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携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ) - ASKA
愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― 第4号 2014 17-30 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ) ― 新訂版コミュニケーション尺度の開発と適用 ― 新 美 明 夫 Anal ys i ng t heCont e nt sofMobi l ePhoneCommuni c at i on(Ⅱ): De ve l opme ntandAppl yi ng ofNe wl yRe vi s e dCommuni c at i on Sc al e Aki oNi i mi 要旨 コミュニケーションの内容をコンサマトリー的,課題的,情緒的の3側面から捉えるという古谷・坂田(2006) の原尺度の利点を生かしつつ,変化の著しい現在のコミュニケーション環境においても適用しうるコミュニケーショ ン尺度の開発を試みた。項目内容を全面的に改定・追加して,携帯電話による通話,メール,ネット利用のいずれ にも共通に利用できることを目指して尺度構成したところ,信頼性の高い尺度が得られた。さらに,携帯電話の利 用形態の特徴によって対象者を分類した利用類型に基づいて,今回作成したコミュニケーション尺度によって測定 された内容ごとのコミュニケーション頻度は,それぞれの類型の特徴を明確に示すものであった。これによって新 訂版コミュニケーション尺度の適用可能性が示されたと思われるが,引き続きより詳細な検討が望まれる。 キー・ワード:コミュニケーション尺度,携帯電話,利用類型,友人との交流 今日ではもはや持っていることがあたりまえに ビスであった。それが,携帯電話の高機能化によ なった携帯電話の契約数は,日本の総人口を越す り,携帯電話でも利用できるサービスとなり,最 値を示し(電気通信事業者協会,2013;総務省統 近ではむしろ携帯電話利用を前提とした,すなわ 計局,2 013 ),2台持ちの者も珍しくない(移動 ち,いつでもどこでも利用できることを前提とし 通信委員会,2013) 。2010 年度からのスマートフォ たサービスが主流となってきた。2010年頃から普 ンの市場投入によって,携帯電話市場の関心はす 及が始まったTwi t t e r の利用はPC上での利用から でに従来型の携帯電話からスマートフォンにいか 始まったが,1 40字という字数制限のあるテキス に移行させるかに移っている。スマートフォンの ト中心のツールであることから,スマートフォン 普及は携帯電話とインターネットとの接続性を従 の普及とともに携帯電話での利用に比重が移って 来型よりもはるかに高め,人々のコミュニケーショ いった(インプレスR&Dインターネットメディ ン環境における利用可能なツールの多様性をもた ア総合研究所,2 010)。2011年の東日本大震災後 らした。人々はMi xi やFac e bookといったソーシャ に開発され,その後急速に普及したLI NEは,PC ルネットワークサービス(SNS)やTwi t t e rなど での利用の可能性を残してはいるものの当初から のミニブログ,最近急速に普及しつつあるLI NE スマートフォンでの利用を前提にしており,これ など多様なツールで交流をしている。 まで若年層のコミュニケーションツールの主流で インターネット上のコミュニケーションツール は,もともとPC上で利用することが前提のサー あった携帯メールに取って代わろうという勢いで ある(朝日新聞,2013)。 ― 17― 愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― このように携帯電話を利用したコミュニケーショ 第4号 ションの質に注目し,コミュニケーション内容を, ンツールは,複数の手段が並行的に使われる状況 課題的,情緒的,コンサマトリー的コミュニケー になっており,その利用実態や日常生活への影響 ションの3種類に分けて計測可能にしたコミュニ は新たな段階に入ったと言ってよいであろう。そ ケーション尺度を開発している。3分類された内 もそも携帯電話は,通話とメールという複数のコ 容のコミュニケーション頻度を計測することので ミュニケーションツールの機能を併せ持つ複合機 きるこの尺度は画期的ではあったものの,尺度と であり,それらの機能の選択や使い分けは携帯電 しての信頼性・妥当性が検討されていないこと, 話利用研究の大きなテーマの一つであった。小寺 通話とメールが携帯電話を使ったコミュニケーショ (2011)は,携帯電話を含めたCMC(Comput e r ンの大部分であった時期に作成されたものである Me di at e d Communi c at i on)研究には,CMCの ことから,新美(2012)は改めてこの尺度の因子 特徴や効用を調べる系譜とメディアの利用適性や 構造を検討した。その結果,携帯電話の機能が多 効用を調べる系譜があるとして,後者のメディア 様化し,利用状況が大きく変化しようとしている 選択研究におけるアプローチを紹介している。さ 現在でも一定程度有用な分析用具であるが,構成 らに,このアプローチでは,社会的な文脈が中心 項目数の少なさ,構成項目の表現の生硬さが改良 的な課題として位置づけられていないと批判し, 点として指摘されている。 