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ACモータのモデリングと制御 - 近藤研究室

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ACモータのモデリングと制御 - 近藤研究室
解
説
AC モータのモデリングと制御
正 員
近藤
正示∗
Modeling and Control of AC Motors
Seiji Kondo∗ , Member
q
1.
q
はじめに
モータをながめる座標を変換すると,その挙動を理解し
Nsinθ
I
やすくなったり,制御系を考案しやすくなることがある。二
d
θ
軸理論や回転座標変換は,まさに,このためにある。回転
I
Ncosθ
d
機の二軸理論をマスターするつもりなら,名著「基礎電気
機器学」 (1) を薦める。
本文は,誘導機と PM モータのモデリング,および,その
制御に関する要点をまとめたものである。次の事項が,目
(a) 巻数 N のコイル
新しいと思われる。
• 複素平面では正回転を左回り(反時計回り)とする習
(b) コイル巻数の分解
図 1 自己インダクタンスの計算モデル
慣に合わせて,座標系の図でも左回り(反時計回り)
を正回転とした。
ではパーミアンスが異なることを考慮する必要がある。そ
• 線間電圧から直交二相電圧を計算する式を,
〈3・3〉
項で
こで,図 1(a) の巻数 N のコイルは,図 1(b) のように d 軸
導出した。
および q 軸に沿って分解した二つのコイルを直列接続した
• 突極機でも使える複素数表記による回転座標変換を
ものと考えてよいことに着目する。図 1(b) の二つのコイル
〈5・4〉項に示した。
の等価な巻数は
• いわゆるすべり周波数形ベクトル制御の安定性に関す
Nd0 = N cos θ ,
る簡単な証明を
〈6・4〉項に示した。
なお,本文では,座標変換を適用するためにモータの起
となる。ここで,d 軸方向と q 軸方向のそれぞれの鉄心を通
磁力は正弦波状に分布しているものと仮定する。実際,多
る磁路のパーミアンスを Pd ,Pq とする。パーミアンスと
くのモータでは正弦波分布巻線が施されており,この仮定
巻数の二乗の積が有効な自己インダクタンスである。よっ
は満たされる。この仮定により,モータの電圧・電流・磁
て,二つのコイルの自己インダクタンスは,それぞれ,
束鎖交数などの空間的な加法を定義できて,それらをベク
0
Led
= Pd (Nd0 )2 ,
トルとして表現し,座標変換することが可能となる。ただ
し,起磁力分布が正弦波状でも,磁気抵抗が正弦波状でな
0
Leq
= Pq (Nq0 )2 · · · · · · · · · · · · · · · · (2)
となる。d 軸と q 軸は直交しているから二つのコイルの間
ければ磁束は正弦波状に分布しない。ここでは,磁気抵抗
に相互誘導はなく,これらを直列接続したものの合成イン
のことは不問にする。
2.
Nq0 = N sin θ· · · · · · · · · · · · · · · · · · · (1)
ダクタンスは単純に和をとればよい。したがって,図 1(a)
回転機のインダクタンス
の巻数 N のコイルの自己インダクタンスは
〈2・1〉 突極性を考慮したインダクタンスの計算式
0
0
L(θ) = Led
+ Leq
= Led cos2 θ + Leq sin2 θ · · · · · · · (3a)
〈2・1・1〉 自己インダクタンスの計算式
Led = Pd N 2 ,
図 1(a) に示
した突極機において,巻数 N のコイルの自己インダクタン
となる。
スを計算してみよう。突極性のために d 軸方向と q 軸方向
∗
Leq = Pq N 2 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (3b)
ところで,自己インダクタンスの計算には鉄心以外の空
長岡技術科学大学 電気系
〒 940–2188 新潟県長岡市上富岡町 1603–1
Dept. of E&E, Nagaoka University of Technology
1603–1, Kamitomioka-cho, Nagaoka, Niigata 940–2188
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
隙を通る漏れ磁束も考慮しなければならない。そこで,鉄
心以外の磁路のパーミアンス Pl による自己インダクタン
スの増加分を加算すると,(3a) と (3b) 式は
1
q
Nα sin θ
q
Nα cos θ
θ'
Nβ
Nα
q
N β sin θ ′
I
d
θ
Nd
Nα
d
θ
d
N β cos θ ′
(a) 巻数 N のコイル
図3
(b) コイル巻数の分解
異なる鉄心上の巻線の相互インダクタンス
図 2 相互インダクタンスの計算モデル
q i
sq
β
L(θ) = Ld cos2 θ + Lq sin2 θ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (4a)
Ld = (Pl + Pd )N 2 ,
vsq
Lq = (Pl + Pq )N 2 · · · · · · · (4b)
ように修正される。自己インダクタンス L(θ) はコイルの回
irβ
転角 θ によって変化する。
vrβ
しかし,突極性がない円筒形の回転機では Pd = Pq であ
vrα irα
α
θ
るから,それを上式に代入して
d
isd
vsd
L(θ) = Ld ( = Lq )· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (5)
のように,回転角 θ に関わらず一定となる。
〈2・1・2〉 相互インダクタンスの計算式
図4
図 2(a) のよ
二相回転機のインダクタンスの計算モデル
うに配置された二つのコイル間の相互インダクタンスを計
算してみよう。上記と同じように,まず,巻数 Nα のコイ
となる。ただし,(4b) 式を使った † 。
ルを d 軸と q 軸に分解すると
0
Ndα
= Nα cos θ ,
0
Nqα
一方,円筒形のときは Pd = Pq であるから,
= Nα sin θ· · · · · · · · · · · · · · · · (6)
M(θ) = 0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (12)
となる。同じく,巻数 Nβ のコイルを分解すると
0
Ndβ
= Nβ cos θ0 ,
である。
0
Nqβ
= Nβ sin θ0 · · · · · · · · · · · · · · · (7)
〈2・1・3〉 異なる鉄心上の巻線の相互インダクタンス
0
0
となる。d 軸上にある Ndα
と Ndβ
のコイル同士の相互イン
図 3 のように配置されたコイル間の相互インダクタンス
ダクタンスは
は上の〈2・1・2〉項を応用して計算できる。図 2(a) において
θ0 = 0 とすれば同図の Nβ が,図 3 の Nd に対応する。した
がって,(10) 式に θ0 = 0 と Nβ = Nd を代入して
0
Md = Pd Nα Nβ cos θ cos θ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (8)
0
0
となる。q 軸上にある Nqα
と Nqβ
のコイル同士の相互イン
Mdα (θ) = Pd Nd Nα cos θ· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (13)
ダクタンスは
Mq = Pq Nα Nβ sin θ sin θ0 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (9)
のように求められた。
で表される。また,d 軸上のコイルと q 軸上のコイルは互い
〈2・2〉 二相回転機のインダクタンス行列
前項に示
に直交しているから相互インダクタンスはない。したがっ
した計算式を利用して,図 4 の二相回転機のインダクタン
て,以上を合わせた全体の相互インダクタンスは
ス行列を求めると次のようになる。
M(θ) = Md + Mq
= Pd Nα Nβ cos θ cos θ0 +
[ ] sd
L = sq
ra
rb
0
Pq Nα Nβ sin θ sin θ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (10)
のように求められた。
とくに,Nα = Nβ = N かつ θ0 = θ + π/2 の場合は
1
M(θ) = − (Pd − Pq )N 2 sin 2θ
2
1
= − (Ld − Lq ) sin 2θ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (11)
2
sd

 (Pl + Pd )Nd2


0

 Pd Nd Nα cos θ

−Pd Nd Nβ sin θ
sq
0
(Pl + Pq )Nq2
Pq Nq Nα sin θ
Pq Nq Nβ cos θ
†
正確には (3b) 式を使ったが,漏れインダクタンスは差 Ld − Lq で
はキャンセルされるから (4b) 式でもよい。
2
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
M = Md = Mq , L s = L sd = L sq , Lr = Lrd = Lrq (17)
rα
Pd Nd Nα cos θ
Pq Nq Nα sin θ
(P0l + Pd cos2 θ + Pq sin2 θ)Nα2
1
− (Pd − Pq )Nα Nβ sin 2θ
2
とおける。これらを (16) 式の代入すると,さらに簡単な次
式が得られる。
sd


s
l
d
 s + L s
[ ]
L = sq 
0

rα  M cos θ

rβ −M sin θ

(l s + L s )[I2 ]
= 
M[C(θ)]T
rβ
−Pd Nd Nβ sin θ
Pq Nq Nβ cos θ



 · · · · · · · · (14)

1

− (Pd − Pq )Nα Nβ sin 2θ 

2
(P0l + Pd sin2 θ + Pq cos2 θ)Nβ2
なお,(14) 式において,たとえば,sd 行 sd 列要素は sd コ
sq
0
ls + Ls
M sin θ
M cos θ
rα
rβ

