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なゎ跳び運動の学習方法に関する動作的研究 - 短なわ二

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なゎ跳び運動の学習方法に関する動作的研究 - 短なわ二
学位論文
なわ跳び運動の学習方法に関する動作的研究
一 短なわ二重跳びのジャンプ動作に着目して 一
兵庫教育大学大学院
教科・領域教育学専攻
学校教育研究科
生活・健康系コース
学 籍 番 号
MO6271H
氏 名
淺 田 武 成
目 次
第1章緒言・・・・・・・・・・・・・・・…一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1
第2章
方 法
第1節 二重跳びジャンプ動作の比較・検討(実験1)
第1項 被験者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 3
第2項 動作…・… …・・・… …・・・・・… 一・・・・・・・・・・… …… 3
第3項 スキル調査 …・…・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一一・・・・・・・… 3
第4項 記録方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一… …・…
第5項
データ処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・…
第6項
第2節
第1項
3
3
4
データの比較・検討 ………・・…・・・・・… …・・… …
ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討(実験2)
被験者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・… 6
第2項
指導実践者
・…・・一・… …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
第3項 実践期間及び方法
・・・・・・・・・・…
@一・・・・・・・・・・・・・・・・… 6
第4項 実践内容 ・・・・・・… 一・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・…
第5項
記録方法
6
…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一一・・・・…
6
8
第6項 データ処理 ・・・・・・・・・……・・・… …… ………・…・ 8
第7項
第3章
データの比較・検討 ・……・…………・… ………・ 8
第1節
結 果
熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作
第1項 なわ跳び熟練者の二重跳び動作 ・…・・・・・・・・… …・・…
9
第2項 なわ跳び熟練者の三重跳び動作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
9
第3項 小学生被験者の実態
12
第4項
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
動作分析結果の比較によるジャンプ動作の分類
・…・…
第5項 ジャンプ動作の分類ごとに見る二重跳びのスキル ・・・・…
14
20
第2節 ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による動作の変容(実験2)
第1項 低学年児童の二重跳びスキル及びジャンプ動作の変容 … 21
第2項 中学年児童の二重跳びスキル及びジャンプ動作の変容 一・24
第3項
練習方法別に見るジャンプ動作の変容 ・・・・・・・・・・・・・… 27
第4項 二重跳び既習得者における三重跳び動作 ・・・・・・・・・・・・… 29
第4章
考 察
第1節
熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作分析からの考察 ・・ 34
第2節
ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討 ・・ 41
第5章 今後の課題
・…………・・・・・… …・…・…・…・・・・・・… 44
第6章 要 約 ・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・… 45
引用・参考文献
図表一覧
謝 辞
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
46
47
第1章緒言
第1章 緒 言
なわ跳びは,日本の公教育が始まった明治初期から学校教育の中に取り入れられた.そ
の手軽さや楽しさ故に街角の遊びとしても親しまれ,数ある子どもの遊びの中で常に上位
の人気を占めてきた.時代の流れとともに,街角の集団遊びとしてのなわ跳びは無くなっ
てきたが,現在も体育科の教材や学校での遊びとして取り上げられている.
現行の小学校学習指導要領1)では,なわ跳び運動は,「基本の運動」及び「体つくり運
動」として位置づけられ,小学校学習指導要領解説体育編2)において,1・2年生の「基
本の運動,(d)用具を操作する運動遊び」,3・4年生の「基本の運動,(d)用具を操作
する運動」,5・6年生の「体つくり運動,(イ)体力を高める運動」としてそれぞれ例示
されている.
数あるなわ跳びの技の中でも,なわ跳び運動の学習を始めた児童が憧れてやまない技と
して,「短なわ前方順二回旋跳び(以下『二重跳び』)」がある.また,指導にあたる教師の
側からも,「二重跳び」ができるようになると,あや二重や交差二重,後ろ二重など,様々
な技への発展が期待できるため「ぜひ児童に習得させたい技」のひとつである.
二重跳びの学習では、手首回旋感覚・手足淋毒感覚・リズム感覚・跳躍感覚を伸ばすこ
とが大切であるとされている.しかし、実際の指導場面では跳躍感覚以外の事柄が重視さ
れ,なわの回旋や手足の協応の面からアプローチされることが多く,跳躍感覚へのアプロ
ーチとしては, 「高く跳ぼう」, 「思いきり跳ぼう」などの言葉掛けにとどまり,具体的
にどのように動けばいいのかは指示されないことが多い.
二重跳びのジャンプ動作に関する先行研究3)や実践報告4)5)によれば、ジャンプ動作
の空中局面における動作に着目し,二重跳び上達には「屈膝跳びが望ましい」とする見解
と「伸膝跳びが望ましい」とする見解とに分かれている.児童らに効果的に二重跳びを学
習させるためには,二重跳びのジャンプ動作で,「屈膝跳び」と「伸膝跳び」のどちらの跳
び方が有効なのかを明らかにする必要があると考えられる.
また,ジャンプ動作を力学的にとらえた場合,「ジャンプにおける重心の移動方向や飛距
離は,主として接地中の地面からの反力によって制御され,空中では手足をどのように動
かしても,その重心の軌跡を変えることはできない」といえるため,二重跳びのジャンプ
動作を考える場合には,「屈膝跳び」と「伸膝跳び」という「空中局面」の動作だけではな
1
第1章緒言
く「着地から離地にかけての局面(接地局面)」における動作についても検討が必要である
と考えられる.
なわ跳び運動の「接地局面」での動作に関しては、実践報告5)で「つま先で跳ぶ」,「リ
ズミカルに跳ぶ」などと示されているが,具体的な動作は示されておらず実際の指導には
生かしにくい.そのため,「接地局面」における動作に関しても「よりよい動作」を具体的
に示すことが必要だと考えられる.
体育科の学習で児童が二重跳びの練習を行う限られた時間の中で,児童らに二重跳びの
成功体験を味わわせるために様々な手立てが工夫されてきた.しかし,上述のごとく,二
重跳びのジャンプ動作に関しては未だ明確に示されていない事柄があり,これを示すこと
で,より多くの児童が二重跳び成功の喜びを感じるための一助になると考えられる.
そこで本研究では,なわ跳びに対して最高の技術を有していると考えられる1999年INF
国際なわとび連盟世界ランキング1位の成人男性となわ跳び技術の習得過程にある加古川
市立東神吉小学校全校児童370名の二重跳びジャンプ動作について,動作分析の手法を用
いて比較・検討することにより,短なわ二重跳びの効果的な学習方法を明らかにすること
を目的とした.
一2一
第2章一1 方法(二重跳びにおけるジャンプ動作の比較・検討:実験1>
第2章 方 法
第1節 二重跳びにおけるジャンプ動作の比較・検討(実験1)
第1項 被験者
なわ跳び熟練者(INF国際なわとび連盟,1999年世界ランキング1位,成人男性),1名
加古川市立東神吉小学校,全校児童370名
第2項 動作
なわ跳び熟練者については,連続5回以上の二重跳び及び三重跳びの動作を,小学生に
ついては,一重跳び連続5回,一旦ロープを静止した後,二重跳び連続5回の動作を行わ
せた.二重跳び動作の際,1跳躍目から二重跳びを始めることができる児童には最初から,
その他の児童には,一重跳びを数回行った後に二重跳びを始めるように指示した.また,
二重跳びが連続5回成功しない児童には跳べる回数だけ行わせた.
第3項 スキル調査(小学生)
加古川市立東神吉小学校全校児童370名について,一重跳びの20秒間スピード跳び及び
連続二重跳びの最高記録を計測した.
第4項 記録方法
一重跳び及び二重跳びのフォームを,被験者の側面よりデジタルビデオカメラ(SONY社
製,DCR−TRV10)を用い,1/60秒のシャッタースピードで撮影した.その際,レンズによ
る墨差を抑えるためにレンズを望遠側に設定して記録した.
