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小学校における思考力・表現力を育成するカリキュラムの研究

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小学校における思考力・表現力を育成するカリキュラムの研究
カリキュラム研究
小学校における思考力・表現力を育成するカリキュラムの研究
―
中学校への円滑な接続を図るための言語活動を位置付けた年間指導計画作成を通して ―
呉市立下蒲刈小学校
石廣
幸恵
研究の要約
本研究は,中学校への円滑な接続を図るための言語活動を位置付けた年間指導計画を作成することで,
小学校における思考力・表現力を育成するためのカリキュラムの在り方について明らかにしようとする
ものである。所属校の年間指導計画において,中学校との円滑な接続を踏まえた具体的な言語活動を位
置付けるという視点が不足していることから,言語活動を明確に示した年間指導計画が必要であると考
えた。文献研究から,思考力・表現力を育成するためには,小学校第6学年及び中学校第1学年におけ
る学習内容や指導事項の系統性を明らかにすることが先決であることが分かった。そして,国語科,算
数・数学科における指導事項と言語活動を整理した表や算数・数学的活動表を作成した。以上のことを
踏まえ,中学校への円滑な接続を図るための言語活動を位置付けた年間指導計画を作成した。
キーワード: 思考力・表現力
Ⅰ
円滑な接続
主題設定の理由
小学校学習指導要領解説総則編(平成20年,以下
「解説総則編」とする。)では,基礎的・基本的な
知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して
課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現
力を育むことが求められている。また,中央教育審
議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び
特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(平
成20年,以下「中教審答申」とする。)では,発達の
段階に応じた教育課程上の工夫の観点から,学校段
階間の円滑な接続に留意する必要があることが述べ
られている。
所属中学校区では,小中一貫教育を推進する中,
所属小学校の算数科の授業において,言語活動(書
く・話す・聞く)を取り入れた授業を行うなど,児
童に思考力・表現力を育む取組を進めてきた。しか
し,
平成24年度全国学力・学習状況調査の結果から,
所属中学校区の児童生徒に思考力・表現力を十分に
育成することができていないことが分かった。これ
までの実践は,中学校の指導内容との系統性や関連
性をもたせた年間指導計画が不十分で,系統立った
指導を展開していなかった。そのため,思考力・表
現力を育成するうえで重要な言語活動の位置付けも
不十分であった。
そこで,これらの課題を解決するために,まず,
教科の目標や特質に応じた言語活動を具体化してい
言語活動
く。そして,中学校第1学年との系統性や関連性を
明確にし,中学校への接続を意識した小学校第6学
年における言語活動を位置付けた年間指導計画を作
成していく。このことが,所属小学校の児童の思考
力・表現力を育成することにつながると考え,本主
題を設定した。
Ⅱ
研究の基本的な考え方
1
思考力・表現力について
(1)思考力・表現力に関する課題
学校教育法第30条第2項において,「生涯にわた
り学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び
技能を習得させるとともに,これらを活用して課題
を解決するために必要な思考力,判断力,表現力そ
の他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態
度を養うことに,特に意を用いなければならない。」
と小学校教育の目標が規定されている。ここでは,
学力に重要な三つの要素として,①基礎的・基本的
な知識・技能の習得,②知識・技能を活用して課題
を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,
③学習意欲(主体的に学習に取り組む態度)が明確
に示されている。
しかし,「中教審答申」において,「各種調査の
結果からは,基礎的・基本的な知識・技能の習得に
ついては,個別には課題のある事項もあるものの,
全体としては一定の成果が認められる。しかし,思
- 1 -
考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式の問
題に課題がある。これらの力は現行学習指導要領が
重視し,子どもたちが社会において必要とされる力
であることから,大きな課題であると言わざるを得な
い。」1)と述べられている。また,平成24年度全国学
力・学習状況調査結果からも,
どの教科においても,
選択式・短答式に関する正答率より,思考力・表現
力が求められる記述式の正答率が低いという課題が
明らかになっている。
なお,思考力と判断力の関係については次のよう
に考える。認知とは,認識することであり,認識には思
考が必要であると梅本(1996)は表現している。ま
た,中村和世ら(2011)は,認知プロセスの中に,
判断することが含まれていると述べている。これら
の知見から,思考力の中に判断力も含まれると考え,
引用文以外では「判断力」の表記はしないこととす
る。
(2)思考力・表現力を育成するために
