月 幼虫対策:
・幼虫の発生した雨水マスへはIGRを投与、
水抜き等を実施
・幼虫発生源の除去と清掃
CDCトラップ
8分間捕集法
5 月 成虫対策:定点調査( CDCトラップによる
成虫密度のモニタリングを開始
7~8 月 成虫対策:下草刈り
幼虫対策:自治体主導、住民参加による
幼虫発生源の除去と清掃
・ 8分間捕集法による成虫密度調査を実施
・リスク評価→適切な媒介蚊対策を実施する
幼
虫
発
生
源
10
10
媒介蚊対策のまとめと今後の課題
1. 約70年ぶりのデング熱国内発生事例に対して、媒介蚊対策
にあたる関係者の知識と技術が十分ではなかった
2. 調査・対策を行う上での情報共有の徹底が必要である
3. 適切に媒介蚊対策を施せば、成虫密度は下がることを確認した
感染症媒介昆虫類に対する知識と理解を深める
→ 各自治体に知識(と経験)のある人材を配置する
→ 対策担当者への啓発と教育が必要
→ 媒介蚊に関する講習・研修の機会を増やす
→ 住民への情報発信に努め、蚊媒介性感染症に対する
理解を深める
11
資料1-4
デング熱国内感染事例に関する
厚生労働省の対応について
1
感染症法に基づく蚊媒介性感染症への対応
• 1999年:感染症法制定
– デング熱、マラリア、日本脳炎を「(旧)四類感染症」として指定。患者の全数
報告を義務付け。
• 2002年:感染症法政令改正
– ウエストナイル熱の米国での流行拡大を受け、同疾病を四類感染症に指定
• 2003年:感染症法改正
– 新たな感染症の類型「(新)四類感染症」を創設し、蚊媒介性感染症につい
て、積極疫学調査の実施(第15条)、蚊の駆除(第28条)等の措置を適用で
きることとした。
– 動物の輸入届出制度を創設(鳥類はウエストナイル熱の臨床症状を示して
いないことも衛生要件)
• 2011年:感染症法政令改正
– チクングニア熱を四類感染症に指定
• その他
– 「ウエストナイル熱等に係る関係省庁連絡会議」の開催(2002年~現在、毎
年夏に開催)
2
(参考)主な蚊媒介性感染症の届出状況
デング チクン 日本脳 ウエスト
熱 グニア熱
炎
ナイル熱
黄熱
マラリア
三日熱 四日熱 卵形熱 熱帯熱 不明熱 合計
2002年
52
...
8
0
0
35
2
3
38
5
83
2003年
32
...
1
0
0
40
2
6
30
0
78
2004年
49
...
5
0
0
34
1
7
32
1
75
2005年
74
...
7
1
0
25
2
2
38
0
67
2006年
58
...
7
0
0
21
2
4
31
4
62
2007年
89
...
10
0
0
25
0
2
23
2
52
2008年
104
...
3
0
0
18
1
1
35
1
56
2009年
93
...
3
0
0
14
0
1
37
4
56
2010年
244
...
4
0
0
22
1
5
42
4
74
2011年
113
10
9
0
0
29
3
1
44
1
78
2012年
221
10
2
0
0
19
2
4
40
7
72
2013年
249
13
9
0
0
7
2
2
30
7
48
*2013年は速報値。日本脳炎を除き、全て輸入症例。
3
デング熱国内感染事例に関する厚労省の対応
•
2014年1月10日
– ドイツ人旅行者(2013年8月末、日本を周遊)の日本国内デング熱感染疑いの報告を受け、全国の自治
体を通じ、医療機関に情報提供・注意喚起。同時に、デング熱に関するファクトシートやQ&A(一般向け、
医療従事者向け)を公開。
•
1月~8月
– 厚労科学研究「我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に関する総合的対策の確立に
関する研究」(研究代表者:国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦室長)等において、デング熱
国内感染症例発生時の疫学調査の実施方法や蚊対策等について、自治体(東京都)の協力を得ながら
「デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き」の案を策定。また、臨床医向けに「診療ガイドラ
イン」の案を作成したほか、いくつかの医療機関に研究的にデング熱の迅速診断キットを配布。
•
8月27日
– デング熱の国内感染症例が確認されたことを受け、事案の公表と共に、「デング熱診療ガイドライン」及
び「デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き」の暫定版、ファクトシート・Q&A(第2版)を全国
の自治体に配布
– その後ガイドライン・手引書を随時改訂(診療ガイドライン:9月3・16日、自治体向け手引き:9月12日)
•
9月6日
– 東京都・23特別区・関係機関の参加を得て、厚労省主催の緊急対策会議を開催。
– 住民への注意喚起、ウイルス血症期の患者が蚊に刺された場合の対応等、今後の対策について合意。
•
9月7~9日
– 渋谷区及び隣接6区と連携し、9公園における蚊のウイルス保有調査を実施(全て陰性)。
– 9日、19区の担当者等を対象に、蚊の捕集法に関する講習会を実施。
•
9月中旬
– 迅速診断キットを全国の地方衛生研究所に配布
4
蚊媒介性感染症に関する現状と近年の主な課題
感染症法上、蚊媒介性感染症として、ウエストナイル熱、黄熱、西部ウマ脳炎、チクン
グニア熱、デング熱、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎、マラリア、野兎病、
リフトバレー熱があり、これらはすべて四類感染症に位置づけられている。
蚊媒介性感染症であるデング熱について、平成26年8月末に約70年ぶりに国内感染が
確認され、以後約150名程度の国内感染症例が確認された。
蚊媒介性感染症のまん延防止のためには、
①平時からの蚊対策
②患者の的確な診断と適切な医療の提供
③迅速な発生動向の把握
④発生時の的確な蚊対策 等
が重要であるが、近年は感染症対策の一環として平時および国内発生時の蚊対策を
行うことが稀となっている現状がある。
そのため、各自治体においても蚊対策の知見が乏しい等、蚊媒介性感染症対策の充
実が喫緊の課題となっている。
5
今後の方針について
6
今後の方針(案)①
「蚊媒介性感染症に関する特定感染症予防指針」の策定について
蚊媒介性感染症の感染症対策を統一的に進めるため、感染症法第11条の規定により、
特に総合的に予防対策に取り組むべき感染症に位置づけ、予防の総合的な推進を図る
ための指針を策定することとしてはどうか。
指針の概要案
– 当該感染症に係る原因の究明:積極的疫学調査の実施による迅速・正確な情報の収集及び解析
– 発生の予防及びまん延の防止:
• 平時の蚊対策、予防策に関する国民への普及啓発
• 発生時の蚊対策
– 医療の提供:早期発見・治療のため、診療ガイドライン等、医療機関への情報提供の実施
– 研究開発の推進:診断検査法の開発と普及、ワクチン・治療薬の開発等
– 国際的な連携:世界保健機関等の国際機関との連携
– その他
7
今後の方針(案)②
「蚊媒介性感染症に関する小委員会(仮称)」の設置について
指針の策定にあたり、「蚊媒介性感染症に関する小委員会(仮称)」
を感染症部会の下に設置してはどうか。(設置要綱案は別添のとお
り)
委員の構成(案)
– 感染症学
– ウイルス学
– 疫学
– 衛生昆虫学
– 医学、臨床医
– 地方自治体
– リスクコミュニケーション 等
8
今後の方針(案)③
検討のスケジュールについて
以下のようなスケジュールとしてはどうか。
平成26年10月 小委員会の設置
平成26年度下半期
– 小委員会を数回開催し、小委案を取りまとめ、感染症部会に
報告
– 部会で小委案を検討・了承
– 厚生労働省で指針案を策定、パブリックコメントを実施
平成27年3月中を目途に 指針を告示・適用
9
デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き
地方公共団体向け (第 1 版)
国立感染症研究所
平成 26 年 9 月 12 日
1. 本手引きの作成にあたって
2014 年 8 月 27 日及び 28 日、国内でデング熱に感染したと考えられた症例 3 例が確認された。その
後 9 月 12 日 11 時現在までに、東京都内で感染したと推測される症例を中心に国内感染事例計 113 例
が確認されている。本手引きは、デング熱患者の国内感染事例が確認された場合の地方自治体等によ
る積極的疫学調査とその対応法をまとめたものである。作成にあたっては、台湾 CDC による「登革熱防
治工作指引(デング熱予防対策手引き)」
http://www.cdc.gov.tw/uploads/files/201207/b13ebe8e-70ec-4648-8a15-981d2eebda24.pdf を参考
とした。
デング熱はヒト-蚊-ヒトの感染環で成立しているため、都市部、人口密集地を中心に流行する。日
本においてデング熱の国内感染事例が探知された場合、対応方針の決定においては、事例の感染拡
大に関するリスク評価が重要であり、探知された総症例数、症例の活動歴、症例の地域分布、媒介蚊の
密度やデングウイルスの保有状況、発生場所の人口密度、参考情報としての地域のデング熱輸入例の
数等を考慮する必要がある。また、関係自治体は、国の支援を受け、情報収集とリスク評価を行うこと、
適宜、事例の推移に合わせて、リスク評価を更新することも重要である。
なお、知見が集積された場合等には、必要に応じて、手引きの改訂版を発行する予定である。
1
2.デング熱とは
デング熱(デング出血熱を含む)は、デングウイルス(Dengue virus)感染によって発症する急性熱性
感染症である。ネッタイシマカ(Aedes aegypti)およびヒトスジシマカ(Aedes albopictus)が主要な媒介
蚊であり、ヒトは、デングウイルスを保有するこれらの蚊の刺咬により感染する。
デングウイルスについて
デングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスで、ウイル
スは直径 40~60 nm のエンベロープを有する球状粒子であり、ウイルス遺伝子は 1 本鎖 RNA である。
ヒトの急性期の血中では高いウイルス血症が認められる。1 型から 4 型までの血清型のウイルスが存在
し、一部共通抗原をもち血清学的に交差反応を示すが、異なる型のウイルスに対する感染防御能は低
い。
デング熱の臨床症状
デング熱は、通常 3~7 日(最大期間 2~15 日)の潜伏期の後、急激な発熱で発症する。発熱、発疹、
頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状がおこる。ただし、発熱以外の症状を認めないこともある。発症
時には発疹はみられないことが多いが、皮膚の紅潮がみられる場合がある。通常、発病後 2~7 日で解
熱する。一部の患者は経過中に、デング出血熱の病態を呈する。なお、詳細は「デング熱診療ガイドライ
ン(第 1 版)」を参照されたい。
デング熱の国内での報告例
1999 年 4 月の感染症法の施行により、デング熱(デング出血熱を含む)は 4 類感染症に規定され、
診 断 し た す べ て の 医 師 に 届 出 が 義 務 づ け ら れ て い る
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-19.html)。1999 年から 2014
年 7 月まで、発生動向調査へ報告された症例はすべて海外のデング熱流行地域からの輸入症例であり、
2007 年以降は毎年 100~200 例前後報告されている。1999 年以降、日本国内で発症し、診断された輸
入デング熱患者において死亡者は報告されていない。国内発生事例としては、1942~1945 年の流行
の後は 2014 年 7 月まで報告はなかったが、2014 年 8 月末より、国内でデング熱に感染したと考えられ
た症例の検出が相次いだ。その多くは、東京都内公園周辺等が感染場所として考えられている。
(補足事項) デングウイルスと同じ蚊により媒介されるチクングニアウイルスによるチクングニア熱が、
東南アジアや南アジア、カリブ海島嶼国で流行している。二つのウイルスは、ウイルス学的には異なる
科に属するウイルスであるが、臨床症状は突然の発熱、関節痛、発疹と主症状が非常に類似している。
な お 、 チ ク ン グ ニ ア 熱 は 2011 年 2 月 1 日 に 4 類 感 染 症 に 規 定 さ れ た
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-42.html)
。
2
3.デング熱媒介蚊について
前 述 のように、デングウイルスは、主 にネッタイシマカとヒトスジ
シマカによって媒 介 される。ネッタイシマカは、かつては沖 縄 や小
笠 原 諸 島 に 生 息 し 、 熊 本 県 牛 深 町 で は 1944 ~ 1947 年 に 一 時
的 に生 息 したことが記 録 されている。戦 後 のデング熱 の国 内 流
行 に ネ ッ タ イ シ マ カ が 関 与 し た 可 能 性 が 示 唆 さ れ た が 、 1955 年
以 降 は国 内 での採 集 記 録 がない。現 在 、ネッタイシマカは国 内
図 1
ヒト ス ジ シ マ カ の 成 虫
に は 生 息 してい ないと考 えら れ ている が 、近 年 、 国 際 空 港 の ター
ミナルビル周 辺 や貨 物 便 の機 内 で発 見 される 事 例 が 相 次 いでいる。
一 方 、ヒト スジシマカ は 、 日 本 のほとんどの地 域 ( 秋 田 県 および岩 手 県 以 南 ) の都 市 部 に
よく見 られるヤブカで、背 中 (中 胸 背 板 )にある一 本 の白 い筋 が大 きな特 徴 である(図 1)。真
夏の気温であれば、産卵後数日から1週間で幼虫が出現し、その後10日ほどで成虫になる。外気温にも
よるが雌成虫の寿命は30~40日である。
デングウ イ ル ス は 、 雌 蚊 の 吸 血 に よ っ て 蚊 の 体 内 に 取 り 込 ま れ 、 7 日 目 に は 唾 液 腺 に 移
動 し、次 の吸 血 以 降 ヒトを感 染 させることが可 能 になる。 国 内 にはヒトスジシマカ以 外 にも
数 種 類 のヤブカが生 息 しており、実 験 的 にデングウイルス感 受 性 があ る と思 われ るヤブカも
存 在 す る 。 しか し 、そ れ ら の 発 生 時 期 や 場 所 、生 息 密 度 を考 える と 、 国 内 で 防 除 対 象 と 考
えるべ きデング 熱 媒 介 蚊 は ヒト スジ シマカの み と言 うことが できる 。一 方 、国 内 の住 宅 地 でヒ
トスジシマカと同 程 度 に生 息 数 の多 いアカイエカは、ウエストナイル熱 の媒 介 蚊 になると予
想 されるが、デング熱 の媒 介 蚊 ではない。両 種 の比 較 を表 1に示 す。
3
表1
デング熱およびウエストナイル熱に関する生物学的および疫学的特徴の比較
媒介蚊
蚊 体 内 での ウイ ル ス
の増殖速度
流行におけるヒトの重
要度
患者発生地域におけ
る流行の広がり
成虫防除の緊急性
成虫防除の有効性
平時の幼虫防除
幼虫防除の対象地域
の範囲
デング熱/チクングニア熱*
ヒトスジシマカ
ネッタイシマカほか
デングウイルスは遅い(唾液腺で
は 7 日目から検出される)
*チクングニアウイルスは早い
(2 日目の唾液腺から検出される)
高い
(ヒトはウイルスの増幅動物)
局所的
(媒介蚊の飛翔範囲が狭い)
高い
高い
必要
狭い
(患者宅から半径 100 m 程度が
望ましい)
ウエストナイル熱
アカイエカ
チカイエカ
ヒトスジシマカほか
遅い
(唾液腺で 7~10 日目から検出)
低い
(ヒト,ウマは終末宿主)
広域的
(媒介蚊の飛翔範囲が広い)
高い
低い
必要
広い
(ウイルスが検出された野鳥や蚊
の捕獲地を中心に、2~10 km)
 成 虫 の活 動 と国 内 分 布
ヒトスジシマカの活 動 は 主 に 5 月 中 旬 ~1 0 月 下 旬
確認地
未確認地
( 南 西 諸 島 の 活 動 期 間 は こ れ より も 長 い) に みら れ 、 冬
八峰
盛岡( 2009~)
能代
秋田
季 に成 虫 は存 在 しない。発 生 数 は国 内 全 域 で非 常 に
本荘
酒田
多 く、2013 年 時 点 で本 州 (秋 田 県 および岩 手 県 以 南 )
2010年
宮古(2007)
大槌(2011~)
花巻(2007~)
気仙沼
横手
新庄
山形
か ら四 国 、九 州 、沖 縄 まで広 く分 布 していることが 確 認
2000年
石巻
会津若松
されている(図 2)。また 、幼 虫 の生 息 地 は 年 平 均 気 温
仙台
白河
が 11ºC 以 上 の地 域 と一 致 しており、 温 暖 化 等 の影
響 で分 布 域 が徐 々に北 上 していることが示 唆 されてい
軽井沢
る。
100 Km
図 2
~1950年
日光
東京
東 北 地 方 に お け る ヒト ス ジ シ マ カ の 分 布 域
 成 虫 の潜 み場 所 と活 動 範 囲
成 虫 は 、民 家 の 庭 、公 園 、墓 地 など に 潜 み 、 朝 方 か ら 夕 方 まで 吸 血 する 。 ヒト スジ シ マカ
は 屋 内 でも 屋 外 でも 吸 血 す る が 、屋 外 で 吸 血 す る ことが は る か に 多 い 。ヒトスジシマカの雌は、
産卵や吸血を行った後、1 週間ほどで徐々に移動する。その活動範囲は 50~100 m とされる。
 幼 虫 の発 生 源
ヒトスジシマカの幼虫は比較的小さい容器に発生する。住宅地では雨水マス、植木鉢やプランターの水
の受け皿、庭先に置き忘れたバケツや壺、コンビニ弁当などのプラスチック容器、古タイヤなどが発生源
4
となる。また、雨を除けるために被せたビニールシートの窪み
や、隙間にたまった水、廃棄された機械のフレームにたまっ
た水などにも幼虫が発生する( 図 3 ) 。一 般 に ヤ ブ カ 属 の
卵 は 乾 燥 に 強 く 、 ヒト スジ シ マカ の 卵 は 数 ヶ月 の 乾 燥
に遭 遇 しても、いったん水 に浸 ると孵 化 してくる 。
図3
幼 虫 の典 型 的 な発 生 源
5
4.積極的疫学調査の目的と留意点、検体採取法
 目的:地方自治体が以下の「国内感染が疑われるデング熱確定症例注1」に該当する症例(もしくはク
ラスター)を探知した場合は、国民への正確な情報提供、事例について感染拡大に関するリスク評価
とそれに基づいた対策の策定等を目的とし、感染症法第 15 条に基づき積極的疫学調査を行う。本手
引きにおいては、この探知された国内感染が疑われる症例(もしくはクラスター)を「初発例(もしくは
初発事例)」と呼ぶ。
注1
「国内感染が疑われるデング熱症例」の定義:発症前 2 週間以内の海外渡航歴がない者におい
て、デング熱が疑われる症状があり(例: 突然の高熱、発疹、血小板減少、点状出血、筋肉痛、関節
痛等)、実験室診断(ウイルス遺伝子検査、ウイルス抗原 NS1 抗原検査注2、特異的 IgM 抗体検査(後
述 7 ページ「検体採取法」参照)により、デング熱と確定されたもの
注2
NS1 抗原検査:デングウイルスの非構造蛋白 NS1 は、感染細胞で合成され、細胞外に分泌され
る性質があり、特にヒトの細胞では盛んに放出される。血液中の NS1 蛋白の検出は、デングウイルス
感染の証明となる。血中のウイルス遺伝子よりも長く検出できる。
 留意点