M cos θ −M sin θ

M sin θ M cos θ (18)


lr + L r
0

0
lr + L r

M[C(θ)] 
 · · · · · · · · · · · · · · (19)
(lr + Lr )[I2 ]
ただし
イルの自己インダクタンス, sd 行 rα 列要素は rα コイルか

cos θ
[C(θ)] = 
sin θ
ら sd コイルへの相互インダクタンスである。また,(14) 式
から分かるようにこの行列は対称である。
一般的な (14) 式を使って,後で使用するため特別な場合
について計算しておこう。

− sin θ
 ,
cos θ 

1
[I2 ] = 
0

0
 · · · · · (20)
1
である。
まず,固定子および回転子のコイルの巻数がそれぞれ等
〈2・3〉 回転子に突極性がある場合
前項では,図 4 の
しい,すなわち,Nd = Nq = N s および Nα = Nβ = Nr のと
ように,突極性を持つ dq 軸が固定子にある回転機のイン
きは
ダクタンス行列を求めた。これを利用して突極性を持つ dq
Pd N s2
Pd Nr2
L sd =
Lrd =
Md = P d N s N r
l s = Pl N s2
,
,
,
,


L sq =






Lrq =

· · · · · · · · · (15)


Mq = Pq N s Nr 





l = P0 N 2
軸が回転子にある (したがって,後で示す図 6(b) のように
Pq N s2
Pq Nr2
r
l
αβ 軸が固定子にある) 回転機のインダクタンス行列を求め
ておこう。その手順は次のようになる † 。
( 1 ) インダクタンス行列の固定子添字 s と回転子添字
r
r を入れ換える。
とおくことにより (14) 式のインダクタンス行列は次のよう
( 2 ) α 軸から d 軸へ測った回転角を θ0 とすれば,上記
になる。
で使った回転角 θ とは逆回りだから
[ ] sd
L = sq
rα
rβ
sd

 l s + L sd


0

 Md cos θ

−Md sin θ
θ = −θ0 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (21)
sq
0
l s + L sq
Mq sin θ
Mq cos θ
である。これを,インダクタンス行列に代入して θ
を消去する。
( 3 ) 行と列の順番を sα , sβ , rd , rq の順に入れ換える。
この手順を (16) 式のインダクタンス行列に適用して,dq
軸が回転子にある回転機のインダクタンス行列を求めると
次のようになる。
rα
Md cos θ
Mq sin θ
Lrd + Lrq Lrd − Lrq
lr +
+
cos 2θ
2
2
Lrd − Lrq
−
sin 2θ
2
sα

L
+
L
L sd − L sq
sd
sq

sα ` +
+
cos 2θ0
 s
2
2

[ ]
L sd − L sq
L = sβ 
sin 2θ0

2

rd 
Md cos θ0

rq
−Mq sin θ0
rβ


−Md sin θ


Mq cos θ
 · · · · · · (16)
Lrd − Lrq

−
sin 2θ

2


Lrd + Lrq Lrd − Lrq
lr +
−
cos 2θ
2
2
† 注意:ここは,近藤のオリジナルである。よくある間違いは,手
順 (1) と (2) の代わりに,添字 d,q と添字 α,β をそれぞれ入換えて
しまうことである。こんなことをすると,元は突極性が dq 軸にあっ
たのに,変更後は突極性が αβ 軸にあることになってしまう。つまり,
間違いである。一方,手順 (1) と (2) のようにすれば,変更後も突極
性が dq 軸にあるから正しい。
(15) 式に加えて,ギャップが一様で Pd = Pq の場合は
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
3
sβ
L sd − L sq
sin 2θ0
2
L sd + L sq L sd − L sq
`s +
−
cos 2θ0
2
2
Md sin θ0
Mq cos θ0
rd
Md cos θ0
Md sin θ0
`r + Lrd
0
iβ
iv
vv
iu
vw
rq

−Mq sin θ0 

Mq cos θ0  · · · · · · · · · · · · · · · · (22)

0


`r + Lrq
vβ
iα
vα
vu
iw
(a) (b) 図 5 三相二相相変換
このインダクタンス行列は回転界磁形の同期電動機などの
3.
解析に使われる。
三相−二相変換
〈3・1〉 三相−二相変換とその必要性
なお,元になったインダクタンス行列 (14) 式が対称行列
図 5 に三相巻
であったから,ここで求めたインダクタンス行列 (16), (18),
線 (u, v, w) と直交 2 巻線 (α, β) を示す。同図のように,u
(22) 式はすべて対称行列であることに注意しておく。
***図
〈2・4〉 三 相 回 転 機 の イ ン ダ ク タ ン ス 行 列
†
4.14 *** に示した三相回転機のインダクタンス行列も,同
相方向と α 相方向を一致させ,さらに,二相巻線に 0 相成
分を追加すると,次式のように三相量 (u, v, w) は,二相量
(α, β) と 0 相成分に等価変換できる。
 
 √
 
 u  √ 1/ 2
1
0   0 
√
√
 

  
2 
 v  =
1/ 2 −1/2
3/2  α · · · · · · (26a)
√   
3  √
 
w
1/ 2 −1/2 − 3/2 β
様に求められる。ただし,簡単のためギャップ長が等しく
Pd = Pq である場合を示すと,次のようになる。
sa

sa 
ls + Ls

sb  L s cos(2π/3)

[ ]
L = sc  L s cos(2π/3)

ra  M cos θ

)
(
rb  M cos θ + 2π
3
(
)

2π
rc M cos θ − 3
ra
M cos θ
(
)
M cos θ − 2π
3 )
(
M cos θ + 2π
3
lr + L r
Lr cos(2π/3)
Lr cos(2π/3)
sb
sc
L s cos(2π/3)
ls + Ls
L s cos(2π/3)
(
)
M cos θ − 2π
3
M cos θ
(
)
M cos θ + 2π
3
r
)
(b
M cos θ + 2π
3
M cos θ
(
)
M cos θ − 2π
3
Lr cos(2π/3)
lr + Lr
Lr cos(2π/3)
L s cos(2π/3)
L s cos(2π/3)
l s +( L s )
M cos θ + 2π
3 )
(
M cos θ − 2π
3
M cos θ
 
 √
 0  √ 1/ 2
2 
 
 1
α =
3 
 
β
0
することができる。
ここで注意しておくが,三相 3 線式の回路方程式を三つ
rc
(
)

M cos θ − 2π
3
(
)
2π 
M cos θ + 3 

M cos θ 

Lr cos(2π/3) 

Lr cos(2π/3) 

lr + L r


M[C0 (θ)]

0
lr [I3 ] + Lr [C (0)]
立てても解けないことがある。なぜならば,三相星形結線
で中性点非接地のときは三つの線電流の和は 0 であるから,
独立な線電流は二つしかない。したがって,三つの線電流
を使った回路方程式を単純に三つ立ててもそのうちの一つ
が他の二つに従属してしまえば,連立方程式の係数の行列
式が 0 となり,解けなくなる †† 。あらかじめ三相を二相に
変換しておけば,この問題は起きない。
〈3・2〉 三相巻線と二相巻線の定数の対応
三相巻線のものである。それを,等価な二相巻線の定数に
変換する計算式を以下に示す††† 。なお,三相巻線の定数は,
星形結線に換算したものであると仮定する。

 cos θ
)
 (
[C0 (θ)] = cos θ − 2π
3
)
 (
cos θ + 2π
3
(
)
cos θ + 2π
3
cos θ
(
)
cos θ − 2π
3
(
)

cos θ − 2π
3 )
(

 · (25)
cos θ + 2π
3 

cos θ
三相巻線の巻線抵抗をステータ R s ,ロータ Rr として,イ
ンダクタンス行列 (24) 式とファラデーの法則から,三相交
流モータの電圧・電流方程式は次式となる。
†† 特別な工夫をすれば,三つの線電流を使った回路方程式でも解け
るようにすることはできる。
††† 難波江ほか (1) の第 4.2.3 項,および,研究ノート D-8 p.73, D-16
p.18-20 参照
である。
難波江ほか
実際の交
流モータは三相巻線であるから,測定して得られる定数は
(24)
ただし
†
√  
1/ 2   u 
  
−1/2   v  · · · · · (26b)
√   
− 3/2 w
なお,三相 3 線式では 0 相電流が流れないからこれを省略
(23)

l s [I3 ] + L s [C0 (0)]
= 
M[C0 (θ)]T
√
1/ 2
−1/2
√
3/2
(1)
p.81 参照
4
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
 
 
 v su 
 i su 
 
 
 v sv 
 i sv 
  [ ]  
v sw 
i sw 
  = Z 3  
 vru 
 iru 
 
 
 vrv 
 irv 
 
 
vrw
irw


[ ] R s [I3 ]
0 


Z 3 = 
+
0
Rr [I3 ]

d ` s [I3 ] + L s [C0 (0)]

dt  M[C0 (θ)]T
となる†† 。なお,[C(θ)] は (20) 式で与えられた 2 行 2 列の
行列である。
ここで,(31) 式を (18) 式の対応する部分と比較すれば,
(27a)
三相巻線定数と二相巻線定数の対応が得られる。以下では,
二相巻線および三相巻線の定数を,それぞれ上添字で区別
して,L<2> ,L<3> などと書くことにする。各定数の対応式
は次のようになる。すなわち,二相巻線定数が三相巻線定
数の 3/2 倍になるもの,