第5項データ処理
デジタルビデオカメラで撮影した映像を,30フレーム/秒のAVIデータとしてコンピュータ
に取り込み,自作プログラム(富士通社製F−BASIC Ver.6.0にてWindowsXP上で動作する
EXEファイルを作成)を用いて,図1に示す16ポイント(①頭頂,②頭蓋側頭平面中央部,
③肩峰,④⑤左右肘関節,⑥⑦左右手関節,⑧⑨左右手指先,⑩大転子,⑪⑫左右大腿骨
3
第2章一1 方法(二重跳びにおけるジャンプ動作の比較・検討:実験1)
外側穎,⑬⑭左右足関節穎,⑮⑯左右足指先)の計測点を入力した.
入力した16ポイントの計測点から,松井7)の示す身体各部分重心位置を用いて合成重
心位置を算出し,二重跳び動作のスティック像と共に表示した.同時に,頸部角度,股関
節角度,膝関節角度,足関節角度を計算し,角度変化曲線として表示した.
■図1 ビデオ画像からの16ポイント計測点
第6項 データの比較・検討
熟練者及び小学生167名(全校生370名中,二重跳び連続2回以上に成功した183名の
うち,ビデオ撮影時にも二重跳び連続2回以上に成功した者)について,二重跳び第2跳
躍目(第1跳躍からの着地時∼第3跳躍への離地時まで)の動作分析結果を比較した.ま
た,熟練者については三重跳びの動作についても同様に動作分析を行い検討した.
なお,「二重跳びが何回できれば達成とするか」については様々な意見があるが,なわ跳
び運動が「連続ジャンプ」を運動課題として持つことから,二重跳びと二重跳びをつなぐ
役割を果たす第2跳躍目のジャンプは,第1跳躍目のジャンプとは技術的な違いがあると
考えられる.したがって,ジャンプ動作から見ると,二重跳びが連続2回できれば3回目
以降も連続するジャンプが可能であると考えられるため,本実験の結果においては「二重
4一
第2章一1 方法(二重跳びにおけるジャンプ動作の比較・検討:実験1)
跳び連続2回以上を『成功』のパフォーマンス」として比較した.
デジタルビデオカメラ
コンピュータ
モニター,プリンター
L_ニゼ欝 ・
出力
自作プログラム
(富士通社製F−BASIC Ver.6.0に
てWlndowsXP上で動作するEXEフ
ァイルを作成)
16ポイント計測点入力
身体重心・関節角度計算
■図2 二重跳び実験方法及びデータ処理の流れ
5
スティック像表示
身体重心移動表示
関節角度変化曲線表示
第2章一2 方法(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
第2節 ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討(実験2)
第1項 被験者
二重跳び未習得児4名(2年生:女子2名,4年生:女子2名)
二重跳び既習得児4名(5年生:女子3名,男子1名)
第2項指導実践者
加古川市立東神吉小学校教諭浅田武成
第3項 実践期間及び方法
実践は,平成19年度2学期に,課外(放課後)の活動として実施した.実践に先立ち,
被験者及び被験者の保護者に対して実践の意義やデータの活用方法についての理解を得た
実践において,二重跳び未習得児童は,学年別2グループに分け,通常の体育授業と同
様に数日の間隔を空けて3回(各10分間程度)の練習を行わせた.また,二重跳び既習得
児童は,他のグループとは別に時間を設定し,1回(約10分間)の練習を行わせた.
第4項 実践内容
練習は,各30分を単位時間として図3及び図4に示す流れで実施した.なお,「準備運
動」,「整理運動」及び「説明等」に約10分をあて,「準備運動」では,各自で体操とスト
レッチを行わせた後,スピード跳び(一重跳び)を,「整理運動」では,各自で体操とスト
レッチを行わせた.
「練習前記録」及び「練習後記録」では,二重跳び(及び三重跳び)動作のビデオ記録
と20秒間スピード跳びの記録計測を行った.「練習前記録」については,練習の進度等に
合わせて省略できるものとした.
「練習」では,目標とするジャンプ動作を意識させるために,児童同士で着地及び離地
姿勢と空中姿勢における「骨関節及び股関節伸展の度合い」をお互いに観察し合わせた.
ジャンプ動作については,「膝をあまり曲げずに,つま先で着地し,素早くジャンプする」,
「空中で膝を曲げすぎないようにする」ことを指示し,ペアの児童や指導者の言葉かけに
よって動作のフィードバックを行わせながら,トランポリンを使った連続ジャンプとフロ
ア上での連続ジャンプを数セットずつ実施させた.
一6一
第2章一2 方法(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
練習前記録
練 習
練習後記録
練 習
練習後記録
■図3 二重跳び練習実施の流れ
練習前記録
準備
堰ヲ熱り 纈分
約・分
運動 く動作記録〉 〈なわを回さずに行う練習〉
・二重跳び
☆エアーなわ跳び
〈動作記録〉
整理
運動
・三重跳び
・空振り跳び
・バー跳び
・トランポリン跳び
■図4 三重跳び練習実施の流れ
「練習」における連続ジャンプは,なわを回さないでジャンプする「エアーなわ跳び」
の動作として行わせた.その際手首回旋感覚を養うとされる「なわを手繰って持ち,体側
で小さく振る練習方法」と「塩ビ管を持って上下に振る練習方法」を取り入れ,それぞれ
「空振り跳び(なわを手繰る方法)」,「バー跳び(塩ビ管を持つ方法)」としてジャンプ動
作と同時に実施させた.(図5及び図6)
さらに,なわの回旋リズムを意識させるため,「エアーなわ跳び」実施時になわの音を声
に出すように指示して練習させた.例えば,二重跳びの場合,「ビュビューン,ビュビュー
ン」,三重跳びでは,「ビュビュビューン,ビュビュビューン」と声を出しながら連続ジャ
ンプを行わせた.
また,「エアーなわ跳び」!セットのリズムを決め,「記録時」及び「練習時」を通して,
「前跳び3回跳に続いて二重跳びを5回跳ぶ(三重跳びの場合,二重跳び3回に続いて三
重跳びを5回跳ぶ)」というリズムで動作を行わせた.例えば二重跳び1セットの場合,声
7一
第2章一2 方法(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
に出すなわの音は,「ビュン,ビュン,ビュン,ビュビューン,ビュビューン,ビュビュー
ン,ビュビューン,ビュビューン」となる.
“
■図5 二重跳び練習内容「空振り跳び」
■図6 二重跳び練習内容「バー跳び」
第5項 記録方法
二重跳び及び三重跳びの動作を鮮明に記録するため,被験者の側面より電子シャッター
付デジタルビデオカメラ(VICTOR社製, GZ−MG275)を用い,1/1000秒のシャッタースピ
ードで撮影した.その際,レンズによる周差を抑えるためにレンズを望遠側に設定して記
録した.
第6項 データ処理
実験1と同様の方法で行った.
第7項 データの比較・検討
各被験者の動作分析結果について練習経過にそって比較し,ジャンプ動作の変容につい
て考察した.
一8一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
第3章 結 果
第1節 熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作
第1項 なわ跳び熟練者の二重跳び動作
図7に示した熟練者二重跳び動作のスティック像及び関節角度変化曲線から,熟練者の
ジャンプは,空中局面において膝関節・股関節を自然に伸展させた姿勢である「伸膝跳び」
であることが分かる.接地局面においても下肢関節の強い屈曲は見られず,ゆったりとした
姿勢でジャンプ動作が行われている.
ジャンプ動作によって上昇した身体重心高は,立位時身体重心高から45cmである.ま
た,ジャンプ動作によってつま先が上昇した高さは41cmとなっている.
第2項 なわ跳び熟練者の三重跳び動作
図8は,熟練者三重跳び動作のスティック像及び関節角度変化曲線である.図7の二重
跳び動作と比較すると,両動作が非常に似た動作であることが分かる.すなわち,熟練者
三重跳び動作も二重跳び動作と同様に空中局面において膝関節・股関節を自然に伸展させ
た「伸膝跳び」であり,接地局面においても下肢関節の強い屈曲は見られない.