平素からの対応の重要性:蚊に媒介される疾患一般や媒介蚊対策の知識を周知する活動を
普段から行い、国民の知識を高めておく必要がある。輸入デング熱症例についても、平素から
医療機関内等での蚊を介した感染伝播防止の対策を十分に行うよう体制を整備する必要があ
る。医師がデング熱についての十分な知識を持つこと、診断体制の整備も重要である。

迅速性:積極的疫学調査は、ヒト調査と媒介蚊調査の 2 本立てとなるが、適時の対策に結びつ
けるためには、地方自治体は、初発例の探知から 24 時間以内に情報収集を開始することが
望ましい。

リスク評価とリスクコミュニケーション:事例の発生に伴い、媒介蚊対策を実施する際には、「1.
本手引きの作成にあたって」の項に記載されているとおり、感染拡大に関するリスク評価を適
切に行い、媒介蚊対策の必要性と緊急性について地域住民に十分に説明した上で実施するこ
とが肝要である。既存の自治会・マンション管理組合等を通して、各住民に住宅敷地内へ
の立ち入りを前提とする媒介蚊成虫の防除作業に理解を求め、了解をとることが重要であ
る。事例の発生について情報提供を行う際、また、媒介蚊対策を実施する際は、デング熱への
疾患の理解を助ける情報提供を合わせて行うことが重要であり、またデング熱症例の個人が
特定されないように、また、地域に対する風評被害の発生を最小限にするように注意すること
が重要である。また、国と地方自治体において十分な調整を行うことも求められる。

地方自治体間・地方自治体内の調整:積極的症例探索の実施や、媒介蚊対策を実施する地
域が自治体をまたぐ場合は、整合性がとれた対策が行えるように、関係者間で十分な調整を
行う。媒介蚊対策を担当する部局については、事前に自治体内で協議を行っておく。

地方自治体と国の連携:デング熱国内感染疑い例の発生時、積極的疫学調査の実施にあた
6
っては、国立感染症研究所等に必要な協力を求めることが可能である。地方自治体と国の役
割分担については図 4 を参照。

