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「高効率廃棄物発電技術開発」 (廃棄物ガス化溶融発電技術開発)

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「高効率廃棄物発電技術開発」 (廃棄物ガス化溶融発電技術開発)
「高効率廃棄物発電技術開発」
(廃棄物ガス化溶融発電技術開発)
事後評価報告書
平成14年7月
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「高効率廃棄物発電技術開発」分科会
目
次
はじめに
分科会委員名簿
分科会審議経過
評価概要
第1章
1.
2.
3.
4.
5.
評価の実施方法
評価目的
評価者
評価対象
評価方法
評価項目、評価基準
第2章
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
プロジェクトの概要
国の関与の必要性、制度への適合性
事業の背景・目的・位置付け
事業の目標
事業の計画内容
実用化、事業化の見通し
今後の展開
研究開発成果
第3章
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
評 価
NEDOの関与の必要性、制度への適合性に関する評価
事業の背景・目的・位置付けに関する評価
事業の目標に関する評価
事業の計画内容に関する評価
実用化、事業化の見通しに関する評価
今後の展開に関する評価
研究開発成果に関する評価
情勢変化への対応に関する評価
総合評価
今後の研究開発の方向性等に関する提言
第4章
1.
2.
3.
4.
5.
評点法による評点結果
経緯
評点法の目的
評点の利用
評点方法
評点結果
参考資料1
参考資料2
プロジェクト説明資料
周辺動向調査
はじめに
「高効率廃棄物発電技術開発」(廃棄物ガス化溶融発電技術開発)は、我が国と
して重点導入を図るべき新エネルギーとして掲げられている、廃棄物発電の導入目
標の達成と二酸化炭素の排出量の削減、及び最終処分場の容量不足とダイオキシン
類の排出問題の解決に貢献する廃棄物ガス化溶融発電の高効率化の技術開発を目
指し、平成10年度から3年間の計画で開始されたものである。
今回の評価は、平成13年度に事後評価として、新エネルギー・産業技術総合開
発機構 技術評価委員会「高効率廃棄物発電技術開発」分科会(分科会長:森 滋
勝、名古屋大学先端研究センター 教授)において行われたものである。
本プロジェクトは、廃棄物のガス化し高温で燃焼させることにより灰を溶融固化
するとともに、発電端効率30%以上を可能とするために必要な要素技術を開発し
たものであり、本分科会では、当該分野に係わる国内外の研究開発動向や社会情勢
の変化も踏まえつつ、プロジェクトの目的・政策的位置付け、目標・計画内容、研
究開発体制や運営状況、成果の意義、実用化可能性や波及効果、今後の展開等につ
いて評価を実施した。
本書は、これらの評価結果をとりまとめたものである。
平成14年7月
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「高効率廃棄物発電技術開発」分科会
1
新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価委員会
「高効率廃棄物発電技術開発」(事後評価)分科会
委員名簿
氏
名
所属、役職
分科会長
森 滋勝
(モリ シゲカツ)
名古屋大学先端技術共同技術センター
分科会長
代理
幡野 博之
(ハタノ ヒロユキ)
独立行政法人産業技術総合研究所エネルギー利用
部門クリーン燃料研究グループ グループ長
四阿 秀雄
(アズマ ヒデオ)
東京都
日引 聡
(ヒビキ アキラ)
独立行政法人国立環境研究所社会環境システム領
域環境経済研究室 主任研究員
分
科
会
委
員
環境科学研究所
主任研究員
藤森 礼一郎
社団法人日本電気協会新聞部論説委員室
(フジモリ レイイチロウ)
丸山 俊夫
(マルヤマ トシオ)
教授
主幹
東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻
教授
(敬称略、五十音順)
事務局:新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価部
2
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「高効率廃棄物発電技術開発」(事後評価)分科会
審議経過
●第1回分科会(平成13年9月3日)9:00∼17:00
(午前の部)公開セッション
1 .分科会の公開について
2 .評価のあり方及び評価の手順について
3 .評価コメント及び評価の論点について
4 .評価書の構成について
5 .プロジェクトの概要(質疑応答を含む)
6 .周辺動向調査について(質疑応答を含む)
(午後の部)非公開セッション
7 .プロジェクトの詳細(質疑応答を含む)
8 .コメント及び質疑応答(全体について)
●現地調査(平成14年3月14日)13:30 ∼16:30
高効率廃棄物発電実証試験パイロットプラント
●第2分科会(平成14年4月5日)13:00 ∼17:00
公開セッション
1 .評価の進め方について
2 .実施者側の補足説明
3 .評価書(案)の審議及び確定
評価概要
4
評価概要
【総
論】
1.総合評価
焼却灰溶融の必要性が高まる中で、緊急性と社会的要素の高い事業プロジェ
クトであり、プロセスの実用化に貢献した。
エネルギー政策の観点からは、灰溶融は廃棄物の自己熱で行うことにより、
送電端効率として見た場合に、より高効率化が可能となることから、廃棄物発
電目標の達成に必要な事業である。
環境政策の観点からは、より低い社会的な費用でリサイクルを促進する可能
性を提供するだけでなく、最終処分場残余年数の延長、ダイオキシン発生を減
らすことができるという長所をもち、必要な技術である。
しかし、廃棄物発電としてストーカ炉、ガス化溶融炉、RDF 発電のいずれの
炉が有効か判断できる特徴を今後とも動向に注視しつつ、自治体等事業者に説
明していくことが必要だと思われる。
2.今後の研究開発の方向性等に関する提言
(1)ガス化溶融技術はいまだ未成熟の段階であり、解決しなくてはならない
技術的課題も多いが、多種多様なプロセスが実用化を競っている現状では
これらの技術開発の課題は民間の資金によって解決していく必要がある。
なお、これまでの対象プロセスが大・中規模対応であるのに対し小型施
設対応ということでより重要性は高いと言え、次段階プロジェクトへの移
行自体は問題ないと考えられる。
(2)NEDOによる研究助成事業の必要性の理由の一つとして、市場の失敗
が挙げられている以上、本プロジェクトへの資金提供が社会的な利益増進
の観点から望ましい結果をもたらしたかどうかについての評価が研究成果
に含まれることが重要である。このため、今後の研究成果の中に、費用(研
究プロジェクトに対する研究助成額)とそれによって得られる社会的な利
益(環境改善による社会的利益)について、費用便益評価を組み入れ、本
プロジェクトの社会的意義を評価することが求められる。
【各
論】
1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性
ダイオキシン対応技術及び廃棄物最終処分場の不足に対応するため、灰の溶
融固化設備の設置が国策として緊急に求められているにも関わらず、数多くの
メーカーが未成熟なプロセスを提案している段階であることをかんがみれば、
極めて高い公共性と社会的要請に、速やかに対応するため、本事業を推進した
ことは妥当であり、NEDOの関与が適切なテーマであった。
また、将来の有望技術と目されるガス化溶融炉に対して高効率発電技術の適
用を図る本事業は、エネルギー施策としての廃棄物発電を促進する流れに沿う。
しかし、各社が既に様々な要素技術を保有し、開発を競うような状況になれ
ばNEDOの関与の必要性は小さくなるであろう。
2.事業の背景・目的・位置付け
社会的要請の緊急性のため、3 年間の事業期間は妥当であった。
ダイオキシン類を始めとした公害物質の排出抑制、地球温暖化に対応した
炭酸ガスの排出抑制をクリアーしながら、焼却灰を溶融固化して減量すると
ともに高効率に廃棄物発電を行う社会的重要性と緊急性は益々増大しており、
事業の目的、開始時期、事前評価などいずれも妥当であったと思われる。
3.事業の目標
発電端効率 30%の達成、ダイオキシン類排出目標、灰を再利用可能な溶融固
化スラグとして取り出すことを経済性に優れた方式で実現する等の目標設定は、
従来技術との比較の上で妥当といえる。
取り上げた要素技術もガス化溶融炉だけでなく従来炉に適用できる技術が含
まれており、妥当である。
4.事業の計画内容
事業の緊急性から見ても 6 種の異なるプロセスの開発課題について同時平行
的に研究推進したことは妥当であった。研究開発実施者の事業体制も各実施者
の得意とする分野を担当する形になっており、それぞれの開発結果を相互に利
用して、トータルシステムの評価が行われることから協力関係も妥当といえる。
しかし参加していない企業への成果の共有は考慮することも必要であろう。
5.実用化・事業化の見通し(実用化のイメージ)
実用化については、技術的に未成熟なプロセスも含まれているため、対象と
した 6 プロセスのすべてが本格的に実用化されるかは、各プロセスがかかえて
いる固有の技術課題をどのようにして克服できるかにかかっている。
しかし、ニーズの緊急性も考慮すると実用化は速やかに行われると考えられ
る。
また、現時点では明白な波及効果は出ていないようであるが、今後は本事業
が関連分野へ与えるインパクト、波及効果は大いに期待できる。
6.今後の展開(実用化までのシナリオ)
本格的な実用化と普及のためには、更なるコストダウンと炉材耐久性やメン
テナンス、飛灰の処理・利用方法など多くの技術課題の克服が必要であるが、
環境、エネルギー政策上必要性が高まっていることは確実であり、各社の競争
が活発化するならば実用化とコストダウンが促進されるであろう。
また、本システムはストーカ炉発電システムより比較的小規模な廃棄物発電
に適していることから、海外も含めた市場も予想される。
7.研究成果
目標はほぼ達成している。我国のガス化溶融技術はすでに世界最高水準に達
しており、本事業の果した役割も大きい。多くの要素技術はそれぞれ新規性・
独創性・汎用性が認められるとともに、ストーカ炉等への波及も期待できる。
成果の普及・広報も十分になされていると認められる。
しかし、現在のシュミレーションだけでなく、今後は実証試験が期待される。
8.情勢変化への対応
事業期間が 3 年と短期であり計画の見直し等は必要なかったものと思われ
る。
技術評価委員会における主なコメント
以下のコメントは、第5回技術評価委員会(平成14年7月16日開催)に
おいて本評価報告書を諮り、当該委員より頂いたコメントをまとめたものであ
る。事業実施者及び評価事務局は本コメントを踏まえて今後の効果的な事業及
び評価の実施に参考とする。
•
プロジェクトそのものの中で実用炉までつくる必要はないが、実用炉を想定
した経済性評価を装置開発に組み込むことが大原則だと思う。
第1章
評価の実施方法
1-1
第1章
評価の実施方法
本中間評価は、「技術評価実施要領」
(平成 13 年5月制定、以下「実施
要領」という。
)に基づいて以下のとおり行われた。なお、「技術評価実施
要領」は、以下の2つのガイドラインに定めるところによって評価を実施
することになっている。
l 科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発全般に共通する評価
の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月内閣総理大
臣決定)
l 経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」(平成 13
年5月経済産業省告示)
1994
暦年
法律
1995
科学技術基本法
1996
1997
9511
施行
9403
1998
1999
平成13年12月現在
2000
2001
9806
行政施策
評価法
中央省庁等改革基本法 施行
9611
0106 国会成立
0101 0204 施行予定
施行
9907 公布
政府
各省庁設置法
9806
科学技術 0103
閣議決定
基本計画
(第2 期)
9607
政府
科学技術 閣議決定
基本計画
9511
9707
大綱的指針 総理大臣決定
大綱的指針
9610
政策評価広
報課
0111
総理大臣決定
9912
政策立案・ 告示
経済産業省
評価指針
9905
技術評価課
×
評価指針
9708
告示
0005
評価指針(改定) 告示
9903
評価指針
(改定)
0105
告示
0010
NEDO
技術評価課
設置
0110
技術評価部
設置
1.評価目的
実施要領において、評価の目的は、
l
評価をする者(評価者)と評価を受ける者(被評価者)が意見交換を
通じ研究開発の意義、内容、達成状況、今後の方向性等について検討
し、より効率的・効果的な研究開発を実施していくこと、
l
高度かつ専門的な内容を含む研究開発の意義や内容について、一般国民にわかり
やすく開示していくこと、
l 限られた研究開発リソースの中で、国の政策や戦略に対応した重点分野・課題へ
のリソース配分をより効率的に実施していくこと、とされている。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥
1-2
当性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検
討・評価した。
2.評価者
実施要領においては、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者から
なる委員会方式により評価を行うこととされているとともに、技術評価委員選
定に当たっては、以下の事項に配慮した選定を行うこととされている。
l 科学技術全般に知見のある専門家、有識者
l 当該研究開発の分野の知見を有する専門家
l 研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニー
ズ関連の専門家、有識者
l 産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象か
ら除外し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価
に関与していない者を主体とすることとしている。
これらに基づき、技術評価委員会分科会(以下、「本分科会」という)委員
名簿にある9名が選任された。
なお、本分科会の事務局については、新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価部が担当した。
3.評価対象
平成 10 年度から平成 13 年度までの計画で実施されている「高効率廃棄物発電技術開発」(廃
棄物ガス化溶融発電技術開発)を評価対象とした。
なお、本分科会においては、当該事業の推進部室(新エネルギー・産業技術総合開発機構 エ
ネルギー・環境技術開発室)及び以下の研究実施者等から提出された事業原簿、プロジェクト
の内容、成果に関する資料をもって評価した。
研究実施者等:財団法人エネルギー総合工学研究所プロジェクト試験研究部、
三井造船株式会社、三菱重工業株式会社、株式会社荏原製作所、
川崎重工業株式会社、日立造船株式会社、新日本製鐵株式会社
4.評価方法
本分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、
それを踏まえた本分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施
者側等との議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認められる場合等
を除き、原則として、本分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形で審議を行うこと
とした。
1-3
5.評価項目、評価基準
本分科会においては、次に掲げる「研究開発事業評価における標準的評価項目・評価基準」
(平成 12 年8月 25 日、産業技術審議会評価部会)に準じ、大きく事業全体及び研究開発項目
別に分けて評価を行った。事業全体に係わる評価においては、主に事業の目的、計画、運営、
達成度、成果の意義や実用化への見通し等について、評価をおこなった。各研究開発項目に係
る評価については、主にその技術的達成度等について評価した。
1-4
評価項目・評価基準
1.NEDO の関与の必要性
(1)NEDO の事業としての妥当性
l 経済産業省の政策方針に適合しているか。(現在及び事業開始時点の時
代認識から見て)
特定の研究開発制度に属する事業として実施されているものについては、
当該制度の趣旨、目的(選定基準)への適合性を問う。
l NEDO の関与が必要とされるテーマか。(民間のみでは改善できないもの
であって、以下のような「市場の失敗」に該当しうるテーマか。(政策
立案・評価ガイドライン参照))
² 公共財的性格を持つ財・サービスの供給
² 環境問題等市場原理が働かない外部性
² 不確実性(リスクの高さ)や情報の偏在などに基づく市場の不完全
性等
l 上記以外で民間のみでは改善できない問題に対応するために、NEDO の
関与に公共性が認められるものか。
l 緊急性、重要性が高く優先して実施すべき事業か。
2.事業の背景・目的・位置付け
(1)事業目的・政策的位置付けの妥当性
l 評価時点の時代背景認識から見て、事業の目的は妥当で、政策的位置付
けは明確か。
l 事業開始時点の時代背景認識から見て、事業開始時の目的は妥当で、政
策的位置付けは明確か。
l 事前評価は、当時の時代背景認識から見て妥当なものであったか。
l 政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか。
3.事業の目標
(1)研究開発目標の妥当性
l 立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、目標達成のた
めに、具体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか。
l 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
l エネルギー特別会計を使用している場合には、費用対効果分析など定量
的なエネルギー政策上の目標が立てられているか。
1-5
4.事業の計画内容
(1)研究開発計画の妥当性
l 目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配
分を含む)となっているか。
l 目標達成に必要な要素技術を過不足なく、取り上げているか。
l 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
(2)研究開発実施者の事業体制の妥当性
l 目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
l 各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
l 関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか。
5.実用化、事業化の見通し(実用化のイメージ)
(1)成果の実用化可能性
l 産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
l 公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。
【注】
l 公共性は実際にあるか。見込みはあるか。
【注】
(2)波及効果
l 成果は関連分野へのインパクトを期待できるものか。
l 当初想定していなかった波及的な成果はあるのか。
l プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及
効果を生じているか。
6.今後の展開(実用化までのシナリオ)
(1)実用化の見通し
l コストダウン、導入普及、実用化までの期間、事業化とそれに伴う経済
効果等の見通しは立っているか。
l 研究開発を今後も現行の計画どおり継続することは妥当か。
7.研究開発成果
(1)計画と比較した目標の達成度
l 成果は目標値をクリアしているか。
l 全体としての目標達成はどの程度か。
l 立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、事業は研究開
発として成功したといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか。
(2)要素技術から見た成果の意義
l 世界最高水準、世界で初めて、又は国際水準から見て優れた成果がある
か。
l 新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか。
1-6
l
l
l
l
新たな市場創造につながるような新規性、先進性が認められるか。
汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか。
当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか。
将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのよ
うなものか。
(3)成果の普及、広報
l 論文の発表は、質・量ともに十分か。
l 特許は適切に取得されているか。
l 必要に応じ、成果の規格化に向けた対応が取られているか。
l 広報は一般向けを含め十分に行われているか。
(4)成果の公共性【注】
成果の公共性を担保するための措置、あるいは普及方策を講じているの
か。(JIS 化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広
報は積極的になされているか等)
8.情勢変化への対応
(1)情勢変化への対応の妥当性
l 技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直し
たか。
l 計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮していたか。
(2)研究開発実施者の運営の妥当性
l 意思決定、進捗状況、計画見直し等の検討が適切に行われているか。
l プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能し
ているか。
l プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含
む)への対応は適切であったか。
<特記事項>:○評価項目・評価基準にある各項目の「重み」は、被評価プロジェクトの性格
等に応じて、異なるものである。
○評価においては、プロジェクトに対する提言を含めて検討を実施するものと
する。
【注】
:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
1-7
(参考資料)
政策立案・評価ガイドライン(抜粋)
(平成 11 年 12 月経済産業省策定)
IV.評価事項
1.事前評価
(1) 施策・制度の必要性[どのような問題が存在するのか、なぜその問題を改善する上で行政の
関与が必要なのか]
民間活動のみでは改善できない問題であって、かつ、行政が関与することにより改善できる
ものが存在することを論証しなければならない。
行政の関与の必要性については、「市場の失敗」と関連付けて説明すべきことを原則とする。
「市場の失敗」については以下に概念を示すが、より詳しくは、行政改革委員会「行政関与の
在り方に関する基準」(平成8年 12 月 16 日)の「行政関与の可否に関する基準」による。
行政関与の必要性の説明として、「市場の失敗」に該当しないものも許容するが、その場合
には、上述した問題の存在することの説明や公共性が高いことの根拠はできる限り客観的に明
らかにしなければならない。
<市場の失敗>…行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成8年 12 月)による
(a) 公共財的性格を持つ財・サービスの供給(経済安全保障、市場の整備、情報の生産、
文化的価値を含む)
複数の人が同時に消費できたり、対価の支払いなしに(まま)消費を制限することが
困難である財・サービスのことをいう。
例:市場ルールの形成
(b) 外部性
ある個人・企業の活動が、市場を経ずに他の個人・企業の経営環境に影響すること
をいう。好ましいものを正の外部性、好ましくないものを負の外部性という。
例:負の外部性の例として地球環境問題(正の外部性については、解釈に幅があると
される)
(c) 市場の不完全性
不確実性や情報の偏在(財や価格について取引の当事者間で情報量にばらつきがあ
ること)などがあるために市場取引が成立しないこと。
例:技術開発(不確実性)
、製品事故(情報の偏在)
(d) 独占力
独占力は、一般には、市場におけるマーケット・シェアやライバル企業と異なる品
質の製品を提供することによって生まれる価格設定力である。市場参加者が大きな独
占力を持っている場合には、行政の関与が許容される場合があるとされる。
(e) 自然独占
平均生産費が、市場で需要される産出量を超えても逓減するため、新規参入が利潤
をもたらさず、また1社だけ存在することが効率的になるため生ずる独占のことをい
う。
(f) 公平の確保
公平の確保を図るための施策については、機会の均等を図ることを第一とし、事後
的な公平については、所得・資産の多寡を基準とした再分配に原則として限定し、そ
れ以外の施策からは原則として撤退する、とされている。
1-8
第2章
プロジェクトの概要
当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿をもって、当該プロジェク
トの概要とする。
2-1
高効率廃棄物発電技術開発
「廃棄物ガス化溶融発電技術開発」
事業原簿
NEDO
新エネルギー・産業技術総合開発機構
2-2
目
次
0.概要
1.国の関与の必要性・制度への適合性
2.事業の背景・目的・位置付け
2.1事業の背景・意義・目的
2.2事業の位置付け
2.3費用対効果
3.事業の目標(狙い、最終目的等)
4.事業の計画内容
4.1事業全体、個別研究開発項目の計画内容
(1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
(2)最適トータルシステムの研究
4.2研究開発項目毎の内容詳細
(1)研究開発全体工程
(2)研究開発項目毎の実施内容詳細
4.3研究開発実施主体の体制
5.実用化、事業化の見通し
6.今後の展開
7.研究開発成果
7.1研究開発項目毎の成果
7.2まとめ
7.3成果の普及、広報
(1)研究発表・講演
(2)文献
(3)特許等
別添資料
最適トータルシステムの研究
2-3
0.概要
制度名
高効率廃棄物発電技術開発 事業名
高効率廃棄物発電技術開発
補助金
「廃棄物ガス化溶融発電技術開発」
事業の概要
廃棄物ガス化溶融発電技術において、各高効率化等に関する要素技術開発、お
よび実機相当規模における性能・経済性に関する数値シミュレーション等を実施
し、実機規模において発電端効率30%に相当する廃棄物ガス化溶融発電技術を開
発する。
1.国の関与の必要性・
廃棄物発電については、平成6年「新エネルギー導入大綱」において重点導入を
制度への適合性
図るべき新エネルギーとして位置付けられた。平成10年の「長期エネルギー需給
見通し」では、その導入目標が500万kW(2010年度)に上方修正され現状実績の4
倍強におよぶ一層の普及促進が求められている。
本技術開発は、最終処分場の延命化やダイオキシン類排出抑制などの逼迫した
問題解決と、二酸化炭素排出量削減・環境負荷低減・資源循環型社会の構築に寄
与する技術開発であり、これらの解決には緊急性を有することから、国主導で実
施することが必須である。
2.事業の背景・目的・
廃棄物処理を巡る最終処分場の残余年数は不足してきており、廃棄物の焼却灰
位置付け
よりダイオキシン類や重金属の溶出を厳重に防止するために、国は平成8年度より
灰の溶融固化設備を補助要件化している。
本技術開発にて実施した廃棄物ガス化溶融発電においては、灰を効率的に溶融
し、減容化程度の大きな溶融スラグとして取り出せるため開発のメリットは大き
い。
さらに、発電効率を上げるために、蒸気条件の高温高圧化、各種プロセスの効
率化を図る技術開発を実施することで、経済性にも優れた高効率発電技術を確立
でき、廃棄物発電の導入促進に資する。
3.事業の目標
高効率のガス化溶融発電プラント設計に寄与する要素技術開発とフィジビリテ
(全体目標)
ィースタディ−を実施し、商用機への適用技術を確立する。
目標:①発電端効率は30%の達成を目標とし、送電端効率は極力高める。
②経済性は従来技術に比べ優れているか、少なくとも同レベルであること。
③ダイオキシン類の排出は、新規制値(0.1ng/m3N)を充分下回ること。
④灰は再利用可能な溶融固化スラグ状として取り出すこと。
事業の計画内容
(単位:百万円)
一般会計
特別会計(電特)
特別会計(石特)
特別会計(エネ高))
総予算額(計)
H10FY
H11FY
H12FY
総 額
(3年間)
413
465
451
1,329
413
465
451
1,329
2 - 4
4.研究開発体制
省内担当原課
運営機関
経済産業省 資源エネルギー庁
電力・ガス事業部 政策課 技術室
新エネルギー・産業技術総合開発機構
委託先
5.実用化、事業化の
見通し
財団法人 エネルギー総合工学研究所
プロジェクト試験研究部
再委託先
三井造船(株)、三菱重工業(株)、
(株)荏原製作所、
川崎重工業(株)、日立造船(株)、新日本製鐵(株)
共同研究先
なし
各要素技術開発は、各々ほぼ当初設定した成果目標を達成できたと評価できる。
また、これら各成果が組み合わせ可能かを検討し、
①各要素技術成果を従来型ガス化溶融炉に適用した場合
②各要素技術開発成果を組合せて適用した場合場合
の性能及び経済性について、実機規模にて評価を実施した結果、性能・経済性と
も目標を達成することが確認できた。
今後は、これらの技術を実用機に採用して運転実績を積むことにより、市場の
信頼性をより確実なものとし、商用機の導入促進が拡大すると考えられる。
6.今後の展開
NEDOとしては、本技術開発で中規模以上のプラントについては高効率化の
実用化が図られたと考え、今後は残された領域である小規模プラント(200t/d以
下)における高効率発電に取り組む。これは高効率廃棄物ガス変換発電技術開発
にて平成13年度より実施中である。
また本技術開発に関する民間個別の事業化については、自治体が設備導入を図
る場合、信頼性、安全性および建設コストを重視するので、稼働中の自治体実機
プラントにて試験を行い、長期の確証試験を行い実績を構築することにより、各
技術とも数年後には本格的に普及できるものと考える。
7.中間・最終評価
中間評価なし
8.研究開発成果
特許出願数:22件
学会等発表件数:27件
(本資料作成時迄の累計) 発表文献数:16件
9.情勢変化への対応
基本計画の変更
なし
変更内容
なし
評価履歴
なし
10.今後の事業の方向性 平成12年度で実証技術開発は完了した。今後は実機プラントでの長期試験の実
績を積み重ね、廃棄物施設への早期普及を図る。
11.作成日
平成14年1月17日
2 - 5
1.国の関与の必要性・制度への適合性
廃棄物発電の導入促進は、未利用エネルギーの有効利用の観点から、気象変動枠組条約第3
回締約国会議(COP3)で採択された地球温暖化ガス(CO2)排出量の削減に寄与するものである 。
そうした観点から、我が国として重点導入を図るべき新エネルギーとして 、「新エネルギー導
入大綱(平成6年12月:総合エネルギー対策推進閣僚会議決定 )」において2010年度400万
kWの目標値が定められた。また、平成10年6月総合エネルギー調査会需給部会における「長期
エネルギー需給見通し」では500万kWに上方修正され、さらに、平成13年6月総合資源エネル
ギー調査会新エネルギー部会報告書(今後の新エネルギー対策のあり方について)で、新たに
設定された2010年度における導入目標は、バイオマス発電分を外数として417万kWとなっ
た。この目標を達成するためには、現状実績の4倍強にする導入努力が求められている。第11表に、2010年度における新エネルギー(廃棄物発電)の導入目標を示す。
一方、我が国における廃棄物を取り巻く状況としては、最終処分場の容量不足及びダイオキ
シン類の排出問題が顕在化し、喫緊の解決すべき課題として認識されている。
この様な状況下で、高効率の発電を可能とするのみならず、廃棄物をガス化し、高温で燃焼
させることにより焼却灰を溶融させ、有効利用の可能な溶融スラグの回収及び灰の減容化を可
能にし、同時に、ダイオキシン類の排出を抑制する廃棄物ガス化溶融炉が注目されている。
また、排ガス中のダイオキシン類の新たな排出規制(0.1ng-TEQ/Nm3)は、2002年12
月から完全実施されることとなっており、この規制に適合した多くの施設の建て替えが予定さ
れており、ダイオキシン類の削減に裕度のある技術を確立しておくことが肝要である。
自治体等の設備導入サイドは、安定的操業性に優れ、安全性と信頼性が高く、しかも建設コ
ストの安いシステムが重点的な機種選定評価項目であり、自治体に直接的な影響力の低い廃棄
物発電の高効率化は、機種選定に当っては優先度は比較的低いものと考えられる。また、メー
カの自主研究では、自治体の機種選定評価項目の優先度に応じた開発を行なうと考えられる。
それ故、廃棄物発電の高効率化についての国の関与がなければ、高効率化の技術開発は推進が
遅れると考えられる。
従って、上述の導入目標達成と公益に係わる課題解決に向けた国の施策として、廃棄物ガス
化溶融発電技術の高効率化のための技術開発を行い、早期に高効率廃棄物発電技術の導入・普
及を図る必要がある。
本開発事業は、上述の諸問題の解決を図るとともに、発電性能及び経済性の両面に優れた
高効率廃棄物発電技術を開発する。
2.事業の背景・目的・位置付け
2.1事業の背景・意義・目的
一般廃棄物の焼却処理施設数はここ数年約1850施設で推移しているが、この内発電設備を備
えているものは約190施設で約1割である。また、これら施設の発電端効率は、最近では 、「高
効率廃棄物発電技術開発」の効果もあって、20%を超えるものも出て来てはいるが、平均的
に見ると、やっと最近になって約10%になったレベルである(第2-1図
廃棄物発電施設の発
電端効率の推移参照 )。これは主に廃棄物中の塩素成分と飛灰の相乗効果で、ボイラーチュー
ブが腐食され、蒸気条件が温度300℃、圧力30ata以下に制限されてきたためである。
NED
Oでは従来炉の高効率化ための技術開発を平成3年度から進め、SH(スーパーヒーター)材
料の開発等を行い、500℃、100ataという高温高圧蒸気条件を達成するためにパイロットプラ
2− 6
ントによる実証試験を実施してきた。
一方、ストーカ炉等の従来炉の課題はごみの焼却温度が約900℃と溶融温度に達しない温度
域で焼却するため、灰は溶融されずにダイオキシン類や重金属等の有害物質が若干含まれる。
この際灰処理は、従来はセメント固化等の重金属溶出防止策の実施にて、最終処分場に廃棄し
ているが、灰中の無害化措置をより確実にするために、別置きの灰溶融設備を設置することが
推奨されるようになってきた。この場合、灰溶融は1400℃程度の高温を必要とし、例えば電気
等の熱源を必要とするため、エネルギー損失が増大し、プラントの総合効率及びCO2排出の
観点からも好ましくない。
また、ダイオキシン類の排出を抑制するには、焼却等の過程で生成されたダイオキシン類を
分解するのに必要な高温度、例えば900℃以上で数秒間維持することが必要であるが、炉の構
造によっては必ずしもそのような高温燃焼が出来るようになっていない。
こうした背景に対して、ガス化溶融発電プロセスは、自己燃焼熱により、ごみを熱分解した
ガス成分を高温(1000℃以上)で維持してダイオキシン類を分解すると共に、固形成分から有
価金属を回収した残渣部を溶融して、スラグ化することができるプロセスであり、環境負荷低
減と高効率化の潜在的可能性を持った技術である。
そこで、ガス化溶融発電プロセスにおいて、蒸気条件を改善する高効率化技術等を相互に組
合せ最適化を行えば、これら廃棄物処理にかかわる課題を解決し、なおかつ高効率発電を両立
させることができると考え、本技術開発を実施することとした。
本技術開発は、蒸気条件の高温高圧化技術の他、排ガスの再加熱による損失を防止する低温
脱硝技術、水分の多い廃棄物の効率的な脱水技術、廃プラスチック吹き込みによるシャフト炉
におけるコークスの減量化技術など、廃棄物ガス化溶融発電技術における高効率発電技術を確
立するために実施するものである。第2-2図に、廃棄物ガス化溶融発電システムとその技術開
発課題についての概要を示した。
第1-1表
2010年度における新エネルギー(廃棄物発電)の導入目標
2− 7
40
ガス化溶融炉
35
従来炉
ス ー ハ ゚ー ご み 発 電
発電端効率(%)
30
売 電 あ り (累 乗 近 似 )
売 電 な し (累 乗 近 似 )
25
売 電 あ り+ 売 電 な し
(累 乗 近 似 )
20
15
10
5
0
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
竣工年度(年)
第 2-1図 廃 棄 物 発 電 施 設 の 発 電 端 効 率 の 推 移
ごみ供給工程
●安
定供給システムの開発
(水 分 低 減 に よ る ご み の 高
カ ロ リ ー 化 ) (日 立 造 船 )
●廃プラスチックの吹き込み
技 術 開 発 (熱 分 解 ガ ス の 高
カ ロ リ ー 化 ) (新 日 鐵 )
熱分解工程
熱回収工程
塩 素 化 技 術 開 発 ( SH
過熱用の燃焼ガスの脱塩
素 化 ) (三 菱 重 工 )
●脱
●高温除塵システムの開発
(SH過 熱 用 の 燃 焼 ガ ス 中
の 灰 の 除 去 ) (三 井 造 船 )
●セ ラミック式 高 温 空 気 加 熱
器 の 開 発 (SH 高 温 空 気 加
熱 ) (荏 原 製 作 所 )
排ガス処理工程
● 低 温 脱 硝 装 置 の 開 発
( 排 ガ ス 温 度 15 0 ℃ (当 初 目
標 値 )に よ る 所 内 蒸 気 消 費
量低減)
(川 崎 重 工 )
第 2-2図 廃 棄 物 ガ ス 化 溶 融 発 電 シ ス テ ム と 技 術 開 発 課 題
2− 8
2.2事業の位置付け
本事業は、平成3年度より平成11年度まで実施した高効率廃棄物発電技術開発にて実施し
た従来型ストーカ炉発電等技術開発(高温高効率燃焼炉の開発・耐腐食性スーパーヒーター材
料の開発・環境負荷低減技術の開発・パイロットプラントによる実証試験・最適トータルシス
テムの研究)で得た知見をもとに、下記の課題解決策を具備した技術を開発する必要性が緊急
に顕在したことより、その解決策として、期中にて開始したものである。その課題とは、すな
わち、
①廃棄物のもつエネルギーを有効に利用した高効率化により、地球温暖化ガス排出低減に寄
与すること。
②ダイオキシン類並びに有害物質の排出の新規制値(0.1ng/m3N)を十分下回る技術とし、環
境保全性に優れた技術を確立すること。
③最終処分場の容量不足に対して 、有価金属の回収利用 、溶融スラグの再資源化などを行い 、
最終処分量を極小化すること。
「廃棄物ガス化溶融発電技術」は、これら課題を解決し、廃棄物のもつエネルギーを有効に
電気エネルギーとして取り出すとともに、環境負荷低減に寄与できるポテンシャルを有する技
術であり、本技術の確立により、現状低レベルにある多くの廃棄物処理施設の高効率化が達成
でき、大きな市場性も期待できる技術として位置づけられる。
すなわち、本技術開発事業は、廃棄物を再資源化し最終処分量を最小化するとともに、サー
マルリサイクルにおける発電効率の高効率化により、環境負荷低減と資源循環型社会の構築に
寄与することを目指すものである。
2.3費用対効果
高効率廃棄物発電技術は、①ストーカ炉等従来型発電、②廃棄物ガス化溶融発電(本技術開
発 )、及び③廃棄物ガス変換発電(H13から実施中)に大別でき、それぞれに対し、①ストーカ
炉等従来型発電は600t/d規模以上、②廃棄物ガス化溶融発電は200∼600t/d規模、及
び③廃棄物ガス変換発電は50∼200t/d規模が適すると考えられる。
市場規模を評価する場合、上記の規模毎の清掃工場の処理能力及び平均能力を実績から整理
すると、次の表の通りである 。(廃棄物総排出量はここ数年横ばいであり、平成11年度の実績
が今後も継続すると仮定する)
廃棄物ガス化溶融発電に適した200∼600t/d規模の清掃工場の規模は全国計で68,846t/d規模
であり、この規模の施設は221施設あるので、1施設当たり平均、312t/d規模となる。300t
/d規模の廃棄物発電施設の建設費単価は5000万円/(t/d)と仮定し、全数がガス化溶融炉に更
新されると仮定すると、潜在的市場規模は5000[万円/(t/d)]×68,846[t/d]=3.44[兆円]
である。
CO2削減効果で評価する場合、いかの試算方法・過程の下で試算すると、削減効果は1年当
り4.8百万t-CO2となり、非常に効果の高いものとなる。
施設規模(t/d)
49以下
50∼199
200∼599
処理能力(t/d)
18,106
56,095
平均能力(t/d)
17.6
98.6
適用発電技術
③ガス変換
2− 9
600以上
総計
68,846
48,915
191,962
312
741
102
②ガス化溶融
①従来炉
試算の方法:200∼600t/dに属する全国の炉が高効率化された場合と、高効率化されない場
合とのCO2削減量の差を比較。
仮定:1)一般廃棄物の発熱量:2000kcal/kgとする。
2)比較対象のCO2削減石油火力(燃料分)とし、原単位:0.6893kg-CO2/kWhとする。
3)発電効率:200∼600t/dプラントの国内平均規模は312t/dであり、この規模でガス
化溶融発電技術における最適高効率化したとして27%とする。
4)開発をしなかった場合の発電効率は10%で推移するものとする。
5)廃棄物発電設備の稼働率は70%とする。
(1)高効率ガス化溶融発電技術開発を行った場合の最大発電容量
68,846×1000[kg/d]×2000[kcal/kg]×4.1868kJ/kcal×0.27[効率]/(24×3600)[s/d]=
1,801,528[kW]
(2)高効率ガス化溶融発電技術開発を行った場合のCO2削減量
1,801,528[kW]×365[d]×24[h/d]×0.7×0.6893[kg-CO2/kWh]/1000[kg/t]=
7,614,676[t-CO2]=7.615[百万t-CO2]
(3)高効率化の技術開発を行わなかった場合の最大発電容量
68,846×1000[kg/d]×2000[kcal/kg]×4.1868kJ/kcal×0.1[効率]/(24×3600)[s/d]=
667,232[kW]
(4)高効率化の技術開発を行わなかった場合のCO2削減量
667,232[kW]×365[d]×24[h/d]×0.7×0.6893[kg-CO2/kWh]/1000[kg/t]=
2,820,248[t-CO2]=2.820[百万t-CO2]
(5)高効率ガス化溶融発電技術開発を行った場合の削減効果
7.615−2.820=4.795[百万t-CO2]
現在、全電力からのCO2排出量は約300[百万t-CO2]であり、この規模(200∼600t/d)の廃棄
物処理施設全部が高効率廃棄物ガス化溶融発電プラントに置き換わると仮定すれば、全電力CO
2排出量の1.6%の大きな削減効果をもたらすポテンシャルを有していると言える。
3.事業の目標(狙い、最終目標等)
廃棄物ガス化溶融発電技術は、廃棄物をガス化し、高温で燃焼させることにより高効率発電
を可能とするのみならず、焼却灰を無害で有効利用し易く、また減容化程度の大きなスラグ状
として取り出せる。またダイオキシン類の抑制面でも優れた特性を兼ね備えているので、わが
国のエネルギー環境特性上極めて望ましい廃棄物発電技術を提供する。
同技術の早期実用化を前提として、当研究期間の最終年度に次の目標達成を図ることを目標
とする。
a)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
次の目標を満足するガス化溶融技術を用いた、廃棄物発電施設の設計を可能とする要素技
術開発、およびその成果を適用したプラントのFSを実施して、有効性を確認し、その成果
を実用機に早期に適用することを狙いとする。
1)発電端効率は30%の達成を目標とし、送電端効率を極力高める。
2)経済性は従来技術に比べ優れているか、少なくとも同レベルであること。
2− 10
3)ダイオキシン類の排出は、新規制値(0.1ng/m3N)を充分下回ること。
4)灰は再利用可能な溶融固化スラグ状として取り出すこと。
これらの全体目標を達成するために、各要素技術開発について、個々の実施目標を設定した。
技術開発テーマ
技術開発目標
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価
及び高温除塵システムの開発
(b)熱分解工程における脱塩素化
技術の開発
(c)セラミック式高温空気加熱
器の開発
②排ガス再加熱回避のための
技術開発
−低温脱硝装置の開発−
③自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
最適なSH材の選定と除塵システムによる腐食
環境低減し、蒸気温度500℃の可能性を探る。
脱塩素技術により 540℃×100ataを達成、HCl濃
度100ppmを目指す。(従来HCl濃度1000ppm程度)
高温空気加熱器にて700℃以上の空気を得て500
℃以上の蒸気を発生させる。(現状400℃空気)
アンモニア選択接触還元法により、150℃で75%
以上の脱硝効率を達成する。(現状200∼220℃で脱
硝効率50∼80%)
自己熱溶融限界発熱量10%低減、シール圧力は50
mmH2O程度以上、処理後の水分は40%を想定
−廃棄物安定供給システムの開発−
④外部燃料投入量低減のための
技術開発
外部燃料投入量30%以上低減、コークス投入量現
状50∼60kg/ごみtを35∼42kg/ごみtに削減、ま
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発− た、プラスチック吹き込み技術を確立
b)最適トータルシステムの研究
上記技術開発を商用機へ反映させるとともに、開発技術を早期に導入普及させるために、
本要素技術開発の成果を組み合わせ、実機に適用した場合の性能・経済性等について検討評価
する。
4.事業の計画内容
4.1事業全体、個別研究開発項目の計画内容
(1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
廃棄物のガス化により灰を溶融固化させるとともに、発電端効率30%以上(送電端効
率は極力上げる)を可能とするため、以下の開発を行う。第4.1-1図に下記要素技術開発
の開発システム概念図を示す。
①蒸気温度上昇のための技術開発
スーパーヒーター(SH)の腐食雰囲気を緩和し、蒸気温度・圧力の向上を図るため、
ガス化溶融炉の排ガスによるSH材料の腐食性を評価するとともに 、高温除塵システム 、
熱分解工程における脱塩素化技術、セラミック式高温空気加熱器等の開発を行う。
2− 11
②排ガス再加熱回避のための技術開発
脱硝装置前段における排ガスの再加熱による熱損失を回避するため、低温脱硝装置の開
発を行う。
③自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
ごみの低カロリー化に対応し、廃棄物の安定した自己熱溶融を実現するため、廃棄物の
安定供給システムの開発を行う。
④外部燃料投入量低減のための技術開発
化石燃料(コークス)の投入量を低減するともに、熱分解ガスの高カロリー化を図り、
ボイラー効率を向上させるため、廃プラスチックの吹き込み技術の開発を行う。
(2)最適トータルシステムの研究
「( 1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発」で得られた個々の要素技術開発成果をガス化
溶融発電に適用した場合の廃棄物発電システムと、可能な要素技術を複数組合せ最適化
した廃棄物ガス化溶融発電システムについて、フィージビリティースタディを実施し、
発電性能ならびに経済性への効果を検討し、技術開発の効果を定量的に評価する。
2− 12
第4.1-1図
「廃棄物ガス化溶融発電技術開発」の要素技術開発システム概念図
技術開項目
技術開発テーマの内容
技術開発テーマ[担当メーカ]
①蒸気温度上昇のための
技術開発
(a)SH材料の高温腐食性
の評価及び高温除塵
システムの開発
システム上の概念図
廃熱ボイラ
ガス化溶融システムに
適した高耐腐食性SH
材料の評価、及びSH
の高温腐食を低減する
高温除塵装置の開発を
行う。
高温集塵器
燃焼溶融炉
[三井造船]
①蒸気温度上昇のための
技術開発
(b)熱分解工程における脱
塩素化技術の開発
熱分解ガス(高HCl)
熱分解工程において、
分離された低Cl残さ
の燃焼による脱塩素化
技術の開発、及び低コ
スト耐久性チューブの
評価を行う。
二次燃焼炉
熱分解炉
チャー燃焼炉
チャー(低HCl)
[三菱重工業]
SH
430℃
①蒸気温度上昇のための
技術開発
(c)セラミック式高温空気
加熱器の開発
空気式蒸気過熱器
低腐食性の強いセラミ
ックスや金属伝熱管を
用い、高温燃焼ガスと
空気を熱交換し、高温
空気により蒸気を過熱
する。
蒸気(500℃×100at a)
蒸気(400℃×100at a)
700℃
給水
[荏原製作所]
溶融炉排ガス
排ガス処理
設備へ
高温空気加熱器
ガス化溶融炉
廃熱ボイラ
空気予熱器より(150℃)
排ガス
脱
硝
装
置
脱硝装置
排ガス再加熱器
旋回式溶融炉
9
[川崎重工業]
アン モニア
バグフィルター
減温塔
廃熱ボイラ
サイクロン