身体重心上昇高は43cm,つま先上昇高は38cmであり,これも二重跳び動作時とほぼ
同じ数値となっている.
一9一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作;実験
熟練者二重跳び
一一
(被験者:成人,男)
d心位置上昇は 450m
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0.50
0.75
TIME(sec.)
■図7 なわ跳び熟練者の二重跳び動作スティック像と関節角度変化曲線
10一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験
熟練者三重跳び
(被験者:成人,男)
「一一重心位置上昇は 43cm
▼
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L一つ。脚上昇は38㎝
200。
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円上酔
100。
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0.50
0.75
TIME(sec.)
■図8 なわ跳び熟練者の三重跳び動作スティック像と関節角度変化曲線
11
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
第3項 小学生被験者の実態
小学生被験者のスキル調査による二重跳び連続2回以上成功者数は表1の通りである.
全校生の約半数が二重跳び連続2回以上に成功していることが分かる.
また,図9は二重跳び連続2回以上の学年別成功率を示している.グラフから,学年が
上がるにつれて成功者の割合が高くなる傾向が認められた.
●表1 二重跳び連続2回以上成功者数
学年
成功者数(人)
児童数(人)
1年
57
1
2年
58
17
3年
67
24
4年
67
43
5年
61
44
6年
60
54
全校
370
183
100%
90%
80%
70%
成
功
率
60%
50%
國未成功(人)
40%
■成功(人)
30%
20%
10%
0%
1年
2年
4年
3年
学年
■図9 学年別に見た二重跳び連続2回以上の成功率
12一
5年
6年
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
図10は,スキル調査における「20秒間スピード跳び」の記録と「二重跳び連続2回以
上成功者数」及び「二重跳び連続2回未満の被験者数」の関係を示している.
90
80
70
馨
W2
口二重跳び連続2回以上
∴ゼ兎
予
74
鴻j重跳び連続2回未満
人60
数50
33
人40
) 30
20
≒
11
11
1:
〆ざ㌔㌔㌔禽試♂㌔㌔説
20秒間スピード跳び(回)
■図10
「20秒間スピード跳び」の記録と連続2回以上成功・未成功者数
「20秒間スピード跳び」の記録が40∼49回の範囲では,二重跳び連続2回以上成功者
54名,2回未満82名で二重跳び連続2回未満が多いが,スピード跳び50∼59回の範囲に
なると,連続2回以上成功者74名,2回未満27名で,二重跳び連続2回以上成功者の方
が多くなる.そして,スピード跳び60∼69回の範囲では,二重跳び連続2回以上成功者
35名,2回未満3名であり,二重跳び連続2回に成功しない者はほとんどいなくなること
が分かる.また,二重跳び連続2回以上成功者にスピード跳び39回以下の者がほとんどい
ないのに対して,二重跳び連続2回未満の被験者ではスピード跳び70回以上の者はいない
13一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作;実験1)
第4項動作分析結果の比較によるジャンプ動作の分類
小学生被験者の二重跳び動作では,その空中局面においてける姿勢が多様であり,例え
ば,膝関節と股関節を強く曲げた姿勢や膝関節と股関節を伸ばした姿勢などが見られる.
また,膝関節を曲げ股関節は伸ばした姿勢,逆に膝関節を伸ばし股関節は曲げた姿勢など
も見られた.
二重跳び動作における空中姿勢については,学習場面で「膝を曲げる・膝を伸ばす」と
いう言葉がよく用いられる.そこで,膝関節角度と二重跳びパフォーマンスの関連を見る
ために,被験者の二重跳び動作について,その空中局面で身体重心が最も高くなるポイン
トにおける膝関節屈曲・伸展の度合いもとに,被験者の動作を「膝関節屈曲位群」,「膝関
節伸展位群」の2つに分類して比較を試みた.
さらに,二重跳び動作の2分類について股関節屈曲・伸展の度合いも加味し,「膝関節屈
曲位一股関節屈曲位群」,「膝関節屈曲位一股関節伸展位群」,「膝関節伸展位一股関節屈曲
位群」,「膝関節伸展二一股関節伸展位群」の4分類(表2)による比較も行った.
●表2 身体重心最高点における関節角度から見た二重跳びジャンプ動作の分類
膝関節・股関節角度による4分類
膝関節角度による2分類
①一a 膝関節屈曲位一股関節屈曲位群
① 膝関節屈曲位群
①一b 膝関節屈曲位一股関節伸展位群
②一a 膝関節伸展位一股関節屈曲位群
② 膝関節伸展位群
②一b 膝関節伸展位一股関節伸展位田
屈曲位・伸展位の分類の際,「膝が曲がっている」,「膝が伸びている」という言葉が示す
角度を明確にすることは難しい.しかし,今回は,実際の指導場面において活用しやすい
と考えられる「曲がっている・伸びている」の2分類を用いた比較を行うため,動作分析
から得られた膝関節のおよその角度変化域である30。∼1800の中間値,すなわち105。を
膝関節の屈曲・伸展の境界値として分類した.また,股関節についても同様にして中間値
105。を求め,これを境界値として用いた.
表2に示した4分類(①一a,①一b,②一a,②一b)の動作について,スティック
像と角度変化曲線の代表的な1例を図11∼図14に示した.
14
第3章一1
結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
(被験者:2年生,女)
①一a 膝屈一股屈群
「重心位置上昇は 27cm
i
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200。
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0.75
TIME(80c.)
■図11 「①一a 膝関節屈曲位一股関節屈曲位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
15一
第3章一1
①一b 膝屈一股伸群
結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
(被験者:4年生,女)
重心位置上昇は 19cm
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0.75
TIME(sgc.)
■図12 「①一b 膝関節屈曲位一股関節伸展位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
16一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
②一a 膝伸一股屈群
(被験者:2年生,男)
「一一重心位置上昇は 17cm
i
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L…つま先位置上昇は33cm
200。
180。
顯聞節
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135。..
100。
go。
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O.25
0.50
0.75
TIME(soc.)
■図13 「②一a 膝関節伸展位一股関節屈曲位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
17
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
②一b 膝伸一股伸群
(被験者:4年生,女)
「・・重心位置上昇は 19。m
Ψ
i.II..・「.▼・一・
▼
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L…つま先位置上昇は170m
200。
180。
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135。....
一{・・膝騨
100。
go。
o。
O.25
0.50
0.75
TIME(soc.)
■図14 「②一b 膝関節伸展位一股関節伸展位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
18一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
表3に,関節角度による4分類の学年別人数を示した.各分類の合計人数を見ると膝関
節屈曲位群(①一a,①一b)の人数が全体の約80%を占めていることが分かる.膝関節
伸展位群で膝伸一股巨群(②一a)に分類された被験者は1名のみであった.
図15は,膝関節屈曲位群(①一a,①一b)と膝関節伸展位群(②一a,②一b)の
2分類の人数を学年別に示している.グラフから,学年が上がるにつれて膝関節伸展位群
(②一a,②一b)の割合が増えていく傾向が認められる.
なお,1年生の被験者は,ビデオ撮影時に二重跳び連続2回以上に成功する者がいなか
ったため,すべての分類において「該当者なし」となっている.
●表3 ジャンプ動作の4分類における学年別人数
学 年
1年
2年
3年
4年
5年
6年
計
①一a膝屈一股屈群
0
9
9
19
21
8
66
①一b膝屈一股伸群
0
2
9
17
10
26
65
②一a膝伸一股屈群
0
1
0
0
0
0
1
②一b膝伸一股伸群
0
1
2
6
10
17
35
計
0
13
20
42
41
51
167
17
6年
10
5年
31
6
4年
36
3年22
團膝関節伸展位群
團膝関節屈曲位群
18
2
2年
34
11
1年
0
10
20
30
40
60
50
人数(人)
■図15 ジャンプ動作の2分類における学年別人数
19一
第3章一1 結果(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
第5項 ジャンプ動作の分類ごとに見る二重跳びのスキル
表4に,ジャンプ動作の4分類における二重跳び最高回数別の人数を示した.この数値
をもとに,膝関節屈曲位群(①一a,①一b)と膝関節伸展位群(②一a,②一b)の2
分類分類における二重跳び最高回数の割合を図16に示した.