感染防止対策:調査にあたる地方自治体職員の感染防止策としては、個人的防御法を徹底し、
必要に応じて忌避剤の使用を検討する(7.媒介蚊対策、個人的防御法および忌避剤の使用
を参照)。症例の診療を行う医療機関における媒介蚊対策も十分に行う。
 検体採取法:積極的症例探索において発熱等の症状が認められたものはデング疑い症例として以
下のタイミングで 2 回検体を採取し注3、地方衛生研究所等で所定のデング熱の確定診断を実施する。
送付は「冷蔵輸送」とする。急性期検体が陰性であった場合で、他の病因注4が確定していない場合に
は、回復期検体を採取し、抗体検査を実施する。
1) 発熱中の検体(急性期検体)
血清: 約 1cc (尿:3~5 cc も診断に有効であることがある)
2) 解熱後の検体あるいは発熱後 7 日目以降の検体(回復期検体)
血清: 約 1cc (尿 3~5 cc も診断に有効であることがある)
注3
確定診断には 14 日間をあけたペア血清の採取が望ましいが必ずしも必須ではない。追加の血清検
査が必要な場合は、個別に検討する。
注4
デング熱との鑑別疾患で、国内で感染の可能性がある感染症としては、麻疹、風疹、インフルエンザ、
レプトスピラ症、伝染性紅斑(成人例)、伝染性単核症、急性 HIV 感染症等があげられる。これら鑑別疾
患の検査に漏れがないかを確認する。
7
5.シナリオ例
地方自治体やその他関係者の理解を助けるため、図 5 に示すような、シナリオ例を作成した。媒介蚊
対策を実施する意義をよく理解するため、初発例について、推定感染期間と、ウイルス血症の期間に滞
在していた場所が全く異なるとしたが、これはタイミングよく初発例が移動する場合に成立する仮定であ
る。現実には、潜伏期にも幅があり、これらの時期を明確に区別することは困難であることから、初発例
の滞在地は、推定感染地(推定感染期間に屋外活動をした場所のうちのどこか)と、初発例に由来する
感染拡大の可能性がある場所(ウイルス血症の期間に滞在していた場所)のどちらにも該当することが
ありうる。また、推定感染地の絞り込みは、複数の国内感染症例が探知されなければ困難である。
媒介蚊対策を決定する上で理解しておくことが重要なのは、前述のように、デング熱は、ウイルス血症
にある人を刺した蚊が感染性を獲得したのちに人を刺咬して感染が成立する「ヒト―蚊―ヒト」のサイク
ルをとり、「ヒト―ヒト」の感染と「蚊―蚊」の感染(経卵感染注5)の例はないこと、蚊がウイルス血症にある
人を刺咬してから人への感染性を獲得するまでの期間が 7 日程度であること、蚊の成虫の生存期間が
最長 40 日間であること、デング熱のヒト患者のウイルス血症の期間が発症日の前日から発症 5 日後ま
での 6 日間であることである。
また、積極的症例探索とは、積極的疫学調査の一環として実施されるものであり、本手引きにおいて
はデング熱発症のリスクがある人や、デング熱が発生するリスクがある地域をまず定義し、健康観察や
地域の医療機関における調査などによって後方視的(事例に関連する過去の症例を堀り起こす)・前方
視的(事例に関連する今後の発生を監視する)に症例を探索することを指す。なお、後方視的調査は、
感染源の探索・推定感染地の絞り込みにより、有効な拡大防止対策を立案するために実施する。
注5
ネッタイシマカやヒトスジシマカの卵や幼虫からデングウイルスの遺伝子が検出された例(経卵感染)
はあるが、経卵感染によってデングウイルスが次世代成虫に伝播し、さらに経卵感染した蚊がデングウ
イルスをヒトへ伝播できる可能性は自然界においては低いと考えられる。
8
表2
図 5 に使用されている名称の説明
地点 X
推定感染地(国内)。このシナリオにおいては、症例 A は推定感染期間内に地点 X
でのみ屋外活動を行ったと仮定し、ここを推定感染地とした。屋外活動をした場所
が複数あれば、積極的疫学調査により症例 A 以外の症例が探知された場合にお
いて、それらの屋外活動の共通性から推定感染場所を絞り込むことになる。
地点 Y
症例 A がウイルス血症の時期に滞在した場所(自宅・職場等)。これは症例 A の行
動歴により複数個所となる可能性があるが、このシナリオにおいては 1 か所と仮定
した。また。症例 A が推定感染期間とウイルス血症の期間において全く移動しなか
った場合、地点 X と地点 Y が同一であることもある。また、もし、地点 Y に関連して
複数の確定症例がでてくることがあれば、地点 Y は、感染拡大が確認された地域
として積極的症例探索や媒介蚊対策など対応の強化を行う必要がある。
症例 O
症例 A の感染源となったデング熱輸入例。無症状・軽症である場合や、すでに滞
在地を移動している場合なども想定され、積極的疫学調査による探知は困難であ
るが、少なくとも地点 X 周辺の医療機関における発生届の有無など基本的な事項
は掌握しておく。
症例 A
初発例。症例 A は、友人である同行者 B、症例 C とともに、推定感染期間内に地
点 X のみにおいて屋外活動を行った。
同行者 B
症例 A の上記の地点 X での屋外活動の同行者。調査開始時点では症状がなく健
康観察の対象者となる。
症例 C
症例 A の上記の地点 X での屋外活動の同行者。発症は症例 A より早いが、積極
的症例探索により後方視的に確定診断されたと設定。症例 C についても、ウイル
ス血症の時期の滞在場所について、地点 Y としての感染拡大策の実施について
検討を行う必要があるが、これは図 5 においては割愛。
症例 D
地点 X の住民。地点 X 周辺の医療機関において積極的症例探索が行われ後方視
的に確定診断されたと設定。症例 D についても、症例 C と同じくウイルス血症の時
期の滞在場所について、地点 Y としての感染拡大策の実施について検討を行う必
要があるが、これは図 5 においては割愛。
ヒト E、F、G
地点 Y の住民。調査開始時点では、発症の有無は判明していない。地点 Y に関す
る感染拡大の可能性についてリスク評価を適切に行った上で、地点 Y の住民への
周知方法について検討したうえで、関係医療機関の協力を得て積極的症例探索を
行うこととなる。
蚊a
ウイルス血症にある症例 O を刺咬。シナリオにおいて一個体と設定。
蚊b
ウイルス血症にある症例 A を刺咬。シナリオにおいては一個体と設定。
9
6.地方自治体(保健所等)の活動内容
(以下のステップに従って調査と対応を行う)
① 感染症法に基づく届け出:デング熱は 4 類感染症であるので、保健所は、確定診断後、診察医にただ
ちに届け出ることを求める。
② 初発例(図 5: 症例 A)についての情報収集

基本的な症例情報:属性、症状、検査結果、受診医療機関等の基本的な情報は、感染症発生動
向調査の届け出内容を参照する。診察医の記載が不十分な点について追加で情報収集をする。
過去 2 週間の初発例の海外渡航歴の有無を再度確認し、海外渡航歴がない場合に、以下のステ
ップに進む。

推定感染期間における屋外活動のリストアップ:初発例(図 5: 症例 A)の行動の中で、推定感染
地(感染蚊に刺咬された場所)の可能性がある場所をリストアップする。デング熱の通常の潜伏期
(3~7 日)を考慮し、発症日の前 3 日から 7 日までの期間(以下、推定感染期間と呼ぶ)における
屋外での活動の詳細を、添付 1-①を用いて聞き取る。また、発症前後直近の輸血や献血の有無
について、添付 1-①に記載する。発症前 14 日以内の輸血歴や献血歴があれば、ただちに日本
赤十字社へ連絡する(血液事業本部安全管理課、電話:03(3437)7200、メール:[email protected])。
デング熱を媒介する蚊は、早朝・日中の活動性が高いため、特に、早朝・日中の屋外での活動に
ついては漏らさず聞き取るようにする。これらの屋外での活動において、蚊に刺された記憶がある
かどうかも、聞き取っておく。これらの聞き取りにより、推定感染地がしぼりこめた場合(後述④参
照)、添付 1-③を用いて、その推定感染地の場所やその場所での活動歴の詳細な情報を確認す
る(添付 1-①に輸血歴・献血歴を記入している場合は再掲する)。

屋外活動の同行者の把握:推定感染期間内に、初発例(図 5: 症例 A)の早朝・日中の屋外活動
に同行した者がいればその名前と連絡先等を初発例から聞き取り、添付1-①に記入する。以下、
これに該当する同行者を、「リスクのある同行者(図 5: 同行者 B と症例 C)」と呼ぶ。

ウイルス血症の期間における行動歴:発症前日から発症後 5 日目までのウイルス血症の期間中
における初発例(図 5: 症例 A)の屋外での活動の詳細を、添付 1-②を用いて聞き取る。推定感
染地に関する情報収集と同様に、特に、早朝・日中の屋外での活動については漏らさず聞き取る
ようにし、これらの屋外での活動において、蚊に刺された記憶があるかどうかも、聞き取っておく。
患者の主な居住地(自宅等)・職場についても情報収集する。

同居者の把握:同居者間では、さまざまなリスクを共有することが多いことから、初発例の屋外活
動に同行していない場合でも、添付 1-④により、同居者の把握を行う。
③ リスクのある同行者(図 5: 同行者 B と症例 C)と同居者についての情報収集
リスクのある同行者と同居者については、添付 2 を用いて、過去 2 週間(通常の潜伏期間 7 日以内の
2 倍)のデング熱が疑われる症状の有無等について居住地の保健所が情報収集を行う。情報のとりま
とめは、原則として、症例 A の居住地保健所が実施する。リスクのある同行者については、症例 A と最
10
後に屋外活動をしてから 2 週間の間、添付 3 を用いて健康調査を行う。同居者については、症例 A の
発症後 52 日目まで(図 5 右下の「健康観察終了」まで)、添付 4 により前向きの健康観察を行う。添付
2~4 を用いた調査において、デング熱を疑わせる症状がある場合は、本人(または保護者)の協力を
得て、検体を採取し確定診断を行う。
④ 推定感染地の絞り込み
初発例のみが探知されている段階では、通常、屋外活動場所が複数となることが多いことから、推定
感染地を絞り込むことは困難である。ただし、上記②➂の調査等により、症例 A と疫学的リンクのある
別のデング熱の確定症例が判明した場合は、これらの推定感染期間における屋外活動の共通性から
推定感染地を絞りこむことが可能であるかもしれない。推定感染地の絞り込みを行うことができれば
(図 5:地点 X)、さらなる症例の発生についてのリスクを評価した上で、その場所において、感染蚊に
対する成虫対策とともに、幼虫対策(詳細は、7.媒介蚊対策の項参照)の実施を検討する。
⑤ 絞り込まれた推定感染地における感染源調査と前向きの症例探索(注意事項:④の推定感染地の絞
り込みが行えなかった場合は、⑤は行わない)
絞り込まれた推定感染場所(図 5: 地点 X)周辺の住民が受診する適切な医療機関(例:診療所等、
地域住民の受診が多い内科・小児科等)に、デング熱の臨床症状等を記載したパンフレット等を用い
て説明し、協力を得たうえで、添付 5 を用いて、調査開始時点から過去 2 週間(通常の潜伏期間 7 日
以内の 2 倍)にデング熱を疑わせる症状をもつ症例がいなかったかどうか(図 5: 症例 D はこのプロ
セスにより探知)を調査し、合わせて新たにデング熱を疑わせる症状をもつ症例がでないかどうか添付
6 を用いて今後 47 日間程度の期間(蚊成虫の生存期間 40 日程度+ヒトの通常の潜伏期 7 日以内)、
医療機関に対し管轄保健所への逐次の報告を求める。探知された症例については、本人(または保
護者)の協力を得て、デング熱確定診断のための検体を採取する。ちなみに、デング熱を疑う患者の
目安としては、以下の2つの必須所見(突然の 38 度以上の発熱・急激な血小板減少)に加えて、発疹、
悪心・嘔吐、骨関節痛・筋肉痛、頭痛、白血球減少、点状出血(あるいはターニケットテスト陽性の6つ
の症状・所見のうち 2 つ以上を認める場合等が考えられる。
⑥ 積極的症例探索により探知された症例(図 5: 症例 C と D)についての情報収集
初発例(図 5: 症例 A)に準じて情報収集を行う。
⑦ ウイルス血症の期間に初発例(図 5: 症例 A)が滞在した場所に関する対応