流動床式ガス化炉
低温脱硝装置の開発
熱損失の低減を狙いと
して、低温(ガス温度
150℃)でも作用す
る脱硝触媒を開発する
ごみ
②排ガス再加熱回避の
ための技術開発
消石灰
( SCR
SCR)
150 ℃ 200∼220℃
150℃
η=50∼80%
【
現 状 】
75%
【
目 標 】
投入コンベア
③自己熱溶融限界発熱量
低減のための技術開発
低発熱量の一般廃棄物
においても自己熱溶融
脱水を主体とする供給
廃棄物安定供給システム システムを開発する。
の開発
図1 ガス化溶融プラント全体フロー図
ごみクレーン
破砕機
給じん機
乾燥機
脱水
ガス化炉
ごみピット
磁選機
搬送コンベア
計量コンベア
[日立造船]
*脱水機単独運転時
脱水機出口ごみ水分:40%
コークス
④外部燃料投入量削減の
ための技術開発
廃プラスチックの吹
込み技術の開発
廃プラスチックを一般
廃棄物とは別に炉の下
部から吹き込み、コー
クス使用量の低減及び
低空気比燃焼の確立を
図る。
ご
み
直接
溶融
炉
ガス燃焼
羽口
廃プラスチック吹込
[新日本製鐵]
スラグ・メタル
2− 13
蒸気タービン発電
排
ガ
ス
処
理
4.2研究開発項目毎の内容詳細
(1)研究開発全体工程
研究開発項目毎の全体工程を第4.2-1図に示す
第4.2-1図
研究開発全体工程表
年度
H10年度
H11年度
H12年度
研究開発テーマ
1.廃棄物ガス化溶融発電技術開発
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価
計画・過熱器製作
及び高温除塵システムの開発
高温除塵製作
実証機運転・試験
まとめ
運転・試験
ラ ボ 試 験
(b)熱分解工程における脱塩素
化技術の開発
腐食環境調査
材料試験
評価
腐食試験
まとめ
実証機プローブ試験
ダスト付着試験
システム評価
(c)セラミック式高温空気加熱
計画・製作
器の開発
検討
まとめ
実 証 機 試 験
システム評価
②排ガス再加熱回避のための技術開発
触媒脱硝の調査
−低温脱硝装置の開発−
まとめ
ラボ試験・評価(触媒性能・耐久性)
フィールド試験
③自己熱溶融限界発熱量低減のための
技術開発
調査・基礎、パイロット試験
実証装置設計製作
−廃棄物安定供給システムの開発−
④外部燃料投入量低減のための
技術開発
−廃プラスチックの
システム評価
まとめ
実証試験
システム評価
計画・基礎試験
実証装置設計製作
吹き込み技術の開発−
まとめ
システム評価
実 証 試 験
2.最適トータルシステムの研究
最適トータルシステム研究
個別・総合システム
−開発技術システム評価・検討−
従来システム比較
2− 14
(2)研究開発項目毎の実施内容詳細
1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
高効率発電を可能とするのみならず、優れた環境適合性を有する廃棄物ガス化溶融発電技
術に関し、特に高効率化の観点から、以下の項目について技術開発を行う。各要素技術開発
毎でその開発の仕方が異なるが、総じて各年度の実施内容は次のとおりである。
平成10年度は開発の初年度であり、主として、調査・計画、ラボ試験等の基礎試験、及び
実証試験設備準備と一部試験を開始する。平成11年度は、基礎試験を継続するとともに、実
証試験設備の製作と本格的な実証試験を実施する。平成12年度は、本技術開発の最終年度で
あり、実証試験を継続するとともにその結果を検討、評価する。また試験結果を用いたFS
を行い、成果の評価を行う。
以下、各要素試験毎の実施詳細内容を述べる。
①蒸気温度上昇のための技術開発
a)SH材料の高温腐食性の評価及び高温除塵システムの開発「再委託先:三井造船(株 )」
ガス化溶融発電システムにおける過熱器管(SH)の最適材料の選定を行うとともに、高
温除塵システムの除塵性能及びその後流での過熱器管腐食評価を行う。
平成10年度は、既設の実証試験設備にバイパスを設け、試験用の過熱器を新規設置するた
めの取り合い調整と、設備設計を実施する。また、ラボ試験として、過熱管の候補材選定の
ための過熱管腐食試験と、高温除塵候補材と灰の反応性及び付着性を検討する除塵候補材料
反応性試験を実施する。
平成11年度は蒸気過熱器及びプローブを製作・設置し、試験を行い、種々の温度領域に対
応して灰の付着状況、付着灰の物性を明らかにする。また、平成12年度試験実施の高温除塵
システムの設計を行う。
平成12年度は、既設デモプラントを用い、650℃から400℃の排ガス温度域での過熱器管及
びプローブへの灰の付着状況を把握するとともに、高温除塵装置(ホットサイクロン、セラ
ミックフィルター)を設計・製作し蒸気過熱器のバイパスラインに設置し、既設デモプラン
トを運転することにより、高温除塵装置の除塵性能を確認するとともに、設置したプローブ
により、SH材料の腐食性を評価する。
b)熱分解工程における脱塩素化技術の開発「再委託先:三菱重工業(株 )」
熱分解工程で脱塩素化したチャーの燃焼ガス(低HCl濃度)中で、低コスト既存ボイラ材
料を使用してスーパーヒータ蒸気条件540℃×100ata以上、発電端効率30%以上を実現する技
術を確立する。
平成10年度は、腐食環境調査として、既設の実証試験設備における熱分解脱塩素状況、チ
ャー燃焼炉での燃焼ガス組成とダスト性状を調査し、腐食の低減度を検討する。基礎材料試
験として、腐食に大きな影響を及ぼす付着灰性状調査を行う。また、実験室腐食試験装置を
用い、腐食環境を模擬した過熱管用材料の腐食試験を行い、評価する。
平成11年度は、選定した耐食性良好な過熱管用材料について、実証試験設備のチャー燃焼
炉出口について腐食プローブ試験を実施する。熱分解炉はチャーの含有塩素濃度を下げる最
適温度とする。
平成12年度は 、平成11年度に実施したチャー燃焼炉実証運転時の腐食環境を詳細に解析し ,
2− 15
プラント・スケールアップ(実機化)時の腐食環境を予測する。また、プローブ試験,実験
室試験及び津久井プラントでの腐食環境,材料寿命データを総合解析してチャー燃焼炉のス
ーパーヒータの最適設計(材料,配置等)条件を明らかにする。
c)セラミック式高温空気加熱器の開発
「再委託先:(株)荏原製作所」
伝熱管材質として高温耐用のできるセラミックを用い、ガス化溶融炉からの高温排ガスと
の熱交換により約700℃の空気を得るものである。この高温空気を用い、400℃の過熱蒸気を
500℃以上に間接加熱し、蒸気条件を改善し高効率化を図る。
平成10年度は、セラミック管材及び参照材料として金属管材の組成、伝熱特性等に関する
調査を行い、候補材を選定するとともに、セラミック空気加熱器の計画設計を実施する。ま
た、既設の実証試験設備を改造し、空気を750℃迄加熱できるように加熱器を直列ライン
にし、耐熱性と強度の強化を行う。伝熱管を手配し、一部実証試験に着手する。
平成11年度は、10年度の試験結果を基に改良を加え、セラミック製加熱器及び金属製加熱
器について実証試験を実施し、結果についてデータを比較し、実規模計画を開始する。
平成12年度は、過年度の実証試験結果の整理により、伝熱管材料の耐久性評価などの技術
的検討を行い、実規模計画についての性能及び経済性の評価を行う。
②排ガス再加熱回避のための技術開発 −低温脱硝装置の開発−「再委託先:川崎重工業(株 )」
脱硝装置の入口温度を現在の「200∼220℃」から「150℃」に低減し、排ガスの再加熱を
不要とすることにより、システムの熱効率を向上させることを目的とする。目標としては、
排ガス温度150℃で脱硝効率75%以上を目標とする。
平成10年度は、国内外の文献、特許等を調査し、低温脱硝に適していると考えられる触媒
を抽出し、メーカ調査を行って、候補触媒を選定する。また、選定した候補触媒について模
擬ガスを用いたラボ試験を開始し、反応温度と脱硝効率の関係、空間速度と脱硝効率の関
係等脱硝性能を検討する。フィールド試験用候補材を選定する。
平成11年度は、ラボ試験を継続し、フィールド試験用候補材を選定する。また、実排ガス
の性状等を調査し、フィールド試験装置を設計・製作・設置して、試験を実施し、ラボ試験
の結果と比較し、その相関を明らかにする。
平成12年度は、その相関を用い、ラボ試験を継続し、一次選定した触媒の改良検討、及び
二次選定した触媒の特性改良、低温性能向上を図る。また、ラボ試験による連続長時間試験
を実施することによりその耐久性を評価する。それらの結果を用いて、システムの性能と経
済性の評価を行う。
③自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
「再委託先:日立造船(株 )」
ごみの低カロリー化に対応し、廃棄物の安定した自己熱溶融を実現するため、自己熱溶融
限界発熱量を10%程度低減できる脱水機能を持つ「廃棄物安定供給システム」の実用レベル
での技術の確立する。
平成10年度は、文献・特許調査を実施し、各種供給装置として、シール性、定量供給性、
脱水性等についての検討を行い、供給装置方式を選定する。また、脱水機能、シール機能及
び臭気対策基礎試験を実施し、基礎データを取得する。さらに選定した供給装置方式につい
て、パイロット試験装置を試作し、基本機能、性能の確認試験を開始する。
2− 16
平成11年度は、パイロット試験を継続実施し、設計データを取得し、それにより実証試験
装置の設計・製作を行い、既設の実証試験装置に設置し、実証試験を開始する。
平成12年度は、実証機の性能アップテスト、脱水ごみを使用したガス化溶融テスト、分離
水の処理法の検討、実機の試設計などを行い、システム評価を行う。
④外部燃料投入量低減のための技術開発
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発−
「再委託先:新日本製鐵(株 )」
直接溶融システムでは、外部燃料の投入量をミニマムに抑え、かつ高カロリーガスを得る
ことがシステム全体の効率向上につながる。本技術開発では、高効率発電を目指した、廃プ
ラスチックの吹き込み箇所の最適化を含めた吹き込み技術の確立を目的としている。本技術
開発では、システム全体の中で、直接溶融炉への廃プラスチックの吹き込みの検討に加え、
試験設備の製作を含めたチャーガス化炉、ガス燃焼炉への廃プラスチック吹き込みにより、
廃プラスチック大量処理技術開発を行う。
平成10年度は廃プラスチックの熱分解燃焼特性把握のための基礎調査として、廃プラスチ
ックの性状と前処理技術の文献・特許調査を行い、また熱分解燃焼特性を把握するために燃
焼基礎試験を行う。これにより吹き込み設備設計データを得る。
平成11年度は既設実証試験設備に、プラスチック吹き込み試験可能なバイパス試験装置を
設計・製作・設置する。これにより、シャフト炉へのプラスチック吹き込み試験、チャーガ
ス化炉、燃焼炉各々単体でのプラスチック吹き込み探索試験を実施する。
平成12年度は、一連の単体吹き込み試験を継続するとともに、システム一貫試験を実施し
吹き込み効果を確認する。また、シャフト炉への廃プラスチック吹き込み試験を実施し、コ
ークス量低減可能量を検証し、それらデータに基づき全体システムの発電性能、経済性評価
を行う。
2)最適トータルシステムの調査研究
廃棄物ガス化溶融発電技術の高効率化の要素技術開発の成果を、個々に実プラントに適用
した場合、および組合せ可能な要素技術を取り入れたトータルシステムとしての最適化を実
施した場合について、実機規模にて発電性能及び経済性等を数値シミュレーションを用いて
検討評価し、従来技術との比較検討を行う。
2− 17
4.3研究開発実施主体の体制
経済産業省
資源エネルギー庁
【補助金】
新エネルギー・産業技術総合開発機構
高効率廃棄物技術開発
技術評価委員会
【委託】
財団法人
エネルギー総合工学研究所
廃棄物ガス化溶融技術開発
評価委員会
【再委託】
技術開発テーマ
開発担当メーカ
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価
三井造船株式会社
及び高温除塵システムの開発
(b)熱分解工程における脱塩素
三菱重工業株式会社
化技術の開発
(c)セラミック式高温空気加熱
株式会社
荏原製作所
器の開発
②排ガス再加熱回避のための
川崎重工業株式会社
技術開発
−低温脱硝装置の開発−
③自己熱溶融限界発熱量低減
日立造船株式会社
のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
④外部燃料投入量低減のため
新日本製鐵株式会社
の技術開発
−廃プラスチックの
吹き込み技術の開発−
2− 18
5.実用化、事業化の見通し
要素技術開発の成果を基に、個々の成果を各システムに適用した場合と、組合せ可能な開発
技術を最適トータルシステムとして適用した場合についての発電端効率及び送電端効率等の性
能特性評価と、ごみ処理単価及び発電原価等の経済性評価を行うとともに、従来炉(ストーカ
炉)との比較・評価を行った。
その結果、600t/d規模において500℃×100ataの蒸気条件を採用し、また各社の開発技術を
組み合わせるなどして、目標値である発電端効率30%が、ほぼ達成できることを確認した。経
済性評価も行い、本開発技術は、ほぼ従来技術を上回ることが分かった。
従って、本開発技術の実証段階はほぼ見通しが得られたと考えられる。
それ故、今後は実プラントへの技術適用を如何に図るかは各開発技術の種類によって異なる
のと、各々開発を担当したメーカの実績と考え方に依存するので、以下に実用化、事業化の見
通しに関する見解をまとめて記載する。
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価及び高温除塵システムの開発 「再委託先:三井造船(株 )」
ガス化溶融炉の環境腐食性は、溶融塩腐食が支配的な領域では低い結果となった。さらに、
セラミックフィルターを通過した灰は、溶融開始温度が650℃以上であることから、500℃の高
温蒸気を得るために必要なメタル温度域で溶融塩腐食の発生を防止できることが確認された。
また、300t/d以上のケースで発電効率が向上することが実機FSで確認された。
今後、高効率発電のため、蒸気温度の高温化ニーズが高まり、本技術の採用が早まるものと
考えており、導入普及に向けて取り組む。
(b)熱分解工程における脱塩素化技術の開発 「再委託先:三菱重工業㈱」
熱分解工程で脱塩素したチャーの燃焼ガス中での腐食試験により、蒸気温度500℃、排ガス
温度650℃の条件下でのSH材料として
SUS310J1またはAlloy825の採用で、減肉量を0.5mm/
年以下に抑えられることを確認した。本研究結果により、Alloy625のような高級材を使うこと
なく、発電効率30%以上の達成が可能となったので、プラント建設コストを高騰させることな
く、高効率発電プラントの建設が可能であり、十分事業化の見通しがある。
蒸気温度条件の指定がない商用機案件には、高温・高圧ボイラの提案をしている。また、発
電収益を見込み経費回収をするPFI案件では,本開発技術は、売電収入の増等によりごみ処理
単価が下がるということを自治体等に示し、普及に向けて取り組む。
(c)セラミック式高温空気加熱器の開発
「再委託先:㈱荏原製作所」
当該技術は、①間接加熱により溶融塩腐食を回避できる技術であること、②伝熱管材料には
高温強度は不要であること、③発電端効率30%に及ぶ高効率発電が可能であること、等の特長
を有し、実証試験で、セラミック製伝熱管は管温度を1000℃以下とすることにより、低融点化
合物の生成による急激な減肉を防ぐことが可能であることが示された。
当面、一般廃棄物用途で、ガス化溶融炉の実機において、発熱量の低いごみの自燃溶融に対
応すべく、金属製の高温二次空気加熱器を建設中の複数の自治体に採用している。今後、更な
る空気温度の高温化を図る場合は、セラミック管が適切であり、セラミックを実機に試用して
2− 19
いく。
②排ガス再加熱回避のための技術開発
−低温脱硝装置の開発−
「再委託先:川崎重工業㈱」
脱硝率が最高値を示したB-4触媒は、従来触媒に比べて格段に脱硝率が向上しているので、
低温脱硝の適用に最適な触媒として選定した。B-4触媒では、180℃での長時間運転では90%を
越える脱硝率をキープした150℃での運転では脱硝率が60%程度まで低下した。そのため、実機
適用では80%効率の維持が期待される170℃級を脱硝温度として採用した。今後、既設プラント
で一部ガスをバイパスさせる自主研究を行い、約1年間の性能維持を確認できれば、低温脱硝
装置として商用化する。
③自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
「再委託先:日立造船(株 )」
「廃棄物安定供給システムの開発」において二段脱水システムを開発し、その実用性の確認
のため、継続してテスト運転を実施している。その結果、二次分離液は二次燃焼炉で噴霧焼却
できること、また脱水ケーキは脱水ごみと一緒にガス化炉へ投入しガス化溶融できることが確
認され、汚水を出さないクローズドシステムのガス化溶融プラントの実用化、事業化の目処が
つき、受注した新設清掃工場向けに建設中であり、既に商用化を開始している。
④外部燃料投入量低減のための技術開発
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発−
「再委託先:新日本製鐵㈱」
廃プラスチックの羽口吹き込み技術については 、既に20t/d規模での実証が終わっており 、
次ステップでは実施設での確証を行える段階である。また、チャーのガス化溶融炉及び燃焼室
での廃プラスチック多量吹き込みについては、ベンチ規模試験が終了した段階であり、次ステ
ップとして実証試験を経て実機化する。特には羽口吹き込み技術は建設後の追加設置も可能で
あり、実現の鍵を握るのは、いかに廃プラスチックの前処理を安価に仕上げ、経済性を確保で
きるかである。従って今後、自社研究として廃プラスチックの簡易前処理研究と平行して実施
設での実証試験を行い、数年後の商用化を目指す。
2− 20
6.今後の展開
本技術開発により中規模以上のプラントにおいて、残渣溶融を伴う高効率廃棄物発電につい
て、実用化が可能であると考える。先に実施された従来型ストーカ炉に関する高効率廃棄物発
電の各技術開発も含めると、技術開発として残された領域は小規模プラント(200t/d以下)の
清掃工場に対する高効率発電の導入であり、これについては平成13年度より実施している高効
率廃棄物ガス変換発電技術開発に取り組み、その成果普及を行なうことで対応する。
なお、要素技術開発を担当した各社における、成果を用いた今後の展開については、下記の
とおりである。
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価及び高温除塵システムの開発 「再委託先:三井造船(株 )」
ガス化溶融炉へセラミックフィルターを採用にあたって、経済性に関し、単位容積あたりの
処理量を増加しコンパクト化を図ることが必要である。また、実機からの実ガスを使用した長
期試験を行い、信頼性、耐久性を確認する計画の実施を検討中である。
(b)熱分解工程における脱塩素化技術の開発 「再委託先:三菱重工業㈱」
2000時間の実排ガス暴露試験で、SH材料の減肉量を0.5mm/年以下に抑えられた。
今後 、実機に500℃×100ataの仕様を折り込み 、商用機化に向けて働きかける 。実機受注後 、
2年間のフォローアップを行い、SH材を交換することなく5年以上運転できることを実証し、
高効率発電プラントの普及に当たる。
(c)セラミック式高温空気加熱器の開発
「再委託先:㈱荏原製作所」
「間接加熱方式」と高級材(Alloy625)を用いた「直接加熱方式」を比較したところ、開発
技術の方がごみ処理単価・発電単価ともに低く、本技術が経済性において優れていることが示
された。
今後は、本技術の実用性を実機で実証するとともに、その導入による量産効果と相まって、
一層の経済性向上と普及拡大に努める。
②排ガス再加熱回避のための技術開発
−低温脱硝装置の開発−
「再委託先:川崎重工業㈱」
本研究で実用化の可能性が確認出来たので、次のステップとしては実機プラントの排ガスラ
インにバイパスライン及び低温脱硝装置を設置し、約一年間の性能維持(80%以上の脱硝率)
を確認の上、コマーシャルベースでの170℃級脱硝装置の適用を図る。さらに、長期的には、
150℃級の採用を目指して同様な活動を展開する予定である。
③自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
「再委託先:日立造船(株 )」
現在、一次脱水機および二次脱水機の性能向上や磨耗性についても観察中で、実機について
は受注したガス化溶融プラントに、前処理装置として本二段脱水システム等を採用する予定で
ある。本システムは乾燥システムに比較して、省スペース化、イニシャルコストの低減化が計
2− 21
れることから、含水率の高いごみを排出する地方の自治体向けに優位性があると考えられる。
④外部燃料投入量削減のための技術開発
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発−
「再委託先:新日本製鐵㈱」
シャフト炉式ガス化溶融炉については、すでに全国で9件が稼働しており、17件が建設中
である。これらのガス化溶融炉はコークスを使用、ないしは使用する計画であり、この一部代
替として廃プラスチックを羽口へ吹き込むニーズは高く、早期の実機適用が望まれているとこ
ろである。
そのためには、先ず一般廃棄物からの分別収集によるプラスチックが容器リサイクル法にお
いても適用可能技術としての認定を受けることが重要である。但し、容器リサイクル法適用技
術と認定されるまで、産廃プラスチックでの早期実用化は可能である。
今後、容器リサイクル法適用技術としての認定に向け関係部門への働きかけを進めるととも
に、実機化に向け、実施設での実証試験の候補先へ具体的提案をしていきたい。
2− 22
7.研究開発成果
7.1研究開発項目毎の成果
廃棄物ガス化溶融発電技術は、廃棄物をガス化し、高温で燃焼させることにより高効率発電
を可能にするのみならず、焼却灰を無害で有効利用し易く、また減容化程度の大きなスラグ状
のものとして取出せ、さらにダイオキシン類の抑制面でも優れた特性を兼ね備えているので、
我が国のエネルギー・環境特性上極めて望ましい廃棄物発電技術を提供するものと期待されて
いる。
本技術開発は同技術の高効率化実用プラント設計を可能にする要素技術開発とFSを実施
し、その成果を実用機に適用し、高効率廃棄物ガス化溶融技術の早期普及に資することを目的
としている。本技術開発は平成10年度から12年度まで、3カ年計画で進め、財団法人エネ
ルギー総合工学研究所に委託し、要素技術開発については各々6メーカに再委託して実施して
きた。
以下各実施項目毎の成果を要約する。
1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
実施した要素技術開発は予定のとおり進捗し、以下に要約するように、各々ほぼ当初の実施
目標を達成した成果が得られた。
また、各要素技術開発における実証試験設備運転結果より、ダイオキシン類の排出が新規制
値0.1ng/m3Nを十分に下回り、また灰は再利用可能な溶融固化スラグ状として取り出せることを
確認した。
以下、各要素技術開発成果を要約する。
①蒸気温度上昇のための技術開発
a)SH材料の高温腐食性の評価及び高温除塵システムの開発(再委託先:三井造船㈱)
調査・基礎試験の結果に基づいて選定したSH材料を用い、既設の実証試験設備にバイパ
ス路に過熱管とプローブを配置し、試験を実施した 。(第7-a1図
過熱器管及びプローブの
材質及び設置位置参照)その結果、一次過熱器低温部にSTB340相当材、一次過熱器高温部及
び二次過熱器低温部にSUS310相当材、また、二次過熱器高温部以降にはAlloy625を用いる必
要があるとの結果を得た。
また、高温除塵セラミックフィルタ(繊維強化SiC)(第7-a2図
高温除塵試験装置参照)
後流の付着灰は溶融開始温度が650℃以上であることが実証試験で検証された(第7-a3図
セラミックフィルタ−通過前と通過後の付着灰溶融開始温度の変化参照 )。つまり500℃の
高温蒸気を得るために必要なメタル温度域でも溶融塩腐食の発生を防止できることが確認さ
れた。その結果、従来炉と比較し、ガス化溶融炉は500℃の高温蒸気を得るのに有利な炉で
あることが示唆された。
また、FSの結果、ここで開発した高温除塵装置と他社開発による低温脱硝技術を併用す
ることで、600t/d規模のプラントの場合、発電端効率30%を達成できる見込みとなった。
三井造船の実機プラントシステム検討図を第7-a4図に示す。
2 - 23
3次
2次
① ②
1次
2次低温側平均
Tm =446℃ Ts= 400℃
Tg=730℃
Tm=550℃
③
⑥
④
HTAH
⑤
⑦
⑧
連絡 ダク ト
SH
3次SH平均
高温側運転前半
Tg=630℃
Tm=570℃
Ts= 530℃
高温側後半
Tm=520℃
Ts= 500℃
低温側前半
Tm=530℃
低温側後半
Tm= 480℃
2次低温側平均
Tg=466℃
Tm=300℃
2次高温側平均
Tg=595℃
Tm=405℃
Ts= 400℃
2次低温側平均
Tg=510℃
Tm =405℃
SH材料
3 次 S U S 3 1 0 S 、 A llo y 6 2 5
2 次 高 温 側 S U S 3 1 0 S ,S U S 3 0 9 J 2 、
STB A 24
低温側 S TB A 24
1 次 S T B 340
第7-a1図
過熱器管及びプローブの材質及び設置位置
第 7-a1 図 過 熱 器 管 及 び プローブの 材 質 及 び 設 置 位 置
第7-a2図
高温除塵試験装置
2 - 24
20
15
フィルター上流
10
フィルター下流
H e a t flo w / m W
5
0
-5
-1 0
-1 5
-2 0
-2 5
200
300
400
500
600
7 00
o
T e m p e ra tu re / C
第7-a3図
セラミックフィルタ−通過前と通過後の付着灰溶融開始温度の変化
排ガス再循環送風機
押込送風機
※
※
廃熱ボイラ
加熱空気送風機
排ガス再加熱
触媒反応塔
高温集塵器
節炭器
高温空気加熱器
熱分解ドラム
燃焼溶融炉
誘引通風機
脱塩用バグフィルタ
煙突
スラグ冷却水槽
脱塩残渣処理装置
熱分解固形物分別設備
第7-a4図
三井造船の実機プラントシステム検討図
2 - 25
b)熱分解工程における脱塩素化技術の開発(再委託先:三菱重工業㈱)
本システム(第7-b1図
実証プラントシステムフローと試験位置参照)では、熱分解で得
られた脱塩素後のチャーを蒸気の加熱源として利用するため、廃棄物の熱分解特性試験を
行い、熱分解温度が400∼450℃の範囲において脱塩素率およびチャー生成率ともに目標値と
なる結果を得た 。(第7-b2図
熱分解温度と脱塩素率,チャー生成率参照)
実証試験設備を用いて腐食環境の調査を行った結果から、チャー燃焼炉での低腐食環境が
実現可能であることが分かった。チャー燃焼炉のプローブ試験条件と安定運転条件との比較
を、第7-b1表に示す。従って、溶融炉ではチャー燃焼炉よりも腐食環境が厳しいので、三次
SHはチャー燃焼炉出口に設置するのが妥当である。
チャー燃焼炉では、ストーカ炉、灰溶融炉に比べ付着灰の融点が高く、灰融点を低腐食環
境の限界温度と考えた場合、チャー燃焼炉(約 530℃)では、ストーカ炉(約360℃ )、灰
溶融炉(約 420℃)に比べて、融点が高く、Alloy825、310レベルの低グレード材を用いても
低腐食速度で、500℃以上の高温蒸気実現の可能性があることが確認された(第7-b3図
チ
ャー燃焼炉安定条件おける各種材料の最大減肉予測参照 )。
FSの結果、本廃棄物処理システムを採用すれば、小型炉でも高効率発電が可能となり、
600t/日規模では、100kgf/cm2g×500℃の蒸気条件で、他社開発による低温脱硝技術を併用
することで、発電端効率30%を達成できる見通しを得た。
三菱重工業の実機プラントシステム検討図を第7-b4図に示す。
第7-b1図
実証プラントシステムフローと試験位置
2 - 26
90
50
80
40
70
30
60
20
50
10
40
325
350
第7-b2図
第 7-b2 図
第7-b1表
条件
項目
375
400
425
熱分解温度 (℃)
チャー生成率(%)
60
脱塩素率 (%)
100
0
475
450
熱分解温度と脱塩素率,チャー生成率
熱分解温度と脱塩素率,チャー生成率
チャー燃焼炉のプローブ試験条件と安定運転条件との比較
ガス化溶融プラントチャー燃焼炉
①20t/d実証炉
②実機プラント
(プローブ試験条件) (安定運転条件)
*運転条件変動大
−設計目標値−
ストーカ炉
③津久井プラント
(安定運転条件)
メタル温度
500,600℃
450∼540℃
500℃
ガス温度
(平均値)
温度変動巾
830℃
<650℃
<650℃
±130℃
±50℃
SH部で約±50℃
HCl濃度 (ppm)
30∼200
<100
400∼1500
SOx濃度(ppm)
<10
<10
20∼30
0.1∼12%
<1%
0.4∼14%
灰中Cl濃度
発停
(灰、スケール等脱落)
減肉量の
経時変化
C=k・t n
3∼6回/2300h
2∼3回/年
2∼3回/年
高ガス温度、変動大
で、腐食が促進され
k、n値が増加
n≒0.5
環境により異なる
n≒1(高ガス温度)
n≒0.5(低ガス温度)
2 - 27
第7-b3図
チャー燃焼炉安定条件における各種材料の最大減肉予測
蒸気タービン発電機
SAH
押込ファン
節炭器
※3
3次SH
※1
SGH
チャー
燃焼炉
※2
流動床式
ガス化炉
減温塔
乾燥フィーダ
除塵
バグフィルタ
触媒脱硝装置
ごみ
反応
バグフィルタ
二次燃焼室
飛灰安定化装置
給じん器
※2
※3
煙突
溶融炉
排ガス循環ファン
金属回収装置
※1
スラグ
第7-b4図
三菱重工業の実機プラントシステム検討図
2 - 28
C)セラミック式高温空気加熱器の開発(再委託先:㈱荏原製作所)
実証試験(第7-c1図
高温空気加熱器全体構造図参照)の結果を整理し、伝熱管温度分布
計測、付着灰組成分析などの結果から、セラミック製(SiC)伝熱管(第7-c2図
高温空気
加熱器詳細構造図参照)は管温度を1000℃以下とすることにより、低融点化合物の生成によ
る急激な減肉を防ぐことが可能であることが示された(第7-c3図
セラミック製伝熱管の減
肉速度参照 )。一方、鋼管製伝熱管の内、SCH系材(SCH11、SCH22)では、腐食が著しい
上強度不足で耐用不能であると判断されたが、Ni-Cr系合金では、使用温度をやや下げ
れば、セラミック管と同等の耐久性を示すものも見られた。
シミュレーションを行い、実規模の施設において約150℃から700℃以上に空気加熱を行う
場合、管温度を1000℃以下とすることが可能であることが確認された。
また、プラント非常停止を模擬した熱衝撃応答解析の結果、空気供給の停止と、再開による
管の破損の可能性は少ないことが示された。
FSの結果、発電端効率は、他社開発による低温脱硝技術を併用することで、600t/d規模
で、ほぼ30%を達成できる見通しを得た。
荏原製作所の実機プラントシステム検討図を第7-c4図に示す。
第7-c1図
高温空気加熱器全体構造図
2 - 29
第7-c2図
高温空気加熱器詳細構造図
0.010
α -S iC ( T 社 )
α -S iC ( K 社 )
減 肉 速 度 ( 線 形 ) [m m / H r]
0.008
β -S iC ( K 社 )
0.006
0.004
0.002
0.000
0
200
400
600
800
管 表 面 温 度 [℃ ]
1000
1200
1400
1000
1200
1400
(a)線形則を仮定した場合
0.012
α - SiC (T 社 )
α - SiC (K 社 )
0.010
減 肉 速 度 ( 放 物 線 ) [m m 2 / H r]
β - SiC (K 社 )
0.008
0.006
0.004
0.002
0.000
0
200
400
600
800
管 表 面 温 度 [℃ ]
(b)放物線則を仮定した場合
第7-c3図
セラミック製伝熱管の減肉速度
2 - 30
430℃
500℃ x 100ata
700℃
高温空気加熱器
高効率発電
400℃
煙突
ガス化炉
脱硝塔
150∼
200℃
処理物
廃熱ボイラ
空気予熱器
溶融炉
第7-c4図
バ グ フ ィル タ
荏原製作所の実機プラントシステム検討図
②排ガス再加熱回避のための技術開発−低温脱硝装置の開発−(再委託先:川崎重工業㈱)
調査とラボ試験の結果選択された触媒として、従来のバナジウム系を改良し、低温脱硝用
高性能触媒チタン−バナジウム系触媒Ti-V-Moを開発し、当初目標の150℃で75%以上の脱硝
効率(第7-②1図
触媒温度、AV値と脱硝率の関係参照)を達成した。
また、新規な有望系として高活性マンガン系触媒Mn-Ce-TiO2を見出した。ハニカム成型に
は課題を残すが、応用が期待される。
開発したチタン−バナジウム系触媒は、フィールドテストで実用適応性(第7-②2図
SCR
脱硝装置の基本構成)を示し、また実用ガスを模擬した長時間テストにおいても優れた耐久
性を示した。
最適システムの検討を行った結果、若干の再加熱を要する170℃(従来は200∼220℃)で
の経済性を含めたシステム成立を確認でき、更なる低温化、150℃システムへの道筋をつけ
ることができた( 第7-②3図
最適システム検討;触媒種 、反応温度の経済性に与える効果 )。
600t/d規模、蒸気温度500℃の条件では、30%以上の発電端効率を達成できる見通しを得た。
川崎重工業の実機プラントシステム検討図を第7-②4図に示す。
AV値
(Nm3/m2・h)
100
脱 硝 率 (% )
80
2 .1
3 .2
4 .2
6 .4
1 2 .7
60
40
20
0
120
140
第7-②1図
160
180
反 応 温 度 (℃ )
200
220
触媒温度、AV値と脱硝率の関係
2 - 31
ア ン モ ニ ア 注入制御装置
脱硝反応器
スート ブ ロ ワ
モ
アン
整流装置
送風機
ア ン モ ニ ア 注入管
触媒層
ニア
希釈器
1 50
触媒層
排ガ ス
NOx分析計
触媒層
ク ッ ショ ン材
触媒予備層
触媒ユニ ッ ト
第7-②2図
SCR脱硝装置の基本構成
2 - 32
mm
150
mm
103
ごみ 処 理 単 価 比 率
102
④ B -2
④ B -3
④ B -4
⑤ B -2
⑤ B -3
⑤ B -4
101
100
99
98
97
130
150
170
温 度 (℃ )
190
210
103
ごみ 処 理 単 価 比 率
102
④ B -2
④ B -3
④ B -4
⑤ B -2
⑤ B -3
⑤ B -4
101
100
99
98
97
130
150
170
温 度 (℃ )
190
210
第7-②3図 最適システムの検討;触媒種、反応温度の経済性に与える影響
(ケースA:集塵器出口温度155℃、ケースB:集塵器出口温度175℃)
廃熱ボイラ
集塵器
有害ガス
除去装置
排ガス加熱器
触媒脱硝塔
エコノマイザ
再燃焼室
サイクロン
部分燃焼炉
減温塔
消石灰
誘引送風機
煙突
資源化物
旋回溶融炉へ
旋回溶融炉へ
旋回溶融炉
スラグ
第7-②4図
川崎重工業の実機プラントシステム検討図
2 - 33
③自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
(再委託先:日立造船㈱)
実証試験(第7-③1図
脱水給塵実証機)の結果、目標の一つである脱水後のごみの水分
値を40%近くまで脱水することができ(第7-③2図
脱水ごみ水分経過状況及び第7-③3図
脱水ごみ水分値と消費電力の関係参照 )、また、脱水ごみを使用したガス化溶融炉の長期運
転を実施し、脱水ごみを安定供給できることを実証し、ガス化溶融炉もより安定した運転操
業が可能であることを確認した。
試験結果から従来の乾燥システム(キルン型)よりも、脱水システムのほうが設置面積、
経済性、運転性等多くの面で有利であることが分かった。
また、二段脱水システムを開発し、二次分離水を二次燃焼炉に噴霧することにより、汚水
の無放流プラントが可能となった。
FSの結果、ここで開発した脱水装置と、他社開発による低温脱硝技術及び、高温空気加
熱器を併用することにより、発電端効率30%以上を達成できる見通しを得た。
日立造船の実機プラントシステム検討図を第7-③4図に示す。
脱水ごみ
ごみ投入ホッパー
脱水ごみ
スクリュー(2軸)
第7-③1図
脱水給塵実証機
2 - 34
脱 水 ご み 水 分 (% )
80
60
40
20
0
0
20
40
60
80
経 過 時 間 (m in)
第7-③2図
第7-③3図
1 00
120
140
脱水ごみ水分経過状況
脱水ごみ水分値と消費動力の関係
排ガス循環
排ガス循環ファン
ごみ
1段目集塵器
2段目集塵器
エコノマイザ
ガス再加熱器
減温塔
脱水機
触媒脱硝塔
溶融炉
二次
燃焼室
ガス化炉
飛灰振分コンベア
飛灰固化装置
誘引通風機
飛灰戻り搬送コンベア
不燃物
スラグ
第7-③4図
日立造船の実機プラントシステム検討図
2 - 35
煙突
④外部燃料投入量低減のための技術開発
−廃プラスチック吹き込み技術の開発−
(再委託先:新日本製鐵㈱)
実証設備を用いてシャフト炉への廃プラスチック吹き込みを行い、コークス比30kg/tレベ
ルの低コークス比運転試験を実施した 。(第7-④1図
び第7-④2図
プラスチック吹き込み試験概要図及
廃プラスチック吹き込み装置参照)
実証試験により、フラフ状の廃プラスチック吹き込みにより、ポリエチレン単体吹き込み試
験結果と同様の結果が得られたことで、廃プラスチックのシャフト炉吹き込みによる廃プラ
スチックの処理技術の見通しが得られた(第7-④3図
図
コークス比とスラグ温度及び第7-④4
コークス比とスラグ中Pb濃度参照 )。同時にチャーガス化炉や燃焼炉への廃プラスチッ
ク吹き込み試験により、高出力化とともに多量のプラスチックを処理する技術の目処が得ら
れた。
シャフト炉に廃プラスチックを吹き込むことにより発電端効率は0.5%向上する。600t/d
規模で蒸気条件500℃にし、他社開発による低温脱硝技術を併用した場合、発電端効率は30%
以上を達成できる見通しを得た。
新日本製鐵の実機プラントシステム検討図を第7-④5図に示す。
ろ過式集塵器
燃焼室
排 カ ゙ ス温 度
NH3
調節器
触媒反応塔
都市ごみ
コークス
石灰石
電気ヒータ
サイクロン
シャフト炉
サイクロン
燃焼炉
FDF
L P G 、 AIR
チャー
空気
プラ供給機
プラ吹き込み先
A
酸素
ス ラ グ 、メ タ ル
空気
空気
煙突
チ ャ ー ガ ス 化 炉
プラ吹き込み先
C
N2 気流搬送
酸素
冷却水
酸素
スラグポット
*一点鎖線内バイパス試験装置
3
第7-④1図
バグフィ ルタ
空気
後燃 焼炉
フ ゚ラ 供 給 機
プラ吹き込み先
B
プラ供 給 機
プラスチック吹き込み試験概要図
2 - 36
溶融炉
送風空気
送風酸素
上段羽口
約 1m
下 段羽 口( φ 28)
炉底部
テーブルフィ ーダ
2 系 統
同時
切出
1 2 A ポリプ ロピレン ホース
キャリア ガス
第 7-④ 2 図
N2
廃プラスチック吹き込み装置
ス ラ グ 温 度 (℃ )
1700
1600
1500
羽口 吹込 みあり
1400
羽口吹込みなし
1300
0
20
40
60
80
コ ー ク ス 比 (k g /ご み -t)
第7-④3図
コークス比とスラグ温度
10 0
羽口吹込みあり
ス ラ グ 中 Pb (p pm )
80
羽口吹込みなし
60
40
20
0
0
20
40
60
コ ー ク ス 比 ( k g /ご み - t)
第7-④4図
コークス比とスラグ中Pb濃度
2 - 37
80
燃焼室へ
コークス
石灰石
ごみ
消石灰
排ガス
再加熱器
バグフィルタ
温度調節器
ボイラ
燃焼室
溶融炉
誘引通風機
アンモニア
チャー
廃プラスチック
脱硝反応塔
押込送風機
スラ グ、 メタ
チ ャーガ ス化 炉
P SA
(酸 素 発 生 装 置 )
溶融炉へ
無害化処理装置
煙突
スラグ
第7-④5図
(2)
新日本製鐵の実機プラントシステム検討図
最適トータルシステムの研究
従来型ストーカ炉発電での最適トータルシステム評価で行なった性能評価・経済性評価
の数値シミュレーションの知見を活用し、ガス化溶融発電についての個々の要素技術開発
成果を実機に適用した場合、および要素技術開発成果を相互に組み合わせ最適化した上で
実機に適応した場合の性能評価および経済性評価の数値シミュレーションを実施した。下
記にその結果を述べる。
①個別要素技術開発によるシステム評価
技術開発実施各社とも、開発技術を適用することにより効率が向上した。開発技術を単
独で用いた場合、蒸気温度上昇により600t/d規模で発電端効率は28%程度、送電端効率は
22%程度まで向上することができる。
経済性は、ほぼ開発技術の適用により従来技術(技術開発なし)を上回る。しかしなが
ら、蒸気条件を上げた場合は技術開発部分以外のコストアップ(ボイラ耐圧部など)によ
り若干経済性が悪化するケースも見られたが、その場合もスケールアップにより経済性向
上が図れ、ほぼ同程度と評価できる。
② 最適トータルシステム
技術開発実施各社とも、他社技術を組み合わせることによりほぼ目標である発電端効率
30%を達成した。送電端効率でも、26%を達成する組み合せもある。経済性では、上述のと
おり蒸気条件を向上させることによるコストアップにより開発技術適用により若干悪化す
るケースも見られたが大きな差ではなくほぼ同程度と評価できる。
この検討結果より、技術開発の適用による効率向上(目標発電端効率30%)という目標
が、ほぼ達成できたものと考える。
2 - 38
③ ストーカ炉との比較
灰溶融設備付ストーカ炉と比較した場合、600t/d程度以下のごみ処理規模では性能面、
経済性の両面においてガス化溶融炉に優位性があることが分かった。灰溶融設備付ストー
カ炉では灰溶融に外部エネルギーを必要とするため所内率が高く、特に小規模になると送
電端効率が極端に低下し、小規模になるほどガス化溶融炉の優位性が大きくなる。
600t/d以上の大規模プラントになると、現在実用化・検討されているところによれば1
炉あたりの最大容量は200t/d程度が限界であるため、大規模プラントでは炉数構成が多
くなり、メンテナンス性や設置面積等にデメリットが出てくること、またガス化溶融発
電の経済的メリットもあまり出ないこと等より、ストーカ炉に灰溶融炉を付設したプラ
ントの採用が現実的であると考える。
7.2まとめ
(1)廃棄物ガス化溶融発電技術開発
本技術開発は3ヵ年計画で進めた。各技術開発項目は平成12年度までの成果に基づき、当
初の目標に照らして評価した。その結果を第7.2-1表に示す。本事業の技術開発計画は、予
定通り進捗し、その目的は全体的に十分に達成できたものと考えている。
(2)最適トータルシステムの調査研究
実規模レベルのプラントに各要素技術を適用した場合、最適トータルシステムのFSを行
った。その結果、600t/d規模において500℃×100ataの蒸気条件を採用し、また各社の開発
技術を組み合わせるなどして、目標値である発電端効率30%が達成できることを確認した。
経済性評価も行い、本開発技術は、ほぼ従来技術を上回ることが分かった。
2 - 39
第 7.2-1表
技術開発テーマ
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)S H 材 料 の 高 温 腐 食 性 の 評 価
及び高温除塵システムの開発
(b)熱 分 解 工 程 に お け る 脱 塩 素 化
技術の開発
要素技術開発成果
技術開発目標
要素技術開発成果
最適なSH材の選定と除塵システムに セラミックフィルタを用いた高温除塵システムの開
よ る 腐 食 環 境 低 減 し 、 蒸 気 条 件 100ata× 発 に よ り 、 そ の 後 流 の 付 着 灰 は 溶 融 開 始 温 度 が 650℃
500℃ を 達 成 す る 。
以上と高く、溶融塩腐食に有利であることが実証炉で
確 認 さ れ 、 蒸 気 条 件 100ata× 500℃ は Alloy625で 、 従
来炉より長寿命化できる見通しを得た。
脱 塩 素 技 術 に よ り 100ata × 540℃ を 達 成 、 チ ャ ー 燃 焼 炉 は HCl濃 度 が 低 く (約 100ppm以 下 ) 、ま た 、
HCl濃 度 100ppmを 目 指 す 。
付着灰の融点が高いことを確認した。これにより蒸気
( 従 来 HCl濃 度 1000ppm程 度 )
条 件 100ata× 500℃ 以 上 で 、 Alloy825、 SUS310レ ベ ル
の SH材 料 が 使 え 、 540℃ も 達 成 可 能 と 判 断 さ れ た 。
(c)セ ラ ミ ッ ク 式 高 温 空 気 加 熱 器
の開発
高 温 空 気 加 熱 器 に て 700℃ 以 上 の 空 気 を セ ラ ミ ッ ク 製 伝 熱 管 は 管 温 度 を 1000℃ 以 下 と す る こ
得 て 500℃ 以 上 の 蒸 気 を 発 生 さ せ る 。
とにより、急速な減肉を防ぐことが出来、これを実機
(現 状 400℃ 空 気 )
に 適 用 す る 場 合 、 約 150℃ か ら 700℃ 以 上 に 空 気 加 熱 を
得 ら れ る こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、 700℃ の 空 気 で 、 500
℃の蒸気が得られることも確認した。
②排ガス再加熱回避のための技術開発
ア ン モ ニ ア 選 択 接 触 還 元 法 に よ り 、 1 5 0 従 来 の V系 触 媒 を 改 良 し 、 低 温 脱 硝 用 高 性 能 触 媒 Ti-V
℃ で 75%以 上 の 脱 硝 効 率 を 達 成 す る 。
-Moを 開 発 し 、 ラ ボ 試 験 で は 150℃ で 75%以 上 の 脱 硝 効
−低温脱硝装置の開発−
( 現 状 2 0 0 ∼ 22 0℃ で 脱 硝 効 率 5 0 ∼ 8 0 % )
率を達成した。フィールドテストで実用適応性を確認
するとともに、実用模擬ガスによる長時間耐久性を確
認 し た 。 最 適 化 シ ス テ ム 検 討 の 結 果 、 170 ℃ (バ グ フ ィ
ル タ ー 運 転 可 能 な 場 合 )で の 実 用 性 が 示 さ れ た 。
③自己熱溶融限界発熱量低減のための
自 己 熱 溶 融 限 界 発 熱 量 10%低 減 、 シ ー ル ス ク リ ュ ー 式 脱 水 機 を 主 脱 水 装 置 と す る 二 段 脱 水 装
技術開発
圧 力 は 5 0 m m H 2 O 程 度 以 上 、 処 理 後 の 水 分 は 置 を 開 発 し 、 処 理 後 の 含 水 分 約 40%を 達 成 し た 。 ま た 、
40%を 想 定 す る 。
二次分離水を二次燃焼炉に噴霧することで、汚水の無
−廃棄物安定供給システムの開発−
放流プラントが可能となった。このシステムは特に水
分の多い低熱量のごみに対して有効であり、ガス化溶
融炉への安定供給と安定燃焼に寄与することが実証出
来た。
④ 外 部 燃 料 投 入 量 低 減 の た め の 技 術 開 発 外 部 燃 料 投 入 量 30%以 上 削 減 、 コ ー ク ス 20t/日 の 実 証 シ ャ フ ト 炉 で 、 廃 プ ラ ス チ ッ ク 吹 込 み
投 入 量 5 0∼ 6 0k g/ ご み t → 35∼ 4 2kg/ ご み t に よ り 、 コ ー ク ス 比 30kg /ご み tレ ベ ル の 低 コ ー ク ス 比
−廃プラスチックの吹き込み技術の
に低減し、同時に、プラスチック吹き込 運転が出来ることを確認した。廃プラスチック吹込み
開発−
み技術を確立する。
により、コークスのみの時より安定した溶融スラグ排
出 と ス ラ グ 中 の Pb の 低 減 が 確 認 さ れ た 。 更 に 多 量 の 処
理が必要になることを想定し、その廃プラスチック吹
込み・処理技術を確立した。
2 - 40
(3)成果の普及、広報
①研究発表・講演
発表年月日
1)平成11年
4月
2)平成11年
7月2日
3)平成11年
9月9日
発表者
(財)エネ総工研
小川紀一郎
発表題目
発表媒体
廃棄物発電の内外動向と
テクノ・インフォメーション
ガス化溶融技術
・システムズ㈱研究講座
三井造船㈱
ガス化溶融炉環境におけ 機会学会、第9回環境工学シ
小野昇造
るボイラ
ンポジウム
川崎重工業㈱
ごみ焼却炉ボイラの高温
腐食防食協会
亀井裕次
腐食に及ぼす燃焼ガス成 第46回材料と環境討論会
分の影響
4)平成11年
10月1日
5)平成12年
川崎重工業㈱
廃棄物焼却ボイラの高温
上門正樹
腐食に及ぼす応力の影響
三井造船㈱
キルン型ガス化溶融プロ 全国都市清掃会議第21回研究
2月2日
6)平成12年
3月30日
日本鉄鋼協会秋季大会
セスの運転結果
発表会
川崎重工業㈱
Effect of Static Stress
NACE 国際シンポジウム
上門正樹
on High Temperature
Corrosion 2000
Corrosion Behavior of
Boiler Tubes in
Waste
Incineration Environment
7)平成12年
3月30日
川崎重工業㈱
廃プラスチックの高温ガ 化学工学会
庄司恭敏
ス化過程における速度論 第65年会
的研究
8)平成12年
9月17日
三井造船㈱
Corrosion Characteristics International Symposium on
小野昇造
Test of High Temperatu re High Temperature Corrosion
of Boiler Tube Materi als and Protection 2000
used in Pyrolysis for
Municipal Solid Waste
9)平成12年
11月8日
新日本製鐵㈱
直接溶融炉における廃プ 第11回廃棄物学会研究発表会
田中宏和
ラスチック羽口吹込み技
術の開発
10)平成12年
11月29日
11)平成13年
2月6日
12)平成13年
3月1日
㈱荏原製作所
流動床式ガス化溶融炉の
松岡慶
開発と今後の展望
川崎重工業㈱
低温脱硝装置の開発
州河誠一
全国都市清掃会議第22回研究
発表会
三菱重工業㈱
高効率廃棄物発電技術の