「中教審答申」では,「各学校で子どもたちの思
考力・判断力・表現力等を確実にはぐくむために,
まず,各教科の指導の中で,基礎的・基本的な知識・
技能の習得とともに,観察・実験やレポートの作成,
論述といったそれぞれの教科の知識・技能を活用す
る学習活動を充実させることを重視する必要があ
る。」2)としている。そして,思考力・判断力・表
現力等を育むために各教科において行う「体験から
感じ取ったことを表現する」「事実を正確に理解し
伝達する」といった重要な六つの学習活動例を挙げ
ている。このような活動を各教科において行うこと
が不可欠であり,言語を通した学習活動を充実する
ことにより,思考力・判断力・表現力等の育成が効
果的に図られると述べている。
このことを受けて,「解説総則編」では,「各教
科等の指導に当たっては,児童の思考力,判断力,
表現力等をはぐくむ観点から,基礎的・基本的な知
識及び技能の活用を図る学習活動を重視するととも
に,言語に対する関心や理解を深め,言語に関する
能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え,児童
の言語活動を充実すること。」3)と明示されている。
つまり,言語は思考力・表現力の基盤となってお
り,各教科において,思考力・表現力を育成するた
めには,基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図
る学習活動を重視するとともに,言語環境を整え,
言語活動の充実を図ることが必要であるといえる。
(3) 各教科で育成する思考力・表現力と言語活動
の充実
「言語事項の充実に関する指導事例集【小学校版】」
では「平成20年答申では,言語は,知的活動(論理
や思考)の基盤であるとともに,コミュニケーショ
ンや感性・情緒の基盤でもあり,豊かな心を育む上
でも,言語に関する能力を高めていくことが重要で
あるとしている。このような観点から新しい学習指
導要領においては,言語に関する能力の育成を重視
し,各教科等において言語活動を充実することとし
ている。」4)と示されている。また,相澤秀夫(2009)
は,「思考力や判断力,表現力を高める観点から言
語活動を充実させるためには,各教科における育成
すべき思考力や判断力,表現力等を明確にしていく
ことが先決である。」5)と述べている。
そこで,国立教育政策研究所教育課程研究センタ
ー「評価規準の作成のための参考資料(小学校)」
(平成22年)に記載されている教科ごとの評価規準
をもとに,各教科における思考力・判断力・表現力
及び,各教科の小学校学習指導要領解説に示されて
いるそれぞれの教科の特質に応じた言語活動の充実
についての2点を,表1のように整理した。
このように各教科で育成したい思考力や表現力を
明確にすることで,教科特有の学習活動や身に付け
させたい思考力・表現力を見いだすことができる。
また,各教科等で思考力・表現力を育成する上で効
果的な言語活動を捉えることができる。
2
所属校の児童の実態
(1) 所属中学校区の進める小中一貫教育
呉市では全市をあげて小中一貫教育を進めており,
所属中学校区でも学力・生活の両面から,小・中学
校の教職員で中学校区の実態や課題を踏まえた小中
一貫教育を推進してきている。
学力面については,各学力テストの課題を分析し,
課題の解決に向けた指導法等について,合同の授業
交流を通して研修を進めてきた。また,学びの基礎
となる家庭学習や読書活動の推進を共通して行った
り,生徒の自尊感情を高め,児童に目標をもたせる
合同授業を実施したりする等の様々な取り組みを行っ
てきた。生活面については,児童生徒の自尊感情を
高める合同行事の実践や一貫性のある小・中学校の
生徒指導規定の作成などの実践を行ってきた。また,
体力向上を目指したプログラムの作成にも取り組ん
でいる。
小・中学校の教職員が,授業交流などの合同研修
を中心に課題や指導法等の共通理解を図り,実践を
積み重ねていくことで,各種学力テストの基礎的な
- 2 -
表1
国語
社会
算数
理科
生活
音楽
図画
工作
家庭
体育
各教科における育成すべき思考力や判断力,表現力と教科の特質に応じた言語活動の充実について
思考力・判断力・表現力
・相手や目的,意図に応じ,話したり聞いたり話し合ったりし,自分の考え
を明確にしている。
・相手や目的,意図に応じ,文章を書き,自分の考えを明確にしている。
・目的に応じ,内容を捉えながら本や文章を読み,自分の考えを明確にして
いる。
・社会的事象から学習問題を見いだして追究し,社会的事象の意味について
思考・判断したことを適切に表現している。
・日常の事象を数理的に捉え,見通しをもち筋道立てて考え表現したり,その
ことから考えを深めたりするなど,数学的な考え方の基礎を身に付けてい
る。
・自然の事物・現象から問題を見いだし,見通しをもって事象を比較したり,
関係付けたり,条件に着目したり,推論したりして調べることによって得
られた結果を考察し表現して,問題を解決している。
・具体的な活動や体験について,自分なりに考えたり,工夫したりして,そ
れをすなおに表現している。
・観察や調査・見学などの体験的な活動やそれに基づ
く表現活動
・具体物を用いたり,言葉,数,式,図を用いたりし
て考え,説明する活動
・観察,実験の結果を整理し考察する学習活動や,科
学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したり
するなどの学習活動
・自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え