先にあげた小寺(2011)も,日常的なコミュニ 対人関係の親疎という社会的文脈を取り上げてコ ミュニケーションメディアの選択を検討している。 ケーションの内容をカテゴライズした「コミュニ 小寺(2 011)はネット上の新しいコミュニケーショ ケーションカテゴリー」を作成している。それぞ ンツール(ブログ,SNS,チャット等)も検討 れの内容の実践度を因子分析した結果,「深い自 しているが,この時点(調査は2009年から2 010年 己開示」「意見の表明」「話題の共有」「事項の伝 に行われている)ではまだ利用頻度が高くないと 達」「秘密と批評」の5因子を得ている。これら 判断し,最終的には「対面」「携帯電話(通話)」 のカテゴリー(因子)の基となったコミュニケー 「携帯電話(メール) 」のみを代表的なコミュニケー ション内容の項目は, 「1週間のコミュニケーショ ン記録」から採集・整理されており,内容も豊富 ションメディアとして取り上げている。 これに対して,新美・松尾(2011)では,近年 (当初60項目)であるが,何らかの理論的枠組み の若年層における携帯電話利用が,通話やメール に基づいて作成されたものではない。上記の古谷・ という従来型の利用が主流ではあるものの,ネッ 坂田(2006)のコミュニケーション尺度における ト上のコミュニケーションツールを利用した友人 下位カテゴリーと比較すると,小寺(2011)のコ との交流も一般的になってきたことを指摘してい ミュニケーションカテゴリーには,コンサマトリー る。ブログやSNSの日記を介した交流(日記を 的コミュニケーションの内容が欠落しているよう 読む)は「よくする」と答えた者が約6割, 「時々 に思われる。携帯電話の普及開始以降,そのコン する」ものを合わせると9割近くなり,携帯電話 サマトリー的な利用は一貫して注目されてきてお の利用を検討する際には,通話とメールのみを検 り,現在のネット上の複数の手段を利用した交流 討するのでは不十分であることを示している。 でも日常的な内容であると思われる。 ところで,携帯電話利用を検討するためには, 以上のような観点から,本研究では,古谷・坂 各種ツールの利用頻度ばかりではなく,そのコミュ 田(2006)のコミュニケーション尺度をベースと ニケーションの内容も検討する必要がある。新美 しつつも,現在のコミュニケーション環境の変化 (2009)は,携帯電話の普及以降の利用実態調査 にも適用しうる新しい尺度を開発することとした。 をレビューし,初期の研究ではコミュニケーショ さらに,新しく開発した尺度を適用することによっ ン内容は検討されてはいたものの,それは定性的 て,現在のコミュニケーション環境におけるその な分析にとどまるものであったことを指摘してい 有用性を検討したい。 る。その後,古谷・坂田(2006)は,コミュニケー ― 18― 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) 方 ルで友人とどれぐらいやりとりしているかを, 法 「非常によくする(5点) 」 「しばしばする(4点) 」 1.尺度項目の作成 「たまにする(3点)」「ほとんどしない(2点)」 新たなコミュニケーション尺度を作成するにあ 「全くしない(1点)」の5段階評定尺度で回答を たって,その候補となる尺度項目を作成した。古 求めた。ネットについては「mi xi , Fac e book, Twi 谷・坂田(2006)のコミュニケーション尺度の構 t t e r , LI NE などネット上のツール」という説明 成項目,問題の項で取り上げた小寺(2011)のコ を付加した。 ミュニケーションカテゴリーの構成項目などを参 ⑤携帯電話の使い方は,「通話やメール」「友人 考にしつつも独自に候補項目を作成した。作成に との交流のためのネット利用」「その他のネット あたっては,古谷・坂田(2006)にしたがってコ 利用(情報収集など) 」 「付属機能の利用(カメラ, ミュニケーション内容を3種類に分け,課題的コ 音楽プレーヤー,テレビなど)」の4種類をあげ ミュニケーション,情緒的コミュニケーション, た。これらの目的のための利用比率を合計1 00% コンサマトリー的コミュニケーションのそれぞれ になるように回答を求めた。それぞれ「通話やメー にバランスよく項目が配置されるよう,また生硬 ル」「ネット上での友人との交流」「ネットでの情 な表現を避け,わかりやすい内容となるよう心が 報収集」「付属機能の利用」と呼ぶことにする。 けた。加えて項目の表現形式としては,一方向的 「ネット上での友人との交流」は, ネット上のコミュ なコミュニケーション(話す,伝える)ではなく, ニケーションツール専用のアプリ利用,「ネット 双方向的なコミュニケーション(言ったり聞いた での情報収集」はブラウザ利用を主に想定してい りする)を表す形式とした。このような方針で項 る。 目の収集・作成を行い,課題的コミュニケーショ ン6項目,情緒的コミュニケーション5項目,コ 3.調査方法 ンサマトリー的コミュニケーション6項目を候補 調査は愛知県内の著者の勤務する大学で行われ た。2012年10月および2013年5月に,いずれも2 項目とした。 年生対象の心理学関連の講義に出席した学生を対 象に実施した。使用した質問紙は同一のものであ 2.質問紙の構成 質問紙は次のような内容から構成されていた。 る。