日中ごみ処理総合セミナー
折田寛彦
実用化
(中華人民共和国/北京)
2 - 41
13)平成13年
3月14日
三菱重工業㈱
Recent Trends in Corros- NACE国際シンポジウム
川原雄三
ion-Resistant Tube Mate- Corrosion/2001
rials and Improvements
of Corrosion Environment
in WTE Plants
13)平成13年
4月19日
三菱重工業㈱
熱分解ガス化溶融ごみ処 日本粉体工業技術協会
佐藤淳
理システムの実証試験結 流動化分科会ガス化溶融炉事
果
14)平成13年
5月29日
例シンポジウム
三井造船㈱
ガス化溶融炉における蒸 高温材料システムの腐食損傷
小野昇造
気過熱器管材料の高温腐 機構と環境解析(Ⅲ)、第1分
食
15)平成13年
6月7日
16)平成13年
7月10日
科会例会、(社)腐食防食協会
三菱重工業㈱
熱分解溶融炉によるごみ 廃棄物研究財団主催
白井利昌
処理技術(高効率発電型) ごみ処理新技術セミナー
三菱重工業㈱
熱分解ガス化溶融ごみ処 機械学会
白井利昌
理システムによる都市ご 第11回環境工学総合シンポジ
み、RDF実証試験
ウム
㈱荏原製作所
ガス化溶融システム向け
第11回環境工学総合シンポ
松岡慶
高温空気加熱器の開発
ジウム
㈱荏原製作所
廃棄物処理・リサイクル
電気学会
松岡慶
の新技術
報・システム部門大会
NEDO
廃棄物ガス化溶融発電技 NEDOフォーラム
楢本博也
術開発
20)平成13年
NEDO
高効率廃棄物発電技術開 第1回高効率廃棄物発電技術
11月20日
楢本博也
発の取り組み
21)平成13年
エネ総工研
先進型廃棄物発電技術開 第1回高効率廃棄物発電技術
11月20日
小川紀一郎
発の現状と課題
三菱重工業㈱
三菱熱分解ガス化溶融シ 第1回高効率廃棄物発電技術
保田静生
ステムについて
㈱荏原製作所
廃棄物のガス化と高効率 第1回高効率廃棄物発電技術
内野章
発電
川崎重工業㈱
高効率ガス化溶融発電技 第1回高効率廃棄物発電技術
藤井健一
術開発(低温脱硝装置開 に関するセミナー
17)平成13年
7月10日
18)平成13年
9月6日
19)平成13年
9月20日
22)平成13年
11月20日
23)平成13年
11月20日
24)平成13年
11月20日
2001年
電子・情
2001
に関するセミナー
に関するセミナー
に関するセミナー
に関するセミナー
発による高効率化)
25)平成13年
11月20日
26)平成13年
11月20日
日立造船㈱
廃棄物安定供給システム 第1回高効率廃棄物発電技術
杉本一郎
の開発
新日本製鐵㈱
シャフト炉式ガス化溶融 第1回高効率廃棄物発電技術
長田守弘
炉への廃プラスチック吹 に関するセミナー
に関するセミナー
き込み技術の開発
27)平成14年
日立造船㈱
二段脱水システムの開発
1月30日
全国都市清掃会議
研究発表会
2 - 42
②文献
発表年月日
1)平成11年3月
2)平成12年1月
発表者
(財)エネ総工研
(財)エネ総工研
発表題目
発表媒体
廃棄物発電(その3)
(財)エネ総工研発行
-廃棄物ガス化溶融発電-
新エネルギー展望
廃棄物発電技術
計測と制御(第39巻1号)
小川紀一郎
3)平成12年4月
日立造船㈱
廃棄物安定供給システム 日立造船技報
の開発
4)平成12年4月
5)平成12年7月
6)平成12年8月
7)平成12年
12月
8)平成13年1月
9)平成13年1月
10)平成13年
1月
11)平成13年
1月
12)平成13年
7月
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物ガス変換技術
月間エネルギー日本工業新聞
浅見直人
発行
他
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物発電システムの高
火力原子力発電
小川紀一郎 他
効率化に関する考察
Vol.50、No.7
(財)エネ総工研
廃棄物発電の現状と今後 原子力eye
大森伸二
の展開
他
日刊工業出版プ
ロダクション
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物発電の現状と将来 火力原子力発電
小川紀一郎
展望
Vol.50、No.12
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物発電技術の展開
太陽エネルギー
小川紀一郎
Vol.27、No.1
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物発電技術の現状
エネルギー・資源
小川紀一郎
Vol.22、No.23
川崎重工業㈱
廃棄物の噴流床ガス化過 化学工学論文集
庄司恭敏
程の熱重量解析
川崎重工業㈱
噴流床による廃プラスチ 化学工学論文集
庄司恭敏
ックの部分燃焼ガス化
第27巻、第1号
第27巻、第1号
(財 )エ ネ 総 工 研 廃棄物発電の高効率化に (財)エネ総工研発行
大森伸二
他
向けたガス化溶融発電技 季報
Vol.24 No.2
術開発の成果
13)平成13年
2月
14)平成13年
3月
15)平成13年
4月
16)平成13年
8月
㈱荏原製作所
SiC系セラミック新材料最 日本学術振興会
松岡
近の展開
慶
ック材料
高温セラミ
第124委員会
編
三井造船㈱
ガス化溶融炉における高 三井造船技報第172号
入江隆博
温耐腐食性材料
(財)エネ総工研
高効率化技術の現状と課 月刊エネルギー
浅見直人
題
三菱重工業㈱
廃棄物処理への燃焼技術 日本燃焼学会編「燃焼研究」
折田寛彦
の関わり合いの現状と将
4月号
日本工業新聞社
来展望
2 - 43
③特許等
出願年月日
(プロジェクトに直接関連する特許又は派生的に得られた特許)
会社名
種類
出願名称
発明者
(出願人)
1)平成10年
日立造船㈱
特許権
7月3日
2)平成11年
日立造船㈱
特許権
ガス化焼却設備における廃棄
安藤 、中井 、関口 、
物安定供給方法および装置
西山
廃棄物脱水装置
東條 、佐野 、安藤 、
12月24日
3)平成12年
山本、千木良
日立造船㈱
特許権
12月20日
4)平成13年
日立造船㈱
特許権
2月1日
5)平成12年
佐野 、安藤 、山本 、
物供給方法及び設備
東條、秋田、杉本
廃棄物の脱水装置及びその運転
杉本
方法
川崎重工業㈱
特許権
3月13日
6)平成12年
ガス化焼却設備における廃棄
低温脱硝装置及び低温脱硝
中村 、今村 、梶畠 、
方法
洲河、尾崎
川崎重工業㈱
特許権
金属材料の高温腐食防止方法
亀井、上門、中村
三井造船㈱
特許権
セラミックフィルタの接続
松本
3月30日
7)平成13年
3月5日
8)平成13年
方法
三井造船㈱
特許権
フィルタ
松本
三菱重工業㈱
特許権
廃棄物の乾燥供給方法
後藤 、保田 、堀添 、
7月10日
9)平成12年
2月4日
10)平成12年
寺沢
三菱重工業㈱
特許権
流動床式燃焼装置
3月2日
11)平成12年
保田
三菱重工業㈱
特許権
3月3日
12)平成12年
堀添 、寺沢 、佐藤 、
三菱重工業㈱
特許権
2月14日
固形廃棄物の焼却処理方法
堀添 、寺沢 、佐藤 、
とその装置
保田
高温粉体の輸送方法及び輸送
堀添 、清水 、江崎 、
装置及び該輸送装置を装着し
保田
た焼却装置
13)平成12年
三菱重工業㈱
特許権
廃棄物の処理方法及びその装置
堀添、保田
㈱荏原製作所
特許権
高温熱交換器
大下 、石川 、郷家 、
4月27日
14)平成10年
8月22日
15)平成10年
イビデン㈱
㈱荏原製作所
塚田
特許権
廃棄物燃焼発電方式
10月14日
16)平成10年
廣勢
新日本製鐵㈱
特許権
8月31日
17)平成11年
7月6日
大下 、中田 、高橋 、
新日本製鐵㈱
特許権
廃棄物溶融炉への廃プラスチッ
長田 、芝池 、高宮 、
ク吹き込み方法
内藤
廃棄物溶融炉への可燃性ダスト
芝池 、高宮 、小谷 、
の吹き込み方法
加藤
2 - 44
③特許等(続き)
出願年月日
会社名
種類
出願名称
発明者
(出願人)
18)平成10年
新日本製鐵㈱
特許権
10月4日
19)平成13年
新日本製鐵㈱
特許権
3月7日
20)平成13年
新日本製鐵㈱
特許権
5月30日
の吹き込み設備
高宮
廃棄物溶融炉の可燃性ダストの
加藤、田中、芝池
廃棄物溶融炉における可燃性ダ
加藤、田中、一町
ストの吹き込み方法及び装置
新日本製鐵㈱
特許権
3月30日
22)平成13年
芝池 、田中 、加藤 、
吹き込み装置
3月9日
21)平成13年
廃棄物溶融炉への可燃性ダスト
廃棄物溶融炉の可燃性ダストの
田中、芝池、高田
処理方法及び処理装置
新日本製鐵㈱
特許権
廃棄物溶融炉の可燃性ダストの
田中 、芝池 、上野 、
吹き込み方法
小坂、西田
2 - 45
最適トータルシステムの検討
別添資料
1. 検 討 条 件
(1)基 本 検 討 項 目 お よ び 条 件
各社の開発した要素技術のうち、組合せが可能な場合で、自社システムとの組合せによ
り高効率化が期待できると思われる他社の要素技術開発による全体システム設計を行い、
性 能 評 価 を 行 う 。ご み 処 理 規 模 は 600t/d で 、基 本 検 討 条 件 は 、ご み 処 理 規 模 を 除 い て 個 別
トータルシステムの検討条件と同じとする。また、最高効率を狙うという意味で蒸気条件
は 本 技 術 開 発 成 果 を 活 用 す る 、 し な い に 係 わ ら ず 500℃ ×100ata に て 検 討 を 行 っ た 。
こ こ で は 、 ベ ー ス と な る プ ラ ン ト ( 400℃ ×40ata) を 従 来 型 、 技 術 開 発 成 果 を 組 合 せ 、
高効率化を図ったプラントを高効率型と呼ぶこととする。
(2)組 合 せ パ タ ー ン
各 社 が 組 合 せ 可 能 な パ タ ー ン を 検 討 し た 結 果 が 第 1-1 表 で あ る 。 こ の 組 合 せ に 従 い 検 討
を行う。
第 1-1 表
検討する組合せパターン
高温除塵
装置
脱塩素化
技術
高温空気
加熱器
低温脱硝
装置
脱水装置
廃 プラ吹
き込 み
◎
×
×
×
×
×
×
◎
×
×
×
×
×
×
◎
×
〇
×
○
○
○
◎
○
○
×
×
×
×
◎
×
×
×
×
×
×
◎
三井造船
三菱重工業
荏原製作所
川崎重工業
日立造船
新日本製鐵
◎
:自 社 開 発 テーマ 〇:他 社 技 術 の採 用 ×:採 用 不 可
①三井造船システム(従来システム+高温除塵装置)+低温脱硝装置
三 井 造 船 の 開 発 し た 高 温 除 塵 装 置 に よ り 蒸 気 温 度 は 500℃ ま で 上 昇 さ せ る こ と が で き る 。
また低温脱硝装置の採用により排ガス再加熱が不要となり、効率向上、コスト削減が見込
める。
②三菱重工業システム(従来システム+脱塩素化技術)+低温脱硝装置
三 菱 重 工 業 の 開 発 し た 脱 塩 素 化 技 術 に よ り 蒸 気 温 度 は 500℃ ま で 上 昇 さ せ る こ と が で き
る。また低温脱硝装置の採用により排ガスの再加熱が不要になることによる効率向上、コ
スト削減が見込める。
③荏原製作所システム(従来システム+高温空気加熱器)+低温脱硝装置
荏 原 製 作 所 の 開 発 し た 高 温 空 気 加 熱 器 に よ り 蒸 気 温 度 は 500℃ ま で 上 昇 さ せ る こ と が で
きる。また低温脱硝装置の採用により排ガスの再加熱が不要となり、効率向上、コスト削
減が見込める。
④川崎重工業システム(従来システム+低温脱硝装置)
川 崎 重 工 業 で は サ イ ク ロ ン に よ り 脱 塩 素 化 を 図 る 自 社 従 来 技 術 に よ り 500℃ ま で 蒸 気 条
2-46
件 を 上 昇 さ せ る こ と が で き る 可 能 性 が あ る た め 、 他 社 技 術 を 用 い ず に 、 500℃ ×100ata の
蒸気条件で低温脱硝装置との組合せにより高効率化を狙った。
⑤日立造船システム(従来システム+脱水装置)+高温空気加熱器+低温脱硝装置
荏 原 製 作 所 の 開 発 し た 高 温 空 気 加 熱 器 を 採 用 す る こ と に よ り 500℃ の 蒸 気 条 件 を 達 成 す
ることができる。また低温脱硝装置も採用し、開発技術の脱水機を使用して高効率化を狙
った。
⑥新日鐵システム(従来システム+廃プラ吹き込み)+低温脱硝装置
新 日 鐵 は 排 ガ ス 中 の 塩 素 濃 度 が 低 く 、 自 社 従 来 技 術 で 500℃ の 蒸 気 条 件 を 達 成 す る 可
能性があるため、蒸気条件向上のための他社技術は採用せず、低温脱硝装置との組合せ
にて試算を行った。
2. 検 討 結 果
(1)三 井 造 船
検討結果を以下に示す。
基 本 検 討 条 件 は 1 項 で 述 べ た と お り で あ る が 、こ こ で の 検 討 条 件 を 第 2− 1 表 に 示 す 。低
温脱硝装置を使用することにより排ガスの再加熱は不要となるシステムである。
第 2-1 表
検討条件
従来型
ごみ処 理 規 模 (t/d)
蒸気条件
高温除塵装置
低温脱硝装置
節 炭 器 出 口 ガス温 度 (℃)
バグフィルタ入 口 温 度 (℃)
復水器形式
高効率型
600
400℃×40ata
なし
なし
250
190
空冷
500℃×100ata
あり
あり
180
170
水冷
⑦性能検討結果
性 能 検 討 結 果 を 第 2-2 表 に 示 す 。 高 温 除 塵 シ ス テ ム を 適 用 し 蒸 気 温 度 を 500℃ と し 、 低
温 脱 硝 装 置 を 用 い て 脱 硝 入 口 温 度 を 170℃ ま で 低 下 さ せ る こ と に よ り 発 電 端 効 率 で 30.0%、
送 電 端 効 率 で 19.8% を 達 成 し た 。 第 2-1 図 に 性 能 検 討 結 果 比 較 図 を 示 す 。
第 2-2 表
発 電 出 力 (kW)
売 電 出 力 (kW)
所 内 電 力 (kW)
ボイラ効 率 (%)
発 電 端 効 率 (%)
送 電 端 効 率 (%)
所 内 率 (%)
性能検討結果
従来型
12,700
7,200
5,500
76.4
20.8
11.8
43.3
2-47
高効率型
18,300
12,060
6,240
82.3
30.0
19.8
34.0
35
30.0
30
25
20.8
19.8
20
15
従来型
高効率型
11.8
10
5
0
発電端効率
第 2-1 図
送電端効率
性能検討結果
⑧経済性検討結果
第 2-2 図 に 経 済 性 検 討 比 較 図 を 示 す 。 高 効 率 型 は ご み 処 理 単 価 で は 従 来 技 術 よ り も 安 価
になった。設備費の増加を効率向上による売電収入の増加が上回ったためである。
逆 に 発 電 原 価 は 上 昇 し た 。発 電 原 価 に は 売 電 に よ る 収 入 が 反 映 さ れ て お ら ず 、500℃ に 蒸
気条件を上げたことによる設備費の増加が大きく影響している。
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(円/kWh)
ごみ処理単価、発電原価(売電分)
12
10.91 10.63
10
8
6
5.06
5.31
4
2
0
ごみ処理単価
第 2-2 図
発電原価(売電分)
経済性検討結果
2-48
従来型
高効率型
(3)三 菱 重 工 業
基 本 検 討 条 件 は 1 項 で 述 べ た と お り で あ る が 、 こ こ で の 検 討 条 件 を 第 2-3 表 に 示 す 。 低
温 脱 硝 装 置 を 採 用 す る 場 合 、 バ グ フ ィ ル タ 出 口 温 度 を 185℃ と し 、 排 ガ ス の 再 加 熱 が 不 要
な シ ス テ ム と し て 検 討 を 行 っ た 。バ グ フ ィ ル タ か ら 低 温 脱 硝 装 置 入 口 ま で で 約 15℃ ガ ス 温
度が低下する。
第 2-3 表
検討条件
従来型
ごみ処 理 規 模 (t/d)
蒸気条件
脱塩素化技術
低温脱硝装置
復水器形式
高効率型
(500℃)
600
500℃×100ata
400℃×40ata
なし
なし
空冷
高効率型
(540℃)
540℃×100ata
あり
あり
水冷
①性能検討結果
第 2-4 表 に 性 能 検 討 結 果 を 示 す 。 脱 塩 素 化 技 術 を 適 用 し 蒸 気 温 度 を 500℃ と し 、 低 温 脱
硝 装 置 を 用 い て 脱 硝 入 口 温 度 を 170℃ ま で 低 下 さ せ る こ と に よ り 発 電 端 効 率 で 31.0%、 送
電 端 効 率 で 19.8% を 達 成 し た 。 さ ら に 蒸 気 温 度 を 向 上 さ せ 、 540℃ と す れ ば 発 電 端 効 率 は
31.9%ま で 向 上 す る 。 発 電 出 力 は 高 効 率 型 で は 最 高 19,300k W と な る 。 第 2-3 図 に 発 電 端
効率、送電端効率のグラフを示す。
第 2-4 表
性能検討結果
従来型
発 電 出 力 (kW)
売 電 出 力 (kW)
所 内 電 力 (kW)
ボイラ効 率 (%)
発 電 端 効 率 (%)
送 電 端 効 率 (%)
所 内 率 (%)
発電端効率、送電端効率(%)
35
13,800
10,401
3,400
86.2
22.6
17.0
24.6
高効率型
(540℃)
19,300
15,808
3,500
86.2
31.6
25.9
18.1
31.0 31.9
30
25
高効率型
(500℃)
18,900
15,400
3,500
86.2
31.0
25.2
18.5
25.2 25.9
22.6
20
17.0
15
10
5
0
発電端効率
第 2-3 図
送電端効率
性能検討結果
2-49
従来型
高効率型(500℃)
高効率型(540℃)
②経済性検討結果
第 2-4 図 に 経 済 性 検 討 結 果 を 示 す 。 高 効 率 型 は ご み 処 理 単 価 、 発 電 原 価 (売 電 分 )従 来 技
術よりも安価になった。設備費の増加を効率向上による売電収入の増加が上回ったためで
ある。
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
12
10
10.29
9.38 9.30
8
6
4.25
4
3.80 3.79
従来型
高効率型(500℃)
高効率型(540℃)
2
0
ごみ処理単価
第 2-4 図
発電原価(売電分)
経済性検討結果
2-50
(4)荏 原 製 作 所
基 本 検 討 条 件 は 1 項 で 述 べ た と お り で あ る が 、 こ こ で の 検 討 条 件 を 第 2-5 表 に 示 す 。 低
温 脱 硝 装 置 を 用 い る が 、 バ グ フ ィ ル タ 入 口 温 度 は 150℃ と し て お り 、 排 ガ ス は 若 干 の 再 加
熱を要する。
第 2-5 表
検討条件
従来型
ごみ処 理 規 模 (t/d)
蒸気条件
高温空気加熱器
低温脱硝装置
バグフィルタ入 口 温 度 (℃)
復水器形式
高効率型
600
400℃×40ata
なし
なし
500℃×100ata
あり
あり
150
空冷
水冷
①性能検討結果
第 2-5 図 に 性 能 検 討 結 果 を 示 す 。 高 温 空 気 加 熱 器 を 適 用 し 蒸 気 温 度 を 500℃ と し 、 低 温
脱 硝 装 置 を 用 い て 脱 硝 入 口 温 度 を 170℃ ま で 低 下 さ せ る こ と に よ り 発 電 端 効 率 で 29.2%、
送 電 端 効 率 で 24.8% を 達 成 し た 。
発電端効率、送電端効率(%)
35
29.2
30
24.8
25
20.5
20
従来型
高効率型
16.5
15
10
5
0
発電端効率
第 2-5 図
送電端効率
性能検討結果
②経済性検討結果
第 2-6 図 に 経 済 性 検 討 結 果 を 示 す 。 経 済 性 に 関 し て は 、 個 別 ト ー タ ル シ ス テ ム の 検 討 で
述 べ た と お り 、 高 温 空 気 加 熱 器 を 用 い て 蒸 気 条 件 を 500℃ に 上 げ た 場 合 、 ボ イ ラ 耐 圧 部 の
コストが大きく増加するため、ごみ処理単価は増加する。
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
12
10
9.67
8.56
8
従来型
高効率型
6
4.24
3.40
4
2
0
ごみ処理単価
発電原価(売電分)
第 2-6 図
経済性検討結果
2-51
(5)川 崎 重 工 業
検 討 結 果 を 以 下 に 示 す 。 検 討 し た ご み 処 理 規 模 は 600t/d で あ る 。
基 本 検 討 条 件 は 1 項 で 述 べ た と お り で あ る が 、 こ こ で の 検 討 条 件 を 第 2-6 表 に 示 す 。
高効率型①ではダイオキシンの除去のための安全率を多く見てバグフィルタ入口温度が
150℃ と し 、 低 温 脱 硝 装 置 の 作 動 温 度 170℃ ま で 再 加 熱 を す る シ ス テ ム で あ る が 、 高 効 率
型 ② で は バ グ 入 口 温 度 を 170℃ と し 、 再 加 熱 を せ ず に 脱 硝 装 置 に 排 ガ ス を 導 入 す る シ ス テ
ムである。
バ グ フ ィ ル タ 入 口 温 度 は 150℃ で あ れ ば 、煙 突 出 口 で 0.1ng-TEQ/ N m 3 を ク リ ア す る こ
と は 問 題 な く 可 能 で あ る が 、 バ グ フ ィ ル タ 入 口 温 度 170℃ と し た 場 合 は 脱 硝 装 置 で の ダ イ
オ キ シ ン 除 去 性 能 に 期 待 す れ ば 0.1ng-TEQ/ Nm 3 の ク リ ア は 可 能 で あ る 。脱 硝 装 置 で の ダ
イオキシンの除去率等については今後さらに詳細な検討が必要である。
第 2-6 表
蒸気条件
低温脱硝装置
排 ガス再 加 熱
バグフィルタ入 口 温 度 (℃)
復水器形式
主な検討条件
従来型
400℃×40ata
なし
あり
150
空冷
高効率型①
500℃×100ata
高効率型②
540℃×100ata
あり
あり
150
なし
170
水冷
①性能検討結果
第 2-7 図 に 性 能 検 討 結 果 を 示 す 。 脱 塩 素 化 技 術 の 採 用 に よ り 、 高 効 率 型 ① で は 発 電 端 効
率 30.5% 、送 電 端 効 率 25.9%,さ ら に 高 効 率 型 ② で は 発 電 端 効 率 31.0%、送 電 端 効 率 26.3%
という高効率を達成した。
発電端効率、送電端効率(%)
35
30.5 31.0
30
25
25.9 26.3
22.9
18.2
20
15
10
5
0
発電端効率
第 2-7 図
送電端効率
性能検討結果
2-52
従来型
高効率型①
高効率型②
②経済性検討結果
第 2-8 図 に 経 済 性 検 討 結 果 を 示 す 。 高 効 率 型 は ご み 処 理 単 価 で は 従 来 技 術 よ り も 若 干 高
く な っ た 。 500℃ に 蒸 気 条 件 を 上 げ る こ と に よ る コ ス ト ア ッ プ が 効 率 ア ッ プ に よ る 売 電 収
入 の 増 加 を 上 回 っ た た め で あ る 。 発 電 原 価 (売 電 分 )も 同 様 に 増 加 し た 。
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
12.00
10.00
9.44 9.65 9.56
8.00
5.48 5.39
6.00
4.14
4.00
2.00
0.00
ごみ処理単価
発電原価(売電分)
第 2-8 図
経済性検討結果
2-53
従来型
高効率型①
高効率型②
(6)日 立 造 船
検 討 条 件 を 第 2-7 表 に 示 す 。
第 2-7 表
蒸気条件
脱水方法
高温空気加熱器
低温脱硝装置
復水器形式
検討条件
従来型
400℃×40ata
乾 燥 機 (水 分 20%)
なし
なし
空冷
高効率型
500℃×100ata
脱 水 機 (水 分 40%)
あり
あり
水冷
①性能検討結果
第 2-9 図 に 性 能 検 討 結 果 示 す 。 脱 水 機 を 適 用 し 、 さ ら に 高 温 空 気 加 熱 器 に て 蒸 気 温 度 を
500℃ と し 、 低 温 脱 硝 装 置 を 用 い て 脱 硝 入 口 温 度 を 170℃ ま で 低 下 さ せ る こ と に よ り 発 電
端 効 率 で 30.1%、 送 電 端 効 率 で 21.8% を 達 成 し た 。
発電端効率、送電端効率(%)
35
30.1
30
25
20
21.8
18.4
従来型
高効率型
15
10.0
10
5
0
発電端効率
第 2-9 図
送電端効率
性能検討結果
②経済性検討結果
第 2-10 図 に 経 済 性 検 討 結 果 を 示 す 。高 効 率 型 は ご み 処 理 単 価 、発 電 原 価( 売 電 分 )と も
従来技術よりも安価となった。脱水機、低温脱硝装置ともコストアップが少ないためであ
る 。た だ し 、高 温 空 気 加 熱 器 を 用 い て 蒸 気 条 件 を 上 げ て い る た め ご み 処 理 単 価 の 減 少 率 は 、
脱水機単独の場合よりも小さい。
ごみ処理単価(×1000円/t)
14
12.98
12.42
12
10
8
従来型
高効率型
5.83
6
4.29
4
2
0
ごみ処理単価
第 2-10 図
発電原価(売電分)
経済性検討結果
2-54
新日本製鐵
500℃ で の SH の 材 料 と し て は 3 次 SH に NF707( SUS310J2TB,イ ン コ ネ ル 825 相 当 ),
1 次 、 2 次 SH に は NF709( SUS310J2) を 設 定 し て 試 算 を 行 っ た 。
③性能検討結果
第 2-11 図 に 性 能 検 討 結 果 を 示 す 。蒸 気 温 度 を 500℃ ま で 上 げ 、さ ら に 低 温 脱 硝 装 置 を 採
用 す る こ と に よ り 、 発 電 端 効 率 で 31.1%、 送 電 端 効 率 で 24.3%と い う 高 効 率 を 達 成 し た 。
発電端効率、送電端効率(%)
35
31.1
30
24.3
23.2
25
20
従来型
高効率型
16.6
15
10
5
0
発電端効率
第 2-11 図
送電端効率
性能検討結果
④経済性検討結果
第 2-12 図 に 経 済 性 検 討 結 果 を 示 す 。高 効 率 型 は 、ご み 処 理 単 価 、発 電 原 価 (売 電 分 )と も
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
従来型を大きく上回った。
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
8.89
7.38
従来型
高効率型
3.72
2.94
ごみ処理単価
第 2-12 図
発電原価(売電分)
経済性検討結果
2-55
3. ス ト ー カ 炉 と の 比 較
600t/d 規 模 に お い て 、 ス ト ー カ 炉 ( 灰 溶 融 設 備 あ り ) の 場 合 と 、 ガ ス 化 溶 融 炉 の 比 較 を
行った。
デ ー タ は 、平 成 11 年 度 の「 最 適 ト ー タ ル シ ス テ ム の 研 究 」と 本「 ガ ス 化 溶 融 発 電 技 術 開
発」の両プロジェクトに関連していたメーカ 2 社の平均値を使用した。
ス ト ー カ 炉 の デ ー タ は 平 成 11 年 度 最 適 ト ー タ ル シ ス テ ム の 研 究 で の デ ー タ を 基 に 、以 下
のような条件を設定し、再度当研究所にて試算を行った。ストーカ炉、ガス化溶融とも高
効 率 化 を 狙 っ た も の で あ り 、 技 術 開 発 成 果 ( ス ト ー カ 炉 の 場 合 は SH 開 発 材 料 に よ る 蒸 気
条件向上、ガス化溶融の場合、本開発技術)を適用した場合の試算である。
建設単価は、ストーカ炉、ガス化溶融とも技術開発成果を適用しないベースプラントを
5000 万 円 / (t/d)と し た 。
第 3-1 表
概要
ごみ処 理 規 模
蒸気条件
建設単価
復水器
試算条件
ストーカ炉 (灰 溶 融 あり)
平 成 11 年 度 までの技 術 開
発 の成 果 を基 に耐 腐 食 性
SHを用 いて蒸 気 条 件 を
500℃×100ata まで向 上 。
ガス化 溶 融
平 成 12 年 度 の技 術 開 発 成
果 を基 に低 温 脱 硝 装 置 を採
用 、また蒸 気 条 件 向 上 技 術
を用 いることにより 500℃×
100ata まで蒸 気 条 件 を向
上。
600t/d
500℃×100ata
ベースプラントにおいて 5000 万 円 /(t/d)
※ストーカ炉 の場 合 灰 溶 融 設 備 を含 む
空冷式
(1)性 能 検 討 結 果
600t/d で の 試 算 結 果 を 第 3-1 図 に 示 す 。 発 電 端 効 率 、 送 電 端 効 率 と も ガ ス 化 溶 融 炉 は ス
トーカ炉を大きく上回った。特に、ガス化溶融炉は灰の溶融に外部エネルギーを必要とし
な い た め 、 送 電 端 効 率 で は ス ト ー カ 炉 に 比 べ 相 対 値 で 40%以 上 高 効 率 と な る 。
30
25
効率(%)
20
ストーカ
ガス化溶融
15
10
5
0
発電端効率
第 3-1 図
送電端効率
ストーカ炉との比較
2-56
(2)経 済 性 検 討 結 果
600t/d で の 試 算 結 果 を 第 3-2 図 に 示 す 。 ご み 処 理 単 価 、 発 電 原 価 ( 売 電 分 ) と も ガ ス 化
溶融炉はストーカ炉よりも安価となった。ガス化溶融炉は送電端効率が高く売電収入が多
いことが大きな要因である。また、ガス化溶融の場合SHの腐食環境も緩和されるため、
ランニングコストも若干ストーカよりも少なくなる。
本 経 済 性 試 算 結 果 は FS 条 件 に よ り 左 右 さ れ る 面 が あ る 。 特 に 、 建 設 費 に 関 し て は 本 試
算 で は ス ト ー カ 炉 と ガ ス 化 溶 融 炉 の 建 設 費 を 等 し く 置 い た が 、平 成 12 年 度 受 注 実 績 で は 、
ガス化溶融炉の価格は非常に低いものとなっている。これは各社が第一号機の納入実績を
つくるためにかなり価格を下げたためであり、適正な価格とは言いがたい。今後、ストー
カ炉とほぼ同程度の価格に落ち着くものと思われるが、今後の動向を見守っていく必要が
ある。
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(円/kWh)
16
14
12
10
ストーカ炉
ガス化溶融炉
8
6
4
2
0
ごみ処理単価
第 3-2 図
発電原価(売電分)
ストーカ炉との比較(経済性)
2-57
(3)ス ト ー カ と ガ ス 化 溶 融 炉 の 棲 み 分 け
第 3-3 図 に 処 理 規 模 に よ る 発 電 端 効 率 、 送 電 端 効 率 の ス ト ー カ 炉 、 ガ ス 化 溶 融 炉 の 比 較
を 示 す 。 検 討 条 件 は 、 第 3-1 表 と 同 様 で あ る 。 た だ し 、 こ こ で は (1)(2)と は 試 算 に 使 用 し
たデータが多少異なる。ストーカ炉、ガス化溶融炉ともに、蒸気タービンを用いて発電を
30
25
25
20
送電端効率(%)
発電端効率(%)
行 っ て い る た め 、100t/d 規 模 の 小 規 模 施 設 で は タ ー ビ ン の 特 性 上 、効 率 が 大 き く 低 下 す る 。
20
15
ガス化溶融
ストーカ
10
15
10
ガス化溶融
ストーカ
5
5
0
0
0
200
400
ごみ処理規模(t/d)
600
第 3-3 図
0
200
400
ごみ処理規模(t/d)
600
発電端効率と送電端効率
ま た 、 500℃ ま で 蒸 気 条 件 を 向 上 さ せ た 場 合 100t/d 規 模 に 見 合 う 蒸 気 タ ー ビ ン の 選 定 も
困難であり、本FSにおいてもいくつかのメーカでは検討を実施していない。
第 3-4 図 に ご み 処 理 単 価 と 発 電 原 価 (売 電 分 )を 示 す 。
建 設 単 価 は ガ ス 化 溶 融 炉 、ス ト ー カ 炉 と も 300t/d で は 5500 万 円 / (t/d),100t/d で は 6500
万 円 / (t/d)と し た 。
ごみ処理単価、発電原価(売電分)のどちらもガス化溶融のほうが経済的であるという
結果となった。
14
発電原価(売電分)(円/kWh)
ごみ処理単価(円/t)
30,000
ストーカ
ガス化溶融
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
0
200
400
ごみ処理規模(t/d)
第 3-4 図
ストーカ
ガス化溶融
12
10
8
6
4
2
0
0
600
200
400
ごみ処理規模(t/d)
ご み 処 理 単 価 と 発 電 原 価 (売 電 分 )
2-58
600
小規模施設では所内率が高く送電端効率が低いことから、売電収入も小さく経済性もあ
ま り よ く な い た め 100t/d 規 模 で 発 電 を 行 っ て い る 施 設 は 非 常 に 少 な い 。こ の 規 模 で も 高 効
率発電を行えるような廃棄物発電システムの構築が今後の課題である。
平 成 12 年 度 の 受 注 実 績 で は ご み 焼 却 施 設 の 約 半 分 が ガ ス 化 溶 融 炉 と な っ て い る 。た だ し 、
ガ ス 化 溶 融 炉 で は 一 炉 あ た り の 処 理 量 が 200∼ 300t/d に 制 限 さ れ る こ と か ら 600t/d を 超 え
る大型施設の場合、ストーカ炉の導入が進み、それ以下の施設では、経済的に勝るガス化
溶融炉の導入が今後進んでいくものと思われる。
2-59
3.4 ま と め と 今 後 の 課 題
(1)個 別 ト ー タ ル シ ス テ ム
各社とも、開発技術を適用することにより効率が向上した。開発技術を単独で用いた場
合 、 蒸 気 温 度 上 昇 に よ り 600t/d 規 模 で 発 電 端 効 率 は 28%程 度 、 送 電 端 効 率 は 22%程 度 ま
で向上することができる。
経済性は、ほぼ開発技術の適用により従来技術(技術開発なし)を上回る。しかしなが
ら、蒸気条件を上げた場合は技術開発部分以外のコストアップ(ボイラ耐圧部など)によ
り経済性が悪化するケースも見られた。その場合もスケールアップにより若干の経済性向
上が図れる。
(2)最 適 ト ー タ ル シ ス テ ム
各 社 と も 、 他 社 技 術 を 組 み 合 わ せ る こ と に よ り ほ ぼ 目 標 で あ る 発 電 端 効 率 30%を 達 成 し
た 。 送 電 端 効 率 で も 、 26%を 達 成 す る 組 み 合 せ も あ る 。 経 済 性 で は 、 上 述 の と お り 蒸 気 条
件を向上させることによるコストアップにより開発技術適用により悪化するケースも見ら
れた。ベースとなるプラントは各社のノウハウにかかる部分であり、各社の単純な比較を
行 う こ と は で き な い が 技 術 開 発 の 適 用 に よ る 効 率 向 上( 目 標 発 電 端 効 率 30%)と い う 目 標
はほぼ達成できたものと考える。
(3)ス ト ー カ 炉 と の 比 較
灰 溶 融 設 備 付 ス ト ー カ 炉 と 比 較 し た 場 合 、 600t/d 程 度 以 下 の ご み 処 理 規 模 で は 性 能 面 、
経済性の両面においてガス化溶融に優位性があることが分かった。灰溶融設備付ストーカ
炉では灰溶融に外部エネルギーを必要とするため所内率が高く、特に小規模になると送電
端効率が極端に低下し、小規模になるほどガス化溶融の優位性が大きくなる。
600t/d 以 上 の 大 規 模 プ ラ ン ト に な る と 、 ス ケ ー ル メ リ ッ ト に よ り ガ ス 化 溶 融 も 経 済 性 は
さらに良くなると思われるが、現在実用化されているもの、あるいはメーカで検討してい
る と こ ろ に よ れ ば 1 炉 あ た り の 最 大 容 量 は 200∼ 300t/d 程 度 が 限 界 で あ る 。ま た 、大 規 模
になるとストーカ炉とガス化溶融炉の効率の差は小さくなり、経済性の差もそれに伴い小
さくなる。大型施設ではストーカ炉の採用が現実的であると考える。
(4)今 後 の 課 題
今後の課題をまとめると以下のとおりとなる。
①経済性
蒸 気 温 度 向 上 の た め の 技 術 開 発 で は 、経 済 性 が 悪 化 す る も の が あ っ た 。3.2 の 検 討 結 果
を 見 れ ば 明 ら か で あ る が 、効 率 向 上 の た め に は 蒸 気 温 度 の 上 昇 が も っ と も 効 果 的 で あ り 、
発 電 端 効 率 30%達 成 の た め に は 蒸 気 条 件 向 上 は 必 須 で あ り 、 経 済 性 に つ い て は あ る 程 度
避けられない問題であると思われる。施設の大規模化による経済性向上を図ることや、
高 効 率 廃 棄 物 発 電 に よ る CO2 削 減 効 果 を 経 済 面 に 反 映 さ せ る 方 策 等 も 考 え る 必 要 が あ
る。
経済性を向上させるためには送電端効率の向上(高効率化)と設備費およびランニン
2-60
グコストの削減が必要である。本技術開発の各要素技術はいずれも消費電力を大幅にア
ップさせるものではなく、各社試算の送電端効率のばらつきはそれぞれのプラントシス
テム独自のものであり、本技術開発とは無関係の部分であるが、経済性を向上させるた
めには、今後所内電力を削減するための方策も検討する必要がある。
②実用化に向けて
実証試験期間が短期間であったため、材料の寿命評価などはさらに長時間の試験を行
う必要がある。FSではある程度の仮定の基に試算を行っているが、より正確な試算を
行うために、また実用化のためにはさらなる検討が必要である。
本技術開発項目の中で、日立造船の脱水機に関しては一軸式でタイプは違うが実機へ
の採用が決定しており、そこでの運転結果から本技術開発で使用した二軸式の脱水機が
今後採用されていくものと思われる。また、荏原製作所の高温空気加熱器に関しては、
現時点では蒸気発生を目的としたものではないが、燃焼空気加熱用の高温空気加熱器も
実機への採用が決まっており今後高効率発電用の空気加熱器が採用されていく可能性が
あ る 。 川 崎 重 工 業 の 低 温 脱 硝 装 置 に 関 し て は 、 既 に 185℃ で の 実 機 で の 運 転 は 確 認 さ れ
ており、さらに低温での実機運転により耐久性を見極めていくものと期待される。
③小規模施設の高効率化
ガ ス 化 溶 融 方 式 は 600t/d 規 模 で は 発 電 端 効 率 30%を 達 成 し 、経 済 的 に も 性 能 面 で も ス
トーカ炉などの従来型発電システムを上回るが、小規模では蒸気タービンにより発電を
行っていることから従来型発電システムと同様、効率が低く、経済性も良くない。この
規 模 で 高 効 率 発 電 を 行 い 、経 済 性 に も 優 れ た 廃 棄 物 発 電 シ ス テ ム の 検 討 が 必 要 で あ ろ う 。
2-61
2-62
第3章
評
3-1
価
評価書(案)
「廃棄物ガス化溶融発電技術開発」
【総論】
1.総合評価
焼却灰溶融の必要性が高まる中で、緊急性と社会的要素の高い事業プロジェクトであり、プロセ
スの実用化に貢献した。
エネルギー政策の観点からは、灰溶融は廃棄物の自己熱で行うことにより、送電端効率として見
た場合に、より高効率化が可能となることから、廃棄物発電目標の達成に必要な事業である。
環境政策の観点からは、より低い社会的な費用でリサイクルを促進する可能性を提供するだけで
なく、最終処分場残余年数の延長、ダイオキシン発生を減らすことができるという長所をもち、必
要な技術である。
しかし、廃棄物発電としてストーカ炉、ガス化溶融炉、RDF 発電のいずれの炉が有効か判断で
きる特徴を今後とも動向に注視しつつ、自治体等事業者に説明していくことが必要だと思われる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○3 年間の短期の事業であり、6 種の異なるプロセス開発にかかわる要素技術も同時併行的
に行なった従来にはなかった型の事業であったが、緊急性と社会的要素の高い事業の推
進には適したプロジェクトであり、プロセスの実用化に貢献した。
○最終処分場問題と高効率発電の双方に対応できる技術と言える。特に、灰溶融は熱で行
うことから送電端効率として見た場合に、より高効率化が可能となる。また、処理規模
も中規模対応ということになり、今後の高効率・低環境負荷廃棄物処理に資する社会シ
ステム構築の上で選択肢を拡げる重要な要素技術(プラント全体を指す)と言える。
○ごみの保有エネルギーを一層引き出すガス化燃焼技術が急速に浮上し、ガス化溶融炉と
いう将来技術分野が明らかになった。本事業はこのような新分野の燃焼炉についても高
効率発電技術の適用を目指すものであり、今後の廃棄物処理の方向とエネルギー政策に
おける廃棄物発電目標の達成に必要な事業である。
○本プロジェクトで実施された技術開発は、より低い社会的な費用でリサイクルを促進す
る可能性を提供するだけでなく、最終処分場利用量、ダイオキシン発生を減らすことが
できるという長所をもつ。このような技術開発により、廃棄物管理政策の観点から、容
器包装リサイクル法などによって実施されているマテリアルリサイクルやケミカルリサ
イクルに加え、サーマルリサイクルの可能性を広げることは、リサイクルや廃棄物処理
にともなう社会的費用をより低下させていく上で重要な役割をもっている。
○廃棄物をエネルギーとしてリサイクルし活用する廃棄物発電技術の開発は環境政策上も
3-2
エネルギー政策上も有効であり,かつ必要なプロジェクトである。自治体の廃棄物処理行
政の実情を考慮すると、早急に実用化が期待される技術である。
○個々の要素技術の開発は概ね目標を達成していると考えられる。
【否定的意見】
●技術的な見通しは得られたと思われるが、発電システムとしての実証性が十分でないと
思われる。廃棄物発電としてストーカ炉、ガス溶融炉、RDF のいずれの炉が有効か判断
できる説明が必要と思われる。
●研究期間が短いということもあり、トータルシステムとしてのシミュレーション結果の
みで、パイロットプラントなどの実証試験が不足している。今後の進展を期待する。
【その他の意見】
□従来型ストーカ炉等発電技術開発でも記述したが、発電に加えて熱利用や最終処分場の
負荷低減による効果、LCA 的な解析まで含めた新しい社会システムの提言などが含まれ
ているとさらに本プロジェクトの位置付けが明確になると思われる。(プロジェクトの
範疇に含まれないことは理解しています)
3-3
2.今後の研究開発の方向性等に関する提言
(1)ガス化溶融技術はいまだ未成熟の段階であり、解決しなくてはならない技術的課題も多いが、
多種多様なプロセスが実用化を競っている現状ではこれらの技術開発の課題は民間の資金に
よって解決していく必要がある。
なお、これまでの対象プロセスが大・中規模対応であるのに対し小型施設対応ということで
より重要性は高いと言え、次段階プロジェクトへの移行自体は問題ないと考えられる。
(2)NEDOによる研究助成事業の必要性の理由の一つとして、市場の失敗が挙げられている以
上、本プロジェクトへの資金提供が社会的な利益増進の観点から望ましい結果をもたらしたか
どうかについての評価が研究成果に含まれることが重要である。このため、今後の研究成果の
中に、費用(研究プロジェクトに対する研究助成額)とそれによって得られる社会的な利益(環
境改善による社会的利益)について、費用便益評価を組み入れ、本プロジェクトの社会的意義
を評価することが求められる。
【評価委員コメント欄】
【次段階の研究を進めるか否か等の提言】
○ガス化溶融技術はいまだ未成熟の段階であり、解決しなくてはならない技術的課題も多
いが、多種多様なプロセスが実用化を競っている現状ではこれらの技術開発の課題は民
間の資金によって解決していく必要がある。
○熱は長距離輸送が難しく、また、電気と共に貯蔵できないエネルギー源である。現在、
実施されているガス変換技術のようにガスとして、すなわち化学エネルギーとして貯蔵
できる形態に変換することは社会全体の高効率化を考える上で重要な技術になりうる。
さらに、これまでの対象プロセスが大・中規模対応であるのに対し小型施設対応という
ことでより重要性は高いと言え、次段階プロジェクトへの移行自体は問題ないと考えら
れる。
○有望な要素技術があれば、どの企業にもその研究開発を奨励する事業展開があるべき。
○すでに民間レベルで実用化できる技術が開発されていると思われるので、本プロジェク
トについては普及のための支援策を検討する段階にきているとおもわれる。早急な実用
化が求められる。
○(1)トータルシステムとしての実証試験。
(2)開発技術要素とその他の技術との最適組み合わせの検討による、さらなる効率化
の可能性を探る。
○NEDOによる研究助成事業の必要性の理由の一つとして、市場の失敗が挙げられてい
る以上、本プロジェクトへの資金提供が社会的な利益増進の観点から望ましい結果をも
たらしたかどうかについての評価が研究成果に含まれることが重要である。このため、
今後の研究成果の中に、費用(研究プロジェクトに対する研究助成額)とそれによって
得られる社会的な利益(環境改善による社会的利益)について、費用便益評価を組み入
れ、本プロジェクトの社会的意義を評価することが求められる
3-4
【各論】
1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性
ダイオキシン対応技術及び廃棄物最終処分場の不足に対応するため、灰の溶融固化設備の設置が
国策として緊急に求められているにも関わらず、数多くのメーカーが未成熟なプロセスを提案して
いる段階であることをかんがみれば、極めて高い公共性と社会的要請に、速やかに対応するため、
本事業を推進したことは妥当であり、NEDOの関与が適切なテーマであった。
また、将来の有望技術と目されるガス化溶融炉に対して高効率発電技術の適用を図る本事業は、
エネルギー施策としての廃棄物発電を促進する流れに沿う。
しかし、各社が既に様々な要素技術を保有し、開発を競うような状況になればNEDOの関与の
必要性は小さくなるであろう。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○ダイオキシン対応技術として急に注目された技術であり、数多くのメーカーが未成熟な
プロセスを提案している段階で、きわめて高い公共性と社会的要請にすみやかに対応す
るために本事業を推進したことは妥当であった。
○主たるユーザーが地方公共団体であり、廃棄物処理は公共サービスといえる。また、最
終処分場負荷低減という観点からも国主導で技術開発を推進する必要がある。
○将来の有望技術と目されるガス化溶融炉に対して高効率発電技術の適用を図る本事業は、
エネルギー施策としての廃棄物発電を促進する流れに沿う。
○環境の変化を考慮すると本プロジェクトは緊急性があり重要性もあると
判断される。廃棄物処理の主体が自治体であることを考慮するとは十分有意義な技術開
発プロジェクトである。
○本プロジェクトは「市場の失敗」に該当するテーマであるとともに、廃棄物最終処分場
の不足、焼却灰からのダイオキシン類や重金属の溶出の抑制に対応して、灰の溶融固化
設備の設置が国策として緊急に求められている。さらに、環境問題に関わる社会的重要
性と緊急性から実用化の時期も配慮しながら速やかに開発を進める必要があることから
NEDO が関与する必要性は大きい。
【否定的意見】
●要素技術の確認試験が主体の事業であるが、ガス化溶融炉は 20 社にのぼる民間企業が開
発に参加している実態がある。各社が既に様々な要素技術を保有し、開発を競っている
のであれば、NEDOの関与の必要性は小さくなる。ただし、不確実性や情報の偏在を
共通課題である廃棄物発電の高効率化をNEDOが関与して調整する意義は認められる。
3-5
【その他の意見】
□ガス化溶融炉自体は民間のみで開発されつつあるが、高効率化の観点から必要な要素技
術開発を支援するという観点から NEDO 関与の必然性は高い。
□廃棄物処理に対する環境規制の強化により潜在的な市場は大きいと思われる。安定性、
経済性を実証し、導入必要な支援策を検討する必要があるとおもわれる。
3-6
2.事業の背景・目的・位置付け
社会的要請の緊急性のため、3 年間の事業期間は妥当であった。
ダイオキシン類を始めとした公害物質の排出抑制、地球温暖化に対応した炭酸ガスの排出抑制を
クリアーしながら、焼却灰を溶融固化して減量するとともに高効率に廃棄物発電を行う社会的重要
性と緊急性は益々増大しており、事業の目的、開始時期、事前評価などいずれも妥当であったと思
われる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○社会的要請の緊急性のため、3 年間の事業期間は妥当であった。
○発電の高効率化促進により二酸化炭素問題に資するという意味では十分政策課題に資す
るものといえる。
○廃棄物発電の高効率化の一環として、今後の有力な燃焼技術であるガス化溶融炉への適
用を図ることは妥当である。
)
○事業の目的、開始時期、事前評価などいずれも妥当であったと思われる。実用化されれ
ばダイオキシン対策、地球温暖化対策、新エネルギー対策のいずれのニーズにも資する
と思われる。
○(1)本事業の社会的背景は事業開始時点から現在にいたるまで重要であり、ダイオキ
シン類を始めとした公害物質の排出抑制、地球温暖化に対応した炭酸ガスの排出