合う活動を行い,身近な人々とかかわることの楽しさ
が分かり,進んで交流する活動
・音楽を形づくっている要素を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面 ・楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言葉
白さなどを感じ取りながら,音楽表現を工夫し,どのように表すかについ
で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを理解す
て思いや意図をもっている。
る活動
・音楽を形づくっている要素を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面
白さなどを感じ取りながら,楽曲の特徴や演奏のよさなどを考え,味わっ
て聴いている。
・感じたことや材料などを基に表したいこと思いついたり,形や色,用途な ・対象について感じたことなどを言葉にしたり友人と
どを考えたりしている。
話し合ったりするなどの言語活動
・作品などの形や色などから,表現の面白さをとらえたり,よさや美しさを
感じ取ったりしている。
・家庭生活について見直し,身近な生活の課題を見つけ,その解決を目指し ・衣食住など生活の様々な言葉を実感をもって理解し
て生活をよりよくするために考え自分なりに工夫している。
たり,自分の生活における課題を解決するために言
葉や図表などを用いて生活をよりよくする方法を
考えたり,実習などで体験したことをまとめたり発
表したりするなどの学習活動
・自己の能力に適した課題の解決を目指して,運動の仕方を工夫している。 ・筋道を立てて練習や作戦を考え,改善の方法などを
・身近な生活における健康・安全について,課題の解決を目指して考え,判
互いに話し合ったり,身近な日常生活の体験や事例
断し,これらを表している。
などを用いて話し合ったりする活動
問題については,所属中学校区の小・中学校とも一
定程度の成果を上げてきている。
(2) 所属校の児童の課題
所属小学校の全国学力・学習状況調査結果を表2
に示す。特に,問題(B)ついては,全国平均と比
較すると所属校の正答率が全国平均より国語科は
7.8ポイント,算数科は15.2ポイント上回っており,
一見課題がないように見える。
が低い。算数科では,必要な情報を取り出し,判断
の理由を記述する設問の正答率が最も低く,国語科
と同じく全体的に記述式の問題形式の正答率が低い。
これらのことから,所属小学校の児童は,身に付
けた基礎的・基本的な知識・技能を活用して,読み
取った内容から選択した情報を基に思考したり,思
考の経過を表現したりする力に課題があるといえる。
3
表2
特質に応じた言語活動の充実
・日常生活に必要とされる対話,記録,報告,要約,
説明,感想などの言語活動
全国学力・学習状況調査における所属小学校の正答
率と全国平均との差
問題(A)
問題(B)
国語科
86.3%(+ 4.6)
63.6%(+ 7.8)
算数科
77.8%(+ 4.3)
74.4%(+15.2)
しかし,設問ごとに詳しく分析していくと次のよ
うな課題が見えてきた。国語科では,話合いの目的
を確認しながら計画的に話合いを進める司会の役割
を選択する〔A話すこと・聞くこと〕領域の設問の
正答率が低く,全体的に記述式の問題形式の正答率
中学校との円滑な接続について
(1) 中学校との円滑な接続が求められる背景
一般的に小学校段階に比べ,中学校段階では学習
内容が高度化していくといわれている。例えば,千々
岩弘一(2010)は国語科の説明力について,「中学
校段階では,小学校段階で育成された理由や根拠,
具体的例をもって説明内容を構築していく能力の基
礎の上に立って,より論理性が保障された『説明内
容生成力』を育成しなければならない。」 6)と述べ
ている。なお,『説明内容生成力』とは,説明する
内容を作り上げる能力のことである。また,柗本新
一郎(2009)は数学的な表現力について,「中学校
- 3 -
数学科では,小学校算数科で学んできている推論(帰
納,類推,演繹)をより一層高めると同時に,演繹
的な考え方を中心として推論する能力を高めるねら
いがある。自分の考えを他者に伝えるために数学固
有の表現形式で話したり,かいたりする力が求めら
れる。」7)と述べている。
「中教審答申」では,「子どもたちが思春期に入
り,学習内容も高度化する中学校は,小学校段階に
比べ,授業の理解度が低下したり,問題行動等が増
加するといった多くの教育課題を抱えている。」8)
と示され,子どもたちが順調に中学校生活を始める
ことができるよう中学校との円滑な接続を図ること
が極めて重要であることが述べられている。このこ
とから,諸問題を解決するために小・中学校間の円
滑な接続を図ることが求められていることが分かる。
しかし,学習指導面の課題の解決に向けて,中学校
教員の行う乗り入れ授業や異学年で行う合同授業な
どの実践はあるものの,高度化する学習内容に対応
できる児童を育成していくために,小学校のカリキ
ュラムや学習指導を改善するという視点をもった先
行研究は少ない。埼玉県立総合教育センターが発行
している「授業力向上のための研修運営の参考例
Vol.3」においても,中学校進学における諸問題を
解決していくために,小・中学校の円滑な接続を図
っていくことの重要さを理解し,特色ある取組を実
施している小学校はあるが,そのほとんどが行事の
交流などの体験活動を中心とした連携であることが
指摘されている。
そこで,学習指導面における課題の解決を図った
年間指導計画を作成し,それに沿った指導の実践が