自宅・職場・学校・医療機関・外出先(例:公園、飲食店・興行場)など、症例 A がウイルス血症の
期間に滞在した場所(図 5: 地点 Y)において、管轄保健所と連携をとり感染拡大の可能性があ
るかどうか、添付 1 を用いて情報収集を行う。その際は、症例 A の同期間の屋外活動の状況(蚊
の刺咬の有無)に関する情報、症例の発生時期、地域での媒介蚊の有無、地点 Y の人口密度な
どの情報を得た上で、リスク評価を行う。なお、ヒトスジシマカは、日中、屋外での活動性が高く、
活動範囲は 50~100 m程度であり、国内の活動時期はおおむね 5 月中旬~10 月下旬である
(詳細は、「3.デング熱媒介蚊について:成虫の潜み場所と活動範囲」参照)。
11
地点 Y において感染拡大のリスクが高いと判断された場合は、①媒介蚊の幼虫対策(詳細は、「7.
媒介蚊対策」参照)、②地域の医療機関における積極的症例探索、➂住民への周知、④医療機
関への情報提供の実施を検討する。地域の医療機関における積極的症例探索は、周辺の住民
(図 5: E、F と G)の多くが受診する適切な医療機関(例:診療所等、地域住民の受診が多い内
科・小児科等)の協力を得て、デング熱を疑わせる症状をもつ症例が出ないかどうかモニターする
ことも検討する。疑わしい症例が探知された場合は、本人(もしくは保護者)の協力を得て、検体を
採取し確定診断を行う。結果は添付 6 に記録する。住民に対する健康観察の期間については、図
5 にあるとおり、初発例のウイルス血症の期間、それに蚊の生存期間(最大 40 日程度)、ヒトの通
常の潜伏期間 7 日以内を足し合わせたものとなる。地点 Y の周辺住民に対して、必要な蚊対策
(幼虫対策、外出時の服装など)、デング熱が疑われる症状、デング熱が疑われる症状が出た場
合に受診する医療機関(デング熱の診断が可能な医療機関)について情報提供を行う。デング熱
患者の診療を行う医療機関に対しては、治療法と基本的な予防法についての情報を提供する。
医療機関等は、デング熱の患者に対し、他人への伝播を防ぐために発症後 5 日間は、蚊に刺さ
れないように指導する。地点 Y に該当する場所が複数かつ広範囲にわたっていたり、不特定多数
の者が往来する施設の場合、積極的症例探索や住民へのきめ細かい周知は極めて困難である
が、対応できる最大限の感染拡大防止策を講じるよう検討する。
⑧ 地方自治体の関係者間での情報共有:上記の②~⑧で得られた情報は、適時に媒介蚊調査・対策の
担当者、住民への広報担当者等と共有する。
⑨ 感染拡大に関するリスク評価:関連する地方自治体、厚生労働省・国の機関の専門家等と適宜協議し、
事例の推移に合わせて、感染拡大に関するリスク評価を更新し、適宜、対策を策定する。
⑩ 終息の確認:地点 Y において、初発例(図 5: 症例 A)以外に症例が探知されなかった場合は、その発
症日から 52 日間を経過すれば終息したものとみなせる。
12
7.媒介蚊対策
媒介蚊に対する防除対策の目的は、病気の流行を阻止することである。従って、デング熱の国内感染事例が
発生した場合、感染経路の特定を目的とした詳細な調査を開始するとともに、早急に媒介蚊防除対策を始めな
ければならない。緊急時の対応を円滑に行うためには、平時において地方自治体の主導の下に媒介蚊の発生
調査と発生源対策を実施し、防除対策を計画しておくことが望ましい。
 調査および防除範囲
患者が感染した可能性の高い場所(図 5: 地点 X)、およびウイルス血症期間中に滞在した場所(職場、学校
など)(図 5: 地点 Y)を中心とするエリア内の建物の屋外を調査・防除の対象とする。エリアの大きさは半径
100m程度が望ましい。地点 X および Y における各リスク評価に基づき、適した媒介蚊対策を実施する。
① 戸建住宅:庭の植栽、人工的な容器、公道の雨水マスなど
② 戸建住宅:庭の植栽、人工的な容器、公道の雨水マスなど
③ マンション:庭の植栽、中庭の植栽、ベランダの溜り水、敷地内の雨水マスなど。低層階(2 階まで)を中
心に調査する。
④ 公共施設:雨水マスなど
上述した調査は居住区域を想定しているが、公園や緑地など居住区以外の場所が調査対象となる可能
性がある。居住区域に比べて公園や緑地では成虫が広範囲に分散する傾向があるので、調査範囲は公園
や緑地全体とし、全体を 40~50m四方の区画に分割して、各区画に対して上述した方法で媒介蚊調査を
実施する。調査結果に基づいて成虫が多く生息している区画を明らかにし、有効な対策を検討すること
が望ましい。
 調査ならびに防除対策の実施
ウイルス感染の広がりを抑えるためには、新たに感染する人が最初の感染者の周辺に限られている期間(初
期の 2~3 週間)に適切な媒介蚊防除対策を講じることが重要である。従って、以下の作業をできるだけ迅速に
実施する(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第五章「消毒その他の措置(第二十八
条)」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO114.html を参照)。
① 調査ならびに防除対象地域の選定
② 対象地域の地形、土地利用状況の把握
③ 事前の協力依頼と打ち合わせ
④ 媒介蚊の発生源と発生状況調査ならびに住民に対する説明
⑤ 不在の場合の再調査の実施
⑥
防除対策の決定
⑦
成虫ならびに幼虫密度の高い地域を特定し、各地方自治体の指導の下に(害虫駆除を行う会社に
殺虫剤散布を委託する場合もある)速やかに防除対策を実施する。なお、幼虫対策は、媒介蚊(成
13
虫)の密度を下げるために重要である。
【防除対策】
 個人的防御法の推奨
住宅周辺に多数存在する幼虫発生源をなくすことが重要である。1週間に一度は、住宅周辺に散乱している
雨水が溜まった容器を逆さにして水を無くすこと、人工容器などに水がたまらないよう整頓する。古タイヤにコッ
プ半分ほどの塩を入れておくと、夏期の間ヤブカ類の発生を抑えることが期待できる。
ヒトスジシマカから吸血されにくくするためには、皮膚が露出しないように、長袖シャツ、長ズボンを着用し、裸
足でのサンダル履きを避ける。しかし、薄手の繊維の場合には服の上から吸血されることもあること、足首、首
筋、手の甲などの小さな露出面でも吸血されることがあることにも留意する。このような場合でも、忌避剤の利用
は効果的である。
網戸や扉の開閉を極力減らし、屋内への蚊の侵入を防ぐ。もし侵入を許した場合は、捕殺するか、家庭用殺
虫剤を使い防除を行う。室内の家具の裏側などに潜んだ場合は、ピレスロイド系のスプレータイプの殺虫剤で追
い出したうえで殺虫する。夜間使用されている蚊取り線香、蚊取りマット、液体蚊取りなどの殺虫剤は、殺虫効果
の他に、蚊を屋内に侵入させない忌避効果も期待されるため、昼間からこれらの殺虫剤を使用する方法も効果
的である。薬剤の使用以外には、蚊帳の利用も効果が期待できる。
以上のことは、緊急時だけでなく平常時から実施する必要があることを住民に周知する。
 忌避剤の使用
忌避剤は、蚊の他にも、吸血性節足動物(ブユ、サシバエ、アブ、ノミ、ダニ等)やヒルの吸血を防止する効果
がある。ディートは、忌避剤の有効成分としてもっとも広く使われており、ディート含有率 12%までのエアゾール、
ウエットシート、ローション、またはゲルを塗るタイプ等がある。人体に直接塗布して用いる忌避剤は、吸血昆虫
が非常に近くまで寄らないと効果を発揮しないことから、皮膚の露出部にむらなく塗布する必要がある。ディート
は残効性に欠けること、忌避剤の効果は、蒸発、雨、発汗、拭くことによって失われることなどから、屋外で長時
間活動する際は、定期的に再塗布することが望ましい。
 殺虫剤の散布時の注意点
成虫対策:屋外の植物の茂みは蚊成虫の格好の潜み場所であるので、その周囲を化学的防除の主な対象と
し空間処理を行う。微風で風向きが一定した時を狙い、風上から防除エリアを包括するようにして薬剤を散布す
ることが必要となる。住宅密集地の敷地内では風向きに関する心配が相対的に小さいといえるが、学校や公園
などの広い敷地内で作業を行う際には特に注意を要する。池や河川などの水系がある場合は可能なら養生す
る。また、犬猫などのペットがいる場合は、住民と共に一時的に待避させるなどの配慮が必要である。屋外で空
間処理を行う場合に利用できる代表的な製剤を表 2 に示す。
幼虫対策:発生源への殺虫剤の使用には、有機リン系化合物を有効成分とする乳剤、粒剤、油剤、水和剤な
14
どや特殊製剤の発泡錠などの剤型がある。また、昆虫成長制御剤(IGR)の懸濁剤、粒剤、発泡錠剤、水和剤な
どがある。屋外で蚊幼虫防除用に使うことができる殺虫剤製剤を表 3 に示す。一般的に、有機リン剤は即効的で
あるが長期間の効果の持続性は期待できない。一方、昆虫成長制御剤は遅効性ではあるが効果の持続性が期
待できる。
 防除対策の終了
蚊の活動は概ね 10 月下旬で終息する。従って、ここで述べた防除対策も 10 月下旬頃までがひとつの目安で
ある。
(ねずみ族、昆虫等の駆除)
第 28 条 都道府県知事は、1 類感染症、2 類感染症、3 類感染症又は 4 類感染症の発生を予防し、又はそのま
ん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症の
病原体に汚染され、又は汚染された疑いがあるねずみ族、昆虫等が存在する区域を指定し、当該区
域の管理をする者又はその代理をする者に対し、当該ねずみ族、昆虫等を駆除すべきことを命ずるこ
とができる。
2
都道府県知事は、前項に規定する命令によっては 1 類感染症、2 類感染症、3 類感染症又は 4 類感
染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止することが困難であると認めるときは、厚生労働省令で
定めるところにより、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがあるねずみ族、昆虫等
が存在する区域を指定し、当該区域を管轄する市町村に当該ねずみ族、昆虫等を駆除するよう指示
し、又は当該都道府県の職員に当該ねずみ族、昆虫等を駆除させることができる。
(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第五章「消毒その他の措置(第二十八条)」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO114.html から抜粋
媒介蚊対策に関わる記述は、チクングニア熱媒介蚊対策に関するガイドライン(H21 厚生労働科学研究費補
助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業「節足動物が媒介する感染症への効果的な対策に関
する総合的な研究」)を参考に作成した。
表 3:蚊成虫防除用殺虫剤 (別紙参照)
表 4:蚊幼虫防除用殺虫剤 (別紙参照)
15
デングウイルス媒介蚊対策フローチャート
媒介蚊対策の対象エリアの決定と
調査・対策チームの編成
(所管部局)
幼虫対策
成虫対策
家屋、建物周辺における調査
捕虫網を用いた採集
・幼虫採集と幼虫発生容器の記録
・種類の同定
・幼虫発生源の処分
・種類と採集数の記録
重要な幼虫発生源の特定
幼虫発生源および成虫密度の地図上への記録と図化
結果報告(所管部局)
・防除計画の立案(所管部局、保健所、害虫駆除を行う会社等)
・作業予定の公表および住民への協力要請および注意事項の発信
・防除作業 → 害虫駆除を行う会社等への委託
・デング熱に関する啓発
・個人所有地での幼虫対策の協力要請
防除対策の実施と発生状況の監視
(10 月下旬頃までを目安に実施)
16
添付 1: 初発例(図 5: 症例 A)の調査(保健所等の聞き取り調査)
① 発症前 3 日~7 日の活動(推定感染地の探索)
患者/保護者氏名:
患者 ID:
輸血歴:
□なし □あり(
調査日時:
調査者氏名:
年
月
日)
年
月
日)
献血歴:
□なし □あり(
質問 1) 発症 3 日前から 7 日前にどこか旅行・出張に行きましたか?(はい・いいえ)
「はい」の場合は、場所と期間を以下に記載してください。
場所 (
): 年
月 日~ 年 月 日
場所 (
): 年
月 日~ 年 月 日
質問 2) 発症 3 日前から 7 日前の、屋外活動について、以下に記載してください。特に、早朝と日中の活動が重要です。
時期
日付(曜日)
時間帯
屋外活動
①午前 6~9 時
活動内容と場所
②午前 9 時~午後 5 時
(住所等)
同行者(連絡先等)
蚊の刺咬(あり・なし・
不明)
③午後 5 時~午後 8 時
④午後 8 時~午前 6 時
⑤その他(
発症 3 日前
)
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 4 日前
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 5 日前
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 6 日前
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 7 日前
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
質問 3) 上記の期間(発症 3 日前から 7 日前)で、自宅やエレベーター内など、屋内において蚊にさされることがありましたか?(はい・い
いえ)
「はい」の場合は、具体的な場所と時間帯について以下に記載してください。
17
② 発症後の活動(感染拡大地域の探索)
患者/保護者氏名:
患者 ID:
調査日時:
調査者氏名:
質問 4) 発症前日から発症後 5 日目の期間、どこか旅行・出張に行きましたか?(はい・いいえ)