抑制をクリアーしながら、焼却灰を溶融固化して減量するとともに高効率に廃棄
物発電を行う社会的重要性と緊急性は益々増大している。
(2)本事業の目的は廃棄物処理、環境・エネルギー問題の解決に資するものである。
【否定的意見】
【その他の意見】
3-7
3.事業の目標
発電端効率 30%の達成、ダイオキシン類排出目標、灰を再利用可能な溶融固化スラグとして取
り出すことを経済性に優れた方式で実現する等の目標設定は、従来技術との比較の上で妥当といえ
る。
取り上げた要素技術もガス化溶融炉だけでなく従来炉に適用できる技術が含まれており、妥当で
ある。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○具体的な目標値が明示されており妥当であった。
○目標として 30%という発電効率が明示されておりその水準も妥当な目標といえる。
○発電端効率 30%の達成、経済性、ダイオキシン類排出目標等の目標設定は、従来技術と
の比較の上で妥当といえる。取り上げた要素技術もガス化溶融炉だけでなく従来炉に適
用できる技術が含まれている。
○目標の水準についてはコメントできないが、環境負荷軽減の効果等を考慮すると費用対
効果は十分あると判断できる。
○発電端効率を 30%、ダイオキシン類の排出を規制値(0.1 ng-TEQ/Nm3)
、灰を再利用可
能な溶融固化スラグとして取り出すことを経済性に優れた方式で実現するという目標は
具体的である。また、各要素技術の開発目標も具体的かつ適切に設定されている。
【否定的意見】
【その他の意見】
3-8
4.事業の計画内容
事業の緊急性から見ても 6 種の異なるプロセスの開発課題について同時平行的に研究推進した
ことは妥当であった。研究開発実施者の事業体制も各実施者の得意とする分野を担当する形になっ
ており、それぞれの開発結果を相互に利用して、トータルシステムの評価が行われることから協力
関係も妥当といえる。
しかし参加していない企業への成果の共有は考慮することも必要であろう。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○事業の緊急性から見ても 6 種の異なるプロセスの開発課題について同時併行的に研究推
進したことは妥当であった。
○スケジュール的には概ね妥当と考えられる。
○(1)開発目標の各技術要素を参画企業の有するトータルシステムに関わる自社技術と
の整合性から個別に並行して進めるスケジュールになっている感があるが、開発
期間が短期間であり、実用化に対する緊急性を考慮すると妥当な計画である。
(2)研究開発実施者の事業体制は各実施者の得意とする分野を担当する形になってい
る。それぞれの開発結果を相互に利用して、トータルシステムの評価が行われる
ことから協力関係もとられている。
【否定的意見】
●開発すべき要素技術の選択は必要かつ十分であったか。実施者の選定の経緯を明らかに
すべき。また、参加していない企業への成果の共有は考慮されているか。
● 予算の過不足については判断できない。開発推進体制がはっきりしていない印象がある。
【その他の意見】
□発電効率の向上に絞っており、3 年間で効果的に成果を得られる体制を組んだと考えられ
る。ただし、選定された 6 社以外にも多くの会社がガス化溶融技術を開発中であり、何
故これら 6 社なのかという理由が明示されている必要がある。
3-9
5.実用化・事業化の見通し(実用化のイメージ)
実用化については、技術的に未成熟なプロセスも含まれているため、対象とした 6 プロセスのす
べてが本格的に実用化されるかは、各プロセスがかかえている固有の技術課題をどのようにして克
服できるかにかかっている。
しかし、ニーズの緊急性も考慮すると実用化は速やかに行われると考えられる。
また、現時点では明白な波及効果は出ていないようであるが、今後は本事業が関連分野へ与える
インパクト、波及効果は大いに期待できる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○技術的に未成熟なプロセスも含まれているため、対象とした 6 プロセスのすべてが本格
的に実用化されるかは、各プロセスがかかえている固有の技術課題をどのようにして克
服できるかにかかっている。
○今後の実証試験が必要なものが多いが、産業技術としての見極めはなされている。
本事業が関連分野へ与えるインパクト、波及効果は大いに期待できる。
○新しい産業技術として適用可能とおもわれる。
○(1)要素技術の開発成果および参画企業の自社技術を組み合わせると、トータルシス
テムとしての開発目標は達成できる状態になっており、ニーズの緊急性も考慮す
ると実用化は速やかに行われると考えられる。
(2)ストーカ方式では有利性が減少する廃棄物処理量 600t/d 以下の規模で、高効率発
電が可能であることから、廃棄物発電全体に及ぼす影響は大きい。また、燃焼排ガ
スから腐食成分を減少させる技術および低温稼動脱硝触媒は、他の高温プロセスへ
応用できる。
【否定的意見】
【その他の意見】
□開発目標を各社毎に絞っており、一定の成果はあるといえる。
プラントのリーディングタイムが長いこともあり、現時点では明白な波及効果は出てい
ないようである。ただし、近い将来に順次成果が出てくるとが期待される。
3-10
6.今後の展開(実用化までのシナリオ)
本格的な実用化と普及のためには、更なるコストダウンと炉材耐久性やメンテナンス、飛灰の処
理・利用方法など多くの技術課題の克服が必要であるが、環境、エネルギー政策上必要性が高まっ
ていることは確実であり、各社の競争が活発化するならば実用化とコストダウンが促進されるであ
ろう。
また、本システムはストーカ炉発電システムより比較的小規模な廃棄物発電に適していることか
ら、海外も含めた市場も予想される。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○本格的な実用化と普及のためには、更なるコストダウンと炉材耐久性やメンテナンス、
飛灰の処理・利用方法など多くの技術課題の克服が必要であるが、ある程度の普及は見
込める。
○本技術開発では早期導入に絞って重要な要素技術を選定しており、計画段階ではあるが
一部では実用機へ導入されつつあり、その他の要素技術も順次実用機に導入されると考
えられる。
○要素技術の実証試験は各実施者に委ねられているが、各社の競争が活発化するならば実
用化とコストダウンが促進される。
○コストダウン,実用化の見通しははっきりしないが、事業化される見通しはあるものと思
われる。環境、エネルギー政策上必要性がたかまっている。
○(1)実用化に向けた技術開発は概ね十分と考えられるが、導入普及は地方自治体から
の発注状況に大きく依存する。受注状況によってさらなるコストダウンは可能と
考えられる。
(2)本システムは比較的小規模な廃棄物発電に適していることから、海外も含めた市
場が予想される。
【否定的意見】
●研究開発の継続については、各企業の競争を促す手法によるべき。
●システム技術としては不十分なところも見られるが、現実的な合成上のニーズがあるの
で導入のための支援策の検討が必要と思われる。
【その他の意見】
3-11
7.研究成果
目標はほぼ達成している。我国のガス化溶融技術はすでに世界最高水準に達しており、本事業の
果した役割も大きい。多くの要素技術はそれぞれ新規性・独創性・汎用性が認められるとともに、
ストーカ炉等への波及も期待できる。成果の普及・広報も十分になされていると認められる。
しかし、現在のシュミレーションだけでなく、今後は実証試験が期待される。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○目標はほぼ達成している。我国のガス化溶融技術はすでに世界最高水準に達しており、
本事業の果した役割も大きい。
○脱硝温度低下などで一部設定した目標値を達成していないが、これはチャレンジングな
目標を設定したとも考えられ、また、実用化の先鞭を付けており概ね成果が達成される
と考えられる。
○目標値は概ね達成されている。
多くの要素技術はそれぞれ新規・独創性・汎用性が認められる。
成果の普及・広報は十分になされていると認められる。
○ 個々の要素技術の開発目標は概ね達成している。
【否定的意見】
●SH材料関係の開発については、コスト面を含め、なお検討の余地がある。
その他の要素技術についても、成果の普及・広報に努めるべきである。
環境低減技術については、発表がなされていない。
【その他の意見】
□個々の要素技術の開発成果をもとにトータルシステムとしてのシミュレーションを行っ
て、発電端効率が 30%程度は達成され、経済性も従来のものより優れるという試算にな
っているが、今後の実証試験を期待する。
□廃プラ吹き込みは共通の要素技術とはなり得ず、別の位置づけ・評価が必要ではないか。
3-12
8.情勢変化への対応
事業期間が 3 年と短期であり計画の見直し等は必要なかったものと思われる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○事業期間が 3 年と短期であり計画の見直し等は必要なかったものと思われる、各技術課
題に対する対応も妥当と思われる。
○(1)事業期間におおきな情勢変化は起こっていない。
(2)プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)は有効に機能していたと
考えられる。
【否定的意見】
【その他の意見】
□プロセスの性格上 3 年間の開発機関であり、機動的な運用の成果は見えにくいと考えら
れる。
(計画、施工、運転までのリーディングタイム、また、更新までの期間が長い)
6 社の技術開発目標を絞ったことはある意味ではプロジェクトのリーダーシップが発揮
されたとも考えられる。
3-13
【要素技術:蒸気温度上昇技術開発】
1. 成果に対する評価
3 つの技術が本要素技術開発に含まれるが、いずれも導入による効果が 10 ポイント程度高くな
る技術であり、重要な技術開発と言える。成果については、ほぼ目標を達成しており、独創性も認
められる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○3 種の技術ともほぼ目標を達成しており、成果の独創性も認められる。
○3 つの技術が本要素技術開発に含まれるが、いずれも導入による効果が 10 ポイント程度
高くなる技術であり、重要な技術開発と言える。
○1)SH材料高温腐食特性:
ガス化溶融炉排ガスの腐食環境特性の把握、SH材料試
験とも目標値をクリアし、新規性のある成果が得られている。
2)熱分解工程脱塩素化
:
脱塩素率の達成条件、高圧蒸気条件の達成に加え、チャ
ー燃焼炉の腐食環境の把握など、発展性のある成果が得られている。
3)セラミック式高温AH:
セラミック等のエアヒータの性能目標が確認され、将来
性のある成果が得られている。
○ガス化溶融発電技術開発における蒸気温度上昇技術は、蒸気温度 500℃で稼動するスーパ
ーヒーター部の高温腐食を緩和する技術を開発し、廉価な既存の合金材料を用いたシス
テムを可能にしようとするものである。3 種類の開発課題について検討し、以下の成果を
得ている。
①廃棄物の燃焼ガスを高温除塵セラミックフィルタ(繊維強化 SiC)を通過させてから、
過熱器管部へ供給する技術を開発している。その結果、過熱器管に付着する灰の融点が
650℃以上に高温化し、溶融塩腐食を防止できるという成果を得ている。
②廃棄物の熱分解で得られる脱塩素後のチャーを蒸気の発生用の燃料として利用すると、
付着灰の融点が約 530℃と高いので、溶融塩腐食が抑制される。技術開発の結果 400∼
450℃の範囲で脱塩素率およびチャー生成率ともに目標値を満足する成果を得ている。
③耐食性の高いセラミックス伝熱管を用いて、腐食性の高い高温燃焼ガスから熱交換し
て 700℃を超える高温空気を調整し、これを過熱器管部導き高温蒸気を発生させる。この
場合過熱器管の高温腐食は避けられる。SiC セラミックス伝熱管は 1000℃以下の温度で
使用可能なことを示している。以上の 3 種類の開発課題、全てで開発目標をクリアーし
ている。
(2)上記①及び②の成果は、他分野の高温燃焼炉にも応用可能である。また、高温セ
3-14
ラミックスの新たな応用分野を提供するものである。
【否定的意見】
【その他の意見】
□(肯定的意見欄に記した)
「①及び②」のセラミックスフィルタおよび伝熱管のコストお
よび寿命とから算出した、開発技術を導入したときの経済的メリット/デメリットが示
されていると技術的インパクトが明確となる。
3-15
2.
実用化の見通しに関する評価
いずれの技術も新規性があり、今後の高効率化のための重要な要素技術となること。また、廃棄
物処理量 600t/d 規模では発電端効率 30%を達成できる見通しを得ていることから、今後、実炉で
の実証試験を行う等の更なる技術開発により、実用化の可能性が高いと考えられる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○3 技術とも実用化の可能性は高いが、いずれも実用化のためには更なる技術開発が必要で
ある。
○計画段階ではあるが既に導入事例もあり、十分実用化の可能性があると言えよう。
○いずれの技術も新規であり、今後の高効率化のための重要な要素技術となることが期待
される。
○得られた成果を利用して、本事業で開発した他の要素技術、および本事業に参画してい
る企業の所有する技術とを組み合わせた場合の、トータルシステムとしての検討から、3
種類の課題の全てについて、廃棄物処理量 600t/d 規模では発電端効率 30%を達成できる
見通しを得ており、実用化の可能性は高い。
【否定的意見】
●いずれの技術も実炉での実証試験が必要である。特にダーティガスの除塵システムは、
実炉においては燃焼条件の変化等により急激な閉塞も想定される。
【その他の意見】
3-16
3.
今後の研究開発の方向性等に関する提言
各技術毎に以下の研究開発が必要だと考えられる。
①高温集塵技術:長期実証試験による炉材耐久性、フィルタ目詰まり等の研究。
②脱塩酸化技術:チャー中塩素残留量、重金属挙動の技術的確認とトータル発電コストの検討。
③セラミック式高温加熱器:加熱器の耐久性、表面折出物や灰付着挙動等の研究。
また、いずれの技術も実炉における実証試験が必要である。
さらに、実用化のために、3 つの要素技術が競合するものか、組み合わせることが可能なものか、
その際のメリットなどを明確化するとともに、長期運転の場合のメンテナンス性、低コスト化など
が研究課題と考えられる。
【評価委員コメント欄】
○高温集塵技術:長期実証試験による炉材耐久性、フィルタ目詰まり等の研究が必要
脱塩酸化技術:チャー中塩素残留量、重金属挙動の技術的確認とトータル発電コストの
検討が必要
セラミック式高温加熱器:加熱器の耐久性、表面折出物や灰付着挙動等の研究が必要
○3 つの要素技術が競合するものか、組み合わせることが可能なものか、その際のメリット
などを明確化できればより導入が促進されるといえる。
○いずれの技術も実炉での実証試験が必要である。
○長期運転の場合のメンテナンス性の観点からの開発要素技術のさらなる選択、低コスト
化などが今後の研究課題と考えられる.
3-17
【要素技術:排ガス再加熱回避技術】
1. 成果に対する評価
成果は目標値をクリアしており、高水準の低温脱硝技術となっている。また、本技術は他のプロ
セスへの適用の可能性も大きいと予想されるものである。
しかし、実機に展開したときの適用可能施設規模や耐久性について、一層の検討が重要との意見
もある。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○成果は目標値をクリアしており、他のプロセスへの適用の可能性も大きい。
アンモニア選択接触還元法で 150℃という低温で 75%以上の脱硝率が得られており、高
水準の低温脱硝技術となっている。また、本技術はいずれの処理システムにも適用でき
るので、組み合わせて一層の高効率化の達成が期待できる。
○(1)従来の脱硝装置は 200℃以上の温度で稼動させることから,排ガスの再加熱が必要
であった。これを 150℃で脱硝可能(脱硝率 75%以上)として排ガスの再加熱を不要と
することで熱効率を高めるという目標で開発が行われた。触媒の開発から目標値を達成
している。
(2)低温脱硝触媒は廃棄物発電以外の分野にも展開が期待される技術である。
【否定的意見】
●AV値 12.7 という運転条件は、実機ではどの程度の装置規模になるのか、また、さらな
る耐久性に関する調査が重要である。
【その他の意見】
□脱硝の低温化による高効率化の程度は 1 ポイント以上あり、蒸気温度の高温化と組み合
わせることで 30%という目標値を達成できるという試算結果をている。
高効率化の絶対値は蒸気温度高温化と較べると小さいが、低環境負荷が主目的であるた
めその点は問題ないと考えられる。また、その目的から本来の位置付けが蒸気温度高温
化などとの組み合わせ技術と言えよう。環境対策技術であるから 150℃にでき、コストや
運用性などが満足いく範囲に収まれば広く採用される可能性は高い。
ただし、当初目標温度を達成できなかったという観点では計画段階での目標設定がチャ
レンジングであったのか、甘めだったかという点では判断がつきかねる。
3-18
2.実用化の見通しに関する評価
実用化の可能性はきわめて大きく、大いに期待される技術である。
しかし、すべてがより性能が高く信頼性の大きい触媒の開発に依存している。
また、実用化には、今後の実ガスでの実証試験が不可欠である。また、装置容積が大きくなると
想定されるので、設置スペースの考慮も必要である。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○実化用の可能性はきわめて大きく、大いに期待される技術であるが、すべてがより性能
が高く信頼性の大きい触媒の開発に依存している。
○汎用性が高く、期待される技術である。
【否定的意見】
●実用化にあたっては、実ガスでの実証試験が不可欠である。また、装置容積が大きくな
ると想定されるので、設置スペースの考慮も必要である。
排ガスが低温になることにより、かつ、ガス化溶融炉で酸素濃度も低くなる条件では、
排ガスの酸露点の問題、水蒸気白煙の問題が生じやすくなる。
【その他の意見】
□低温での高い脱硝率を示しており、信頼性、AV 値などが残された問題といえるため今後
の技術開発で目標を達成できるといえる。
3-19
3.
今後の研究開発の方向性等に関する提言
より性能の高い触媒の開発が期待されるが、実証試験が不可欠である。
また、今後は触媒開発コストや寿命などの運転コストの増加(低下)、及び触媒材料の希少性な
どと新規触媒開発による高効率化との対比で開発する価値を見極めた方が良いかと思われる。更
に、可能なら LCA 的解析による二酸化炭素量増加も視野に入れ、その結果を公表して全体的な開
発に関わる指針として後生に残るようにすることを提案する。
【評価委員コメント欄】
○より性能の高い触媒の開発が期待される。
○触媒開発コストと寿命などの運転コストの増加(低下)や触媒材料の希少性などと新規
触媒開発による高効率化との対比で開発する価値を見極めた方が良いかと思われる。ま
た、可能なら LCA 的解析による二酸化炭素量増加も視野に入れてはいかがでしょうか。
また、その結果を公表して全体的な開発に関わる指針として後生に残るようにしてはい
かがでしょうか。
○実証試験が不可欠である。
3-20
【要素技術:自己熱溶融限界発熱低減技術開発】
1.成果に対する評価
自己熱溶融限界発熱量を 10%低減するという目標値は概ね達成されている。
今後本技術の普及のためには、乾燥設備費、所用面積、廃水処理費等との比較をわかりやすい形
で提示していく必要があろう。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○成果は目標を達成しており技術水準も高く汎用性のある技術である。
○目標値をほぼ達成している。ごみの機械式脱水によるごみ発熱量の増加と均一化は、燃
焼の安定化に相当な効果が期待される。
○廃棄物の低カロリー化に対応して、機械的に圧力を加えて脱水を行い、自己熱溶融限界
発熱量を 10%低減する(処理後の水分 40%)という目標値は、スクリュー式脱水機を用
いて概ね達成している。
【否定的意見】
【その他の意見】
□今後、本技術の普及のためには乾燥設備費、所用面積、廃水処理費などとの比較をわか
りやすい形で提示していく必要があろう。
3-21
2.実用化の見通しに関する評価
【評価委員コメント欄】
従来の熱を用いる方法に比べて経済性が高く、施設の余裕面積、廃水処理などにより一定の適用
先は確保できると考えられる。
しかし、実用化のためには、スケールアップした場合の破砕機の耐久性、給じん機の安定運転、
ごみ質の変化に対する脱水性能などの検証が必要である。
【肯定的意見】
○実用化のためには、スケールアップした場合の破砕機の耐久性、給じん機の安定運転、
ごみ質の変化に対する脱水性能などの検証が必要である。
○施設の余裕面積、廃水処理などにより一定の適用先は確保できると考えられる。
○他に類似例を承知していないが、簡単な装置であっても重要な意外性のある技術と評価
できる。また、ガス化溶融炉だけでなく従来型の焼却炉にも適用できる技術である。
○従来の熱を用いる方法に比べて経済性が高いので、実用化の可能性は高い。
【否定的意見】
【その他の意見】
□ごみ定量供給装置として機能する以上、安定稼働の信頼性確保が必須である。
3-22
3.今後の研究開発の方向性等に関する提言
ほとんど完成の域に達しているのではないかと思われものの、ゴミ質変化などの要因に対応する
ために実用化の過程での改善が必要である。分別収集を徹底した結果ごみ発熱量が低い自治体の焼
却施設への適用により、実証試験を行う方法もあるのではないか。
【評価委員コメント欄】
○流動層型のガス化溶融炉にとっては重要な技術の一つと考えられるので更なる研究開発
が期待される。
○ゴミ質変化などの要因に対応するために実用化の過程での改善は必要であるが、ほとん
ど完成の域に達しているのではないかと思われる。
○分別収集を徹底した結果ごみ発熱量が低い自治体の焼却施設への適用により、実証試験
を行う方法もあるのではないか。
3-23
【要素技術:外部燃料投入量低減システム技術開発】
1.成果に対する評価
コークスの投入量を 30%以上削減する廃プラスチックの吹き込み技術を開発するという目標は
達成している。
しかし、高効率化の度合いが 0.3%程度と小さいこと。また、廃プラスチックの再利用によるシ
ステム全体効率の向上というメリットはあるものの、プラスチック吹き込みがコークス吹き込み量
低減につながるというのは市場論理であると思われることから、エネルギーの質と量で見た場合、
それほどの高効率化になっていないのではないかと考えられる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○成果は目標値を十分に達成している。プラスチック吹込技術自体はすでに高炉吹込等で
実用化されており新規性は小さいが、シャフト型ガス化溶融炉の課題であるコークス投
入量の低減には有効な技術である。
○開発目標は達成されている。
○現在のシャフト炉式の直接溶融システムの場合には、外部燃料としてコークスを投入し
ている。この一部を廃プラスチックで置き換えると、廃プラスチックの再利用およびシ
ステム全体の効率の向上というメリットが得られる。コークスの投入量を 30%以上削減
する廃プラスチックの吹き込み技術を開発するという目標は達成している。
【否定的意見】
●プラスチック吹き込みによる高効率化の度合いが 0.3%程度と試算においても小さい。
プラスチック吹き込みがコークス吹き込み量低減につながるというのは市場論理で本来
の目的とは異なると思われる(コークスとプラスチックの差が市場価値としてバージン
原料と廃棄物という位置付けの差)
。すなわち、エネルギーの質と量で見た場合、それほ
どの高効率化になっていないのではないかと思われる。
また、高炉などにプラスチックを吹き込む技術が廃棄物処理炉に吹き込む技術と技術的
な特徴や必要なブレークスルーで大きく異なるとは思えない。
ただし、塩ビや熱硬化性樹脂などを含む混合プラスチックが処理できる場合はまた別の
付加価値があると言える。
【その他の意見】
□元々外部燃料を必要とするシャフト炉での燃料コークス代替としての評価には疑問が残
3-24
る。しかし、再使用・マテリアル利用できない廃プラスチックからのエネルギー回収と
位置づければ、大きな評価ができることになる。
3-25
2.実用化の見通しに関する評価
シャフト炉に限定した技術としては、実用化は十分可能である。
再使用・マテリアル利用できない廃プラスチックからのエネルギー回収と位置づければ、大きな
評価ができる。
しかし、容器リサイクル法との関連でどのようなプラスチック類を投入するのかが問題となる。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○実用化の可能性は高いが、容器リサイクル法との関連でどのようなプラスチック類を投
入するのかが問題となる。
○高温炉内への固体の吹き込み技術はプラスチックの性状にもよるがこの段階ではそれほ
どの困難性があるとは思えない。
○シャフト炉に限定した技術として、実用化は十分可能である。
【否定的意見】
【その他の意見】
□元々外部燃料を必要とするシャフト炉での燃料コークス代替としての評価には疑問が残
る。しかし、再使用・マテリアル利用できない廃プラスチックからのエネルギー回収と
位置づければ、大きな評価ができることになる。
)
3-26
3.今後の研究開発の方向性等に関する提言
今後は炉メーカーが自ら開発を行うものと考える。その際、一般廃棄物を対象とした場合、塩ビ
の分離や処理技術が重要であると考えられる。
また、今後は投入プラスチックの環境面からの意義付けが重要である。
【評価委員コメント欄】
○一般廃棄物を対象とした場合、塩ビの分離や処理技術が重要である。
○投入プラスチックを、コークスと同価値に近い単一品種と、処理の困難性が高い混合プ
ラスチック(特にハロゲンを含むケース)などで環境面からの意義付けをしてはどうで
あろうか。
○要素技術としては炉メーカーが自ら開発を行うものと考える。
3-27
【要素技術:最適トータルシステムの開発】
1.成果に対する評価
要素技術開発の有効性が示されており、目標達成のための必要な組み合わせ技術について比較が
適切になされている。
【評価委員コメント欄】
【肯定的意見】
○各プロセスに対する要素技術開発の有効性が示されている点は評価できる。
○開発された要素技術を組み合わせた場合の効果についてまとめており、目標達成のため
の必要な組み合わせ技術を見えやすくしている点で評価できる。
○ごみ処理単価と発電原価を指標として要素技術の組み合わせたシステムの経済性評価を
行った手法により、トータルシステムの比較が適切になされている。
○いずれのシステムが優れているのかの判断は困難だが、各要素技術は政策目標に合致し、
初期の目標を達成しているとおもわれる。
小規模廃棄物処理プラントの発電プラント化を可能にする技術として期待される。
ダイオキシン CO2 の削減等の国民的課題解決に有効な技術であり、新エネルギー技術
としても期待できる。
)
【否定的意見】
●従来型焼却炉との経済比較、ガス化燃焼炉(溶融なし)等との比較も必要ではないか。
)
●発電システムとしての安定性、経済性が明確になっていない。地方の自治体が、廃棄物
焼却プラントを発電プラントに切り替えるのは困難であり、導入に向けて、他システム
とも整合性の取れた支援策が必要と思われる。
【その他の意見】
□30%という発電効率に合わせた組み合わせ技術の探索を行っている。しかし、要素技術
を広く本プロジェクト以外にも求め、さらなる効率化が可能か(あるいはそのような可
能な組み合わせはない)という検討もされた方がより本プロジェクトの妥当性を強調で
きたのではないだろうか。
□発電端効率 30%の達成には 600t/d 以上の規模が必要であることが明らかになったのは意
義があるが、この規模の施設の需要がどのくらい生ずるのか疑問がある。
3-28
2.今後の研究開発の方向性等に関する提言
200t/d以上の処理規模に効果的に適用できる本廃棄物ガス化溶融発電技術はすでに民間レベ
ルで実用化可能な領域に達していると思われるので、これ以上技術開発に行政が介入する必要はな
いと思われる。
しかし第 3 者による各プロセス相互の経済性や信頼性等の比較評価が今後は必要である。また、
プラント内だけで最適化を図らず、社会システムまで含めた効率化のメニューを用意することで、
広域化などに移行しやすくなると考えられる。
また、発電システムとしての安定性、経済性を更に検討する必要がある。
【評価委員コメント欄】
○各種プロセスが受注を競っている現状ではきわめて困難と思われるが、第 3 者による各
プロセス相互の経済性や信頼性等の比較評価が必要である。
○プラント内だけで最適化を図らず、社会システムまで含めた効率化のメニューを用意す
ることで、広域化などに移行しやすくなると考えられる。特に、
(本プロジェクトの範囲
外ということは承知しているが)熱利用ネットワークの可能性などについてである。
(以下は直接的な関係は無いのであるが、参考までにということである。エネルギー総
合工学研究所ではそのような熱輸送のプロジェクトを持ち、また、熱供給基地として廃
棄物焼却施設を挙げている。単独技術のみでは飛躍的な向上が望めない状況では他のプ
ロジェクトの成果も取り込む形で効率化することも検討していくことは現在の NEDO の
体制では難しいであろうか)
○委託開発された本事業の要素技術を、参加していないメーカーを含め、どのように自社
開発に取り込んで行けるのか示してほしい。
○本技術はすでに民間レベルで実用化可能な領域に達していると思われるので。
これ以上技術開発に行政が介入する必要はないとおもわれる。
3-29
第4章 評点法による評点結果
第4章 評点法による評点結果
「高効率廃棄物発電技術開発(廃棄物ガス化溶融発電技術開発)」に係る中間評
価の実施に併せて、下記に基づき、本分科会委員による「評点法による評価」を実
施した。
1.経緯
(1) 評点法の試行
通商産業省(当時)において、平成 11 年度に実施されたプロジェクト
の評価(39 件)を対象に、評点法を試行的に実施した。その結果を産業
技術審議会評価部会に諮ったところ、以下の判断がなされた。
l
数値の提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効
l
評価者が異なっていてもプロジェクト間の相対的評価がある程度可
能
(2) 評点法の実施
平成 12 年5月の通商産業省技術評価指針改訂にて「必要に応じ、評点
法の活用による評価の定量化を行うこととする」旨規定された。
以降、プロジェクトの中間・事後評価において、定性的な評価に加え各
評価委員の概括的な判断に基づく評点法が実施されている。
2.評点法の目的
l 評価結果を分かりやすく提示すること
l プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること
3.評点の利用
l 評価書を取りまとめる際の議論の参考
l 評価書を補足する資料
l 分野別評価、制度評価の実施において活用
4.評点方法
(1) 評点の付け方
l 別紙「評点法による評価シート」により、各評価項目について3段階(1,
3,5)で評価する。
l 総合点の算出に当たっては、表1に示す評価項目の各点数に重み付けの
数値を掛け合わせた後、合算することとする。
l 重みについては、経済産業省で採用されている重みとの整合をとり、両
4-1
者を比較できるようにする。
(2) 評点法実施のタイミング
l 第1回分科会において、各委員へ評価コメント票とともに上記(1)の点
数の記入を依頼する。
l 評価書(案)を審議する前に、集計結果(各項目の平均値、ばらつき等)
を委員に提示、議論の際の参考に供する。
l 上記審議を行った分科会終了後、委員の評点及びそれに基づく総合点を
計算し、当該分科会での議論等を踏まえた評点の修正を依頼する。
l 評価書(案)の確定に合わせて、評点の集計を行う。
(3) 評点結果の開示
l 評点法による集計結果を開示するが、個々の委員の素点については、個
人情報保護の観点から開示の対象外とする。但し、分科会長について
は、議論を円滑に進めるため各委員の素点を参照できることとする。
l 評点法による評価結果の開示については、あくまでも補助的な評価であ
ることを踏まえ、数字のみが一人歩きすることのないように慎重に対
応する。
l 具体的には、図表による結果の掲示等、評価の全体的な傾向がわかるよ
うな形式をとることとする。
4-2
表1
評点の重み付け
評点項目
重み
A 関与の必要性
9/120
B 目的・位置付け
C 目標の妥当性
9/120
8/120
D 計画内容の妥当性
E 実用化の見通し
(1)
8/120
(2)
(1)
9/120
8/120
(2)
8/120
F 実用化のシナリオ
17/120
16/120
8/120
G 研究開発成果の妥当性
H 情勢変化対応妥当
(1)
18/120
(2)
12/120
(3)
(1)
6/120
8/120
(2)
9/120
36/120
17/120
40
20
4-3
H 情勢変化への対応
の妥当性
G 研究成果の妥当性
F 実用化のシナリオ
D 計画内容の妥当性
C 目標の妥当性
B 目的・位置付け
0
E 実用化の見通し
10
A 関与の必要性
重み
30
5.評点結果
平均
標準偏差
A 事業の目的・
政策的位置付け
4.0
1.1
B 事業の背景・
目的・位置付けの妥当性
4.3
1.0
C 事業の目標の妥当性
4.0
1.1
D(1)
研究開発計画の妥当性
3.3
0.8
D(2)研究開発実施者の事業体制の妥当性
3.2
1.6
E(1)成果の実用化可能性
4.0
1.1
E(2)波及効果
4.2
1.1
F 実用化のシナリオ
4.3
1.0
G(1)計画と比較した目標の達成度
3.3
0.8
G(2)要素技術から見た成果の意義
4.0
1.2
G(3)成果の普及、広報
3.4
1.7
H(1)情勢変化への対応の妥当性
3.0
0.0
H(2)研究開発実施者の運営の妥当性
3.5
1.0
合計(
加重平均)
3.7
0.7
5.0
1.8
4.0
4.2
4.0
4.0
1.6
3.7
3.3
平均値
4.3
4.0
3.3
3.2
3.5
3.4
3.0
3.0
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
2.0
0.4
0.2
0.0
E(2
)波
及
G(1
効
F実
)計
果
用
画
化
と
の
比
シ
較
ナ
G(
し
リ
2)要
た
オ
目
素
標
技
の
術
達
か
成
ら
度
見
た
成
果
の
G(
意
3)成
義
H(
1)情
果
の
勢
普
変
H(
及
化
2)研
、
へ
広
究
の
報
開
対
発
応
実
の
施
妥
者
当
の
性
運
営
の
妥
当
性
合
計
(
加
重
平
均
)
A事
業
B事
の
目
業
的
の
・
背
政
景
策
・
的
目
位
的
置
・
付
位
け
置
付
け
の
妥
C事
当
性
業
の
D(2
目
D(1
標
)研
)
の
究
研
妥
開
究
当
発
開
性
発
実
計
施
画
者
の
の
妥
事
当
業
性
体
制
の
妥
E(1
当
)成
性
果
の
実
用
化
可
能
性
1.0
4-4
標準偏差
4.3
4.0
平均
標準偏差
(別
紙)
評点法による評価シート
【Ⅰ.総論(中間評価のみ)】
A.今後のプロジェクトの方向
(1)プロジェクトの内容について
5
3
1
l 国費を使用した技術開発の効果・効率達成の観点に鑑み、今後の事業計画
はいかにあるべきか。
《判定基準》
l 拡大を図るべき
→ 5
l 現行どおり継続すべき
→ 3
l 合理化・縮小することが妥当
→ 1
【Ⅱ.各論】
A.事業の目的・政策的位置付け
(1)NEDO の関与の必要性・制度への適合性
5
3
1
l 経済産業省の政策方針に適合しているか(現在及び事業開始時点の時代背
景認識から見て)
l 研究開発制度の趣旨、目的(選定基準)に適合しているか
l 特定の制度に基づく事業でない場合、以下のような「市場の失敗」に該当
し、NEDO の関与が必要とされるテーマか(政策立案・評価ガイドライン参
照)
² 公共財的性格を持つ財・サービスの供給
² 環境問題等市場原理が働かない外部性
² 不確実性(リスクの高さ)や情報の偏在などに基づく市場の不完全性
等
l 上記には該当しないものの、民間のみでは改善できない問題に対応するた
めに
l NEDO の関与に公共性が認められるものか
l 上記を踏まえた上で、緊急性、重要性が高く優先して実施すべき研究開発
と
l 判断されるか。(緊要性は高いか)
4-5
《判定基準》
l 民間のみでは問題解決が図られず、NEDO の事業として
実施する緊要性が極めて高い
l NEDO の事業実施は妥当
l NEDO の関与がなくとも民間による取り組みで問題解決が可能
→ 5
→ 3
→ 1
B.事業の背景・目的・位置付けの妥当性
(1)事業目的・政策的位置付けの妥当性
5
3
1
l 評価時点の時代背景から見て、事業の目的は妥当で、政策的位置付けも明
確か
l 事業開始時点の時代背景から見て、事業開始時の目的は妥当で、政策的位
置付けも
l 明確か
l 事前評価は当時の時代背景認識から見て妥当なものであったか
l 政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか
《判定基準》
l 事業の目的は非常に重要で、政策的位置付けも明確
→ 5
l 事業の目的は妥当であり、政策的位置付けも大まかにはなさ
れている
→ 3
l 事業目的の妥当性は失われており、政策的位置付けも不明確
→ 1
C.事業の目標の妥当性
(1)研究開発目標の妥当性
5
3
1
l 立案時または計画見直し時点の時代認識から見て、目的達成のために、具
体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか
l 目標達成度を測定、判断するための適切な指標が設定されているか
l エネルギー特別会計を使用している場合には、費用対効果分析など定量的
なエネルギー政策上の目標が立てられているか。
《判定基準》
l 世界最高水準の目標や事業の目的に応じた目標が具体的に設定
され、指標設定も適切
→ 5
l 目標等が概ね過不足なく設定されているが、必ずしも具体的
ではない
→ 3
l 指標が十分に設定されておらず、目標水準も曖昧
→ 1
4-6
D.事業計画内容の妥当性
(1)研究開発計画の妥当性
5
3
1
l 目的達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分
を含む)となっているか
l 目標達成に必要な要素技術を過不足なく、取り上げているか
l 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か
《判定基準》
l 計画は、予算、スケジュール、要素技術の設定とも的確であり、
予算配分も適切に行われている
→ 5
l 計画は概ね妥当で、予算配分も概ね適切である
→ 3
l 計画はスケジュール、予算とも不適切である
→ 1
(2)研究開発実施者の事業体制の妥当性
5
3
1
l 目標を達成する上で、事業体制は適切なものか
l 各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか
l 関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか
《判定基準》
l 適切な事業体制が構築され、関係者間の連携/競争も十分行わ
れている
→ 5
l 概ね妥当な事業体制が構築されている
→ 3
l 事業体制が適切に構築されていない
→ 1
E.実用化、事業化の見通しの妥当性
(1)成果の実用化可能性
5
3
1
l 産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか
l 公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか【注】
l 公共性は実際にあるか。見込みはあるか【注】
《判定基準》
l 成果の産業応用について参加企業等が意欲的で実用化へ向けた
課題解決に向けて自主的な取り組みが期待できる
→ 5
l 実用化に向けての課題は明らかであるが、具体的な道筋等は必
ずしも明確ではない
→ 3
l 具体的に産業応用が可能であるか否かを含め実用化に向けた道
筋が描けていない
→ 1
4-7
(2)波及効果
5
3
1
l 成果は、関連分野へのインパクトを期待できるものか
l 当初想定していなかった波及的な成果が得られているか
l プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果
を生じているか
《判定基準》
l 成果について当初想定されていた分野を越えて広範な応用が考
えられ、当該分野の研究開発を触発する効果を有する
→ 5
l 成果の応用、波及が当初の想定程度には期待できる
→ 3
l 成果の波及はほとんど期待できない
→ 1
F.実用化のシナリオ
(1)実用化の見通し
5
3
1
l コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効
果等の見通しは立っているか
《判定基準》
l 成果の産業応用について参加企業等が意欲的で実用化へ向けた
課題解決に向けて自主的な取り組みが期待できる
→ 5
l 実用化に向けての課題は明らかであるが、具体的な道筋等は必
ずしも明確ではない
→ 3
l 具体的に産業応用が可能であるか否かを含め実用化に向けた道
筋が描けていない
→ 1
G.研究開発成果の妥当性
(1)計画と比較した目標の達成度
5
3
1
l 成果は、目標値をクリアしているか
l 全体として目標の達成度はどの程度か
l 立案時点または計画見直し時点の時代認識から見て、事業は研究開発とし
て成功したといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか
《判定基準》
l 目標水準を大きく上回る成果をあげて、研究開発として成功
した
→ 5
l 目標は概ね達成され、研究開発としては成功したと言っても
良い
→ 3
l 目標にはかなり遠く、研究開発としては失敗した
→ 1
4-8
(2)要素技術から見た成果の意義
5
3
1
l
l
l
l
l
l
世界最高水準、世界初、又は国際水準から見て優れた成果があるか
新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか
新たな市場創造につながるような新規性、先進性があるか
汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか
当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか
将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのよう
なものか
《判定基準》
l 要素技術として特筆すべき成果が多く見られる
→ 5
l 要素技術として意義のある成果が多く見られる
→ 3
l 要素技術として意義のある成果はほとんどない
→ 1
(3)成果の普及、広報
5
3
1
l 論文の発表は、質・量ともに十分か
l 特許は適切に取得されているか
l 必要に応じ成果の規格化に向けた対応がとられているか
l 広報は一般向けを含め十分に行われているか
《判定基準》
l 重要な特許が取得され、論文の質、量とも十分で、広報も十分 → 5
l 論文、特許ともほどほどに出ており、広報も適宜行われている → 3
l 論文、特許とも少なく、広報もほとんど行われていない
→ 1
H.情勢変化への対応の妥当性
(1)情勢変化への対応の妥当性
5
3
1
l 技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直した
か
l 計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮したか。
(特段の情勢変化はなかったと考えられる場合は空欄とする)
《判定基準》
l 変化を的確に把握し、計画を適切に見直している
→ 5
l 変化を概ね把握し、計画の見直しも行っている
→ 3
l 変化を把握せず、計画の見直しも行っていない
→ 1
4-9
(2)研究開発実施者の運営の妥当性
5
3
1
l 意志決定、進捗状況の把握、計画見直しの検討等が、適切に行われている
か
l プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能して
いるか
l プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含む)
への対応は適切か
《判定基準》
l 運営上の課題に対し迅速な意志決定と柔軟な対応がなされ、
適切なプロジェクト管理が行われている
→ 5
l 概ね妥当な運営管理がなされている
→ 3
l 運営管理は適切とは言えず、情勢変化にも対応していない
→ 1
【注】:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
4-10
参考資料1
本資料は、第1回及び第2回「高効率廃棄物発電技術開発」
(事後評価)分科会において、
プロジェクト実施者がプロジェクト(廃棄物ガス化溶融発電技術開発)の概要を説明する
際に使用したものである。
参 1-1
高効率廃棄物発電技術の概要説明
平成14年1月
NEDO・エネルギー環境技術開発室
副主任研究員 楢本 博也
[email protected]
1
最後表示
説明内容
•
•
•
•
•
•
•
•
高効率廃棄物発電技術開発の事業概要
「高効率廃棄物発電技術開発」の国の関与の必要性
新エネルギーの中での廃棄物発電の背景
「高効率廃棄物発電技術開発」の位置づけ
「高効率廃棄物発電技術開発」の全体目標
研究開発体制
技術開発における実用化・事業化の見通し
「高効率廃棄物発電技術開発」における今後の展開
2
最後表示
参 1-2
事業概要
高効率廃棄物発電技術開発事業の概要
• 廃棄物発電の高効率化に関する基盤技術を開
発し、廃棄物発電導入目標の達成に資する。
• ストーカ炉等従来型清掃工場における、ボイラー
蒸気の高温・高圧化技術の確立(スーパーヒーター
材料開発等)
• ガス化溶融発電プラントにおける高効率化技術
の確立(ガス化溶融発電プラントにおける蒸気条
件の高温・高圧化等)
3
高効率廃棄物発電技術開発
事業概要
ガス変換・ガスエンジン発電(要素試験)
廃棄物をガス化改質し、エンジンにて高効率発電(H13∼H15)
ガス化溶融発電技術開発の背景
新規に更新する中規模清掃工場にお
ける高効率廃棄物発電プラントの導入
(灰の溶融スラグ化)
評価範囲
ガス化溶融発電(要素試験)
ガス化溶融の特性を活かした高効率蒸気タービン発電(H10∼H12)
ストーカ炉発電(パイロットプラント試験等)
従来より発電している大規模
清掃工場における新規更新
時の高効率化
高温/高圧蒸気による発電(H3∼H11)
4
最後表示
参 1-3
高効率廃棄物発電技術開発
(今回評価対象部分)の体系
事業概要
パイロットプラントの仕様
・蒸気条件500℃×100ata
・定格規模:50t/日×1炉
・発電機出力800kW
高効率廃棄物発電技術開発
高温高効率燃焼炉
の開発
耐腐食性スーパー
ヒーターの開発
・ストーカ炉、復水タービン
環境負荷低減技術
の開発
従来型ストーカ
炉等
パイロットプラントによる
実証試験
最適トータルシステムの研究
廃棄物ガス化溶融発電技術開発
5
事業概要
各要素技術開発概要(従来型ストーカ発電等)
高温高効率燃焼炉 耐腐食性スーパー
の開発
ヒーターの開発
環境負荷低減技術
の開発
ストーカ炉・流動床
炉の各方式におい
て、数値シミュレー
ション・小型試験等
により概念モデル
試設計を行なう。
塩化腐食に厳しい
環境であるパイロッ
トプラントに設置す
るSHに使用する合
金の開発を行なう。
ダイオキシン
0.1ng/m3N以下を達
成するために、パ
ルスプラズマ放電
等により、ダイオキ
シン除去技術を開
発する。
500℃×100ata蒸
気によるパイロット
プラントの選定に
成果を使用する。
開発した合金をパ
イロットプラントの
SHに設置し、安定
運転を確認すると
ともに、減肉等耐
久性を測定する。
高効率化の手法と
して、ダイオキシン
再合成領域におい
ても熱交換を可能
にし、高効率発電
の普及を図る
6
参 1-4
事業概要
トータル化技術開発概要(従来型ストーカ炉発電等)
パイロットプラントによる実証
試験
最適トータルシステムの研究
パイロットプラントにより実機
ベース(50t/d)で蒸気条件
500℃×100ataによる廃棄物
発電の安定運転を検証し、
SH材料等の挙動を試験する。
パイロットプラントの運転試験
結果をもとに、大型炉に本技
術を適用した場合の性能的・
技術的評価を行なう。
耐腐食性SHの研究について
の実機レベルの検証を図り、
また高効率廃棄物発電の運
転実績を用いて、一般商用機
への成果普及を図る。
本評価結果により、廃棄物発
電の高効率化のためのデー
タ−整備を行い、一般商用機
への成果普及を図る。
7
事業概要
廃棄物ガス化溶融発電技術開発事業概要
要素技術開発
最適トータルシステムの研究
蒸気温度の向上等、ガス化溶融発電
技術に適用できる要素技術の開発
・各要素技術開発を実機に適用した場
合の性能性・経済性評価
・各要素技術を組み合わせ最適化し、
実機に適用した場合の性能性・経済
性評価
最適トータルシステムへのデータ−提
供とともに、各要素技術の商用化によ
る高効率廃棄物発電の導入・普及
技術開発の成果を性能・経済面で定
量的に評価し、本システムの普及推進
に資するデータ−ベースを構築する。
8
参 1-5
国の関与必要性
新エネ部会でのエネルギー目標
• 2010年での1次エネルギー全体の約1%を
廃棄物発電で賄う計画
9
廃棄物発電導入目標
600
万kW
500万kW
↓
417万kW(バイオマス外数)
国の関与必要性
廃 棄物 発電の 新エネル ギー全体 に対 する 率
(2010年)
400
29%
200
90
71%
0
1999年
2010年
2010年目標
廃棄物発電の新エネルギー全体に対する率
(1999年)
17%
1999年実績
83%
廃棄物発電は新エネルギーの筆頭に位置づけられている.