膝関節屈曲位群(①一a,①一b)では,二重跳び9回以下が約40%,30回以上が約
20%であるのに対し,膝関節伸展位群(②一a,②一b)では,9回以下が約20%,30
回以上が約40%と膝関節伸展位群(②一a,②一b)が高いパフォーマンスを見せている.
●表4 ジャンプ動作の4分類における二重跳び最高回数別人数
二重跳び最高回数
2
3∼9
①一a膝屈一股屈群
6
24
16
11
1
6
2
66
①一b膝屈一股伸群
3
17
16
9
4
6
9
64
②一a膝伸一股屈群
0
0
0
1
0
0
0
1
②一b膝伸一股伸群
1
5
7
6
6
4
7
36
計
11
46
39
26
11
16
18
167
10∼19 20∼29 30∼39 40∼49 50以上
計
注
膝関節屈曲位群
■2
圏3∼9
口10∼19
口20∼29
■30∼39
■40∼49
■50以上
騨w
旨「
膝関節伸展位群
0%
20%
40%
60%
80%
圏図16 ジャンプ動作の2分類における二重跳び最高回数の割合
一20一
100%
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2)
第2節 ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による動作の変容
第1項 低学年児童の二重跳びスキル及びジャンプ動作の変容
低学年被験者である2年生児童2名の二重跳び及び20秒間スピード跳びスキルの変容
を表5に示した.また,同被験者の二重跳び動作の変容をスティック像及び関節角度変化
曲線として図17,図18に示した.
被験者の2名は,いずれも練習開始時に二重跳び1回に成功していたが,その後のスキ
ルアップには差が生じた.
●表5 低学年児童の二重跳びスキルの変容
計測内容
練習前
i10/22)
練習1回目
A児(2年生,女)
45回
49回
最高1回
最高1回
51回
51回
20秒間スピード跳び
連続二重跳び
B児(2年生,女)
20秒間スピード跳び
@(10/22)
@練習後
練習2回目
連続二重跳び
最高1回(→)
52回
20秒間スピード跳び
最高4回(↑)
60回
@(10/24)
@練習後
練習3回目
連続二重跳び
最高0回(↓)
最高6回(↑)
20秒間スピード跳び
一回
一回
連続二重跳び
最高2回(↑)
最高10回(↑)
@(10/26)
@練習後
一21一
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
練習前:1回成功
1:::
峯
,…重心位置上昇は31cm
投iア
A 魯
離.
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,
,
i百「…..一二・.一.
マ Ψ
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●
● ・
●
・ ●
●
・
OP
1…つま先位置上昇は60㎝
O.25
0.50
0.75
TI槻で3gc.,
練習①後:1回成功
200。
18げ .
窪
f・』重心位置上昇は 25cm
135。..
▼
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,
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マ
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・ 6 つ ●
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L.・.つま先位置上昇は48cn
O.25
0.50
0.75
TIME‘3θc.〕
練習②後:0回成功
20げ
1きO・
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曝闘膏
崔
.・重心位置上昇は 17c血
股弱節
13『
,
1
,
… 卜
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磐髄詳
111=.
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コ ロ
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● ● ■ ●
「△
Lっ。瓶上昇。12,厘
0。
O.25
0.50
0.75
丁斑E(30c,.1
練習③後:2回成功
200。
1800
悶齢
彗
:…重心位置上昇は 23c薗
..
135。.
i....ly ・
1....玉.、.
L’
a
マ
騰 ・
11疹.
▼
7
○ ● ・
● ● ○ ・
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i.っ。鐡肚昇は24。n
o。
0,25
0.50
0.75
TI綴E(30G,)
※
膝関節角度,
股関節角度,
足関節角度,
■図17 A児(2年生,女)二重跳び動作の変容
22
頸関節角度
°リ
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
練習前:1回成功
200。
1809 1
署
「..重心位置上昇は 15cm
135。
1;1:
▼
▼
↓
ワ
,
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Ψ
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▼
焉f...’...
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u
oo
L…つま先位置上昇は18c鼠
0.25
0.50
0,75
丁脳E(3ec.、)
練習①後:4回成功
200。
1aoo .
、嶺閑鰹
塁
r・・重心位置上昇は 24cm
ぱ お
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▼
111=...
ロ
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L.q
▼
..
L.っ。馳肚勲24。皿
09
0.25
0、50
0.75
τ1団E‘80G,》
練習②後:6回成功
200。
18。・
.}
顯屡齢
ヨ
箋
、・・.重帷置上昇は16。・
股開節
135。・・.・}・.1・
藤撃蒔
1111
Ψ
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▼
葉
蛮
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oo
1…つま先位置上昇は16碗
O,25
0.50
0,75
TI隔E(βgc..1
練習③後:10回成功
20ぴ
.1・、顕幣
ゼげ
、…翼心位置上昇は 1了cn
1噛股。。
唱L3『.
一lllli.陣
1誇
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O.25
L一.つま先位置上昇は180m
※
膝関節角度,
0.50
0.75
TI観E(80く.》
股関節角度,
足関節角度,
■図18 B児(2年生,女)二重跳び動作の変容
一23一
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2)
第2項 中学年児童の二重跳びスキル及びジャンプ動作の変容
中学年被験者である4年生児童2名の二重跳び及び20秒間スピード跳びスキルの変容
を表6に示した.また,同被験者の二重跳び動作の変容をスティック像及び関節角度変化
曲線として図19,図20に示した.
●表6 中学年児童の二重跳びスキルの変容
計測内容
練習前
i10/3)
練習1回目
C児(4年生,女)
44回
45回
最高0回
最:高0回
42回
52回
20秒間スピード跳び
連続二重跳び
D児(4年生,女)
20秒間スピード跳び
@(10/3)
@練習後
練習2回目
連続二重跳び
最高2回(↑)
※142回
20秒間スピード跳び
最高1回(↑)
一回
@(10/5)
@練習後
練習3回目
連続二重跳び
※1最高0回(↓)
※1最高1回(→)
※253回
※255回
20秒間スピード跳び
@(10/10)
@練習後
連続二重跳び
※2最高1回(↑)
※1 ロープの調整を行い,ロープ長が短くなった
※2 2回目の練習以降,4日間の自宅練習を指示した
一24一
※2最高0回(↓)
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
練習前:0回成功
200。
エきび
塁
d’嘩置幽昇丘詳▼ 24 cm
マ
・..
,
太…、
・ ・
騨
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マ
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・
oo
ツま先位置上昇は52碗
O.25
0.50
0.了5
TI掘‘geG.)
練習①後:2回成功
200。
垂80。
叢
峯
Ψ鮮
135『.
ワ
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マ
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し・・つま先位置上昇は質c皿
O,25
0.50
0,75
π圏E(s96.}
練習②後:0回成功
200。
判::
亨
,
1言i
口
1撫r
マ
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マ
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○
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L一・.つま先位置上昇は30ca
O.25
0.50
0.75
TI賦(3gc,》
練習③後:1回成功
200F
ま809
彗
』股隣飾
135’.
轄階鮮
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i・.・つま先位置上昇は22co
※
膝関節角度,
O.25
0.50
0.75
TI匝r3㏄.)
股関節角度,
足関節角度,
■図19 C児(4年生,女)二重跳び動作の変容
一25一
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
練習前:0回成功
200旦
ぴ
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1..重畳倖置上殉# 20磁
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L一・.つま先位量上昇は38c厘
o.25
0.50
0.75
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練習①後:1回成功
1:::.』.、..
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O.25
0.50
0.75
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練習②後:1回成功
20ぴ
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L…つま先位置上昇は41c面
0,25
0.50
0.75
TI眠E(3㏄.)