必要であると考える。
(2) 中学校への接続を意識したカリキュラム
中央教育審議会初等中等教育分科会学校段階間の
連携・接続等に関する作業部会「小中連携,一貫教
育に関する主な意見等の整理」(平成24年)では,
「小中一貫」を,9年間を通じた教育課程を編成し
て行う系統的な教育と整理し,小・中学校9年間の
学びを支える学校間の連携・協力体制の在り方につ
いて検討が進められていることを示している。また,
齋藤義憲(平成21年)は,「小・中学校間の接続を
滑らかにするため,小・中学校の教員が校種をこえ
て連携し,9年間の指導内容の系統性を考慮し,児
童・生徒の発達段階に応じた連続性のある指導をす
ることが,今後ますます重要になってきている。」9)と
述べている。つまり,学習指導面での小・中学校の
接続を円滑にするためには,学習内容や指導事項の
系統性を明らかにし,それに基づいた年間指導計画
が必要であると考える。しかし,所属校のカリキュラ
ムを見ると,中学校との円滑な接続を踏まえ,児童
の課題を解決するために,具体的な言語活動を位置
付けるという視点は不足している。
これらのことから,本研究において,中学校への
円滑な接続を図るための小学校第6学年における国
語科,算数科の年間指導計画について考えていく。
その計画には,学習内容や指導事項,言語活動につ
いて小・中学校の系統性を整理した上で,小学校段
階で付けるべき力を踏まえた言語活動を位置付けて
いく。
なお,教科については,全国学力・学習状況調査
及び,「基礎・基本」定着状況調査によるデータの
経年比較を行いやすい理由から,教科を国語科・算
数科に絞って計画を立てることとする。
Ⅲ
年間指導計画作成に当たって
1
教育課程編成について
「解説総則編」において,各学校において創意工
夫を生かした特色ある教育課程を編成・実施し,特
色ある学校教育活動を進めていくためには,地域や
学校,児童の実態等を的確に把握・分析し,それを
基に,学校の教育課題を明確にし,教育課程の編成
と評価に当たることが重要であると示されている。
また,水戸部修治(平成21年)は,「国語科にお
ける魅力ある教育計画の立案」において,年間指導
計画には活用の際の重点の置き方によりいくつかの
種類があり,それぞれの特徴を踏まえた上で,授業
改善に生かすという観点から,各学校において適切
に選択する必要があると述べている。年間指導計画
の種類と特徴を表3に示す。
1
2
3
4
表3 年間指導計画の種類と特徴(1)
種類
特徴
すべての領域が全
各領域等を能力的に関連させ
体にわたるもの
て指導するかが把握しやすい。
領域ごとに作成し
当該領域の単元間の関連性・系
たもの
統性を見通しやすい。
複数学年のまとま
二学年間で繰り返したり発展
りを見通せるもの
したりするかが見通しやすい。
項目を絞り込み,一 特定の指導事項の系統性が見
覧性を高めたもの
通しやすい。
水戸部は,年間指導計画の備える条件として,①
付けたい能力②単元の基本的な要素(単元名・教材
名・実施時期・配当時間・主な学習活動など)③単
元の評価のポイント(評価規準・評価方法など)④
- 4 -
関連性・系統性(国語科と他領域・各教科等とのか
かわり・上下の学年とのかかわりなど)の四つを挙
げている。また,年間指導計画を作成する際,年間
指導計画をどう活用するのかを具体的なイメージを
描きながら,必要な条件を選定し,形式を確定して
いくことが大切であると述べている。
これらのことから,所属校の児童の実態や重点目
標との関連を図った年間指導計画を作成していくた
めの必要な条件について整理していく。
2
所属校の研究実践等の関連を図った年間
指導計画作成に必要な条件について
所属校では,児童の主体的な学びと表現力の育成
をめざし,言語活動(書く・話す・聞く)の場を設
定・工夫した学習プロセスの確立に重点を置き,研
究を進めている。所属校の児童に,身に付けた基礎的・
基本的な知識・技能を活用して,読み取った内容か
ら選択した情報を基に思考し,その経過を表現する
力を育成していくために,次の年間指導計画を作成
していく。国語科については,課題のある領域が特
定しているので,表3の2「領域ごとに作成した年
間指導計画」を作成する。領域は,〔A 話すこと・
聞くこと〕に絞る。算数科については,領域や単元
間のつながりを把握しやすい表3の1「すべての領
域が全体にわたる年間指導計画」を作成する。
年間指導計画の備える条件としては,両教科とも,
①単元の基本的な要素(単元名・実施時期・主な学
習内容など)②関連性・系統性をもたせた指導事項
(中学校第1学年とのかかわり)③言語活動(算数
科については算数的活動)とする。
Ⅳ
各教科における言語活動について
1
言語活動を展開していくために
「言語力の育成方策について」
(平成19年)には,
学校段階ごとの指導の特質について,「幼児期から
小・中・高等学校へと発達の段階が上がるにつれて,
具体と抽象,感覚と論理,事実と意見,基礎と応用,
習得と活用と探究などについて認識や実践ができる
水準が変化している。それに応じて,指導内容や言
語活動の特色付けをしていく必要がある。」10)と示
している。また,相澤は(2009)は,「各教科等に
おいて言語活動を展開する場合には,それがどのよ
うな資質・能力の育成につながるのかを見通しつつ,
効果的な言語活動を用意することが求められる。」11)
と述べている。
(1) 国語科における言語活動
小学校及び中学校学習指導要領解説国語編(平成
20年,以下「小・中学校解説国語編」とする。)に
おいて,小学校第5・6学年と中学校第1学年の〔A