10
最後表示
参 1-6
国の関与必要性
国の関与の必要性
• 廃棄物発電は、新エネルギーに位置づけ
• 現状の4倍以上の導入目標達成のためには、国
主導で研究加速化が必要
• 最終処分場の延命化
• ダイオキシン類排出抑制
緊急性を有す
(H14年末が対策期限)
るため、国主導
• 二酸化炭素排出量削減
で実施が必須
• 環境負荷低減
• 資源循環型社会の構築
11
国の関与必要性
費用対効果
①従来型ストーカ炉発電等高効率化技術開発
・市場規模2兆円
・二酸化炭素削減量は4百万t−CO2/年
(全電力排出量の1.3%の削減)
②廃棄物ガス化溶融発電技術開発
・市場規模3.4兆円
・二酸化炭素削減量は5百万t−CO2/年
(全電力排出量の1.6%の削減)
12
参 1-7
背景
廃棄物発電開発の考え方
廃棄物
廃
棄
物
発
電
廃棄物発電とごみの減量化は
相反するものではない。
残渣
・ごみの減量化
・マテリアルリサ
イクル
廃
棄
物
処
理
排
ガ
ス
13
背景
廃棄物発電の位置づけ
化石燃料火力発電と比較すれば、課題が多
いが、新エネルギーの範疇では有望
化石燃料火力発電
廃棄物発電
他の新エネルギー
14
最後表示
参 1-8
背景
化石燃料火力発電と廃棄物発電の比較
化石燃料発電を基準とすれば、課題が多い
化石燃料火力発電
廃棄物発電
燃料収集・運
搬
大量輸送・一括渡し
多数箇所の分散収集・コスト高
燃料性状・量
均一・選択権は事業者
高稼働率可能
不均一・全量引取りの義務あり
稼働率低
プラント規模
電力需要見合いで大規模
可能
立地地点見合いで、大規模プラ
ント困難
プラント効率
事業者が燃料・立地地点選択可
高温・高圧蒸気 水冷復水器使
用により高効率可能
高腐食性ガスを発生するゴミも受け入れ
蒸気条件が低、空冷復水器→低効率
含水率の高いゴミ→所内動力大
公害対策
SOx,NOxと特定→効率的除去可
HCl、重金属等あり→ダイオキシン対策・
灰の溶融等必要→所内でのエネルギー
15
が必要
灰処分容易
最後表示
廃棄物発電システムと損失
(一般的な蒸気条件の例)
背景
ごみ入熱
排ガス処理等
(100)
排ガス損失
(20 ∼ 30)
燃焼炉
廃熱ボイラー
空気持込熱
(6∼ 10 )
空気予熱
( 6∼ 15 )
その他損失
(7∼ 15)
給水ポンプ
蒸気タービン ・発電機
復水器放熱
発電
( 8∼ 14 )
復水器
( 50 ∼ 60 )
16
参 1-9
背景
廃棄物発電高効率化の課題
仕
事
エンタルピー
︵
蒸気のエネルギー︶
タービン入口
320℃
腐食域
タービン出口
ボイラー管壁温度
17
背景
ガス化溶融発電技術開発の背景
• 廃棄物の灰→有害物質を含む(重金属等)
灰溶融による無害化
・重金属(低沸点):揮散
・重金属(高沸点):シリカの網目構造に包まれる
・ダイオキシン:熱分解
灰溶融設備の設置を補助要
件化(旧厚生省)
・電気式等外部エネルギーによる
別置型灰溶融炉
最後表示
・ガス化溶融炉 (効率的な灰溶融)
参 1-10
18
背景
ガス化溶融発電の特長
エネルギー損失
ストーカ炉燃焼
廃棄物ガス化
ボイラ+タービン
ガスによる高温燃焼
ガス化溶融発電は、効率的な灰溶融が可能
電気
灰溶融
灰分の溶融
エネルギー損失
19
背景
新エネルギーの中での廃棄物発電の位置づけ
• 既に主要なインフラが整っている
• 燃料(ゴミ)は、季節変動があるものの安
定供給
• 天候・風速・気温に左右されない
有望
• 全国に立地可能
• 大容量(新エネルギーのなかで)
• 24時間の連続運転(出力変動が小さい)
20
最後表示
参 1-11
背景
廃棄物発電のインセンティブ
• 廃棄物発電余剰電力購入メニューによる
買取(経済性試算では8円/kWhを使用)
• 所内電力料金の削減
• 再生可能エネルギー証書制による買取
(総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会平成13年12月)
ただし、ダイオキシン類対策とは直接関係ないため、国の関与による高効
率化技術の基盤があり、はじめて廃棄物発電のインセンティブが自治体に
21
生ずることとなる。
位置づけ
廃棄物発電導入の施策
技術開発
国
導入普及
高効率化
高効率廃棄物発電
技術開発
広域化
RDF発電(若松)
廃棄物発電導入
マニュアル
廃棄物発電フィー
ルドテスト
建設補助・事業者支援・エネルギーコ
ミュニティー形成事業
参 1-12
22
全体目標
全体目標
• 従来型ストーカ炉発電等高効率化技術開発
高効率発電を普及促進するために、蒸気条件
500℃×100ataでの廃棄物発電プラントの安定運転
検証
• 廃棄物ガス化溶融発電技術開発
• 実機規模において発電端効率30%相当の要素技術
の開発
• 経済性は従来以上すぐれているもの
• ダイオキシンの排出量は0.1ng/m3Nを十分下回る
• 灰は再利用可能な溶融固化スラグ状
23
開発体制
研究開発体制(従来型ストーカ炉等)
通商産業省 資源エネルギー庁
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(1)高温高効率燃焼炉の開発
①ストーカー燃焼炉の開発
・1回流型
・2回流型
(H3∼H6)
(H3∼H6)
②流動床燃焼炉の開発
・内部循環型
・外部循環型
(H3∼H6)
(H3∼H10)
◆委託
◆委託
◆委託
三菱重工業(株) 日本鋼管(株)
(2)耐腐食性スーパーヒーター材料
の開発(H3∼H11)
(3)環境負荷低減技術の開発
・パルスプラズマ排ガス処理法
(H5∼H9)
◆委託
(株)荏原製作所 三菱重工業(株)
(4)パイロットプラントによる実証試験
技術開発委員会
◆委託
◆委託
(財)金属系材料研究開発センター
(財)エンジニアリング振興協会
▼再委託
▼再委託
バブコック日立(株)
大同特殊鋼(株)
石川島播磨重工業(株)
川崎重工業(株)
三菱重工業(株)
三菱マテリアル(株)
日本鋼管(株)
住友金属工業(株)
(株)タクマ
(株)増田研究所
オリエンタル機電(株)
(5)最適トータルシステムの研究
(H3∼H11)
・設計、施工管理と運転研究
(H6∼H11)
・設計、製作、建設
(H6∼H9)
◆委託
◆委託
◆委託
神奈川県企業庁
津久井郡広域行政組合
電源開発(株)
三菱重工業(株)
(財)エネルギー総合工学研究所
24
参 1-13
研究開発体制(廃棄物ガス化溶融発電)
開発体制
経済産業省 資源エネルギー庁
【補助金】
新エネルギー・産業技術総合開発機構
高効率廃棄物技術開発
技術評価委員会
【委託】
財団法人 エネルギー総合工学研究所
廃棄物ガス化溶融技術開発
評価委員会
【再委託】
技術開発テーマ
開発担当メーカ
①蒸気温度上昇のための技術開発
(a)SH材料の高温腐食性の評価
三井造船株式会社
及び高温除塵システムの開発
(b)熱分解工程における脱塩素
三菱重工業株式会社
化技術の開発
(c)セラミック式高温空気加熱
株式会社 荏原製作所
器の開発
②排ガス再加熱回避のための
川崎重工業株式会社
技術開発
−低温脱硝装置の開発−
③自己熱溶融限界発熱量低減
日立造船株式会社
のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
④外部燃料投入量低減のため
新日本製鐵株式会社
の技術開発
−廃プラスチックの
25
吹き込み技術の開発−
開発体制
研究開発スケジュール
年度
項目
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
中
間
評
価
高効率廃棄物発電技術開発
(1)高温高効率燃焼炉の開発
最
終
評
価
①ストーカー燃焼炉の開発
②流動床燃焼炉の開発
(2)耐腐食性スーパーヒーター材料の開発
(3)環境負荷低減技術の開発
(4)パイロットプラントによる実証試験
(5)最適トータルシス テムの研究
予算額(百万円)
79
331
522
713
1,383
2,488
1,808
705
734 総額 8,763
H10
H11
H12
413
465
451
高効率廃棄物発電技術開発
廃棄物ガス化溶融発電技術開発
予算額(百万円)
26
参 1-14
竣工年による発電効率の推移
実用化・事業化
の見通し
25
20
発電端効率(%)
ガス化溶融炉
ガス化溶融技術開
発期間
15
従来炉
10
従来型炉開発期間
5
長期エネルギー需給
見通しにて500万kW
目標設定
新エネルギー導入大綱にて新
エネルギーと位置づけられる
総合資源エネルギー調査会にて、
417万kW(バイオマスは除く)
0
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
竣工年度(年)
本技術開発が契機となり、各商用機も高効率化してきた。
27
実用化・事業化
の見通し
廃棄物発電施設の蒸気温度
600
蒸気温度
蒸気温度(℃)
500
400
300
200
100
0
1965
1975
1985
1995
商用機の蒸気温度の主流は300℃→400℃と上昇
参 1-15
2005
28
各処理量ごとの廃棄物発電導入の状況
今後の展開
200t/d未満の処理施設では、発
80,000
処理施設処理量
電設備をほとんどもたない。
(全国計)
60,000
発電を有する
4割
40,000
処理施設処理
廃棄物ガス
変換発電
(H13∼H15)
量
(内数)
20,000
/d
∼
20
0t
上
60
0t
/d
以
/d
60
0t
/d
20
0t
/d
∼
10
0t
10
0t
/d
未
満
0
ガス化溶
融等技術
開発
ストーカ等技
術開発
29
最後表示
まとめ
• 従来型ストーカ炉発電、廃棄物ガス化溶融発電
とも、当初目標を達成した。
• 本技術開発が契機となり、商用機においても蒸
気温度の向上等、高効率発電を意識した設計が
主流となっている。
→実用化・事業化についても達成
• 今後は小規模自治体の一般廃棄物処理施設の
高効率化を目指した、高効率廃棄物ガス変換発
電プロジェクトを推進していく。
30
参 1-16
ガス化溶融発電技術開発
廃棄物ガス化溶融発電技術開発
の成果概要
平成14年1月29日 (財)エネルギー総合工学研究所 1
発表項目
ガス化溶融発電技術開発
● 廃棄物ガス化溶融発電技術開発の概要
● 廃棄物ガス化溶融要素技術開発
・ 蒸気温度上昇のための技術開発
・ SH材料の高温腐食性の評価および
高温除塵システムの開発 (三井造船)
・ 熱分解工程における脱塩素化技術の開発 (三菱重工業)
・ セラミック式高温空気加熱器の開発 (荏原製作所)
・ 排ガス再加熱回避のための技術開発 (川崎重工業)
・ 自己熱溶融限界発熱量低減の技術開発 (日立造船)
・ 外部燃料投入量低減のための技術開発 (新日本製鐵)
・ 全体成果まとめ他
● 実用化、事業見通し及び今後の展開 2
参 1-17
ガス化溶融技術開発の概要
廃棄物ガス化溶融発電技術開発の狙い
● プロジェクトの狙い
・高効率無公害型廃棄物発電プラントの 開発と早期実用化促
進
●具体的目標
・効率(発電端): 30%以上
・ダイオキシン:0.1 ng-TEQ/Nm3以下
・灰:溶融スラグ質(飛灰も極力スラグ化)
・経済性:従来型(分離型灰溶融方式)を凌ぐこと
(但し、ごみ処理規模 300t/日規模以上想定)
●進め方
・要素試験の結果を組み合わせてFSを実施
3
国の事業としての妥当性
国の事業としての妥当性
ー廃棄物ガス化溶融発電技術開発の意図ー
1 地球温暖化ガス(CO2)排出削減対策への寄与 ○2010年度廃棄物発電導入目標417万kW(現在の約4倍強)
○2010年度平均発電端効率20%(現在平均約10%)
2 高度資源・エネルギー循環型社会の構築
○高効率サーマルリサイクル技術の重要性
3 ダイオキシン類等有害物質排出規制値の遵守
○2002年12月より、0.1ng-TEQ/Nm3を全ての施設に適用(緊急性)
4 最終処分場の逼迫に対する対応策(灰の溶融スラグ化)
○一般廃棄物処分場の残余年数全国平均8.8年、都市部4.8年
※自治体の選択(安定操業、信頼性、経済性を重視)
※メーカの対応(客先の意向に添う技術開発を優先)
4
参 1-18
ガス化溶融技術開発の概要
研 究 開 発 全 体 工 程
年 度
H10
研究開発テーマ
H11
H12
ための技術開発
蒸気温度上昇の
1.廃棄物ガス化溶融発電技術開発
SH材料の高温腐食性の評価および
高温除塵システムの開発
計画・過熱器製作
熱分解工程における脱塩素化技術の開発
腐食環境調査
高温除塵器製作
腐食試験
実証機プローブ試験
セラミック式高温空気加熱器の開発
まとめ
実証機運転・試験
計画・製作
まとめ
システム評価
システム評価
まとめ
実証機試験
触媒脱硝の調査
排ガス再加熱回避のための技術開発
−低温脱硝装置の開発−
システム評価
まとめ
ラボ試験・フィールド試験
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
パイロット試験
外部燃料投入量削減のための技術開発
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発−
実証試験
実証機設計・製作
基礎試験
まとめ
システム評価
実証試験
実証装置設計・製作
まとめ
システム評価
2.最適トータルシステムの研究
個別・総合システム評価
最適トータルシステム研究
−開発技術システム評価・検討−
従来システム比較
5
ガス化溶融技術開発の概要
研 究 開 発 体 制
経済産業省 資源エネルギー庁
[補助金]
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
[委託]
高効率廃棄物技術開発技術評価委員会
(財)エネルギー総合工学研究所
ための技術開発
蒸気温度上昇の
廃棄物ガス化溶融技術開発評価委員会
[再委託]
SH材料の高温腐食性の評価および高温除塵システムの開発
熱分解工程における脱塩素化技術の開発
セラミック式高温空気加熱器の開発
三井造船(株)
三菱重工業(株)
(株)荏原製作所
排ガス再加熱回避のための技術開発
−低温脱硝装置の開発−
川崎重工業(株)
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
日立造船(株)
外部燃料投入量削減のための技術開発
−廃プラスチックの吹き込み技術の開発−
新日本製鐵(株) 6
参 1-19
ガス化溶融技術開発の概要
廃棄物ガス化溶融発電システムと技術開発課題
熱分解工程
● 安 定供 給システムの開発
(水分低減によるごみの高
カロリー化) (日立造船)
● 廃プラスチックの吹き込み
技術開発(熱分解ガスの高
カロリー化) (新日鐵)
灰溶融工程
● 脱塩素化技術開発(SH
過熱用の燃焼ガスの脱塩
素化) (三菱)
排ガス処理工程
● 高温除塵システムの開発(
SH過熱用の燃焼ガス中の
灰の除去) (三井造船)
● セラミック式高温空気加熱
器の開発(SH高温空気加
熱) (荏原)
そ の 他
●低温脱硝装置の開発
(排ガス温度150℃(当初目
標値)による所内蒸気消費
量低減) (川崎重工)
7
ガス化溶融要素技術
要素技術開発目標及び成果まとめ
技術開発目標
要素技術開発成果
蒸気温度上昇のための技術開発
● SH材料の高温腐食性の評価
及び高温除塵システムの開発
技術開発テーマ
SH材選定および高温除塵システムに
よる蒸気温度500℃の達成
・高温除塵セラミックフィルターシステムを開発した。
・同システム後流の付着灰特性が溶融塩腐食に有利な事を確認した。
・500℃達成に従来型高級材(Alloy625)で長寿命化の見通しを得た
蒸気温度上昇のための技術開発
● 熱分解工程における脱塩素化
技術の開発
脱塩素化技術によるHCl濃度100ppm
及び蒸気温度540℃の達成
・チャー燃料炉でHCl濃度110ppm以下を達成した。
・同炉付着灰の融点が高く、溶融塩腐食に有利なことを確認した。
・500℃に従来型材料(Alloy825又はSUS材)の適応見通しを得るとと
もに540℃達成の見通しを得た。
蒸気温度上昇のための技術開発
● セラミック式高温空気加熱器
の開発
高温空気加熱器による高温空気700℃
以上および蒸気温度500℃以上の達成
・セラミック管材使用にて管温度を1,000℃に保持する事により700℃
空気を得る見通しを得た。
・700℃空気との熱交換で500℃蒸気を得る事を確認した。
排ガス再加熱回避のための技術開発
―低温脱硝装置の開発―
アンモ二ア選択接触還元法による処理
ガス温度150℃、脱硝効率75%上の達成
・従来触媒を改良したチタン・バナジウム系触媒を開発し、ラボ実験で
150℃にて75%の効率を得た。
・フィールドテスト、実機模擬ガス試験で耐久性を確認した。
・実用性と経済性から当面の利用は170℃が妥当と判断した。
自己熱溶解限界発熱量低減のための
技術開発
―廃棄物安定供給システムの開発―
自己熱限界発熱量10%減、シール圧力
50mm程度以上、処理後水分40%達成
・スクリュー式二段脱水装置を開発した。
(入口水分量53∼60%ごみにて)脱水処理後の水分約40%達成した。
・自己熱限界発熱量、シール圧力も計画値を上回る結果を得た。
・二次分離水を焼却炉に噴露するクローズドシステムを開発した。
外部燃料投入量削減のための技術
開発
―廃プラステックの吹き込み技術の
開発―
外部燃料投入量30%以上削減
(コークス投入量ごみtあたり50∼60kg
から35∼42kg)およびプラスチック吹き
込み技術の確立
・プラスチック投入により、コークス投入量(ごみあたり)30kgでも
安定した運転が確保できた。
・溶融スラグ中Pbの量が減少し還元効果も確認した。
・プラスチック吹き込みおよび処理技術を確立した。
8
参 1-20
ガス化溶融要素技術
要素技術開発成果と効率の関係
技術開発テーマ
同左適用効率
高効率化適用技術
蒸気温度上昇のための技術開発
・SH材料の高温腐食性の評価
及び高温除塵システムの開発
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→500℃×100 ata)
2.再生サイクル採用
3.水冷復水器採用&スケールアップ
△1 4.5% 高効率型実機効率
△2 2.0% =従来レベル効率+高効率対策
△3 3.5% = 20+10=30%
計 10.0%
・熱分解工程における脱塩素化
技術の開発
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→540℃×100 ata)
2.脱硫入口ガス温度向上(高温BF)
3.水冷復水器採用&スケールアップ
△1 5.0% △2 2.3% 高効率型実機効率
△3 2.8% = 21.4+10.1=31.5%
計 10.1%
・セラミック式高温空気過熱器
の開発
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→500℃×100 ata)
2.水冷復水器採用&スケールアップ
排ガス再加熱回避のための技術開発
−低温脱硝装置の開発−
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→504℃×85 ata)
2.水冷復水器採用&スケールアップ
3.低温脱硝装置採用
△1 4.1%
△2 5.5% 高効率型実機効率
△3 1.9% = 19+11.5=30.5%
自己熱溶融限界発熱量低減のための
技術開発
−廃棄物安定供給システムの開発−
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→500℃×100 ata)
2.ボイラ出口ガス温度低下(200→175℃)
3. BF入口ガス温度上昇(150→175℃)
4.水冷復水器採用&スケールアップ
5.安定供給システム採用
△1
△2
△3
△4
△5
計
外部燃料投入量削減のための技術開
発
−廃プラスチックの吹き込み技術の
開発−
1.蒸気条件向上
(400℃×40ata→510℃×100 ata)
2.燃焼室水冷壁採用
3.水冷復水器採用&スケールアップ
4.廃プラスチック吹込による排ガス量低減
△1 5.5%
△2 1.9%
△3 3.3%
△1 1.7% 高効率型実機効率
△2 4.7% = 25+6.4=31.4%
計 6.4%
計 11.5%
3.9%
0.5% 高効率型実機効率
0.5% = 20.2+9.6=29.8%
3.6%
1.1%
9.6%
高効率型実機効率
= 18.9+11.2=30.1%
計 11.2%
9
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
蒸気温度上昇のための技術開発
・SH材料の高温腐食性の評価および
高温除塵システムの開発(三井造船)
目的:
・ SH材選定および高温除塵システ
ムによる蒸気温度500℃の達成
10
参 1-21
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
廃熱ボイラ
高温集塵器
燃焼溶融炉
高温除塵システム
・蒸気条件
500℃
・ボイラー形式
対向流テールエンド型
ハンマリング方式
試験の概要
排ガス流れ
蒸気流れ
11
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
700℃
バイパス
・運転時間
集塵器へ
2839h
・過熱器管材質
Alloy625, SUS310S(3次)
プローブ設置箇所
500℃
400℃
SUS310S, SUS309J2,
STBA24(2次)
STB340(1次)
・プローブ材質
Alloy625, SUS310J1
650℃
(高温空気加熱器出口)
Alloy825, SUS310S,
SUS309J2(3次過熱器入口)
SUS309S, STBA24
(2次過熱器入口)
STB340(1次過熱器入口)
450℃
3rd SH
2nd SH
1st SH
参 1-22
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
逆洗ノズル
清浄ガス
清浄ガス
フィルタ
含塵ガス
含塵ガス
ダンパー
13
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
試験結果
過熱器管及びプローブの減肉量 放物線則による年間最大減肉量 / mm
20
18
16
14
12
10
排ガス:
排ガス:
排ガス:
排ガス:
排ガス:
排ガス:
SUS310S/過熱器管
SUS309J2/過熱器管
Alloy625/過熱器管
STBA24/過熱器管
STB340/過熱器管
SUS310S/プローブ
STBA24/プローブ
STB340/プローブ
o
640∼650 C
o
630∼640 C
o
620∼630 C
o
595 C(ave.)
o
508 C(ave.)
o
466 C(ave.)
SUS310S
8
6
STBA24
Alloy625
4
2
0
250
300
350
400
450
o
メタル温度 / C
参 1-23
500
550
600
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
従来炉との腐食量比較
2.4
メタル温度:550oC
材質:Alloy625
C-plant
1.6
E-plant
0.8
A-plant
B-plant
1.2
D-plant
最大減肉量 / mm
2.0
0.4
0.0
0
1
2
3
4
5
6
灰中Cl濃度 / wt%
研 究 成 果
■
蒸気温度上昇のための技術
開発ーSH材料&高温除塵
試験設備&試験時間
・材料試験 : 20t/日炉設置過熱器管&試験プルーグ
・高温除塵試験 : 20t/日炉バイパス設置高温除塵装置
・試験時間 : 約2,800時間
■
試験結果
・材料試験 ・高温部材料(例、メタル温度550℃)は、従来型より腐蝕は低減
(溶融塩腐蝕支配)
・中温部材料(例、メタル温度450℃)は、従来型より腐蝕は増大
(ガス腐蝕支配)
・高温除塵試験 ・セラミックフィルタ、サイクロンの除塵特性を確認
・除塵後流の付着灰融点は除塵設置せぬ場合より上昇
■
結論
・ガス化溶融炉は、高温蒸気確保上従来型より有利となる可能性を確認
・高温除塵としてサイクロンに比しセラミックフィルタが性能、耐久性上優れ
実用的と判断される。
16
参 1-24
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
蒸気温度上昇のための技術開発
・熱分解工程における脱塩素化技術の開発
(三菱重工業)
目的:
脱塩素化技術によるHCl濃度100ppm
及び蒸気温度540℃の達成
17
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
18
参 1-25
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
熱分解ガス(高HCl)
二次燃焼炉
熱分
解炉
チャー燃焼炉
チャー(低HCl)
SH
脱塩素化技術の開発
19
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
100
60
90
50
80
40
70
30
60
20
50
10
40
325
350
375
400
425
450
チャー生成率(%)
脱塩素率 (%)
熱分解温度と脱塩素率,チャー生成率
0
475
熱分解温度 (℃)
20
参 1-26
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
21
蒸気温度上昇のための技術開
発ー熱分解工程脱塩素化技術
研 究 成 果
■
試験設備&試験時間
・腐蝕環境調査試験 : 20t/日炉
・材料の耐久性試験 : 20t/日炉付設の過熱器管&試験プルーブ
・試験時間 : 約2,300時間(材料の耐久性試験の場合)
■
試験結果
・腐蝕環境調査試験 ・熱分解炉における反応温度と脱塩素化(HCl除去)
特性を確認。
(例:反応温度420℃で90%以上の脱塩素化)
・材料の耐久性試験 ・ガス温度補正後の腐食特性は従来型より優れるこ
とを確認。
・チャ−燃焼炉出口灰の融点は高く、530℃(メタル温度)迄腐食量低い。
■
結論
・脱塩素化技術の採用により、蒸気温度高温化の目途を得た。
・蒸気温度500℃級でもAlloy825或はSUS系で使用可能性あり。
22
参 1-27
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
蒸気温度上昇のための技術開発
・セラミック式高温空気加熱器の開発
(荏原製作所)
目的:
高温空気加熱器による高温空気700℃以
上および蒸気温度500℃以上の達成
23
430 ℃
空気式蒸気過熱器
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
蒸気( 500 ℃×100 ata )
蒸気( 400 ℃×100 ata )
700 ℃
給水
溶融炉排ガス
排ガス処理
高温空気加熱器
廃熱ボイラ
設備へ
空気予熱器より(150℃)
ガス化溶融炉
高温空気加熱器のフロー図
24
参 1-28
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
ガス化溶融実証プラントフロー
蒸気
廃熱ボイラ
450℃
B
流動床ガス化炉
A
煙突
SH
700℃
250℃
脱硝塔
廃棄物
空気予熱器
旋回溶融炉
A:
B:
高温空気加熱器
250→450℃
高温空気加熱器
450→700℃
バグフィルタ
(低温側ユニット)
(高温側ユニット)
25
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
高温空気加熱器模式図
高温空気
(400∼800℃)
伝熱外管 (鋳造合金)
表面温度 約800∼1000℃
伝熱内管 (SUS製)
高温腐食性排ガス(∼1350℃)
低温空気
(150℃∼500℃)
26
参 1-29
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
セラミック管の表面温度と減肉速度の関係(放物線則)
0.012
α-SiC(A)
α-SiC(B)
0.010
1000℃以上→減肉
大
2
減肉速度(放物線) [mm /Hr]
β-SiC
0.008
0.006
1000℃以下→減肉
小
0.004
0.002
0.000
0
200
400
600
800
管表面温度 [℃]
1000
1200
→ 約1000℃を境として、減肉挙動が大きく変化。
→ 約1000℃以上での減肉は、表面生成物の溶融が原因。
(SiCの酸化によるSiO2と、灰中Na、K等の共晶化合物)
1400
27
蒸気温度上昇のための技術開発ー
セラミック式高温空気加熱熱器
研 究 成 果
■
試験設備
・高温空気加熱器試験 : 20t/日炉溶融燃焼炉出口設置
(セラミックス製&金属製)
・試験時間 : 900時間(平成11年度末迄)
■
試験結果
・セラミックス製; 1,000℃以下で良好な腐食特性を得る。
・金属製; 700∼1,000℃で腐食速度大となり使用困
難の見通し。
・空気加熱器特性シミュレーション;
起動、停止等でも使用上問題ない解析結果を得る。
■
結 論
腐蝕特性に優れるセラミック製空気加熱器の技術開発見通しを得た。
28
参 1-30
排ガス再加熱回避のための技術開発
排ガス再加熱回避のための技術開発
(川崎重工業)
目的:
アンモ二ア選択接触還元法による処理ガ
ス温度150℃、脱硝効率75%上の達成
29
排ガス再加熱回避のための技術開発
川崎重工廃棄物ガス化溶融システムフロー
30
参 1-31
排ガス再加熱回避のための技術開発
消石灰
アン モニア
排 ガス
脱硝装置
排ガス再加熱器
バグフィルター
減温塔
廃 熱ボ イ ラ
サイクロン
流動床式ガス化炉
ごみ
( SC R )
旋回式溶融炉
9
150℃ 200∼220℃
150℃
η=50∼80%
75%
【 現 状 】
【 目 標 】
図1 ガス化溶融プラント全体フロー図
低温脱硝装置付システムフロー図
31
低温脱硝装置の構成
アンモニア注入制御装置
脱硝反応器
スート ブロワ
排ガス再加熱回避のための技術開発
ア
モニ
アン
整流装置
アンモニア注入管
触媒層
送風機
希釈器
mm
150
150
mm
触媒層
NOx分析計
排ガス
触媒層
クッ ショ ン材
触媒予備層
触媒ユニッ ト
32
参 1-32
B-4触媒の温度と脱硝率の関係
排ガス再加熱回避のための技術開発
AV値
100
脱硝率(%)
80
2.1
3.2
4.2
6.4
12.7
60
40
20
0
120
140
160
180
200
220
反応温度(℃)
33
排ガス再加熱回避のための技術開発
バナジューム系、マンガン系触媒脱硝性能比較
100
90
80
Mn-TiO2
脱硝率(%)
70
Mn-Ce-TiO2-1
60
50
Mn-Ce-TiO2
40
V-W-TiO2
30
V-W-TiO2-3
20
10
0
100
120
140
160
反応温度(℃)
参 1-33
180
200
220
34
排ガス再加熱回避のための技術開発
耐久性試験データ(T=180℃)
B-4、,AV:12.7
B-4、AV:6.4
B-3、AV:12.7
B-3、AV:6.4
B-3、B-4触媒の活性経時変化(180℃)
100
90
80
60
SO2等 入
50
40
30
20
10
0
0
50
100
150
200
250
300
経過時間 (Hr)
350
400
450
500
35
排ガス再加熱回避のための技術開発
耐久性試験データ(T=150℃)
触媒耐久確認試験 (150℃)
100
B-4,AV:12.7
B-4,AV:6.4
B-3,AV:12.7
B-3,AV:6.4
90
80
70
脱硝率 (%)
脱硝率 (%)
70
60
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90 100 110 120 130 140 150 160
36
経過時間 (Hr)
参 1-34
研 究 成 果
排ガス再加熱回避のための技術開発
■
試験設備&試験時間
・脱硝試験装置 フィールド試験;20t/日炉出口煙道バイパス付設
実験室試験装置;小規模評価試験装置
・試験時間 フィールド試験;約400時間
評価試験;(短期,述べ)2,600時間、(耐久性)900時間
■
試験結果
・バナジウム系触媒 ・ガス温度150℃で75%以上(温度170℃で80%以上)
を得るハニカム状(Ti-V-Mo系)触媒を見出した。
・マンガン系触媒 ・低温活性化特性に優れた高活性マンガン系触媒
(粒状)を見出した。
■
結論
・経済性も加味した実用性はガス温度170℃(脱硝率80%以上)
採用の可能性大。(各メーカの他社技術採用の一番候補)
37
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発 (日立造船)
目的:
自己熱限界発熱量10%減、
シール圧力50mm程度以上、
処理後水分40%達成
38
参 1-35
日立造船廃棄物ガス化溶融フロー
(廃棄物安定供給装置採用の場合)
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
39
各種脱水機調査・検討および評価
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
40
参 1-36
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
機械式脱水試験装置概念図
41
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
基礎試験機 (1.5m3/h、0.3t/h)
42
参 1-37
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
・ 脱水ごみ中
の水分値は
ばらつきが少
ない
1000.0
500.0
0.0
0
20
40
60
80
100
120
140
経過時間(min)
80
脱水ごみ水分(%)
・ 吐出量の標
準偏差値は
20%以内
脱 水ごみ 吐出量
(kg/h)
定量供給機能
60
40
20
0
0
20
40
60
80
100
120
140
経過時間(min)
43
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
脱水機能
・入口ごみ水分値5
3∼60%に対し
て脱水ごみ水分
値 40∼45%
を達成
・正味動力 24~29kW・h/t
44
参 1-38
投入コンベア
ごみクレーン
給じん機
乾燥機
脱水機
破砕機
ごみピット
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
ガス化炉
磁選機
搬送コンベア
計量コンベア
*脱水機単独運転時
脱水機出口ごみ水分:40%
機械式脱水システムフロー図
45
二段脱水システム
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
汚水無放流のクローズドシステム
46
参 1-39
自己熱溶融限界発熱量低減の
ための技術開発
研 究 成 果
■
試験設備
・脱水試験装置 実証試験;33t/日炉付設フィーダ(7m3/h)
基礎試験置;小規模フィーダ(1.5 & 3.0 m3/h )
・試験時間 (実証試験装置) 340 時間
■
試験結果
・処理後水分約40%を達成した。
・各種試験を行い実用上安定して利用できる目途を得た。
・排水、臭気性ガスの処理には二段脱水法を適用したクローズドシス
テムを考案した。
■
結論
・従来型(乾燥システム)より経済性でも有利となるシステム・実用化
の 目途を得た。(既に、既受注の2件のプラントで採用予定)
47
外部燃料投入量低減のための
技術開発
外部燃料投入量低減のための
技術開発 (新日本製鐵)
目 的:
外部燃料投入量30%以上削減(コークス投
入量ごみtあたり50∼60kgから35∼42kg)
およびプラスチック吹き込み技術の確立
48
参 1-40
新日鐵のシステムフロー
外部燃料投入量低減のための
技術開発
49
外部燃料投入量低減のための
技術開発
コークス
ご
み
直
接
溶
融
炉
ガス燃焼
蒸気タービン
発電
羽口
排
ガ
ス
処
理
廃プラスチック吹込
スラグ・メタル
廃プラスチックス吹き込み試験装置フロー図
50
参 1-41
外部燃料投入量低減のための
技術開発
51
外部燃料投入量低減のための
技術開発
52
参 1-42
外部燃料投入量低減のための
技術開発
53
外部燃料投入量低減のための
技術開発
54
参 1-43
外部燃料投入量低減のための
技術開発
研 究 成 果
■
試験設備と試験時間
・プラスチック吹込試験 : 20t/日炉設置吹込試験装置
・プラスチック処理量増加試験: 20t/日炉バイパスライン設置のチ
ャ−ガス化および燃焼試験装置
・試験時間 約30時間 (プラスチック吹込試験)
■ 試験結果
・コークス比30kg/tレベル(コークス削減量30%以上)での運転達成。
・廃プラスチック吹込みによりスラグ排出の安定化とスラグ中Pbの低
減を確認した。
・プラスチック処理量増大のためのチャ−ガス化および燃焼特性を把
握した。
■ 結 論
廃プラスチック利用によるコークス投入量低減と廃プラスチックの更
なる利用拡大に対する目途を得た。
55
ガス化溶融技術開発総括
廃棄物ガス化溶融技術開発の総括
■ 各社試験結果は全て目標値を満足
■ 実機FSでは、発電効率30%の試算結果を得る
■ 研究成果の中には既に実機適用も出てきた
■ 実用化の鍵は、
更なる耐久性確認・実用性・経済性の実証
→ 今後実機設計段階で確認
56
参 1-44
ガス化溶融研究成果
の波及効果
得られた成果の波及効果
1 次世代技術「高効率廃棄物ガス変換技術開発」プロジェクト
○ 平成13年度より3カ年計画でスタート
○ 炉方式、熱分解システム、溶融システム、熱回収・利用等共通点多し
2 ストーカ炉等従来炉システムの高効率化に寄与
○蒸気条件改善、○低温脱硝技術、○脱水機
3 バイオマスのサーマルサイクルシステムへの寄与
○ガス化溶融システム適用、○高効率化、○各要素技術利用
4 廃プラスチック(産業廃棄物を含む)処理への適用
57
ガス化溶融成果の公表・広報
成果の公表・広報
1.特許出願数 22件
2.学会等発表件数 35件 (下記セミナー8件含む)
3.発表文献数
24件 (下記セミナー8件含む)
4.高効率廃棄物発電セミナー実施
(平成13年11月20日 経団連ホール、聴衆者数 573名)
58
参 1-45
実用化、事業化見通し及び今後の展開
技術開発テーマ
実 用 化 、 事 業 化 見 通 し
実用化及び今後の展開
今 後 の 展 開
蒸気温度上昇のための技術 ○ ガス化溶融炉における高温蒸気対応上の ○ セラミックフィルタは更なるコンパクト化(経
開発
材料特性及びセラミックフィルタ設置に
済性向上)を行い実ガス試験で信頼性、耐久性
●SH材料の高温腐食性の
よる特性を確認できたので、高温化ニー
を再確認(現在計画中)後、実機適用を推進す
評価及び高温除塵システ
ズに対応した設計が可能となった。
る。
ムの開発 (三井造船)
蒸気温度上昇のための技術 ○ 高 級 材 を 利 用 し な い で も 5 0 0 ℃ × 3 0 ○ 先ず、500℃級×100ata仕様のプラントの受注
開発
%級の高効率システムの設計が可能となっ をはかり、受注後フォローアップ研究(2年)で
●熱分解工程における脱塩
た。
更なる実証を行い、同種プラントの普及をはか
素化技術の開発
る。
(三菱重工業)
蒸気温度上昇のための技術 ○ 金属製伝熱管による低発熱量ごみ適用上 ○ 先ず、セラミック製伝熱管採用(試用)の実機
開発
の空気加熱器は建設中プラントに採用中。 を受注し、実証性確認後、その量産効果により
●セラミック式高温空気加 ○ 更なる高温化のためのセラミック製伝熱
経済性向上をはかり普及拡大をはかる。
熱器の開発
管は実機試用の上実用化する。
(荏原製作所)
排ガス再加熱回避のための ○ 170℃級低温脱硝技術は、模擬ガスでの ○ 170℃級脱硝技術につき既設プラントの実ガス
技術開発
耐久性が確認できたので実機適用は可能
(バイパス)試験にて、更なる耐久性確認後商
−低温脱硝装置の開発−
となった。
用化を推進する。長期的には、150℃級の採用
(川崎重工業)
を目指した同様の活動展開予定。
自己熱溶解限界発熱量低減 ○ 本技術に対する実用性の目途が得られた ○ 本技術を採用した初号機の運転実績をふまえ、
のための技術開発
ので、既に新規受注プラントに採用し建
更なる耐久性向上等の改良を加え以降の類似商
−廃棄物安定供給システム
設中。
用機等へ広く適用をはかる。
の開発−
(日立造船)
外部燃料投入量削減のため ○ コークスの一部代替としての廃プラスチ ○ 実機採用に際しては、現在(分別回収した)一
ック使用(吹込み)上の技術課題は達成
の技術開発
廃プラスチックの吹き込み技術が容器包装リサ
し、実機適用は可能との見通しを得た。
−廃プラスチックの吹き込
イクル法に適用されるよう関係先へ働きかける
み技術の開発− とともに実機試験での候補も探る。
59
(新日鐵)
参 1-46
個別要素開発システム
最適トータルシステム
高効率廃棄物発電技術開発
ガス化溶融発電技術開発
最適トータルシステムの研究
平成14年1月29日
(財)エネルギー総合工学研究所
1
個別要素開発システム
最適トータルシステム
報告内容
1.個別要素技術開発によるシステム評価
各要素技術開発の成果を実規模レベルでの
FSにより評価する。
2.最適トータルシステムの評価
各社開発技術を組み合わせることによって,
高効率システムの性能向上等の可能性を検討
・評価する。
2
参 1- 47
個別要素開発システム
最適トータルシステム
主な基本検討条件(1)
ごみ仕様(一般ごみ)
従来型プラントの建設単価*
LHV(kcal/kg)
2100
規模
建設単価(万円/(t/d))
水分(%)
42.0
100t/d
6,500
灰分(%)
5.5
300t/d
5,500
可燃分(%)
52.5
600t/d
5,000
*NEDO廃棄物マニュアルより
排ガス処理系統
バグフィルタ、脱硝装置
従来型プラントの蒸気条件
400℃×40ata
従来型プラントと、従来型プラントに技術開発を適用し
た場合について比較検討
3
個別要素開発システム
最適トータルシステム
主な基本検討条件(2)
経済性評価は以下の2項目により行う。
資本費+年間ランニングコスト−売電収入
ごみ処理単価=
年間ごみ処理量
発電原価(売電分)
資本費(売電分)+年間ランニングコスト(売電分)
=
年間売電電力量
4
参 1- 48
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(1)
高温除塵装置(三井造船)①
高温除塵装置
(セラミックフィルタ)
燃焼溶融炉
ごみ
熱分解ドラム
排ガス処理
廃熱ボイラ
三井造船システムフロー
5
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(1)
高温除塵装置(三井造船)②
発電端効率
送電端効率
30
20
発電端効率(%)
20
20.00
26.20
16.60
20.80
16.7 0
なし
あり
15
10
送電端効率(%)
2 4.90
25
1 4.70
15
10.50
11.20
なし
あり
10
5.60
5
5
0
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
開発技術適用による発電端効率向上は規模にもよるが絶
対値で約5%程度、相対値で約25%程度
6
参 1- 49
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(1)
高温除塵装置(三井造船)③
ごみ処理単価
発電原 価(売電分)
16
22,248
20,000
13,466
15,000
13,520
10,915
10,879
10,000
5,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
ごみ処理単価(円/t)
25,000
14
13.46
12
10
8
6.46 6.72
6
5.06 5.54
なし
あり
4
2
0
0
100
300
100
600
300
600
ごみ処理規模(t/d)
ごみ処理規模(t/d)
600t/dではごみ処理単価は開発技術適用により
安価となる
7
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(1)
高温除塵装置(三井造船)④
まとめ
• 発電端効率、送電端効率とも大きく向上
• 経済性は600t/dクラスでは従来型を上回る
• 小規模(300t/d以下)での経済性が課題
8
参 1- 50
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(2)
脱塩素化技術(三菱重工業)①
脱塩素システム
二次
燃焼炉
熱分解ガス
(高HCl)
熱分
解炉
チャー
燃焼炉
チャー
(低HCl)
SH
三菱重工業システムフロー
9
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(2)
脱塩素化技術(三菱重工業)②
発電端効率
送電端効率
30
25
26.05
2 3.59
20
20.64
18.6 7
22.61
なし
あり
15
10
20.15
20
20.64
送電端効率(%)
発電端効率(%)
25
1 6.28
17.04
13.76
15
なし
あり
10.32
10
8.85
5
5
0
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
脱塩素化技術適用による発電端の効率向上は絶対値で
約2∼3.5%、相対値で約10∼15%となる。
10
参 1- 51
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(2)
脱塩素化技術(三菱重工業)③
ごみ処理単価
発電原価(売電分)
20,000
10
19,907
19,831
13,062
12,806
15,000
10,000
10,2 88
9,937
5,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
ごみ処理単価(円/t)
25,000
0
8
7.86 7.78
6
5.06 4.94
なし
あり
4.25 4.14
4
2
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
脱塩素化技術の採用により、ごみ処理単価は安価となる
11
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(2)
脱塩素化技術(三菱重工業)④
まとめ
• 発電端効率、送電端効率とも大きく向上
• 100t/dクラスでも20%以上の発電端効率を達成
• 経済性は従来型を上回る。
12
参 1- 52
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(3)
高温空気加熱器(荏原製作所)①
空気式蒸気過熱器
給水
蒸気(500℃)
700℃
空気
ボイラ
旋回溶融炉
ガス化炉
ごみ
高温空気加熱器
排ガス処理
荏原製作所システムフロー
13
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(3)
高温空気加熱器(荏原製作所)②
送電端効率
発電端効率
25
30
24.20
25
21.70
25.70
15.7 0
なし
あり
15
10
送電端効率(%)
発電端効率(%)
18.70
20
19.40
20
20.5 0
16.5 0
13.90
15
10
なし
あり
7.70
5
5
0
0
100
300
600
100
300
600
ごみ処理規模(t/d)
ごみ処理規模(t/d)
高温空気加熱器による効率向上は絶対値で約5%、相対
値で約20∼30%となる。
14
参 1- 53
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(3)
高温空気加熱器(荏原製作所)③
発電原価(売電分)
ご み処理単価
12
ごみ処理単価(円/t)
20,338