練習③後:0回成功
200◎
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窪
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※
膝関節角度,
O.25
0.50
0.75
TI蟹Eで90G.)
股関節角度,
足関節角度,
■図20 D児(4年生,女)二重跳び動作の変容
一26一
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2)
第3項 練習方法別に見るジャンプ動作の変容
本実験において,ジャンプ動作の練習方法として「空振り跳び(なわを手繰る方法)」,
「バー跳び(塩ビ管を持つ方法)」及びそれらの練習をトランポリンと用いて行う方法を示
した.これらの練習が動作にもたらす変化の一例として,図21に練習方法別に見るA児(4
年生,女)のジャンプ動作を示した.
一27一
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験
練習前:0回成功
2000
ぴ
遷
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0.50
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空振り跳び(なわを手繰る方法)
2009
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L『つま先位置上鼻は160瓢
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0.50
0,75
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バー跳び(塩ビ管を持つ方法)
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0.50
0.75
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トランポリン(バー跳び)
200。
180. .
峯
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1...重心位置上昇は33c皿
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135。
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L.つ蹴阯昇燗。ロ
※
膝関節角度,
股関節角度,
●
・
足関節角度,
■図21 練習方法別に見るジャンプ動作の変容=A児(2年生,女)
一28一
O,25
0.50
0.75
TI鯛E(8㏄,}
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2)
第4項 二重跳び既習得者における三重跳び動作
表7に示すように,二重跳び既習得の児童4名(5年生:女子3名,男子1名)に対す
る実践では,練習が1回(約10分間)のみであったにも関わらず、4名全員が三重跳びに
成功できた.とくにH児(5年生,女)は,初めて三重跳びに成功したときに連続2回を
達成し,その後も記録を伸ばした.
被験者4名の動作について,練習前の二重跳び及び練習後の三重跳びのスティック像及
び関節角度変化曲線を図22∼図25に示した.
●表7 二重跳び既修得児の三重跳びスキル(練習後)
二重跳び
フスキル
三重跳び
P回目
三重跳び
Q回目
三重跳び
R回目
三重跳び
S回目
三重跳び
T回目
E児(5年生,女)
F児(5年生,男)
G児(5年生,女)
H児(5年生,女)
17回
19回
43回
47回
1回成功
0回
1回成功
2回成功
0回
0回
2回成功
4回成功
0回
0回
2回成功
1回成功
0回
1回成功
1回成功
2回成功
1回成功
0回
0回
4回成功
一29一
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
二重跳び
200。
180。
署
頸閏節
塁
’..股関節
135。.
膝騎汗
ll∴∴
1000
熱.
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O.25
L・・つま先位皿上昇は37em
0.50
0.75
TIME(3㏄.)
練習後:三重跳び1回成功
200。
180。
頚悶節
署
i購
135。.
・.
i嫁難
d心位置上昇は 27cm
100。
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▼
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0。
O.25
一つま先位置上昇は51㎝
※
膝関節角度,
股関節角度,
0.50
0.75
TI聞E(80C,)
足関節角度,
■図22 E児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作
30一
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
二重跳び
200。
180。
頸閏師
器
‘股関飾
135。.
蓉幣帯
・重心位置上昇は 23c皿
100。
go。
▼
▼
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球
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O.25
L・.つま先位置上昇は34cm
0.50
0.75
TIME(8gc。)
練習後:三重跳び1回成功
200。
180ゆ
頬悶節
署
㌦股関節
135。
藤閲蒔
・重’L泣澱上昇‘ま
28 c盈
100。
go。
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ワ
1画1
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0。
O.25
L・・つま先位口上昇は蕊伽
※
膝関節角度,
0.50
0,75
TIME(300.)
股関節角度,
■図23 F児(5年生,男)二重跳び・三重跳びの動作
31
足関節角度,
頸関節角度
第3章一2
結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容:実験2
二重跳び
・重心位置上昇は 23c皿
ワ
.
1白:1卜紬1㌧.
や
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・ ● .
●
.
●
●
1〔〕
o。
0.25
0.50
O.了5
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一 つまタ旨聖立置」二昇畳ま 24 c臨
練習後:三重跳び2回成功
2000
1醐即31㎝
!.マ.一▼..「.’漏
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マ
1Ψ
・ ・ o .
●
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1…つ。舵肚昇副。ロ
※
■図24
膝関節角度,
股関節角度,
o。
足関節角度,
G児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作容
一32一
0.25
O.50
0.75
TIME(30c,)
頸関節角度
第3章一2 結果(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法による二重跳び動作の変容1実験2
二重跳び
200。
180。
彊閏飾
署
毫
股関節
135。.
嘗「騨蒔
・・
d心位置上鼻は 23cm
100。
go。
,
y
ワ
ワ
も膿・
ご
o。
O.25
L…づま先位量上昇は溢c皿
0,50
0.75
TI甑(30c.)
練習後:三重跳び4回成功
.200。
180。
悶節
署
.股関鋪
135。
瞳贋葎
・.
d心位置上鼻は 300ロ
100。
90。
マ
ヲ
.璽
▼
一ポー
●
●
・ ●
●
0。
O.25
L…つま先位置上昇は390n
※
膝関節角度,
0,50
0.75
TIME(8gc.)
股関節角度,
■図25 H児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作
一33一
足関節角度,
頸関節角度
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
第4章 考 察
第1節 熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作分析からの考察
本節では,熟練者と小学生被験者の動作分析結果をもとに,ジャンプ動作に着目して,
二重跳び学習場面で活かせる技術的ポイントについて考察する.
二重跳び学習場面では空中局面がジャンプ動作のポイントとされることが多いが,ジャ
ンプ動作を力学的にとらえると,ジャンプにおける重心の方向や飛距離は,離地するとき
の状態(初速度ベクトル)によって決定され,空中で手足をどのように動かしても,その
重心の軌跡を変えることはできないといえる.
本実験の被験者であるなわ跳び熟練者は,二重跳び・三重跳びはもとより,補助具を使
うことなく連続5重跳びを成功させるという驚異的なパフォーマンスを持っているため,
ロープ回旋やジャンプ動作に関して最高レベルの技術を有しているものと考えられる.
そこで,まず,ジャンプ動作に関して最高レベルの技術を有していると考えられる熟練
者のジャンプ動作接地局面から二重跳びの技術的ポイントを考察する.
結果に示した熟練者二重跳びスティック像及び関節角度変化曲線を見ると,離地時の膝
関節角度は約170。・股関節角度は約160。であり,ほぼ関節が伸展された姿勢である.接
地局面全体を見ても,膝関節・股関節の伸展位を保ちつつ動作が行われている.(図26)
200。
180。
署
器
,
135。.
里、1.
、7
1000
.・・ D?
go。 ・
●
●
o。 O.25
※ _ 膝関節角度, _ 股関節角度,
足関節角度, _ 頸関節角度
■図26 なわ跳び熟練者の二重跳び接地局面動作(図7より一部抜粋)
一34一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
藤川・大島8)は,動物の四肢に存在する拮抗一関節筋二対及び拮抗二関節筋一対の三対
6筋斗関節リンクモデルによるロボット工学的な検証により,三対6筋による出力分布の
特性を明らかにし,「第1関節及び第2関節の関節角度が大きくなりリンク全体が伸びる
につれて,上下方向に出力分布が大きくなり,前後方向には小さくなる(図27)」と報告
している.すなわち,人間の下肢においては,股関節(第1関節)及び膝関節(第2関節)
の角度が大きいほど上下方向の出力分布が大きくなる,つまり,身体重心を持ち上げる大
きな出力が可能になるということである.
このように,熟練者の二重跳びジャンプ動作接地局面に見られる膝関節・股関節の伸展
位は,より大きい出力を得るために有効な姿勢であることがロボットエ学的な見地から証
明できるのである.