M[C0 (θ)]

`r [I3 ] + Lr [C0 (0)]
(27b)
ただし,[C0 (θ)] は,(25) 式で与えられる。
(32a)
Lr<2>
(32b)
M <2>
上の三相モータの回路方程式を,等価な二相モータの回
3 <3>
L
2 s
3
= Lr<3>
2
3
= M <3>
2
L<2>
=
s
(32c)
路方程式に変換する。このため,(26a) 式を参照して,
 
 
 v∗u 
 v∗0 
 
 
 v∗v  = [C32 ] v∗α 
 
 
v∗w
v∗β
 
 
 i∗0 
 i∗u 
 
 
 i∗v  = [C32 ] i∗α 
 
 
i∗β
i∗w
および,次のように二相巻線定数と三相巻線定数が同じに
なるもの,
(28a)
`<2>
= `<3>
,
s
s
R<2>
s
(28b)
,
R<2>
r
=
(32d)
R<3>
r
(32e)
のように分かれる††† 。
ただし,上式の下添字 ∗ は,ステータでは s,ロータでは r
〈3・3〉 三相−二相変換の実装
である。また,変換行列 [C32 ] は,(26a) 式から,
 √
√ 1/ 2
2  √
[C32 ] =
1/ 2
3  √
1/ 2
=
R<3>
s
`r<2> = `r<3>

1
0 
√

−1/2
3/2  · · · · · · · · · · (29)
√ 
−1/2 − 3/2
ちの二相の電流を検出すれば十分である。つまり,(26b) 式
を利用して,
  √ 
iα 
2 1
  =

3 0
iβ
である。(28a),(28b) 式を (27a) 式に代入すれば,
 
 
i s0 
v s0 
 
 
i sd 
v sd 
 
 
i sq 
v sq 
  = [Z 2 ]   · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (30)
 ir0 
 vr0 
 
 
irα 
vrα 
 
 
vrβ
irβ
√
 3

=  1 2

√
2
(33)
よい。

0 

[C32 ]
√
   3
iα  
  =  12

iβ
−√
2

0 
+
`r [I3 ]

0 

[C(θ)]
  (31)
0  
 
[I2 ]

 
0   iu 
  
√  i  · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (34)
− 2 w
三相線間電圧から二相電圧への変換は,(26a) 式を利用し
て次のようにする†††† 。
††
(31) の右辺最後の項の 1 行目と 4 行目はすべて 0 である。したがっ
て,零相電圧が印加されても有効インダクタンスは零相電流を制限し
てくれないことが分かる。
††† ああ面倒くさい!全部 3/2 倍になればいいのに,そうではない。
†††† 研究ノート D-8 p.74
†
ただし,2 行目と 3 行目の添字は, sα と sβ ではなく sd と sq で
ある。これは,後で (18) 式と比較できるようにするためである。この
ようにしても,三相ステータの a 相軸を二相ステータの d 軸に合わ
せれば,矛盾はない。
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年


 

iu

−1/2
−1/2  
√
√  

iv


3/2 − 3/2 
−(iu + iv )

 
0  iu 
  
√  i 
2 v
のように計算する。なお,iv を消去して次のようにしても
となる† 。ただし,[Z 2 ] は 6 行 6 列の行列であり,

−1



[C32 ]
0
 [Z 3 ] [C32 ]
[Z 2 ] = 
0
0
[C32 ]



R s [I3 ]
0  d ` s [I3 ]
= 
+ 
0
Rr [I3 ] dt  0




0

0

0

 L s 
M 
0
0 [I2 ]
d 3 


 
0

dt 2  0
0 
 M 
Lr 

T
0 [C (θ)]
0
中性点が非接地の三
相モータでは,三相の電流の和が 0 であるから,三相のう
5
q i
sq
β
β i
sβ
q
vsq
vsβ
α
irβ
vrα irα
vrβ
θ
irq
d
isd
d
vrd
vrq
ird
θ ' = −θ
α
isα
vsd
vsα
(a) 
` s + L sd
[L11 ] = 
0

0 
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · (38b)
` s + L sq 

 Md cos θ
[L12 ] = 
Mq sin θ

−Md sin θ
 · · · · · · · · · · · · · · · · (38c)
Mq cos θ 
(b) 図 6 一般二相モータ
Lr0 ≡ `r +
     
 vuv   vu   vv 
     
vvw  =  vv  − vw 
     
vwu
vw
vu
 √
 
√ 1/ 2
1
0   v0 
√
  
2  √
1/ 2 −1/2
=
3/2  vα  −

  
√
√
3
1/ 2 −1/2 − 3/2 vβ
√
 √
 
√ 1/ 2 −1/2
3/2   v0 

√  
2  √
1/ 2 −1/2 − 3/2 vα 
  
3  √
vβ
1/ 2
1
0
√  

√ 0 3/2 − 3/2  v0 
√   
2 
0
=
0
3  v  · · · · ·
√   α 
3 
0 −3/2 − 3/2 vβ
v0
vα
vβ
]T
[
については解けない。しかし, vα
  
v sd  R s
  
v sq   0
  = 
vrα   0
  
0
vrβ
〈4・1・2〉 固定電機子形モータ
(35)
と (b) の違いを考慮して,(38a)-(38e) 式の [L] に対して以
下の変更を加える。
vβ
]T
( 1 ) 固定子添字 s と回転子添字 r を入れ換える。
に
( 2 ) θ = −θ0 とする。
( 3 ) インダクタンス行列の要素を,磁束鎖交数が次式
となるように入れ換える。
[
]T
ψ sβ ψrd ψrq
[
]T
= [L0 ] i sα i sβ ird irq · · · · · · · · · · · (40)
その結果,図 6(b) のインダクタンス行列 [L0 ] は,(22) 式
一般二相モータ

[L0 ]
[L ] =  22
0
[L12
]
0
考慮する。dq 軸の 2 巻線の巻数は等しく,また αβ 軸の 2
0
[L22
]
添字 r で回転子を表す。図 6(a) は固定界磁形モータであり,
まず,図 6(a) の固定界
0 T
[L12
]
磁形モータのインダクタンス行列 [L] を示す。ベクトルの
転置を右肩の T で表すとき,磁束鎖交数が,
ψrβ
]T
[
= [L] i sd
i sq
irα
irβ
]T
(37)
0
[L11
]
となるようにインダクタンス行列 [L] の要素を配置すれば,
(16) 式より,

 [L11 ]
[L] = 
[L12 ]T

[L12 ]
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (38a)
[L22 ]

 Md cos θ0
= 
Md sin θ0

`r + Lrd
= 
0
L s0 ≡ ` s +
†
6

0 T
[L12
] 
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (41a)
0
[L11
]

L s0 + L s1 cos 2θ0
= 
L s1 sin 2θ0
図 6(b) は固定電機子形モータである。
ψrα
ψ sα
より,
ここでは,図 6
巻線の巻数も等しいとする。また,添字 s で固定子を表し,
ψ sq
図 6(b) の固定電機子
形モータの回路方程式は次のようにして求められる。図 6(a)
慣に従い d 軸を主磁束の方向とし,dq 座標系で突極性を
ψ sd
 
  
 i sd 
0  i sd 
  
  
0  i sq  d  i sq 
   + [L]   · (39)
0  irα  dt  irα 
  
  
Rr irβ
irβ
0
0
Rr
0
れる。
に示した一般二相モータの回路方程式を示す。以下では,習
[
0
Rs
0
0
のように,図 6(a) の固定界磁形モータの回路方程式が得ら
のように計算できる。
〈4・1・1〉 固定界磁形モータ
Lrd − Lrq
· · · · · · · (38e)
2
る電圧を考慮すれば,
  √
√  
vα   2/3 1/ 6  vuv 
  = 
√    · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (36)
0
1/ 2 vvw 
vβ
〈4・1〉 一般二相モータの回路方程式
Lr1 ≡
デーの法則から誘導起電力を求め,さらに,巻線抵抗によ
ついてだけなら解くことができて,
4.
Lrd + Lrq
,
2
である† 。このインダクタンス行列 (38a)-(38e) 式とファラ
線間電圧だけから中性点電圧が決まらないから,上式は
[