授業中に調査趣旨を説明して協力を依頼し, ①フェイスシート項目,②携帯電話の所有歴,携 質問紙を配布,同意する人は持ち帰って記入後, 帯電話の種類,③携帯電話利用の現状と高校時代 次回以降の授業時に提出するように求めた。2回 の利用からの変化,④携帯電話でのコミュニケー の調査の有効回答をまとめて分析するため,授業 ション内容,⑤携帯電話の使い方,⑥その他を尋 実施時に2年生であった者のみを分析対象とし, ねた。 同一人物による重複回答の可能性を排除した。有 本研究の分析で用いた質問項目の詳細は次の通 効回答の得られた対象者は,319人(2012年:166 人,2 013年:153人)で,性別の内訳は,男性41 りである。 ③携帯電話利用の現状は,通話・メールの一日 人,女性278人であった。全員が携帯電話を所有 し,スマートフォンを持っている者は従来型機種 あたりの平均利用回数を尋ねた。 ④携帯電話でのコミュニケーション内容では, 今回新たに作成したコミュニケーション尺度の候 との同時所有も含めて,258人(80. 9%)であっ た。 補項目を用いた。課題的コミュニケーション6項 目,情緒的コミュニケーション5項目,コンサマ 分 トリー的コミュニケーション6項目の合計17項目 析 Ⅰ から構成されていた。これらの項目を通話,メー 急速に変化するコミュニケーション環境に適用 ル,ネットのそれぞれのコミュニケーションツー しうるコミュニケーション尺度を作成するのが本 ― 19― 愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― 第4号 研究の目的である。分析Ⅰではまず,現在の大学 年間の結果である図1を連続して検討してみると, 生の携帯電話利用がコミュニケーション環境の変 通話は受発信とも1回前後で変化なく推移してい 化にどのように対応してきているのかを簡単に確 るが,メール利用で大きな変化が2012年から起き 認し,続けて新たなコミュニケーション尺度の構 ていることがわかる。それまでメールの受発信は 成を行う。 中央値で5~10回と安定した変化幅を2011年まで 示していたのだが,2012年にはメール発信が一気 1.携帯電話利用の現状 に3回に減少し,2013年にはさらに2回に減少し 著者は大学2年生を対象にして,2001年度より ている。メールの受信数については,2012年に7 毎年携帯電話利用調査を行ってきた。 新美 回,2013年には5回と減少したものの,一応これ (2009)では,2008年度までの結果を報告したが, までの変化幅内に収まっている。しかし,2001年 問題で述べたように,携帯電話を利用したコミュ から2011年までのメール利用は発信と受信がほぼ ニケーション環境はそれ以降に大きな変化を示し 同数であったことから考えると,この発信数の減 ている。ここでは,本稿で分析対象としている 少は,明らかにメール利用が全体として減ったこ 2012年,2013年調査のデータを含めて,2009年の とを示すものであろう。 調査以降のデータを年次ごとに比較することによっ 図2は,携帯電話の目的別利用比率のこの5年 て,新たなコミュニケーション尺度の開発が望ま 間の変化を示したものである。これは携帯電話の れる携帯電話利用の現状を確認したい。 利用目的について「通話やメール」「友人との交 図1は大学生の携帯電話の利用回数を通話とメー 流のためのネット利用」「その他のネット利用 ルについて,発信数・受信数の中央値の推移を示 (情報収集など)」「付属機能の利用(カメラ,音 したものである。通話とメールは携帯電話普及以 楽プレーヤー,テレビなど)」の4種類をあげ, 降利用されてきた2大機能であり,若年層では, これらの目的のための利用比率を合計100%にな 通話利用に比べメール利用の頻度が圧倒的に多い るように回答を求めたものである。ここでも2012 ことが従来報告されてきた(イプシマーケティン 年に大きな変化が現れており,従来型の利用形態 グ研究所,2004)。新美(2009)では2001年から である通話やメールの比率と新しい利用形態であ 2008年まで一貫してメール利用の方が多いこと, る友人との交流のためのネット利用の比率が逆転 通話利用は受発信とも中央値は1回前後,メール している。さらに2013年にはその差が大きく開い 利用の中央値は5回から10回の間を上下している ており,友人との交流はネット上のツールを利用 ことが報告された。この報告とそれに引き続く5 して行うことが主流となったことがわかる。携帯 図1 携帯電話の利用回数の年次変化(中央値:回数/日) ― 20― 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) 図2 携帯電話の目的別利用比率の年次変化 電話からのネット接続を容易にしたスマートフォ ツールに対する回答を独立したものとみなし,計 ンの普及は2010年頃から始まったが,2011年の調 957人分のデータとして尺度構成を行った。 査では34. 2%だった所有率が2012年には73. 3%, まず,各項目について天井効果,床効果を検討 2013年には9 0. 7%と急激に普及し,利用形態の変 したが,いずれの効果も見られず尺度項目として 化と連動していることがわかる。 不適切なものは見られなかった。 そこで引き続 以上のように,スマートフォンの普及とネット き尺度構成を行うべく,因子分析を行った。因子 上のコミュニケーションツールの多様化は,大学 の抽出には最小二乗法を用いた。因子数の決定に 生の携帯電話の利用形態を大きく変化させてきて は固有値1以上の基準を設けたところ,3因子が いる。