的
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◎噂犠噛㍑di纐bo面おw殴cha識騨困瓶k l融“種re
「藤川智彦・大島渚,2006,筋配列から見た進化のロボット工学的検証」より
鉱煙27 藤川・大島の示す三対6筋の二関節リンクモデルによる出力分布特性
関節の伸展度合いと出力の関連について,熊本ら9)は,三対6筋を装備した二関節リン
クモデルによるロボット工学的解析並びに動作筋電図学的解析により,「リンク末端におけ
る出力の方向変化によって拮抗二関節士の放電交代が起こり出力値も変化する」ことを明
らかにしている.また,図28に示すように「第1関節及び第2関節の伸展の度合いが増す
一35一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
にしたがって,出力は増大するが,同時に拮抗二関心筋の放電交代が早まり,ほんのわず
かな出力の方向変化によって出力値が大きく変化し,出力の方向が5。違うだけで出力値
が半分になってしまうことがある」とも報告している.
すなわち,熟練者の二重跳びジャンプ動作接地局面に見られる膝関節・股関節の伸展位
では,ジャンプのための大きな出力を得やすいという利点はあるが,出力の方向が少し変
わるだけで出力が半減してしまうため常に同じ方向への出力が要求されるのである.
F(N)
100
b
a
u(%)
b
a
8
△:f玉
o
9
△
100
▲;e1
▽:f2
▼:e2
6
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50
⊂]二f3
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0
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0
0
、
旦
ニ1:85
ニ2:10
0
5
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●:o闘tput force
e垂:80。
θ2:20。
0
10
5
A
0
θf(deg)
B
*AはBよりも第1関節で5。,第2関節で10。の伸展位である.
*出力値は「●」で示されている.
*出力の方向変化は「a−b間」である.
「熊本ら,2002,Robotics and electromyographic kinesiology analyses of in front handsprings in tumbling」より改変
■図28 熊本らの示す拮抗二関節筋の放電交代と出力変化
ジャンプ動作接地局面において膝関節・股関節を伸ばしておく姿勢は,「出力は得やすい
が制御が難しい」動作である.熟練者が二重跳びジャンプ動作接地局面でその難しい動作
を行えるのは,連続するジャンプ動作の中で出力方向を巧みに制御する技術を持っている
からであると考えられる.
図29は,熟練者二重跳びの連続した5回のジャンプについて,各ジャンプの身体重心上
36一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作;実験1)
昇軌跡を示している.連続した二重跳びでは,熟練者といえども毎回のジャンプで全く同
じ動作ができるわけではないが,ジャンプごとに巧みな制御を行うことで重心をほぼ一定
の方向に上昇させていることが分かる.
ロボットであれば全く同じ方向への出力も可能であろうが,人間の動作に関して,連続
するジャンプ動作で出力方向を常に同じにすることは困難であるため,熟練者の動作に見
られるように出力方向をある範囲に納めることができれば,二重跳びのパフォーマンスは
確保できるのだと考えられる.
1
2
3
4
5
■図29 熟練者二重跳び連続した5回のジャンプにおける重心上昇の軌跡
図30に,小学生の高パフォーマンス群の二重跳び動作について,熟練者と同じく連続し
た5回のジャンプにおける身体重心上昇軌跡の一例を示した.
1
2
3
4
5
■図30 小学生二重跳び連続した5回のジャンプにおける重心上昇の軌跡の一例
一37一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
図30に示した小学生被験者は,熟練者と同じく,5つのジャンプ動作は全く同じではな
いものの身体重心をほぼ一定の方向に上昇させている.高パフォーマンス群の一画面ある
小学生の動作は,出力方向をある範囲に納めることができているという点において熟練者
と同様であると考えられる.
これらのことから,二重跳びのパフォーマンス向上には,膝関節・股間節伸展の度合い
が大きい姿勢で接地局面動作が安定してできることが望ましいと考えられる.
熟練者
(②一b)
膝関節屈曲位群
①一a
①一b
膝関節伸展位群
②一a
②一b
200。
180。
→一一一一
謬
範
135。.
100。
go。
※一膝関節角度, 一股関節角度,
足関節角度,一 頸関節角度
■図31 接地局面に着目した熟練者と4分類における関節角度変化の比較
二重跳び学習場面でポイントとされることが多い空中局面についても,接地局面の動作
と関連付けて捉える必要があると考えられる.
そこで,図31に,二重跳び空中局面の膝関節・股間節角度による4分類について,その
ジャンプ動作接地局面の関節角度変化曲線の熟練者動作との比較を示した.熟練者の空中
局面での姿勢は膝関節伸展位群(②一b)である.
空中局面において熟練者と同分類である膝関節伸展位群(②一b)は,接地局面におい
ても膝関節・股間節伸展の度合いが熟練者とほぼ同じになっている,また,空中局面で膝
関節屈曲位となる「①一a,①一b」群は,接地局面においても膝関節屈曲の度合いが大
一38一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
きく,空中局面で股関節屈曲位となる「①一a,②一a」群は,接地局面においても股関
節屈曲の度合いが大きくなっていることが分かる.
このことから,空中局面と接地局面における膝関節・股関節伸展の度合いは,関連し合
っていると考えられる.
空中局面において膝関節・股関節を屈曲の度合いを大きくすれば,床一身体問に確保で
きる空間が大きくなる.したがって,空間確保という利点を利用するなら,空中では膝関
節・股関節が屈曲するほうが良い.小学生の空中姿勢に膝関節・股関節屈曲位が多いのは,
空間確保の利点を求めた結果であろう.
しかし,連続してジャンプを行う場合,空中局面で膝関節・股関節屈曲位になることは,
必ずしも良い動作とはいえない.すなわち,「空中局面で膝関節・股関節を屈曲の度合いが
大きいと着地時の姿勢が崩れ,ジャンプの出力のための正確な制御が困難になる.結果的
に,出力が小さくなりジャンプ高が低くなる.その結果,空間確保のために膝関節・股関
節屈曲の度合いをさらに強める必要が生じ,連続ジャンプに成功できない」という具合に,
空中局面における膝関節・股関節屈曲位が,二重跳びスキルの向上を阻害する要因となる
可能性があると考えられる.そのため,空中局面においても膝関節・股関節伸展の度合い
が大きい動作が望ましいと考えられる.
空中局面における膝関節・股関節屈曲位は,二重跳びを成功させるために「高く跳ぼう」,
「思い切り跳ぼう」とするイメージが強いがゆえに行われる動作だと考えられる.接地局
面におけるジャンプ動作のより良い制御を習得していく学習では,そのような負のイメー
ジをカットして,ジャンプ動作を集中的に練習できるような工夫が必要である.具体的に
は,ロープを回しながら二重跳びの練習をすると,空中局面における膝関節・股関節屈曲
の度合いが大きくなることが多いため,「ロープ回旋を行わない動作(エアーなわ跳び)」
を行うことで,ジャンプ動作を集中的に学習できるのではないかと考えられる.
二重跳び接地局面における出力制御の考え方は,二重跳び動作の習熟過程のみでなく,
一重跳びにも適用できる.図10(前章1節3項)には,20秒間スピード跳びの記録が40
∼49回の範囲では,二重跳び連続2回以上成功者54名,2回未満82名と二重跳び連続2
回未満が多いが,スピード跳び50∼59回の範囲になると,連続2回以上成功者74名,2
回未満27名で,二重跳び連続2回以上成功者の方が多くなる.そして,スピード跳び60
∼69回の範囲では,二重跳び連続2回以上成功者35名,2回未満3名となり,二重跳び
連続2回に成功しない者はほとんどいなくなることが示されている.この結果から,二重
39一
第4章一1 考察(熟練者及び小学生のなわ跳びジャンプ動作:実験1)
跳び連続2回以上成功の目安は,20秒間スピード跳び50回以上と考えることができる.
このような目安は,「ロープ回旋感覚」や「手足協応感覚」のスキルとされることが多か
ったが,出力制御の考え方で捉えるとこれまでとは違った見方ができる.すなわち,膝関
節・股関節を伸ばした姿勢で行うホッピング動作である「スピード跳び」では,膝関節・
股関節の伸展の度合いが大きいため,安定した連続ジャンプのために出力の方向の正確な
制御が要求され,「スピード跳び」の記録向上は,ジャンプ動作におけるピンポイントの制
御の習熟であると考えることができる.
