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大腸がん

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大腸がん
大腸がん
大腸がんに対する治療法には内視鏡的切除、手術、抗がん剤治療、放射線治療が
あります。
1.内視鏡的切除
大腸がんの診断には内視鏡検査は欠かせません。当院では腫瘍の表面を 100 倍に
拡大して観察できる拡大内視鏡や、腫瘍の微細な血管を観察できる特殊光観察とい
った最新式の内視鏡検査を行なっています。それにより切除の対象となる病変をきち
んと見極めることが可能になり、不要な処置は行いません。
切除方法は従来の内視鏡的ポリペクトミー(EP)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)に加
え、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を導入しています。この技術は主に胃の粘膜が
んに行われていますが、当院消化器内科グループは全国でも有数の経験を積んでお
り、これを大腸の早期がんにも応用しています。これにより従来では分割切除が必要
だった大きな病変も一括して切除することができるようになりました。
粘膜にとどまるか、粘膜下層にわずかに浸潤している程度のがんであれば、このよう
な内視鏡的治療で治癒可能で、手術の必要はありません。
2.手術
大腸がんは比較的おとなしいがんで、手術できちんと切除すれば、治癒する可能性
が高いのが特徴です。また、肝や肺に転移があった場合でも切除できれば約 40%の
治癒が期待できます。転移巣が切除できない場合でも、もともとの大腸がんのため腸
閉塞になったり、出血して貧血になったりすることが多いため、大腸がんは切除し、そ
の後転移巣に対し抗がん剤治療を行ないます。このように手術は大腸がんの治療の
中心になるものです。
当院消化器外科大腸グループでは最新の手術法を取り入れています。
1)腹腔鏡下大腸切除術
炭酸ガスで腹部を膨らませて、腹腔鏡というテレビカメラを腹部の中に入れ、モニタ
ーに映った画像を見ながら小さな孔から器具を入れて手術を行います。小さな傷口で
切除できるので、術後の疼痛が少ないため回復が早く、術後 10 日前後で退院できる
など負担の少ない手術です。しかし腹腔鏡下手術は近年開発された手術手技であり、
特殊な技術・トレーニングが必要で、外科医の誰でもが安全に施行できるわけではあ
りません。現在、腹腔鏡手術の最大の問題は、どこの施設でも安全に腹腔鏡の手術が
施行できるわけではないこと、すなわち大腸がんの腹腔鏡手術の専門医が限られてい
ることです。
当院では北陸で唯一の大腸部門の日本内視鏡外科技術認定医が中心となり、例外
を除き、進行がんに対しても積極的に腹腔鏡下手術を行なっています。例外とは(1)腸
閉塞で腸管が拡張している場合、(2)周囲の臓器に浸潤している、または大きさが8cm
を越えるような大きな進行がん、(3)何回も腹部の手術を受け、腹腔内の癒着が強い場
合、(4)骨盤側方リンパ節郭清を必要とする進行下部直腸がんです。
しかし、進行がんに対しても開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるのかに
ついては今後の検討が必要です。これまでのデータでは、十分に経験を積んだ大腸
がんに対する腹腔鏡手術の専門医が担当すれば、進行がんでも腹腔鏡手術の生存
率は開腹手術と同等となるのではないかと考えられています。現在、国内では進行が
んに対する腹腔鏡手術と開腹手術の臨床比較試験が実施されています。
2)下部直腸がんに対する手術
下部直腸は深く狭い骨盤内に埋もれたように位置します。そのため進行下部直腸が
んの手術では以下のことが問題になります。(1)直腸の横にはついたてのように骨盤神
経叢という自律神経の束があり、排尿機能や性機能(勃起や射精)の障害がおきるか
もしれない、(2)骨盤側方リンパ節に転移することがある、(3)肛門のすぐ奥なので、肛門
を温存できないかもしれない、という点です。
当院ではこの自律神経を温存しながら、骨盤リンパ節郭清を行う手術を積極的に導
入し、その有用性に関する臨床試験を、国立がんセンターを中心とするグループととも
に行っています。自然肛門はがんが肛門から4cm 以上、歯状線(肛門と直腸との境
界)から2cm 以上離れていれば、温存することが可能です。さらに最近では、歯状線
にかかるような肛門に近い直腸がんであっても早期がんや一部の進行がんで肛門括
約筋を部分的に切除して自然肛門を温存する術式を行っています。