20,000
15,000
12,856
11,486
9,458
8,561
10,000
5,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
25,000
10.42
10
0
8
6
5.30
4.79
4
4.24 3.89
なし
あり
2
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
高温空気加熱器の採用により、ごみ処理単価は約10%
増加→発電効率向上による売電収入よりもコストの増
加(とくにボイラ耐圧部)が上回ったため
15
個別要素開発システム
蒸気温度上昇のための技術開発(3)
高温空気加熱器(荏原製作所)④
まとめ
• 発電端効率、送電端効率とも大きく向上
• 経済性は従来型よりも若干劣る
高温高圧化に伴うボイラ耐圧部のコストアップ
で、ごみ処理単価は高くなるが、発電原価(売
電分)は下がる。
16
参 1- 54
個別要素開発システム
排ガス再加熱回避のための技術開発
低温脱硝装置(川崎重工業)①
消石灰
アンモニア
排ガス
脱硝装置
排ガス再加熱器
バグフィルター
減温塔
廃熱ボイラ
サイクロン
流動床式ガス化炉
ごみ
( SCR)
9
旋回式溶融炉
150℃ 210℃ 170
150℃ 210℃ → 170℃
150℃
1 5 0 ℃ 20 0 ∼ 2 20 ℃
【従来】 → 【低温脱硝】
7 5%
η = 5 0 ∼ 8 0%
【
現 状 】
【
目 標 】
川崎重工業システムフロー
図1 ガス化溶融プラント全体フロー図
17
個別要素開発システム
排ガス再加熱回避のための技術開発
低温脱硝装置(川崎重工業)②
送電端効率
発電端効率
25
20.03
20.67
21.49
22.2 4
19.1 9
18.38
17.5 6
15.60
14.77
16
15
なし
あり
10
送電端効率(%)
発電端効率(%)
20
20
23.07
12
11.53
10.6 9
なし
あり
8
4
5
0
0
100
300
100
600
300
600
ごみ処理規模(t/d)
ごみ処理規模(t /d)
低温脱硝装置の適用による効率向上は絶対値で約0.8%、
相対値で約3∼4%となる
18
参 1- 55
個別要素開発システム
排ガス再加熱回避のための技術開発
低温脱硝装置(川崎重工業)③
ごみ処理単価
発電原価(売電分)
20,000
10
19,903
19,792
15,000
11,563
11,433
9,533
10,000
9,400
5,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
ごみ処理単価(円/t)
25,000
0
8.91
8.54
8
6
5.33 5.14
なし
あり
4.27 4.14
4
2
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
低温脱硝装置の採用により、ごみ処理単価は約0.6∼1.4%
減少した。
19
個別要素開発システム
排ガス再加熱回避のための技術開発
低温脱硝装置(川崎重工業)④
まとめ
• 発電端効率、送電端効率とも0.8%向上
• 経済性は従来技術を上回る
• 150℃での実機採用の検討が必要
20
参 1- 56
個別要素開発システム
ごみ
再加熱器
集塵器
減温塔
水分40%(乾燥機の場合20%)
脱硝装置
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
脱水機(日立造船)①
ボイラ
ガス化炉
二次燃焼室
脱水機
溶融炉
廃棄物安定供給
システム
日立造船システムフロー
21
個別要素開発システム
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
脱水機(日立造船)②
発電端効率
送電端効率
25
14
17.16
18.97
17.34
15.42
15
なし
あり
10
11 .89
12
19.82
18.10
送電端効率(%)
発電端効率(%)
20
5
10.54
10
8.38
8
6
9.81
7.17
なし
あり
4.67
4
2
0
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
※分別ごみ(1900kcal/kg)にて検討
脱水機採用による効率向上は絶対値で約1.4∼1.7%、相
対値で約7∼12%となる。
22
参 1- 57
個別要素開発システム
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
脱水機(日立造船)③
発電原価(売電分)
ごみ処理単価
14
22,958
ごみ処理単価(円/t)
20,125
20,000
15,546
13,849
15,000
12,982
11,6 15
10,000
5,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
25,000
12
11.99
10.33
10
8
7.09
6.61
なし
あり
5.83 5.61
6
4
2
0
0
100
300
100
600
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
※分別ごみ(1900kcal/kg)にて検討
脱水機の採用により、ごみ処理単価は約10∼15%減少
23
個別要素開発システム
自己熱溶融限界発熱量低減のための技術開発
脱水機(日立造船)④
まとめ
• 発電端効率、送電端効率とも大きく向上
• 経済性は従来技術(乾燥機)を上回る
• 低質ごみ(高水分ごみ)では効果大
24
参 1- 58
個別要素開発システム
外部燃料投入量削減のための技術開発
廃プラ吹込み(新日本製鐵)①
コークス(50kg/ごみt → 30kg/ごみt)
ごみ
サイクロン
燃焼室
シャフト炉
チャーガス
化溶融炉
コークス
22円/kg
廃プラスチック
10円/kg
プラスチック吹込み(30kg/ごみt)
新日鐵システムフロー図
25
個別要素開発システム
外部燃料投入量削減のための技術開発
廃プラ吹込み(新日本製鐵)②
発電端効率
25
21.60 21.90
16.6016 .90
16
14.6014.90
14
15
なし
あり
10
送電端効率(%)
発電端効率(%)
20
20.00 20.30
送電端効率
18
23.20 23.50
12
11.6 011.70
10
なし
あり
8
6
4
5
2
0
0
100
300
100
600
300
600
ごみ処理規模(t/d)
ごみ処理規模(t/d)
廃プラ吹込みによる発電端の効率向上は、絶対値で
0.3%、相対値で1.5%程度
26
参 1- 59
個別要素開発システム
外部燃料投入量削減のための技術開発
廃プラ吹込み(新日本製鐵)③
ごみ処理単価
発電原価(売電分)
19,034 18,870
7
18,000
16,000
14,000
11,474
12,000
10,000
11,202
8,893
8,602
8,000
6,000
4,000
2,000
なし
あり
発電原価(売電分)(円/kWh)
ごみ処理単価(円/t)
20,000
0
6
6.30
5.78
5
4.40
3.95
4
3.72
なし
あり
3.32
3
2
1
0
100
300
600
100
ごみ処理規模(t/d)
300
600
ごみ処理規模(t/d)
廃プラ吹き込みの採用により、ごみ処理単価は約1∼3%
減少
27
個別要素開発システム
外部燃料投入量削減のための技術開発
廃プラ吹込み(新日本製鐵)④
まとめ
• 発電端、送電端効率は0.3%アップ
• 効率向上は小さいが、経済性は従来型を上回る
• 廃プラスチックの確保(経済的入手含む)が課題
28
参 1- 60
最適トータルシステム
最適トータルシステム検討パターン
(開発技術の組合せ可能ケース)
組合せ技術
蒸気条件向上技術
メーカ
再加熱防止
安定供給
コークス削 減
高温除塵
装置
脱塩素化
技術
高温空気
加熱器
SH技術
低温脱硝
装置
脱水装置
廃プラ吹
き込み
◎
−
−
◎
○
−
−
−
◎
−
◎
○
−
−
−
−
◎
□
○
−
−
−
−
−
□
◎
−
−
−
−
○
□
○
◎
−
−
−
−
□
○
−
◎
三井造船
三菱重工業
荏原製作所
川崎重工業
日立造船
新日本製鐵
◎:自社開発技術
○:他社開発技術の採用
□ : 本 技 術 開 発 以 外 の 技 術 (含 自 社 技 術 )
29
最適トータルシステム
高温除塵装置+低温脱硝装置
35
12
30.0
25
20.8
19.8
20
従来型
高効率型
15
11.8
10
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(円/kWh)
発電端効率、送電端効率(%)
30
5
0
10.91
10.63
10
8
6
5.06 5.31
従来型
高効率型
4
2
0
発電端効率
蒸気条件
高温除塵装置
送電端効率
ごみ処理単価
従来型
高効率型
400℃×40ata
500℃×100ata
なし
あり
低温脱硝装置
なし
あり
復水器形式
空冷
水冷
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
30
参 1- 61
最適トータルシステム
脱塩素化技術+低温脱硝装置
35
31.0
12
31.9
10.29
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
25.2 25.9
25
22.6
20
従来型
高効率型①
高効率型②
17.0
15
10
5
0
10
9.38 9.30
8
従来型
高効率型①
高効率型②
6
4.25
4
3.80 3.79
2
0
発電端効率
蒸気条件
送電端効率
ごみ処理単価
従来型
高効率型①
高効率型②
400℃×40ata
500℃×100ata
540℃×100ata
なし
あり
あり
脱塩素化技術
低温脱硝装置
なし
あり
あり
復水器形式
空冷
水冷
水冷
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
31
最適トータルシステム
高温空気加熱器+低温脱硝装置
35
12
24.8
25
20.5
20
従来型
高効率型
16.5
15
10
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
29.2
30
発電端効率、送電端効率(%)
発電端効率、送電端効率(%)
30
5
0
9.67
10
8.56
8
従来型
高効率型
6
4.24
4
3.40
2
0
発電端効率
蒸気条件
高温空気加熱器
送電端効率
ごみ処理単価
従来型
高効率型
400℃×40ata
500℃×100ata
なし
あり
低温脱硝装置
なし
あり
復水器形式
空冷
水冷
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
32
参 1- 62
最適トータルシステム
低温脱硝装置+蒸気温度上昇技術
12
35
30.5 31.0
25.8626.34
25
22.9
20
18.21
従 来型
高 効率型①
高 効率型②
15
10
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
発電端効率、送電端効率( %)
30
10
9.44 9.65 9.56
従来型
高効率型①
高効率型②
8
5.48 5.39
6
4.14
4
2
5
0
0
発 電端効率
蒸気条件
低温脱硝装置
ごみ処理単価
送 電端効率
従来型
高効率型①
高効率型②
400℃×40ata
500℃×100ata
500℃×100ata
なし
あり
あり
排ガス再加熱
あり
あり
なし
復水器形式
空冷
水冷
水冷
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
33
最適トータルシステム
脱水機+高温加熱器+低温脱硝技術
35
14
30.09
25
20
12.98
12.42
12
21.82
18.37
従来型
高効率型
15
9.95
10
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
発電端効率、送電端効率(%)
30
5
10
8
従来型
高効率型
5.83
6
4.29
4
2
0
0
発電端効率
送電端効率
ごみ処理単価
従来型
高効率型
蒸気条件
400℃×40ata
500℃×100ata
脱水機
なし(乾燥機)
あり
なし
あり
高温空気加熱器
低温脱硝装置
復水器形式
なし
あり
空冷式
水冷
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
34
参 1- 63
最適トータルシステム
廃プラ吹込み+蒸気温度上昇技術
35
12
31.1
25
24.3
23.2
20
従来型
高効率型
16.6
15
10
ごみ処理単価(×1000円/t)
発電原価(売電分)(円/kWh)
発電端効率、送電端効率(%)
30
8.89
8
7.38
従来型
高効率型
3.72
4
2.94
5
0
0
発電端効率
送電端効率
ごみ処理単価
従来型
高効率型
400℃×40ata
500℃×100ata
廃プラスチック吹き込み
なし
あり
低温脱硝装置
なし
あり
空冷式
水冷
蒸気条件
復水器形式
発電原価(売電分)
ごみ処理規模:600t/d
35
最適トータルシステム
まとめ
発電性能[目標:発電端効率30%の達成]
● 各社とも600t/d規模で、組合せ技術により、目標の
発電端効率30%以上を達成できる見通しを得た。
経済性[目標:従来技術に比し優れる、又は同レベル]
● 経済性(ごみ処理単価、発電原価(売電分)はほぼ従
来技術を上回る目途を得た。 実用化上の課題
● ■技術的課題は解決の目途を得た。実績構築は必要。
■経済性は習熟効果によるコスト低減、広域化による
大規模化等、更なる改善が望まれる。
小規模対応は廃棄物ガス変換発電技術開発が必要36
■
参 1- 64
最適トータルシステム
廃棄物発電施設の発電端効率の推移
40
ガス化溶融炉
従来炉
35
売電あり(累乗近似)
売電なし(累乗近似)
25
売電あり+売電なし
(累乗近似)
20
15
10
5
0
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
竣工年度(年)
37
最適トータルシステム
廃棄物発電の発電効率推移
累積平均的効率
16
年度毎単純平均効率
14
年度毎単純平均効率(二乗近似)
12
発電効率(%)
発電端効率(%)
スーパーごみ発電
30
10
8
6
4
2
0
H2
H4
H6
H8
H10
H12
竣工年度(年度)
38
参 1- 65
高効率廃棄物発電技術開発
評価第 2 回分科会用補足資料
平成 14 年 4 月
NEDO・エネルギー環境技術開発室
参 1-66
「従来型ストーカ炉発電等高効率化技術開発」
及び「廃棄物ガス化溶融発電技術開発」
評価 書 ( 案 ) p 4 : ス ト ーカ 炉 、 ガ ス化 溶 融炉 お よび R DF 発 電 の棲 み 分け を 明確 に ・・・
p16:廃棄物発電としてストーカ炉、ガス化溶融炉、RDF発電のいずれ
の炉が有効か・・・
1 . ス ト ー カ 炉 と ガ ス 化 溶 融 炉 の 棲 み 分 け に つ い て は 、 第 1 回 分 科 会 資 料 7 − ( 3 ) -②
「 ガス化溶融発電技術開発 最適トータルシステムの研究 」参考資料( 本資料p9に再掲 )
に 記 載 し て お り 、 ガ ス 化 溶 融 発 電 が 可 能 な 600 t / d 以 下 ( 最 大 単 炉 容 量 現 状 実績 200t/d
× 3 炉)ではガス化溶融が優位であり、それを超えると必然的にストーカ炉となる。
2.RDF( Refuse Drived Fuel )発電の基本的考え方について
RDF発電は、従来小規模施設では発電施設を持たず、焼却施設として処理していたも
のを、広域化によりより大きな規模で処理することにより、小規模焼却設備としての、ダ
イオキシン類排出問題を解決し、廃棄物のエネルギー利用を促進するためのシステムとし
て注目された。
小規模地域で一般廃棄物を乾燥させ、石灰を添加して、ペレット状燃料として加工し、
数カ 所 のR D F施 設 で加 工し たR DF を収集 し、 約 200 ∼ 300ton-RDF/ 日( 一般ご みと し
ては約 300 ∼ 450ton/ 日)の廃棄物発電施設で一括処理する。
ダイオキ シン類は石 灰により塩 素を固定すること及び、高温燃焼( 850 ℃)させること
で削減し、また、塩素成分の減少により、腐食を抑えることにより高温・高圧蒸気を発生
させ、高効率発電が可能なシステムにできる特徴を持っている。
し か し 、 一 方 、 R D F 加工 設 備 で は 、 破 砕 、乾 燥 、石 灰 混合 、 成型 ( ペレ ッ ト加 工 )、
また、場合により灰溶融工程などにエネルギーを使う必要があり、更に、RDF加工施設
から発電施設への運搬等を含めると総合システムとしての熱効率は必ずしも高くはない。
し た が っ て 、 RDF と そ れ 以 外 ( ス ト ー カ ・ ガ ス 化 溶 融 ) と の 棲 み 分 け は 、 広 域 化 の 必
要性の有無に起因するものと考える。
3.RDF発電の商用化
当初の技術開発は、流動床炉(非灰溶融炉)方式で先行開発されたが、その後、実機で
は、ロータリーキルンストーカ炉、流動床式ガス化溶融炉、シャフト炉(直接溶融・ガス
化炉)などがRDF発電炉として採用されている。
即 ち 、 RD F 発 電 は 、 従 来 炉 (ス ト ーカ 炉 、流 動 床炉 )、 新型 炉 (ガ ス 化溶 融 炉) の 何
れも採用可能なものでる。灰の利用法として、灰のまま利用するか、溶融スラグとして利
用するかなど、その考え方によって方式選定が可能である。
RDF発電の運用方法は多様である。
4.施設設置地域毎の特殊性と判断
ダイオキシン問題と、廃棄物エネルギー有効利用の観点から、ごみ処理の広域化は進み
つつあるが、地域毎で異なる検討条件を抱えており複雑である。
RDF発電は概念的には古いが、その適用例としては現在まで5例商用化(建設・計画
中)されている。
地域の特殊性・多様性の観点でRDF発電を検討した例は多いが、RDF発電導入を断念
した地域も多い 。最適化は地域その特殊性を抱える地域毎で行うべき性質のものと考える 。
5.RDF発電とストーカ炉、ガス化溶融炉との棲み分けについて(まとめ)
上述した如く 、RDF発電は発電する炉の問題ではなく 、広域化の問題である 。従って 、
RDF発電に用いる炉方式は、広域化地域の特殊性から判断される問題である。
参 1- 67
従来型ストーカ炉発電等高効率化技術
評価書(案)p14:
「運転条件の設定に現実面を考慮して・・・」
評価案
ごみ処理規模の増大による発電効率の向上の程度、及びその経済的評価を行い、ガス化溶融の
結果を加味し、廃棄物処理規模が 600t/d 以上の事業所に適したシステムであるとの結果を得て
いる。
しかし、運転条件等の設定に現実面を考慮していないような最適条件を設定していると考えら
れる。① RDF との比較や,事業所の建設場所、面積にも考慮すべきであった。
以下省略
下線部①について
運転条件等のうち、建設コストに反映するプラント諸元等の設計値については、現状の技術で実現
可能な値を設定した。このため、必ずしも効率および経済性の面で有利にならない場合があるが、こ
のような値を用いてFSを実施することは、重要と考える。また、運転コストに反映する用役費等に
ついては、メーカーや市場価格の調査を十分行いて設定した。
以上、設定では、現実を考慮して設定を行っており、事実を反映していない。
以下に運転条件等の設定値及び根拠を示す。
イ)プラント諸元について
「表 8.5-1 FSの主な検討条件」
(事業原簿)については、蒸気温度・圧力の組合せ等の条件は、
実プラントに近い値または現状技術で実現可能な値を設定した。このため、必ずしも効率および経
済性の面で有利にならない場合がある。
表 8.5-1
FSの主な検討条件
項目
条件
ごみ処理規模(t/d)
100,300,600,1200,1800
蒸気条件
ボイラー出口ガス温度(℃)
300℃×2.6MPa(27ata)
400℃×3.9MPa(40ata)
450℃×5.9MPa(60ata)
500℃×9.8MPa(100ata)
220
ボイラー出口ガスO2濃度(%)
9.0
減温塔出口ガス温度(℃)
150
再加熱器出口ガス温度(℃)
210
復水器真空 4.9kPa,24.5kPa
0.05ata,0.25ata
排ガス処理装置
バグフィルタ・脱硝装置
ごみ発熱量
8.8MJ/kg(2100kcal/kg)
参 1- 68
ロ)ごみ仕様について(報告書に記載(原簿・発表資料には記載なし)
)
一般ごみを対象とし、ごみの低位発熱量および成分については、至近年の全国のデータを用いた。
三成分
低 質
基 準
高 質
LHV (kcal/kg)
1300
2100
2900
水分 (%)
51.0
42.0
33.0
灰分 (%)
5.2
5.5
5.7
可燃分 (%)
43.8
52.5
61.3
C (%)
16.6
24.8
33.0
H (%)
3.3
3.6
3.9
O (%)
23.0
23.2
23.5
N (%)
0.4
0.4
0.4
可燃分組成割合
S (%)
0.1
0.1
0.1
Cl (%)
0.4
0.4
0.4
ハ)建設コストについて(報告書に記載(原簿・発表資料には記載なし)
)
コスト計算において、従来設備と異なるである「SH材料単価」は、メーカーよりヒアリングを
行い、決定した。
材 質
単価 (円/kg)
STB340
130
STB410
150
STBA22
180
STBA24
240
SUS310J1
1400
HR11N
2450
Alloy625
7200
HR30M
7.5*1
JHN24
23*1
*1:STBA24=1 とした時の相対価格で表す
ニ)ランニングコスト算出について(報告書に記載(原簿・発表資料には記載なし)
)
算出に際しては、以下の表中の項目を加味して検討を行った。値は、メーカーよりヒアリングを
行い設定した。
上水
300 円/m3
工業用水
25 円/ m3
消石灰
25 円/kg{Ca(OH)297%換算}
苛性ソーダ
50 円/kg(48%)
尿素水
60 円/kg(40%)
アンモニア溶液
55 円/kg(25%)
硫酸溶液
25 円/kg(98%)
キレート剤
500 円/kg
運転員(上級)
800 万円/年
(中級)
500 万円/年
管理費
人件費の 25%
売電単価
8 円/kWh
年間利用率
80%
以
参 1- 69
上
ごみ性状設定の妥当性(Fact BOOK 2000:(財)日本環境衛生センター発行)
利用率設定の妥当性(廃棄物発電導入マニュアル:NEDO発行)
参 1- 70
参 1- 71
用役費設定の妥当性(廃棄物発電導入マニュアル:NEDO発行)
売電単価設定の妥当性(廃棄物発電導入マニュアル:NEDO発行)
参 1- 72
廃棄物ガス化溶融発電技術開発「最適トータルシステムの開発」
評価書(案)p38「発電システムとしての安定性、経済性が明確になっていない」
( 1 )経済性について
1 )事業原簿(資料 7- ( 0 ) -2 )33 P に記載の通り、①個別要素技術開発による効果(性
能向上 、並びに経済性 )②最適トータルシステムによる効果について記載されている 。
詳細は発表資料(資料 7- ( 3 ) -2 )にて説明されている。
2)ま た 、 同 事 業 原 簿 に は、 別 添 資 料 と し て 、「最 適 トー タ ルシ ス テム の 検討 」 が添 付 さ
れており、開発技術の可能な組合せ技術導入による性能及び経済性効果を検討してい
る。
3)同別添資料の第3項では、ストーカ炉とガス化溶融炉の性能及び経済性検討、棲み分
けについても考察している。
従って、p38の経済性が明確になっていないには当たらないと考える。
参考のために、検討資料「廃棄物発電のコスト比較について」を添付する。ここでは、
廃棄物発電の有無による処理コスト比較、焼却方式の違い及び高効率化による処理コス
ト比較を行っている。
( 2 )安定性について
安定性については以下のような様々な安定性が考えられる。
①発電システムとしての出力の安定性
②ごみ質、ごみ量の季節、年次変動に対する安定性
③開発要素技術或いは組合せ技術適用システムの長期安定性(信頼性)
1)発電システムとしての出力の安定性につて
廃棄物発電における蒸気タービン発電のシステム安定性は、既にストーカ炉等の段階
で明確に安定性に関する実用性は実証されている 。(下記 2 )、 3 )も含めて)また、ガ
ス化溶融炉も商用化が進みつつあり、安定性は実証されつつある。
2)ごみ質の季節、年次変動に対する安定性
ごみ質は、一般廃棄物の標準的な組成、発熱量を用いてFSは実施しているが、特に
水 分 変 動 に よ る 低 発 熱 量 と な る 可 能 性 が あ る 。 こ の 場 合 で も 自 己 熱 溶 融 限 界 は 1700
kcal/kg 程度であり、これ以上では安定運転可能である。
また、開発した脱水機は 40% まで水分を機械式で脱水出来るので、ごみの発熱量は
改善され、ほぼ標準的なごみ質になり、安定した施設運転が可能であることは実証炉
試験で確認している 。(実機で脱水機を採用することとした)
脱水ごみの変動に対しては、バーナー焚き量、燃焼空気量の制御により、燃焼安定性
を計れる。
3)ごみ量の季節変動、年次変動は、施設の設計条件として考慮され、炉の規模、処理裕
度が設定される。これは、施設建設の特定地域における詳細検討でなされるべきもの
であり、本FSでは対象とすべきテーマではないと考える。
4)開発要素技術或いは組合せ技術適用システムの長期安定性
廃 棄物ガス化 溶融発電の高効率化のための技術開発は、実証炉(約 10ton/ 日規模)で
の3カ年計画( 実質 2.5 年間 )で行った実証試験結果である 。従って 、今後実機にて 、
の長期試験を経て確証し、実用化が推進されるべき性格の開発であり、最適トータル
システムの課題ではないものと考える。
参 1-73
平成14年1月
廃棄物発電のコスト比較について
1.廃棄物発電の有無による処理コスト比較
廃棄物発電の有無による経済性を「単年度あたりのごみ処理経費」で比較すると(=収支差分注1)、
図1に示すとおり、一部の条件(小規模かつ高温・高圧蒸気条件)を除いて、発電を導入したほう
が、経済的に優位である。
試算において、蒸気条件が高温・高圧化しているにもかかわらず経済的優位性が少ない原因は、
発電効率の上昇による売電収入の増加よりも、スーパーヒーター等の設備費・修繕費の増加の方が
大きいためである。
収支差分(百万円/年)
(廃棄物発電導入によるコストメリット)
注1:収支差分=(発電なし経費)−(発電あり経費−売電収入) したがって、収支差分が「正」の場合、「発電あり」が優位である。
30ata×300℃(従来型発電)
61ata×450℃(高効率発電)
40ata×400℃(高効率発電)
図1
15年運転結果試算例
(出典:廃棄物発電導入マニュアル(NEDO 発行))
※コスト試算条件(廃棄物発電導入マニュアルより抜粋)
(1)ごみ発熱量
1,600kcal/kg(容器リサイクル法の完全実施を勘案。現状の全国平均 2,000kcal/kg)
(2)計算経費等
・資 本 費:発電設備ありの設備建設費=6,000 万円/ごみt/日(発電設備比率 15%)
発電設備なしの設備建設費=5,100 万円/ごみt/日
廃棄物発電促進対策費補助金補助率=10%
廃棄物処理施設整備費補助金補助率=25%
・人 件 費:発電設備に対する人員増加=2人(700 万円/人・年)
・修 繕 費:建設費に対する比率=3%
・購入電気費:基本料金=1,767 円/kW・月、電力量料金=9.73 円/kWh(高圧電力B契約)
・用 役 費:発電設備ありの用役費=2,100 円/ごみt
発電設備なしの用役費=2,000 円/ごみt
・売 電 収 入 :売電単価=8.11 円/kWh(廃棄物発電余剰電力購入)
参 1-74
2.焼却方式の違いおよび高効率化による処理コスト比較
廃棄物発電施設の焼却方式の違いによる経済性を「ごみ処理単価」で比較する。対象とする技術
は、ごみ処理の結果が同等となるよう、
「ストーカ+灰溶融方式」および「ガス化溶融方式」を選択
した。比較結果は、図2に示すとおり、
「ガス化溶融方式」が経済的に優位であることがわかる。こ
れは、
「ストーカ+灰溶融方式」では、灰溶融設備での電力消費が多く、売電収入が少なくなるため
である。
処理規模が 600t/d を超える施設については、導入実績面およびガス化溶融方式の1炉あたりの処理
量が 200∼300t/d に制限されることから、「ストーカ方式」の導入が進むものと考えられる。そのた
め、同規模の「ガス化溶融方式」については、試算を行っていない。
蒸気条件の高温・高圧化等による高効率化を行った場合の経済性についても「ごみ処理単価」で
比較すると、図2に示すとおり、高効率化を行ったほうが経済的に優位である。ただし、処理規模
が小さい場合には、その差はわずかであり、コスト試算条件によっては、経済的優位性が逆転する
ことも考えられる。
25000
ごみ処理単価(円/t)
ストーカ+灰溶融+発電
20000
ストーカ+灰溶融+発電
(高効率タイプ)
ガス化溶融+発電
15000
ガス化溶融+発電
(高効率タイプ)
10000
5000
0
400
800
1200
1600
2000
処理規模(t/day)
図2
焼却方式・高効率化別コスト試算例
(出典:(財)エネルギー総合工学研究所調べ)
※コスト試算条件(H12 年度ガス化溶融最適トータルシステムの検討をベースとした)
(1)ごみ発熱量
2,100kcal/kg
(2)計算経費等
・資 本 費:設備建設費=6,500 万円/ごみt/日(100t/d)
(5,500 万円(300t/d)、5,000 万円(600t/d)等、スケールメリットを考慮)
高効率タイプについては、約3%建設費アップ
廃棄物発電促進対策費補助金補助率=10%
廃棄物処理施設整備費補助金補助率=25%
・人 件 費:処理規模のみに依存
・修 繕 費:建設費に対する比率=3%
・購入電気費:基本料金=1,600 円/kW・月(全条件において売電のため、電力購入なし)
・用 役 費:項目別に単価を設定し、条件毎に試算(詳細は、別紙参照)
・売 電 収 入 :売電単価=8.00 円/kWh(廃棄物発電余剰電力購入)
(3)高効率化の概要
・ベース技術:蒸気条件=30ata×300℃(ストーカ)
蒸気条件=40ata×400℃(ガス化溶融)
・高 効 率 化 :蒸気条件=100ata×500℃(ただし、規模によっては、60ata×450℃)
以 上
参 1-75
別紙
「焼却方式の違いおよび高効率化による処理コスト比較」における用役費の単価
項目
上水
工業用水
消石灰
苛性ソーダ
尿素水
アンモニア溶液
硫酸溶液
運転員(上級)
(中級)
(その他)
管理費
単価
300 円/m3
25 円/m3
25 円/kg(CaOH97%換算)
50 円/kg(48%)
60 円/kg(40%)
55 円/kg(25%)
25 円/kg(98%)
800 万円/年
500 万円/年
300 万円/年
人件費の 20%
参 1-76
参考資料
ごみ処理単価試算例[ガス化溶融+発電(600t/d)]
ごみ処理規模
t/d
蒸気条件
<発電電力量、売電電力量計算>
発電出力
売電出力
年間発電電力量
年間売電電力量
発電端効率
送電端効率
所内率
所内率(廃棄物処理施設分)
所内率(発電分)
<建設費計算>
<無形固定資産計算>
用地費(発電分)
用地費(売電分)
用地費(廃棄物処理施設分)
用地費(実質ごみ処理施設分)
<固定資産(設備費)計算>
設備費(発電分)
機械装置費(発電分)
土建費(発電分)
設備費(売電分)
機械装置費(売電分)
土建費(売電分)
設備費(廃棄物処理施設分)
機械装置費(廃棄物処理施設分)
土建費(廃棄物処理施設分)
設備費(実質ごみ処理施設分)
機械装置費(実質ごみ処理分)
土建費(実質ごみ処理分)
<発注者建設中費用計算>
建設中費用(発電分)
建設中費用(売電分)
建設中費用(廃棄物処理施設分)
建設中費用(実質ごみ処理施設分)
<資本費計算>
補助率
補助金:通産省補助金
電気事業債起債額
補助金:厚生省補助金
一般廃棄物処理事業債 実質負担額
資本費(売電分)
年支払い利息
年平均減価償却費
年平均償却資産税
資本費(実質ごみ処理施設分)
年平均支払い利息
年平均減価償却費
年平均償却資産税
<年間ランニングコスト計算>
年間発電費用(発電分)
年間発電費用(売電分)
年間発電費用(廃棄物処理設備分)
年間発電費用(実質ごみ処理設備分)
<発電単価,ごみ処理単価計算>
年間売電収入
年間経費
年間ごみ処理量
ごみ処理単価
発電単価(売電分)
600
40ata
400℃
100ata
500℃
kW
13,800
15,900 (A)
kW
10,401
12,300 (B)=(A)×(1−E)
kWh/年 96,710,400 111,427,200 (C)=(A)×24h×365 日×年間設備利用率(0.8)
kWh/年 72,890,628 86,200,082 (D)=(B)×24h×365 日×年間設備利用率(0.8)
%
22.6
26.1 発電端効率=(A)/(ごみ入熱量)
%
17.0
20.2 送電端効率=(B)/(ごみ入熱量)
%
24.6
22.6 (E)=E1+E2
%
22.4
19.4
(E1)…廃棄物処理設備にて使用している所内電力を考慮
%
2.3
3.2
(E2)…発電設備にて使用している所内電力を考慮
万円
建設費=無形固定資産(F+H)+固定資産(J+L)+建設中費用(J’+L’)
万円
万円
万円
万円
15,200
11,803
207,030
210,427
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
万円
360,824
252,577
108,247
280,180
196,126
84,054
2,639,176
1,847,423
791,753
2,719,820
1,903,874
815,946
万円
万円
万円
万円
72,165
56,036
527,835
543,964
%
万円
万円
19,613
272,370
万円
万円
586,049
1,128,145
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
万円/年
t/年
円/t
円/kWh
22,213
5,402
14,812
1,999
118,252
22,375
76,468
19,409
98,094
11,287
8,764
86,807
89,330
4.25
58,313
180,247
175,200
10,288
4.25
用地購入費:10 万円/m2 とする
15,200 (F)
12,251 (G)=(F)×(1−E1)
207,030 (H)
209,979 (I)=H+F×E1
403,957 (J)=J1+J2
282,770
(J1)
121,187
(J2)
325,589 (K)=J×(1−E1)
227,913
(K1)=J1×(1−E1)
97,677
(K2)=J2×(1−E1)
2,639,176 (L)=L1+L2
1,847,423
(L1)
791,753
(L2)
2,717,544 (M)=M1+M2
1,902,280
(M1)=L1+J1・E1
815,263
(M2)=L2+J2・E1
人件費、補償費、調査、設計委託費、工事用電力等であり、設備費の約 20%とする。
80,791 (J’)=(J)×20%
65,118 (K’)=(K)×20%
527,835 (L’)=(L)×20%
543,509 (M’)=(M)×20%
22,791 (N)=K1×10%
315,049 (O)=(G+K−N)
585,504 (N’)=(I+M)×0.8(補助対象分)×補助率(25%)
1,127,096 (O’)=(I+M)×0.385
25,785 (P)=(P1+P2+P3) …表 10 参照
6,248
(P1)
17,213
(P2)
2,323
(P3)
118,151 (P’)=(P’1+P’2+P’3) …表 11 参照
22,354
(P’1)
76,404
(P’2)
19,393
(P’3)
99,116 (Q)
12,309 (Q1)
9,921 (Q2)=(Q1)×(1−E1/100)
86,807 (Q3)
89,195 (Q4)=(Q3)+(Q1)×(E1)/100
4.14
68,960 (R)
174,091 (S)=P+P’+Q−R
175,200 (T)=(ごみ処理規模:t/d)×365 日×0.8(年間利用率)
9,937 (U)=S/T×10,000
4.14(V)=(P+Q2)/D
参 1-77
参 1-78
参考資料2
本資料は、第1回「高効率廃棄物発電技術開発」
(事後評価)分科会において、評価の事
務局である新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評価課(現技術評価部)から、東レ
経営研究所へ関連技術の周辺動向調査を依頼したものである。
参 2-1
「高効率廃棄物発電技術開発」
周辺動向調査
平成14年1月29日
株式会社 東レ経営研究所
参 2-2
1.
廃棄物発電をめぐる状況
1-1.
国のエネルギー政策における廃棄物発電の位置付け
我が国の一次エネルギー供給推移を見ると、石油危機後に叫ばれた「石油代替エネルギ
ーへの転換」が一服し、最近は 50%台強のレベルで推移している。しかし、中東地域への
極端な依存傾向、CO2 削減圧力、価格の不安定性などの問題がつきまとうのに加え、将来
的な枯渇という問題に目をつぶることが出来ない。従って石油危機後、現在に至っても依
然として「石油依存ウェイトの削減」「石油代替エネルギーの開発」は重要なテーマになっ
ていることに変わりはない。
図 1-1-1.
(原油換算百万kl)
一次エネルギー総供給推移
700
600
6.7
22.2
500
400
300
4.2
22.0
20.0
26.0
5.3
20.6
49.2
6.7
21.5
70.8
77.0
63.7
75.4
53.3
38.8
41.3
6.7
20.4
97.2
103.1
87.3
72.4
85.2
200
308.3
328.2
282.2
306.5
246.5
100
石油
石炭
天然ガス
水力
新エネルギー等
原子力
地熱
0
1980
1985
1990
1995
1999
(年)
総合エネルギー統計データより(99 年は速報値)
参 2-3
経済産業省では非化石エネルギーや石油代替エネルギー推進等の対策を打ち出すことで
2010 年度の一次エネルギー供給バランスは「石油依存度 50%以下」「非化石エネルギー比
率 25%以上」という構想を打ち出していた。
しかし、その構想を実現する上で大きなポイントになることが期待された原子力発電が
ここ数年閉塞的な状況に置かれ「2010 年までに 16∼20 基」と設定していた原発の新規立地
計画自体が達成困難な情勢となっている。総合エネルギー調査会では 98 年に 2010 年度の
エネルギー受給長期見通しを CO2 削減対策の追加投入(対策ケース)と現状維持(基準ケ
ース)の 2 つのシナリオに基づいて発表しているが、そのどちらの場合でも 96 年比約 1.5
倍増と設定されている原子力発電の増設は極めて困難と言わざるを得ない。
また、同様に水力発電についてもダムの新規建設が困難になりつつある現状では大幅な
ウェイト増加を想定するのは現実的とは言えず、
「石油代替」という主旨に沿ったエネルギ
ーとしては同じ化石燃料である天然ガスとともに新エネルギーの比重を高める必要性が高
くなっている。
表 1-1-2.
一次エネルギー総供給の現在の見通し
年度
1996 年
2010 年
項目
基準ケース
対策ケース
一次エネルギー総供給
5.97 億 kl
6.93 億 kl
6.16 億 kl
実数
構成比%
実数
構成比%
実数
構成比%
エネルギー別区分
55.2
51.6
2.91
47.2
石油
3.29 億 kl
3.58 億 kl
16.4
15.4
14.9
石炭
13,160 万 t
14,500 万 t
12,400 万 t
11.4
12.3
13.0
天然ガス
4,820 万 t
6,090 万 t
5,710 万 t
12.3
15.4
原子力
3,020 億 kWh
4,800 億 kWh
4,800 億 kWh 17.4
3.4
3.4
3.8
水力
820 億 kWh
1,050 億 kWh
1,050 億 kWh
0.2
0.5
0.6
地熱
120 万 kl
380 万 kl
380 万 kl
1.1
1.3
3.1
新エネルギー等
685 万 kl
940 万 kl
1,910 万 kl
(1998 年総合エネルギー調査会受給部会)
廃棄物発電はこの新エネルギーの中に位置付けられ、1998 年に発表された総合エネルギ
ー調査会受給部会の中間報告では廃棄物発電の将来見通しを表 1-1-3 のように設定している。
廃棄物発電の供給力は 2001 年竣工予定分を含めて現在容量ベースで約 100 万 kw(表では
96 年時点 89 万 kw となっている)であるが、これは今後 9 年の間に基準ケースでも倍増、
対策ケースでは 5 倍増という目標にあたる。
特に対策ケースの原油換算で比較した場合、廃棄物発電のウェイトは新エネルギー導入
参 2-4
目標全体のほぼ 3 分の 1 を占めるなど、そのポジションは非常に重要なものであり、逆に言
えば廃棄物発電の供給拡大が目標通りに進行しなければ新エネルギー導入目標達成、石油
依存率の抑制、あるいは CO2 削減といったエネルギー政策の実現自体が難しくなってくる
とも言える。
表 1-1-3.
新エネルギー供給見通し(万 kw は発電設備容量、万 kl は原油換算)
年度
1999 年度実績
発電分野
項目
太陽光発電
熱利用分野
20.9 万 kw
(5.3 万 kl)
風力発電
8.3 万 kw
(3.5 万 kl)
廃棄物発電
90 万 kw
(115 万 kl)
バイオマス発電
8.0 万 kw
(5.4 万 kl)
太陽熱利用
98 万 kl
未利用エネルギー(雪氷冷熱含)
4.1 万 kl
廃棄物熱利用
4.4 万 kl
バイオマス熱利用
黒液・廃材等
457 万 kl
合計
693 万 kl
一次エネルギーに占める割合
1.2%
2010 年度
現行対策維持ケース 対策ケース
254 万 kw
482 万 kw
(62 万 kl)
(118 万 kl)
78 万 kw
300 万 kw
(32 万 kl)
(134 万 kl)
175 万 kw
417 万 kw
(208 万 kl)
(552 万 kl)
16 万 kw
33 万 kw
(13 万 kl)
(34 万 kl)
72 万 kl
439 万 kl
9.3 万 kl
58 万 kl
4.4 万 kl
14 万 kl
67 万 kl
479 万 kl
494 万 kl
878 万 kl
1910 万 kl
1.4%
3.%程度
2010/
1999
約 23 倍
約 38 倍
約5倍
約6倍
約4倍
約 14 倍
約3倍
約 1.1 倍
約3倍
(2001 年 6 月総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料)
1-2.
国の環境政策における廃棄物発電の位置付け
環境政策という観点から廃棄物発電を考察する場合、そこには二つの側面が考えられる。
ひとつは廃棄物政策の中における発電という位置付けであるが、近年急速に重要性を増し
てきているのがもうひとつの側面、つまり廃棄物処理(あるいは発電)プラントの設置に
伴う環境影響の抑制という側面である。特に後者はダイオキシンの排出抑制政策などと連
動して排ガス処理などはもちろん、ゴミ焼却プラントの運転方法(全連続か間欠運転か)
やプラントの規模(一日当たり焼却量)
、処理体制(広域処理の推進)といった部分でプラ
ントの仕様や構造はもちろん、廃棄物処理事業そのものを大きく左右するものとなってい
る。
参 2-5
廃棄物政策から見た廃棄物発電
我が国の一般廃棄物の排出量は長期的に微増傾向が続いており、適正処理の必要に加え
て最終処分場余力の逼迫という背景から、我が国の廃棄物政策は特に 90 年代に入ってから
は排出抑制とリサイクルの推進という方向性を強めてきたが、2000 年 5 月に循環型社会形
成推進基本法が成立したことでより明確な方向性が与えられた。
同法の中では廃棄物処理の方法論が「3R」の思想に基づいて ①排出抑制(Reduce)
、②
再使用(Reuse)
、③マテリアルリサイクル(Material Recycle)、④サーマルリサイクル(Thermal
Recycle)
、⑤適性処理 という優先順位で位置付けられており、廃棄物発電はこの中の④サ
ーマルリサイクルに含まれるリサイクル方法論と見なすことができる。
図 1-2-1.
都市ゴミ総排出量推移
(万t)
5200
4997
5044
5077
5020
5030
5054
5069
5115
5120
5160
5000
4800
4600
4400
4200
4000
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
(年)
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等について」データを元に作成
参 2-6
図 1-2-2.
廃棄物リサイクル関連
法規制体系
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
資源有効な利用の促進に関する法律(リサイクル法)
循環社会推進基本法
環境基本法
容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関
する法律(容器包装リサイクル法)
特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)
建設工事にかかる資材の再資源化等に関する法律
(建設リサイクル法)
食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律
(食品リサイクル法)
国等による環境物品の調達の促進に関する法律
(グリーン購入法)
つまり、廃棄物発電(サーマルリサイクル)よりもマテリアルリサイクルや再使用の方
が優先順位としては高いことになり、理念としては「再使用やマテリアルリサイクルでき
ない廃棄物は燃やしてサーマルリサイクル」という考え方がその背景にあると言えよう。
この循環社会推進基本法を言わば補強する形で個別の廃棄物種類ごとに様々な法律が制
定されているが、そこに共通する理念もやはりリサイクルの推進という方向性であり、国
の廃棄物政策の理念としては「リサイクル優先」
「次善の方法として廃棄物発電」という位
置付けが見受けられると言える。
環境政策から見た廃棄物発電
環境政策という観点から見ればゴミ焼却施設は発電施設の有無に関わらず、ばい煙等の
環境負荷物質排出リスクを孕んだ施設であり、その立地・運営に関しては様々な規制が適
用される。
特に最近になって人体に有害なダイオキシンが廃棄物焼却に伴って環境に放出されるこ
とが大きな社会的問題になり、90 年代末頃からその対策が本格化し、ダイオキシン対策に
よって廃棄物処理施設の在り方自体も大きな変化を迫られている。
ダイオキシンについては 1999 年 3 月に「ダイオキシン対策推進基本方針」が設定され、
同年、
「ダイオキシン類対策と区別措置法」が公布、翌 2000 年に施行している。これによっ
参 2-7
て既設の廃棄物焼却炉は暫定的に 80ng/m3 というダイオキシン排出規制値が設定されたが、
この数値は 2002 年 12 月より炉の処理能力によってより厳しい値のなることがすでに決定し
ている。この、
「2002 年 12 月以降の基準」に照らして現在の一般廃棄物焼却施設の適合・
不適合状況を調査した結果によると、全体の炉のうちのほぼ 4 分の 1 はまだ不適合という結
果になっている。
表 1-2-3.