これに伴うコミュニケーション内容の実態 抽出された。プロマックス回転を行った結果の因 を検討するためにも,それを捉えうる新たなコミュ 子パターンを検討したところ,当初想定していた ニケーション尺度の開発は不可欠であろう。 3種類のコミュニケーション内容に属する項目が, ほぼそのまま3因子を構成していることがわかっ 2.尺度構成 た。表1にその因子パターンを示した。 新たなコミュニケーション尺度を作成するため, 第1因子にはコンサマトリー的コミュニケーショ 因子分析による尺度構成を行った。あらかじめ想 ンとして作成された6項目が高負荷を示しており, 定された3つのコミュニケーション内容に適合す そのまま「コンサマトリー的コミュニケーション」 ると思われる合計17 項目(課題的コミュニケーショ と命名した。 ン6項目,情緒的コミュニケーション5項目,コ 第2因子には課題的コミュニケーションとして ンサマトリー的コミュニケーション6項目)につ 作成された6項目のうち5項目と,当初情緒的コ いて,携帯電話の通話,メール,ネットでそれぞ ミュニケーションに属する項目として作成された れの手段を使って,どれぐらい行うかを質問した。 「困ったときに手助けを依頼したり,されたりす 本研究では,携帯電話で利用できるさまざまなコ る」が高負荷を示していた。この項目は具体的な ミュニケーションツールで,共通に使用すること 手助けを想定することができ,課題的コミュニケー のできる尺度の開発を目的としているため,同一 ションに属するものと考えても問題はないと思わ の項目に対する各コミュニケーションツールの回 れるので,これらの項目で構成される第2因子を 答は独立したものと見なして分析した。すなわち, 「課題的コミュニケーション」と命名した。 調査対象者319人の3種類のコミュニケーション ― 21― 第3因子には情緒的コミュニケーションとして 愛知淑徳大学論集 表1 ―心理学部篇― 第4号 新訂版コミュニケーション尺度の因子パターン(最小二乗法/プロマックス回転) 表2 新訂版コミュニケーション尺度の下位尺度のα係数 作成された5項目のうち4項目と,当初課題的コ 各下位尺度の内的整合性を確認するため,クロ ミュニケーションに属する項目として作成された ンバックのα係数を算出した。3種類のコミュニ 「アドバイスをもらったり,したりする」が高負 ケーションツールのデータを込みにした場合,お 荷を示した。後者の項目でのアドバイスは,当初 よび各コミュニケーションツール単独のデータの 具体的な解決方法を想定していたが,解決に直接 場合についてα係数を算出した結果を表2に示し つながるわけではない精神的サポートも含まれて た。いずれの場合も十分な信頼性が示された。 いると考えられることから,これらの項目で構成 される第3因子を「情緒的コミュニケーション」 以上のようにして作成された尺度を新訂版コミュ ニケーション尺度と呼ぶことにする。 と命名した。 全体として非常に明瞭な因子構成を示していた。 いずれも各因子に高負荷を示す項目の合計点を算 分 析 Ⅱ 分析Ⅰで構成した新訂版コミュニケーション尺 出し下位尺度得点とした。 ― 22― 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) 度は,現在の携帯電話を利用したコミュニケーショ て4グループへの分類が適切であると判断した。 ンに適用できることを念頭に作成したものである。 このグループを利用類型と呼ぶ。2009年,2010年 図1,2で示したように,最近の携帯電話の利用 の調査データを分析した新美・松尾(2 011)では, 状況には変化が見られる。現在の携帯電話を利用 メールと通話利用が中心の「従来型」,交流以外 したコミュニケーションは従来からの通話とメー のネット利用が多い「情報収集型],友人との交 ルに加えて,インターネット経由でさまざまなコ 流にネットも通話・メールも使う「交流利用型」, ミュニケーションツールが利用されるようになっ 付属機能の利用が中心の「付属機能型」の4類型 てきた。しかし,その新しいコミュニケーション が見いだされている。今回の分析では「ネット中 ツールの採用は個人によって差があると思われる。 心型」「ネット交流型」「従来型」「情報収集中心 使い慣れた通話・メールを依然として主要なツー 型」と名付けられた4類型が見いだされた。表3 ルとしている者もいれば,積極的に新しいツール は,この類型別に,携帯電話の使い方の4種類の を取り込んでいく者もいる。そのような進行中の 目的別の利用比率を示したものである。 携帯電話利用のしかたを簡便に知る方法として新 最も所属人数の多い「ネット中心型」は,ネッ 美・松尾(2011)は,4種類の使用目的について ト上での友人との交流とネット上での情報収集を 利用比率を尋ね利用類型を設定するという方法を 合わせると,携帯電話利用の 2 /3ほどをインター 提案している。分析Ⅱではこの利用類型を利用し ネットへのアクセスで過ごしている者たちである。 て,新訂版コミュニケーション尺度による測定結 2番目に所属人数の多い「ネット交流型」は,イ 果がこれらの類型において,それぞれ特徴的な差 ンターネットアクセスのほとんどは友人との交流 異を示すのかを検討することによって,この尺度 のために使っており,情報収集のための利用は比 の適用可能性を探りたい。 較的少ない者たちである。いずれの類型も友人と の交流はネットが中心になっており,通話やメー 1.