−Lr1 sin 2θ 
 · · · ·(38d)
Lr0 − Lr1 cos 2θ

Lr0 + Lr1 cos 2θ
[L22 ] = 
−Lr1 sin 2θ

L s1 sin 2θ0 
 · · (41b)
L s0 − L s1 cos 2θ0 

−Mq sin θ0 
 · · · · · · · · · · · · · (41c)
Mq cos θ0 

0 
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (41d)
`r + Lrq 
L sd + L sq
,
2
L s1 ≡
L sd − L sq
· · · · · · (41e)
2
文献 (1) p.80 の (4.22) 式を見やすく直した。
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
それから θ̇ を除けば発生トルク T が求まる† 。
となる。ただし,(41a) 式の要素の並びは,(38a) 式と対応
づけやすいように,通常の添字のつけ方と変えてあるから
T=
注意されたい。このインダクタンス行列 (41a)-(41e) 式と巻
線抵抗を考慮すると,
  
v sα  R s
  
v sβ   0
  = 
 vrd   0
  
vrq
0
0
Rs
0
0
0
0
Rr
0

 
 

i sα 
0  i sα 
  

 
0  i sβ  d  0 i sβ 
   + [L ]   (42)
 ird 
0   ird  dt 

  
 
irq
Rr irq
1 T ∂[L]
[i]
[i]· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (47)
2
∂θ
ここで,回転機の極対数が p のときは,機械的な角速度
θ̇ M およびトルク T M は,次式で与えられる。
θ̇ M = θ̇/p ,
T M = pT · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (48)
(42) 式の場合も,[L] ⇒ [L0 ],θ ⇒ θ0 とすれば上記と同
のように,図 6(b) の固定電機子形モータの回路方程式が得
られる。
様にして同じ結果になる。
〈4・2〉 一般二相モータの発生トルク
モータへの入力
〈4・3〉 円筒機と突極機の発生トルク計算例
電力は,モータ内部の抵抗損失,内部磁気エネルギーを増
前項で
求めた発生トルク (47) 式を具体例で計算してみよう。
減するもの,そして残りは機械出力となるものに分けられ
まず,円筒機の場合は,インダクタンス行列が (18) 式で
る。この機械出力を回転速度で除算すれば,一般二相モー
あるから,それを回転角度 θ で偏微分すれば
タの発生トルクを求めることができる。

 0

 0
∂[L]
= M 
 − sin θ
∂θ

− cos θ
まず,(39) 式を,電圧・電流・抵抗・インダクタンスのベ
クトルまたは行列をまとめて書き直すと次のようになる。
d
[[L][i]]
dt
d[i]
∂[L]
= [R][i] + [L]
+ θ̇
[i] · · · · · · · · · · · · · · · (43)
dt
∂θ
[v] = [R][i] +
0
0
cos θ
− sin θ
− sin θ
cos θ
0
0

− cos θ

− sin θ 
 · · (49)
0 

0
これを (47) 式に代入すれば,円筒機の発生トルク T q が
T
上式に左から [i] を乗じて回転機の入力電力 Pi を求めれば,
Pi = [i]T [v]
= [i]T [R][i] + [i]T [L]
1 T ∂[L]
[i]
[i]
2
∂θ
[
]
1
=
i sd i sq irα irβ M
2

0
− sin θ
 0

0
0
cos θ


0
 − sin θ cos θ

− cos θ − sin θ
0
Tq =
d[i]
∂[L]
+ θ̇[i]T
[i] · · · · ·(44)
dt
∂θ
となる。上式を変形する準備のため,インダクタンスに蓄
えられる磁気エネルギーの時間微分を計算する。
(
)
d 1 T
[i] [L][i]
dt 2
(
)
1 d[i]T
d[i]
T d[L]
T
=
[L][i] + [i]
[i] + [i] [L]
2 dt
dt
dt
∂[L]
d[i]
1
= [i]T [L]
+ [i]T θ̇
[i] · · · · · · · · · · (45)
dt
2
∂θ
 
− cos θ i sd 
  
− sin θ  i sq 
  
0  irα 
  
0
irβ
= irα (−Mi sd sin θ + Mi sq cos θ) −
irβ (Mi sd cos θ + Mi sq sin θ)
= irα ψrβ − irβ ψrα · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (50)
ただし,上式 2 行目右辺の第 1, 3 項は互いに等しい。なぜ
ただし,
ならば,それらはスカラーであり,(38a) 式に示したように
ψrβ = −Md i sd sin θ + Mq i sq cos θ · · · · · · · · · · · · · (51a)
[L] は対称行列だからである。よって,3 行目が得られる。
(45) 式を (44) 式に代入して,[i]T [L]d[i]/dt を消去すれば,
ψrα = Md i sd cos θ + Mq i sq sin θ · · · · · · · · · · · · · · · (51b)
Pi = [i]T [v]
(
)
d 1 T
[i] [L][i] +
= [i] [R][i] +
dt 2
∂[L]
1
[i] · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(46)
θ̇ [i]T
2
∂θ
である。ここで,ψrβ は固定子 S 巻線の電流が作る磁束鎖
T
交数の回転子 rβ 軸方向成分,ψrα は固定子 S 巻線の電流が
作る磁束鎖交数の回転子 rα 軸方向成分である †† 。
同じことを突極機の場合にやってみよう。突極機のイン
となる。(46) 式右辺において,第 1 項は抵抗による電力損
ダクタンス行列は (16) 式で与えられているから,それを θ
失,第 2 項はインダクタンスに蓄えられる磁気エネルギー
で偏微分すれば
の時間微分であり,残りの第 3 項が機械出力である。その
† (46) 式右辺第 3 項の 1/2 に関しては,研究ノート D-13 pp.43-45 を
参照のこと。
†† ただし,このことは次章の回転座標変換を勉強しないと分かり難
い!
機械出力を回転速度 θ̇ で割れば,発生トルク T が求まる。
つまり,回路方程式に左から [i]T を乗じて電力 Pi を計算
し,その中で θ̇ のつく項だけを合計して機械出力を求め,
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
7
sd
∂[L]
= sq
∂θ
rα
rβ
sd


0


0

 −Md sin θ


−Md cos θ
sq
0
0
Mq cos θ
rα
−Md sin θ
Mq cos θ
−(Lrd − Lrq ) sin 2θ
−Mq sin θ
−(Lrd − Lrq ) sin 2θ
β
q
β
q
α
θ
d
α
d
(a) d
rβ


−Md cos θ

 · · · · · · · · · · · · · · · · · · (52)
−Mq sin θ

−(Lrd − Lrq ) cos 2θ

(Lrd − Lrq ) sin 2θ
θ' = − θ
(b) α
図7
回転座標変換
図 7(b) のように角度の測り方を変えたほうがよいことも
ある。電機子巻線が固定子 αβ 軸にある回転機では,図 7(b)
となる。これを (47) 式に代入すれば突極機の発生トルク T q
のようにすれば電気的回転方向と機械的回転方向が一致す
は
る。このときは,(55a)-(55c) 式において θ = −θ0 とすれば
(
)
T q = irα −Md i sd sin θ + Mq i sq cos θ −
(
)
irβ Md i sd cos θ + Mq i sq sin θ −
よい。
〈5・2〉 複素数による表記
(Lrd − Lrq )irα irβ cos 2θ −
)
Lrd − Lrq ( 2
irα − i2rβ sin 2θ · · · · · · · · · · · · · · · · (53)
2
素数と二次元実数ベクトルとの対応は,あとで表 1 に示す。
回転座標変換は,複素数の極座標表現を使ったほうが位
相角を加算できるから簡略になる。すなわち,図 7(a) の座
標系の回転座標変換は,複素数を使って xdq = d + jq およ
となる。上式右辺第 1,2 項に,(51a) と (51b) を適用すれば,
び xαβ = α + jβ とすれば,
T q = irα ψrβ − irβ ψrα
xdq = exp(jθ)xαβ = (cos θ + j sin θ)(α + jβ)· · · · · · (56)
−(Lrd − Lrq )irα irβ cos 2θ
)
Lrd − Lrq ( 2
−
irα − i2rβ sin 2θ · · · · · · · · · · · · · · (54)
2
である。この式は,複素平面で exp(jθ) を乗じれば位相が θ
だけ増えるという,あたりまえのことを示してる †† 。この
となる。上式右辺の第 1,2 項はフレミングの左手則に相当
ことは,表 1 の No.3 に示したように,回転座標変換 (55a)
し,第 3,4 項は***3.1.3 項† ***に示されたリラクタンス
式に対応している。つまり,位相を増やすという意味が,複
トルクである。
5.
二相の電圧・電流は二次元
実数ベクトルで表せるが,複素数で表すこともできる。複
素数表現 (56) 式のほうが二次元実数ベクトル表現 (55a) 式
よりも鮮明に分かる。
回転座標変換
ここで,(56) 式を時間で微分すると,
〈5・1〉 二次元ベクトルの回転座標変換
ベクトルを観
)
dxdq
d (
d
=
exp(jθ)xαβ = exp(jθ)( + jθ̇)xαβ · · · (57)
dt
dt
dt
測する座標系を図 7 に示すように回転すると座標値が変わ
る。このような場合に,回転座標変換が用いられる。図 7(a)
となる。この式は,回路方程式を回転座標変換するときに
において θ̇ = ω ならば,αβ 座標系からベクトルが止まって
出てくる時間微分項を処理するため頻繁に使用される。
みえても,dq 座標系からみれば ω でくるくる回ってみえ
〈5・3〉 複素数と二次元ベクトル
る。言い換えると,dq 座標系からみたとき ω でくるくる
二相回転機の回転座
標変換を,二次元ベクトルでやると cos,sin,および,加
回ってみえるベクトルがあったなら,αβ 座標系に乗り換え
法定理がいやになるほど出てくる。それに比べて,複素数
れば止まってみえる。回転座標変換とは,このことを数学
表記を用いれば cos と sin を追放できる。ここでは,
「複素数
的に表現したものである。
の世界」と「二次元ベクトルの世界」を行き来するときに
図 7(a) のように d 軸から α 軸へ角度 θ を測るときは,二
必要となる知識を整理しておく。特に大切なのは,
〈5・3・4〉
相量 (d, q) と (α, β) との変換は,次式となる。
項である。
 