2002 年 12 月基準に対する適合状況
既設
新設
処理能力
4t/h 以上
2∼4t/h
2t/h 未満
4t/h 以上
2∼4t/h
2t/h 未満
合 計
排出基準
1ng/m3
5ng/m3
10ng/m3
0.1ng/m3
1ng/m3
5ng/m3
適合炉数(割合)
442(72.2%)
603(70.3%)
554(74.7%)
7(100%)
28(100%)
40(100%)
1,674(73.2%)
不適合炉数
170
255
全体炉数
612
858
180
0
0
0
613
742
7
28
40
2,287
環境省「一般廃棄物焼却施設の排ガス中のダイオキシン類濃度等について」データ
99.12.1∼2000.11.30 の間にダイオキシン類濃度調査を行った全国 1401 施設 2287 炉対象
ダイオキシンの排出リスクは小規模な炉、特に間欠運転によって高温で一定の燃焼を保
てないバッチ炉などにおいて高いため(→図 1-2-4)
、国では処理廃棄物量の少ない小規模炉
の設置を抑制する狙いで広域処理の推進という方向性を打ち出している。これは単独では
処理量の少ない市町村が複合して広域的に廃棄物処理を行うことで間欠運転ではなく全連
続運転が可能なだけのスケールメリットを獲得を狙ったものであり、言い換えれば「小規
模多数炉の分散」から「中∼大規模集約炉」へのシフトを誘導する政策と言える。
この動きは、ある程度の処理量を持った全連続炉でなければ難しいとされる廃棄物発電
の特性から考えれば「普及促進要因」であると見なすことが出来るが、ただ、次項でも言
及するように、処理の広域化は自治体レベルでは現実的な障害も多く、スムーズな進展が
望みにくいことは指摘されなければならない。
参 2-8
図 1-2-4.
(炉数)
焼却炉規模別ダイオキシン濃度分布
700
2t/h未満
600
2t? 4t/h
4t/h以上
184
500
91
環境省「一般廃棄物焼却施設の排ガス中の
ダイオキシン類濃度等について」
206
400
300
242
165
100
151
224
200
113
236
213
109
23
0
0.1以下
0.1? 1.0
1.0? 5.0
121
103
1
2
1
29
3
34
5.0? 10
36
10? 40
40? 80
80以上
(ng-TEQ/m3)
1-3.
自治体のエネルギー政策・廃棄物政策の現状
一般廃棄物の処理事業は市町村(または複数の市町村による一部事務組合)の所轄業務
であり、一般廃棄物の焼却に伴う余熱の利用や廃棄物発電などの関連エネルギー事業も原
則としては市町村単位で行なわれることになる。
当然その処理規模には自治体個々で大きな開きが発生し、地方の小規模自治体などでは
一日の処理量が数 t といったレベルの焼却施設にならざるを得ないところも多い。我が国の
廃棄物焼却炉は設置数ベースでは圧倒的に小型のバッチ炉が多く、逆に処理量ベースでは
圧倒的ウェイトが大規模な全連続炉で占められていることがわかり、言い換えれば「3 割の
大型炉で 7 割以上のゴミを処理している」という構造になっている。確かに大型炉は増加、
小型炉は減少の傾向があるとは言え、依然としてその傾向は強い。
参 2-9
図 1-3-1.
2500
(カ所)
都市ゴミ焼却施設数推移
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等について」
平成10年度版
全連続式
准連続式
機械化バッチ炉
固定バッチ炉
2000
272
249
207
214
963
905
875
877
866
281
293
324
335
425
426
435
89
90
91
238
231
243
257
247
164
1500
844
813
783
759
753
365
379
383
377
378
324
438
433
440
445
449
460
474
92
93
94
95
96
97
98
1000
500
0
(年)
図 1-3-2.
250
都市ゴミ焼却施設タイプ別処理能力推移
(千t/日)
全連続式
准連続式
機械化バッチ炉
固定バッチ炉
200
3
150
25
21
2
24
23
2
23
25
2
23
26
2
1
22
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況
等について」平成10年度版
1
1
1
1
20
19
18
17
31
31
30
22
25
29
30
100
133
129
137
142
144
128
140
124
134
120
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98 (年)
50
0
参 2-10
一般的に、処理規模 150t/日程度より上であれば全連続式プラントを導入するケースがほ
とんどであり、都市部であれば例外なく全連続式焼却炉で 500t/日、600t/日といったものも
珍しくない。准連続式は 50t/日から 100t 前後のクラスが多く、機械式バッチ炉であればお
おむね数十 t/日クラス、固定式バッチ炉であれば 10t 未満といったものが大半を占める。
こういった小規模焼却施設では全連続運転を行なわないことから、炉の立ち上げ・停止
に伴うダイオキシン発生の危険性が高まることも指摘されてきた。97 年には当時の厚生省
が「ごみ処理広域化計画」の策定を都道府県に通知し、小規模廃棄物焼却施設の集約化を
都道府県主導で調整にあたることになったが、実際に広域化を推進しようとすると下記の
ような障害が不可避的に発生することから難航している例が多く、廃棄物発電の十分な 200t
∼300t 規模のスケールメリットを持った広域化・処理集約化が進展するにはかなりの時間が
かかることが予想される。
廃棄物処理広域化推進の阻害要因
①複数の自治体から出た廃棄物を集約する場合の運送コストがかさむ
②集約化・大型化した焼却施設の建設に対して地域住民の反対が起きやすい
③隣接する自治体同士の現有焼却炉の導入時期がまちまちであるため、炉の更新
直後といった自治体の場合、広域化に加わりずらい
図 1-3-3.
焼却プラント処理量別比率
68
406
1295
600t/日以上
200t/日以上600t/日未満
200t/日未満
図1-3-1の全連続式焼却施設474件(98年)を200t/日以上と見なし、その中から600t/日以上の施設
を抽出。それ以外は全て200t/日未満とした。
参 2-11
こういった状況の中で、従来の「一般廃棄物処理=市町村管轄」という枠組みから踏み出
した広域化の形として注目されるのが RDF 発電である。
この RDF 発電は固形燃料化した一般廃棄物を発電燃料として利用する方法であり、単独
の市町村単位ではスケールメリット得ることができないが、複数の市町村から集めた固形
燃料を都道府県などが集約して大規模発電を行なえば事業性が高まるほか、固形燃料化し
た廃棄物を民間企業に燃料として卸すという方法も考えられる。
RDF 発電は我が国では 90 年代半ば頃から注目を集め始め、小規模な使用例(小型ボイラ
燃料として使う)が現われたが、90 年代末になると市町村が RDF を供給し、県の企業局や
第三セクターなどが発電事業を行なったり、民間企業と自治体が共同するといった形での
本格的な RDF 発電計画が進行している。
RDF 発電は県、民間企業などが発電事業に参加するという従来になかったスキームを組
むことで、単独ではサーマルリサイクルのスケールメリットを得られず、単純な広域処理
推進も困難であった小規模自治体にとっては有効な方法論のひとつとして考えることが出
来、「単独自治体(組合)による大型プラントでのゴミ発電」という従来のスタイルに加え
て廃棄物発電の新しい選択肢を自治体に与えるものであると言えよう。
表 1-3-1.
国内の一般廃棄物による RDF 発電プロジェクト
茨城県
鹿嶋共同再資源化
センター
参加市町村
22 市町村
福岡 7、熊本 21 市
24 市町村
1 市 2 町、住友金属
町村、電源開発等
他 65 社等
循 環 流 動 床 ボ イ ラ 日量 270t の RDF を RDF 専焼ガス化溶融 都市ゴミ RDF と産
設備概要 (フォスターウィラー製)を 燃 料 と す る 出 力 炉(日立造船製)で日 業廃棄物で発電。
用いて 12000kw を 20600kw の施設。 量 160t で 出 力 は 100t 炉×2 基。発電
出力 3000kw。
5000kw。
効率 30%目標。
発電。
事業開始
2002 年度
2001 年
2002 年 12 月
2001 年 4 月
事業主体
1-4.
三重県
三重県企業庁
福岡県
大牟田リサイクル発電
石川県
石川県安全環境部
関係法令、条例等
廃棄物発電に関わる法令としては、前項でも触れた廃棄物処理、あるいは排ガス規制な
どに関わる様々な法律の他に、発電事業である以上電気事業法などの電気関連法令も関係
してくる。
参 2-12
表 1-4-1.
廃棄物発電に関わる主要法令とその概要
廃棄物処理事業
法令名
概
要
・廃棄物処理法
廃棄物処理法では処理方法に関する様々な規制が定め
・リサイクル法
られているが、特に 97 年からはダイオキシン対策を念頭
・容器包装リサイクル法
において施設そのものの構造・維持管理基準が強化され
・家電リサイクル法
ている。
・建設リサイクル法
・食品リサイクル法など
燃焼室にかかわる構造基準としては
①燃焼室の燃焼ガスが 800℃以上の状態で 2 秒以上滞留
②外気との遮断
③助燃装置の設置
④燃焼に必要な空気を供給するため設備の設置
などが定められており、また、排ガス中 CO の連続的測
定・記録やダイオキシン濃度の年に一度の測定、ばいじ
んと焼却灰の分離排出・分離貯留等が必要である。
違反した場合は使用停止命令・改善命令の対象となり、1
年以下の懲役または 300 万円以下の罰金。
表 1-4-1.
廃棄物発電に関わる主要法令とその概要(続き)
環境対策
・大気汚染防止法
ダイオキシン以外にも硫黄酸化物(SOX)や窒素酸化物
・ダイオキシン類対策特別措置法
(NOX)、一酸化炭素、粉じん、ばいじん等に関して排出
・水質汚濁防止法など
基準が設けられており、ばいじんの場合では「連続式廃
棄物焼却炉」の排出基準は 4 万 Nm3/h 以上の排煙施設に
おいては 0.08 g/ Nm3(特別)か 0.15g/ Nm3(一般)
。
発電事業
・電気事業法
発電の規模・方式等によってボイラー・タービン技術者
・分散型電源の系統連系に関 や電気主任技術者などの有資格者設置が必要。
する技術要件ガイドラインなど 商用系統に接続して売電などを行う場合は接続する系統
の種類に応じて単独運転防止や電圧変動対策などで各種
の保護装置の設置が必要となる。
また、廃棄物の焼却炉に関しては国と自治体とで規制が分かれている。ダイオキシン類
対策特別措置法が対象にしているのは届け出・測定が義務付けられている「火床面積 0.5m2
以上、または焼却能力が 50kg/h 以上」であるが、これ以下の小型焼却炉に関しては都道府
県がそれぞれの条例で規制対象としており、例えば東京都の場合では「火床面積 0.5m2 未満、
または焼却能力が 50kg/h 未満」に関して下表のようなダイオキシン規制を行っている。
参 2-13
表 1-4-2.
東京都の小型焼却炉ダイオキシン規制
区分
ダイオキシン類(ng-TEQ/m3N)
10
平成 13 年 3 月 31 日までに
(平成
14
年
11
月
30 日までは 80)
設置されたもの
5
平成 13 年 4 月 1 日以降に
設置されたもの
ばいじん(g/m3N)
0.25
0.15
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」
自治体の決定事項としてもうひとつ重要なのが分別収集の実施体制である。プラスチッ
クやびん・缶等の容器包装廃棄物をはじめとした廃棄物の分別収集については各自治体(一
般廃棄物収集・処理事業主体)によってその取組み内容も計画時期も異なっている。
この取組みの差はそれぞれの自治体の事情はもちろん、廃棄物量や保有する焼却施設の
性能等によっても異なっているため、「不燃物以外はプラスチックも燃やしてサーマルリ
サイクルする」自治体と、
「プラスチックはもちろん古紙等の可燃物も分別してリサイクル
し、生ゴミはコンポスト化することで焼却対象量を最小化する」自治体とでは廃棄物の焼
却量、発生熱量なども大幅に差があることになり、廃棄物発電の導入可否にも大きな影響
を与える要素になる。
1-5.
国及び自治体の審議会等の審議状況
廃棄物発電に関わる国レベルの審議会としては 1-1 項でも触れた総合エネルギー調査会
などの新エネルギー関連の審議と、ダイオキシン対策に代表される環境関連の審議会が関
わってくる。これらを大まかに整理すると下表のようになる。
表 1-5-1.
国所轄の審議会
所轄
経済産業省
(旧通産相)
審議会名称
総合エネルギー調査会
新エネルギー部会など
審議内容
石油依存の是正、CO2 削減等の観点から新エネ
ルギーとして太陽光・風力などとともに廃棄物
発電の普及を図る。
環境省
(旧厚生省)
中央環境審議会
廃棄物・リサイクル部会など
廃棄物の敵性処理・リサイクル推進に関する方
策を審議し、容器包装リサイクルや家電リサイ
クルなどの推進を提言。
このような国レベルでの審議会に加えて自治体単位でも審議会を設けている例があり、
例えば東京都の場合では「東京都環境審議会」が企画政策・大気騒音・水質土壌という 3
参 2-14
つの部会を設けて環境条例の内容等の審議をおこなっているほか、「東京都廃棄物審議会」
が産業廃棄物処理計画専門部会・廃棄物行政のあり方検討特別部会という 2 つの部会を設
置して都としての廃棄物処理のあり方を提言している。
参 2-15
2.
廃棄物発電の現状
2-1.
我が国における廃棄物発電の導入状況
日本で廃棄物発電が導入された始めたのは 70 年代以降であり、その後約 30 年間に増加の
一途をたどり、2001 年竣工予定分も含めると廃棄物発電のプラント数は 219、発電容量トー
タルで 100 万 kw の大台を突破して 108 万 kw に達している。
プラント数の単年ごとの増加状況(竣工ベース)を見ると 70 年代には年数カ所程度の導
入状況であったものが、80 年代頃から徐々に増勢に向かい、90 年代に入ると年 10∼20 カ所
という年も現れるなど、一般廃棄物のサーマルリサイクル方法として少なくとも全連続式
の大型清掃工場では廃棄物発電が 90 年代には自治体の間にも完全に定着・浸透したことが
伺える。
図 2-1-1.
廃棄物発電・年次別プラント数推移(竣工ベース・竣工予定含む)
18
(件)18
15
16
14
14
13
14
12
13
12
11
12
10
9
10
8
7
8
7
7
6
5
6
4
5
5
5
4
4
3
2
(年)
2001
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1985
1986
1987
1983
1984
1998
1999
2000
1
1
1980
1981
1982
1969
0
2
1
1973
1974
1975
1976
1
2
1977
1978
1979
4
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に作成
一方、発電容量ベースで見ると 90 年代以降の顕著な増加ぶりが一段とはっきりしており、
2001 年度の竣工予定のものをトータルするとその容量トータルは単年としては過去最高の
150MW(15 万 kw)に達している。
このように度廃棄物発電の導入はプラント数や容量ベースでも増加傾向にあることがは
っきりしているが、1 カ所あたりでの平均発電容量も特に 90 年代になってから大型化傾向
参 2-16
が顕著であり、この背景には売電を前提とした大容量廃棄物発電設備が増加したことなど
があると考えられる。
図 2-1-2.
廃棄物発電・年次別容量推移(竣工ベース・竣工予定含む)
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に整理
153.09
148.98
160
(MW)
140
123.94
120
91.4
100
80
49.25
60
38.3
18.76
14.41
18.3
9.5
7
(年)
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1989
1986
1985
3.6
1990
20.5
1984
1983
1982
1981
1978
1979
1977
1976
1975
15.25
11.7
4.7 2
2
1974
1973
11.5
1980
4.5
1.5
1969
0
13
1987
1988
20.55
10.6
47.17
46.61
34.56
28.88
40
20
66.2
63.47
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に作成
図 2-1-3.
1プラント当たり平均発電容量推移
12
(MW)
10.9
10
8.3
8.3
8
7.6
6.2
6
5.1
5.1
3.8
4
2.3
2
2.6
2.1 2.0
4.9
3.8
3.4
3.6
2.7
2.4
2.2
2.0
3.2
2.6
2.3
3.9
4.3
3.6
2.5
2.4
1.4
(年)
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
0
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に作成
廃棄物発電の大型化・売電施設の増加という傾向は旧自治省のデータにも現れている。
参 2-17
1991 年時点ではほぼ半々であった「売電施設と自家消費施設」の割合は 99 年までの 9 年間
で 2 対 1 の割合にまで差が開いており、その間の「売電施設出力トータル」はほぼ 3 倍に増
えており、売電収入は 39 億円から 142 億円と、3.5 倍というペースで増加している。
このように廃棄物発電施設は近年になって急速に「大型・大容量化・売電施設化」の傾
向を強めており、その背景にはダイオキシン対策などの観点から廃棄物焼却の大規模集約
化が叫ばれた影響も考えられるが、大容量化の傾向はダイオキシン問題の深刻化以前から
すでに始まっていることを考えると、やはり少しでも大量の発電を行って売電収入を得る
という経済的要請が強く作用していると言えよう。
図 2-1-4.
売電実施施設・出力トータル推移
旧自治省財政局公営企業課第二課
地域事業エネルギー係 データ
(カ所) 140
742.6
売電実施施設
自家消費のみ
出力トータル
120
100
(MW)
800
700
714.2
600
598.7
538.5
80
500
460.5
127
400
120
60
251.3
264.6
293.0
20
53
56
60
109
300
99
40
60
373.0
62 60
74
86
56
60
59
67
62
63
200
100
0
0
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年)
このように廃棄物発電の「大型化」「売電施設の増加」という傾向が近年の動向の一つで
あるとすれば、もう一つの重要な動きは廃棄物発電の技術バリエーションの多様化という
傾向を指摘しなければならない。
従来、廃棄物発電はストーカー炉あるいは流動床炉といったゴミ焼却炉にボイラーとス
チームタービンを組み合わせたスタイルが圧倒的に主流を占めていた。しかし、これら「従
来型廃棄物発電」に加えて、近年はボイラー+スチームタービンにガスタービンも加えて発
電の高効率化を図ったいわゆるスーパーごみ発電が 96 年の群馬県高浜発電所以降、大阪の
堺市や北九州市などで現れ始め、その一方で廃棄物を固形燃料化して専焼ボイラで発電す
る RDF 発電の構想も国内 4 箇所で建設が進んでいる。
参 2-18
図 2-1-5.
廃棄物発電プラントの炉形式別比率(判明分のみ)
その他
(炉床揺
動炉)
1
溶融炉
6
流動床
27
トータル202工場
ストー
カー
168
(財)日本エネルギー経済研究所資料をもとに作成
スーパーごみ発電や RDF 発電に加えて、現在国内の多くの自治体でガス化溶融炉の導入
も進行している。ガス化溶融炉は 90 年代半ば頃までは「次世代型廃棄物処理技術」と見な
され、導入例もごく限られたものであったが、2000 年頃から中規模自治体等での導入例が
増え始めている。技術的には下表に見るようにガス化炉・溶融炉それぞれに複数の形式が
あり、その組み合わせもメーカーによって若干タイプが異なる。
表 2-1-6.
主要メーカーのガス化炉+溶融炉技術タイプ
メーカー
ガス化炉・溶融炉形式
新日本製鐵 シャフト炉型高温溶融方式
受注・納入件数(カッコ内は竣工・竣工予定年)
釜石市(1979 年)
、茨木市(1999 年)
、習志野市(2003
年)
、大分市(2003 年)
、等 21 件
荏原製作所 旋回流動床+旋回溶融炉
青森 RER(2000 年)
、川口市(2002 年)
、流山市(2003
年)等 9 件(産廃処理含)
三井造船
キルン式ガス化炉+旋回溶融炉 八女西部組合(2000 年)
、豊橋市(2002 年)
、江別
市(2003 年)等 6 件
日本鋼管
シャフト炉高温ガス化直接溶融 日高中部組合(2003 年)
、各務原市(2003 年)
、佐
伯地区組合(2003 年)等 5 件
神戸製鋼所 流動床+旋回溶融炉
中部上北組合(2000 年)
、安芸地区衛生組合(2002
年)
、石巻地区組合(2003 年)
、等 5 件
日立造船
流動床+旋回溶融炉
桜井市(2002 年)
、石川県(2003 年)等 3 件
その他メーカー含めた受注・納入件数合計 66 件
「資源環境対策」2001 年 11 月号資料を元に作成
参 2-19
ガス化溶融炉はどのタイプであっても共通して従来型の焼却炉に較べると下記のような
メリットがあると考えられており、最終処分場の不足やダイオキシン問題で廃棄物処理の
困難性が高まった現在においては高い期待が寄せられている。
ガス化溶融炉のメリット
●廃棄物の自己熱を用いて高温で直接廃棄物を溶融してしまうため、消費電力量が
少ない。廃棄物発電+灰溶融炉の組み合わせの場合でも従来は発電した電力の一
部を灰溶融用に回さざるを得なかったが、ガス化溶融炉によって廃棄物発電の「自
家消費」量が軽減され、売電等に振り向けることが可能になる。
●溶融後の最終残渣が固形化スラグだけであり、焼却灰に較べると大幅に減容化さ
れていることから最終処分場の延命に寄与する。
●還元雰囲気の状態で乾留・ガス化するのでダイオキシン生成がない。
ガス化溶融炉は従来型焼却プラントに較べれば初期投資負担は若干大きいと見られてい
るが、上記のような導入メリットを考えあわせれば今後も導入は加速的に増えていくこと
が十分考えられ、本プロジェクトにおいて 98 年から 2000 年までの 3 年間を「廃棄物ガス化
溶融炉発電技術開発」すなわちガス化溶融炉を使った高効率発電技術の開発に充てたこと
の意味は少なくないと言えよう。
なお、現在の一般廃棄物発電の自治体(都道府県別)分布を見ると下表のように首都圏
と関西圏に集中傾向が著しく、処理量のスケールメリット=ある程度の人口規模が必要であ
るという廃棄物発電の現状がうかがえる。
表 2-1-6.
都道府県別廃棄物発電導入状況
都道府県名
北海道
青森県
岩手県
秋田県
山形県
宮城県
福島県
新潟県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
工場数
11
1
1
2
2
3
4
3
7
2
4
10
都道府県名
千葉県
東京都
神奈川県
山梨県
静岡県
長野県
愛知県
岐阜県
三重県
富山県
石川県
福井県
工場数
13
31
20
1
4
3
17
3
2
1
3
1
都道府県名
滋賀県
京都府
大阪府
奈良県
和歌山県
兵庫県
岡山県
広島県
鳥取県
島根県
山口県
愛媛県
工場数
0
4
23
0
2
11
5
5
1
0
3
2
都道府県名
香川県
徳島県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
合計
工場数
3
0
1
11
0
3
2
2
1
1
0
229
(財)日本エネルギー総合工学研究所資料をもとに作成。2000 年 2 月段階の建設中・計画含む
参 2-20
2-2.
海外主要先進国の廃棄物発電導入状況
海外で最も廃棄物発電の導入が進んでいるのは米国であり、その中でも特徴的なのはプ
ラント数では我が国に及ばないのに対して発電容量のトータルでは約 2.5 倍に達していると
いう点であり、1 プラント当たりの発電容量が大きいという傾向が顕著である。
それ以外の欧州諸国でも、発電容量ベースでは我が国と同程度、ないし若干下回ってい
るものの、プラント数から考えれば及ばないかなりの量に達している例が目立ち、プラン
ト数で見れば廃棄物発電の普及度が高いと言える我が国との発電規模の差が大きい(→図
2-2-1)
。
この廃棄物発電導入状況を、プラント 1 カ所あたりの平均容量で比較すると下表のように
なり、米国はもちろんドイツ、オランダ、スウェーデン等々の国々が 1 工場あたり 20MW
(2 万 kw)から 30MW(3 万 kw)という大型発電設備を備えているのに対して、我が国の
廃棄物発電に「売電施設増加・大型化」の傾向が出て来たと言っても平均で見ればまだ「小
型分散型」の性格が強いことを窺わせる(→図 2-2-2)
。
図 2-2-1.
主要国廃棄物発電導入状況比較
日本
1081
219
オランダ
180
5
スイス
30
スウェーデン
100
100
3
フランス
90
ドイツ
160
1000
50
英国
230
11
米国
発電容量合計
プラント数
2770
113
0
500
1000
1500
2000
2500
(カ所・MW)
3000
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に作成
参 2-21
図 2-2-2.
(MW)
国別平均発電容量比較
40.0
36.0
33.3
30.0
24.5
20.9
20.0
20.0
10.0
4.9
3.3
1.8
0.0
米国
英国
ドイツ
フランス
スウェーデン
スイス
オランダ
日本
(財)エネルギー総合工学研究所データを元に作成
2-3.
関連業界の市場規模
廃棄物発電の年間市場規模は、基本的にはその年に導入された新規廃棄物発電設備の発
電容量に大まかにはリンクすると考えられるが、実際問題として清掃工場の「発電分」と
「ゴミ焼却分」の設備を明確に分けることは困難であり、また、実際には廃棄物発電の市
場動向はゴミ焼却工場の設置規模推移と強く連動することから、廃棄物処理施設自体の市
場も考慮に入れる必要がある。
最近 9 年間の廃棄物発電処理施設マーケットを処理 t 数ベースで見ると表 2-3-1 のように
なる。廃棄物発電が可能な処理 t 数の規模を仮に 100t/日以上と考えれば、この「廃棄物発
電可能施設」は 97 年度まではゴミ焼却施設市場全体のほぼ 7∼8 割を、98 年度以降はダイ
オキシン問題で小型炉はほとんど建設しずらくなったことからほぼ 100%に近いウェイト
を占めており、件数ベースでは毎年 15∼20 件前後、処理 t 数ベースで見ても年間 5000t 前後
がほぼ安定して存在していると言える。
参 2-22
表 2-3-1.
廃棄物処理施設受注動向推移(契約ベース)
総処理 t 数
(件数)
うち 100t 以上の施設
の総処理 t 数(件数)
91 年度
10,290
(65)
8,929
(27)
92 年度
7,585.5
(67)
5,550
(22)
93 年度
5,782
(53)
4,534
(18)
94 年度
10,765
(56)
9,516
(26)
95 年度
6,212
(56)
5,012
(19)
96 年度
4,429
(38)
3,531
(15)
97 年度
6,763
(51)
5,383
(18)
98 年度 99 年度
4,439
7,142
(15) (26)
4,410
3,573
(11) (13)
The Waste Management2000.3.25 号他
100t 以上の大型処理施設の建設価格はこの 9 年間では最も安かったのが 96 年度の
「4318.8
万円/t」
、逆に最も高かったのが 93 年度の「5996.4 万円/t」となっており(データ出典は上
表と同じ)
、1500 万円/t 以上の開きがあるが、それぞれの年度の総処理 t 数に年ごとの平均
建設単価を乗じて市場規模を算出すると下表のようになる。
表 2-3-2.
廃棄物処理施設市場推移(契約金額ベース)
91 年度 92 年度
100t 以上の施設の総 8,929 5,550
処理 t 数
1t 当たり建設単価 4,783.9 5,429.9
(万円)
4,271.6 3,013.6
市場規模総額
(億円)
93 年度 94 年度 95 年度 96 年度 97 年度 98 年度 99 年度
4,534 9,516 5,012 3,531 5,383 4,410
3,573
5,996.4 5,404.9 4,606.6 4,318.8 4,695.6 5,023.9 5,748.1
2,718.8 5,143.3 2,308.9 1,525.0 2,527.6 2,215.6 2,053.8
The Waste Management データを元に作成
このように、ゴミ発電が可能な 100t/日以上の処理施設に限ってもその金額ベースでの市
場規模は少ない年でも 1500 億円強、多い年では 5000 億円という規模に達する巨大市場であ
るということが出来る。
過去の例を見てもわかるように年によってその市場規模の上下動は大きいが、15 前後で
更新が必要と言われるマーケットの性格や廃棄物処理事業の永続的必要性を考えれば今後
も廃棄物発電が可能な 100t/日以上処理施設に限っても年間数千億円程度の市場は安定して
存在し続けると見るべきであろう。
一方、廃棄物発電設備に限定したマーケットの算出は 2-1 項で見た発電容量推移に設備単
価を乗じて大まかな検証が可能となる。各年度の発電容量トータルは下表の通りでありか
ら、この数字に「廃棄物発電開発費補助金」の補助金支給規程にある「廃棄物発電プラントの
売電部分に関わる設備、または 30 万円/kw の小さい方」という数字を援用して kw 当たりの発電
設備建設単価を 30 万円(=MW 当たりの建設単価は 3 億円)と設定して乗じると次のような結
果が得られる。
表 2-3-3.
廃棄物発電施設市場規模推定(竣工・竣工予定含む)
参 2-23
発電容量
(kw)
市場規模総額
(億円)
91 年
92 年
93 年
94 年
28,900
34,600
3,600
86.7
103.8
10.8
95 年
99 年
2000 年 2001 年
46,600 124,000 63,500
91,400 149,000 66,200
47,200 153,000
139.8
274.2
141.6
372
96 年
97 年
190.5
98 年
447
198.6
459
(財)エネルギー総合工学研究所データをベースに算出
このように、廃棄物発電の市場規模も処理施設同様、年によってかなりの変動があるが、
最近 5 年間を平均するとほぼ 300 億円/年の市場規模となる。これは上で算出した廃棄物処
理施設市場規模のほぼ 10%∼15%程度と見なすことが出来るが、今後徐々に進展するであ
ろう廃棄物焼却施設の大規模集約化、廃棄物発電の一層の普及可能性等を考えあわせれば
この市場規模は将来的に拡大すると考えることが出来よう。
2-4.
電力会社の受け入れ状況
電力会社は新エネルギー導入促進に対して協力するという立場から、廃棄物発電(自治
体による一般廃棄物処理)
、風力発電、太陽光発電、自家発電(コージェネレーション、燃
料電池、産業廃棄物含む)から余剰電力を買い取っている。
これは「余剰電力購入メニュー」と呼ばれる制度で、1992 年から国内の電力会社各社が
実施している。この制度では廃棄物発電などからの余剰電力は基本的に電力会社が「全量
購入」することになっており、売電サイドから見れば電力会社側の需要にかかわらず余剰
電力を売電できるというメリットがあり、廃棄物発電導入・普及を経済的にサポートする
上で重要なものになっている。
余剰電力の買い取り価格は電力会社によって若干の差があるが、各社の平均では下表の
通りであり、通年・昼夜を平均すれば大体 8 円/kwh 弱程度のレベルになる。この買い取り
価格はコージェネや燃料電池等、主として民間企業を対象にした購入価格に較べて 2 倍以上
の設定になっており、風力発電の長期契約メニューによる購入単価とほぼ同等のレベルに
なっている(下表 2-4-1、2-4-2、2-4-3 参照)
。こういった購入単価設定は新エネルギー普及
という観点はもちろんだが、それに加えて一般廃棄物処理という公益性や環境負荷低減と
いったメリットを電力会社側が考慮した結果であると見なすことが出来よう。
表 2-4-1.
廃棄物発電(一般廃棄物)からの電力各社の購入価格(単位:円/kwh)
北海道 東北 東京 中部
参 2-24
北陸
関西 中国 四国 九州 沖縄
平
日
夏(冬)季昼間
その他季昼間
休日・夜間等
非安定評価の減額
表 2-4-2.
夏(冬)季昼間
その他季昼間
休日・夜間等
非安定評価の減額
北海道
東北
4.20
4.80
3.80
4.10
2.80
1.70
なし 夏季平日昼
4.30
除燃料電池
8.70
12.80 11.20
8.30 8.00 11.40 10.50
6.50
5.50 2.90
なし なし なし なし
東京
6.10
5.60
2.80
中部
4.57
4.15
2.16
北陸
3.20
2.80
1.60
平日昼 平日昼 なし
4.30 3.80
関西
4.00
3.20
3.00
なし
中国
3.70
3.40
2.10
なし
四国
九州
5.70
5.40
4.90
4.80
2.50
2.40
なし 夏季平日昼
4.20
沖縄
4.80
4.10
2.90
なし
風力発電からの電力各社の購入価格(長期契約メニュー)
北海道 東北
11.60 11.50
購入単価
17
契約期間(年) 17
98.4
98.4
メニュー導入年月
表 2-4-4.
13.79
9.50
5.20
なし
自家発電・コージェネ・燃料電池からの電力各社の購入価格
平
日
表 2-4-3.
10.60 10.70 11.80 12.97 9.80
9.80 9.40 11.30 12.55 9.40
4.50 4.70 4.20 2.16 4.60
なし なし なし なし 平日昼間
3.60
東京
11.70
15
98.5
中部
11.70
17
98.4
北陸
関西 中国 四国
11.10 11.40 11.50 11.50
15 原則 15 15 原則 15
99.10
98.7 98.7 98.5
九州
沖縄
11.50 11.20
原則 15 原則 15
98.10
98.8
自家発電・コージェネ・燃料電池からの電力各社の購入価格
北海道 東北
従量電灯の場合
22.09 21.58
12.88 14.65
業務用電力
夏季
13.31
(高圧)の場合 その他季
9.83 11.11
高圧電力 A の
夏季
10.10
場合
その他季
東京
23.58
21.78
16.41
14.60
13.27
10.86
9.87
中部
22.92
20.84
15.63
14.47
13.15
11.57
10.52
北陸 関西 中国 四国
21.15 23.91 23.92 23.48
13.81
12.55
10.45
9.50
13.32
12.11
10.96
9.96
13.51
12.28
11.55
10.50
15.27
13.88
11.59
10.54
九州
22.65
20.70
15.65
15.40
14.00
12.10
11.00
沖縄
23.24
15.42
14.02
10.33
9.39
4 表とも全て 2000 年 10 月 1 日現在(電気事業連合会データより)
92 年の余剰電力購入メニュー設定以降、電力会社による廃棄物発電からの余剰電力購入
件数及び購入電力量は 2000 年までの 9 年間にほぼ 3 倍に増えており、余剰電力購入という
経済的メリットが廃棄物発電の普及に与えた影響は非常に大きいと評価できる。
参 2-25
図 2-4-3.
廃棄物発電からの余剰電力購入状況
(件)
(百万kWh)
件数
160
2500
購入電力量
142
140
131
122
120
1954
111
100
100
87
80
2063
2000
1757
1500
1510
71
57
60
40
1214
60
642
677
92
93
1000
1057
789
500
20
0
0
94
95
96
97
98
99
2000 (年)
総合エネルギー調査会資料より
2-5.
廃棄物発電コストの現状
廃棄物発電のコスはその発電規模、あるいは焼却規模によってスケールメリットにかな
りの差があり、また従来型の廃棄物発電、スーパーごみ発電、RDF 発電といった発電シス
テムの形態によっても違いがあり、また厳密な意味で「廃棄物処理コスト」と「発電コス
ト」を峻別するのも困難であることから、事業用発電や自家発電のような精密な kwh 当た
り発電単価を求めるのは難しい。
98 年度版「新エネルギー便覧」では廃棄物発電の発電単価として 9 円/kwh∼15 円/kwh 程
度という数値が見られるが、現状ではこのようにある程度広い範囲の発電コストを目安と
して考えることが必要であろう。
いずれにしても 9 円/kwh∼15 円/kwh という発電単価は前項で見た電力会社による余剰電
力購入メニュー(昼夜平均で 8 円/kwh 程度)よりも高いのは事実であるが、もともと採算
性を追求したものではない自治体の廃棄物処理事業で発電を行い、売電収入というメリッ
トを獲得し続けることが出来るかどうかはプラント全体の運営計画にも大きく影響を与え
る。
参 2-26
新エネルギー財団が作成した「廃棄物発電導入促進検討の手引き」では以下の算出条件
で売電収入のメリットを試算している。
表 2-5-1.
売電収入メリットの試算条件
施設規模
100t/日×2 炉
発電容量
3500kw
発電効率
13%(最高ごみ質時)
建設費
120 億円
一般廃棄物処理事業債金利
4.2%
電気事業債金利
4.3%
減価償却
15 年一律定額
売電
高圧(A)年平均単価
人件費
8000 千円/年(発電関係 6 名)
補修費
機械設備の 2%
一般管理費
人件費の 25%
ユーティリティ
1400 円/t-ごみ初電分 2.8%
新エネルギー財団「廃棄物発電導入促進検討の手引き」
以上の算出条件で試算すると建設費の償還金が約 10 億円/年、これ以外の運転経費等が約
8 億円/年となり、一方で売電収入は 2 億円弱/年となることから大まかに見て「プラントの
年間経費の 1 割」を売電収入でカバーしうると考えることが出来る。
この試算条件では発電効率が 13%という設定であったが、高効率化によってこの数字が
アップすれば、自家消費電力が同程度と仮定すればそれは売電量の増大に直結することに
なり、自治体の経済的メリットにダイレクトにはね返ってくることになる。
廃棄物の処理量は処理対象区域の人口や過去の排出量推移等から決定するものであり、
処理事業者の移行で変動させる余地はないということを考えれば、同じ量の廃棄物からど
の程度の効率で発電し、売電できるかは自治体財政にとっても大きな影響を与える要素と
なることは間違いなく、その意味でも本 PJ の高効率廃棄物発電の普及が廃棄物処理行政に
与える好影響が期待される。
参 2-27
2-6.
廃棄物発電導入インセンティブに係る各制度
すでに触れたように、廃棄物発電は化石燃料消費の抑制・CO2 削減に寄与する新エネル
ギーと位置付けられており、公的な政策においても様々な導入支援策が用意されている。
支援・助成策は大まかには発電・エネルギー事業としての側面は経済産業省が、廃棄物
処理事業としての側面は環境省が管轄する形になっているが、これ以外にも総務省管轄の
起債に関する措置等がある。
廃棄物処理プラントの建設や廃棄物発電設備の導入は巨額の設備投資を伴うものだけに、
市町村の財政に与える負担も大きく、自己財源だけでは大きな困難を伴うことから、廃棄
物処理施設・廃棄物発電設備建設に際してこれらの支援・助成制度の重要性は自治体にと
っては極めて高い。
国内の廃棄物発電に対する助成・支援策の主なものを整理すると次頁の表のようになる。
表 2-6-1.
廃棄物発電に対する主な助成・支援策
制度名
概 要
地域新エネルギー導入促進補助 地方公共団体が主体的に行なう新エネルギー導入促進事業に
対策費
対する経費補助。
廃棄物発電の場合は発電効率 20%以上、RDF 等の場合は 28%
以上が対象となり、補助率は事業実施に必要な経費(設計費・
機械装置購入・据付等)の 2 分の 1 以内。
(啓発事業の場合は定額 2000 万円)
廃棄物発電開発費補助金
廃棄物発電から電力会社に売電を行なう事業に対し、その売電
規模の拡大を促進するために発電設備導入経費を補助。
補助率は廃棄物発電プラントの売電部分に関わる設備、または
30 万円/kw の小さい方を元に、費用の 10%。(発電効率 10%以
上であることが必要)
環境調和型エネルギーコミュニ 廃棄物発電では主として RDF 発電、それ以外に GT を用いたコ
ケーション形成促進のためのモ ージェネレーション等も対象となる。
施設設置に対してはシステム設計・施設の製作・工事据付等に
デル事業補助費
要する費用(対象費)の 15%以内。
また、システム計画や分析費、委員会費用等の事前調査に必要
な費用に関しても定額補助(上限 3000 万円)がある。
廃棄物処理施設整備費補助金
基本的には廃棄物処理に関わる経費のみを対象とした補助金
であり、発電関連経費は対象とならないが、RDF 発電設備に関
しては燃焼ボイラ等の設備が補助率 4 分の 1 の補助対象とな
る。
廃棄物発電に対する主な助成・支援策つづき
起債措置
上記の廃棄物処理施設整備費補助金を受ける事業に関して、一
参 2-28
般廃棄物処理事業債の起債が認められている(国庫補助を除く
部分の 75%∼95%)
。
発電事業に対しては電気事業債の起債も認められている。
ごみ固形燃料発電事業に対する RDF 発電事業に関する財政措置で、焼却・発電・焼却灰処理施
財政措置
設等の 10%について一般会計出資債(電気事業債)の対象とす
るとともに、当該一般会計出資債の元利償還金の 50%について
特別交付税措置が講じられる。
2-7.
電力自由化の廃棄物発電に対する影響
バブル崩壊後、93 年頃から海外と比べた時の日本の電力料金の内外価格差や、エネルギ
ーコストの高さに影響されて低下する我が国産業界の国際的コスト競争力などが経済界な
どで相次いで指摘され、これらの声に押されるような形で 95 年に当時の通産省が電力の卸
売事業自由化を打ち出し、我が国で本格的な IPP(独立電気事業者)マーケットが立ち上が
った。
その後、電力の自由化は卸売だけではなく小売部門にも拡大し、すでに大口電力需要者
(2 万 V 特別高圧系統以上で受電する使用規模 2000kw 以上の需要家)への電力供給は既存
の電力会社以外からの参入が可能になったことで小売部門全電力需要量の 3 分の 1 程度自由
化されたが、今後この自由化枠は継続的に拡大することも十分考えられる。
こういった電力自由化の動きによって考えうる廃棄物発電事業の今後の可能性として①
IPP としての廃棄物発電事業の可能性
②電力小売事業者としての廃棄物発電の可能性
という 2 つの方向性について考察する。
IPP としての廃棄物発電事業の可能性
IPP(独立電気事業者)として廃棄物発電が成立するためには電力の販売先である電力会
社から「長期・安定的」電源として認められた上で、電力会社側の給電指令に対応した電
力供給が求められ、しかも他の IPP に対して価格的競争力を持たなければならない。
こういった条件を廃棄物焼却工場に求めるのは不可能に近い。廃棄物発電の出力には炉
の燃焼状態によって不可避的に上下動が発生するし、廃棄物焼却炉の稼動よりも発電施設
のオペレーションを優先すること自体、廃棄物処理事業では考えられないと言って良い。
IPP としての可能性があるとすれば市町村から集められた RDF を燃料として県などが発
電を行う形、言い換えれば「発電専業」であることが必要になる。RDF 発電の場、施設の
参 2-29
性格自体が火力発電施設としての側面を強く持ち、発電効率などの点でも 15%前後と言わ
れる従来型の廃棄物発電にくらべると 25%程度、将来的には 30%前後が可能であると見ら
れていることから価格競争力という点でも従来型に比べるとはるかに高い。
現在のところ RDF 発電設備は固形燃料の供給体制と発電がフルに稼動している例が国内
にほとんどなくいことから具体的な検証は難しいが、今後 RDF 発電の一層の高効率化が進
展すれば RDF 発電事業者が IPP 市場に参入する可能性は考えられ、その意味でも RDF 発電
の高効率化技術の普及は大きな意味を持つと言える。
電力小売事業者としての廃棄物発電の可能性
電力小売事業の自由化は 2000 年に大口ユーザーに対しての供給が自由化されたというこ
ともあってまだ自由化後の期間が短く、現在の参入例は自ら発電所を保有するという形態
よりも、企業の自家発電の余剰電力などを集めて販売するというスタイルが中心となって
いる。
しかし、すでに小売事業参入に向けて新しい発電所を建設する構想も幾つか散見され、
今後は「専用の発電所保有事業者」が電力小売市場に参入してくる可能性が高く、RDF 発
電などの「専用発電所」であれば小売事業参入のチャンスもあると考えることも出来る。
ただ、価格が決定すれば 15 年程度の長期にわたって安定した事業展開を見込める IPP と
異なり、小売り事業は電力会社との将来的な価格競争という不安定要素が不可避的に存在
することになる。
実際、2000 年 3 月の改正電気事業法から始まった小売部門の自由化、は電力会社側も同
年の秋には各社 5%程度の値下げを発表するといったような措置に出ており、このコストダ
ウン競争は小売自由化拡大に伴って今後とも激化すると考えられる。
このような流れは電力自由化の本来の目的に沿ったものであるのは確かであるが、参入
事業者側からこういったコストダウン競争は将来的に不透明な事業リスクとして存在する
ことになる。RDF 発電は従来型の廃棄物発電にくらべれば発電事業者としての性格が強い
とは言え、廃棄物処理の一環という側面を持つこともまた事実であるから、こういった事
業リスクの存在する小売事業に廃棄物発電がマッチするかには疑問が残ると言える。
参 2-30
3.
当該技術分野の開発トレンド
3-1.
本 PJ の概要
本 PJ は高効率廃棄物発電技術の開発を目的としたものであるが、その取組みは大きく以
下の 2 つの取組みに分けられる。
①従来型廃棄物発電の高効率化を目指した要素技術開発とパイロットプラント試験
②ガス化溶融炉を用いた廃棄物発電技術開発
つまり、最も普及しているストーカー炉あるいは流動床炉による高効率廃棄物発電と、
今後普及が見込まれるガス化溶融炉による発電という 2 つの発電技術の開発を目指したも
のであり、この 2 つの開発を各開発項目にブレイクダウンすると下記のように整理される。
従来型廃棄物発電の高効率化
要
素
技
術
開
発
①高温高効率燃焼炉の開発
高温・高圧蒸気を得るための焼却炉をストーカー炉・流動床炉を対象に開発
②耐腐食性スーパーヒーターの開発
塩素系ガスやアルカリ溶融塩などによる腐食の発生しずらいヒーターの開発
とその試作
③環境負荷低減技術の開発
高温燃焼にマッチしたコンパクトで効率的な排ガス処理装置の開発
パイロットプラントによる実証試験
①パイロットプラントによる実証試験
神奈川県津久井郡に 50t/日、800kw のパイロットプラントを建設し、蒸気温
度 500℃、蒸気圧 9.8MPa(100kg/cm2)条件でスーパーヒーターや設備の信頼
性を確認
②最適トータルシステムの研究
最適な発電システムの検討、ならびにガス化溶融炉発電の FS 調査など
廃棄物ガス化溶融炉発電技術開発
①蒸気温度上昇のための技術開発
溶融炉の排ガスによるスーパーヒーター腐食性を評価し、脱塩素技術やセラ
参 2-31
ミック式高温空気加熱器等を開発
②排ガス再加熱回避のための技術開発
排ガスの再加熱による熱損失回避のための低温脱硝装置を開発
③自己熱溶融限界発熱量提言のための技術開発
ごみの低カロリー化に対応し、安定した自己熱溶融のための廃棄物供給シス
テムの開発
④外部燃料投入量低減のための技術開発
化石燃料投入量低減と熱分解ガスの高カロリー化を図り、ボイラー効率を向
上させるための廃プラスチックの吹き込み技術開発
⑤廃棄物発電技術動向調査
内外の廃棄物発電を取り巻く環境や関連技術動向の調査
以上のような開発項目を 10 年間にわたって行なったわけであるが、そのスケジュールは
下表の通りである。
表 3-1-1.
研究開発スケジュール
91
93
94
95
96
97
98
99
2000
評 価
流動床燃焼炉の開発
92
中 間
高効率廃棄物発電技術開発
①高温高効率燃焼炉の開発
ストーカー燃焼炉の開発
②耐腐食性スーパーヒーター材料の開発
③環境負荷低減技術の開発
パイロットプラントによる実証実験
①パイロットプラントによる実証実験
②最適トータルシステムの研究
廃棄物ガス化溶融炉発電技術開発
本 PJ のポイントの一つであるパイロットプラントは神奈川県津久井郡広域行政組合の廃棄
物処理施設として実際に運用に供したものであり、その概要は下表の通りである。
参 2-32
表 3-1-1.
パイロットプラント概要
処理規模
発電機出力
設置場所
炉型式
発電効率
排ガス処理
蒸気条件
3-2.