新訂版コミュニケーション尺度の適用のため の調査対象者の分類 ルという従来の利用の仕方はかなり少なくなって いる。所属人数が3番目の「従来型」は友人との 分析に先立って調査対象者の携帯電話の利用類 交流には通話やメールが中心という,携帯電話の 型を設定することにする。この携帯電話の利用類 従来からの使い方をしている者たちである。新美・ 型は,「通話やメール」「ネット上での友人との交 松尾(2011)でも同様の類型が見いだされている 流」「ネットでの情報収集」「付属機能の利用」の が,今回この類型が占める割合は2 6. 1%であり, 4種類の使い方について利用比率を尋ね,これを 新美・松尾(2 011)の 47. 7% に比べるとかなり 用いてクラスター分析をすることによって対象者 低くなっている。「情報収集型」はネット上での のグルーピングを試みるものである。本研究でも, 交流が4類型中もっとも少なく, 情報収集のため 新 美 ・ 松 尾 (2011) と 同 様 の 方 法 を 用 い て , のネット利用が5 0%以上を占めている。友人との War d 法によるクラスター分析を行った。その 交流にはネットより通話・メールを利用する者た 結果,デンドログラムと結合距離の推移を考慮し ちである。 表3 類型別の携帯電話の使い方:利用比率の平均値(単位:%) ― 23― 愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― 第4号 次に各類型に属する対象者たちが,4種類の使 で行うネット中心型 (3 7. 1%), ネット交流型 い方の比率をもとにした4次元空間上でどのよう (26. 1%)が2類型で合計6割を越えたことなど な分布をしているかを把握するために散布図を作 を考えると,これら4類型の特徴と分布は,携帯 成した。図3に「通話とメール」「ネット上での 電話利用の現状が通話・メールという従来からの 友人との交流」の利用比率,図4に「ネットでの 使用方法からネット上のツールの利用という使用 情報収集」「付属機能の利用」の利用比率を組み 方法に移行している現状を捉えたものといえるで 合わせた散布図を示した。ドット記号が各ケース あろう。 を示すが,座標が同一のケースについては少しず らして表現し,分布状況を把握しやすくしてある。 2.携帯電話の利用類型による分析 図3,4では,各類型に属するケースを4種類 前項で得られた携帯電話の利用類型によって調 のドット記号で表し,分布範囲を楕円で囲んであ 査対象者を分類し,それぞれの類型でのツール別 る。その上で,各類型の利用比率の平均値を,所 のコミュニケーション内容を検討することによっ 属するケースと同一のドット記号を使って大きな て,新たに構成された新訂版コミュニケーション サイズで示してある。 尺度が変化の大きい現在のコミュニケーション状 図3を見ると,情報収集中心型と従来型はX軸, ネット中心型およびネット交流型がY軸に沿って 況でも適用できるかどうかを確認することにした い。 分布していることが分かる。コミュニケーション 新訂版コミュニケーション尺度によって測定さ を目的とすることが多い従来型は原点からX軸 れるコミュニケーション頻度を従属変数とし,対 (通話とメール)に沿って右側に,ネット交流型 象者の利用類型(要因A),新訂版コミュニケー は原点からY軸(ネット上での友人との交流)に ション尺度の3つの下位尺度で表されるコミュニ 沿って上側に分布している。友人との交流のツー ケーション内容の種類(要因B),および尺度の ルとして,通話やメールという従来からのツール 適用されたコミュニケーションツールの種類(要 を使うのか,ネット上のツールを使うかについて 因C)を独立変数とする3要因の分散分析を行っ 対照的な類型となっている。これらに比べて情報 た。利用類型は分析対象者間要因,コミュニケー 収集中心型,ネット中心型は交流目的の利用比率 ション内容,コミュニケーションツールの種類は が低く,上記2類型ほどの顕著さはないが,情報 対象者内要因である。コミュニケーション内容間 収集中心型は通話とメールの,ネット中心型はネッ の比較を可能にするため,下位尺度得点は構成項 ト上での友人との交流の比率がやや多くなってい 目の合計点を構成項目数で除した値とした。なお, る。 今回の調査で有効票となった調査対象者は3 19名 図4を見ると,X軸(ネットでの情報収集)上 であったが,分散分析に使用するすべての調査項 での位置によって,その比率が最も多い情報収集 目のいずれかに欠損値があった者を除外して,29 中心型,次に多いネット中心型が分布し,従来型, 5名を分析対象とした。3要因の分散分析の結果 ネット交流型という,コミュニケーションを目的 の概要を表4に示した。 とすることが多い2つの類型は原点付近に分布し 表4に見られるように分散分析の結果,2次の ている。ネット上での情報収集の比率が多いネッ 交互作用(A×B×C)は見られなかったが,1 ト中心型は,付属機能の利用も多く,4類型の中 次の交互作用は,すべての要因間のものが有意で で唯一この利用に特徴を示している。 あった。そこで,それぞれの交互作用について, 通話とメールという従来からの利用方法が主で 各要因の単純主効果を検定し,必要ならば水準間 ある従来型が,同じ基準で分類されたのではない r oni の法)を行った。煩雑 で多重比較(Bonf e r にしろ,新美・松尾(2 011)では47. 7%を占めて さを避けるため,多重比較の有意水準は5%とし, いたものが,今回は2 6. 1%と激減していること, 有意差の記述では有意水準の記述を省略した。 