 
 
d
  = C(θ) α · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (55a)
q
β
 
 
 
α
  = C(−θ) d · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (55b)
β
q


cos θ − sin θ
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (55c)

C(θ) = 
sin θ cos θ 
以下,★★★★までは退屈だから,忙しい人は★★★★
へ直行!
〈5・3・1〉 複素数の復習
よく見かける複素数の定義
は,次のようになっている。
実数 xr , xi と虚数単位 j2 = -1 を用いて,
x = xr + jxi · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (58)
††
†
図 7(a) をみよ。同じベクトルをみても d 軸からの位相角のほうが
θ だけ大きい。
難波江ほか (1) p.56
8
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
されるもの)を区別する††† 。
と書かれる数 x を「複素数」と呼び,複素数が等しいこと
と四則演算を次のように定義する。
複素数の積と二次元数ベクトルの対応を次のようにする。
(xr + jxi ) × (yr + jyi ) = xr yr − xi yi + j(xr yi + xi yr )
  


 xr −xi yr   xr yr − xi yi 
⇔ 
  = 
 · · · · · · · · · · (62)
x
x  y   x y + x y 
xr + jxi = yr + jyi ⇔ xr = yr かつ xi = yi · · · · · · (59a)
(xr + jxi ) ± (yr + jyi ) ≡ (xr ± yr ) + j(xi ± yi ) · · · (59b)
(xr + jxi ) × (yr + jyi )
i
≡ (xr yr − xi yi ) + j(xr yi + xi yr ) · · · · · · · · · · · (59c)
i r
数であるが,二次元数ベクトルでは積の左と右が,それぞ
れ,行列(加害者)とベクトル(被害者)というように顔
が変わる。面倒だけど,仕方がない†††† 。
ただし,Y ≡ y2r + y2i , 0 である。単なる実数は xr + j0 = xr
ところで,上の 2 × 2 行列は,たった二つの要素で決
のように書くことが多い。
まっている(対角要素が xr で,非対角要素が xi 。これを
しかし,上の定義は虚数単位 j が天下り的に導入されて
シュワルツ形行列という。)。よって,上の 2 × 2 行列を
おり,j が本当に存在するのかと考えると,不満足である。
二次元数ベクトルもどき としよう。この「2 × 2 行列」の性
これを避けるには次のようにする。
質を調べておこう。ただし, xr と xi が 0 でないときだけ。
まず,二つの実数の組を (xr , xi ) と書くことにする。ここ

 xr

xi
で,上の定義をそっくりまねして,次のように定義する。
(xr , xi ) = (yr , yi ) ⇔ xr = yr かつ xi = yi · · · · · · · (60a)
(xr , xi ) ± (yr , yi ) ≡ (xr ± yr , xi ± yi ) · · · · · · · · · · · (60b)
ただし,
(xr , xi ) × (yr , yi ) ≡ (xr yr − xi yi , xr yi + xi yr ) · · · · (60c)
X≡
xr yr + xi yi xi yr − xr yi
,
) · · · (60d)
Y
Y


cos θ
−xi 
 = X 
xr
sin θ
√
xr2 + xi2 ,

− sin θ
 · · · · · · · · · · · · · · · (63a)
cos θ 
θ ≡ tan−1
(
)
xi
· · · · · · · · · · · · · · (63b)
xr
(被害者)ベクトルに
上式から,加害者「2 × 2 行列」は,
襲い掛かかりそれを複素平面の原点を中心にして X 倍に引
ただし,Y ≡ y2r + y2i , 0 である。
き伸ばして,正の角度 θ だけくるっと回してしまうだけで
こうすれば,実数の組 (xr , xi ) が「普通の複素数」に対応
ある。なお, xr = xi = 0 のときは,被害者を抹殺する殺人
する。単なる実数は xr = (xr , 0) である。実数の組 (0, 1) は
鬼(作用すると結果が 0 になる)になるから除いておいた
確かに存在するし,それが虚数単位 j に相当する。なぜな
わけだ。
ら,上の積の定義 (60c) 式から (0, 1) ×(0, 1) = (-1, 0) だか
〈5・3・2〉 オイラーの公式
らである。したがって,虚数単位 j も確かに存在すること
虚数 jθ を右肩にもつ指数
関数,つまり,
になる。よって,ちょっと気味の悪い j2 = -1 を避けること
ejθ ≡ exp(jθ) = cos(θ) + j sin(θ)· · · · · · · · · · · · · · · · · (64)
ができた。けれども退屈だね!
★★★★ 忙しい人はここからスタート ★★★★
をオイラーの公式という。前項 (63a) 式の正の角度 θ だけ
そこで,頭のいい人† は,次のようにピンときたでしょう!
くるっと回してまう行列は,複素数ではこの exp(jθ) に対応
『二つの実数の組は,二次元数ベクトルだ。したがって,
する。つまり,
複素数と二次元数ベクトルを同一視できそうだ。』

cos θ

sin θ
しかし,複素数と二次元ベクトルは完全には一対一に対
応しない。たとえば,複素数同士の積は複素数になるが,二
次元数ベクトル同士の積は二次元数ベクトルにならない。

− sin θ
 ⇔ exp(jθ)· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (65)
cos θ 
というふうに,
「二次元ベクトルの世界」と「複素数の世界」
つまり,下のようにはできない †† 。
が対応する。
二つの指数関数の積は,
????????· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (61)
e x ey = e x+y · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (66)
そこで,複素数の積に対応づけるために,次のようにす
となる。そこで,上式の指数部が虚数のときを考えてみよ
る。二次元数ベクトルは,2 行 1 列の行列のことだ。行列
††† 加害者と被害者がそろったから,種明かし。ジャンジャ∼ン!
(参
考文献 杉浦 (3) )
†††† ところで,n 次元数ベクトル空間に加法と乗法を定義して,しか
も,積を可換にできるのは,n = 1, 2 の二つだけである。その二つと
は,実数体と複素数体のこと。積が可換でなくてもよければ,n=4 の
ときは非可換体となりハミルトンの4元数体という・
・
・。なんて,え
らそうに杉浦 (3) p.42 の受け売り。
の積では左と右を入換えられない。左の掛けるもの(加害
者,作用するもの)と右の掛けられるもの(被害者,作用
†
そうあなたのことです!
左の二次元ベクトルを転置してもダメ。結果がスカラーになっちゃ
うから。右を・
・
・ウフ!!
††
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
r i
二次元数ベクトルの 1 行目が実部に,2 行目が虚部に対応
≡ (xr yr + xi yi )/Y + j(xi yr − xr yi )/Y · · · · · · (59d)
   
 xr  yr 
  ×  
xi
yi
i
していることが分かる。複素数なら積の左も右も同じ複素
(xr + jxi ) ÷ (yr + jyi )
(xr , xi ) ÷ (yr , yi ) ≡ (
r
9
おまけ:
う。つまり,
( 1 ) 複素平面で考えると,共役複素数は,元の複素数
ejα e±jβ = ej(α±β) = cos(α ± β) + j sin(α ± β) · · · · (67a)
を実軸に対して折り返したものだ。
= (cos α + j sin a)(cos β ± j sin β) · · · · · · (67b)
( 2 ) 正方向にくるくる回る複素数の共役を作ると,負
= (cos α cos β ∓ sin α sin β) +
方向にくるくる回り出す。
j (sin α cos β ± cos α sin β) · · · · · · · · (67c)
( 3 ) 二相回転機の一相だけに交流をくわえると交番磁
界ができる。二回転磁界理論によれば,交番磁界は
上の (67a) 式と (67c) 式を,それぞれ,実部と虚部に分けて
正方向と負方向にくるくる回る二つの成分に分けて
比較してみれば,毎度おなじみの三角関数の加法定理が出
考えることができる。このようなときには,共役を
てきてしまった。実は,このことが,回転座標変換を複素
導入すると便利だ。
数表記でやると加法定理を一切使わなくてもよい仕掛けに
二相回転機に突極性があると,d 軸インダクタン
( 4 ) ::::::::::::::::::::::::::
なっている。
〈5・3・3〉 複素数の実部と虚部を分ける
スと q 軸インダクタンスがそれぞれに単相交流的に
ところで,上
変化するから,このときも::::::::::::::::::::
共役複素数が出てくる。
で「実部と虚部に分けて・
・
・」といったけど,二つの方法
〈5・3・4〉 任意の2 × 2行列を複素数で表現する
がある。まず,次のようにすればよい。
xr = Re(xr + jxi ) ,
振
り返ってみると,複素数の話から始めて,二次元ベクトル
xi = Im(xr + jxi )· · · · · · · · · · · (68)
の世界に入りこんでしまった。ここでは,逆に,
「二次元ベク
トルの世界」を「複素数の世界」に翻訳する方法を考える。
実部と虚部をそれぞれ取り出すために,二つの関数 Re(),
前に出てきた,加害者の「2 × 2 行列」は
Im() が必要です。こんな簡単な仕事に関数を二つも使うな

 xr

xi
んて,ちょっともったいない。
†
実部と虚部に分ける,もう一つの方法は共役 を使う。つ
まり,
x + x∗ (xr + jxi ) + (xr − jxi ) 2xr
· · · · (69a)
=
=
2
2
2
x − x∗
(xr + jxi ) − (xr − jxi )
xi = (−j)
= (−j)
2
2
2jxi
= (−j)
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (69b)
2
上式は,分母を 2j にしておけば,カッコいい。しかし,こ

