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“伊達マスク”の実態と着用要因

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“伊達マスク”の実態と着用要因
“伊達マスク”の実態と着用要因
檀野竹美 1・仲澤祐子 1(非会員)
・上野智江 1(非会員)
(1 筑波大学大学院生涯発達専攻カウンセリングコース)
キーワード:伊達マスク、マスク着用、心理的効用
The actual situation of wearing “Date-Mask(Mask for show)” and factors influencing wearing it
Takemi DANNO1, Yuko NAKAZAWA1, and Tomoe UENO
1
( Graduate School of Lifespan Development, Univ. of TSUKUBA)
Key Words: Date-Mask, Wearing Mask, Psychological effect
背景と目的
近年、“伊達マスク”(本来の衛生上の理由とは異なる目的
で常にマスクを着用すること:原田,2010)現象が、書籍、
新聞、雑誌で取り上げられている。
“伊達マスク”を直接的に扱った心理学的研究は見られな
いが、
「装い」と性格特性などの観点から、女性の化粧に関す
る研究は数多く報告されている。松井・岩男・菅原の一連の
研究(1985)では、メイク化粧度が高い層ほど、異性や同性
に対する魅力の上昇という対人的効用の肯定度が高くなるこ
と、多くの女性が、化粧をすることによる気分転換や緊張感
という感情面の効用を認めていること、公的自意識の高い人
は、化粧をするのが好きなど化粧に対する 15 の態度の項目ほ
ぼすべてに“当てはまる”群が優位に高いと回答したことを
明らかにしている。深田・梶本(2014)は、コミュニケーシ
ョン不安の高い女性は、場所によってノーメイクで外出する
ことが困難であることを明らかにしている。鈴木(2006)は、
化粧、衣服、ダイエットを“装い”とし、装いの背景には賞
賛獲得欲求という目的があると報告している。
本研究では、マスク着用の意識と実態を調査し、
“伊達マス
ク”着用に影響する要因(性格特性・思考特性・着用理由)
を明らかにすることにより、
“伊達マスク”を着用する心理的
背景を探ることを目的とする。
方 法
調査対象 15 歳以上の男女 286 名(男性 138 名、
女性 148 名、
10 代:4.9%、20 代:23.3%、30 代:25.6%、40 代:16.7%、
50 代:19.1%、60 代:8.3%、70 代:2.1%)であった。
調査方法 2014 年 8 月 15 日~9 月 25 日に個別自記入形式の
質問紙調査を行った。筆者らの知人・友人及びその家族に手
渡し、回収した、あるいは、郵送配布・回収した。
調査内容 性別、年齢、マスク着用の理由 13 項目(e.g.,
“風
邪をひいたとき”
、
“ファッションとして”など,
“1 = よく着
ける”から“4 = 全く着けない”
)
、マスク着用による心理的
効用 11 項目(e.g.,“マスクを着けると別の自分になれる”
、
“マスクを着けるとスッピンを隠せるから便利だ”など,
“1 =
とてもあてはまる”から“6 = 全く当てはまらない”)
、公的
自意識尺度(5 件法: 菅原,1984)
、自尊感情尺度(5 件法: 山
本・松井・山成,1982)
、外向性尺度(5 件法: 柳井・柏木・国
生,1987)、日常生活演技尺度(5 件法: 定廣・望月,2011)を尋
ねた。
結 果
独自作成したマスク着用の理由については因子分析(主因
子法,プロマックス回転)を行い、2 因子を抽出した。第一
因子は、
“風邪をひいたとき”、
“花粉症などの対策”などの項
目への負荷が高く、
“従来型”と命名した(α=.83)
。第二因
子は、
“ファッションとして”、
“顔を隠すため”などの項目へ
の負荷が高く、
“伊達マスク型”と命名した(α=.79)
。独自
作成したマスク着用による心理的効用については、主成分分
析を行い、一次元性を確認した(α=.85)
。
マスク着用の理由の各因子について、性別に t 検定を行っ
た結果、従来型(男性: n=136,M=2.15,SD=0.76 ; 女性: n
=146,M=2.46,SD=0.75,p < .001)
、伊達マスク型(男性: n
=128,M=1.09,SD=0.03 ; 女性: n=145,M=1.49,SD=
0.05,p < .001)で、
“従来型”
“伊達マスク型”ともに男性よ
り女性が高かった。マスク着用による心理的効用についても、
男性(n=132,M=1.69,SD=0.74)より女性(n=146,M=
2.08,SD=0.80)の方が,高かった(p < .001)
。
マスク着用の理由に影響する要因を明らかにするため、
Fig.1 に示す 3 水準に整理し、重回帰分析(強制投入法)の繰
り返しによるパス解析を行った。なお、パスは有意なものの
み記載した。
公的自意識
自尊感情
.319**
.553**
マスク着用による
.437**
心理的効用
.732**
外向性
-.178*
日常演技
従来型
.555**
伊達
マスク型
Fig.1 マスク着用行動(理由)を規定するパス図
注) 矢印は黒が男性、灰が女性、実線が正、破線が負を表す
考 察
マスク着用の心理的効用を認めている人は、男性、女性と
も“従来型”
“伊達マスク型”のどちらの着用理由でも、マス
クを着けていることが明らかとなった。
“伊達マスク”の着用
理由に影響する要因を見ると、男女別の特徴がみられた。す
なわち、公的自意識の高い女性ほど、マスク着用による心理
的効用を認め,
“伊達マスク”を着用していた。公的自意識の
高い女性は、他者の視線を気にするため、スッピンで外出す
ることはしないが、マスクを利用してスッピンを隠したり、
目元だけ化粧をして目元美人を装ったり、小顔効果を演出す
るなど外見をよくするため、臨機応変にマスクを利用してい
ると考えられる。一方、男性は、自尊感情からマイナスのパ
スが“伊達マスク型”に出ており、自尊感情の低い人ほど、
“伊達マスク”をつけることが明らかになった。この結果は、
自尊感情の低い男性が、自信のない自分を隠すツールとして、
“伊達マスク”を利用していることを示唆する。
同じ“伊達マスク型”の着用であっても、女性は積極的な
用途で使用する一方、男性は消極的な用途で使用すると考え
られ、伊達マスク着用の心理的背景が男女で異なることが示
唆された。
謝 辞
本研究は、筑波大学大学院カウンセリングコース「社会調査法」
の授業課題として行った。ご指導いただいた、松井豊教授(筑波
大学)、仲嶺真氏(筑波大学大学院)に心より感謝申し上げます。
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