「はい」の場合は、場所と期間を以下に記載してください。
場所 (
): 年
月 日~ 年 月 日
場所 (
): 年
月 日~ 年 月 日
質問 5) 発症前日から発症後 5 日目の期間の主な滞在場所(自宅や職場など)を教えてください。
自宅等 (
)
職場等 (
)
質問 6) 発症前日から発症後 5 日目の期間の屋外活動について、以下に記載してください。
特に、早朝と日中の活動が重要です。
時期
日付(曜日)
時間帯
屋外活動
①午前 6~9 時
活動内容と場
同行者(連絡先
②午前 9 時~午後 5 時
所(住所等)
等)
蚊の刺咬(あり・なし・不明)
③午後 5 時~午後 8 時
④午後 8 時~午前 6 時
⑤その他(
発症前日
)
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症日
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症翌日
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 3 日目
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 4 日目
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
発症 5 日目
(あり・なし・不明)
(あり・なし・不明)
質問 7) 上記の期間(発症前日から 5 日目)で、自宅やエレベーター内など、屋内において蚊にさされることがありましたか?(はい・いいえ)
「はい」の場合は、具体的な場所と時間帯について以下に記載してください。
18
➂推定感染地と活動歴の詳細な情報(場所の確認の際には地図を添付することが望ましい)
患者/保護者氏名:
患者 ID:
輸血歴:
□なし □あり(
調査日時:
調査者氏名:
月
日)
年
月
日)
献血歴:
□なし □あり(
1
年
調査対象期間に公園等(周辺含む)へ訪問したかどうかと、その頻度
□毎日
□週2~6回
□週 1 回
□週 1 回未満
□なし
2
活動は □一人
□複数もしくは団体(具体的な名前:
3
主に過ごした場所 □屋外
4
主な活動の内容(複数ある場合、頻度の多かったものから番号をふって下さい。)
□屋内
)
□屋外・屋内同程度
□散歩やジョギング □ 通勤・通学路
□公園(屋外)で開催された催し物への参加や見学
□公園(屋内)で開催された催し物への参加や見学
□公園(屋外)での課外活動の練習など
□公園(屋内)での課外活動の練習など
□公園内や周辺での販売業務(屋外)
□公園内や周辺での販売業務(屋内)
□公園内や周辺での業務(公園管理など)
□ その他(
5
)
1 日当たり公園等(周辺含む)での屋外活動の時間の長さ
□30 分未満 □30 分以上 2 時間未満 □2 時間以上 4 時間未満 □4 時間以上 12 時間未満
□12 時間以上 □不明
6
屋外活動の主な時間帯(複数選択可)
□午前 6~9 時
□その他(
□午前 9 時~午後 5 時 □午後 5 時~午後 8 時
□午後 8 時~午前 6 時
)
7
主に行った屋外場所(適宜地図に○)
8
公園等(周辺含む)での屋外活動中に蚊にさされたか □はい □いいえ □不明
9
蚊に刺された場所(適宜地図に×)
10
屋外活動時の主な服装
11
屋外活動時の虫除け剤の体への塗布
□使用している(商品名
) □使用せず
使用している場合、□数時間おきに塗りなおす
12
13
□常に長袖長ズボン □それ以外 □不明
□不明
□塗りなおさない
□不明
屋内・屋外の活動場所での殺虫剤(蚊取り線香、電気蚊取などを含む)の使用
□常に使用
□時々使用
□使用せず
□不明
④同居者に関する情報:同居の方の健康状態等を把握するために以下の情報の提供にご協力ください。
続柄
名前
性別
年齢
連絡先(携帯番号等)
19
添付 2: リスクのある同行者(図 5: 同行者 B と症例 C)と初発例の同居者についての後ろ向き健康調査 (保
健所記録用) 初発例の ID(保健所設定)
氏名
性別
年齢
連絡先
職業(学生の場合は学校名)
初発例との関係
過去 4 週間のデング熱様症状:□無
過去 4 週間の海外渡航歴
□有(症状を記
(
載:
1
)
□ 健康観察の説明
デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
健康観察期間:
まで
所見:
調査実施日
)
年
月
検体採取日と結果
①
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
②
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
日
氏名
性別
年齢
連絡先
職業(学生の場合は学校名)
初発例との関係
過去 4 週間のデング熱様症状:□無
過去 4 週間の海外渡航歴
□有(症状を記載:
(
)
)
2
□ 健康観察の説明
デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
健康観察期間:
まで
所見:
調査実施日
年
月
検体採取日と結果
③
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
④
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
日
氏名
性別
年齢
連絡先
職業(学生の場合は学校名)
初発例との関係
過去 4 週間のデング熱様症状:□無
過去 4 週間の海外渡航歴
□有(症状を記載:
(
)
)
3
□ 健康観察の説明
デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
健康観察期間:
まで
所見:
調査実施日
年
月
検体採取日と結果
⑤
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
⑥
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
日
氏名
性別
年齢
連絡先
職業(学生の場合は学校名)
初発例との関係
過去 4 週間のデング熱様症状:□無
過去 4 週間の海外渡航歴
□有(症状を記載:
(
)
)
4
□ 健康観察の説明
デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
健康観察期間:
まで
所見:
調査実施日
年
月
検体採取日と結果
⑦
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
⑧
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
日
20
添付 3: リスクのある同行者 (図 5: 同行者 B)の前向き健康観察票
初発例の ID (保健所設定)
接触者の氏名
年齢
日付
0 日目
注10
備考
注9
1 日目
体温注6
性別
発疹注7
連絡先
その他の症状注8
医療機関の受診
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
:
備考:
2 日目
備考:
3 日目
備考:
4 日目
備考:
5 日目
備考:
6 日目
備考:
7 日目
備考:
8 日目
備考:
9 日目
備考:
10 日目
備考:
11 日目
備考:
12 日目
備考:
13 日目
備考:
14 日目
注11
備考:
担当者名
連絡先
注6
体温測定をしている場合は、体温を記入。測定していない場合(健康観察開始前など)は、自覚的な発熱の有
無を記録する。
注7
発疹はデング熱症例の半数のみにみられるとされている。
注8
発熱・発疹以外の症状があれば記載する。
注9
医療機関の受診結果・検体採取などに適宜記載する
注10
症例との最終接触日
注11
リスクのある同行者に関する健康観察終了日
21
添付 4: 初発例の同居者の前向き健康観察票
初発例の ID (保健所設定)
同居者の氏名
年齢
日付
0 日目
注11
体温
性別
発疹
連絡先
その他の症状
医療機関の受診
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
あり・なし
備考:
1 日目
備考:
2 日目
備考:
3 日目
備考:
4 日目
備考:
5 日目
備考:
6 日目
備考:
7 日目
備考:
8 日目
備考:
9 日目
備考:
10 日目
備考:
11 日目
備考:
12 日目
備考:
13 日目
備考:
14 日目
備考:
これ以降 52
発熱・発疹等が出現した場合は、保健所へ連絡ください
日目まで
担当者名
注11
連絡先
初発例の発症日、その他の項目は、添付 3 と共通
22
添付 5: 推定感染期間に活動した地域(図 5:地点 X)におけるデング熱疑い症例のリスト (図 5: D):医療機
関における調査(医療機関・保健所共通様式)
初発例の ID (保健所設定)
医療機関名
担当者
調査対象期間
年
氏名
性別
日(2 週間前) ~
年齢
年 月 日(調査開始日)
住所
職業
連絡先
症状
過去 4 週間の海外渡航歴
□発熱 (
℃)
□発疹
1
月
連絡先
□その他 (
発症日:
年
月
日
発症日:
年
月
日
) 発症日:
年
月
(
)
日
検体採取日と結果(保健所使用欄。デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
①
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
②
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
氏名
性別
住所
職業
連絡先
症状
過去 4 週間の海外渡航歴
□発熱 (
℃)
□発疹
2
年齢
□その他 (
発症日:
年
月
日
発症日:
年
月
日
) 発症日:
年
月
(
)
日
検体採取日と結果(保健所使用欄。デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
①
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
②
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
氏名
性別
住所
職業
連絡先
症状
過去 4 週間の海外渡航歴
□発熱 (
3
年齢
℃)
□発疹
□その他 (
発症日:
年
月
日
発症日:
年
月
日
) 発症日:
年
月
(
)
日
検体採取日と結果(保健所使用欄。デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
①
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
②
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
保健所担当者名
連絡先
23
添付 6: ウイルス血症の期間に滞在した地域(図 5:地点 Y)におけるデング熱疑い症例のリスト (図 5: E、F、
G)(医療機関用・保健所共通様式)
初発例の ID (保健所設定)
医療機関名
担当者
氏名
性別
年齢
連絡先
連絡先
職業
住所
症状
過去 4 週間の海外渡航歴
□発熱 (
℃)
□発疹
□その他 (
発症日:
年
月
日
発症日:
年
月
日
) 発症日:
年
月
(
)
日
検体採取日と結果(保健所使用欄。デング熱診断のための検査(発生動向調査届出項目参照)
①
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
②
年
月
日 □血清(結果:
) □尿(結果:
)
保健所担当者名
連絡先
24
デング熱診療ガイドライン (第 1 版)
2014 年 9 月 16 日
はじめに
デング熱はアジア、中東、アフリカ、中南米、オセアニアで流行しており、年間 1
億人近くの患者が発生していると推定される1)。とくに近年では東南アジアや中南米で
患者の増加が顕著となっている。こうした流行地域で、日本からの渡航者がデングウイ
ルスに感染するケースも多い2,3)。また、2013 年 8 月、日本に滞在したドイツ人旅行
者が帰国後にデング熱を発症しており、日本国内での感染が強く疑われていた4)。さら
に、2014 年 8 月 27 日及び 28 日、国内でデング熱に感染したと考えられた症例 3 例が確認
された。その後 9 月 16 日現在まで、新たに 121 例の患者が確認されている。これら 124 症
例の大部分は、発症前 2 週間以内の海外渡航歴がなく、都立代々木公園周辺への訪問歴が
あり、同公園周辺の蚊に刺咬されたことが原因と推定されている
5)
。このため、今後は海
外の流行地域からの帰国者だけでなく、海外渡航歴がない者についても、デング熱を疑
う必要性が生じている。
日本においてデング熱の媒介蚊となるヒトスジシマカの活動は主に 5 月中旬~10 月
下旬に見られ(南西諸島の活動期間はこれよりも長い)、冬季に成虫は存在しない。2013
年時点で、ヒトスジシマカは本州(青森県以南)から四国、九州、沖縄まで広く分布し
ていることが確認されている。デング熱を疑う際には、臨床所見に加えて、地域のヒト
スジシマカの活動状況やデング熱患者の発生状況が参考になる。
このデング熱診療ガイドラインは医療機関の医師がデング熱を疑う場合の対応及び
治療指針を示すものであり、WHO のガイドライン及び CDC のガイダンスを参考に作
成した 1) 6-8)。
デング熱の概要