話すこと・聞くこと〕領域は,「話題設定や取材に
関する指導事項」「話すこと」「聞くこと」「話し
合うこと」と四つの指導事項に分けられることが明
記されている。その四つの指導事項に合わせ,「小・
中学校解説国語編」に示されている言語活動の具体
例から,指導のポイントを整理したものを表4に示
す。なお,「話題設定や取材に関する指導事項」に
ついては,「話す準備」と表記することとする。小・
中学校における指導のポイントを比較すると,小学
校段階においては四つの指導事項にバランスよく指
導のポイントが位置付いている。しかし,中学校段
階になると指導のポイントが位置付いていない指導
事項もあり,内容についても簡単な表記のみである。
このことから,小学校段階において基礎的な知識や
技能を発達段階に応じて習得させ,中学校段階へと
接続していることが分かる。中学校への円滑な接続
を図るためには,小学校段階における指導事項を確
実に習得させていく必要がある。また,中学校第1
学年での指導のポイントを小学校第6学年から段階
的に取り入れていくことで,より円滑な接続を図る
ことができると考える。
よって,小学校段階での指導事項と合わせ,中学
校第1学年における指導のポイントを発達の段階に
合わせて位置付けた国語科年間指導計画を作成して
いく。その際, 表4の指導のポイントを基に言語活
動を設定していく。
(2) 算数科における言語活動
小学校学習指導要領解説算数編において,算数科
では,算数的活動を充実させ,基礎的・基本的な知
識及び技能を確実に身に付けさせるとともに,数学
的な思考力・表現力を高めることや学んだことを生
活や学習に活用する態度を育てることを重視してい
ると述べている。特に,①根拠を明らかにし,筋道
を立てて体系的に考えること,②言葉や数,式,図,
表,グラフなどの相互の関連を理解し,それらを適
切に用いて問題を解決すること,③自分の考えを分
かりやすく説明すること,④互いに表現し伝え合う
ことなどの活動を適切に設定し,内容を工夫してい
くことが必要であると示している。これらの四つの
活動は算数・数学的活動において重要な役割を果た
すものであり,これらの活動の工夫を行うことが言
語活動の充実につながると考えられる。
- 5 -
表4
国語科〔A 話すこと・聞くこと〕における言語活動指導のポイント
小学校第5・6学年
ア 考えたことや伝えたいことなどから話題を決め,
事指
収集した知識や情報を関係付けること。
項導
ア
中学校第1学年
日常生活の中から話題を決め,
話したり話し合ったりするための材料を人との交流
を通して集め整理すること。
①
話
○ 話す内容と資料を整合させる。
す ポ
準 イ 指 ○ 本や文章を調べたり,インタビューやアンケートを行ったり
するなどして,自分なりに幅広く考え,資料を用意させる。
備 ン導
の ○ 事物や人物などの対象について十分調べ,そのよさを整理 ○ 相手や目的に応じて,伝えるべき事柄を簡潔に分か
ト
し,相手の要求や目的も考慮し,推薦したい点をまとめさせる。
りやすく書かせる。
イ 目的や意図に応じて,事柄が明確に伝わるように話の構成を イ 全体と部分,事実との意見との関係に注意して話を
工夫しながら,
構成し,
場に応じた適切な言葉遣いで話すこと。
相手の反応を踏まえながら話すこと。
指
ウ
話す速度や音量,言葉の調子や間のとり方,相手に
導
わかりやすい語句の選択,相手や場に応じた言葉遣い
② 事
話 項
などについての知識を生かして話すこと。
連をもたせた算数科における国語科との関連表や言
す
ウ 共通語と方言との違いを理解し,また,必要に応じて共通語
こ
語活動一覧表を作成している。そして,その表を基
で話すこと。
と
に授業マニュアルを作成し,それに基づいた授業を
ポ
イ
ン
ト
事
項
○ 適切な時間や機会での資料の提示,スピーチ原稿や資料への
指
目配りの仕方,相手の反応などに注意しながら話させる。
実施していくことで,一定の成果を上げている。
導
の ○ 理由を説明したり,エピソードとなる事例を挙げたり,図解
そこで,この宇土東小学校が作成した国語科との
したりするなどして印象付けるように話させる。
エ 話し手の意図をとらえながら聞き,
エ 必要に応じて質問しながら聞き取り,
関連表を参考に,所属校の研究実践に沿った小学校
指
導
自分の意見と比べるなどして考えをまとめること。
自分の考えとの共通点や相違点を整理すること。
③
聞
○ 聞き手は,内容を理解し,自分の考えと比べてより自分の考
く ポ指
えを明確にしたり,話し手の立場に立って助言や提案をしたり
こ イ導
させる。
と ンの
○ 聞き手は,推薦した理由がよく分かるか,納得できるかなど
ト
に留意して聞かせる。
④ 事 指 オ 互いの立場や意図をはっきりさせながら,計画的に話し合う
こと。
話
項導
し
合
う
こ
と
ポ
イ
ン
ト
指
導
の
○
話合いで異なる意見や対立する意見が出たときは,準備した
資料などに基づいて明確に対応させる。
(系統的につながっている内容
○
聞き手から質問したり,内容や伝え方について助言
し合ったりする場を設けることで,表現の仕方や聞き
方を互いに学び合わせる。
オ
話合いの話題や方向をとらえて的確に話したり,相
手の発言を注意して聞いたりして,自分の考えをまと
めること。
○ 話の要点をメモしたり必要に応じて質問したりし
ながら聞き取り,互いの共通点や相違点を整理するこ
とを通して,建設的な話合いをさせる。
下線は稿者による)
この四つの活動のうち,所属校の児童の課題とな
る①根拠を明らかにし,筋道を立てて体系的に考え
ること,②言葉や数,式,図,表,グラフなどの相
互の関連を理解し,それらを適切に用いて問題を解