20秒間スピード跳びで50回以上跳べるようになる頃には,ジャンプのための大きな出
力が得られる膝関節・股関節の伸展位姿勢で,出力の方向をピンポイントで制御する技術
を習得しているため,挑戦する技が二重跳びになって求められる力学的条件が厳しくなっ
てもパフォーマンスの向上が望めるということである.
ここまでにおいて,熟練者と小学生被験者の動作分析結果をもとに,ジャンプ動作に着
目して,二重跳び学習場面で活かせる技術的ポイントについて考察してきた結果,二重跳
びのパフォーマンス向上には,接地局面及び空中局面において膝関節・股間節伸展の度合
いが大きい姿勢が望ましいと考えられた.
しかし,その場合,接地局面においてジャンプのための正確な制御が要求されるため,
二重跳びの前段階として,一重跳びでピンポイントの制御を習得できるような練習が必要
であり,また,二重跳び動作では,ジャンプ動作以外の要素を省いて練習を組み立て,ジ
ャンプ動作の正確な制御を意識できるような練習が必要であると考えられた.
これらの考察をふまえて「ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案を
作成し,二重跳び習得過程の小学生を被験者として実践を行った.実践結果をもとに,「ジ
ャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案の検討を聖節において行う.
一40一
第4章一2 考察(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
第2節 ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討
本節では,前節における見解をもとに作成した「ジャンプ動作からアプローチする二重
跳び学習方法」の試案(図32)について,小学生を被験者とした実践結果から検討する.
ジャンプ接地局面のようにごく短い時間の運動は,「バリスティックな動作」,すなわち,
脳の中であらかじめプログラミングされている動作であり,この中枢制御プログラムを変
化させることによって,接地局面におけるより良い制御が習得できるものと考えられる.
今回作成した試案で,ロープを回さない「エアーなわ跳び」を取り入れたのは,ジャン
プ動作以外の情報をできるだけ省いた形の反復練習を行うことにより,連続ジャンプ動作
のより良い中枢制御プログラムを効率的に習得できると考えたからである.
ロープ回旋感覚からのアプローチ
▽…
繕轡ら1>
ぎ
二重跳びパフォーマンス向上
△
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=
ジャンプ動作からのアプローチ
高く安定したジャンプ
1
酢一一■■■一一一一胃一■一一一■■一■幽一一一一一■■■一■■■一■一一一幽一
空中局面における
膝関節・股間節伸展位姿勢
}暉一■一一一一■一一一■■一一一■
接地局面における
膝関節・股間節伸展位姿勢
出力方向の
正確な制御
〈学習方法の試案〉
ロープを使わないで練習
※エアーなわ跳び
・空振り跳び
・バー跳び
・トランポリン跳び
20秒間スピード跳び
ピンポイントの制御
■図32 「ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案のポイント
被験者である4名は, 「二重跳びが未習得であり,20秒間スピード跳びの記録が40回
前後」を条件として抽出したが,低学年2名は練習前の計測時に二重跳び1回に成功した.
前章2節1項及び2項で示した結果によれば,A児(2年生,女),C児(4年生,女),
一41
第4章一2 考察(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
D児(4年生,女)の3名は,3回の練習を通して膝関節の屈曲傾向が緩和されており,
今回実践した学習方法がジャンプ動作を有意に変容させたことが分かる.また,練習開始
前から膝関節伸展位群の動作を示したB児は,パフォーマンスの向上が他の3名よりも早
く,3回目の練習後には二重跳び連続10回に成功した.
また,パフォーマンス向上の度合いには差があるが,各被験者とも「二重跳びができる
ようになった」という思いを持つことができた.短時間の練習でパフォーマンスが変化す
る学習方法であるため,学習者の意欲を高める効果も期待できる.
図21(前章2節3項)に示したように,今回の実践で用いた3つの練習方法によってジ
ャンプ動作における膝関節・股関節伸展の度合いは大きく変化する.各練習方法でジャン
プを行ったA児の重心上昇軌跡(図33)を見ると,3つの練習方法によって重心上昇軌跡
のぶれが小さくなり安定した軌跡になっていることが分かる.
「空振り跳び」と「バー跳び」の重心軌跡に大きな違いはないため,いずれか1種類の
みの練習でも効果は変わらないと考えられる.
練習前:0回成功
空振り跳び
バー跳び
トランポリン(バー跳び)
■図33 練習方法別に見る重心上昇軌跡
トランポリンを利用した練習では重心上昇軌跡がより直線的になり,理想に近い動作を
示す.トランポリンでは,トランポリンによって大きな出力が得られるため,膝関節・股関
節は伸展度合いを増してカの伝達関節として働けばジャンプ動作が成立するため,関節角
度の変化によるぶれが抑えられるのではないかと考えられる.
一42一
第4章一2 考察(ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法の検討:実験2)
本研究の目的は「二重跳びの効果的な学習方法の検討」であるが,図7及び図8 (前章
1節1項,2項)で示した熟練者の二重跳び動作と三重跳び動作を比較すると,下肢関節
角度や重心上昇高などにほとんど差が認めらないことから,二重跳びと同様の学習方法が
三重跳びの練習にも応用できるのではないかという仮説を立てて検証を試みた.
被験者は,二重跳び既修得である4名を抽出した.各被験者の二重跳びスキルは表5(前
章2節4項)に示す通りで,特別に二重跳びが上手い児童を集めたわけではない.
実践は1回のみ,練習時間は約10分であったにもかかわらず,4名全員が三重跳びに成
功した.三重跳び練習前から二重跳びのスキルが高かったH児は,初めて三重跳びを跳んだ
ときに連続2回に成功し,練習終了後しばらくすると,三重あや(順一交一順)をマスター
するなど三重跳びの上達も早かった.これは,本節1項で述べたように,二重跳びのジャ
ンプ動作を安定して繰り返すスキルがあるからこその上達であると考えられる.
また,各被験者の三重跳び動作のスティック像・関節角度変化曲線を見ると,二重跳び
では上伸一膝伸群(②一b)であるF児とH児が,三重跳び動作では股関節や膝関節の屈
曲傾向が増し膝伸一股屈群(②一a)や膝屈一股男芸(①一a)の動作に変化しているこ
とが分かる.これは,二重跳び練習初期にも見られるように「跳ばなければ」という意識が
強いため姿勢を崩していると考えられ,練習を重ねることで中枢プログラムがより良く変
化し,安定したジャンプ動作へ移行していくものと考えられる.
以上のことから,今回示した「ジャンプ動作からアプローチする学習方法」は,ジャン
プ動作高スキル群に対しても効果的な学習方法になり得ると考えられる.
一43一
第5章 今後の課題
第5章 今後の課題
本研究のために構築した家庭用ビデオカメラと自作プログラムによる簡易動作分析シス
テムは,手軽に実験を行えるという利点があり,教育現場での実践においても活用できる
と考えられる.今後,現場での実践の中で,さらに被験者数を増やして二重跳びの効果的
な学習方法についての検討を進めるとともに,今回は被験者として抽出しなかったなわ跳
び動作低スキル群を対象とした学習方法についても検討していきたい。
本研究は,なわ跳びの学習方法に関する多くの先行実践を否定するものではない.しかし
ながら,今回示されたように,多様な実践事例の中に「習得のために有効な要素」と「習
得を阻害する要素」が入り混じっているのが現状である.そこで,今後の研究において,
多様な実践事例を理論的な視点から見つめなおし,その中から「有効な要素」を明らかに
していきたい.
一44一
第6章要約
第6章 要 約
短なわ二重跳びのジャンプ動作に着目し,なわ跳び熟練者及びなわ跳び習得過程である
小学生について動作分析の手法を用いて比較・検討することで,短なわ二重跳びの効果的
な学習方法を明らかにすることを目的とした.