デング熱はフラビウイルス科フラビウイルス属のデングウイルスによって起こる熱
性疾患で、ウイルスには 4 つの血清型がある。感染源となる蚊(ネッタイシマやヒトス
ジシマカ)はデングウイルスを保有している者の血液を吸血することでウイルスを保有
し、この蚊が非感染者を吸血する際に感染が生じる。ヒトがデングウイルスに感染して
も無症候性感染の頻度は、50~80%とされている 9)10)。症状を呈する場合の病態として
は、比較的軽症のデング熱と顕著な血小板減少と血管透過性亢進(血漿漏出)を伴うデン
グ出血熱に大別される 7)。また、デング出血熱はショック症状を伴わない病態とショック症
状を伴うデングショック症候群に分類される。
デング熱を発症すると通常は 1 週間前後の経過で回復するが、一部の患者は経過中に、
デング出血熱の病態を呈する。このうち、デングショック症候群等の病態になった患者
を重症型デングと呼ぶ1)8)。重症型デングを放置すれば致命率は 10~20%に達するが、
適切な治療を行うことで致命率を 1%未満に減少させることができる1)。なお、感染症
発生動向調査によれば、1999 年から現在までに日本国内で発症したデング熱患者で死
亡者はいなかった。
デング熱患者が重症化する要因については、血清型の異なるウイルスによる二度目の
感染に起因するという説がある1)。一方、ウイルス自体の病原性の強さによるとの説も
ある。
(症状および検査所見)
日本国内で診断されたデング熱患者の症状や検査所見の出現頻度を表 1 に示す 3)。3~7 日
の潜伏期間の後に、急激な発熱で発症する。発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐な
どの症状がおこる。ただし、発熱以外の症状を認めないこともある。発症時には発疹はみ
られないことが多いが、皮膚の紅潮がみられる場合がある。通常、発病後 2~7 日で解熱す
る。皮疹は解熱時期にでることが多く、点状出血(図 1)
、島状に白く抜ける麻疹様紅斑(図
2)など多彩である。検査所見では血小板減少が認められ、白血球減少も約半数で見られる。
また CRP は陽性化しても他疾患と比較すると高値にならないとの報告もある 11)。デング熱
を疑う目安を表2に示した 6)。
血管透過性亢進を特徴とするデング出血熱は典型的には発病後 4-5 日で発症する。この病
態は 2~3 日続き、この時期を乗り切ると 2~4 日の回復期を経て治癒する。しかしながら、
病態が悪化しデングショック症候群となった場合、患者は不安・興奮状態となり、発汗や
四肢の冷感、血圧低下がみられ、しばしば出血傾向(鼻出血、消化管出血など)を伴う。
デングショック症候群を含む重症型デングの診断基準を表3に示した。また、重症化のリ
スク因子としては、妊婦、乳幼児、高齢者、糖尿病、腎不全などが指摘されている 6)。
(診断)
デング熱患者の確定診断には、血液からのウイルス分離や PCR 法によるウイルス遺伝子
の検出、血清中のウイルス非構造タンパク抗原(NS1 抗原)や特異的 IgM 抗体の検出、ペア
血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇、が用いられる。これらの検査法は、発病か
らの日数によって陽性となる時期が異なる 7)。デング熱の鑑別疾患としては、麻疹、風
疹、インフルエンザ、レプトスピラ症、伝染性紅斑(成人例)、伝染性単核球症、急性
HIV 感染症などがあげられる。
図3に国内におけるデング熱診療の流れを示す。医師が患者にデング熱を疑う目安
(表2)に該当する症状を認めた場合は、必要に応じて、診断に加えて適切な治療が可
能な医療機関に相談または患者紹介する。デング熱疑い例を探知したが、医療機関でウ
イルス学的検査を実施できない場合、地域の保健所に相談の上、地方衛生研究所(地研)
ないしは国立感染症研究所(感染研)に検査を依頼することができる。
デング熱は感染症法で 4 類感染症全数届出疾患に分類されるため、診断した医師は直
ちに最寄りの保健所に届け出る必要がある。届出の詳細は、以下のウェブを参照されたい
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-19.html)
。
(治療)
デングウイルスに有効な抗ウイルス薬はなく、対症療法を行う。すなわち、水分補給
や解熱剤(アセトアミノフェンなど)の投与等である。アスピリンは出血傾向やアシド
ーシスを助長するため使用すべきでない。また、イブプロフェンなどの非ステロイド性
抗炎症薬も胃炎あるいは出血を助長することから使用すべきでない 6)。
1.
外来治療
経口水分補給が可能で、尿量が確保されており、重症化サイン(表4)が認められな
い場合は外来治療も可能である 6)。ただし外来で治療する場合も、経過中に重症化サイ
ンの出現の有無を慎重に経過観察することが必要である。経口水分補給ができない場合
は、生食や乳酸リンゲル液などの等張液輸液を開始する。数時間の輸液により、経口水
分補給が可能になったら、輸液量を減じる。通常、輸液は 24~48 時間のみで十分であ
る。
2.
入院治療
重症化サイン(表4)が認められる場合は入院が必要である 6)。代償性ショックの患
者に対しては生理食塩水や乳酸リンゲル液などの等張液 輸液を開始し、血管透過性亢
進の指標となるベースラインのヘマトクリット値からの上昇率(%Ht)を監視すること
が重要である。重症化サインを認める患者に対する輸液療法について表5に示す。生食
や乳酸リンゲル液などの等張液輸液を 5~7 ml/kg/時から開始し、臨床症状の改善に応じ
て、輸液速度を減じる。さらに、臨床所見と Ht 値を再検し、Ht 値が同程度あるいは
軽度の増加であれば同じ速度の輸液を継続する。もし、臨床所見が悪化し、Ht 値が増
加すれば輸液速度を増加し、その後に再評価をする。回復期には輸液過剰による肺水腫、
腹水、低ナトリウム血症などの危険があることから、厳重な輸液管理を行うことが重要
である。Ht 値以外にも、患者の熱型、輸液量、尿量、及び白血球数、血小板数等の検
査所見の監視が必要である。また、解熱後の病態安定を確認するための観察期間は 2~3
日を目安とする。
表3に示す重症型デング(重症の血漿漏出症状、出血症状、臓器障害)の患者に対し
ては集中治療が必要である 6)。血液量減少性ショックの患者には、生食や乳酸リンゲル
液などの等張液を投与することで、ショック状態からの脱出を試みる(表 5 参照)
。患
者の状態が回復すれば、輸液速度を減じる。患者の状態が改善しない場合は、さらなる
等張液の投与が必要となる。粘膜出血はしばしば解熱期頃に見られるが、通常は問題な
く改善する。もし、消化管等からの大量出血が認められた時には、濃厚赤血球輸血を考
慮する。血小板減少に対して、血小板輸血は必ずしも必要ではない。
(予防)
デング熱には現時点でワクチンがないため、予防には蚊に刺されないような予防対策
をとる 12)。
海外では、デング熱を媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカは、都市やリゾート
地にも生息しており、とくに雨季にはその数が多くなる。また、これらの蚊は特に昼間
吸血する習性があり、蚊の対策は昼間に重点的に行う必要がある。
国内では、ヒトスジシマカが媒介蚊であり、昼間に活発に活動する。医療機関におい
ては、デング熱患者が入室している病室への蚊の侵入を防ぐ対策も重要である。有熱時
にはウイルス血症を伴うため、蚊に刺されないように患者に指導することが重要である。
また、デング熱は患者から直接感染することはないが、針刺し事故等の血液曝露で感
染する可能性があるため充分に注意する。また患者が出血を伴う場合には、医療従事者
は不透過性のガウン及び手袋を着用し、体液や血液による眼の汚染のリスクがある場合
にはアイゴーグルなどで眼を保護する。患者血液で床などの環境が汚染された場合には、
一度水拭きで血液を十分に除去し、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。院内感染
予防のための患者の個室隔離は必ずしも必要ない。
おわりに
本ガイドラインは、デング熱診療マニュアル(第一版、2014 年 9 月 3 日公開)を刷新した
ものであり、平成 26 年度新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「国
内侵入・流行が危惧される昆虫媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立に関する
研究」(研究代表者:国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦室長)において、研究分
担者濱田篤郎(東京医科大学渡航者医療センター)及び以下の研究協力者により作成され
た。
国立感染症研究所感染症疫学センター:大石和徳、多屋馨子
国立国際医療研究センタ−病院国際感染症センター:大曲貴夫
都立墨東病院感染症科:小林謙一郞
文献
1) World Health Organization: Dengue and severe dengue. WHO Fact sheet No117
(Updated September 2014)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs117/en/
2) Takasaki T.: Imported dengue fever/dengue hemorrhagic fever cases in Japan.
Tropical Medicine and Health. 39: 13-15, 2011
3) 国立感染症研究所:デング熱 2006~2010 年 IDWR. 13: 13-21, 2011
4) 厚生労働省結核感染症課:デング熱の国内感染疑いの症例について 健感発 0110 第 1
号. 2014 年 1 月 10 日 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000034381.html
5) 厚生労働省結核感染症課:デング熱の国内感染症例について(第十三報)事務連絡.
2014 年 9 月 16 日
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20140911-01.pdf
6) Dengue Guidelines for treatment, prevention and control. Geneva. World Health
Organization, 2009
7) CDC Dengue Homepage :Laboratory guidance and diagnostic testing
http://www.cdc.gov/dengue/clinicalLab/laboratory.html
8) CDC Dengue Homepage :Clinical guidance
http://www.cdc.gov/dengue/clinicalLab/clinical.html
9) Knipe DM, Howley PM. Filed Virology 6 th edition.
10) Tien NT, et al. A prospective cohort study of dengue infection school children
in Long Xuyen, Vietnam. Trans R Soci Trop Med Hyg 104:592-600, 2010.
11)Kutsuna S, et al.: The usefulness of serum C-reactive protein and total bilirubin
level for distinguishing between dengue fever and malaria in returned travelers.
Am. J. Trop. Med. Hyg.90: 444-448, 2014
12)濱田篤郎、山口佳子:デング熱の予防対策. バムサジャーナル, 26:26-30、2014
表1.デング熱患者にみられる症状や検査所見
症状・検査所見
発生頻度*
発熱
99.1%
血小板減少
66.4%
頭痛
57.6%
白血球減少
55.4%
発疹
52.7%
骨関節痛
31.1%
筋肉痛
29.1%
*2006 年~2010 年に日本国内で診断されたデング熱患者 556 例
における各症状や検査所見の発生頻度を示す。詳細は文献3を参照。
表 2.デング熱を疑う目安(文献6)
海外のデング熱流行地域から帰国後、あるいは海外渡航歴がなくてもヒトスジシマカの
活動時期に国内在住者において、A の2つの所見に加えて、B の2つ以上の所見を認め
る場合にデング熱を疑う。
(A)必須所見
1. 突然の発熱(38℃以上) 2.急激な血小板減少
(B)随伴所見
1.皮疹 2.悪心・嘔吐
3.骨関節痛・筋肉痛
4.頭痛 5.白血球減少
6.点状出血(あるいはターニケットテスト陽性)
表 3.重症型デングの診断基準(文献6)
デング熱患者で以下の病態を1つでも認めた場合、重症型デングと診断する。
1.重症の血漿漏出症状(ショック、呼吸不全など)
2.重症の出血症状(消化管出血、性器出血など)
3.重症の臓器障害(肝臓、中枢神経系、心臓など)
表 4.重症化サイン(文献6)
デング熱患者で以下の症状や検査所見を1つでも認めた場合は、重症化のサイン有りと
診断する。
1. 腹痛・腹部圧痛、2.持続的な嘔吐、3.腹水・胸水、4.粘膜出血
5. 無気力・不穏、6.肝腫大(2 cm 以上)
、7.ヘマトクリット値の増加(20%以上)
表 5. 重症化サインを認める患者に対する輸液療法(文献6)
代償性ショックの場合