50t/日×1 基
800kw
神奈川県津久井郡城山町原宿 5-26-48
1 回流ストーカー炉
約 12%(ごみの発熱量を約 2800kcal/kg として)
バグフィルタ+半乾式有害ガス処理装置
500℃ 9.8MPa(100kg/cm2)
〈ボイラ出口条件〉
当該技術分野の開発トレンドと当該研究開発の位置づけ
本 PJ の大きな開発目標の一つが高温・高圧の蒸気を発生させて高効率の発電を行ない、
しかも耐腐食性の高いスーパーヒーターを開発することにあったのはすでに述べた通りで
あるが、この背景には従来の廃棄物発電では蒸気を高温・高圧にするとヒーター等の高温
腐食が発生するため、その防止策として発電効率を犠牲にしても蒸気の温度や圧力を抑制
せざるを得なかったという経緯がある。
本 PJ における高温・高圧蒸気の目標数値 500℃・9.8MPa(100kg/cm2)というレベルを過去
の廃棄物発電と時系列で比較したものが次頁の図 3-2-1 である。
このグラフは蒸気温度・蒸気圧それぞれの最高スペック数値を持つ廃棄物発電プラントを示し
ているが、これを見ると豊橋市資源化センターの 290℃という数字が 7 年間、枚方市・穂谷川工
場の 300℃という数字がやはり 7 年間の長きにわたって最高値の座を“維持”しており、上でも
触れたように、高温腐食防止のために蒸気温度を抑制せざるを得なかったという状況がこの時期、
続いていたことが読み取れる。
その後、90 年代半ば頃から急速に蒸気温度の最高値は上昇しているが、それでも本 PJ の 500℃
という数字はそれまでの最高値であった十勝環境複合事務組合の 400℃というレベルから大き
くアップしたものであると言える。
一方、蒸気圧について見ると本 PJ の 100kg/cm2 というスペック(グラフ内では kg/cm2 を ata
として表示してある)はそれまでの最高値であった 40 kg/cm2 から飛躍的に上昇したことになり、
高温・高圧蒸気という廃棄物発電の高効率化に不可欠な 2 つの条件においてそれまでの技術レベ
ルより大幅に上昇していることが確認できる。
参 2-33
図 3-2-1.
北海道・十勝環境
複合事務組合
(400℃・40ata)
蒸気温度・蒸気圧最高値推移
550
蒸気温度
東京都・
光が丘工場
(24ata)
500
110
埼玉県・
東部清掃組合
(380℃・37ata)
(℃)
(ata)
100
蒸気圧
90
450
80
東京都・多摩川工場
(240℃・22ata)
400
枚方市・
穂谷川工場
(300℃)
豊橋市・
資源化センター
(290℃)
350
70
60
50
津久井郡
広域行政組合
40
(500℃・100ata)
-NEDOパイロットプラント30
300
東京都・
太田第一工場
(31ata)
250
200
東京都・葛飾工場
(277℃)
20
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
10
1969
150
(年)
(財)エネルギー総合工学研究所データのスペックを元に整理
同じように発電効率の推移をグラフ化したものが図 3-2-2.であるが、本 PJ のパイロッと
プラントは処理規模が 100t/日と小さく、発電効率は 12%であることからこのグラフの中で
は最高値保持プラントとしては現れてこない。
図 3-2-2.
発電効率最高値推移
25.00
埼玉県東部清掃組合
(20.64%)
(%)
東大阪市・第三工場
(11.50%)
20.00
東京都・葛飾工場
(8.26%)
15.00
10.00
堺市・クリーンセンター
(21.10%)
大阪市・住之江工場
(15.77%)
東京都・世田谷工場
(3.82%)
5.00
京都市・東工場
(11.01%)
横浜市・港南工場
(5.70%)
(財)エネルギー総合工学研究所データのスペックを元に整理。
尚、1980年に大阪府茨木市環境衛生センターで12.80%という発電効率データがあ
るが、これは溶融炉であるため、本グラフには反映されていない。
0.00
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
1969
(年)
図 3-2-1・3-2-2 ともに(財)エネルギー総合工学研究所データのスペックを元に作成
3-3.
本 PJ の開発目標・開発成果と技術的課題
前項でも触れたように、従来型廃棄物発電の高効率化を目指した開発においては耐腐食
参 2-34
性の高いスーパーヒーター開発によって蒸気温度 500℃、蒸気圧 100 kg/cm2 という数値目標
が設定されていたが、パイロットプラントにおいてはこの蒸気条件のもとで安定した運転を実現
している。パイロットプラントはごく小規模なことから 12%という発電効率であったが、この
蒸気スペックを大型炉であてはめると、ほぼ発電端効率 30%に相当する。
パイロットプラントでの実証運転は 2 年間 13800 時間にのぼるが、この間にスーパーヒーター
の腐食による減肉量は試験材の各材料ともに最大で約 2mm 程度であり、1 年では 1mm 以下のレ
ベルにとどまったことから、従来型廃棄物発電の蒸気温度・蒸気圧を従来より一段とアップさせ、
高効率発電を実現できる技術的なメドがほぼ確立したと言える。
一方、ガス化溶融炉による高効率廃棄物発電技術については上述のような実証プラントの建設
は行なわれていないが、3-1 項で整理した各要素技術の研究成果を最適化させて組み合わせ、実
機規模での数値シミュレーションを行なった結果、送電端効率と処理単価を指標として計算する
と 600t/日程度の大型炉でも従来型廃棄物発電(ストーカー炉+別置灰溶融炉)より有利であるこ
とが確認されている。
ガス化溶融炉は本 PJ スタート時点では国内には製鉄会社の高炉技術を応用した直接型溶融炉
が存在しただけであり、実質的にはほとんど普及していなかったが、本 PJ 開発最終年度であっ
た 2000 年に福岡県八女で初のキルン式ガス化溶融炉が稼動し、その後も青森県や愛知県などで
導入例が増え始めたことで一気にマーケットが形成されつつあり、すでに廃棄物処理市場におい
てはストーカー炉や流動床炉といった既存技術に伍して現実的な選択肢となりつつある。
3-4.
①
他の技術との競合状態
競合する発電技術に関する考察
廃棄物発電は炉の型式(ストーカー炉・流動床炉・ガス化溶融炉)や燃焼廃棄物の違い
(廃棄物直接焼却・固形燃料化のうえでの焼却)
、あるいは他のエネルギー機器との組み合
わせ(スーパーごみ発電など)はあっても、根本的には焼却熱(あるいは溶融熱)で高温・
高圧スチームを生成し、それを蒸気タービンに送るといういわゆる BTG 発電(ボイラー・
タービン・ジェネレーター)であり、この基本技術から大きく異なる廃棄物発電は存在し
ないと言って良い。
参 2-35
図 3-4-1.
廃棄物発電技術の整理
ストーカー炉
ストーカー炉
流動床炉
回転型ストーカー炉
バブリング型
外部循環
循環流動床
内部循環
廃棄物燃焼
ガスタービンリパワリング(スーパーごみ発電)
直接型溶融方式(シャフト型)
ガス化溶融炉
直接型溶融方式
流動床方式
キルン型溶融方式
熱分解ドラム型
プッシャー型溶融方式
廃棄物固形燃料燃焼
RDF 発電
総合エネルギー調査会資料等を元に作成
言い換えれば、廃棄物のサーマルリサイクル技術としてはごく小規模な余熱の回収利用
などを除けば廃棄物発電以外に有力な選択肢はないとも言え、上に整理した様々な技術の
中から自治体がそれぞれの事情やニーズに応じて選択するという形になる。
ただ、これらの廃棄物発電技術に共通する短所の一つがスケールメリットの問題で、一
日の処理量が 100∼200t 以上でなければ実際上は高効率の廃棄物発電を行なうことは困難
であった。RDF 発電は処理量の少ない自治体が廃棄物を固形燃料化するだけで、焼却・発
電は別の事業体が行なうケースが多いという点で「小規模自治体向け」という見方もある
が、現実問題としては相当の数の自治体が RDF 供給に参加しなければ発電事業としての採
算性が低いのも事実であり、その意味では従来型 BTG 発電やガス化溶融炉などと同様にス
ケールメリットが要求される発電方法であると言える。
NEDO では 2001 年度より、小規模自治体での高効率廃棄物発電を普及させるための技術
開発として、スチームタービンを用いない「高効率廃棄物ガス変換技術」をスタートさせ
た。これは廃棄物を熱分解してガス化し、そのガスでガスエンジン発電を行なうというも
ので、これが実用化すれば技術タイプとしては初めて BTG タイプ以外の廃棄物発電技術が
現れることになる。
ただ、この技術開発は小規模自治体向けの廃棄物発電を念頭に置いたものである以上、
参 2-36
中∼大規模自治体向けである従来型 BTG 発電やガス化溶融炉発電と競合するという性質の
ものではない。
図 3-4-2.
廃棄物
高効率ガス変換発電技術開発イメージ図
熱分解
顕熱回収
ガス改質
ガス精製
(残渣溶融)
水蒸気・空気・
酸素等
発電
(GE 等)
スラグ・メタル
(再資源化)
NEDO「高効率廃棄物発電技術開発の取り組み」資料より
このように考えてくると、少なくとも廃棄物発電というマーケットの中では自治体の規
模やニーズに応じて様々な選択肢があり得るものの、実質的にはそれらが統合して廃棄物
発電という一つのマーケットを形成していると言え、別の言い方をすれば、一般廃棄物の
サーマルリサイクルという領域で廃棄物発電には「共存技術」はあっても競合技術は存在
しないと表現することが可能である。
②
競合する廃棄物処理技術に関する考察
廃棄物のサーマルリサイクルというマーケットに限って考えれば現状ではほとんど競合
技術が存在しないものの、
「廃棄物処理」という広い概念で捉えた場合、廃棄物発電に関し
ては「マテリアルリサイクル」あるいは「リユース」との整合性という問題が浮上してく
る。
1995 年に制定され、2000 年 4 月に全面施行された「容器包装リサイクル法」ではガラス
や金属缶などの不燃素材容器と並んで、ペットボトルや発泡スチロールをはじめとしたプ
ラスチック容器についても分別回収→リサイクルを推進することをうたっている。
現在のところ、プラスチック容器の分別回収・リサイクルの実施自治体は金属缶やガラ
スびん等の不燃物に較べれば低いウェイトにとどまっているが、旧厚生省が各自治体の分
別収集計画ベースで取りまとめた見通しでは今後着実に伸びることが予想されている。
参 2-37
表 3-4-2. 容器包装廃棄物の種類別分別回収実施状況と見通し(自治体数比率 単位:%)
容器包装分類
98年度
無色びん
57.6
66.4
85.7
88.1
90.2
92.6
92.7
茶色びん
57.7
66.5
86.1
88.5
90.5
92.8
93.0
その他びん
55.2
65.0
84.5
86.9
89.1
91.8
92.2
24.7
29.5
36.4
49.1
51.7
99年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度
紙製容器包装
ペットボトル
31.3
44.9
78.0
82.8
86.5
90.6
91.6
プラスチック製容器包装
-
-
41.5
49.0
56.6
67.3
70.2
うち白色トレイ
-
-
29.6
34.1
38.5
44.4
46.6
スチール
79.6
83.3
96.7
97.2
97.8
98.0
98.1
アルミ
80.0
83.7
96.9
97.4
98.1
98.2
98.2
69.7
72.7
75.9
81.2
82.0
67.3
70.4
74.5
80.2
81.2
段ボール
紙パック
34.4
47.2
旧厚生省「容器包装リサイクル法に基づく平成 12 年度以降の
5 年間についての分別収集見込み量の集計結果等について」
(99.9)より
分別収集によるマテリアルリサイクルないしリユースの推進は国の廃棄物政策に沿った
ものであり、1-2 項でも触れたように廃棄物対策の優先順位としてはサーマルリサイクルよ
りも上位に位置付けられる以上、容器包装の分別収集・リサイクルの実施自治体が増加す
ること自体には問題はない。
しかし、ゴミを廃棄物発電の「燃料」として考えた場合、特にプラスチックなどはその
焼却カロリー量が高いことから蒸気の高温化・発電の高効率化に寄与する部分が大きく、
プラスチックが分別収集の実施によって焼却対象廃棄物から除かれることは、高効率廃棄
物発電の実施という観点から見た場合決してプラスに作用しないというジレンマが発生す
ることになる。
仮に、容器包装や古紙等の分別収集によって一般家庭から排出される廃棄物からプラス
チック類と紙類が大幅に減ったとすれば、「燃料」の量そのものももちろんだが、熱量とい
う点でも高効率の廃棄物発電を困難にすることは間違いない。
下の図は前掲の表をグラフ化したものであるが、この見込みによれば 2004 年時点でペッ
トボトルは 9 割以上、プラスチック製容器包装は 7 割の自治体が分別収集する、言い換えれ
ば「燃やさなくなる」ことが考えられ、こういった動きが高効率廃棄物発電の普及にも少
なからぬ影響を与えることは避けられない。
参 2-38
図 3-4-3.
容器包装廃棄物種類別・分別収集実施自治体比率見込み
容器包装分別収集実施自治体比率見込み
100.0
(%)
80.0
60.0
40.0
20.0
98年度
99年度
2000年度
2002年度
2003年度
2004年度
2001年度
0.0
無色びん
その他びん
ペットボトル
うち白色トレイ
アルミ
紙パック
出典:表 3-4-2 と同じ
一般的な廃棄物種類別の焼却熱量は表 3-4-4 に掲げた通りであり、一般雑芥であれば 3500
∼5000kcal/kg、生ゴミなどが含まれた混合雑芥では 1500∼2500 kcal/kg とされる。
一方、本 PJ パイロットプラントでの設計基準となったごみの焼却熱量は 2500kcal/kg であ
るから、焼却熱量の高いプラスチックなどが分別収集の対象となり相対的に生ゴミなどの
比率が高くなると高効率発電のための熱量確保という点で問題が出る可能性がある。
表 3-4-4.
分類
廃棄物タイプ別焼却熱量
内容・重量%
一般雑芥
性質
灰分(%)水分(%) 熱量(kcal/kg)
木屑、紙屑、綿屑、繊維屑、廃プラスチック、 5∼10
ゴム屑等、高可燃性廃棄物の混合物
雑芥
一般雑芥に厨芥を含む可燃性廃棄物の混合物。 10∼15
一般雑芥が 80%以上、厨芥が 20%未満
混合雑芥
一般雑芥に厨芥を含む可燃性廃棄物の混合物。 5∼10
一般雑芥が 50%以上、厨芥が 50%未満
厨芥
動・植物性廃棄物
3∼5
動物屍体・汚物 動物の屍体、臓器、汚物(糞尿)
3∼5
高分子系
ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS 樹脂、ポ 1∼20
リスチレン、メラミン、フェノール樹脂、ベー
クライト、ポリエステル
廃油
ガソリンスタンド廃油、車両整備廃油、鉄工所 1 以下
廃油
10∼15
3500∼5000
20∼30
3000∼4000
40∼60
1500∼2500
60∼75
65∼85
0∼10
500∼1500
500∼1500
5000∼10000
0∼20
6000∼11000
焼却炉メーカーI 社資料より抜粋
参 2-39
本 PJ の中で 98 年に実施した「廃棄物発電に関する動向調査」のアンケート結果ではごみ
の発熱量に関して下記のような結果となっており、回答自治体(組合)のごみ発熱量平均
は約 2000kcal/kg で、パイロットプラントでの設計基準である 2500kcal/kg をすでに下回って
いる。値自体は微増傾向にあるものの、今後分別収集・リサイクルが推進・徹底するとい
う想定に立てば、ごみの焼却熱量が減少することも考えられる。
表 3-4-5.
ごみ発熱量推移
有効回答数
最大値(kcal/kg)
最小値(kcal/kg)
平均値(kcal/kg)
1995 年度
100
2,820
900
2,054
1996 年度
120
2,977
964
2,057
1997 年度
128
3,275
1,002
2,089
「廃棄物発電に関する動向調査」より
本来、分別収集・リサイクルと廃棄物発電とは「競合技術」と位置付けられる性質のも
のではないが、焼却熱量という要素を考えた時、自治体が分別収集を徹底すればするほど
高効率廃棄物発電には取組みずらくなるという意味では解決困難な二律背反性を内包した
関係にあるのは否定できない。
3-5.
海外の高効率廃棄物発電関連プロジェクト
第二章でも見たように、海外での廃棄物発電の傾向は特に米国やスウェーデン、オラン
ダなどで 1 プラントあたりの平均発電容量が数万 kw クラスと大型であり、
「小規模多数の
発電プラント分散」傾向が強い我が国とは大きくその構造が異なっている。
また、代表的な廃棄物発電プラントのスペックを見ると、蒸気温度は 400℃前後、蒸気圧
も 50kg/cm2 前後と、我が国の既存の廃棄物発電プラントと比べても最高レベルの蒸気条件
を達成しているうえ、ドイツの例のように、本 PJ で開発目標とした 500℃・100kg/cm2 とい
うレベルも超えているものも存在する。
また、その処理規模が数千 t/日クラスのものが珍しくないという特徴が見られ、高温・高
圧の蒸気に加えて処理量のスケールメリットを生かして大型発電容量の確保を可能にして
いることが伺える。
参 2-40
表 3-5-1.
国名
海外の廃棄物発電プラント代表例
工場名
米国
North Country Regional RR Fac.
Wheelabrator North Broward
Wheelabrator South Broward
SEMASS WTE Facility
Southeast Resouce Recovery
Greater Detroit RR Facility
Essex Country RR Facility
Hempstead/Westbury
Westchester RESCO
Marion Country Solid WTE Fac.
Fairfax Country
イギリス London-SEL CHP
イタリア Verona
オランダ Moerdijk
Zurich II-Josefstrasse
スイス
スウェーデン Goteborg
スペイン Madrid
ドイツ
Munchen-Sud IV・V
フランス Toulon
ベルギー Bruxelles
焼却量
蒸気条件
発電出力 運開年
(t/日) 圧力(kg/cm2) 温度(℃) (kw)
1800
53.7
398.9
61,000
1989
64.3
448.9
66,000
1991
750×3
60.8
440.6
66,000
1991
750×3
2700
48.0
400
78,000
1988
2,250
60.8
440.6
60,000
1985
3,300
64.3
440.6
65,000
1989
47.1
401.7
70,000
1990
900×3
60.1
398.9
72,000
1989
835×3
60.8
440.6
60,000
1984
750×3
46.9
370.0
78,000
1986
275×2
63.2
443.3
130,000 1990
680×4
46.9
395
33,000
1994
696×2
53.1
380
22,000
1997
250×2
102.0
400
145,000 1996
636×3
450
37.0
420
16,600
1978
40.0
400
35,000
1995
530×2
46.9
425
3,000
1995
220×3
181.0
540
125,000
1969.71
各 960
42.8
380
13,700
1984
320×2
40.8
390
51,000
1984
550×3
(財)エネルギー総合工学研究所データをもとに、米国については蒸気条件の判明している 6 万 kw 以上の
プラントを、それ以外の国については同様に蒸気条件の判明している発電用量最大のプラントを抽出。
上表の中で、例えば米国の SEMASS プロジェクトの例では、廃棄物から金属等を除いて、
石炭の 3 分の 1 程度の熱量を持った加工ゴミ(RPF= Processed Refused Fuel)を燃料とする
ことで、発電効率 24%を達成している。この SEMASS の例などは完全に廃棄物処理ではな
く
「廃棄物からのエネルギー回収」を第一義的に考えた施設と言え、
受け入れ廃棄物の 78.8%
をエネルギーとして回収している。
また、米国などの廃棄物発電プラントでは一般廃棄物に加えて産業廃棄物を混焼してい
るケースも存在しているが、米国の場合、産業廃棄物の法的な扱いが州によってかなり差
があるため、州の規制によっても影響を受ける部分がある。
例えば、カリフォルニア州の場合は家庭ゴミに加えて一定量までの産業廃棄物について
市が処理事業者と契約して処理する責任を持ち、それ以外の産業廃棄物については排出事
業者自身が自らの責任で処理業者と契約するという形をとっている。これに対し、ニュー
ヨーク州の場合は家庭ゴミに関しては自治体が、事業系ゴミに関しては排出者が処理責任
を持つという、比較的日本に近い形になっているなど、州によって家庭ゴミと産業廃棄物
の位置付けや処理責任の範囲がかなり異なる。
参 2-41
4.
本 PJ に期待される波及効果
4-1.
当該技術が実用化された場合の環境面の影響
高効率廃棄物発電技術が実用化・普及した場合、想定される環境面での波及効果として
まず考えられるのが CO2 の削減効果である。廃棄物の焼却には不可避的に CO2 の排出が伴
うが、廃棄物発電を導入し、しかも発電効率を高めることでそれに相当する火力発電用化
石燃料を削減したと考えるとその効果は非常に大きい。
廃棄物発電による CO2 削減効果試算例として、180t/日の焼却炉で 2372kw の発電を行なっ
た場合、及び国の新エネルギー導入目標(最新の見通しでは 417 万 kw だが、この試算では
500 万 kw)が達成された場合の結果は下記のようになる。
表 4-1-1.
廃棄物発電による CO2 削減効果試算例
発電規模
ごみ焼却量
発電の有無・方式
2,372kw
5,000,000kw
180t/日
379,430t/日
単純焼却
ストーカー炉/分離型灰
単純焼却
ストーカー炉/分離型灰
(発電なし) 溶融炉発電方式
(発電なし)
溶融炉発電方式
1,436,886t
1,436,886t
累積焼却量(25 年)
3,029(百万 t)
3,029(百万 t)
113.24GWh
238,700 GWh
累積売電電力量(25 年)
24,660kl
換算重油節約量(25 年)
51.99(百万 kl)
CO2 削減量(25 年)
19,800(t-C)
41.68(百万 t-C)
CO2 正味発生量(25 年) 343,700(t-C) 323,900(t-C) 724.5(百万 t-C) 700.9(百万 t-C)
5.8%
5.8%
単純焼却基準に対する
基準
基準
CO2 削減率
796
1,667,000
CO2 削減量(1 年)
注 1)平均発電効率 17%(400℃×40kg/cm2)
、ごみ発熱量 1600kcal/kg とした場合。
注 2)CO2 排出原単位は単純焼却で 239.2kg-C/生ゴミ t、重油燃焼で 801.6kg-C/kl。
NEDO「新エネルギー技術開発関係データ集作成調査」平成 11 年度
より
上記試算では 500 万 kw の廃棄物発電が導入された場合の 1 年間の CO2 削減量を炭素換算 t
(=t-C)で 166.7 万 t-C としている。
表 4-1-2.
エネルギー起原 CO2 排出量推移(単位・炭素換算百万 t)
年度
CO2 排出量
対 90 年伸長率
90 年
287.1
100.0
95 年
310.5
108.2
96 年
314.6
109.6
97 年
313.8
109.3
98 年
302.6
105.4
99 年
312.6
108.9
(99 年度エネルギー受給実績速報データより)
表 4-1-2 に見るように、
我が国の CO2 排出量は 99 年時点で約 3.1 億 t-C であるが、
仮に 2010
参 2-42
年時点で CO2 排出量が 99 年レベルのままであると仮定すると、先に掲げた廃棄物発電によ
る CO2 削減効果(500 万 kw の場合の 1 年間の削減量)166.7 万 t は排出量全体の 0.56%にあ
たることになる。
京都議定書によって我が国に課せられた CO2 削減が 6%という数字であることを考える
と、
上の仮定に基づいた 0.56%という数字は決して無視できないウェイトであると言える。
しかもこの試算はあくまでも「平均発電効率 17%(400℃×40kg/cm2)」という数字に基づ
いており、これが 500℃×100 kg/cm2 という蒸気条件で発電効率 30%という本 PJ での開発
目標レベルになれば、CO2 削減効果はより大きくなるのは当然であり、地球温暖化防止に向
けた我が国の努力に貢献する期待は高い。
CO2 削減と並んでもう一つの重要な波及効果が、ダイオキシンなどの有害物質の排出抑制
効果である。ダイオキシンの削減は廃棄物発電の直接的な波及効果とするには難しい部分
もあり、排煙の処理施設などの高度化の負う部分も大きいのは確かであるが、炉の更新や
新設に際して発電を前提とした全連続式大型焼却炉の導入が進み、小型焼却炉が廃止・統
合されていけばダイオキシンの削減に寄与することは間違いない。
4-2.
当該技術が実用化された場合のエネルギー面の影響
第三章で見たように、我が国の廃棄物発電の発電効率は、最高の数値を持つプラントで
も 20%強であり、ここ数年竣工した清掃工場でも十数%といったところが平均的な発電効
率となっている。
仮に、現状の廃棄物発電の平均効率を 15%、本 PJ での高効率化廃棄物発電がひとつの目
安とした効率を 30%の半分となる。これは言い換えれば、今後全ての新設ゴミ発電プラン
トが「高効率仕様」になったと仮定すれば、同じ廃棄物処理量で 2 倍の発電量が可能になる
ことになる。
第二章掲げたデータ(2001 年竣工予定分の平均が 14 件で平均容量が 10900kw)を踏まえ
て、
「従来仕様」での廃棄物発電プラント 1 箇所あたりの平均発電用量を 1 万 kw、年間 15
件として計算するとトータルの発電用量は年間 15 万 kw ペースで増加することになるが、
これら全てが「高効率仕様」に置換されるとすると、単純計算で同じ 15 件でも発電容量増
加ペースは 30 万 kw となり、増加した 15 万 kw 分は処理する廃棄物の量の増加を全く伴わ
ない、純粋な「高効率化メリット」と見なすことが可能である。
仮に、年間 15 万 kw 増加を「従来仕様ペース」、年間 30 万 kw 増加を「高効率ペース」と
参 2-43
設定し、2001 年時点での廃棄物発電トータル容量約 100 万 kw から 2 つのペースで推移した
場合のシミュレーションを行なうと、15 万 kw ずつ広がった差は 2010 年には 135 万 kw に達
することになるが、これは電力会社による事業用の火力発電所 1 カ所分にも匹敵する量であ
る。
「高効率ペース」で推移した場合の 2010 年時点でのトータル容量 370 万 kw は総合資源
エネルギー調査会が 2001 年に発表した「対策ケースでの廃棄物発電導入目標 417 万 kw」に
対して 88.7%の達成率ということになるが、
「従来仕様ペース」の場合は 2010 年時点でも
235 万 kw にとどまり、これは「対策ケース目標」の 56.4%にしか過ぎず、国家的な新エネ
ルギー導入目標に近付くためにも廃棄物発電の高効率化とその普及は不可欠であることが
わかる。
図 4-2-1.
(MW)
4000
従来仕様と高効率仕様の増加シミュレーション
3700
3400
高効率ペース
従来仕様ペース
3100
2800
3000
2500
2200
1900
2000
1600
1300
1000
1000
1150
1300
1450
1600
1750
1900
2050
2200
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2350
(年)
2010
また、高効率ペースで推移した場合、2010 年時点で従来仕様ペースより 135 万 kw の電力
が同じ廃棄物量から得られることになるが、この 135 万 kw という数字は電力会社が事業用
に設置する大型火力発電所 1 ケ所分に匹敵する量であり、高効率廃棄物発電が普及すること
によるエネルギー効率利用効果、化石燃料節約効果は極めて大きいものがあると評価でき
る。
参 2-44
4-3.
同一産業界に対する波及効果
高効率廃棄物発電の実用化・普及によって廃棄物焼却炉メーカー、あるいは発電プラン
トメーカーへの波及効果として考えられる波及効果として下記の諸点が挙げられる。
①廃棄物発電の国内市場の拡大
発電効率の向上・発電容量の増大に伴って、蒸気タービンや発電機といった関連機器の
出力も連動して大型化することになり、廃棄物発電プラント 1 件あたりの受注規模は確実に
拡大する。また、高効率発電と組み合わせたことでガス化溶融炉などの高度な処理技術が
自治体にとって導入しやすくしいものになったという側面も指摘できよう。
このような装置の大型化・高度化が廃棄物処理・発電関連マーケットの拡大・活性化に
寄与する効果は大きいものがあると期待できる。
②海外市場での競争力向上
我が国の廃棄物処理業界は海外、特にアジア各国への廃棄物処理プラント輸出実績も多
いが、高効率廃棄物発電技術の実用化によって、海外市場での技術的競争力も高まったと
言える。
アジアを中心とした廃棄物処理プラント輸出市場では我が国メーカー以外にもドイツを
初めとする欧州系メーカーも参入しており、厳しい競争状態にあるが、廃棄物処理に伴う
高効率発電という技術は日本の自治体のみならず海外の廃棄物処理事業主体にとっても魅
力あるものであることは間違いない。
表 4-3-1 にも見るように、すでに 90 年代からアジア各国では数万 kw クラスの大型廃棄物
発電プラントの建設も珍しいことではなくなっているが、CO2 削減気運の国際的高まりなど
を考えればこのニーズは今後も続くと考えるのが妥当であり、同じ廃棄物発電であれば環
境負荷が少なく効率が高いプラントが競争力が高くなるのは間違いない。
過去のアジアでの廃棄物発電のスペックを見ると、蒸気圧はおおむね 40 kg/cm2 前後、蒸
気温度は 400℃程度のクラスが多く、これまでの我が国での廃棄物発電とほぼ同レベルであ
ったことから、本 PJ で達成された 100 kg/cm2、500℃という蒸気条件は海外市場でも大きな技
術的アドバンテージになると考えられ、我が国の廃棄物処理装置メーカーの競争力を高めること
が期待できる。
参 2-45
表 4-3-1.
国名
日本企業によるアジアでの廃棄物発電プラント主要例
工場名
焼却能力
蒸気条件
発電出力 稼動年
炉型式
(t/日) 圧力(kg/cm2) 温度(℃) (kw)
TUAS
2,760
37.8
370
47,800 1986.10
三菱マルチン式
シンガポール
SENOKO 3,312
37.8
370
55,500 1992.8
三菱マルチン式
864
40.8
400
12,000 1992.11
マカオ
北安
三菱マルチン式
300
17.0
500
1988.4
中華人民
深川 I
三菱マルチン式
150
16.0
350
3,000
1996
共和国
深川 II
三菱マルチン式
900
28.0
280
6,000
1992.1
台湾
内湖
タクマ
900
41.8
400
16,300 1994.3
新店
三菱マルチン式
1,500
26.0
280
13,500 1994.7
木柵
タクマ
1,350
41.8
400
24,800
1994.10
樹林
三菱マルチン式
900
40.0
400
14,500 1995.5
台中市
NKK フェルント式
1,800
40.0
400
45,000 1997.12 日立造船デロール式
士林
1999
南
450×4
三菱マルチン式
Hsichou 450×2
24,200
日立造船デロール式
Houli
24,200
450×2
日立造船デロール式
200
17.0
700
1992.12 日立造船デロール式
大韓民国
城西 I
200
1,500
1998.6
城西 II
日立造船
150
4,000
1986.12
木洞 I
日立造船デロール式
Phuket
250
31.0
300
2,500
1998.2
タイ
三菱マルチン式
(財)エネルギー総合工学研究所調査 98 年 3 月現在
4-4.
他の産業への波及効果
焼却炉や発電プラントメーカーなどの関連業界以外の分野への波及効果としては大まか
に 2 つの効果が想定でき、その一つは純粋に技術的な側面、例えば耐腐食性金属素材の開発
成果を他の応用分野に拡大するという可能性である。
ただ、耐腐食性スーパーヒーターなどの開発は、その目的が廃棄物発電の高効率化に特
化した部分が大きいため、これによって一般の石炭や重油を焚くボイラの効率アップに結
びつくというストーリーは描きずらいのは否めない。
むしろ本 PJ の成果が他産業に与える波及効果として大きいのは、高効率廃棄物発電技術
の実用化によって廃棄物発電そのもののビジネスとしての魅力・採算性が向上させたたこ
とであろう。従来の 20%に満たない発電効率では廃棄物発電を採算事業として捉えること
は不可能に近かったが、発電効率が向上したことで、民間企業による「廃棄物処理・発電
ビジネス」参入の可能性はかなり広がったと言える。PFI などのスキームによる廃棄物処理
事業民営化の可能性は数年前から議論されていたが、秋田県の大館広域組合や倉敷市など
参 2-46
具体的な取り組み事例も現れ始めている。
従来、廃棄物処理の民営化普及のためには民間側のリスク負担範囲の明確化などと並ん
で、処理手数料収入以外の収益源でいかに採算性を高められるかが問題の一つとされてい
た。しかし、廃棄物発電の高効率化が実現すれば処理手数料収入以外の収益の柱が大きく
強化されることになる。
しかも、ダイオキシン発生リスクが低く、焼却灰処理なども不要なガス化溶融炉などの
技術が表れたことも重なって、民間企業側にとっては廃棄物処理ビジネス参入の可能性は
従来に較べると大きく広がったと言える。
我が国の廃棄物発電は、都市部の大規模炉所有自治体が直営で行なうというスタイルが
依然として主流にはなっているが、廃棄物発電の高効率化、すなわち発電ビジネスの採算
性向上によって PFI による民間企業参入が増えれば、今後は「都市部自治体による直営」と
いうスタイルに加えて、地方の中規模自治体などで「民営廃棄物処理+発電」というスタイ
ルが普及する可能性は十分ある。
PFI などの形で廃棄物処理に民間が参入することは自治体のコスト負担の軽減や長期的
な処理コストの合理化が期待できる他、民間企業側にも新しいビジネスチャンスを増やす
ことになり、「装置・プラント中心」の性格が強かった廃棄物処理市場そのものの構造を変
える可能性もあると言えよう。
参 2-47
5.
本 PJ の事業評価
5-1.
国・NEDO の開発関与の妥当性評価
第一章でも述べたように、化石燃料消費や CO2 の排出を抑制することは単に我が国一国
のエネルギー政策・環境政策という範囲にとどまらず、全地球的規模で要求される重要な
テーマとなっており、新たな発電用燃料を必要としない廃棄物発電の高効率化は日本のエ
ネルギー政策はもとより、世界的な環境ニーズにも合致したものであり、その開発意義は
高い。
高効率廃棄物発電が普及すれば、その効果は民間レベルの経済効果だけにとどまらず、
環境負荷低減・エネルギー抑制といった国家的目標に確実に寄与するものであり、このよ
うに経済効果以外の部分でも開発意義が高い環境・エネルギー技術開発を民間企業が経済
原理に則った範囲で推進すれば、開発費その他さまざまなリスクを負わねばならず、スム
ーズな開発・普及が疎外される可能性がある。その意味でも本 PJ に国が関与し、民間企業
負担の開発リスクを軽減し、しかも開発スピードの加速を促したことは国費の使用用途と
しても妥当性は高いと言えよう。
また、本 PJ の目的である高効率廃棄物発電技術開発は、原理的には産業廃棄物処理にも
用いることは可能であるが、実質的には一般廃棄物処理での普及を目的としたものである
という性格が極めて強く、当然、想定されるユーザーも一般廃棄物処理事業体である自治
体や組合などの地方公共団体となる。
しかも一般廃棄物処理事業は経済性よりもむしろ公益性が重視されるという性格を持ち、
ダイオキシン対策や処理の広域化推進などにその例を見るように、国が新しい法規制整備
などの形で廃棄物処理マーケットの「変化の方向性」を事実上決定するという局面も非常
に多い。
主たるユーザーが公共団体であるうえ、マーケット自体も国家政策の影響で大きく変化
するという性格を持った一般廃棄物処理市場だけに、そこに提供される新技術の内容は長
期的な国家政策と整合していることが重要となるのは言うまでもない。
国が「市場構造の変化」を政策面でコントロールする以上、そこに提供される新技術開
発にも国が関与して整合性・連動性を高めることが求められるのは当然である。特に、こ
こ数年の間にダイオキシン問題による排ガス規制強化や小規模炉建設の抑制、処理の大規
模広域化の推進といったように一般廃棄物処理市場はその性格・構造を大きく変化させて
参 2-48
いる。このように変化する市場構造に民間レベルだけで技術開発を追随させるのは困難が
高く、ある程度長期的視野に基づいた技術開発を進める上でも廃棄物政策の決定主体であ
る国が、廃棄物処理関連技術の開発に関与する意義は大きい。
5-2.
開発予算・期間等の妥当性評価
本 PJ に投入された開発予算は総額で約 91 億円である。研究開発自体が「従来型焼却炉で
の高温・高圧蒸気実現による高効率発電」と「ガス化溶融炉による高効率発電」とに大き
く分かれているが、それぞれの開発テーマ別・開発テーマ別予算分配を見ると下表のよう
になる。
表 5-2-1.
PJ 予算年度別・テーマ別推移(単位:百万円)
年度
従来型ストーカー炉発電
ガス化溶融炉発電
年度別計
91
79
79
92
331
331
93
522
522
94
559
559
95
96
97
98
99
563 2,488 1,805 705 734
413 465
563 2,488 1,805 1,118 1,199
2000
451
451
総額
7,787
1,329
9,116
NEDO 資料より
開発期間が長く、また実際にパイロットプラントを建設した従来型炉での高効率発電技
術開発が全体の 85%を占めているが、現在のマーケットでの圧倒的な普及状況や技術的成
熟性、及び今後の普及可能性・普及スピードから考えても従来技術をベースとした廃棄物
発電の効率アップの予算的な位置付けが大きくなるのは妥当な結果であると言える。
また、ガス化溶融炉発電についても開発期間の最後の 3 年間で予算配分を行ったことはタ
イミング的にも実際の「ガス化溶融炉マーケット」の立ち上がり時期にあたっており、今
後のガス化溶融炉普及を加速する上でも効果的な予算投入であったと言えよう。
4-2 項でも見たように、仮に今後年間 15 万 kw ペースで新しい廃棄物発電プラントが建設
され、その全てが高効率発電に移行すると仮定した場合、2010 年時点では約 135 万 kw 分の
「高効率化メリット」が生まれ、これは事業用電力の火力発電所 1 件程度に相当する発電量
である。
火力発電所 1 件分の建設コストが削減されると考えれば、そのコストメリットが 91 億円
を遥かに上回るのは間違いない。廃棄物発電自体の普及はすでに国内でも進んでいること
から、
「高効率化」への移行も比較的スムーズに進行することが期待でき、上述した「火力
参 2-49
発電所 1 件分」が最大期待値であるとしても、高効率廃棄物発電が普及し、それに近いレベ
ルのエネルギーメリット・コストメリットを獲得することは決して非現実的な想定とは言
えない。
それに加えて、廃棄物からのエネルギー回収を効率化することで期待出来る CO2 削減な
どの環境メリット、6%削減目標への寄与といった側面を考えあわせれば、10 年間で 91 億
円という開発予算は十分その投入効果を期待できる金額と評価することが出来よう。
5-3.
開発成果の社会ニーズ・市場ニーズとの整合性評価
第二章でも見たように、我が国において廃棄物発電の導入は、処理規模の大きい自治体
の間ではすでに完全に定着しており、しかも廃棄物発電を導入するにあたっては発電効率
を高め、売電量を増やすことで少しでも廃棄物処理事業の経済性を高めようとする考え方
も今や珍しくはない。ここ数年は発電効率 20%台の廃棄物発電も現れているが、こういっ
た動きも高効率発電ニーズに裏付けられたものと考えることが出来よう。
従って、200t/日レベル以上の処理規模を持った自治体であれば、高効率廃棄物発電の潜
在的ニーズは高いと判断することができ、本 PJ の開発成果が自治体間に認知されれば、「蒸
気温度 500℃、蒸気圧 100kg/cm2」という蒸気条件での廃棄物発電がスムーズに普及してい
くことが十分期待できる。
このように、市場ニーズとの整合性は極めて高いと評価できる本 PJ であるが、懸念要素
が残るとすれば第三章でも指摘した「分別収集・マテリアルリサイクル推進」の社会的ト
レンドとの整合性という点であろう。
国は廃棄物政策の優先順位を①排出抑制(Reduce)、②再使用(Reuse)
、③マテリアルリ
サイクル(Material Recycle)、④サーマルリサイクル(Thermal Recycle)
、⑤適性処理 とい
う形で位置付け、廃棄物発電(サーマルリサイクル)よりもリユースやリサイクルを優先
させているのはすでに触れた通りであるが、この考え方に基づけば、廃棄物処理の理想形
は「可能な限り排出を抑制した上でやむを得ず排出される廃棄物」を「可能な限り燃やさ
ずにリサイクルし」その上で「やむを得ず残った廃棄物に関して焼却し、そこではサーマ
ルリサイクルを可能な限り行う」というスタイルであると表現できる。
もちろん、このような「理想形」が実現することは現実には困難であるが、資源節約と
参 2-50
いう観点からも廃棄物処理に際して排出抑制やリサイクルを重視しなければならないのは
間違いなく、しかも最終埋立処分場の余力の逼迫という現実が存在する以上、焼却灰や溶
融スラグの発生が不可避なサーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルの方が優先順
位が高くなるのは当然とも言える。
しかし、「可能な限り排出を抑制し」
「可能な限りリサイクル」した後に残る可燃物だけ
を焼却した場合、本 PJ で達成した開発技術・発電効率が生かされない恐れは強い。特にプ
ラスチックの分別収集・マテリアルリサイクルが普及・徹底すれば、発電燃料としてのご
み質の低下→熱量の不足による発電効率低下という可能性は十分考えられる。
次頁に掲げたアンケート結果を見ても、自治体に間でプラスチックを焼却せずに分別収
集・再生利用にまわすことを検討している自治体は、サーマルリサイクルを考えている自
治体に較べて圧倒的に多い。こういった自治体意識に加え、旧厚生省が 2004 年時点でプラ
スチック製容器包装は 7 割、ペットボトルは 9 割以上の自治体が分別収集するという見込ん
でいることを考えれば現在に較べて焼却対象となるプラスチック量が減少に向かう可能性
は高い。
図 5-3-1.
今後のプラスチックの扱いに対する自治体アンケート結果
不明
6
その他プラを分別を検討
6
4
プラを焼却対象から変更
9
サーマルリサイクル
11
特に変更なし
20
発泡トレイを再生利用対象に
29
Pボトルを再生利用対象に
58
その他プラの分別を検討
0
10
20
30
40
50
(%)
「廃棄物発電に関する動向調査」より
上述のように、資源節約という観点から考えても、最終処分場の延命化やその他環境リ
スク等々の点から考えても焼却廃棄物を最小化することが望ましいことは確かである。し
参 2-51
60
かし、ガス化溶融炉による高効率発電の要素技術の一つに「廃プラスチックの吹き込み」
技術が対象となっていたことからもわかるように、高効率廃棄物発電に際して焼却熱量の
高いプラスチック廃棄物の有用性は無視できないものがあり、プラスチックを燃やすこと
がマテリアルリサイクルに較べて「理想から遠い処理方法」と見なされることは高効率廃
棄物発電普及にとってマイナス要因となることは避けられない。
現状の自治体意識や社会ニーズは「プラスチック焼却を最小化」するという方向性が強
いのは事実であり、また容器包装リサイクル法などの法規制もそれに沿ったものと言える。
しかし、本 PJ の開発成果普及によって期待される CO2 削減効果や化石燃料消費の抑制、新
エネルギー導入促進といった効果もまた重要であることは強調すべき点であり、高効率廃
棄物発電によるサーマルリサイクルはマテリアルリサイクルと同程度の環境負荷低減につ
ながるという点を自治体、あるいは一般市民に浸透させることが望まれる。
参 2-52
6.廃棄物発電に関する特許・論文・新聞記事
6-1.
特許件数の推移
廃棄物発電に関する特許の申請件数の推移を見ると、90 年代初めにはほとん
ど申請が見られなかったものが、半ば頃に急増し、99 年頃からはまた減少に転
じるという特徴的な推移を示している。
廃棄物発電自体は 80 年代から存在した技術であるが、90 年代に入って導入自
治体数が増えてマーケットが拡大し、メーカー間の受注競争も激化してくるに
につれてプラントメーカー側もより効率的で経済性の高い廃棄物発電技術の開
発・保有に注力し始めたことが窺える。
10
件
8
6
4
2
0
93
図 6-1-1
94
95
96
97
98
99
00
年
01
廃棄物発電に関する特許申請件数
表 6-1-2 廃棄物発電に関する特許申請件数 (単位:単位:件数/年)
93
廃棄物発電
(内数) 廃棄物発電・ボイラー
廃棄物発電・腐食
ボイラー・腐食
0
0
0
55
94
95
0
0
0
50
1
1
0
48
96
5
4
1
60
97
9
7
0
79
98
2
0
0
62
99
7
4
1
76
00
4
3
1
46
01
1
1
0
48
出典:特許庁特許電子図書館のデータベースより作成
参 2-53
6-2. 廃棄物発電に関する論文数
一方、同じく廃棄物発電に関する論文数の推移を見ると、93 年以降ほぼ一貫
して増加傾向を辿ってきており、93 年から 99 年の間に発表論文数が 5 倍以上に
なっている。
この 99 年をピークに、その後はやや減少に転じているが、特許の推移と同様
に 90 年代半ばから末にかけて廃棄物発電に関する研究がかなり活発化したこと
がわかる。
60
件数
50
40
30
20
10
0
93
94
95
96
97
98
99
00
01
年
図 6-2-1. 廃棄物発電に関する論文数推移
表 6-2-2. 廃棄物発電に関する論文数
93
廃棄物発電
(内数) 廃棄物発電・ボイラー
廃棄物発電・腐食
ボイラー・腐食
(単位:件数/年)
8
94
16
95
24
96
23
97
40
98
41
99
51
00
43
01
29
1
3
8
7
8
2
13
5
1
0
4
3
4
5
6
8
7
4
203
188
173
164
223
197
179
128
73
出典:科学技術振興事業団のデータベースJOISより検索・作成
参 2-54
6-3. 新聞記事検索
廃棄物発電に関する新聞記事の推移を見ると、特許や論文の推移とはやや遅
れて、90 年代後半、特に 96 年以降に特に増加していることが窺える。今のとこ
ろこの流れは続いており、昨年には日経 4 紙に関して言えば扱い記事件数は最
高を記録している。
新聞記事の場合、論文のように技術開発動向をそのまま反映せずに、自治体
の導入を報じるといったケースも多いと考えられることから、廃棄物発電の導
入自体の増加がそのまま記事の増加となって現れたと言えよう。
40
件数
30
20
10
0
93
図 6-3-1.
94
表 6-3-.2
95
96
97
98
99
00
01
年
新聞記事掲載件数推移
新聞記事掲載件数 (単位:件数/年)
93
廃棄物発電
(内数) 廃棄物発電・ボイラー
廃棄物発電・腐食
ボイラー・腐食
94
6
0
0
0
95
7
0
0
0
6
0
0
2
96
22
0
0
4
97
18
0
1
0
98
18
1
1
2
99
24
2
2
5
00
27
3
1
1
01
37
5
0
2
出典:日経テレコン21 日経4紙より検索・作成
参 2-55
参 2-56
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