決することの2点に絞って,数学的な思考力・表現
力を高めるための算数・数学的活動を整理したもの
を表5に示す。表を整理する際,「小・中学校学習
指導要領解説算数・数学編」に示されている算数・
数学的活動を参考にした。
Ⅴ
年間指導計画の作成
中学校への円滑な接続を図るための言語活動を位
置付けた年間指導計画の作成の手順を以下のように
示す。
① 横軸に指導時期をとる。
② 国語科については,縦軸に表4の言語活動指導
表5
数学的な思考力・表現力を高める算数・数学的活動表
小学校第6学年
中学校第1学年
○学習情報の整理・選択
○学習情報の整理・選択
・既習を振り返り,課題解決に必要となる
・既習を振り返り,課題解決に必要となる情
①根拠を明らかにし,
情報を整理・選択させる。
報を整理・選択させる。
筋 道 を 立て て体 系 的
○既習事項の選択
○既習事項の選択
に考えること
・あらかじめ提示している課題解決に必要
・課題解決に必要となる既習事項を考え,選
となる既習事項を選択させる。
択させる。
○用語・記号・表現方法の理解
○用語・記号・表現方法の確認
②言葉や数,式,図,
・課題解決に必要となる数,式,図,表,
・課題解決に必要となる数,式,図,表,グ
表,グラフなどの相互
グラフなど意味や使い方を理解させる。
ラフなど意味や使い方を確認しておく。
の関連を理解し,それ
○自己の思考
○自己の思考
ら を 適 切に 用い て 問
・解決の手立てとして,推論(帰納,類推, ・解決の手立てとして,推論(演繹を中心に)
題を解決すること
演繹)等を指導する。
等を指導する。
(系統的につながっている内容 下線は稿者による)
- 6 -
- 7 -
算
数
科
国
語
科
う 話
こ し
と合
聞
く
こ
と
話
す
こ
と
数
学
的
な
思
考
力
・
表
現
力
を
言
い
葉
て
な
解
ど
決
を
す
適
る
切
こ
に
と
用
る し
こ 、
と 筋
え に
考 確
て 明
下線を 引いてい
る)
(言語活動にかか
わりがある 部分に
算数的活動
高
め
る
学
習
活
動
の
工
夫
立 を
道 根
を 拠
学習内容
単元名
主な
言語活動
●
◎
中
重
学
点
校
を
第
お
一
い
学
た
年
指
の
導
指
の
導
ポ
の
イ
ポ
ン
イ
ト
ン
、
ト
話
す
準
備
学習内容
単元名
月
学校のよさを宣伝しよ
う
想像を豊かにして「語
り」をしよう
「風切るつばさ」
意見を聞き分けよう
6
◎エピソードとなる事
例を挙げたり,資料提
示をしたり,相手の反
応に注意して話したり
するなど印象付けるよ
うに話す。
聞き手に自分の考えを
伝えることができるよう
に,聞き手の反応を確
かめながら話す。
●自分の意見を分かり
やすく伝わるように簡
潔に分かりやすく原稿
にまとめる。
●話す速度や間のとり
方,場に応じた言葉遣
いを意識しながら聞き
手を意識しながら話
す。
◎書く事柄を整理して
構成を考え,具体例や
根拠を挙げて説得力
のある意見文を書く。
分数でかけたり,わっ
たりすることの意味を
理解し,分数の乗除の
計算をする。
線対称・点対象につい
て理解し,それらの図
形の性質を調べたりか
いたりする。
◎自分の意見を明確
にし,相手の意図を考
えながら資料に基づい
て提案し,話合いを進
める。
テーマにそった話がで
きるよう資料の用意を
したり,伝える事柄を
書いたりするなど話合
いの準備を進める。
自分の意見を的確に
伝えて,ほかの人の意
図を考えながら話し合
う。
文字を使っ
て数量の関
係を式に表
したりよん
だりする。
文字と式
比の意味を
理解し,2
量の割合を
表す。
比とその
利用
拡大・縮小について理
解し,それらを使って
図をかいたり,実際の
長さを測定したりする。
図形の拡大と縮小
□,△を
使った学習
内容と関連
付けてa,x
の文字を用
いた問題に
ついて類推
的に考え
る。
数量を関
係を式に
表したり,
式をよみ
とったりす
る活動
対称の性質と関連付 整数や小数,同分母
けて,対称図形のかき 分数の加法・減法の計
方を類推的に考える。 算の仕方と関連付けて
分数についての計算
の意味や仕方を演繹
的に考える。
身の回りから,対称な 分数についての計算
図形を見付ける活動
の意味や計算の仕方
を,言葉,数,式,図,
数直線を用いて考え,
説明する活動
11
12
1
◎目的に合わせてイン
ターネットやアンケート
を使って資料を用意
し,自分の経験を踏ま
えながら考えを簡潔に
まとめる。
●事実と意見を使い分
けながら話したい事柄
を整理し,話す速度や
間のとり方,分かりや
すい語句の選択,場に
応じた言葉遣いに注意
しながら話す。
◎質問したり,内容や 自分の経験や考えと
伝え方について助言し 比べながら説明を聞
合ったりする。
く。
スピーチ原稿や資料
への目配りの仕方,相
手の反応などに注意し
ながら話す。
●関連するテーマの
本を読んで,相手や目
的に応じて,伝えるべ
き事柄を簡潔に書く。
伴って変わる2つの数
量の関係を表にかいて
調べ,比例や反比例
の関係を使って問題を
解く。
比例と反比例
円の面積の
公式を導
き,円の面
積を計算で
求める。
円の面積
身の回りから,比例の
関係にある二つの数量
を見付けたり,比例の
関係を用いて問題を解
決したりする活動
日常生活か 身の回りから,縮図や 実際の場
ら,比が用 拡大図を見付ける活動 面と結び
いられる事
付けて,速
象を探した
さ,時間,
り,物事を
長さを求め
処理したり
る活動
する活動
円の面積
の求め方
を考え,説
明する活
動
図の観察
を通して円
の面積の
求め方を