生食や乳酸リンゲル液などの等張液を 5~7 ml/kg/時(1~2 時間)から開始する。

臨床症状の改善に応じて、輸液速度を 3~5 ml/kg/時(2~4 時間)さらに 2~3 ml/kg/
時(2~4 時間)と減じる。

臨床所見と Ht 値を再検し、Ht 値が同程度あるいは軽度の増加であれば 2~3 ml/kg/
時(2~4 時間)の輸液を継続する。

臨床所見の悪化に伴って Ht 値が増加すれば 5~10ml/kg/時に輸液速度を増加し、
1~2 時間後に再評価をする。
血液量減少性ショックの場合

生食や乳酸リンゲル液などの等張液の 20 ml/kg を 15 分かけて静注する。患者の
状態が回復すれば、輸液速度を 10 ml/kg/時として 1 時間継続し、その後も輸液速
度を減じる。
図 1.デング熱患者の皮疹:解熱時期にみられた点状出血
図2.デング熱患者の皮疹:解熱時期にみられた島状に白く抜ける麻疹様紅斑
図3.国内におけるデング熱診療の流れ
参考資料5
東京都蚊媒介感染症対策会議
検討経過概要
平成26年12月17日
東京都福祉保健局技監
前田秀雄
1
経過
8月26日
さいたま市で国内感染疑われる患者 発生。PCR陽性。積極的疫学調査にて
代々木公園での蚊の刺咬歴あり。また、同級生に発熱患者ありとの情報を得る。
8月27日
厚生労働省が国内感染症例の発生を報道発表。
学校所在地保健所が在籍する学校へ疫学調査を行い2名の有症状者を確認。
都において代々木公園の蚊のウイルス保有調査を行うがウイルス検出されず。
8月28日
都内及び埼玉県内の医療機関から発生届あり報道発表。
初発例とあわせた3名とも、代々木公園渋谷門付近での刺咬歴があることから、
渋谷門付近を感染地と推定して半径75mの範囲で公園管理者が蚊を駆除。
9月 1日
報道発表を受け、医療機関が患者の再診査等を実施し、新たに代々木公園及
びその周辺への訪問歴がある19名 (うち都内13名) のデング熱患者が発生
していたことが判明。
9月 4日
代々木公園の蚊のウイルス保有調査で、10か所中4か所からウイルスを検
出。公園管理者が代々木公園A地区を閉鎖。
9月 5日
新宿中央公園で感染した可能性のある患者が発生。
以後、都内複数の公園で感染した可能性のある患者が発生。
2
東京都におけるデング熱患者発生動向
9
8
代々木公園周辺(n=69)
国内感染第1例報
新宿中央公園(n=7)
7
外濠公園(n=2)
上野公園(n=2)
6
報告数
明治神宮外苑(n=1)
5
不明(n=20)
4
3
2
1
0
発症日
国内感染第1例確認時には、既に代々木公園内で二次感染が発生し、周辺地
域へも感染が拡大していた。
3
デング熱国内感染事例の検証
代々木公園を推定感染地として多数のデング熱患者が発生し、同じデングウイルスによる
感染が他の場所においても確認(1例のみ代々木公園のウイルスと異なる)
患者報告数(8月27日~10月31日) 全国160人(うち都内108人)
○ 国内感染事例のうち、
推定感染地が代々木公園とその周辺のものが約8割
☞ 7月下旬には公園内にウイルス保有蚊が存在と推測
☞ 8月中旬から8月下旬には
公園内にウイルス保有蚊が多数存在と推測
〔推定感染地別割合 n=160〕
その他
不明
19.4%
代々木
公園
周辺
29.4%
代々木
公園
51.2%
☞ 9月上旬の調査における蚊の採集結果から
公園内に非常に多くの蚊が生息と推測
代々木公園で多数の患者が出た要因として考えうること
○海外渡航歴・滞在歴のある利用者が多く海外からウイルスが持ち込まれる機会が多いこと
○蚊の数と公園利用者数が多く、ウイルス保有蚊発生と感染拡大リスクが高いこと
○患者発生が把握されるまでに時間がかかったこと
○定期的利用者・長時間利用者等が多く、さらにウイルス保有蚊が増える素地があったこと
4
デング熱対策実施上の課題
今回のデング熱国内感染事例への対応は、経験・知見の蓄積がない中での対応
(医療・検査体制)
○デング熱検査の保険適用による診断体制の整備
○海外渡航歴のない患者へのデング熱の治療
(保健所の対応等) ○感染患者への適切な疫学調査実施
○蚊の調査や駆除の実施など役割分担の明確化
(蚊の対策)
○蚊の発生抑制の取組への社会的コンセンサス
○患者発生時の蚊の駆除方法、公園閉鎖等の標準化
○薬剤散布による生態系への影響
(情報提供)
○発生状況の正確な情報提供
5
現在検討中の方向性(基本的考え方)
○ 感染症対策としての基本的考え方
感染経路としての蚊による媒介を防止することを第一とする。
国内感染発生時は感染の拡がりを限局的にすることを目標とする。
○ 海外輸入例への対策
海外から感染者がウイルスが持ち込むことを防ぐことは不可能
海外での感染者への適切な対応により、持ち込まれたウイルスが
感染源とならないように努める
○ 国内感染例への対策
患者が発生した場合には、迅速に発症前後の刺咬歴等の疫学調査
を行うとともに、それに基づいた的確な蚊の対策等に取り組み、感
染を限局的なものにとどめることを目指す
○ 官民協力等による対策
蚊の発生予防、蚊に刺されない工夫等、関係者の協働により取組
○ 総合的な対策
対策の実施にあたっては、健康への影響、自然環境への影響、都
民の社会生活への影響等を総合的に検討
6
現在検討中の方向性(発生段階とその定義・目標)
<目標>
海外から持ち込まれたウイルスが都内で新たな感染源とならないように
努めるとともに、国内感染症患者発生の場合は感染の拡がりを限局的な
ものにとどめる
患者未発生時
患者発生時
海外輸入例を
除き国内感染
例がない
都内で国内感
染例が発生
官民協力して、第一に蚊の発生を抑
制し、あわせて蚊に刺されない工夫に
取り組むことで、デング熱発生リスク
を低下させる
注意喚起と必要な蚊の対策(駆除)を
速やかに実施し、感染の拡大及び伝
播を抑える
複数の発生地
で伝播が継続し、 重症者・死亡者をできるだけ少なくす
アウトブレイク
る
多数の患者が
時
発生
7
現在検討中の方向性(発生段階ごとの主な対策)
患者
未発生時
○
○
○
○
○
早期診断のための医療・検査体制の整備
海外感染患者への調査・PCR検査、シークエンス解析
蚊の発生抑制(幼虫対策)
蚊サーベイランスによる監視
住民への正しい知識の普及啓発による刺咬忌避を推奨
患者発生時
○
○
○
○
○
専門医療機関による医療体制
国内感染患者への調査、PCR検査、シークエンス解析
蚊の駆除(成虫対策)の実施
都民や利用者への注意喚起
必要に応じた施設利用制限
アウト
ブレイク時
○ 専門医療機関による重症者への医療体制
○ 流行地域や患者総数の情報提供による注意喚起
8
参考資料
会議の検討経過
種別
開催日
議題
現状報告
今後の検討の進め方確認
第1回対策会議
9月19日
第2回対策会議
10月16日
事例検証
検討課題の整理
第1回作業部会
10月31日
発生段階(フェーズ)と基本的考え方検討
課題への対応の検討(平時)
第2回作業部会
11月14日
発生段階(フェーズ)と基本的考え方検討
課題への対応の検討(患者発生時)
第3回作業部会
12月8日 作業部会まとめの検討
第3回対策会議
12月22日
対策会議まとめの検討
(予定)
9
参考資料
対策会議委員
所 属
氏 名
独立行政法人地域医療機能推進機構理事長
名誉世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長
尾身
長崎大学熱帯医学研究所客員教授
一盛 和世
厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室長
中嶋 建介
国立感染症研究所ウイルス第一部第二室室長
高崎 智彦
国立感染症研究所昆虫医科学部部長
沢辺 京子
東京検疫所検疫衛生課長
横塚 由美
公益社団法人東京都医師会理事
角田
一般社団法人日本渡航医学会理事長
東京医科大学病院渡航者医療センター教授
濱田 篤郎
都立駒込病院感染症科医長
菅沼 明彦
国立国際医療研究センター病院国際感染症センター医師
忽那 賢志
川崎市健康福祉局医務監
坂元
渋谷区健康推進部長兼保健所長
広松 恭子
福生市福祉保健部長
森田 秀司
東京都多摩府中保健所長
早川 和男
東京都健康安全研究センター所長
田原なるみ
東京都福祉保健局技監
前田 秀雄
茂
徹
昇
10
参考資料6
西宮市の
感染症媒介蚊対策の現状
デング熱対策を振返って
西宮市 環境衛生課 大石浩二
1
はじめに
西宮市は、
兵庫県の南東部、大阪と神戸の中間に位置
市域 100.18㎢
おおむね南部地域は平野部 北部地域は山間部
住宅地として発展 人口約48万7千人
2
昆虫等駆除事業の概要
伝染病予防法の時代からの防疫担当チーム(11名)
直営で実施
○感染症発生時の消毒・駆除
○災害発生時の消毒
○昆虫等駆除 (公共の場所のねずみ、蚊、ゴキブリ、マダニ、
セアカゴケグモ、アルゼンチンアリ、毛虫、ユスリカ、チョウバ
エ、ダニ、回虫卵、スズメバチ・・・など)
○啓発事業 (電話相談、現場指導、出張講座、街頭相談、
喘息相談、イベント出展、ホームページ、花粉計測など)
○研究事業 (国立感染症研究所、兵庫医療大学、大阪市
立大学、奈良女子大学など)
3
感染症媒介蚊対策の現状(平常時)①
平常時
市民が蚊に刺される確率(回数)を下げ、感染症発
生リスクを少しでも軽減できればと考えている
蚊に刺される確率(回数)を下げるには、蚊の数を減
らすことと、蚊から身を守る術を伝えること
蚊の数を減らすには、駆除することも必要だが、発
生させないことが重要
4
感染症媒介蚊対策の現状(平常時)②
○身を守る術を伝える
蚊の習性を知り、刺されない工夫 →啓発事業
○発生させない
民有地 →啓発事業
公有地 →構造や管理方法の変更を依頼
○駆除する
蚊に刺される確率の高い場所を重点的に
蚊に刺される場所といえば、公園と自宅周辺
公園 →市が駆除 自宅周辺 →啓発事業
5
感染症媒介蚊対策の現状(平常時)③
蚊の駆除事業
成虫になって飛び回る前に、幼虫のうちに駆除
(公園対策)
公園約600箇所を定期的に確認
容器の放置確認 雨水ます等に昆虫成長制御剤
発生源が確認された公園は、月1回処置
(墓地対策) 典型的な発生源となる墓地の花立て