−xi 

xr 
と,たった二つの実数 xr と xi だけで表せる。だけど,世
xr =
の中はそんなに甘くない。すくなくとも,二軸理論では突
極形回転機のインダクタンス行列は非対称で,おまけに対
角要素まで異なる†† 。
一般の 2 × 2 行列は,

a

c
うしておいたほうが後で行列との対応を考えるときに便利
である。

b
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (71)
d
というふうに,四つの要素が全部異なっていたりする。こ
共役のほうが,Re(), Im() よりも便利なことを説明して
の行列を複素数で表す方法を示しておこう。
おこう。Re(), Im() は,複素数があらかじめ直角座標表現に
以下に示す方法は,上の行列 (71) 式を複素数で表す方法
なっていて実部と虚部に分かれているときはいいけど,極
として,エレガントではない。しかし,なんとかできる。
座標表現のときには不便だ(実部を取り出すのに絶対値に
(もっとエレガントな方法があれば,私は知りたい。)
cos を掛ける!)。それに比べると,共役は,直角座標表現
まず,次の四つの行列
でも極座標表現でもどちらも虚部の符号を反転するだけで

1
A1 = 
0

1
A3 = 
0
いい。そもそも複素数表現を導入した背景には,回転座標
変換の cos と sin の加法定理を追放したかったことがある。
Re() を使うと cos が顔を出しかねないから,複素数表記の
計算では Re() を使わずに共役を使ったほうがよい。
共役を使った公式をまとめておこう。


0
0
, A2 = 
1
1


0
0 
, A4 = 
−1
1

−1
, · · · · · · · · · · · · · · · · (72a)
0

1
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · (72b)
0
を考える。この四つから,次のように 2×2 行列で一つの要
(x ± y)∗ = x∗ ± y∗ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (70a)
素だけが 1 になるもの
(xy)∗ = x∗ y∗ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (70b)
( )∗
x
x∗
=
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (70c)
y
y∗

A1 + A3 1
= 
2
0

A2 + A4 0
= 
2
1
x x∗ = |x|2 ⇐ こいつは本当に役に立つ · · · · · · · (70d)
Im(xx∗ ) ≡ 0 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (70e)
† 実部と虚部を取り出す二つの仕事に共に役に立つから,
「共役」な
んちゃって。(これ,シャレだからね!
「共役」の本当の意味は違うか
らね。)

0
,
0

0
,
0

A1 − A3 0
= 
2
0

−A2 + A4 0
= 
2
0

0

1

1

0
(73a)
(73b)
を作ることができる。そこで,上の各式にそれぞれ a, d, c,
††
10
(38c), (38d), (41b), (41c) 式を見よ。
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
No.
表 1 複素数と実数ベクトルの対応
ただし,上式の要素の並びは,(38a) 式と対応づけやすいよ
複素数
うに,通常の添字のつけ方と変えてあるから注意されたい。
(A + jB)(x + jy)
1
(注 1)
= (Ax − By) + j(Bx + Ay)
2
× exp(jθ)
3
exp(jθ) × 4
j×
5
複素共役 conj()
6
j × conj()
二次元実数ベクトル

  

A −B  x Ax − By


   = 
B
A y
Bx + Ay


 
  cos θ


 × 
sin θ

  
cos θ − sin θ 

 ×  
sin θ
cos θ
  

0 −1 
 ×  

1
0

  
1
0  

 ×  
0 −1
  

0 1 
 ×  

1 0

L s0 + L s1 cos 2θ0
= 
L s1 sin 2θ0
[
0 ]
L22
[
0 ]T
L12
[
0 ]
L11
は複素数, は実数である。

 Md cos θ0
= 
Md sin θ0

`r + Lrd
= 
0

L s1 sin 2θ0 
 · · (75b)
L s0 − L s1 cos 2θ0 

−Mq sin θ0 
 · · · · · · · · · · · · · (75c)
Mq cos θ0 

0 
 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (75d)
`r + Lrq 
(注 2)
複素数の実部がベクトル 1 行目に,虚部がベクトル 2 行目に対応
する。 







1 0
0 −1
1
0 1
0 
, A2 = 
, A3 = 
, A4 = 
 の
(注 3) A1 = 
0 1
1
0
0 −1
1 0






1 0 A1 − A3
0 0 A2 + A4
0 0
A1 + A3
,
,
,
とき,
= 
= 
= 
2
2
2
0 0
0 1
1 0


−A2 + A4 0 1
= 
 である。
2
0 0
L s0 ≡ ` s +
  
v sα  R s
  
v sβ   0
  = 
 vrd   0
  
vrq
0
0
0
Rr
0
 
 

i sα 

0 i sα 
 
 

0 i sβ  d [ 0 ] i sβ 
  +  L   · (76)
 ird 
0  ird  dt 
 
 

Rr irq
irq
上に示した固定子に電機子巻線がある二相回転機のイン
(75b) 式に (74a)-(74d) 式を適用して複素数表現を求め
に(加害者モードの)複素数で表現できる。

0

1
ると,
0
[L22
] = L s0 A1 + L s1 (cos 2θ0 A3 + sin 2θ0 A4 )
(77a)
(
)
0
0
⇔ L s0 + L s1 cos 2θ conj() + sin 2θ · j · conj()
⇔ 複素数なら 1 を掛ければよい。· · · · · · · · (74a)

−1

0
= L s0 + L s1 exp(j2θ0 )conj()
求めると,

0 

−1
A1 + A3
A1 − A3
+ Mq cos θ0
+
2
2
A2 − A4
A2 + A4
+ Mq sin θ0
Md sin θ0
2
2
Md + Mq (
)
0
0
=
cos θ A1 + sin θ A2 +
2
Md − Mq
(cos θ0 A3 + sin θ0 A4 )
(78a)
2
Md + Mq (
)
⇔
cos θ0 + sin θ0 · j +
2
Md − Mq
(cos θ0 + sin θ0 · j)conj()
2
Md + Mq
=
exp(jθ0 )+
2
Md − Mq
exp(jθ0 )conj()
2
= M0 exp(jθ0 ) + M1 exp(jθ0 )conj()
(78b)
0 T
[L12
] = Md cos θ0
⇔ 複素数なら共役作用素,conj() です。· · (74c)
 
1 0
=
0 1


−11 0 


0 0 −1
⇔ 複素数なら j × conj() です。· · · · · · · · · · · · (74d)
以上に述べたことをまとめたものが,表 1 である。
〈5・4〉 二相回転機の複素数表記の例
固定子に電機子
巻線がある二相回転機のインダクタンス行列は,(41a)-(41e)
式に示したが,それをもう一度書いておく。
[ ]
0
[ 0 ]  L22
L = [ ]
0
L12
]T 
0

L12
[ ]  · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (75a)
0
L11
[
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
(77b)
(75c) 式に (73b),(74a)-(74d) 式を適用して複素数表現を
⇔ 複素数なら exp(jπ/2) = j を掛ける。· · · · (74b)

0
A4 = 
1
0
Rs
0
0
ダクタンス行列 [L0 ] の複素数表現を求めよう。
上の四つの行列 (72a),(72b) 式は,それぞれ,次のよう

1
A3 = 
0
L sd − L sq
· · · · · · (75e)
2
機の回路方程式は次式となる。
ができる。

0
A2 = 
1
L s1 ≡
さらに,巻線抵抗を考慮すると,固定電機子形の二相回転
b を掛けていって全部足したら,前に出てきた行列 (71) 式
になる。つまり,A1 , A2 , A3 ,A4 をそれぞれ複素数で表
すことができれば,行列 (71) 式を複素数に対応づけること