さらに友人との交流は主としてネット上のツール ― 24― 最初に利用類型とツールの種類間の交互作用 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) 図3 利用類型別の利用比率の散布図:「通話やメール」と「ネット上での友人との交流」の組合わせ 図4 利用類型別の利用比率の散布図:「ネットでの情報収集」と「付属機能の利用」の組合せ ― 25― 愛知淑徳大学論集 表4 ―心理学部篇― 第4号 コミュニケーション頻度の分散分析の要約 (A×B)について検討する。3種類のコミュニ つの類型よりも有意に多く,この2つのツールに ケーション内容を込みにしたコミュニケーション おいて,従来型がもっともコミュニケーションが 頻度の平均値を図5に示した。 活発であることが分かった。ネットにおいては, ネット交流型がもっともコミュニケーション頻度 が高く,次いでネット中心型の頻度が高いことが 分かった。従来型,情報収集中心型はこの2つの 類型に比べ,有意にコミュニケーション頻度が低 いことが分かった。 次に利用類型を固定して,ツールの種類の単純 主効果を検討した。ここでは,3種類のコミュニ ケーション内容の合計の頻度をツール間で比較す ることになる。ツール間に有意差の見られなかっ た情報収集中心型を除く3つの類型で,ツールの 種類の単純主効果が見られた(ネット中心型:F 図5 = (2,582)=92. 95,p<. 001;従 来 型 : F (2,582) 利用類型別・コミュニケーションツール別の コミュニケーション頻度の平均値 3. 77,p<. 05;情報収集中心型:F (2,582)=2. 70, ns :ネット交流型:F (2,582)=1 46. 34,p<. 001) 。 最初にツールの種類を固定して,利用類型の単 多重比較の結果,ネット中心型とネット交流型に 純主効果を検定した。ここでは,3種類のコミュ おいては,ネットでのコミュニケーション頻度が ニケーション内容の合計の頻度を類型間で比較す 通話やメールよりも有意に高いことが分かった。 ることになる。いずれのツールにおいても,利用 逆に従来型は通話・メールに比べ,ネット上での 類型の 有 意 な 単 純 主 効 果 が 見 ら れ た ( 通 話 : コミュニケーションの頻度が有意に低かった。 F (3,291)=12. 19,p<. 001;メール:F (3,291)= この交互作用の分析はコミュニケーションの内 12. 38, p<. 001; ネ ッ ト : F (3,291)=35. 51, 容の如何にかかわらず携帯電話によるコミュニケー p<. 001)。多重比較の結果,通話とメールにおい ション全体の頻度を検討するものであり,利用類 ては,従来型のコミュニケーション頻度が他の3 型の特徴と,各コミュニケーションツールでのコ ― 26― 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) ミュニケーション頻度がよく対応する結果を示し ション内容の有意な主効果が見られた(ネット中 たといえるだろう。 心型:F (2,582)=48. 98,p<. 001;従来型:F (2, 2つめの交互作用として,利用類型とコミュニ 21,p<. 05;情報収集中心型:F (2 ,582) 582)=13. ケーション内容の交互作用について検討する(A =33. 85, p<. 001: ネ ッ ト 交 流 型 : F (2,582)= ×C)。図6は3種類のコミュニケーションツー 28. 62,p<. 001)。多重比較の結果,いずれの利用 ルを込みにしたコミュニケーション頻度の平均値 類型においても,課題的コミュニケーションの頻 を示したものである。 度が最も高く,次いで情緒的コミュニケーション, コンサマトリー的コミュニケーションの順であっ た。ほとんどのコミュニケーション内容間におい て有意差が見られたが,従来型の課題的コミュニ ケーションと情緒的コミュニケーションの頻度に は有意な差が見られなかった。従来型はコンサマ トリー的コミュニケーションの頻度が他の二つよ りも有意に低かった。 3つめの交互作用として,コミュニケーション ツールとコミュニケーション内容の交互作用につ いて検討する(B×C)。図7は4種類の利用類型 を込みにしたコミュニケーション頻度の平均値を 図6 示したものである。ここでは分析対象者全体での, 利用類型別・コミュニケーション内容別の コミュニケーション頻度の平均値 携帯電話を利用したコミュニケーションの様相を 検討することになる。 まずコミュニケーション内容を固定して利用類 型の単純主効果を検定した。ここでは,3種類の コミュニケーションツールの合計の頻度を類型間 で比較することになる。コンサマトリー的コミュ ニケーションと情緒的コミュニケーションでは利 用類型の有意な単純主効果が見られたが,課題的 コミュニケーションでは単純主効果は有意ではな かった (コンサマトリー的:F (3,291)=6. 03, p<. 001;課題的:F (3,291)=2. 63,ns ;情緒的: F (3, 291)=6. 00,p<. 001)。 多重比較の結果, い ずれのコミュニケーション内容においても,情報 収集型が最も低い頻度を示しており,コンサマト 図7 コミュニケーションツール別・内容別の コミュニケーション頻度の平均値(全体) リー的コミュニケーションでは,従来型やネット 交流型よりも,情緒的コミュニケーションでは他 まずコミュニケーション内容を固定してコミュ のすべての利用類型よりも有意に低いコミュニケー ニケーションツールの単純主効果を検定した。