(道路水路対策) 側溝や会所、澱みなど
(暗渠対策) アカイエカの越冬場所(暗渠等)に薬剤
散布し、春の初期発生数を減らす
6
感染症媒介蚊対策の現状(平常時)④
蚊の啓発事業
発生させない工夫
蚊に刺されない工夫
(出張講座) 市民を対象にした学習会等
(街頭相談会) 商業施設の店頭で無料害虫相談
(イベント出展) 他課主催イベントに出展参加
(ホームページ等) 市の広報紙やHPで広報
(電話相談) 各種害虫の対処方法のアドバイス
現地で具体的な対処方法の提案も
7
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)①
平常時の準備
発生時に対応できる知識を身に付けておく
効果的に駆除する技能を身に付けておく
薬剤や機材を備蓄しておく
保健所等との関係を密にし、連携の確認をしておく
8
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)②
感染症発生時の対応
迅速かつ的確に蚊を駆除する
幼虫対策も必要
【 実例で紹介させていただきます 】
9
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)③
平成26年 10月
1日(水)
市内医療機関からデング熱疑い症例の一報
市保健所の簡易検査で陽性
西宮市在住の女子学生
9月16日 マレーシアから帰国
22日17時頃 自宅で蚊に刺される
28日 発症(突然の高熱)
10
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)④
2日(木)
発症前の海外渡航歴 →輸入症例と判断
遺伝子解析を国立感染症研究所に依頼
患者宅周辺調査
→生息密度は低いもののヒトスジシマカを確認
11
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑤
6日(月)
遺伝子解析結果 代々木の株と一致 国内感染例
駆除範囲を設定
戸建住宅と共同住宅が混在する地域
推定感染場所から半径約200m 約156,000㎡
(半径150mの範囲とその周辺部)
移動距離を50mと想定
複数の感染蚊が存在している場合、×2
想定移動距離の誤差を考慮、×1.5
念のため隣接する街区、+50m
50m×2×1.5+50m=200m
12
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑥
7日(火)
14時 厚生労働省発表
15時 西宮市プレス発表
住民周知 約1,100世帯訪問(職員30名)
駆除通知文、駆除承諾書、啓発チラシを配布
駆除承諾276件
蚊の捕獲調査 8分間捕集(人囮)法(職員5名)
11箇所中7箇所でヒトスジシマカのメス69匹
13
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑦
8日(水)
駆除作業(職員9名)
400区画中 344件処理
残56件は 不在かつ未承諾
捕獲した蚊のウイルス検査
県立健康生活科学研究所に依頼 →陰性
9日(木)
駆除作業(職員4名)
56件再訪問 31件処理 残25件
14
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑧
10日(金)
未処理25件について連絡待つことに
駆除作業依頼なし 空き家か?
14日(火)
駆除成果の確認(職員2名)
駆除前と同一場所、同一方法で蚊の捕獲調査
蚊の捕獲 0匹
15
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑨
駆除範囲
半径約200m(半径150mと周辺部)
約156,000㎡
住宅地(戸建住宅と共同住宅が混在)
400区画(約1,100世帯)、道路等
駆除実績
400区画中 375区画 (処置率93.8%)
蚊捕獲数 作業前69匹 → 作業後0匹
16
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑩
作業内容
成虫対策 潜み場所に薬剤散布
幼虫対策 雨水ます等に昆虫成長制御剤
水を排出できるものは排出
使用薬剤 レナトップ(100倍希釈)
スミラブ発砲錠
17
1,500L
1,000g
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑪
駆除作業を実施して感じたこと
① チクングニア熱(ヒトスジシマカ)対策の駆除担当
職員用資料を作成するなど、以前から蚊対策を想定
していたため、慌てることなく対応できた。
② デング熱発生前に庁内関係課で対策会議を行
なっていたため、連携が比較的スムーズであった。
③ 保健所職員も蚊の知識を持って患者と面談したた
め、聞き取り内容が的確であった。
18
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑫
駆除作業を実施して感じたこと
④ 駆除作業前の蚊の捕獲調査時に報道陣が多数詰
め掛け、人囮の誘引効率が悪かった。住民からの苦
情も。このことを受け、駆除作業時は報道規制をか
けた。
⑤ 駆除範囲は、中心点が特定されないように街区単
位で線引きを行なった。
⑥ 駆除範囲を半径150mとし、念のために駆除を行
なう周辺部(200m付近まで)を設けたため、線引きに
対する苦情はあまり寄せられなかった。
19
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑬
駆除作業を実施して感じたこと
⑦ 化学物質に敏感な方の対応や、動植物への影響
など、住民への周知を徹底した。
⑧ 留守宅が多く、効果的に駆除できないことが懸念
されたため、前日に作業承諾をいただき、留守で
あっても作業ができるよう対応した。
⑨ 賃貸住宅は家主の承諾が必要なため、駆除前日
の全戸訪問時に連絡先を把握し、連絡した。
⑩ 駆除区域内の公共施設が児童遊園のみで、駆除
作業時の閉鎖のみで対応できた。
20
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑭
駆除作業を実施して感じたこと
⑪ 駆除作業従事者全員が知識と技能を備えていた
ため、少人数で行なえた。ヒトスジシマカの駆除練習
をしていた効果があった。
⑫ 職員9名で駆除作業を行なったが、9時から日没
後までかかった。増員すべきであった。
⑬ 駆除作業従事者が市職員であったため、住民説
明も責任を持って同時に行なえた。駆除作業が委託
業者であれば、市職員の同行が必要。
21
感染症媒介蚊対策(感染症発生時)⑮
駆除作業を実施して感じたこと
⑭ 蚊の減少時季であったため、まん延防止対策を短
期間で終了できた。
⑮ 患者が自身の行動や蚊に刺された経験を明確に
記憶しており推定感染地を1箇所に限定できた。蚊
に刺された場所が複数又は不確定であれば対応が
困難であった。
22
今後の課題①
実際に感染が発生してしまった
→感染症媒介蚊対策の強化が必要
(1)啓発事業の充実
感染症への関心が薄い
害虫の知識の無い世代が大半
正しく理解してもらう必要
(2)平常時の駆除事業の再検証
どのレベルまで駆除するか
市民の協力を得られれば効果が高い
23
今後の課題②
(3)業務体制
市町村の防疫担当チームが縮小される傾向
担当職員の配置(養成)の義務化
害虫駆除業者の技能と組織力が課題
作業従事者全員に知識と技能が必要
(蚊の駆除市場が小さいため経験不足)
機材・人員確保の即時対応
(先約の仕事をキャンセルできない)
→業者団体の組織力強化
24
参考資料7
デング熱(蚊媒介性感染症)に対する熱海市の状況
1
熱海市の体制
熱海市では、平成10年頃までは消毒の年間スケジュール表を作成し、市職員が消毒
をしていました。しかし、現在では、町内会等が自主的に消毒する場合の消毒機の貸し
出しや消毒薬の提供をしています。市としては、日頃から住民等からの要請があれば、
いつでも対応できる準備をしています。市の害虫駆除機の保有台数は6台(手押し式1
台、肩掛け式5台)です。
2
今回の対応
9月17日13:00
熱海保健所より第1報を受信
初島の民間事業所勤務の男性で、最近首都圏へ出かけている
9月18日 9:00 静岡県が報道発表
9:30
12:45
※
地元説明会開催
市による駆除作業実施
初島区・民間事業者による蚊の駆除作業(9/ 18、19、20、22)
側溝等に薬剤を散布しボウフラを駆除
ボウフラの発生を抑えるため、畑の溜り水を流す
その他の対応として、虫よけスプレー等を各施設に用意
10月 2日 初島区・民間事業所・市による全島一斉の駆除作業実施
3
現地の状況
駆除作業については、市民への二次感染の防止、及び発生した時期が秋の行楽シーズ
ンであったため、観光業への影響を最小限にすることを目標に実施しました。また、風
評被害を避けるためにも、観光客に安心して来てもらうため、島内全域で駆除作業を実
施することとしました。
駆除作業は、初島区・民間事業所及び市が一丸となって実施し、その結果、二次感染
者はでませんでした。また、観光客からの観光団体等への問い合わせもほとんどありま
せんでした。今回は、感染場所の特定はされませんでしたが、島民の結束も強くなった
ように感じています。
4
市の補助制度
町内や地域の害虫駆除に必要な駆除機を町内会が購入する場合、購入費補助金を交付
しています。補助額は、
(害虫駆除機の購入費)×(1/3)=補助金(ただし、最高限
度額10万円)です。
5
害虫駆除機の申請台数・交付額・貸出台数
年 度
6
害虫駆除機購入費補助金
申請台数
交付額(千円)
貸出台数
21
0
0
37
22
0
0
34
23
0
0
46
24
1
100
27
25
1
100
45
今後の対応
今年、デング熱に国内で感染した症例について、1940年代に報告されて以来、数
十年ぶりに報告され、熱海市内でも患者が確認されました。国際的な人の移動の活発化
から、来年度以降も発生する可能性があり、市としても発生の予防に向けた取り組みを
していく必要があると考えています。
2
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