1
A1 = 
0
L sd + L sq
,
2
11
A1 + A3
A1 − A3
+ Mq cos θ0
+
2
2
−A2 − A4
−A2 + A4
Mq sin θ0
+ Md sin θ0
2
2
Md + Mq (
)
=
cos θ0 A1 − sin θ0 A2 +
2
Md − Mq
(cos θ0 A3 + sin θ0 A4 )
(78c)
2
Md + Mq (
)
⇔
cos θ0 − sin θ0 · j +
2
Md − Mq
(cos θ0 + sin θ0 · j)conj()
2
Md + Mq
exp(−jθ0 )+
=
2
Md − Mq
exp(jθ0 )conj()
2
= M0 exp(−jθ0 ) + M1 exp(jθ0 )conj()
(78d)
M ≡ Md = Mq
0
[L12
] = Md cos θ0
L ss ≡ ` s + L sd = ` s + L sq
Lrr ≡ `r + Lrd = `r + Lrq
( 3 ) 回転子の巻線は短絡されているから,vrd = vrq = 0
である。
( 4 ) 図 6(b) の dq 軸上の回転子巻線は界磁巻線では
なく,dq 軸を後で別の意味に用いるから,添字を
d ⇒ γ , q ⇒ δ のように置き換える。
以上を (42) 式に適用すれば,かご形誘導モータの回路方程
式は,
  
v sα   R s + DL ss
  
v sβ  
0
  = 
 0   DM cos θ0
  
−DM sin θ0
0
DM cos θ0
DM sin θ0
Rr + DLrr
0
ただし,
M0 ≡
Md + Mq
,
2
M1 ≡
Md − Mq
· · · · · · · · · · · (78e)
2
(75d) 式に (74a)-(74d) 式を適用して複素数表現を求め
上式は,実際の誘導モータのように固定子巻線と回転子
A1 + A3
A1 − A3
+ (`r − Lrq )
2
2
Lrd + Lrq
Lrd − Lrq
= (`r +
)A1 +
A3
(79a)
2
2
⇔ Lr0 + Lr1 conj()
(79b)
巻線がそれぞれ別の座標系になっているが,使いにくい。
0
[L11
] = (`r + Lrd )
その理由は,微分演算子に角度 θ0 依存項がつくため,(81)
式を用いたシミュレーションでは微分方程式を数値計算す
るときの時間刻み幅を小さくする必要があり,計算時間が
長くなるからである。
座標系を統一するため,回転座標変換を以下のように適
以上をまとめると,固定電機子形二相回転機のインダク
用する。準備として (81) 式を複素数で表記すると,
タンス行列の複素数表現は,


0
[L ] = 

 
 
0 
v sαβ   R s + DL ss
DM
exp(jθ
)
 i sαβ 
 = 

   · · · (82)
0
0
DM exp(−jθ ) Rr + DLrr   irγδ 
L s0 + L s1 exp(j2θ0 )conj()
M0 exp(−jθ0 ) + M1 exp(jθ0 )conj()

M0 exp(jθ0 ) + M1 exp(jθ0 )conj()
 · · · · · · (80)
Lr0 + Lr1 conj()
となる。上式の固定子と回転子を新 dq 座標系に統一する。
ただし,新 d 軸は,図 6(b) の α 軸から正の角度 θ0 の位置
にあるものとする。(82) 式に回転座標変換,
  
 
i sαβ  exp(jθ0 )
 i sdq 
0
   · · · · · · · (83)
  = 
(
0 )
irγδ
0
exp j(θ0 − θ )  irdq 
のように求められた。ただし,conj() は複素共役を作る演
算子で,右側に何かくるとそいつに襲い掛かる(微分演算
子と同じ)。
を適用する(上式は電流の変換式であるが,電圧の変換式
誘導電動機とベクトル制御
は i ⇒ v とすればよい)。その結果,新 dq 座標系に統一し
たかご形誘導機の回路方程式は,
ここでは,誘導機の回路方程式と発生トルク式から出発
 

v sdq   R s + (D + jθ̇0 )L ss
)
 = (

0   D + j(θ̇0 − θ̇0 ) M
して,直接形および間接形ベクトル制御の制御式を導出す
†
る 。
〈6・1〉 かご形誘導モータの回路方程式
 
 
( (D + jθ̇0 )M )  i sdq  · · · · · · (84)
Rr + D + j(θ̇0 − θ̇0 ) Lrr irdq
かご形誘導
モータの回路方程式は,次のようにして求められる。
( 1 ) 電機子巻線が固定子にあるから,図 6(b) が適し,
(42) 式を用いる。
となる。ただし,θ˙0 はステータからみたロータの機械的な
( 2 ) 非突極機であるからインダクタンス行列 (41a)-
回転角速度である。また,θ0 はステータの α 軸から新 d 軸
(41e) 式で次のようにおく。
†
 
−DM sin θ0  i sα 
  
DM cos θ0  i sβ 
   · · · · · · · (81)
0
  irγ 
 
Rr + DLrr irδ
となる。ただし,微分演算子 D ≡ d/dt である。
ると,
6.
0
R s + DL ss
DM sin θ0
DM cos θ0
への角度であり,用途に応じて任意に定めてよい。高速トル
ク制御系などでは,上式の新 d 軸を磁束鎖交数ベクトルの
研究ノート D-14 pp.2-5 参照
12
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
方向に一致させることが多い。このとき,上式では微分演
算子に角度 θ0 依存項がつかず,シミュレーションの積分時
ref
isd
間刻み幅を大きくしても誤差が少ない。(84) 式の複素数表
ref
isq
Current
CTL
+
-
+
-
現を,dq 座標系の実数ベクトルで表すと次のようになる。
  
v sd   R s + DL ss
  
v sq   θ̇0 L ss
  = 
 0   DM
  
(θ̇0 − θ̇0 )M
0
DM
θ̇0 M
Rr + DLrr
(θ̇0 − θ̇0 )Lrr
 
−θ̇0 M  i sd 
  
 i sq 
DM
   · · · · · (85)
0
−(θ̇0 − θ̇ )Lrr  ird 
  
Rr + DLrr
irq
図8
ref
isd
α -β
d-q
uvw iu ,v ,w
α -β
IM
λr
PS
磁束センサつき直接形ベクトル制御系
Current
CTL
+
ref
isq
用して求めると,
-
+
vu ,v ,w
ref
vsd
, sq d-q
α -β
α -β
INV
uvw
-
isd
T = M(i sq ird − i sd irq ) = MIm(i∗rdq i sdq )· · · · · · · · · · (86)
〈6・2〉 ロータ磁束鎖交数の導入
i sq
α -β
θˆ0
(84) 式の 2 行目を見
やすい形にまとめるために,ロータ巻線の磁束鎖交数を導
phase
calc.
入する。まず,ロータ巻線の磁束鎖交数を次式で定義する。
λrdq ≡ Mi sdq + Lrr irdq · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (87)
λ̂r
iu ,v ,w
uvw
vu ,v ,w
IM
flux
observer
PS
図 9 磁束オブザーバ使用の直接形ベクトル制
御系
(87) 式を使って,(84) 式の 2 行目を変形すると
0 = (D + j(θ̇0 − θ̇0 ))Mi sdq +
ref
isd
0
Rr irdq + (D + j(θ̇0 − θ̇ ))Lrr irdq
ref
isq
0
= Rr irdq + (D + j(θ̇0 − θ̇ ))λrdq · · · · · · · · · · · · · · · (88)
Rr M
Rr
=−
i sdq +
λrdq + (D + j(θ̇0 − θ̇0 ))λrdq (89)
Lrr
Lrr
+
-
+
ref
vsd
,sq d-q
Current
CTL
θ0
-
isd
τ 2 ≡ Lrr / Rr
を使って,irdq を消去して i sdq を残していることに注意す
ref
isq
 1  ref
isd
τ 2 
 1 + τ 2P 
†
る 。(89) 式を変形して,実数表記すると次式を得る。
 