い ション頻度であった。 次に利用類型を固定して,コミュニケーション ずれのコミュニケーション内容においても有意な 内容の単純主効果を検討した。ここでは,3種類 ツールの単純主効果が見られた(コンサマトリー のコミュニケーションツールの合計の頻度をコミュ 的:F (2,582)=213. 17,p<. 001;課題的:F (2, ニケーション内容間で比較することになる。その (2,582)=35. 29, 582)=41. 85,p<. 001;情緒的:F 結果,すべての利用類型において,コミュニケー p<. 001)。ネットを利用したコミュニケーション ― 27― 愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― 第4号 頻度がどの内容においても最も高い値を示したが, 用類型に注目しながらまとめることとする。煩雑 多重比較の結果,コンサマトリー的コミュニケー な結果を視覚化するために,類型ごとに,コミュ ションと,課題的コミュニケーションでは,ネッ ニケーションツール別,内容別のコミュニケーショ ト,メール,通話の順となり,すべてのツール間 ン頻度の平均値を図8から図11に示した。 で有意な差が見られた。情緒的コミュニケーショ 4つの利用類型の中で,ネット中心型(図8) ンではネットが通話やメールよりも有意に高いコ とネット交流型(図9)では,ネット上のツール ミュニケーション頻度を示した。 を利用したコミュニケーションの頻度が,すべて 次にコミュニケーションツールを固定してコミュ のコミュニケーション内容において高い値を示し ニケーション内容の単純主効果を検定した。その ており,通話とメールによるコミュニケーション 結果,いずれのツールにおいてもコミュニケーショ 頻度は明らかに低くなっている。その傾向は,ネッ ン内容の単純主効果がみられた (通話:F (2, ト上で友人との交流を行うネット交流型において 582)=121. 55, p<. 001; メ ー ル : F (2,582)= より明瞭である。これに対して従来型(図10)で 205. 85, p<. 001; ネ ッ ト : F (2,582)=24. 90, はメールによるコミュニケーション頻度が依然と p<. 001)。多重比較の結果,通話では,課題的お して高く,携帯電話による従来的なコミュニケー よび情緒的コミュニケーションに比べてコンサマ ション形態も存続していることが分かった。情報 トリー的コミュニケーションの頻度が有意に低かっ 収集中心型(図11)は,他の利用類型に比べて, た。メールではすべての内容間に有意差があり, そもそもコミュニケーションを目的とした利用が 頻度の高いものから課題的,情緒的,コンサマト 少なく,全体として低い値に留まっている。ただ リー的コミュニケーションの順であった。ネット し,他者との交流がないわけではなく,図11から では,情緒的コミュニケーションに比べてコンサ 課題的コミュニケーションにはメールを利用して マトリー的コミュニケーションの頻度が有意に高 いることが読み取れる。利用類型の基準となった かった。 携帯電話の利用比率でも,ネットでの情報収集が 調査対象者全体の携帯電話を利用したコミュニ 多いことから,他者との交流にはメールを,情報 ケーションの様相が検討された図7では,すべて 収集にはネットを,という使い分けをしているよ のコミュニケーション内容においてネット上のツー うに思われる。 ルを利用したコミュニケーションの頻度がもっと も高い値を示した。このことは,携帯電話を利用 考 したコミュニケーションが従来からのツールであ 察 る通話やメールからネット上のツールにかなり移 本研究では古谷・坂田(2006)のコミュニケー 行したことを如実に示すものであろう。携帯電話 ション尺度の利点である,コミュニケーション内 の目的別利用比率をもとに対象者を分類した利用 容を3分類して分析可能であるという特徴を保持 類型において,ネット中心型,ネット交流型とい しつつ,変化の大きい現在のコミュニケーション うネットを頻繁に利用する類型が所属人数におい 環境において,携帯電話を利用したコミュニケー て1,2位を占めたことと対応する結果であろう。 ションの様相を把握しうる新しいコミュニケーショ ただし,課題的コミュニケーションにおいては, ン尺度の開発を試みた。 有意差はあったもののネットとメールの頻度の差 新美(2 012)では,古谷・坂田(2 006)のコミュ はわずかであり,メールというツールの利用が根 ニケーション尺度の構成項目はそのままに,内的 強く残っていることも示された。 整合性や因子構造を検討することによって再構成 以上,分散分析の結果に基づいて,1次の交互 が行われた。その結果,携帯電話利用の多様化を 作用の詳細を報告してきたが,今回の分析では, 一定程度反映できるとされたものの,いくつかの 利用類型別のコミュニケーション内容の特徴を検 問題点が指摘された。第1点は構成項目数の少な 討することが主目的のため,ここまでの結果を利 さによって3種類のコミュニケーション内容に対 ― 28― 携帯電話によるコミュニケーション内容の分析(Ⅱ)(新美明夫) 図8 コミュニケーションツール別・内容別の コミュニケーション頻度の平均値(ネット中心型) 図9 コミュニケーションツール別・内容別の コミュニケーション頻度の平均値(ネット交流型) 図10 コミュニケーションツール別・内容別の コミュニケーション頻度の平均値(従来型) 図11 コミュニケーションツール別・内容別の コミュニケーション頻度の平均値(情報収集中心型) 応する因子が抽出されなかったこと,第2点は構 ニケーションの特徴をこの尺度が明瞭に表現でき 成項目がやや生硬な表現が目立ったことであった。 