演繹的に
考える。
直方体や
立方体の
体積の求
め方を考
え,説明す
る活動
直方体等
の体積の
求め方と関
連付けて
円柱や角
柱の体積
の求め方
を演繹的に
考える。
三角形・四
角形・円の
面積を求
める公式を
おさえる。
体積の単位
を知り,直方
体や立方体
の体積を求
める。
立体の体
積
2
3
具体的な事柄につい
て,起こり得る場合を
順序よく整理して調べ
る。
場合を順序よく整理し
て
資料の散らばり具合を
表やグラフに表して整
理し,特徴を読み取
る。
資料の調べ方
概形をとら
えて既習
の形と関連
付けて,お
よその面積
や体積を
求める活
動
既習の図形
の面積・体
積の求め方
と関連付け
ておよその
面積や体積
の求め方を
考える。
具体的な事実に即し
て,図,表などを用い
て順序よく調べ,整理
していく活動
具体的な事実に即し
て,図,表などを用い
て求め方を演繹的に
考える。
6年のまとめ
メートル法とその単位
の関係について関連
付けて単位の仕組み
を演繹的に考える。
●課題解決に必要とな
る既習事項と関連付け
て課題解決の方法を
使って推論する(帰納・
類推・演繹)。
●6年間で学んだ既習
事項の中から課題解
決に必要となる既習事
項をおさえる。
メートル法の単位の仕 6年間で学んだ既習事
組みについて調べ,い 項の確認をする。
ろいろな量の関係を理
解する。
量の単位
資料を分類整理し表や 身の回りで使われてい 課題解決に応じて解決
グラフに表し,説明す る量の単位を見付けた に必要となる手段を適
る活動
り,それがこれまでに 切に選択し,活用する
学習した単位とどのよ 活動
うな関係にあるかを調
べたりする活動
平均を用いて,身の回
りにある事柄について
統計的な考え方や見
方をする。
●必要に応じて質問や
メモをしながら,互いの
共通点や相違点を意
識しながら建設的な話
合いを進める。
●目的に応じた話合い
ができるよう資料の用
意をしたり,伝えたい
相手に分かりやすく伝
えるために事柄を簡潔
に書く。
テーマにそって,自分
の考えや思いをまと
め,話し合う。
自分の課題を解決す 調べたことやまとめた
るために,意見を述べ ことについて,討論な
た文章や解説の文章 どをすること
などを利用すること
●話し手に質問した
り,助言したりすること
で自分の考えを深め
る。
◎相手の反応などに
注意しながら話す。
経験したことや学習し
たことをもとに自分の
考えをまとめ,発表す
る。
面積・体積 資料を分類整理した学 測定値の平均の意味 長さ,重さ,面積,体
を求める公 習経験を想起する。
や求め方についておさ 積,時間,角などの量
式や解決
える。
の意味をおさえる。
に必要な
数値をおさ
える。
ものの概形
から既習と
関連付けて
およその面
積や体積を
求める。
およその形
と大きさ
物語を読んで自分の 資料を提示しながら説 物語を読んで,自分の 事物を推薦したり,そ
生き方について考える 明をしたり,それを聞い 生き方について考える れを聞いたりすること
こと
て助言や提案をしたり こと
すること
2つの数量の対応や変
化の仕方の特徴を捉
え,比例・反比例の公
式やきまりについて帰
納的に考える。
合同での学習内容と
関連付けて,縮図・拡
大図のかき方を類推
的に考える。
◎●資料を効果的に
使って,話す速度や間
のとり方,場に応じた言
葉遣いを意識しながら
説明する。
インターネットやアン
ケートを活用して説明し
たいことが伝わるように
効果的な資料を用意
し,話す内容と整合させ
る。
関連するテーマの本を
資料を効果的に使っ
伝えたいことを明確に
読んで,感じたことや
て,分かりやすく説明す
して,話の組み立てを
考えたことをまとめ,発
る。
工夫して話す。
表する。
●自分の考えとの共 自分の考えと比較しな
通点や相違点につい がら説明を聞く。
て比較しながら聞いた
り,話し手に質問・助言
をしたりする。
スピーチ原稿や資料
への目配りの仕方,相
手の反応などに注意し
ながら話す。
◎関連するテーマの
本を読んで,相手や目
的に応じて,推薦した
い伝えるべき事柄を簡
潔にまとめる。
物語の登場人物の関
係をおさえ,自分に最
も語りかけてきたこと
について発表する。
割合の考
え方と関
連付けて
速さ・道の
り・時間の
求め方を
帰納的に
考える。
比の性質
やきまりを
使って等し
い比につ
いて演繹
的に考え
る。
10
割合の意 伴って変わる2つの数 円周の求
味や単位 量の関係や比例の関 める公式
量あたりの 係についておさえる。 や円周率
考え方を
をおさえ
おさえる。
る。
速さの意味
を知って,
速さ・道の
り・時間を
求め,関係
を理解す
る。
速さ
説明や報告をしたり, 自分の課題について
調べたことやまとめた
それらを聞いて助言や 調べ,意見を記述した ことについて,討論な
提案をしたりすること 文章を書くこと
どをすること
対称図形の性質をおさ 整数や小数,同分母 □,△を用 倍に関す 合同図形に必要な条
える。
分数の加法・減法の計 いて数を ることや分 件(角・辺の長さ)をお
算の仕方をおさえる。 求めたり, 数,比例 さえる。
調べたりし の考え方
た経験を をおさえ
想起する。 る。
分数×分数
分数÷分数
事物を推薦したり,そ
れを聞いたりすること
対称な図形
「語り」の会をすること
工夫点を考えながら, 自分の宣伝文と比較し ◎●話し手の意図をと 自分の意見文と比較し
「語り」を聞く。
ながら説明を聞く。
らえながら聞き,複数 ながら説明を聞き,助
の意見の共通点や相 言や提案をする。
違点を聞き分ける。
◎相手の反応などに
注意しながら話す。