i sd 
 (90)
i sq
α -β
d-q
isq
となる。ただし,(88) 式から (89) 式の変形に再び (87) 式


   − Rr
0
  
θ̇
−
θ̇
0



d λrd  
 λrd  Rr M
L
rr
 =
  +
dt λrq  −(θ̇ − θ̇0 ) − Rr  λrq 
Lrr
0
Lrr
α -β
d-q
となる。ただし,Im は虚数部,*は複素共役を表す。
∫ ω1dt
α -β
α -β
INV
uvw
α -β
uvw iu ,v ,w
IM
ω1
ω sl
vu ,v ,w
ωr
PS
+ +
図 10 間接形ベクトル制御系
〈6・3〉 直接形ベクトル制御
次項では,(90) 式を基にトルク制御法を検討する。
いわゆる直接形ベクトル
制御では,ロータ磁束鎖交数ベクトル λr が何らかの方法で
一方,トルク (86) 式を磁束鎖交数 (87) 式を使って変形
検出できるものと仮定する。このため,直接形ベクトル制
)
1 ∗
(λrdq − Mi∗sdq )i sdq
Lrr
(
)
M
=
Im λ∗rdq i sdq
Lrr
M
(λrd i sq − λrq i sd ) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (91)
=
Lrr
(
御は,磁束フィードバック形ベクトル制御とも呼ばれる。
T = MIm
直接形ベクトル制御系のブロック図を図 8,9 に示す。図 8
は磁束センサを用いる場合で,図 9 は磁束オブザーバを用
いる場合である。
検出されたロータ磁束鎖交数ベクトル λr に基づいて,そ
の方向を d 軸と定めれば,その q 軸成分は 0 となる。つ
まり,
ただし,上式の1行目から2行目の変形には,恒等式
Im(i∗ i) ≡ 0 を使った。
†
uvw
flux
position
calc.
発生トルク式は,(46) 式の下に述べた方法を (84) 式に適
すると,
INV
α -β
i sq
vuref,v ,w
α -β
θ0
isd
−θ̇0 L ss
R s + DL ss
−(θ̇0 − θ̇0 )M
DM
ref
vsd
,sq d-q
λrd = |λr | · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (92a)
λrq = 0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (92b)
ロータ電流は,所詮,観ることも触ることができないから。
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
13
となる。上の 2 式を (91) 式へ代入すれば,トルクは,
d
dt
M
λrd i sq · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (93)
Lrr
T=
となる。これは,i sq が満たすべき方程式である。
一方,i sd が満たすべき方程式は,(90) 式の 1 行目と (92b)
式から,
d
Rr
Rr M
λrd = − λrd +
i sd · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (94)
dt
Lrr
Lrr
となる。
となる。ただし,パラメータの上添字 o は誘導機内部の実
re f
トルク指令値 T re f とロータ磁束鎖交数の指令値 λrd が
際値を表し,ハット ˆ は制御器内部の値を表す。
与えられたときには,(93) 式と (94) 式を満たすようにする
(100) 式において,上添字 o とハット ˆ がついたものが
それぞれ等しければ,まず,右辺第 2 項が [0 0]T とな
る。このことと,右辺第 1 項の 2 × 2 行列の固有値は
o
−Ror /Lrr
± j(θ̇0 − θ̇0 ) であるゆえに応答が漸近的に減衰す
る †† ことから,(λord − λ∗rd ) → 0 ,λorq → 0 となることが分
かる。すなわち,q 軸成分がなくなる (λorq = 0 になる) から
ロータ磁束鎖交数は d 軸に縛りつけられて,その大きさも
re f
指令値どおりになる (λord = λrd ) ことを確認できた。
ために,ステータ電流指令値を,
Lrr T re f
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (95)
M λre f
rd
1
Lrr d re f
= (1 +
)λ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (96)
M
Rr dt rd
f
ire
sq =
f
ire
sd
とすればよい。(95) 式と (96) 式が直接形ベクトル制御の制
御則である。
〈6・4〉 間接形ベクトル制御


Ro M o L̂rr re f 
 o
λ
λrd − r

rd 
o

R̂r M̂Lrr


o
λrq


o

o o
 − Rr
θ̇0 − θ̇0  λo − Rr M L̂rr λre f 

o
Lrr
  rd
rd 
o
 +
= 
o 
R̂r M̂Lrr

−(θ̇ − θ̇0 ) − Rr  
o
0
λrq
o
Lrr
 o o[

o ]
Ror /Lrr
 Rr M
f

λre
1−
 o

 Lrr M̂
R̂r /L̂rr rd  · · · · · · · · · · · · · · (100)


0
7.
いわゆる間接形ベクト
PM モータと制御
ル制御は,ロータ磁束鎖交数 λrdq を検出せずに,その指令
〈7・1〉 永久磁石界磁同期機(PMモータ)の回路方程式
値に強引に縛りつける制御である。このため,間接形ベク
回転子に永久磁石界磁を有する同期機の回路方程式を次の
トル制御は,磁束フィードフォワード制御とも呼ばれる。
ように求める。
f
re f
λrdq を検出しないで,その指令値 λre
rdq = λrd + j0 に縛
りつけるために,まだ使用していない (90) 式の 2 行目を使
( 1 ) 電機子巻線が固定子にあるから,図 6(b) が適し,
(42) を用いる。
( 2 ) 図 6(b) の d 軸巻線は永久磁石界磁であり,それが
作る電機子巻線の磁束鎖交数を ψ ≡ Md ird とする。
( 3 ) q 軸巻線はないから除く。
以上と (42) 式から回路方程式は,電機子巻線のある固定子
αβ 座標系では,
 
 
 
i sα 
v sα 
i sα 
d
  = R s   + [A1 ]   +
dt i sβ
v sβ
i sβ
 


i sα 
− sin θ0 
0
[A2 ]   + θ̇ ψ 
 · · · · · · · · · · (101a)
cos θ0 
i sβ
う!すなわち,
d
Rr
Rr M
λrq = − λrq − (θ̇0 − θ̇0 )λrd +
i sq · · · · · · · (97)
dt
Lrr
Lrr
を満たすように (θ̇0 − θ̇0 ) を制御する。仮に λrq = 0 の状態
を維持できる (残った問題として後で説明する) ものとすれ
ば,上式から,
(θ̇0 − θ̇0 ) =
re f
Rr M i sq
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (98)
Lrr λre f
rd
とすればよい。
以上で,間接形ベクトル制御の制御則として,(95) , (96),
(98) 式を導出できた。図 10 に間接形ベクトル制御のブロッ

L s0 + L s1 cos 2θ0
[A1 ] = 
L s1 sin 2θ0

L s1 sin 2θ0 
 · (101b)
L s0 − L s1 cos 2θ0 

− sin 2θ0
[A2 ] = 2θ̇ L s1 
cos 2θ0

cos 2θ0 
 · · · · · · · · · · · · (101c)
sin 2θ0 
ク図を示す。ただし,図中の記号は,
τ2 ≡ Lrr /Rr ,
ωr ≡ θ̇0 ,
ω sl ≡ θ̇0 − θ̇0 · · · · · · · · (99)
0
である。
残った問題は,この制御で,本当に λrq = 0 の状態を維持
L s0 ≡ ` s +
できるかどうかである。これを確認するには,次のように
すればよい † 。ロータ側方程式 (90) 式に,制御則 (95), (96),
L sd + L sq
,
2
L s1 ≡
L sd − L sq
· · · · · (101d)
2
上式の複素数表記は,複素共役を*で表して,
(98) 式を代入して整理すると,
††
†
分からなかったら,制御に関する本の「制御系の固有値」を勉強
せよ!
近藤のオリジナル!
14
S.Kondo Note, FileName: 00denACMcontrol.tex Nov.08, 2005
解 説
di∗sαβ
di sαβ
+ L s1 exp(j2θ0 )
dt
dt
+2θ̇0 L s1 exp(j2θ0 )ji∗sαβ + exp(jθ0 )jθ̇0 ψ · · · (102)
v sαβ = R s i sαβ + L s0
である ††† †††† 。上式を図 6(b) の dq 座標系に変換するため,
v sαβ = exp(jθ0 )v sdq ,
i sαβ = exp(jθ0 )i sdq · · · · · · · (103)
を代入すれば,永久磁石界磁とともに回転する dq 座標系
での回路方程式は,
v sdq
di∗sdq
di sdq
= R s i sdq +L s0
+ L s1
dt
dt
0
+jθ̇ L s0 i sdq + jθ̇0 L s1 i∗sdq + jθ̇0 ψ · · · · (104)
となる † 。上式は 2 次元実数ベクトルで表せば,
 
  
  
v sd 
  
0  d i sd 
  = R s i sd  + ` s + L sd
  
v sq
i sq
0
` s + L sq  dt i sq 

 
 
 0
 0 
−(` s + L sq ) i sd 
0
0

+θ̇ 
   + θ̇   · (105)
` s + L sd
0
i sq
ψ
となる。発生トルク式は,(105) 式に (46) 式の下に述べた
方法を適用して,
T = (L sd − L sq )i sd i sq + ψi sq · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (106)
となる。なお,回転機の極対数が p のときは (48) 式を適用
する。
〈7・2〉 予 告 編
PM モータのベクトル制御,高効率
化制御,磁束制御,弱め界磁制御,さらには,位置センサ
レス制御などなど。。。乞うご期待!
!次号を待て!
!
(平成 15 年 3 月 27 日受付,同 17 年 11 月 08 日再受付)
文
献
( 1 ) 難波江,金,高橋,中村,山田: 「基礎電気機器学」, 電気学会,1984
( 2 ) 山村: 「電気回路と回転機の解析と制御 ――スパイラルベクトル理
論――」, オーム社,1998
( 3 ) 杉浦光夫:基礎数学2 解析入門 ,東京大学出版会,1980
( 4 ) 研究ノート:file name == NoteD14P2.doc
来
2005/11/07
2003/04/25
歴
安本氏の指摘により,式 (104) 右辺最後から 2 つ目の添字修正。
電気学会クラス [2003/01/14 v2.1] 修正版 ieejSK.cls 使用
†††
研究ノート D-12 pp.50-52
(102) 式の右辺の i∗sαβ に注 目せよ。こいつは,i sαβ と逆方向に回
転する。こいつがあるから位置センサレス。。。
† 研究ノート D-13 pp.40-41
††††
近藤ノート ファイル名:00denACMcontrol.tex Nov.08,2005 年
15
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