しかし、高齢者では無理に肛門を残すと、術後の頻便や便失禁などのため外出がで
きなくなったりして、生活の質が落ちてしまいます。したがって、手術法と病期の進行
度、年齢、社会的活動力、本人や家族の希望などを考慮に入れ、総合的に術式を決
定するようにしています。
3.抗がん剤治療
大腸がんは約10年以上前まで抗がん剤の効かないがんの代表でした。しかし、最
近はもっとも抗がん剤の開発が進んでいるがんの一つです。
1)術後補助化学療法
手術によりがんを切除できても、リンパ節転移があった場合に、再発率が高いことが
知られています。そしてリンパ節転移があった患者さんに対し、手術後抗がん剤治療
を行うことで、再発を予防、あるいは再発までの期間を延長できることがわかっていま
す。このような治療を術後補助化学療法といい、当科ではUFTとロイコボリンという経口
抗がん剤を6ヶ月間服用してもらっています。一方、リンパ節転移のない大腸がんにつ
いて術後補助化学療法の有用性は明らかではないため、無治療で経過観察をしま
す。
2)化学療法
有効な抗がん剤がなかった時代には手術できない進行大腸がんや再発がんの患者
さんの余命は約7ヶ月と言われていました。現在は様々な抗がん剤を使い、2年の生
存を目標にしています。抗がん剤というと、副作用が強く、治療を行った方が命を縮め
てしまうと考えてしまう方もいますが、最近は副作用の少ない抗がん剤の投与法の開
発や副作用対策の進歩により、外来通院で日常生活を送りながら治療を受けることが
できるようになりました。
以下に大腸がん化学療法に用いる代表的な薬と治療法について説明します。
(1)5-FU(5-フルオロウラシル)+ロイコボリン
5-FUは数十年前より消化器がんに対し、広く使われている薬です。大腸がんに対し
ては、ロイコボリンという薬と一緒に使われ、治療の土台になっています。これに後述
するイリノテカンやオキサリプラチンを組み合わせるのが、現在の標準的な治療法で
す。
(2)イリノテカン
10年ほど前から用いられ、胃がんや肺がんでも広く使用されている薬です。大腸が
んに対しては5-FU/ロイコボリンとの併用で用いられます。5-FUを短時間で投与した
上でさらに46時間持続的に投与する方法(FOLFIRI療法)を行っています。
副作用としては、食欲の低下、全身倦怠感、下痢、白血球が減ったりすること、脱
毛などがあります。
(3)オキサリプラチン
この薬も5-FU/ロイコボリンと併用(FOLFOX療法)します。FOLFIRI療法とほぼ同等
の治療成績を示しており、この2つの療法が現在の大腸がん化学療法の大きな柱とな
っています。
副作用としてはイリノテカンと比較して食欲の低下は軽く、脱毛もあまり認めませんが、
投与された患者さんの80〜90%に感覚性の末梢神経障害をきたすのが特徴です。こ
の末梢神経障害は、寒冷刺激により誘発され、冷たいものを触ったり、冷たい飲み物
を飲んだりすることで、手先にビリッとする感覚や、のどの違和感が出現します。治療
開始当初は2〜3日で消失しますが、治療を継続するにしたがって、回復が遅れ、治
療後4〜5ヶ月で、10%の患者さんに機能障害(箸が持ちにくくなるなど)をきたすとい
われています。このような場合には、オキサリプラチンの投与量を減らしたり、あるいは
治療をお休みしたりするなどして副作用の回復を待ちます。これら以外にも白血球が
減ったり、血小板が減ったりすることが比較的よくみられます。
(4)その他
これら以外にも経口剤であるUFT/LV、UFT、S-1なども患者さん自身の状況に応
じて使い分けます。また、新しい作用機序を持つ抗体医薬品であるセツキシマブ、ベ
バシズマブといった、海外で有効性が示された薬も国内で承認されれば、積極的に使
用していく予定です。
4.放射線療法
放射線療法には、1)と 2)切除が困難な場合での骨盤内の腫瘍による痛みや出血
などの症状の緩和や延命を目的とする緩和的な放射線療法があります。
1)補助放射線療法
手術が可能な場合でも骨盤内の局所再発を抑制したり、手術前に腫瘍を小さくしで
きるだけ肛門を温存したりすることを目的とした補助的な放射線療法です。しかしわが
国の専門施設では十分なリンパ節郭清により、骨盤内の再発が少ないなど手術成績
が欧米に比べ良好なことから、補助放射線療法は欧米に比べ積極的に行われていま
せん。当科でも原則として行っていません。
2)緩和的放射線療法
骨盤内の腫瘍による痛みや出血などの症状の緩和に放射線療法は効果的です。ま
た、骨転移による痛み、脳転移による神経症状などを改善するのにも有効です。
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