被験者として,なわ跳びに対して最高の技術を有していると考えられる1999年INF国際
なわとび連盟世界ランキング1位の成人男性1名となわ跳び技術の習得過程にある加古川
市立東神吉小学校全校児童370名を用いた.
結果及び考察は次のとおりである.
(1)二重跳びパフォーマンス向上には,接地局面及び空中局面において膝関節・股関節
伸展の度合いが大きい姿勢が有効であると考えられる.ただし,ロボット工学的な知見に
よれば,膝関節・股関節伸展の度合いが大きい姿勢は「出力は得やすいが,制御が難しい
動作」である.
(2)小学生の二重跳び高パフォーマンス群の被験者は,ジャンプ接地局面において熟練
者と同様の膝関節・股関節伸展位姿勢を示した.
(3)熟練者や小学生の二重跳び高パフォーマンス群は,接地局面において出力方向が大
きくずれないような制御を行うことで安定した出力を得ていると考えられる.
(4)「ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案では,中枢制御プログラ
ムの習得をねらいとし,ジャンプ動作に集中して反復練習に取り組ませるために,ロープ
を使わないでジャンプ動作のみを練習する方法(エアーなわ跳び)を取り入れた.
(5)「ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案による実践では,練習に
よって被験者のジャンプ動作が有意に変化し,二重跳び未習得の被験者4名が二重跳びに
成功または最高記録を更新,二重跳び既習得の被験者4名が三重跳びに成功した.したが
って,今回示した学習方法は,効果的な学習方法であると考えられる.
(6)今回は被験者のスキルを限定して実践を行っているため,今後,なわ跳び動作低ス
キル群を対象とした実践により,学習方法の検討をさらに進める必要がある.
一45
引用・参考文献
引用・参考文献
1)
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2)
文部省,1999,小学校学習指導要領解説体育編,東山書房
3)
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学教養i論文集No.10,1−13
4)
太田昌秀,1979,図説なわとび運動,大修館書店.
5)
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1985年1L月号臨時増刊第38巻第13号
6)
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7)
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8)
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進化人類学分科会抄録集,pp.16
9)
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electromyographic kinesiology analyses of in front handsprings in tumbling,
バイオメカニクス研究Vol.7 No.3(170−178)別刷
10)
太田昌秀,1992,楽しいなわとび運動,ベースボール・マガジン社,p,26
11)
藤澤芳昭,2003,一週間でマスターできる体育教科書シリーズ1巻“二重跳び連続3
回”新ドリル,明治図書一19
12)
大島徹・鳥海清司ら,2003,ヒトの腓腹筋である二関離心の装備が跳躍運動に及ぼす
影響,日本機械学会論文集(C編)69巻688号,3263−3268
13)
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14)
下山真二,2006,きょうから体育が好きになる(なわとび/短距離走),鈴木出版
15)
KUMAMOTO M ・ Oshima T ,
1995 , Robot
arm
constructed with
bi−articular
muscles(stiffness properties of bi−articular muscles and its effect), Trans Jpn
Soc Mech Eng C61(592), 122−129
16)
藤田恒夫,1998,入門人体解剖学(改訂第3版),南江堂,pp.88−92
一46一
図表一覧
図表一覧
・…………・……・…・……
4
図1.
ビデオ画像からの16ポイント計測点
図2.
二重跳び実験方法及びデータ処理の流れ
図3.
二重跳び練習実施の流れ
図4.
三重跳び練習実施の流れ
図5.
二重跳び練習内容「空振り跳び」
図6.
二重跳び練習内容「バー跳び」
図7.
なわ跳び熟練者の二重跳び動作スティック像と関節角度変化曲線
…
ユ0
図8.
なわ跳び熟練者の三重跳び動作スティック像と関節角度変化曲線
…
11
図9.
学年別に見た二重跳び連続2回以上の成功率
…・・…・・…・・…・・・・・・…
5
…・……………・・・… ……… …・…・
7
・……・・”●’・…”●●’’’’’’”●●.’●●●●●●一●
………………… …・…・・・・…
・…… ………・・・・・・・・・・・・・… …
…・・… …・……・・…
8
8
12
図10.
「20秒間スピード跳び」の記録と連続2回以上成功・未成功者数
図11.
「①一a 膝関節屈曲位一眸関節屈曲位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
…
15
図12.
「①一b 膝関節屈曲位一股関節伸展位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
…
16
図13.
「②一a 膝関節伸展位一股関節屈曲位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
…
17
図14.
「②一b 膝関節伸展位一股関節伸展位群」のステッィク像と関節角度変化曲線
・一
18
図15.
ジャンプ動作の2分類における学年別人数
図16.
ジャンプ動作の2分類における二重跳び最高回数の割合
図17.
A児(2年生,女)二重跳び動作の変容
図18.
…
7
… ……・・…・……・…・
・……・……
ユ3
19
20
・………・………・… …
22
B児(2年生,女)二重跳び動作の変容
…・… ……・・…・・… …・
23
図19,
C児(4年生,女)二重跳び動作の変容
…・・…… …・…・・… …・
25
図20,
D児(4年生,女)二重跳び動作の変容
……・……・・…・・・… …
26
図21.
練習方法別に見るジャンプ動作の変容:A児(2年生,女)
図22.
E児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作
図23.
F児(5年生,男)二重跳び・三重跳びの動作
・…・… ……・……
31
図24.
G児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作
・… …・・…………
32
図25.
H児(5年生,女)二重跳び・三重跳びの動作
図26.
なわ跳び熟練者の二重跳び接地局面動作(図7より一部抜粋)
47
・…・・…
28
・……・・…・・… …・
30
…… ………・・…・
・・・・…
33
34
図表一覧
・・・…
35
図27.
藤川・大島の示す三対6筋の二関節リンクモデルによる出力分布特性
図28.
熊本らの示す拮抗二関節筋の放電交代と出力変化
図29.
熟練者二重跳び連続した5回のジャンプにおける重心上昇の軌跡
図30.
小学生二重跳び連続した5回のジャンプにおける重心上昇の軌跡の一例
図31.
接地局面に着目した熟練者と4分類における関節角度変化の比較
…・
38
図32.
「ジャンプ動作からアプローチする二重跳び学習方法」試案のポイント
・…
41
・…・……………・・…・…・・…
42
・… …・…・…・・…
・…
・…
36
37
37
図33.
練習方法別に見る重心上昇軌跡
表1.
二重跳び連続2回以上成功者数
表2.
身体重心最高点における関節角度から見た二重跳びジャンプ動作の分類
表3.
ジャンプ動作の4分類における学年別人数
表4.
ジャンプ動作の4分類における二重跳び最高回数別人数
表5.
低学年児童の二重跳びスキルの変容 ……・・・… …・…… …・・… …
21
表6.
中学年児童の二重跳びスキルの変容
24
表7.
二重跳び既修得児の三重跳びスキル(練習後) ……・・… ……・・・…
・……・・…・……… ………・・…
一48一
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謝 辞
謝
辞
本稿を終えるにあたり,終始懇篤な御指導・御校閲を賜りました兵庫教育大学の岡秀郎
教授に深甚なる謝意を捧げます.さらに,様々な御助言を賜りました生活・健康系体育分
野の諸先生方に心より謝意を捧げますとともに,深く敬意を表します.
また,本研究の実験に際し,被験者として御協力いただいた木内友也氏ならびに加古川
市立東神吉小学校の全校児童のみなさんに心から感謝いたします.
さらに,兵庫教育大学岡研究室の中島大樹氏ならびに兵庫教育大学大学院生活・健康系
コースの諸氏には,公私にわたりご協力いただき心から感謝いたします.
最後になりましたが,2年間に渡る長期研修の機会を与えてくださいました兵庫県教育
委員会ならびに加古川市教育委員会,および加古川市立東神吉小学校川津健作校長先生は
じめ,研修を後押ししてくださった諸先生方に心から感謝申し上げます.
平成19年12,月20日
淺田武成
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