るかどうかを検討することによって,尺度の適用 これらの問題点を解消すべく,本研究では,あ 可能性の検討を行った。その結果,友人との交流 らかじめ3種類のコミュニケーション内容を想定 に通話やメールをあまり使わず,交流手段をネッ した項目作りを行い,十分な項目数を確保し,表 ト上のツールにほぼ移行したと思われるネット交 現の改良も行った。その結果,当初想定していた 流型やネット中心型では,すべてのコミュニケー 3種類のコミュニケーション内容に対応する因子 ション内容においてネット上のツール経由のコミュ が抽出され,この尺度の利点であるコミュニケー ニケーションの頻度が明瞭に高くなっており,通 ション内容を3分類して分析可能という特徴を確 話やメールを主に使う従来型とは対照的な結果を 保できた。さらに携帯電話の従来からの使い方で 示した。これらの類型では,とくにコンサマトリー ある通話とメールに加え,ネット上のツールに対 的なコミュニケーションについてネット経由のツー しても適用したが,いずれのコミュニケーション ルのコミュニケーション頻度が高くなっており, ツールにおいても,新訂版コミュニケーション尺 ネット上のツールが普及する以前はメールで行う 度は高い信頼性を確保することができた。 ことが多かったコンサマトリー的コミュニケーショ 本研究では信頼性の検討とともに,携帯電話の ンにおいては,新美(2012)の指摘した「交流の 目的別利用比率に基づいた利用類型におけるコミュ ある複数の人」に伝える形態が一般化したことを ― 29― 愛知淑徳大学論集 ―心理学部篇― 第4号 示すものであろう。通話やメールの利用が多い従 利用実態調査 来型においても,メールを使ったコミュニケーショ 会 ン頻度がもっとも高いのはコンサマトリー的コミュ 情報通信ネットワーク産業協 インプレス R&D インターネットメディア総合 .インターネット白書2 010 研究所(2 010 ) ニケーションではなく課題的コミュニケーション である。コンサマトリー的コミュニケーションは インプレスジャパン 「交流のある複数の人」に伝えたい内容であり, イプシマーケティング研究所 2004 第4回コン メールからより便利なネット上のツールで行うも シューマレポート携帯電話の利用に関する調 のに明確に移行したと言えるであろう。 査(Ⅱ)調査結果データ編 ht t p: //www. i ps e m. c om/r e por t _c s mr / 以上のように,今回構成した新訂版コミュニケー r e por t _c 4/I PSe _r e por t 4. pdf ション尺度は,それぞれの利用類型のコミュニケー ションの特徴を捉えることができ,変化の激しい 小寺敦之(2011).対人関係の親疎とコミュニケー ションメディアの選択に関する研究 現在のコミュニケーション環境においても適用可 信学会誌,29 (3),1323 . 能な用具になったと思われる。そこで今後の展開 についても一言述べておきたい。今回の適用可能 情報通 古谷嘉一郎・坂田桐子(2006).対面,携帯電話, 性の検討では,ネット上のコミュニケーションツー 携帯メールでのコミュニケーションが,友人 ルは, 「mi xi ,Fac e book,Twi t t e r ,LI NEなどネッ との関係維持に及ぼす効果:コミュニケーショ ト上のツール」という説明でひとまとめにして回 ンのメディアと内容の適合性に注目して 答を求めた。これらのツールはその特徴がかなり 会心理学研究,22 (1),7284. 社 異なること,従来型携帯電話とスマートフォンで 新美明夫(2009). 「若年層の友人関係における携 はかなり使い勝手が異なること,さらに新しい発 帯電話利用」研究-その概観と大学生の経年 想のツールが続々と開発されていること,などか 的調査による検討- ら,今後はツールごとに尺度を適用して回答を求 ミュニケーション学部・心理学研究科篇), めるなど,より詳細な検討をする必要があるだろ 9,89102. 愛知淑徳大学論集(コ 新美明夫(2012).携帯電話によるコミュニケー う。 ション内容の分析-古谷・坂田のコミュニケー 文 ション尺度の検討と適用- 献 集(心理学部篇),2,6978. 朝日新聞(2 013). (フロントランナー)LI NE株 式会社執行役員・舛田淳さん 新美明夫・松尾美紀(2011).携帯電話利用の若 2013年4月6日 年層における多様化-大学生の利用類型の検 朝刊 討- 電気通信事業者協会(2013).2013年09月末現在 事 業 者 別 契 約 数 〈 ht t p: //www. t c a. or . j p/ 愛知淑徳大学論集(心理学部篇),1, 91102. 総務省統計局(2013).人口推計-平成25年10月 dat abas e /2013/09/〉(2013. 10. 23) 移動通信委員会(2 013).2013年度 愛知淑徳大学論 報-〈ht t p: //www. s t at . go. j p/dat a/j i ns ui / 携帯電話の ― 30― pdf 〉(2013. 10. 23) pdf /201310.