推薦したい事柄につい
て,具体例やキャッチ
フレーズを入れるな
ど,表現方法を工夫し
て原稿を書く。
9
人物の生き方を考えな
戦争と生き方をえがい
「わたしの意見」を書こ 問題を解決するために
伝えよう,大切にしたい わたしたちの日本語に
がら読もう
資料を使って説明しよう た本を読み広げよう
未来に向かって
話し合おう
う
名言
ついて考えよう
「海のいのち」
「ヒロシマのうた」
7
表6 小学校第6学年 年間指導計画 (国語科〔A 話すこと・聞くこと〕,算数科)
物語を読んで感じたこ
根拠や理由を明確にし 複数の意見の似てい 書く事柄を整理し,構
とや考えたことが表れ
て,聞き手の印象に残 るところや違うところを 成を考えて,意見文を
るように,「語り」をす
るように工夫して話す。 聞き分ける。
書き,発表する。
る。
5
4
のポイントと照らし合わせながら指導のポイン
トや言語活動を位置付けていく。〔A話すこと・
聞くこと〕領域の四つの指導事項が1年間を通し
て偏りがなく位置付けられるように,重点をおい
た指導事項に◎印を付ける。また,発達の段階に
合わせて取り入れた中学校第1学年の指導のポイ
ントを把握しやすいように,●印を付けていく。
③ 算数科については,縦軸に表5の数学的な思考
力・表現力を高める算数・数学的活動表と照らし
合わせながら,算数的活動を位置付けていく。ま
た,国語科同様,発達の段階に合わせて取り入れ
た中学校第1学年の指導のポイントを把握しや
すいように,●印を付けていく。
このようにして,単元ごとに言語活動の指導のポ
イントや算数・数学的活動を明記した年間指導計画
を作成することにより,所属校の児童に,身に付け
た基礎的・基本的な知識・技能を活用して,読み取
った内容から選択した情報を基に思考し,その経過
を表現する力を育成していくことができると考える。
小学校第6学年国語科及び算数科の年間指導計画例
を表6に示す。
Ⅵ
成果と課題
1
研究の成果
語活動表を作成し,年間指導計画を作成していく。
【注】
(1) 水戸部修治(平成21年):「国語科における魅力ある教
育計画の立案」『初等教育資料5月号』東洋館出版社
pp.22-23 年間指導計画の種類と特徴を基に稿者が作成
した。
【引用文献】
1)
中央教育審議会(平成20年):「幼稚園,小学校,中学校,
高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善につい
て(答申)」 p.14
2)
中央教育審議会(平成20年):前掲書 p.24
3)
文部科学省(平成20年):『小学校学習指導要領総則』
p.52
4)
文部科学省(平成23年):「言語活動の充実に関する指
導事例集【小学校版】」 p.3
5)
相澤秀夫(2009):「学校全体で取り組む『言語活動の
充実』」『初等教育資料8月号』東洋館出版社 p.12
6)
千々岩弘一(2010):「『説明力』を重視する三つの理
由」『国語教育11月号』明治図書 p.19
7)
柗本新一郎(2009):「『数学的な表現力』を育成する
授業モデル」明治図書 p.16
文献研究において,思考力・表現力を育成する
ためには,教科の目標や特質を踏まえた言語活動
を発達段階に応じて設定することが有効であるこ
とが分かった。
○ 所属校の児童の課題の改善を図った国語科の言
語活動指導に関する表や算数科における数学的な
思考力・表現力を高める算数的活動表を作成し,
中学校への円滑な接続を図るための言語活動を位
置付けた年間指導計画を作成することができた。
8)
中央教育審議会(平成20年):前掲書 p.48
9)
齋藤義憲(平成21年):「連携・一貫教育で教師の相互
○
交流や子どもの学校訪問などをどう行ったらよいか」
『幼・
小・中・高の連携・一貫教育の展開』教育開発研究所 p.155
10)
文部科学省(平成19年):「言語力の育成方策について
(報告書案)」 p.19
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/
036/shiryo/07081717/004.htm
11)
相澤秀夫(2009):前掲書 p.10
【参考文献】
中央教育審議会初等中等教育分科会
2
今後の課題
学校段階間の連携・接
続等に関する作業部会(平成24年):「小中連携,一貫教
○
本研究で作成した年間指導計画を基に所属校で
授業を実践し,その有効性を検証していく。そし
て,検証から得た課題を踏まえ,年間指導計画の
改善を図っていく。
○ 中学校への円滑な接続を図るために作成した小
学校第6学年における年間指導計画を基に,更に
学校6年間における系統性をもたせた他学年の年
間指導計画を作成していく。
○ 本研究で作成した国語科の言語活動指導に関す
る表や算数科の数学的な思考力・表現力を高める
算数・数学的活動表を参考に,他教科における言
育に関する主な意見等の整理」
水戸部修治(平成21年):「国語科における魅力ある教育計
画の立案」『初等教育資料5月号』東洋館出版社
小森茂(平成22年):「小学校国語科における指導のポイン
ト」『新しい教育課程における言語活動の充実』学校図書
中村和世
他(2011):学校教育実践学研究大 17 巻「図画
工作・美術科における『ブルームのタキソノミー改訂版』
の活用に関する考察」
ヴィゴツキー著
柴田義松
訳(1967):「思考と言語」明
治図書
埼玉県立総合教育センター(平成25年):「授業力向上のた
- 8 -
めの研修運営の参考例 Vol.3」
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